ユーザー訪問のすゝめ: BtoB SaaS開発組織におけるユーザー理解のための取り組み

介護事業者向け経営支援サービス「カイポケ」のプロダクトマネージャーを担当している 田村 恵 です。

我々のようなBtoB SaaSでは、ユーザーや業務を深く理解することがサービスの価値を生み出す上で重要です。今回はどのようにユーザーからインプットを得ているのかを紹介します。

今回紹介する活動

私たちは、ユーザー業務に対する理解を深めるために、ユーザー事業所を月に1回ぐらいのペースで訪問しています。カイポケユーザーである介護事業所を訪問し、実際の業務や関連業務を見学することで、ユーザーの業務に対する理解を深める取り組みです。

業務を見学することの重要性

私たちのユーザー訪問では、単に訪れるだけではなく現場の活動を間近で見学し、ユーザーが日々どのような業務に取り組んでいるか、どういったところに課題があるのかを実際に目で見ることを重視しています。具体的な業務の実態を目にすることで、抽象的な概念から具体的な課題やニーズへとつなげることができます。

仮説を持たない姿勢で取り組むこと

ユーザー訪問では、あらかじめ仮説を持つことなく、ユーザーの業務に没頭するよう心がけています。仮説を持つことは、既存の予断や偏見を持ち込む可能性があるため、ユーザーの実際のニーズや課題を見逃す可能性があります。そのため、素朴な疑問や興味を持ちながら、ユーザーの業務に没頭することで、真のニーズを探り出すことを意識しています。

デザイナーやエンジニアの参加

ユーザー訪問には、プロダクトマネージャーだけでなく、デザイナーやエンジニアも積極的に参加してくれています。デザイナーやエンジニアもユーザーの業務に対する理解が必要であり、プロダクト開発において重要な視点を提供してもらいたいからです。デザイナーやエンジニアの参加により、ユーザーの視点や現場の課題をより多角的に捉えることができます。

このことの重要性は、事業責任者の園田が書いた記事「大規模SaaS「カイポケ」の意思決定を支える事業責任者の思考と技術」でも触れていますが、自分たちのプロダクトを、ユーザーが現場でどのように使っているのかの肌感覚を得ることを大切にしています。

解像度を上げるための工夫

事前準備

ユーザー課題の解像度を上げるために、訪問前の準備として以下のようなことをしています。

  1. ユーザー情報の確認
    訪問させていただく事業所が法人設立からどれぐらい経っているのか、法人・事業所規模、カイポケをお使いいただいている期間、担当利用者数、毎月の請求実績などの情報を事前に確認しています。

  2. 訪問メンバーの現在地の確認
    訪問するメンバーが入社後どれぐらい経っているのか、ユーザー訪問の回数、担当している領域などを確認し、状態にあった訪問先を選定したり、どのようなことをメインで確認するかを決めたりしています。

  3. 見学業務の事前レクチャー
    訪問させていただく事業所で、訪問日にどのような業務を見学させていただく予定かを事前に訪問メンバーに伝え、必要に応じて実際の画面だとどのように操作をするのかをレクチャーします。

これによって、理想的な操作、遷移はこうだという情報を持っていくことができるので、ユーザーがどこで課題を感じているかの解像度が上がりやすくなります。

有識者の同行

ユーザー訪問には、社内のドメインエキスパート(介護業界経験者)やカスタマーサクセス担当者、セールスメンバーなどにも同行してもらっています。ドメインエキスパートやビジネス部門のメンバーは自身の専門知識や経験を通じて、より深い洞察を提供してくれます。彼らとの協力により、私たちはユーザーのニーズや要件をより高い解像度で把握することができます。その結果、開発チーム全体が的確な方向性を持ち、効果的なプロダクトを提供することができると感じています。

ユーザー訪問の効果と継続性

プロダクトへの直接的な効果

ユーザー訪問によるプロダクトへの直接的な効果として、やはりユーザーの課題にダイレクトに直面するので、生の声をプロダクトに反映させることができる点があります。 例えば、50〜60代の年齢層のユーザーであれば、「今の画面だと文字が小さいなぁ」という反応をいただくことができたり、「曜日の色が分かれていないと見えづらい」などといったフィードバックがあります。

副次的な効果

定期的なユーザー訪問を通じて、デザイナーやエンジニアが業務に対する高い解像度を持つことができるようになりました。彼らが実際の現場を見学し、ユーザーと直接対話することで、プロダクト開発における意思決定が迅速かつ的確に行われるようになりました。さらに、ユーザー訪問に参加したチームメンバーが「自分が訪れた事業所でも同様の課題がある」と気づくことがあります。これにより、私自身がプロダクトマネージャーとしても安心感を持つことができます。 また、ユーザー訪問時やユーザーインタビュー時に撮影した内容を、チームメンバーで見る上映会をすることがあるのですが、実際に訪問していないメンバーが参加してくれたり、「この人に喜んでもらえるプロダクトを作りたい!」というモチベーションにつながっていたりするので、とてもいい取り組みだと感じています。

さいごに

ユーザーを深く知ることと解像度の維持は、私たちにとって非常に重要です。ユーザーのニーズや要件は絶えず変化しており、1回の訪問だけでは完全には把握できません。そのため、私たちはユーザー訪問を継続し、定期的に現場を訪れることで、ユーザーとの関係を深めています。今後も、私たちは常に最新の情報を得ながら、ユーザー中心のプロダクトを提供していきたいと考えています。