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【開催報告 & 資料公開 】現場の業務変革を実現するAI・データ活用(鉄道/運輸編・建設/プラント編)

本ブログでは2023年9月21日(木)に開催された、「現場の業務変革を実現するAI・データ活用(鉄道/運輸編・建設/プラント編)」のご講演サマリをお届けします。

1. JR九州の「AWS×データ分析」によるDX推進の取り組み

2. 電気設備に対する画像分類モデルの開発と生成AIを活用した異常画像生成の取り組み

3. 「建設デジタルプラットフォーム」によるデジタルデータ活用

4. ファストデジタルツインでちゃぶ台返し~保全の現場から市場を創る、ものづくりを変える~

5. 現場業務変革を実現するAWSテクノロジー

 1. JR九州の「AWS×データ分析」によるDX推進の取り組み

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九州旅客鉄道株式会社様 (JR九州様) からは、AWSとデータ分析を掛け合わせたDX推進の取り組みについてご紹介いただきました。

まず東村様より、JR九州様のグループ会社(JR九州グループ)としてのDX取り組みの経緯についてご紹介いただきました。
JR九州グループの組織として2019年に設立されたデジタル推進室では、当初、2030年までの長期ビジョンでデジタル技術の活用を推進していく想定でした。しかし、2019年以後のコロナウイルスの感染拡大により、リモートワークの増加、お客様のライフスタイル変化等により、JR九州グループは各ビジネス部門のDXやデータ活用の強化が早急に求められるようになりました。その対策として、JR九州グループDX戦略を策定し、2022年からDX戦略に沿った活動を開始されました。DX戦略の中の3つの目標として、お客様の体験価値の向上、オペレーション・メンテナンス改革、働き方改革・生産性向上を掲げられており、その目標の実現に向けて、様々な新技術の導入、クラウド・ネットワーク・ガバナンスなどの基盤整備、そしてDX推進人材の育成と体制強化への取り組みについて述べられていました。推進組織(CoE)だけに止まらず、各事業部に対してDXの専任となる人材を配置することで、CoEと各事業部の連携を強化し、DX推進を加速する仕組み作りが特徴的でした。

続いて、DX戦略のPJの一例として、データ分析プロジェクトについてお話をいただきました。データ分析PJは、JR九州グループ全体で専門チームを立ち上げられたプロジェクトで、2021年4月に、社内にどんなデータが保存されているかを一覧化してくことから取り組みを開始しました。一覧化したデータと各事業部でヒヤリングした結果に基づき、どのような分析と活用を実施すべきかを決めるテーマを洗い出し、2021年10月にデータ分析CoEの立ち上げと共にデータ分析がスタートしました。2022年4月には事業部専任の社員がアサインされ、現在では分析結果をベースにした業務やビジネスの構築と共に、社内外へのPJの発信にも注力されています。

データ分析PJを進めていく上で苦労したポイントは2点あり、1つはデータの把握でした。社内データは各課と各PJで細分化されており、どこにどのようなデータがあるのか、またそれぞれのデータの管轄はどこなのか不明で、それらを調べ一覧化することに非常に労力をかけることになりました。また、データの形式も非構造化データと呼ばれるデータが多く、活用できるデータなのかどうなのかを整理し、一覧化するところにも労力をかけることになりました。もう1つの苦労ポイントは分析チームの立ち上げ時で、今まで存在しなかったCoEといった枠組みに対し、新たに他部門からメンバーを選出するにあたり、関係各所への説明を実施して理解していただく必要がありました。こういった苦労がありながら、2021年に10月に分析PJチームを立ち上げが実現し、現在に至っております。

AWSを活用したデータ分析PJの事例として、動画データを活用した鉄道沿線設備の保全高度化と、販売データを活用した駅弁当の発注業務効率化の取り組みについて、それぞれ東村様と姫野様よりご紹介いただきました。本記事では、前者の事例についてご紹介いたします。

動画データを活用した鉄道沿線設備の保全高度化の事例についてご紹介します。JR九州様は、2020年4月より営業車両カメラシステムRED EYEを導入し、検査業務の一部効率化を行っておりました。しかし、このRED EYEのシステムは一部の検査を効率化するにとどまっており、活用幅の拡大が検討されました。そのためデータ分析PJとして、RED EYEシステムで取得できる前方の列車映像を活用し、既存のシステムでは検知できない「鉄道設備及び設備周辺の正常性」を保守社員が容易に確認できる業務支援ツールを内製開発で AWS 上に展開しました。支援ツールを用いた取り組みの内容についてお話します。まず事前に定期的に設備の周辺状況を確認したい画像データ群を用意し、定期的に録画されるRED EYEシステムの前方列車映像データから、それぞれの画像データに最も類似した動画フレームを抜き出します。それにより最新の設備周辺画像が抽出され、その画像のみを目視で確認することで、設備の状態を容易に確認でき、保全の計画や実施に役立てるといった取り組みになります。また、これらの画像データは、簡易Webアプリケーションを通して、保守担当社員が容易に確認できるようになっています。このシステムにより、例えば雑草繁茂によって視認しづらくなる設備の予兆検知が効率的に行えるようになりました。

姫野様より、生成系AIの活用についてもお話いただけました。JR九州グループは、「JR九州グループ共通 ChatGPT等生成AI利用ガイドライン」制定し、積極的な生成AIの活用を検討されているとのことでした。また、ガイドラインだけではなく、生成AIとはどのようなモノか、どのような使い道があるか、ガイドラインの要点は何か等をまとめた資料も展開し、日々の情報発信とあわせて社内での積極的な利用を推進されているとのことでした。具体的な生成AIの活用事例として、現在はJRキューポへのお客様お問い合わせメールの作成支援を提供しているとのことです。現在はローカルアプリによる提供となっていますが、社内の他のお問い合わせ業務への展開にむけて、AWSへの移行を検討されているとのことです。

最後に、データ分析基盤としてAWSを選択された理由と、今後についてお話いただけました。AWSを選択した理由は主に2つあり、1つ目はAWSには非常に多くのサービスが存在し、PoCも実施しやすいため、検証から本番活用までをスピーディに行える点でした。2つ目はJR九州様のDMP(Data Management Platform)基盤とJR九州グループの仮想環境基盤がAWSに存在しており、データ連係が行いやすい点でした。しかし、AWSのサービスを分析基盤として使用し始めて、まだ2年程度であるため、AWSをまだ活かしきれていないことを課題に感じておられました。今後は、よりAWSを活用してビジネスを加速させるため、Amazon S3を用いたDatalakeアーキテクチャ、Amazon SageMakerを筆頭とするAWSのAI/MLサービス、AWS IoTサービス、Amazon QuickSightなどの利用を検討されているとのことでした。

本登壇では、JR九州グループのDX戦略の全体像と取り組みをご紹介いただきました。また具体的なお話として、DX戦略の取り組みの1つであるデータ分析PJについて、事例を出しながらお話いただきました。JR九州様は、自社のデータとAWSを実際の業務に活用しながら、今後にも目を向けており、より一層自社データとAWSを活用していくことで、鉄道業界における様々な課題解決を目指しております。

2. 電気設備に対する画像分類モデルの開発と生成AIを活用した異常画像生成の取り組み

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JR東日本情報システム様(JEIS様)からは鉄道の電気設備メンテナンス業務へのAI/ML活用についてご講演いただきました。この取り組みは鉄道の電気設備メンテナンスを鉄道事業者向けに提供されている東日本電気エンジニアリング様(TEMS様)様と共同で取り組まれています。

まず、電気設備に対する画像分類モデルの開発について方志様よりお話をいただきました。こちらは2023年5月のAWS Blogに寄稿いただいた「Amazon RekognitionとAmazon SageMakerを組み合わせた効率的なAI開発」を一段深掘りした内容です。外環検査時にメンテナンス現場で撮影した16の設備、13,000枚の画像を使い、Amazon RekognitionとAmazon SageMakerそれぞれの評価結果をご紹介いただきました。

分類対象となる設備は配線箱の内の配線自体が異なるものの、配線箱という大きなくくりで考えると特徴が似通っています。従来の教師あり学習を使った分類では対応できないのではないかという仮説を検証するためAmazon Rekognitionを利用した分類に取り組まれました。結果は1138枚のテストデータの内、996枚の画像判定に成功され概ね良い結果が得られました。
それぞれの設備個々の正解率に着目し結果を確認すると、特定の設備に関する正解率が低いことに気づきました。画像を確認すると、設備自体の形状は同じにもかかわらず用途の違いにより分類が異なりました。これらの設備は画像単体で見ると保守担当者でも分類の判断が難しく、画像から分類できないため別のアプローチを試みました。
別のアプローチでは画像という外形上の特徴だけでなく、撮影された時刻に着目し、前後の撮影された画像と共に外観以外の特徴を含む画像分類モデルをAmazon SageMakerを利用し開発をされました。このモデルはAmazon Rekognitionで判定が難しかった設備分類においても98%の分類精度を実現しました。総計の正解率ではAmazon Rekognitionの84%よりも高い95%の正解率を実現しました。

また、画像モデルだけでは分類を実際に利用したいTEMS様の作業に従事される方から直接利用することは難しいことに着目されました。サーバレスやマネージドサービスを活用したアプリケーション開発も行われ現場の方が利用しやすいWebアプリケーション作成も行われAI/MLサービスの利用から現場への展開までの一連のプロセスにおいてAWSを活用いただいていています。
稲森様からは、生成AIを活用した取り組みについてご発表いただきました。TEMS様のメンテナンス業務において、摂津日検査は大量の画像から異常を見つける作業であり、陣原の注意力に異存する作業となっています。業務を効率化するため異常を判定するAIを作ろうとすると、正常/異常の各データを用意しモデルを作り利用します。ただし鉄道設備における異常を記録する場合、鉄道設備の異常発生率が低いため、モデルをつくるに十分な異常データを準備できず少ない異常データでモデルを作成しても精度が上がらないという課題を抱えています。異常判定モデル作成に必要な異常データを、生成系AIを利用して生成し利用することで異常判定モデルの精度を高めるためことを目的に研究されました。

画像生成AIとしてStable DiffusionをAmazon SageMaker上で利用し、異常画像全体を生成するのではなく現存する電気配線の一部分だけをリアリスティックに異常を発生させるため、部分的な書き換えに特化したIn Paintingモデルを利用し構築しました。まず、Stability AI社のファンデーションモデルをそのまま利用し書き換えを試みたもののリアルな異常を安定的に生成することは困難でした。TEMS様が持つ実際の異常画像を加えて学習させ独自モデルを作り、再度検証するとリアルかつ、豊富な異常画像生成を可能としました。

本来の目的である異常画像を判定するためのモデルに必要なデータとして、生成系AIが作り出したデータの有効性を簡易的に検証するため、Amazon Rekognitionカスタムラベルにて検証されました。AIが生成した画像のみを使い学習させたモデルを利用し、実際の異常画像を分類したところ良好な結果を得ることができ、このアプローチは異常が少ない器機に対する異常判定モデルを作る際の手法として有用だと考えられます。研究に際し、Amazon SageMaker Studioをご利用いただきました。Amazon SageMaker Studioノートブックを複数並列で利用いただき効率的な開発も出来たとご評価いただきました。

鉄道インフラは数千キロに及ぶ設備のメンテナンスが日々行われることで安全・安心な輸送が実現されています。人口減少による少子高齢化が叫ばれる昨今、メンテナンス業務の省人化に向けたAIの開発にメンテナンス現場とIT技術者が協力して日々取り組まれていることに感銘を受けました。セッション後の質疑応答で方志様から課題を持っている事業者であるTEMS様が1万件以上ある画像にラベリングを実施されたことが今回成功した要因の1つとご紹介いただきました。利用者とIT技術者の二人三脚が鉄道のメンテナンス業務のこれからを作っていくのではないでしょうか。

3. 「建設デジタルプラットフォーム」によるデジタルデータ活用

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株式会社 竹中工務店 美里様からは“建設デジタルプラットフォームによるデジタルデータ活用”についてお話しいただきました。

まずは建設業界が直面している課題についてのご説明がありました。建設業界での課題として、一般的な日本の各種業界の課題に加えて、建設業ならではの課題があるという点について、数字根拠を含めて説明いただいています。キーワードとしては労働生産性・技能労働者不足・働き方改革。建設業に迫る避けられない課題が浮き彫りになります。

そしてこれらの課題に対して竹中工務店様では「新しいテクノロジーの活用」によって様々な取り組みに着手されています。その中からいくつかの取り組みをご説明いただきました。
最初にご説明いただいたのは登壇タイトルにもなっている建設デジタルプラットフォーム。デジタル活用が遅れていると言われることが多い建設業の中で、徹底した業務のデジタル化・デジタル活用を推進することで、生産性向上や生産性改革を推進するための仕組みとなります。
その他にもロボットの活用による労働環境改善や、新しい価値創造のためのスマートビル・オープンイノベーションといった取組による課題解決への動きをご説明いただいています。

後半では、建設デジタルプラットフォームを中心とした取組についてご紹介いただきました。建設デジタルプラットフォームは2021年11月より運用されており、事業に係る全てのデータを一元的に蓄積、AI等で高度利活用するための基盤と定義されています。データレイクのようなデータ基盤のみではなく、アプリケーション群と統合された基盤である点が特徴的です。アプリケーション群はIoT・BI・AIといったデータの高度利活用を担う部分になっています。
データ基盤についてはAWSのマネージドサービスを中心にした構成を取っていただいている部分も特徴の1つとなります。社内データはもとより社外データ・社外のサービス・前述のアプリケーション群との連携部分を含めて担う構成において、マネージドサービスの活用は非常に有効そうです。次にデータ集約・蓄積の機能についてご説明いただきました。まずは構造化データの集約・蓄積を整備し、活用できる状態にあるとのこと。今後は非構造データにも取り組む予定とのことです。非構造データの集約・蓄積・活用は注目度も高いと思いますので、今後の進化に期待したい部分です。基盤系の説明としては最後にIoT基盤についてのご説明をいただきました。一般的なIoT基盤と違い、都市OSなどの社外データ基盤との連携を視野に入れて、FIWAREを採用されている部分は特徴な部分では無いでしょうか。

そして基盤の次には実際のデータ活用の取り組みについていくつかご紹介いただきました。全社データ活用に向けた取り組みではデータ資産に対してのルールや体制整備に加えて、データ活用の民主化推進のための利用環境整備も実施しているというご説明がありました。データ活用ホームページの設置や、データカタログの整備など、利用者目線での取り組みは全社データ活用の大きな推進力の1つとなりそうです。またAIによるデータ活用についても具体的な例でご紹介いただいています。今回ご紹介いただいた例としては2点。1つ目は建物劣化診断。ファシリティマネジメントの領域で専門家の対応軽減を期待できる仕組みとして、適用範囲の拡大に現在も取り組まれているとのことでした。もう1つは安全情報分析。過去の労働災害データを元に、現在の作業所で予測される災害情報をAIで予測してアラートを出すという仕組み。各作業所での注意喚起に加えて、本社・本部での俯瞰管理用とでも活用されているとのことでした。

※ AIを利用した建物劣化診断に関してはAWS Innovate -Data and Ai/ML Editionのオンデマンド配信にて、「Amazon SageMakerを用いた建設業でのAIアプリ開発」として佐藤氏よりご講演をいただいておりますのでこちらもご覧ください。

そして最後には更なるデータ活用への取り組みについてご紹介をいただきました。こちらも2つあり、1つ目は生成系AIなどの活用。最近話題の大規模言語モデル(LLM)の業務活用について検討・試行を進めておられるとのことです。生成系AIには大きな可能性を考えておられ、社内のデータサイエンティストにより組成されているアナリティクスチームを中心に業務部門を巻き込みながら取組を進めているとのこと。もう1つはデジタルツインの実現に向けての取組をご紹介いただきました。AWS IoT TwinMakerを活用した実際の画面等もご紹介いただいています。製造業では徐々に浸透を始めているデジタルツイン。建設業での実用にも期待がもたれます。

本登壇では幅広い形でデジタルデータ活用・デジタル変革への取組をご紹介いただきました。2024年に向けて大きな転換期を迎える建設業。竹中工務店様は建設デジタルプラットフォームを活用して、各種課題を解決していこうとされております。最先端技術の活用も含めて、今後の竹中工務店様の取組には注目が集まりそうです。

4. ファストデジタルツインでちゃぶ台返し~保全の現場から市場を創る、ものづくりを変える~

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ブラウンリバース株式会社 代表取締役 CEO 金丸様からは、“ファストデジタルツインでちゃぶ台返し〜保全の現場から市場を創る、ものづくりを変える〜”についてお話しいただきました。

プラント業界では、設備の高経年劣化、労働者不足、化石燃料設備統廃合や脱炭素などの市場変化へ対応をしなければならないことが経営課題となっています。また、現場目線で見ると人が少ないにもかかわらず、現場が遠く、広く、管理する設備の点数も多く、現場によっては中に入るたびに健康診断が必要であったり、クリーンルームを通る必要があったりと入るまでの手続きが多い状況になっています。このため、仮想空間上で三次元的に見られる仕組みがあると非常に助かるといった現場の声を聞きますが、今ある業界のツールを現場の設備管理の方が使うには機能が多すぎたり、自分の PC では動かないなどの理由でうまく使えてなかったりします。ブラウンリバース株式会社では Google Map のように直ぐに検索して使えるレベルの手軽さで設備管理の方が使えることを意識して INTEGNANCE VR の開発に取り組んでいます。

INTEGNANCE VR はファストデジタルツインをコンセプトに「いつでも」「どこでも」「誰でも」「すぐに」ご利用頂けるプラントの 3D マップ閲覧サービスで、圧倒的なモデル構築速度が売りの1つです。従来はレーザースキャナーを使ってモデル化しているが、三脚を立てて計測士がきちっと測って、エンジニアがプラントをモデル化していました。INTEGNANCE VR ではモビリティタイプのレーザースキャナーを利用して、400 m の競技場トラックぐらいのプラントであれば 1 日〜 2 日でスキャンし、翌日にはブラウザのビューワー上からお客様がプラントを確認できます。従来と比較して十分の一程度に提供時間を圧縮できます。また、スキャンした点群データや写真データは AWS に保管し、AWS 上のデータをリンクさせて、ビューワーをお客様のポータルのような使い方をしてもらって、図面を通してではなく、ブラウザを通してプラントの設備管理情報や整備記録をみたり、フランジ間の距離を測ったり、写真データにマーキングして情報共有したり、配管をナビゲーションする機能などを提供しています。

最後に産業界をひっくり返す2つのポイントについてもご説明頂きました。1つ目が、現場で見えているものと同じものが仮想空間にあるだけでは目的に到達するまでの時間や手間がかかり過ぎて敬遠される点で、紙ではできないタンクやタワーの断面を見られたり、重機の配置のシミュレーションが簡単にできると、現場の使い勝手が良いという話を頂けました。2つ目が、現場で色々な更新が行われていて、図面に落ちきっていないと、現場から図面に一所懸命に落とそうとして紙に縛られている点で、点群データなり写真データなりから検出した物体の前後関係を抽出して、図面に近い情報を引っ張り出して、機械が読み取れる情報に変換する仕組みができたら、紙から解放される世界ができるというメッセージをお伝えいただきました。

5. 現場業務変革を実現するAWSテクノロジー

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本セッションではAWS山下より現場の変革にAWSテクノロジーがお客様のデジタルトランスフォーメーション(DX)に、どのように貢献できるかについてお話しさせていただきました。

現場業務では、人、環境、セキュリティといった要素が課題として挙げられます。少子高齢化により労働集約的な資材配送業務で労働者の数が足りず、人件費の高騰が予測されます。環境といった側面では、温室効果ガス削減を前提としたオペレーションが求められています。鉄道・運輸や製造業・プラントはサイバー攻撃の対象とされる可能性が高いとされています。セキュリティ対応が義務化されていくという流れも見受けられます。

一方でこれらの課題を解決するためのDX推進活動において、避けられない課題もあります。鉄道・運輸の領域では膨大な器機からの大量データが集められているものの、保存されているだけで活動されていないとされています。製造業でもデータの90%は様々な環境に隔離されて保存されているという状況です。プラント業界でもデータの活用を進めているものの、実ビジネスに直結した活動は全体の30%程度と言われておりPoCの域を出ていません。やはりまだまだデータ活用に課題感があるのではないでしょうか。

DXの推進が進んでいないという訳ではなく、課題がありつつも進んでいるという認識です。DX白書ではアメリカの企業と比べて後れがあるものの20%以上の企業でAIやIoTが利用され、60%以上の会社でDXの成果が出ていると答えられています。日本において各社取り組みが進んでいるという認識です。

DX推進に必要なポイントとして、明確な課題、必要な技術、リスクを管理しながらチャレンジする環境が必要です。クラウドはこの3つの要素に対する解決策となり得ると考えています。スモールスタートで始められ、必要な時に必要なだけ利用できます。これによりアイディアから実装までの時間を短縮できると考えています。

産業分野の業務改善の流れとして、産業器機からの情報を取得するためのゲートウェイ、データの保管場所、データの可視化を行った上で、データを活用するという流れがあります。それぞれの領域においてAWSはサービスをご用意させていただいています。

本イベントでの講演で各社様が取り組まれていたAI/ML領域で、AWSは機械学習の開発者向け環境提供から、アプリケーションにAIを組み込む際に組み込みしやすいAIサービスをご用意しています。生成系AIのモデルは2018年より言語系だけで見ても数が増えており、AWSではコモディティ化が進むと考えています。Amazon Bedrockというサービスを発表しており、複数の企業が提供する基盤モデルから用途に最適なものを選択していただくことで、お客様に利用しやすい環境を提供するというコンセプトで開発しました。セキュリティに関しても様々なサービスをご用意しておりますのでぜひご利用いただければと思います。

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この記事は以下のメンバーで担当しました。

竹川寿也
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
事業開発本部 シニア事業開発マネージャー

藤倉和明
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
技術統括本部 シニアソリューションアーキテクト

矢形拓也
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
技術統括本部 シニアソリューションアーキテクト

伊藤 一成
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
技術統括本部 ソリューションアーキテクト

村田 京介
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
技術統括本部 ソリューションアーキテクト

堀 竜慈
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
技術統括本部 アソシエイトリューションアーキテクト