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【開催報告】AWS Supportの事例Webinarを実施しました

はじめに

2023年10月12日にAWS Support の事例Webinar  を実施しました。AWS サポートは障害対応だけでなく、開発時から運用まで、AWS をより良くご利用いただくための支援をします。例えば、コスト削減、セキュリティ強化、重要なシステムのマイグレーションなどのクラウドの活用に関するお客様の課題をサポートします。最上位プランである「エンタープライズ」に加えて、2023年1月から新たに「エンタープライズ On-Ramp」が登場し、よりリーズナブルな価格で上位サポートがご利用できるようになりました。本セミナーでは「エンタープライズ」と「エンタープライズ On-Ramp」をご利用のお客様にご登壇いただき、導入の背景や効果をご紹介いただきました。

セッション1:RevComm の急速な事業成長を支えるエンタープライズサポート

株式会社RevComm は 2017 年の創業以来、AI 搭載型のクラウド IP 電話 「MiiTel (ミーテル)」を中心に急速な事業成長を遂げ、累計のユーザー数は5万人を超えました。CTO の平村様とLead Infrastructure Engineerの工藤様のお二人から、経営とエンジニアリングの現場という2つの視点で事例をご紹介いただきます。
RevComm は急速な事業拡大を背景に2022年7月にエンタープライズサポートに加入しました。導入の狙いとしては、①開発の円滑化による更なる事業拡大、②新たな顧客層(金融機関や自治体等)からのセキュリティや高可用性へのニーズの対応、③従業員のスキルアップ(導入した頃は150人程度で40% がエンジニア)、④AWS の有効活用による技術競争力の強化、の4点です。
導入効果の1つとして、エンジニア一人ひとりがAWS サポートを使いこなし、技術的課題を早く解決できるようになったことが挙げられます。RevComm はマイクロサービスチーム(ソフトウエアエンジニア)がインフラ構築・運用を担当し、インフラエンジニアは横断的な部分を担当しています。つまり、ソフトウエアエンジニアもAWS に触れる機会があるのですが、エンタープライズサポート導入前は開発段階ではAWS サポートを活用していませんでした。しかし、導入後は開発に関するAWS サポートへの質問が42件まで増加し、その約7割がソフトウエアエンジニアからでした。各エンジニアが技術的課題を自ら解決できるようになり、インフラエンジニアがボトルネック化しないスケーラブルな開発体制に変わったとも言えます。
また、担当テクニカルアカウントマネージャ(TAM )からの情報提供も効率的な事業運営に役立っています。例えば、新機能やサービスの情報やメンテナンスの情報をRevComm の状況に即してTAM から解説やフォローをしてもらえます。インフラ側から各エンジニアに最新の情報を展開することでAWS をうまく使いこなすために一役買っています。

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セッション2:開発チームの自走を支える為の AWS エンタープライズサポート

株式会社リクルートは、2021年4月に複数の事業会社・機能会社を統合する形で誕生しました。多くの開発チームを横断的に支援するCCOE としてご活躍の宮地様からお話いただきます。
エンタープライズサポートへの加入はある障害がきっかけでした。オペレーションミスが障害のトリガーでしたが、そのアカウントがサポート未加入のためAWS サポートに技術的な問い合わせができず、再発防止のための根本原因の特定には至りませんでした。当時は開発チーム毎にサポート加入を決めていました。しかし、責任あるプロダクト提供のためには全アカウントでエンタープライズサポートに入るべきだと考え、CCOE から意見を上げ全社的な意思決定につなげました。これは、リクルートが「ボトムアップ組織」であることをよく表していると思います。
仕様や設計の質問もできるAWS サポートは、開発チームの自走に役立っています。TAM と協力し、AWS サポートの使い方勉強会を社内向けに行った結果、問い合わせ件数が2倍以上に増加しました。TAM との定例会では、実際の問い合わせをレビューし、正確な回答を早く引き出すアドバイスをTAM からもらうことで、問合せの質の向上にも取り組んでいます。また、ナレッジの蓄積も重要です。様々な知見やノウハウが含まれているためAWS サポートからの回答が自動的に社内wiki に蓄積される仕組みをつくり他のエンジニアも参照できるようにすることで、組織的な技術力強化に利用しています。
複雑な課題が発生したときのTAM からの支援もメリットの1つです。以前、複数アカウント間でのデータ連携の問題が発生し、問題個所の特定に時間がかかったことがありました。リクルートの開発チーム、AWS のSA ・TAM が協力し事象を整理したことで、適切なアカウントからAWS サポートに適切な問い合わせができました。結果的にAmazon Aurora の仕様によるものと分かりましたが、インタラクティブな初期対応は、エンタープライズサポートならではだと思います。

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セッション3:カオナビにおける AWS サポートアップグレード

株式会社カオナビ プラットフォーム本部長の髙橋様から「プロダクトの成長を維持する開発組織であり続けるために、柔軟な権限分離と委譲を実現する手法としてマルチアカウント化を進め、エンタープライズ On-Ramp プランを導入するまでのお話」というテーマでお話をしていただきます。
タレントマネジメントシステム「カオナビ」は2012年の事業開始から成長を続け3,000を超える企業に採用されています。事業成長にともなってエンジニア数も増加すると、生産性・開発効率の向上や、品質(セキュリティ・統制)の維持が課題となります。この課題に対応するために、開発チーム体制を「単一チーム」→「チーム開発」→「ハイブリッド」と変化させてきました。また、体制に合わせてシステムを分割するために、権限の分離や移譲、統制の強化も必要ですし、変化に対応するための柔軟性の維持も大切です。そこで1つのAWS アカウントを分割し複数のアカウントで運用する、マルチアカウント運用の整備も進めています。
AWS アカウントの増加に伴いAWS サポートのアップグレードの検討を行いました。ポイントはサポート利用料と管理コストの2つです。AWS アカウント単位での加入となる開発者プラン・ビジネスプランでは、どのアカウントがどのサポートプランなのか管理が必要です。サポートプランが混在した状況でアカウントが増加していくと、認知コスト、コミュニケーションコスト、プラン変更運用など様々な内部的コストが増大します。一方で、エンタープライズOn-Ramp は全アカウント一括で加入できるため、将来的にも管理コストを抑えることができます。サポート利用料もアカウントが多い場合はビジネスプランと大差がないため、エンタープライズOn-Ramp の採用を決めました。今後はビジネスプランでは利用できなかったプールTAMも活用していきたいと思います。

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セッション4:エンタープライズ On-Ramp で AWS の利用体験を高める

スタートアップ企業である株式会社スタディストでは、創業からAWS を使い「Teachme Biz」、「ハンクラ」というサービスを提供してきました。若松様からSRE の視点でエンタープライズOn-Ramp の活用事例をお話しいただきます。
エンタープライズOn-Ramp に加入した理由は3つです。1つ目は、AWSサポートのリードタイムの改善です。ビジネス的には急いでいてもAWS は正常に使えている場合、AWS サポートへの問い合わせでは高い緊急度を選択できません。しかし、エンタープライズOn-Ramp ではプールTAM にサポートケースをエスカレするとTAM がAWS サポートとのコミュニケーションを支援してくれます。請求に関する急ぎの問い合わせをしたときには期待以上に迅速に対応してもらえ助かりました。
2つ目はサポート未加入のAWS アカウントの解消です。エンタープライズOn-Ramp ではすべてのAWS アカウントからSlack を使って問合せAWS サポートに問い合わせできます。問い合わせ毎にスレッドが作成され履歴が残るため、Slack チャネルに参加しているメンバーへの共有も簡単です。マネジメントコンソールからの問い合わせの場合、必要なIAM 権限が必要で、問合せ内容は個々のエンジニアに閉じていましたが、Slack の活用でナレッジの展開にもつながっています。
3つ目はサポート料金です。最上位のエンタープライズプランは予算オーバーでしたが、エンタープライズOn-Ramp ならスタートアップの当社でも手の届く範囲だったため採用を決めました。エンタープライズ On-Ramp に加⼊したことで、AWS サポートの利⽤体験が大幅に向上しました。もう、ビジネスプランには戻りたくないと思っています。

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さいごに

本Webinar ではゲストスピーカーの皆様から具体的なエピソードを交えてエンタープライズサポートとエンタープライズOn-Ramp の活用方法を共有いただきました。ご利用を検討中のお客様が「自社にとっての活用方法」をイメージしていただく一助になると幸いです。ミッションクリティカルなシステムの運用にエンタープライズサポートやエンタープライズOn-Ramp の活用をご検討のお客様はAWS の営業担当までお問い合わせください。
本ブログは、技術支援本部 シニア事業開発マネージャー 庄司が担当しました。