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クラウドを活用するプロジェクトを進める際の考慮点(第2回:柔軟なベースライン管理)

第2回ではプロジェクトを成功させる3大要素である、スコープ、スケジュール、コストのベースラインに焦点を当てます。プロジェクトの成功に向けて成果物を明確に定義し、範囲を制御するスコープ管理、プロジェクトを所定の時期に完了するようマネジメントするスケジュール管理、プロジェクト予算内で運営するためのコスト管理は不可欠な管理領域です。これらの管理領域は密接に連携し、バランスを保ちながらプロジェクトを計画、実行し、監視する必要があります。また、開発アプローチについては、プロジェクトの要求事項や環境に応じて適切なアプローチ手法を選択する必要があります。本ブログでは、伝統的なウォーターフォール開発だけでなく、クラウドの特性を最大限に活用するために、アジャイル開発やハイブリッド開発などの柔軟な開発アプローチも考慮し、お客様へクラウド活用をご支援する中で得られた具体的な考慮点をご紹介します。

多様なサービスの活用や柔軟なスケーリングができるメリットを活かしたスコープ管理

スコープ管理はプロジェクトの範囲を明確に定義し、変更を管理する重要な要素です。クラウド導入プロジェクトにおけるスコープ管理では、以下の内容について考慮することが重要です。

  • 柔軟なスコープ変更への対応:クラウドの利点である多種多様なサービスを低コスト、短時間で利用できる特徴に注目し、ビジネスニーズや市場変化に適応するための柔軟なスコープ変更を可能にする対応策が求められます。これには、適切なスコープ変更プロセスの確立が必要であり、新しいサービスの追加や既存のサービスの削減などを戦略的かつ迅速に実現できるようになります。柔軟なスコープ変更は、競争力維持・向上やビジネスの成功に寄与し、クラウド導入プロジェクトの成果を最大限に活用する手段となります。
  • マネージドサービスの活用マネージドサービスを利用することで、スプリントごとにスコープ調整が行われる際などに、リソースの設定や運用、スケーリングにおいて柔軟性と効率性を提供することが可能になります。マネージドサービスは、セキュリティやパフォーマンスの向上を支援し、リソースの最適な利用を確保します。スコープの変更に伴う新たな要件に対応し、リソースを迅速かつ適切に調整する際に、貴重な時間とリソースを節約できます。これにより、システムやプロダクトの柔軟性を高め、効率性を向上させることが可能となります。

アジャイル開発およびPoCの早期実施を活用したスケジュール管理

スケジュール管理は、プロジェクトの進捗を計画し、タスクや活動を時間的に配置する重要な要素です。クラウド導入プロジェクトにおけるスケジュール管理では、以下の内容について考慮することが重要です。

  • アジャイル開発の活用:クラウドは短期間で機能を構築できる特性を持ちます。開発手法としてウォーターフォール開発だけで進めるのではなく、アジャイル開発やハイブリッド開発を採用することで、スケジュールを柔軟に調整でき、ビジネス要件や市場の変化に素早く対応できます。アジャイルのイテレーションと迅速な反応性により、プロジェクトの進行状況を継続的に改善し、新たな要求事項を迎え入れる柔軟性が生まれます。これにより、プロジェクトの成功確率が向上し、リソースの最適活用とスケジュールの合理的な達成が実現できます。アジャイル開発は、クラウド導入プロジェクトの効果的なスケジュール管理はもちろんのこと、柔軟なベースライン管理全般に貢献します。
  • PoC(Proof of Concept)の早期実施:クラウドの特性を活用し、実際の環境でのPoCは机上検証よりも有益です。早い段階で実環境を用いたPoCを行うことで、システムやアプリケーションの適合性やスケジュールの実現性をより早く、確実に確認できます。これにより、問題や課題を早期に発見し、修正できるため、プロジェクトの進行におけるリスクを最小化できます。PoCの早期実施は、クラウド導入プロジェクトの成功に向けたスケジュール管理戦略の重要な要素であり、計画の実現可能性を向上させます。

クラウドの特徴を活かす柔軟なコスト管理

コスト管理はプロジェクトにかかる費用が予算内に収まるよう効果的に管理する重要な要素です。クラウド導入プロジェクトにおけるコスト管理では、以下の内容について考慮することが重要です。

  • リソース配置の最適化と過剰なリソース割当の回避:クラウドは必要なリソースを必要なタイミングで提供できる特性を備えています。このため、過剰なリソース割当を防ぐために、必要な時にのみリソースを起動し、利用しない時はリソースを停止するなど、クラウドの柔軟性を最大限に活用したコスト管理が肝要です。これにより、不必要なコストを削減し、プロジェクトのコスト効率を向上させることができます。また、リソースのモニタリングと適切なスケジュールの設定により、コストを最小限に抑えながら、プロジェクトの成功を支えることができます。
  • コストの柔軟な管理と関係者の合意:クラウドを活用したプロジェクトでは、開発進捗、試行検証、仕様変更等によるコストの変動が予想されます。このため、厳密な予算遵守よりも柔軟なコスト管理が必要です。状況に応じて予算を調整し、コスト最適化に向けて、事前に関係者との合意を得ることが重要です。合意を得ることで、プロジェクトの進行への影響を回避するために、予算変更やリソースの調整がスムーズに実施できます。この柔軟なアプローチは、クラウド導入プロジェクトにおいて予測困難な状況に、迅速に対処するための重要な手段であり、関係者の協力と合意を得ることで、コスト管理の効果を高めます。

まとめ

クラウド導入プロジェクトにおいて、クラウド活用の真価である価値創造により集中するために、柔軟なスコープ変更に対応可能なコスト管理、アジャイル開発やPoC等を積極的に活用したスケジュール管理、リソースの最適配置による柔軟なコスト管理を含んだ、柔軟なベースライン管理が重要です。これらの要素は、プロジェクトの効率化と成功に焦点を当て、価値を最大化します。本ブログで整理した考慮点を参考に、クラウド導入プロジェクトの成功につなげていただければ幸いです。

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