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【リリース編】初のアジャイルで挑む内製型プロダクト開発成長(グロース)を持続可能にするために必要な現場の変革とは

最初はハードとも思えたスプリントも徐々に安定性を増し、着手から3ヵ月が経過した2021年7月、お客様MyページはMVPリリースを迎える。
リリース時のエピソードから各メンバーの今現在、そしてランドネットが考えるアジャイルの今後の展望までを聞いた。

定めたMVPをもとに3ヶ月でリリースしたマイページのログイン画面

※この記事は2021年12月に執筆されました。当社は2023年4月付で、EMCカンパニー、 メンバーズキャリアカンパニー、 メンバーズエッジカンパニー、ビジネスプラットフォームカンパニーの4カンパニーを統合し本部制を導入しています。

3. リリース~今後の展望

リスクは最小化され、すべては素早く継続的な改善に置き換えられていく

板原 7月にまずはMVPリリースを迎えましたが、アジャイル開発でのリリースを初めて体験してみて、実際にいかがでしたか?

渡邉 スクラムイベントで毎週優先順位を決めていたので、とにかく判断しやすかったです。要件も追加されて予定よりは少し延びたのですが、ウォーターフォールでやっていたらもっと時間がかかっていたと思います。ウォーターフォールでは、何をどこまでリリースしないといけないかが先に決められてしまっているので、開発においても優先順位をそこまで厳密に意識はしていませんでした。
アジャイル開発では、MVPへのコミットにフォーカスして毎週やるべきことを決めているので、まずマストな機能に全然手をつけられてないという事態に陥ることがなく、「じゃあこの機能は削ってリリースしよう」という判断を適正に下すことができました。

川上 リリースした時点では、ほかに盛り込みたかった機能もまだたくさんありました。でも、「ここの使い勝手が悪い」とか「ここの使い方が分からない」というユーザーからの実際の声というのは、リリースして初めて届くわけですよね。
まずは最低限のバリューで使っていただいて、その声をもとにまた優先度を組み替えて次に必要な機能にフォーカスしていく。MVPリリースの価値や良さを実感していますね。

板原 ユーザーからは早速フィードバックが来ていますか?

清水 事業部サイドを経由してのフィードバックにはなりますが、ログインしてみたけどここの使い方で分からない部分があった、みたいな声は何件か来ています。ではその部分はチュートリアル機能で対応していこう、といった具合で次に優先するところにフォーカスして方向性を決め、素早く継続して作り続けられる体制が出来ています。
無駄がないですね。声がない状態で最初に全部作りこんでしまうと「頑張ったけどそれ要らなかったじゃん」となりますが、それが全くないので、良い意味でのスモールスタートが出来たと思ってます。

スプリントの終了時にKPTでふりかえり(レトロスペクティブ)を実施。改善アクションは必要に応じてプロダクトバックログにも追加

板原 チュートリアルのようなものは欲しいよね、という話はチームの中でも挙がっていましたよね。でもまずはフィードバック受けてからの採用にしよう、ということで、初回のリリースにおいては優先度を下げたかと思います。
リリースを経て、どの部分でのチュートリアルが必要かまで改めて検証することが出来た、ということですね。

清水 そうですね。SNS連携についても同様でした。リリースしてみて、実際にはGoogleを使っている方が多いという傾向が見えてきて、Yahoo!連携に加えてGoogleも追加していこうか、という風に利用状況を見てから次に必要な機能を入れていく判断ができています。
判断に無駄がないだけに、開発効率にも良い影響が出ているとも感じています。

川上 ログインのところは顕著でしたね。SNS連携も、今までならとりあえず、GoogleとかFacebookとか、とにかく全部盛りでないとリリースできません、という感じでしたが、マストじゃないものは後に回して進めていくことが出来たので、そこは良かったです。

板原 ウォーターフォールだと、リリースしてみたらチュートリルに無駄が多かったとか、この外部連携は効果が薄かった、という可能性もあります。それを確かめながらできるのは非常にいいかなと思います。
またアジャイルでは早くリリースすることが出来ますよね。短期間でお客様のフィードバックを取り入れて、早ければ毎週リリースできて、グロースハック的な感じでどんどん成長できるところがいいですよね。

渡邉 序盤の方は未完成でスプリントが終わってしまうことも少なくなかったですよね。ただそこから、どうやったら改善できるかというのをチームで考えることができたのがよかったわけですが、導入時の準備段階で結束力を高められていた、お互い言いたいことを言い合える関係が構築できていた、というのが大きかったと思っています。
どういうところで効率が落ちているのかとか、完成の定義が厳しすぎないかとか、幅広く議論しながら作っていけましたし、立ち上げから1ヶ月、2ヶ月経過していくごとに、関係がより安定をしてきていたなというのは私自身も実感としてありました。

安食 小さくリリースしている分、バグが出たときの対応が少なくて済むのも、アジャイルの大きな利点だと感じました。リリース当日も一部不具合はあったのですが、リリースが小さい分、他への影響も少ないためすぐに対応ができました。
そもそもバグに対応しなければならない量も「一気にドカン」より圧倒的に少ないので、小さくリリースすることは価値のあることだと感じました。

板原 従来型のやり方だと、リリース時にリグレッションテストに時間がかかったりしていましたよね。先ほども話に出たCI/CD環境がしっかりしていたとか、E2Eを拡充してきたとかで、リリースそのものも楽に感じられたのではないでしょうか?

清水 楽というのもありますが、安心感が違いますよね。どんなにテストしたと言っても漏れは発生するものですが、テスト自動化によりある程度保証されているというのはまず安心ですし、実際にバグも少なかったです。
E2Eテストも現在段階的に拡充しているところなので、今後さらに安心感は増していくと思います。そういった容易さや安心感と比例して、価値を届けるまでのスパンも短くなっていくし、必要な機能を必要なタイミングで追加していくスタイルが今後さらに整ってくるので、すでに先が楽しみですね。これからも大型の開発・リリースが控えていますが、上手くいく予感が持てています。

板原 ある程度自動化されていないと、大きいボリュームをリリースするときは不安が尽きないですよね。全部見直して、テストも他との影響を考えながら苦労も強いられる。CIはその辺りがすべて明快になりますよね。影響があれば、そもそもテストが通らないとか(笑)

清水 通らない仕組みになってますよね(笑)だからこそ、テストにおいては認証周りなどの特に重要で沢山手を動かさなければならない部分に重点をおける。そういう判断が出来るところも大きいですよね。

追求するのは「成長を止めない」意識と「アジャイルな文化」の拡大

板原 リリース後、スクラムマスターとしての役割を渡邉にバトンタッチしました。今現在は主にどんなことに取り組んでいますか?

渡邉 チームの状態はすでに良かったので、そこからスクラムマスターとして何をすべきかを模索していくのが逆に大変でしたが(笑)、まずはバックログが徐々にタスクリスト化していきそうな傾向だったので、軌道修正して、改めて価値を持つ単位で作り直しました。
本来はPOの役割ではあるのですが、POだけが把握していればよいことではないので、バックログのリビルドについては私からチーム全体に対してプレゼンテーションして、理解を得た上で遂行できたのは良かったと思っています。
あとはレトロスペクティブを通じて、とにかく「成長を止めない」ことに強く意識を置いてファシリテーションを行っています。必ずTRYを出す、少しでも成長と改善を重ねる、それがスクラムの良いところだと思っています。証拠に、TRYがなかったスプリントは今まで1回もありません。

一同 (拍手!)

板原 私はずっと最前線でプログラムを書いていたので、スクラムマスターになって書きたい衝動を抑えるのに苦労をしたんですが、渡邉さんはどうですか?

渡邉 今でも抑えられない場面はありますね(笑)みんなが忙しそうだったら「よし!俺が!」ってなりますが、そういう衝動と戦いながら、あくまで開発チームとPOの支援というところに出来るだけフォーカスしようとはしてます。

板原 清水さんもPOの役割を川上さんから引き継ぎましたよね。心境の変化はありましたか?やはり書きたい衝動を抑えながらだと思うのですが(笑)

清水 POを引き継いだといっても、最終決定したり、要職に話を通したり、というところは川上さんの力を借りながらではあります(笑)POになって思ったのは改めて「大変だな」ということです。
決めるというのは大変ですね。責任もあるし、本当に正しいのか、ということが分からないので。本当はすべて自分で決めなければならないのですが、迷ったときは川上さんや、デザイナーさんや、ここにいる渡邉さんにもご意見をいただくなど、みんなで決めるという形で何とかやらせてもらってますね。

板原 自分だけで正解を判断できないなかで、POとして方向性やビジョンを示さないと開発メンバーが何を作っていいか分からない。方向性が合わなくなったりもする。難しいですよね。

清水 私も元々は開発者だったので、POとして方向性を決めるのにどうしても開発者視点が入ってしまうことに苦労をしています。開発チームにお任せするにあたって、これは大変だからやめておこう、とか、同じエンジニアという気質からすると申し訳ないという気持ちになることもありますし、急な方向転換など躊躇してしまう場面もあって、その辺りはまだまだ未熟さを感じています。なおさらチームでちゃんと話し合ってビジョンを示せるような存在になりたいなと思っています。

板原 清水さんへPOを引き継いでみて、第三者視点から見ていかがですか?

川上 業務の全体像という点ではまだまだ伝え切れていない部分もあるので、判断は大変だろうなと思います。ですが、清水も言っていたとおり、チーム内で相談できる環境がすでに出来上がっているのと、渡邉さんたちをはじめ皆さん積極的に意見を出してくれるので、チームが何とかしてくれるという安心感がありますね。
あとは清水くんや安食くんにお願いしたことで私自身に時間が出来たので、しれっと開発をやってみたり、ということも(笑)そこは書かなくていいですが(笑)

板原 でも大切ですよね、エンジニアとしてスキルを磨き続けていくというのは。

清水 書いていないと感じないこともたくさんありますからね(笑)

板原 安食さんはなんとスクラムマスターの認定も取られたと伺いました。スクラムマスターとしての道をまさにいま歩もうとされているのですか?

安食 そうですね(笑)アジャイルに対するイメージは当初から比べてかなり鮮明になりましたし、アジャイル開発を進める上でのスクラムでの手法には今回とても感銘を受けました。
「価値を素早く提供していく」というアジャイルのコンセプトにとても惹かれたのですが、その良さが社内全体にはまだ浸透していないし、全社でアジャイルの考えをもとに開発を推進できる域にはまだ達していないと思っているので、今後広めていきたいなと強く思っています。

川上 もう次世代が来ているから、私と清水は隠居も見えてきましたね(笑)

安食 まだまだです。人生百年時代ですから(笑)今私が入っているチームはスクラムで開発をやっています。全体としては複数チームあるのですが、全体でレトロスペクティブをやるなど、部分的に取り入れることから始めています。

川上 今朝も安食から、SAFe Scrum Master(SSM)認定取りましょうよ、と持ちかけられて、生きているうちにはと答えましたが、安食のスクラムに対する意欲はすごいですね(笑)

板原 成功体験を持った小さなチームが複数出来てくると、どんどんスケールしやすくなると思います。是非今回の「お客様Myページ」を足がかりとしていただきたいです。

川上 今回の開発では社内のローテーションにもチャレンジできました。安食に代わって基幹チームから2名若手を呼んで、チームの中で育てることも出来ました。今後もメンバーズエッジさんにお力を借りながら、このサイクルもちゃんと回して広めたいですね。

アジャイル開発からアジャイル経営へ
先が見通せない未来で通用する唯一の方法は、良い価値を素早く届けること
その目的意識がチーム、組織の最大の原動力になる

板原 最後に、今後の展望についてお聞かせください。

川上 システム部門は、清水・安食を筆頭にすべてアジャイル開発に変えていきたいと思っています。

清水 他の基幹システムのチームにも徐々にですが、安食のもとでアジャイルの考え方が浸透してきていると思います。レトロスペクティブなどもやってもらっていますし、渡邉さんも入っていただいたりしています。新しく出来る賃貸チームもアジャイルで開発を進めていく想定はしています。

板原 よかったです。早くリリースできることで、色んなことが早くなっていきますよね。全部出来上がってだと、半年後でないと動かない、とか。

川上 そうですね。従来型ですと、リリースまでに状況が大きく変わっている、などは容易に想像がついてしまいます。

板原 コロナなど、これまで想定し得なかった時代がまたやってくると、色々な事象が急激に変わってしまいますからね。これまでの考え方や常識が根底から覆されるというか。アジャイルは、先が見通せない未来にあわせて適用できるのがいいですね。

清水 チームで価値観を共有し、良い価値を届けようという目的意識がチームの動力になる。それがアジャイルの優れたところだと思っています。
当社の開発チーム全体にそういう考えを広げていきたいですね。ただ機能を作るチーム、ではなくて、良い価値を届けようと思うからこそ開発もするし、仕事もするし、意見も言い合えるようなチーム。
アジャイルを広めて、みんなでいいシステムを作って、最終的には我々のような開発部門がビジネスに確実にインパクトをもたらせるようになることが、私自身の目標です。

板原 最近では社長もアジャイル開発に興味がおありとお伺いしました。

川上 プロダクトオーナーの資格を取りたいということで、将来的に毎週のスクラムイベントにも参加してもらおうかなと思っているところです。企業文化とも合っているし、アジャイルのエッセンスを経営にも取り入れていきたい思いがあるようです

板原 アジャイルは開発現場だけでなく組織にも浸透させて、企業文化として形成させていくことに最大の価値があると思っています。
スクラムの考え方も、ソフトウエア開発だけではなく、ビジネスの色んなところにも適用できる考え方です。今回の取り組みが今後のアジャイル経営の一助になるのであれば、私たちも最初にご支援をしたということで非常に誇らしいです。私もまた皆様と一緒にやりたいです。

川上・清水 是非。すぐにでも!

全3回に渡りお送りしてきたアジャイル開発導入インタビューですが、似たようなお悩みをお持ちの皆様はもちろん「アジャイル開発のコーチングから一緒に開発してほしい」などアジャイル開発にまつわるご相談はお気軽にお問い合わせください。

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