DEI Keynote: Innovation with intention(Google Cloud Next '24セッションレポート)

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G-gen の杉村です。本記事は Google Cloud Next '24 in Las Vegas の2日目に行われたセッション「DEI Keynote: Innovation with intention」のレポートです。

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DEI(Diversity, Equity & Inclusion)

現地で Google Cloud Next '24 に参加した筆者の印象に残ったセッションとして、DEI Keynote: Innovation with intention をご紹介させてください。このセッションは、クラウド技術に関するものではありません。

DEI とは Diversity, Equity & Inclusion(多様性、平等性、包括性)のことであり、人種や文化、性自認、社会的出自、身体障害などに関連して、伝統的に過小評価されてきたグループに、公正で完全な社会参加を促す取り組みのことです。

同セッションは、3人の Googler が登壇し、対談形式で行われました。Chief Diversity Officer である Melonie Parker、Senior Director of Products for All である Eve Andersson、そして Research Scientist である Dimitri Kanevsky です。

Dimitri が話し始めた瞬間、筆者ははじめ、彼が英語ではない、知らない言語を話しているものと思いました。しかし実際には、彼が話しているのは英語だったのです。Dimitri は幼少期に聴力を失っており、正しい発音を知らず、いわゆる「ろう者」です。彼が発話すると、手元のスマートフォンの Live Transcribe(リアルタイムの文字起こし)アプリケーションによりそれが読み取られ、彼の発音に最適化された機械学習モデルによって、正確に文字起こしされます。

セッションでは、彼のもつスマホのアプリの画面が大型スクリーンに転写されており、参加者はそのスクリーンに表示された文字起こしを読むことによって、彼の意図を理解することができました。彼自身が他の登壇者の話を聞くときも、同様に Live Transcribe で聞き取っています。

Dimitri 自身は、自らの Identity を表現するときに、ろう者であるとは言わないといいます。彼のプロフィールを見ると、数学者としての、また約300の米国特許を持つ突出した研究者・技術者としての経歴がわかるのみです。そして彼自身、Live Transcribe の開発に関わっています。

多様性は強みである

文字起こしアプリケーションである「Live Transcribe」の開発や、どんな肌の色の人にも適切なフォトレタッチが可能な Pixel の機能「Real Tone」 は、多様性があったからこそ生み出されたものであることが語られました。

たとえ役に立つアプリケーションが開発されても、たとえばそれが、高い性能を持つ高価なスマートフォンでしか使えなかったら、すべての人に行き渡りません。そのアプリが広帯域なネットワークを必要とするならば、インフラの整った一部の地域でしか使うことはできません。チームに様々なバックグラウンドを持つ人が参加することは、このような課題に気がつくことに繋がります。

このように、イノベーションを生み出すにあたって、多様性は強みである点が強調されました。

組織と多様性

ここからは、セッションで語られた内容ではなく、筆者の私見であることにご留意ください。

Google は多様性を組織の「強み」として捉えています。Google が生まれた米国は、その成り立ちから、伝統的に多様性を意識せざるを得なかった経緯があるはずです。その米国が現在、世界中で最も強い国家の1つであることには、重要な示唆があります。

多様性について考えるとき、筆者は以下の動画を思い出します。

www.youtube.com

2017年、米国の空軍士官学校予備校で、メッセージボードに人種差別的な言葉が書かれるという事件がありました。上記の動画は、これに対し、同校の責任者である Jay Silveria 中将が、士官候補生やスタッフの前で語った演説です。同氏も、多様性を「力(Power)」と表現しています。

統一された意志と絶対的な上意下達が必要な組織である軍隊で多様性が「力」とされることと、Google が DEI を重視していること、また同社が採用時に Culture-fit ではなく Culture add を重視すると言われていることは、無関係ではないと感じさせられました。

多様性は倫理(道徳)の問題と捉えられがちですが、そうではなく、強さやイノベーションに繋がるものであると我々全員が合理的に理解したとき、組織や社会は次のステージへ行けるのかもしれません。

杉村 勇馬 (記事一覧)

執行役員 CTO / クラウドソリューション部 部長

元警察官という経歴を持つ現 IT エンジニア。クラウド管理・運用やネットワークに知見。AWS 12資格、Google Cloud認定資格11資格。X (旧 Twitter) では Google Cloud や AWS のアップデート情報をつぶやいています。