Amazon Web Services ブログ

AWS上のライブ映像ワークフローを検出、可視化、監視する

はじめに

クラウド上でライブ動画の放送、ストリーミング、配信を行う場合、ワークフローの構築、テスト、セキュリティ対策に時間を費やしてきたことでしょう。Amazon Web Services (AWS) はこれらの作業を簡単にし、視聴者に高品質な体験を提供できます。しかし、ワークフローの継続的なモニタリングにどれだけ時間を割いてきましたか?

モニタリングに取り組むと、各 AWS サービスに固有のアラートやダッシュボードがあることがわかります。しかし、メディアワークフロー全体のアラーム、メトリクス、リソースアラート、ヘルスを一覧で確認できるものはありません。リソース間の関係が明確でないと、問題が発生したときに時間のかかる手作業での切り分けや対処が必要になります。また、モニタリングに最適なメトリクスがわからず、複数のワークフローにアラームと通知ルールを展開・維持する事が必要になることもあります。

Workflow Monitor でライブ映像を検出し、可視化する

これらの問題を解決するために、AWSはAWS Media ServicesAmazon CloudFront をモニタリングできる Workflow Monitor を発表しました。この新機能はライブ映像のワークフローを検出、可視化、監視をするために設計されています。Workflow Monitor  はメディアワークロードのベストプラクティスモニタリングを展開・維持でき、 AWS マネジメントコンソールAWS Elemental MediaLive APIAWS CDK からアクセスできます。

Workflow Monitor が検出可能なサービス。

わずか数クリックで、Workflow Monitor はメディアワークフローに関連するリソースを検出して可視化します。検出は対応するサービスから開始でき、リソースを選択すると Workflow Monitor はエンドツーエンドのグラフィカルなシグナルマップを作成します。シグナルマップにはワークフロー内のリソースを AWS Elemental MediaConnectAWS Elemental MediaLiveAWS Elemental MediaPackage にわたって Amazon Simple Storage Service ( Amazon S3 )バケットと Amazon CloudFront ディストリビューションと共に表します。

シグナルマップ上では、一目で利用中のリソースとそれぞれのステータスを確認できます。このステータスは1秒ごとに更新されます。また、複数のコンソール画面を行き来することなく、各リソースがどのように接続されているかを確認できます。MediaLive チャネルや MediaPackage エンドポイントなどでは、利用可能な場合にライブ動画のサムネイル画像が動的に更新されます。

ライブ映像配信を示すシグナルマップ(画像をクリックすると拡大します)。

業界設計のベストプラクティスに基づいたモニタリングとアラートの適用とカスタマイズ

シグナルマップを作成したら、 Workflow Monitor を使ってアラームと通知テンプレートを作成し、問題発生時にアラートを受け取れるようにします。モニタリングとアラートには Amzon CloudWatch アラームと Amazon EventBridge ルールを使用しますが、これらのリソース設定は Workflow Monitor コンソールで管理され、 Amazon CloudFormation を通じて展開されます。つまり、映像関連のエンジニアリングチームがこれらのサービスに精通する必要はありません。同様のワークロードのモニタリングを繰り返し行えるよう、 Workflow Monitor ではテンプレートとテンプレートグループの概念を採用しています。テンプレートは CloudWatch アラームまたは EventBridge ルールの設定を記述し、グループ化された階層オブジェクトを形成し、1つ以上のシグナルマップに関連付けられます。

テンプレートグループは、運用モデルに合わせて柔軟に分割できます。例えば、アラームテンプレートを重大度別、ワークフローの重要度に基づいて、または地域差に基づいてグループ化することができます。さらに、 Workflow Monitor では業界の専門家チームが作成したベストプラクティスの推奨事項をインポートして独自のアラームテンプレートグループに追加できます。インポート後はワークフローの要件に合わせてテンプレートを変更できます。例えば、映像フレームレートを 60fps から 50fps に変更したり、特定の許容範囲に基づいて継続時間のしきい値を調整したりすることができます。

1 つ以上のテンプレートグループをシグナルマップに関連付けると、 Workflow Monitor から素早くデプロイすることができます。バックグラウンドでは、CloudFormation Stack が作成され S3 に保存された後、展開されます。この Stack は後から参照したり、別の CloudFormation デプロイの一部として活用したりできます。展開完了後、ワークロードがモニタリング対象となります。

映像ワークフロー全体のステータスを一覧表示

Workflow Monitor の概要ページでは、すべてのシグナルマップのヘルスステータスを一目で確認できます。リストはさまざまな条件でフィルタリング可能です。例えば、ステータスでフィルタリングすれば、アラーム状態のシグナルマップのみを表示する「ペナルティボックス」を作成できます。この例外ベースのモニタリングは、シグナルマップが多数ある場合に、オペレーターの対応が必要なものだけを表示したいときに便利です。

概要ページには、各シグナルマップのステータスが表示されます(画像をクリックすると拡大します)。

モニタリング中のシグナルマップをクリックすると、アクティブなアラームがあるリソースを確認できます(リソースの背景が赤で示されます)。リソースを選択すると、そのリソースに適用されているアラームのみがシグナルマップのアラームリストに表示されるようフィルタリングできます。これにより、特定のワークフローで問題が発生している場所を素早く特定し、視覚的にデバッグできます。次に、組み込みリンクを使ってリソース自体、CloudWatch、CloudWatch Insights にすばやくアクセスし、ログをクエリできます。以前は、問題の切り分けと適切なコンソール画面への移動には、ワークフローに関する専門知識が必要でした。

モニタリングの一貫性を保つ

Workflow Monitor は、ベストプラクティスモニタリングの作成と展開だけでなく、運用の一貫性の維持にも役立ちます。アラームテンプレートグループがシグナルマップに関連付けられると、アラームテンプレートはいつでも更新でき、新しい設定がシグナルマップに反映されます。例えば、アラームをノイズから守るためにしきい値を変更する必要がある場合、アラームが使用されているすべてのリソースでそのしきい値を個別に変更する代わりに、アラームテンプレートで 1 回変更してからモニタリングを再展開します。また、テンプレートグループによって、すべてのワークロードで効率的に変更を段階的に行い、適切なタイミングでデプロイすることができます。例えば、映像エンコーディングを AVC から HEVC に更新する際、特定のアラームのビットレート設定を調整する必要がある場合です。その際、個々のアラームを更新する代わりに、アラームテンプレート1か所ですべてを更新でき、準備ができたら展開します。

Workflow Monitor ユーザーガイドには、IAM ロールの提案も記載されています。アクセス許可境界により、オペレーターのために Workflow Monitor を安全に使用できるロールを作成できます。さらに、経験豊富なエンジニアがモニタリングを作成、更新、展開できるロールの提案もあります。これら 2 つのロールにより、 Workflow Monitor を安全に使用するための出発点が提供されます。

結論

AWS Media Services と Amazon CloudFront の Workflow Monitor は、ライブ動画のストリーム、放送、配信に関連するリソースを検出、可視化、監視します。リソース間の関係をグラフィカルなシグナルマップで表示するため、使用中のリソースとそれらの接続関係を確認できます。ベストプラクティスのモニタリングと通知テンプレートから始めるか、独自のテンプレートを作成し、問題発生時にアラートを受け取るよう映像をモニタリングすることができます。

詳しくは、ユーザーガイドをお読みください。開始するには Workflow Monitor コンソールにアクセス下さい。

参考リンク

AWS Media Services
AWS Media & Entertainment Blog (日本語)
AWS Media & Entertainment Blog (英語)

AWS のメディアチームの問い合わせ先:awsmedia@amazon.co.jp
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翻訳は SA 金目、SA 石井が担当しました。原文はこちらをご覧ください。