社内AIアイデアソンにて「LLMを用いた損害査定の効率化」で優勝しました
はじめに
こんにちは。Finatextグループ保険事業でデータサイエンティスト / データエンジニアを担当している高橋です。
先日、Finatextグループで行われたAIアイデアソンに出場した件について書きます。アイデアソンの概要については次の記事でまとめていますので、よろしければそちらをご覧ください。
さっそくどのように準備を行い発表を迎えたか、時系列でお話ししたいと思います。
アイデアの選定
アイデアソンにはスマートプラス少額短期保険の代表である小山とチームを組んで出場しました。
チームとして最初の活動はアイデア出しです。まず大まかな方向性として、最近研究が進んでいる保険×LLMの範囲で考えることにしました。幸いなことに保険はデータ・AIと親和性が高く、その関連分野であるLLMのアイデアは比較的考えやすかったです。
アイデア出しの後はどのアイデアを発表題材にするか検討します。下記のアイデアソン評価観点を参考に決めました。
1. 効率化対象の業務が生成AIに適した課題か
2. システム化の実現可能性
3. 効率化効果の大きさ
AIアイデアソンという名目から、「効率化対象の業務が生成AIに適した課題か」を特に意識しました。そのために、まず LLMと一般的な機械学習モデルとの違いを整理し、なぜLLMでないといけないのかを突き詰めました。
最終的に、RAGやマルチモーダルなどをLLMの特徴と考え、その特徴を活かしやすい「損害査定の効率化」を発表題材に採用しました。
損害査定とは保険会社が契約者から保険金請求を受けて行う一連の処理のことです。これまでの損害査定には資料の継続的蓄積・共有や、高度な判断能力の要求など様々な課題がありました。しかし、LLMを導入することでこれらの課題を解決できると私達は考えました。

デモ実装
発表のために実際に動いているデモを用意しました。実装には、アマゾン ウェブ サービス(AWS)のBedrockを採用し、LLMはマルチモーダル対応のClaude 3を使いました。

RAGはKendraとOpenSearchのどちらを使用するか迷いましたが、扱うデータにPDFやWordなどの非構造データが多かったためそれらの扱いに優れるKendraを採用しました。
結果的にPDFのS3保存などの一部作業だけで容易にRAGを構築できました。
発表
損害査定という馴染みの薄い業務の効率化をいかに短時間で分かりやすく伝えるか苦心しました。最終的に、背景や課題の説明を必要最低限にして、デモや総括で有用性を強く強調する構成にしました。


最優秀賞を受賞
後日結果発表が行われ、私たちのチームは最優秀賞&AWS優秀賞を受賞できました!(最優秀賞が最高賞なので、つまり優勝です。)これは、データサイエンティストとして、保険×LLMの可能性を示せた結果であるとも思い非常に満足しています。

また、このような素晴らしいアイデアソン開催に関わっていただいた運営の方々、AWS賞のご提供など各方面でご協力くださったAWSの方々にお礼申し上げたいです。
今後について
LLMを用いた損害査定の効率化について、保険商品の種類によっては、複雑なマルチモーダルの入力を処理する難易度の高いケースも考えられます(例えば自動車保険の損害査定で車の画像から損傷度合いを判定するなど)。
そのような場合でもプロダクトとして安定した品質を提供するためには、まだまだ実験や改良を重ねる必要があると考えています。今後も研究を続けていきたいと思います。
最後に
Finatextではデータエンジニアなどデータ系の職種で募集を行っています。ぜひご応募ください!
カジュアル面談も募集しています。保険×データに興味ある方いましたらぜひお話ししましょう。