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Microsoft Build 2024 現地参加してきました!

こんにちは。
すっかり日が経ってしまいましたが、米国シアトルで開催されたMicrosoft Build 2024に現地参加をしたのでリポート記事になります。
電通総研からは、石井(製造ソリューション事業部)、尾崎(金融ソリューション事業部)、山田(Xイノベーション本部)、武者(電通総研USA支社)の4名が現地参加してきました。

米国現地法人メンバーも合流し、普段の業務では所属部署、役割がそれぞれ異なるメンバーでの参加となり、クロスイノベーションが活発な電通総研らしいものとなりました。
また今回の参加メンバーは4名中3名が20代であり、若手社員も積極的に海外イベントに参加できる環境が整っています。
電通総研ではMicrosoft Buildに限らずさまざまな海外イベントに多様なメンバーが参加しています。

Microsoft Buildとは?

Mictosoft BuildはMicrosoftが主催する開発者向けの年次カンファレンスです。
今年は4,000人以上が現地参加し、その中で日本人は200名ほどだということです。

開催場所は、「シアトルコンベンションセンターSummit」という建物でかなり綺麗でした。

Microsoft Buildのプログラム

Microsoft BuildのセッションタイプはKeynote、Breakout、Lab、Microsoft Build Stageといった種類があります。
会場の案内も各セッションタイプがどこで開催されるかで案内されていました。

Keynoteは最も注目されるセッションで初日と2日目の朝に開催されます。
Breakoutは1つのセッションが45分で構成され、詳細な技術トピックを扱った発表がされます。
Labは現地限定のセッションで1時間の枠で構成され、ハンズオン形式で手を動かしながら学べるセッションになります。

注目アップデート情報の紹介

Microsoft Build 2024で発表された注目すべきアップデート情報を紹介したいと思います。

アップデート情報のサマリ

今回のアップデート情報は「Copilot Stack」を軸に、各サービスが「Copilot Stack」のどのレイヤーに位置付けられているものかを示しながらの発表でした。

特にデータ&AI領域のアップデート内容が中心でKeynote中、幾度となく「Copilot」というワードが使われていました。
Microsoftとして生成AI、ビジネスデータのプラットフォーム提供を進めていく姿勢であることがよく分かる内容でした。

Azure AI系のアップデート情報

最初にAzure AI系のアップデート情報から紹介しようと思います。

Azure OpenAI Service

Azure OpenAI Service関連でのアップデートでは「GPT-4o」モデルのGAが発表されました。
すでに使われている方も多いと思いますが「GPT-4o」モデルはレスポンスが非常に速く、生成AIを活用したアプリケーションにおいて課題となっていたレイテンシーの部分で大きな改善が期待できるものです。

またAzure OpenAI Service系ではアナウンス段階ですが「Azure OpenAI Batch Service」も発表されました。
こちらは本家OpenAIのBatch APIのAzure実装と思われ、低コストで大きなデータセットに対し、Azure OpenAI Serviceの処理が適用可能になります。

Azure AI Studio

Azure AI StudioもGAされ、より開発者ファーストなSDKの充実、生成AI系フレームワークと統合されたtrace機能のプレビュー提供開始や、Models as a Service(MaaS)のアナウンスがありました。

trace機能について実際に試した後藤さんの記事がありますので、よろしければ参照してください。

tech.dentsusoken.com

Phiシリーズ

小規模な生成AIモデルである「Phi」シリーズに新しいモデルが登場し、マルチモーダル対応の「Phi-3-vision」も発表されました。

Windows Copilot Runtime

またWindows でのAI開発環境の強化の観点で「Windows Copilot Runtime」が発表され、Windows Copilot Libraryを利用することでWindowsネイティブアプリケーションにもAI機能の開発が可能になることが発表されました。

アプリケーションサービス系のアップデート情報

Keynoteではアプリケーションサービス系のアップデート情報は薄めでしたが、Azure Functionsに関しては多くのアップデートがありました。

Azure Functions

まずFlex Consumption Planがプレビューで利用できるようになりました。
Flex Consumption Planの案内では、スケール性能が向上、仮想ネットワーク統合のサポート、料金形態もサーバレスらしいものになるということで、多くの開発者が求めているアップデート内容だったかと思います。


スケール性能に関しては、GitHubにおけるFlex Consumption PlanでのAzure Functionsの関数アプリのプライベートテストにおいて、1秒間で160万のメッセージをさばくほどスケールすることが紹介されていました。


またAzure FunctionsのAzure Container AppsへのデプロイもGAとなりました。


Azure Container AppsではノードにGPUマシンを利用でき、Azure FunctionsでGPUが必要な処理を実行するといったシナリオも現実的なものになりました。
その他にもAzure Functionsにはバインドといった便利な機能があるので、それらを使ったアプリケーションをAzure Container Appsでも活用できるというのは大きいかなと思います。

データプラットフォーム系のアップデート情報

データプラットフォーム系のアップデートではMicrosoft Fabricが注目されがちですが、データベース系のソリューションも大きなアップデートがありました。

Microsoft Fabric

Microsoft Fabricでは「Real Time Intelligecne」というストリーミングデータやイベント駆動での分析機能などが発表されました。これによってスケジュールベースではないシナリオにも対応できる点が魅力です。

Azure Cosmos DB

Azure Cosmos DB for NoSQLでベクトル検索のサポートがアナウンスされました。
ベクトル検索はAIアプリケーションを実装する上で重要な要素となっており、これまではCosmos DB for MongoDB(vCore)やAzure AI Searchを利用する必要がありましたが、Cosmos DB for NoSQLでベクトル検索がサポートされることで、比較的安価にアプリケーションにベクトル検索が取り入れられるようになりました。


Cosmos DB for NoSQLでのベクトル検索ではフィルタークエリと併用できるのがポイントで、パーティションキーでフィルタすることでパフォーマンスを高めることができます。

Azure Database for PostgreSQL

Azure Database for PostgreSQLでもPostgreSQL拡張機能 pgvector によるベクトル検索のサポートがアナウンスされました。
RDBでのベクトル検索のサポートにより、RDBがメインのエンタープライズ向けのシステムにおいてもベクトル検索の活用が見込めます。


ベクトル検索のアルゴリズムとして DiskANN もサポート予定とのことで、このあたりの情報はキャッチアップしておくと良さそうです。


その他、Azure Database for PostgreSQLではAzure AI Serviceを呼びだす拡張機能のAzure AI 拡張がGAになりました。
この機能を活用することでSQLの中でAzure AI Serviceの呼び出しが可能になるため、RDBマイグレーションスクリプトなどを応用することで、既存データのベクトル化などが比較的容易に実現可能な見込みがあります。

ローコードツールのアップデート情報

Power Platform系のローコードツールではCopilot Studioのアップデートが大きかったです。

Copilot Studio

Copilot Studioが大幅にアップデートされ、カスタムCopilotを作るためのローコードツールとなりました。
カスタムCopilotではベースとなるMicrosoft Copilotを「Knowledge」と「Actions」の2軸で適用範囲を広げていくというコンセプトになっています。


さらに「Team Copilot」というものもアナウンスされ、近い将来、CopilotがTeams会議にメンバーの一人として参加し、ファシリテーションをするなど、人間のように振る舞うようになっていくビジョンも発表されていました。

開発ツール系のアップデート情報

開発ツール系のアップデートでもCopilot尽くしです。

GitHub Copilot for Azure

GitHub Copilot for AzureはVisual StudioVisual Studio CodeのCopilot Chatから利用可能で、Azure上でのリソース情報まで把握し、アプリケーションのトラブルシューティングやデプロイなどの操作をCoilotで支援するものです。

GitHub Copilot Workspace

GitHub Copilot WorkspaceはGitHubのIssueからCopilotが計画を立ててコード生成、Pull Requestの作成までを行う機能です。

Issueに対し、解決のための計画が作成されます。
計画段階で人間が介在し、計画を編集することもできます。

計画をもとに生成されたコードを人間がレビューします。
レビューでは修正を依頼することもできます。


コードを実際に動かしたければ、Codespacesなどの機能を利用し、ブラウザ上で動作検証も実施できます。

まとめ

今回のMicrosoft Build 2024では、既存のアプリケーションにAI機能を組み込むことを見据えたアップデートが多い印象でした。

Windows Copilot Runtimeの登場や各データベースサービスでのベクトル検索のサポートの充実によって、「全てのアプリケーションにAI機能を搭載可能になる」というのは現実味を帯びてきたように思えます。

Copilot Studioなどローコードツールの進化も目覚ましく、コードベースの開発を主とする開発者も積極的に利用していくものになっていく可能性もあると感じました。

本記事で取り上げたアップデート内容はほんの一部です。
セッションのアーカイブや「Book of News」などを見ることでより詳細なアップデート内容が確認できます。

build.microsoft.com

news.microsoft.com

現地参加をしてよかったこと

最後に現地参加したメンバーからそれぞれ良かった点を紹介します。

  • 今回、現地で参加したことによって最新のアップデート情報をその場でキャッチアップできたことはモチベーションの向上にも繋がりとても良かったです。また現地でセッションなどにも参加したことで、注目されがちなKeynote以外のコンテンツもとても勉強になると知れたことが良かったです。ハブブースで開発者と直接コミュニケーションが取れることも現地参加の醍醐味だと感じました。(山田)

  • 現地で開発者の方々と直接会話できたことが、一番の収穫でした。各サービスの今後の展望やターゲット層、また自分が想定していなかった新たな使い方について、多くの貴重な情報を得ることができました。また、現地セッションでは、録画には残らないような貴重なノウハウを得られる機会もありました。これらの経験から、来年の参加も非常に楽しみにしています。(尾崎)

  • ベテラン枠で参加してきました。世界中の技術者が集い、Copilotを中心とした最先端テクノロジーを探求してその可能性と未来に想いを馳せながらコミュニケーションをしている姿を見ることができ、また一部それに参加することができて、自身としても改めて大きなエネルギーを得ることができたと感じています。ともすれば近視眼的な考えに陥ってしまう日常業務から離れて、こういった視座を高くする機会を得ることができる環境に感謝します。(石井)

  • 米国現地法人に出向中の武者です。まずは、本社メンバーとともにMicrosoft Build 2024に参加し、皆様から刺激を受けることができたことをうれしく思います。ありがとうございました。カンファレンスでは「Copilot」という言葉がどのセッションでも繰り返し使われていました。Copilotはテクノロジーのあらゆる分野に影響を与え、その進化が非常に速いことを改めて感じました。米国現地法人としては、Copilot Studioや電通総研として自社開発をしている生成AIソリューションのKnow Narratorシリーズを活用して、在米邦人企業の皆様のお役に立つ必要があります。特に、Copilot StudioがPower Appsの一部になったことで、ユーザー様でのチャットボット開発や保守ができるようになったと感じます。Labセッションでは、Copilot Studioのデータベース連携やデータベースからAzure AI APIの呼び出しまでを実施しました。この実装はデータベースやAPIの知識が必要であり、この部分こそがDENTSU SOKEN USAの価値になってくると感じました。お客様と協力して、最先端のシステム導入を米国でも進めていきたいです。(武者)


執筆:@yamada.y、レビュー:@miyazawa.hibiki
Shodoで執筆されました