G-gen の杉村です。2024年末、Google の生成 AI 系サービスである Gemini アプリ(英名 Gemini app、旧 Bard)と Google Vids が、Google Workspace のコアサービスになります。
はじめに
2024年末、Google の生成 AI 系サービスである Gemini アプリ(英名 Gemini app、旧 Bard)と Google Vids が、Google Workspace のコアサービスになることが発表されました。
上記発表には Google Vids が言及されていませんが、以下のドキュメントには詳細が記載されています。ただし前者のドキュメントは Google Workspace の管理者アカウントにログインした状態でないと閲覧できません。後者のドキュメントは全体向け発表のため、誰でも閲覧可能です。
- 参考 : Google Workspace に新しいコアサービスが登場
- 参考 : The Gemini app is now a core service with enterprise-grade data protection for more Google Workspace editions
これらの発表では、Gemini アプリと Google Vids が、Google Workspace の Business、Enterprise、Frontline の各エディションでコアサービスとして扱われるようになることが明らかにされています。
これに伴い、Gemini アプリには「エンタープライズ グレードのデータ保護(enterprise-grade data protections)」が適用されます。これにより、入力されたプロンプトやファイル、生成されたテキストなどは人間のレビュワーによるレビュー対象にはなりませんし、Google のモデル改善に使われることがなくなります。
これまでの Gemini アプリは、Gemini Business、Gemini Enterprise、Gemini Education のアドオンライセンスが適用されたユーザーだけが、エンタープライズ グレードのデータ保護の適用対象でした。
また Google Vids は、Business Standard、Business Plus、Enterprise Standard、Enterprise Plus などのコアサービスになり、こちらもアドオンライセンスが不要になります。
スケジュール
Gemini アプリと Google Vids のコアサービス化は、以下のスケジュールで開始され、順次ロールアウトされます。組織ごとに、開始の時期は違う可能性があります。
- Gemini アプリのロールアウトは2024年10月25日以降に開始(当初は10月15日とされていたが後に訂正)
- Google Vids のロールアウトは2024年11月1日以降に開始
いずれも、ロールアウトは2024年末までに完了するとされています。
なお、2025年12月31日まで、全ユーザーは Google Vids の Help me create
などの AI 補助機能を制限なしで利用可能です。2026年以降はアドオンライセンス等が必要になることがアナウンスされています。制限が適用される前に、Google から顧客への通知が行われます。
用語の解説
Gemini アプリ(Gemini app)
Gemini アプリ(Gemini app)とは、以下の2つのチャットサービスの総称です。
- Gemini ウェブアプリ(
gemini.google.com
のこと。かつて Bard と呼ばれていた Web ブラウザ向け生成 AI チャットサービス) - スマートフォン向け生成 AI チャットアプリ(Android および iOS 向け)
いずれも、Google の生成 AI 基盤モデルである Gemini を基盤としたチャットアプリケーションです。
Google Vids
Google Vids は生成 AI を使った、動画編集サービスです。2024年4月の Google Cloud Next 24(Las Vegas)で発表されました。
Google Vids は、テーマに沿ったストーリーボードを自動生成し、ユーザーが保有する動画、画像、音声などをもとに、容易に動画を編集することができるサービスです。他の Google Workspace サービスと一貫した操作性で利用でき、ブラウザ上で完結します。
なお Google Vids は、ユーザーがすでに持っている動画や画像を組み合わせて動画を完成させるサービスであり、ゼロから動画自体を生成するサービスではありません。
- 参考 : Google Vids
- 参考 : Empowering businesses of all sizes with new generative AI and security innovations in Google Workspace
また前述のとおり、2025年12月31日まで、全ユーザーは Google Vids の Help me create
などの AI 補助機能を制限なしで利用可能です。2026年以降はアドオンライセンス等が必要になることがアナウンスされています。制限が適用される前に、Google から顧客への通知が行われます。
コアサービス
コアサービスとは、Google Workspace の中核をなすメインのサービス群を差します。Google ドライブ、Google ドキュメント、Google スプレッドシート、Google カレンダー、Google Chat などを指します。
- 参考 : サービスの概要
なおコアサービスは、Google の技術サポートの対象になることが明記されています。
- 参考 : サポート範囲
エンタープライズ グレードのデータ保護
エンタープライズ グレードのデータ保護とは、Gemini の背景においては、「ユーザーが入力したテキストやアップロードしたファイルが、人間のレビュワーによって確認されたり、生成 AI モデルの改善(再トレーニング)に使われないこと」を指します。
Gemini アプリがコアサービス化する以前は、Gemini Business や Gemini Enterprise などのアドオンライセンスがない場合、エンタープライズ グレードのデータ保護が適用されないため、入力データやアップロードしたファイルは Google によって製品改善に利用される可能性があります。
Google Workspace の管理者設定により、アドオンライセンスを割り当てていないユーザーの Gemini アプリの利用を禁止することができます。
なお、教育機関用のエディションである Gemini Education も、エンタープライズ グレードのデータ保護の対象です。
Gemini Business と Gemini Enterprise
Gemini Business と Gemini Enterprise は、いずれも Google Workspace で Gemini の機能を使うためのアドオンライセンスです。
これらのアドオンを購入してユーザーに割り当てると、Gmail や Google ドキュメント、Google スライドといった Google Workspace アプリで Gemini の機能が追加で使えるようになります。Business と Enterprise では、管理者機能や、月間の使用量上限などに差があります。
これらのアドオンライセンスを購入してユーザーに割り当てると、そのユーザーが Gemini に入力したデータには、エンタープライズ グレードのデータ保護が適用されます。
なお、Gemini Business、Gemini Enterprise に加え、AI Security や AI Meetings and Messaging といった生成 AI 系のアドオンライセンスを総称して、Gemini for Google Workspace アドオンと呼びます。
アドオンライセンス未適用ユーザーに Gemini アプリ利用を禁止する (コアサービス化以前)
概要
Gemini アプリのコアサービス化は、2024年10月25日から2024年12月末までの間の、順次ロールアウトです。
コアサービス化するまでの間は、前述の通り、Gemini Business や Gemini Enterprise、Gemini Education などのアドオンライセンスがない場合、Google Workspace ユーザーが Gemini アプリを使うと、エンタープライズ グレードのデータ保護が適用されないため、そのデータは Google によって製品改善に利用される可能性があります。
その可能性を排除するため、アドオンライセンスが割り当てられていないユーザーは Gemini アプリを利用できなくなるよう、管理者設定で禁止することが可能です。
手順
Google Workspace の管理画面(admin.google.com
)で、生成 AI
> Gemini
> ユーザー アクセス
に移動します。
デフォルトでは 次の条件下で、すべてのユーザーに Gemini へのアクセスを許可する
の設定になっている可能性があります。こちらの設定だと、Gemini Business、Enterprise、Education のアドオンライセンスが割り当てられていないユーザーでも Gemini アプリが利用できます。それらのユーザーには、データ保護は適用されません。
以下のスクリーンショットのように、Gemini for Workspace(Business、Enterprise、Education)のライセンスを持つユーザーのみに、コアサービスとしての Gemini へのアクセスを許可します(顧客データ保護が有効)
に設定すると、アドオンライセンスを持っていないユーザーの Gemini アプリ利用は禁止されます。データ保護が適用されない状態での Gemini アプリ利用が不可能になり、データ保護の観点では、よりセキュアになります。

この設定の状態で、アドオンライセンスが割り当てられていない Google アカウントで Gemini ウェブアプリにアクセスしようとすると、以下のように表示されます。Gemini ウェブアプリが利用できなくなっていることがわかります。

Gemini へのアクセス権がありません。このサービスを有効にするには、管理コンソールにログインしてください。
なおこの設定は、2024年末までに Gemini アプリがコアサービス化してエンタープライズ グレードのデータ保護が適用されれば、不要になります。適用された場合、Google Workspace の対象エディションのライセンスが割り当てられたユーザーは、自動的に Gemini アプリが利用可能になります。
また Google Vids については、コアサービス化が適用された時点で、明示的な設定変更なしに対象エディションの全ユーザーが Google Vids を使えるようになります。
杉村 勇馬 (記事一覧)
執行役員 CTO / クラウドソリューション部 部長
元警察官という経歴を持つ現 IT エンジニア。クラウド管理・運用やネットワークに知見。AWS 12資格、Google Cloud認定資格11資格。X (旧 Twitter) では Google Cloud や AWS のアップデート情報をつぶやいています。
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