「品質」の基準とは?

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こんにちは。品質管理部エンジニアリングチームの高橋です。

今回は品質管理部として初のTECH BLOG投稿ということもあり、
「品質 / Quality」について掘り下げてみたいと思います。

「品質」の意味

「品質」という言葉の語源は古代ギリシャにまで遡ります。
「万学の祖」と称されるアリストテレスは、物質(Substance)を「量的側面」と「質的側面」に分けて定義しました。
その際に量的な側面を表現する言葉として英語の質量(Quantitiy)に相当するギリシャ語を用いました。 そして対立概念である質的な側面を表現する言葉として、英語のQualityの語源となったラテン語のQualitasを用いたと言われています。

月日は流れ現在、ISO 9000シリーズにて「品質」は「本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度」と述べられています。※ISO 9000シリーズとは、国際標準化機構が定めた品質マネジメントシステムに関する規格の総称です。

『プログラミングの心理学』や『一般システム思考入門』を著した、ソフトウェア開発の人類学者であるジェラルド・ワインバーグは、「品質は誰かにとっての価値である」と自著内で述べています。



またソフトウェアエンジニアリングとしてのソフトウェア「品質」は以下のように定義されています。
(以下、https://en.wikipedia.org/wiki/Software_qualityより引用)

In the context of software engineering, software quality refers to two related but distinct notions that exist wherever quality is defined in a business context:

→ソフトウェアエンジニアリングにおいて、ソフトウェア品質とは、2つの関連しているが、異なる概念が定義される。

・Software functional quality reflects how well it complies with or conforms to a given design, based on functional requirements or specifications. That attribute can also be described as the fitness for purpose of a piece of software or how it compares to competitors in the marketplace as a worthwhile product. It is the degree to which the correct software was produced.

→ソフトウェアの機能品質は、機能要件または仕様に基づいて、与えられた設計に準拠しているかを指す。その特性はソフトウェアの目的に対する適合度、もしくは市場において競合ソフトと比べてより価値があると判断するための手段とも言うことができ、どれだけ正確にソフトウェアが作られたかの度合いである。

・Software structural quality refers to how it meets non-functional requirements that support the delivery of the functional requirements, such as robustness or maintainability. It has a lot more to do with the degree to which the software works as needed.

→ソフトウェアの構造的品質とは、堅牢性や保守性などの機能要件の提供をサポートする非機能要件を指す。ソフトウェアが必要に応じて動くための数多くの要件がある。

「品質」が良いとは

品質の良さに関して、「立場」から考えてみます。

もし自分が経営者の立場であったならば、最優先するべきは売上げです。 その為、会社として利益の大きいもの=品質が良いと考えられます。 では経営者ではなく研究者の立場だったらどうでしょう。 研究はそもそも莫大なお金がかかるものであり、研究者が研究中にコストやコストパフォーマンスを優先することはないでしょう。 おそらく研究者の方は、世界に比類ない発見や革新的なものを素晴らしいものと考えるはずです。

  • 経営者 →最大限の利益が出るもの
  • 研究者 →最新のテクノロジーが盛り込まれた革新的なもの
  • 開発者 →要求された機能が実装された、整然としたコードで作成されたもの
  • テスター→仕様書通りに動作する不具合のないもの

このように、「品質」の基準は、判断する人の立場によって決定されます。


今度は品質の良さに関して、「物・サービス」から考えてみます。

例えば1万分の1の確率で何らかの不具合が発生する物・サービスの存在を仮定します。
そのサービスが「本の製本」だとしたら。製本ですので、1万冊に1冊の割合で落丁が発生します。 しかし出荷段階で弾いたり、無償で返品対応を行えば、そこまで大きな問題にはならないはずです。
ではそのサービスが「医療機器」だとしたら。 1万台に1台の割合で使用途中に動作が停止してしまうペースメーカーが出荷されたとしたらどうでしょう。 おそらく社会的な問題になるのではないでしょうか。 医療機器に限らず、人の命に関わる物・サービスに関しては、たとえ1万分の1であっても不具合は許されません。

このように、「品質」の基準は、物・サービスの目的によっても変わってきます。


上記のように様々な「品質」の価値基準を一概に定めることは不可能である為、必然的にどこに基準を置くかが重要になってきます。 では品質管理部の一員としての私は、「品質」の基準をどこに定めればよいのでしょうか。 ここでもう1度ジェラルド・ワインバーグの言葉を反芻してみます。

「品質は 誰か にとっての価値である」

この「誰か」とは、「ユーザー/顧客」と定義するべきでしょう。 すなわち、「品質」の価値基準は「ユーザー」です。 自社の提供する物・サービスを利用するユーザーの皆さんが、どうすれば便利で・安全に・楽しくサービスを利用できるか考えるのが品質管理部の使命ではないでしょうか。

「品質管理」とは

前項で品質の基準はユーザーに置くべきと述べました。自ずと「品質管理」の指針も見えてくるのではないでしょうか。
ただここで1つ留意しておきたいのが、
品質管理の成功 = ユーザーの満足
品質管理の失敗 = ユーザーの不満足 であるとは必ずしも言えないということです。

1980年代に狩野紀昭によって提唱された、狩野モデルという品質に関するモデルが存在します。 狩野は品質を「当たり前品質」「一元的品質」「魅力的品質」「無関心品質」「逆品質」の5つに分類しました。 そしてその品質がどの品質要素に該当するかによって、顧客満足度に与える効果が異なると提唱しました。

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たとえ不具合が残っていたとしても、狩野モデルでいう「無関心品質」に該当する品質の不具合であればユーザー満足度に大きな影響は与えません。 逆に他の「一元的品質」や「魅力的品質」の品質の完成度が高ければ、ユーザーは十分に満足することでしょう。

ただどちらにせよ、品質の基準 = ユーザー の公式は基本的にゆるがないと思っています。
よって、「品質管理」= ユーザーが満足できるサービスが提供されるように導くことだと私は考えています。 企画→開発→テストの全ての工程において、ユーザーを最優先に考える。そしてそれを継続することではじめて、「品質」が向上していくと思います。
「お客様は神様」という言葉が、接客を伴う業務の際に周知されたりしますよね。
多少オーバーな表現の気もしますが、ユーザーが直接目に見えないソフトウェア開発においても、お客様を第一に考えて業務にあたる姿勢が何よりも大切ではないでしょうか。

おわりに

今回は品質管理部の初投稿ということで、「品質」に関して記事を書かせて頂きました。
記事中でも述べたように、「品質」や「品質管理」に答えはないと思っています。
みなさんの考える「品質」とはなんでしょうか? ぜひ考えをお聞かせ下さい。

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参考文献 / クレジット

参考文献
https://en.wikipedia.org/wiki/Software_quality
https://ja.wikipedia.org/wiki/ISO_9000
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%A9%E9%87%8E%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB

クレジット
https://www.flaticon.com/free-icon/check-list_1102560#term=check&page=2&position=54
https://www.flaticon.com/free-icon/medal_1067629#term=quality&page=3&position=22

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