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AWS の Microsoft ワークロードのコストを最適化する方法

本稿は、2024年10月2日に Microsoft Workloads on AWSで公開された “How to optimize costs for Microsoft workloads on AWS” を翻訳したものです。

Microsoft on AWS Cost Optimization (MACO) 推奨ガイドは、Amazon Web Services (AWS) 上の新規および既存の Microsoft ワークロードの最適化に役立つように設計されたコスト最適化戦略のガイドです。ビジネス目標を達成する、コスト効率とパフォーマンス効率の高いワークロードを構築および自動化するための、基礎的なトレーニング、コスト最適化手法、リファレンス アーキテクチャを提供します。 MACO 推奨ガイドは 42 人の業界専門家によって作成され、AWS で実行されている Microsoft ワークロードにコスト最適化をどのように適用できるかの実例を提供しています。

なぜ MACO 推奨ガイドが必要なのでしょうか?今日の競争の激しいビジネス環境では、多くの企業がコスト最適化の方法を探しているかもしれません。 AWS では、 Well-Architected Framework の柱の 1 つにコストの最適化があります。私たちは、AWS 上の Microsoft ベースのアプリケーション (またはワークロード) が最もコスト効率の高いクラウド中心の設計パターンを使用していることを確認する一貫した方法が重要であることを理解しています。クラウドに移行する際の初期の導入戦略においては、機能への影響を避けるためにワークロードへの変更を最小限に抑えるリフトアンドシフトが多く採用されています。コストに関する懸念に対処するために、AWS のドキュメントやブログにアクセスしてガイダンスを求めたことがあるかもしれません。従うべき一貫したフレームワークがなければ、独自のコスト分析を実施し、変更を加える必要があり、それは非常に困難な道のりだったかもしれません。MACO 推奨ガイドは、コスト最適化の目標を達成するために参照する、一貫したフレームワークを提供します。

AWS への移行中において Microsoft ワークロードのコストを最適化するにはどうすればよいでしょうか?

コストの最適化は継続的かつ反復的なプロセスであり、ワークロードが稼働状態でも、ワークロードを移行中でも、実践することが可能です。コスト最適化ツールとして AWS Optimization and Licensing Assessment(OLA) を利用すると、オンプレミスから AWS に移行するワークロードを最適化する方法を決定することができます。この無料プログラムにより、新規と既存の両方のお客様が、ワークロードの適切なサイズ設定を行ってリソース効率を向上させることで、オンプレミス環境とクラウド環境を評価および最適化できるようになります。 OLA は、実際のリソース使用量 (CPU、メモリ、ディスク)、サードパーティ製品のライセンス、およびアプリケーションの依存関係を分析します。収集されたデータに基づき分析された情報は、クラウド移行の意思決定を行うのに役立ちます。 OLA を実行するにはさまざまなオプションがあります。既に使用中のモニタリング ツールを活用して、AWS が分析するためのデータをフラットファイルにて提供することも、Migration Evaluator を使用して、ワークロードの最も完全な分析データを収集することも可能です。 Migration Evaluator は、オペレーティング システム エージェントを使用して、14 ~ 30 日間の使用状況データを収集します。これにより、AWS はアプリケーションの使用パターンに基づいたインスタンスのサイジングを推奨できるようになります。データが収集されると、移行を開始する前に、環境に関する調査結果と推奨事項を詳細に記載した包括的なレポートを受け取ることができます。

Parsons Corporation は、Migration Evaluator や AWS Optimization and Licensing Assessment (OLA) などのツールを使用して AWS への移行を行いました。その結果、現在のオンプレミス環境が可視化され、クラウド内のワークロードのサイズを適切に設定することで、ライセンスの最適化、ダウンタイムの削減、コンピューティング コストの削減の機会が特定されました。 Windows Server と SQL Server のワークロードを AWS に移行した後、Parsons は年間運用コストを 35% 削減することができました。全体として、AWS への移行により、Parsons はシステムの稼働時間を増やし、コストを管理しやすくし、新しいサービスの開発を数か月から数日にスピードアップして、さらなるイノベーションを促進することができました。

プロセス全体の詳細については、MACO 推奨ガイドの OLA セクションを参照してください。サンプルレポートや、ワークロードの分析に使用できるデータ収集方法の詳細についてもご覧いただけます。

AWS 上で実行されている既存の Microsoft ワークロードのコストを最適化するにはどうすればよいでしょうか?

MACO 推奨ガイドには、AWS で実行されている既存の Microsoft ワークロードに適用できる 40 を超えるコスト最適化の推奨事項が記載されています。しかし、既存のワークロードのコスト最適化を開始するための最良の方法としては、多くの場合、適切なサイジングとコンピューティングコストの削減が最も効果的となります。

AWS 最適化とライセンス評価により、AWS 環境のコスト効率を向上させます。 OLA は、実際のリソース使用率、サードパーティ製品のライセンス、アプリケーションの依存関係に基づいて、既存の AWS 環境を評価および最適化するために使用することもできます。既存のデプロイメント、アプリケーションのパフォーマンスを理解することで、AWS はリソースの適切なサイズを推奨事項として提供します。これにより、アプリケーションリソースの需要に合わせてコストを削減するための明確なロードマップが提供され、必要最低限のコスト支出を実現することができます。

AWS Compute Optimizer を使用して、コンピューティング ワークロードの適切なサイズを設定します。 AWS Compute Optimizer は、コストを削減し、パフォーマンスを向上させるために、ワークロードに対してより効率的な AWS コンピューティング リソースの推奨を行います。推奨事項を作成するために、既存の Amazon EC2 インスタンスの構成と使用率のメトリクスを分析します。分析されたデータは、既存のワークロードに最適な Amazon EC2 インスタンス タイプを推奨するために使用されます。

MACO 推奨ガイドでは、これらの AWS Compute Optimizer の推奨結果を改善する方法についての情報を提供します。 EC2 の適正化セクションでは、お客様が AWS Compute Optimizer の推奨事項を使用して、EC2 インスタンスに Amazon CloudWatch エージェントをインストールしてメモリ使用率のメトリクスを収集し、コスト削減を平均 327% 改善する方法を示します。

また、AWS Compute Optimizerは、Amazon EC2で稼働するMicrosoft SQL Serverにおいて、ライセンス込み(license-included) およびライセンス持ち込み (BYOL) に関わらず、SQL Serverエディションのダウングレード機会を自動的に特定し、Microsoft SQL Serverのライセンスコストを最大74%削減する方法を提示します。

Savings Plans を使用して、定常状態のコンピューティングコストを削減します。ワークロードのサイズが適切に調整されたら、Savings Plans を使用して、Amazon EC2、 AWS LambdaAWS FargateAmazon SageMaker の定常状態の使用におけるコンピューティングコストを節約できます。 Savings Plan は、オンデマンド価格と比較してコストを削減できる柔軟な価格モデルを提供します。 1 年または 3 年間にわたる特定の使用量をお約束いただくことで、割引きを受けることができます。

AWS Cost Optimization Hub を使用して最適化プロセスを簡素化します。 Savings Plans の推奨事項と AWS Compute Optimizer によるサイジング推奨事項を簡略化して表示するには、AWS Cost Optimization Hub にアクセスしてください。 Cost Optimization Hub を使用すると、ダッシュボードを通じて、組織内の AWS アカウントおよび AWS リージョン全体にわたる AWS コスト最適化の推奨事項を簡単に特定、フィルタリング、統合することが可能となります。

MACO 推奨ガイドを使用して、テクノロジー固有の最適化手法を確認します。適切なサイズ設定が完了し、他のコスト削減方法を探している場合は、MACO 推奨ガイドの .NET applicationsWindows containersSQL Server 、 Active DirectoryStorage を参照ください。

できる限りの最適化を行いました。次はどうすればよいでしょうか?

繰り返しのコスト最適化手法を使用することにより、最終的には、既存のアプリケーション構造の範囲内で完全に最適化された状態になるでしょう。アプリケーションのライフサイクルがこの時点に達した場合、さらに最適化するための次のステップとしてはモダナイゼーションが考えられます。 モダナイゼーションは、アプリケーションコード、インフラストラクチャ、データベースに及ぶ幅広いトピックです。 AWS は、ワークロードをさらに最適化するためにこれらの各領域でアプリケーションをモダナイズするのに役立つツールとサービスを提供しており、MACO 推奨ガイドではこれらのトピックについても詳しく説明しています。 .NET ワークロードの場合、クロスプラットフォーム .NET へのモダナイゼーションを実現することで、アプリケーションを Linux オペレーティングシステム上で実行できるようになり、Windows Server ライセンスの削減に繋がります。 Windows Server のライセンスコストを削減すると、サーバーあたりのトータルコストを 25% 以上削減できます。さらに、Linux 上で実行される .NET アプリケーションは、同世代の x86 プロセッサよりも 45% 優れた価格パフォーマンスを実現する AWS Graviton ARM プロセッサを利用できます。.NET リファクタリング向けAWSツールキット は、開発者が .NET Framework アプリケーションを AWS 上のクラウドベースの代替案にリファクタリングするために必要なプロセスを迅速化するのに役立つ支援ツールです。

beIN Media Group Company の Digiturk は、従来の .NET Framework モノリシック アプリケーションを AWS 上の .NET マイクロサービス アーキテクチャにモダナイゼーションすることができ、65% のコスト削減を達成しました。 AWS パートナーの Kloia の支援により、Windows のライセンス コストを削減し、俊敏性を高め、モノリシック アーキテクチャによって引き起こされるスケーラビリティのボトルネックを取り除くことができました。

SQL Server ワークロードには追加のライセンスコストが必要ですが、多くのオープンソースデータベースやPurpose-built database では必要ありません。 AWS は、フロントエンドアプリケーションの変更を減らしながら SQL Server からオープンソースのリレーショナル データベースに移行したいと考えているお客様向けに、Babelfish for Aurora PostgreSQL を提供しています。 こちらのMACO 推奨ガイド に記載されているように、Amazon EC2 の SQL Server Enterprise エディションから Aurora PostgreSQL に切り替えると、最大 70% のコストを削減できます。

BMC Software は、Microsoft SQL Server から Amazon Aurora に移行することで、データベースのワークロードをモダナイゼーションしました。この取り組みにより、AWS インフラストラクチャのコストが 42% 削減され、SQL Server のライセンス コストが削減され、データベース チームの生産性が 60% 以上向上しました。

ワークロードのモダナイゼーションを検討する準備ができている場合は、Windows モダナイゼーション のページ にアクセスするか、アカウントチームに相談してください。

まとめ

コストが最適化されたワークロードは、すべてのリソースを最大限に活用し、可能な限り低価格で目的を達成し、機能要件を満たします。ワークロードのコスト最適化について詳しく話し合う準備ができている場合は、MACO チームに対象分野の専門家が対応します。 AWS アカウントチームに連絡して、今すぐコスト最適化の取り組みを始めてください。

AWS には、他のクラウドプロバイダーよりもはるかに多くのサービスとそのサービス内の機能があり、既存のアプリケーションをクラウドに移行し、想像できるほぼすべてのものをより速く、簡単に、よりコスト効率よく構築できます。望むビジネス成果を推進するために必要なインフラストラクチャを Microsoft アプリケーションに提供します。 Microsoft ワークロードの追加のガイダンスとオプションについては、.NET on AWS および AWS Database のブログを参照してください。今すぐ移行とモダナイゼーションの取り組みを始めたい場合は、お問い合わせください。

著者について

Chase Lindeman

Chase Lindeman は、AWSのシニアスペシャリストソリューションアーキテクトであり、Microsoft テクノロジーに 20 年以上の経験があります。移行、コストの最適化、インフラストラクチャアーキテクチャを専門とし、AWS 上で Microsoft ワークロードを実行する専門知識を持っています。

 

Ali Alzand

Ali は、AWSの Microsoft スペシャリスト ソリューション アーキテクトであり、世界中の顧客が Microsoft ワークロードを移行、モダナイゼーション、最適化することでクラウドの力を最大限に活用できるよう支援しています。クラウド運用を専門とし、Systems Manager、Amazon EC2 Windows、EC2 Image Builder などの AWS サービスを活用してクラウド変革を推進しています。仕事以外では、アウトドアを探索したり、週末に友達とバーベキューのためにグリルを焚いたり、さまざまな料理を試食したりすることを楽しんでいます。

 

Adilson Lopes

Adilson Lopes は、AWS 上の Microsoft ワークロードの世界的な Go-To-Market スペシャリストです。 Adilson は、Microsoft テクノロジーをサポートするクラウド コンピューティングの 9 年以上の経験があります。現在の役割では、運用効率とコスト効率を達成しながら、顧客が AWS でインフラストラクチャのワークロードを移行およびモダナイゼーションできるよう支援することに重点を置いています。

 

Kevin Sookhan

Kevin Sookhan は、AWS 上の Microsoft ワークロードを専門とする Microsoft スペシャリスト ソリューション アーキテクトです。Microsoft テクノロジーに 20 年以上携わった経験があり、Windows インフラストラクチャ、Active Directory、ストレージなどのトピックを専門としています。

 

Rob Higareda

Rob Higareda は、AWS 上の Microsoft ワークロードのプリンシパル スペシャリスト ソリューション アーキテクトです。 Rob は、Microsoft テクノロジーのシステムエンジニアとして 20 年以上の経験を持ち、AWS に入社しました。彼は主に AWS で連邦政府の顧客と協力し、AWS 上の Microsoft ワークロードのセキュリティとインフラストラクチャ設計に重点を置いています。

 

翻訳は、カスタマーソリューションマネージャの大東が担当しました。