ケアラベル発行の完全自動化のアプローチと効果について

ogp

はじめに

MSP技術推進部の基幹化推進チームの池田(@ikeponsu)です。

私達のチームでは、マルチサイズプラットフォーム事業(MSP)におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを行っています。その取り組みの1つに、ケアラベル作成自動化システムの開発・導入があります。

このケアラベル作成という業務ですが、元々は人の手で1つずつ行われていたものでした。以前書いた「Go言語でケアラベル発行の自動化」の記事の中ではプロトタイプの紹介をしましたが、今回は実際にプロダクトで使われる様になったシステムの構成や、どの様に導入を行ったかといった内容を紹介します。

techblog.zozo.com

弊社のケアラベル

以前書いた記事でも少し紹介しましたが、ここではそもそも弊社のケアラベルがどういったものなのか、説明していきたいと思います。

carelabel

ケアラベルとは上記の様な、繊維製品になくてはならない品質表示のことを指します。ケアラベルは、家庭用品品質表示法の下に適切で明確な表示が義務づけられています。

ケアラベル表記は画像の上から順に、以下の項目で構成されています。

  • サイズ表記(サイズごとに表記が異なる)
  • 洗濯表記(品番ごとに表記が異なる)
  • 素材混率の表記(使用する生地ごとに異なる)
  • 生産国表記(品番ごとに表記が異なる)
  • 会社表記(固定)
  • 2次元バーコード(製品番号ごとに異なる)
  • 裏面:付記用語(使用する生地ごとに異なる)

サイズ、品番、製品番号の関係性をTシャツを例に説明すると、以下の様に表せます。

Tシャツ(品番)
├── ブラック(カラー = 生地)
│   ├── XS(サイズ)
│   │   ├── 製造番号1(製造番号)
│   │   └── 製造番号2(製造番号)
│   ├── S(サイズ)
│   │   ├── 製造番号1(製造番号)
│   │   ├── 製造番号2(製造番号)
│   │   └── 製造番号3(製造番号)
│   ├── M(サイズ)
│   │   └── 製造番号1(製造番号)
│   └── L(サイズ)
│       └── 製造番号1(製造番号)
└── ホワイト(カラー = 生地)
    ├── XS(サイズ)
    │   └── 製造番号1(製造番号)
    ├── S(サイズ)
    │   ├── 製造番号1(製造番号)
    │   └── 製造番号2(製造番号)
    ├── M(サイズ)
    │   └── 製造番号1(製造番号)
    │   ├── 製造番号2(製造番号)
    │   └── 製造番号3(製造番号)
    └── L(サイズ)
        └── 製造番号1(製造番号)

デザイナー業務の自動化

ケアラベルのデザイン作成は、元々デザイナーがAdobe Illustratorを使い手作業で行っていました。下図は実際に行われていた作業フローです。

wf1

  • 品番ごとにAdobe Illustratorを使って洗濯表示を並べた画像を作成していた
  • 品番・カラーごとにAdobe Illustratorを使って素材表記を書き込んだ画像を作成していた

上記の作業に加え関係各社、各部署が最終決定したデータを家庭用品品質表示法に基づいて正確にデザインに落とし込まなければなりません。しかしデータ自体揃うのが生産直前になることも珍しくないため、短期的に負荷が集中し、差し戻し等も多発していました。

更に、1シーズンで数十品番を展開していたため単純に作業負荷も高く、ケアラベル用の画像作成を専属とするアルバイトを探そうとしていた程でした。

そのため、まずはこれらの手間を最短で減らすことを目的として、下図の部分を半自動化することになりました。

wf2

自動化を行う上で条件となったのが以下の項目です。

  • 業務で使用しているExcelのテンプレートをインプットとすること
  • 業務の都合上、Windows PC上で動作すること
  • デザイナー指定のフォントで描画できること
  • ケアラベルのデザイン自体がデザイナーの求める要件(見た目の良し悪しなど)を満たすこと

これらの条件を満たすために作成したのが下図の構成のシステムです。

wf3

デスクトップアプリとしてGUIを操作しながら使用し、入力したExcelファイルを元にデザインされたPNGが出力されるという仕様です。入力されたExcel内の簡単な書き間違え等も検出できる様になっています。

wa1

wa2

wa3

アプリ自体はC#(WPF)で作成しており、フロントエンドからバックエンドまで同じ技術要素で作ることができています。技術の選定理由としては、システムを使用する現場の動作環境に合っていたことと、フォントの細かい設定を行うことのできるライブラリを含んでいたことが挙げらます。

このシステムを作成したことで、デザイナー業務とそれに関連して発生していた業務を自動化することに成功しました。

印刷用のレイアウトファイル作成業務の自動化

次に自動化の対象としたのが、印刷用のレイアウトファイル作成業務です。

半自動化によって画像は自動化できたものの、入力される画像の高さに合わせてレイアウトファイルを作る作業はエンジニアが行っていました。

ケアラベルを印刷する際に使用するプリンターは専用のものを使っており、専用のプリンターで印刷する場合には、下画像の様にPNGファイルからレイアウトファイルを作る必要がありました。

r1

  • CSVで画像や指定するテキストを挿入できる
  • プリンター専用のデザインアプリでレイアウトファイル、レイアウトにCSVをマッピングさせる設定ファイルを作る必要がある

この頃は1シーズンで数百品番を展開していたため、上記で述べた作業を行うには作業負荷が高く、スケールアップしない作業になっていました。

また、生産管理の業務全体でkintoneを利用し始めたため、業務フローに変更がありました。この影響で、kintoneでケアラベルデザイン作成用のExcelファイルを管理しながらPC上でケアラベルデザインを作成、作成したデザインを更にkintone上で管理するといった二度手間が発生していました。

これらの手間を無くし、ケアラベル作成業務を完全に自動化することにしました。

wf4

完全自動化を行う上で条件となったのが以下の項目です。

  • データのやりとりはkintoneを介して行うこと
  • ケアラベルの生成を自動で定期的に実行すること
  • デザイナー指定のフォントで描画できること
  • ケアラベルのデザイン自体がデザイナーの求める要件(見た目の良し悪しなど)を満たすこと
  • ケアラベルの印刷ファイルが印刷する上での要件(文字が潰れないなど)を満たすこと

これらの条件を満たすために作成したのが下図の構成のシステムです。

wf5

kintone上で入力された条件を読み取り、当てはまるレコードのケアラベルのデザイン、印刷用ファイルを定期実行で作成します。Excelの内容やkintoneの項目に不備があった場合は、Slackで担当者に修正依頼を行います。

レイアウトファイルの作成については、レイアウトファイル自体を解析し、エンジニアが手作業で行っていた手順をプログラムで再現しました。

アプリ自体はPythonで作成しています。技術の選定理由としては、ケアラベルのレイアウトファイルを作成できたことと、フォントの細かい設定を行うことのできるライブラリを含んでいたことが挙げらます。

このシステムを作成したことで、生産管理の業務とそれに関連して発生していた業務を自動化することに成功しました。

自動化での課題点

「デザイナー業務の自動化」と「印刷用ファイル作成業務の自動化」を行う上でいくつかの課題点がありました。

まず、デザイン上の課題です。

d_1.png

上記画像で確認できる通り、デザインする上で次の様な問題が発生し、それらに対しプログラムで調整を行いました。

  • 文字のかすれ、つぶれ
  • 英字と和字を並べて描画した際上下にずれて見える
  • 左右の余白が対象に見えない
  • 混率表記のパーセンテージが数字によって左右にずれて見える

次にシステム要件をまとめる上での課題です。

ケアラベル作成業務には様々な部署、担当者が関わっており、要件や要望も様々でした。自動化をする上では各担当者の作業を把握し、整理する必要がありました。

勿論全てが要望通りにシステム化できるわけではないので、オペレーションを変えなければいけない部分等はコミュニケーションを重ね、要件をすり合わせていきました。

その結果、各担当者の協力もあり、別々で進んでいた業務フローを1つにまとめることができました。

自動化の効果について

まず「デザイナー業務の自動化」では、1品番あたり大体1時間程の作業時間がかかっていました。デザインの差し戻し等があった場合は、更に時間がかかります。これを自動化しようとしていた当時は、数十品番行っていました。

自動化後は上記のデザイナー業務が代替され、1品番あたり1時間+αかかっていた作業時間が削減できました。

次に「印刷用のレイアウトファイル作成業務の自動化」では、品質管理の担当者とエンジニアの作業で、1品番大体30分程の作業時間がかかっていました。作業ミス等で差し戻し等があった場合は、更に時間がかかります。これを自動化しようとしていた当時は、数百品番行っていました。

自動化後は上記の品質管理の担当者の作業削減、エンジニアの業務が代替され、1品番あたり30分+αかかっていた作業時間が削減できました。

おわりに

本記事ではMSP技術推進部の取り組みの1つのケアラベル完全自動化のアプローチと効果について紹介しました。

ZOZOテクノロジーズでは、ZOZOTOWNやWEARのサービスをはじめ、事業を支えるさまざまな職種を募集しています。ご興味のある方は、以下のリンクからぜひご応募ください。

tech.zozo.com

カテゴリー