はじめに
介護/障害福祉事業者向け経営支援サービス「カイポケ」の介護レセプトチームで働いている沖口です。介護レセプトチームは3つの独立したサブチームで開発を進めており、今回は1つのサブチームの活動として行ったチームビルディング活動について紹介します。チーム内ではこのサブチームを班と呼んでいるため、本稿でも「班」「チーム」で呼び分けを行います。
チームビルディングを行う前の課題感
私の所属している班は日々の開発プロセスに従い開発は進められはするものの、私の主観では「チームメンバーへの頼りにくさがある」「各メンバーもチームで仕事をする時、やりにくさを感じているのではないか」と感じる場面がありました。
頼りにくさ、やりにくさは例を挙げると以下のようなものがあります。
- 相手が忙しいかどうかわからないため、話しかけにくく、自分で時間をかけて調査をしてしまう...
- 相手の得意・不得意なことが把握できず、頼るべきか迷ってしまう...
- 不得意なことを周囲に共有しにくく、その分野でサポートを受けにくい...
- 施策を前に進める役回りが固定化しているので、進行役やサポート役に自発的に手を挙げてくれると嬉しい...
これらの状態が少しでも良くなればと考え、課題の整理と具体的に何をするかを検討し始めました。
個人で課題の整理
なぜ改善を行いたいのか目的を整理する
まず手始めに現在プロセスに従って開発はできている中で、なぜ改善を行いたいと考えているのかを考えることにしました。「やりにくさを解消したい」を目的に置くのではなく「やりにくさを解消した結果どうなりたいか」を考えてアウトプットしていきます。
ここでのアウトプットは最終的に班の理想の状態として一つにまとめ、後続のギャップや具体的な理想的な行動を考えるためのインプットとしました。
理想の状態と現在のギャップを整理する
理想の状態と現在のギャップについて整理していきました。主観ではありますが、自分の考えるチーム活動はこうなんだけど班ではうまくできていないなと感じる部分を出していきました。
チームビルディングを行う前の課題感で上げた「頼りにくさ」「やりにくさ」と言った部分がこのタイミングで言語化できました。ギャップを整理する際にセットで、具体的にどのように行動できていれば理想的なのか?についても挙げ、解像度を高めることができました。
改善活動を想像しながら列挙する
班がどういった活動であれば目的にあった改善に向かうのかを想像し、チームビルディング手法にとらわれず雑多に列挙しました。具体的なチームビルディング手法については同僚と会話をした上で決定することを考えていたため、ここでは会話ができる程度に以下のアウトプットをしました。
- チームビルディングのイベントが、一方的に情報や意思決定を伝える場ではなく全員が意見を出し合う場になっている
- どんな状態なら今より良くなる?どんな所に不安を感じる?と言った普段しない会話をしている
- 会話の結果、良いチーム・良いチームの行動をドキュメントにまとめて見返せるようになっている
同僚とチームビルディングイベントの設計
同じ班のKさんと別の班のチーム作りが得意なHさんに協力して貰い、miroを読み合わせながら私の課題と感じる部分について会話しました。私の考える課題やそのギャップについて深掘りや認識違いがないか、班ではどのようなチームビルディングの手法が適していそうかについてフィードバックを貰いました。
(グレーの付箋はフィードバックの数々)
同僚との会話の結果、以下のチームビルディングを行うことにしました。
- ドラッカー風エクササイズを班で会話しやすいよう質問項目をカスタマイズした上で実施する
- ドラッカー風エクササイズで会話したことも踏まえながら、良いチームと思う行動をメンバーで書き出す会を実施する
チームビルディングの実施
班の当事者である私も会に集中できるようにと、別班のHさんに会の開催及びファシリテーションを請け負ってもらい、チームビルディングを実施しました。
チームビルディングの説明
まずはチームビルディングを行う目的・背景を参加メンバーに共有しました。課題の整理や同僚のFBも踏まえ最終的には以下のように書き出して共有しています。
⚪︎目的
- 班で働く人がユーザーへの価値提供までの道のりを不安なく、自信を持って進められるようになっていきたい
⚪︎分解
- メンバーやチームへの期待、不安を知り、一緒に働く人の考えも知った上で一緒に仕事をしているチームを作りたい
- 個々がサポートを信じて自分で進められる信頼関係のあるチームを作りたい
⚪︎背景
- 今チームビルディングをしたいのは、現状より少しでも価値提供のしやすい土台を強めていきたいと思っていて、そのために必要なのは一緒に働く人やチームの考えを知って協力しながら仕事を進めていくことだと考えている
- お互いを知っていれば以下のことに悩まずに一緒に仕事ができる
- これを依頼するの、大変かもしれない
- 自分としては大事だとおもったけど自信がない
- 小さいことで頼りにくい
- 時にはこれまでやったことがない仕事も進んでやってみて、必要な時には信頼できるメンバーに頼る
- こういった信頼関係を作って円滑に安心できるチームになっていくといいなと思っている
ドラッカー風エクササイズの説明
次にドラッカー風エクササイズの実施についての説明を行いました。ドラッカー風エクササイズについては目的やゴールイメージに合わせて項目を一部アレンジしています。
⚪︎目的
- 思い込みをなくし、お互いを知り、期待を伝え合う
⚪︎ゴールイメージ
- 相手に期待していることを伝え、期待されていることを認識すること
- 各メンバーの考え、得意なこと、不得意なことを知り自分以外のメンバーのことを知る
- 得意なことは頼る、苦手なことは助けるといった行動ができるようになる
⚪︎実施内容
- 以下の項目について各自事前に記載
- 得意なこと、好きなこと
- 苦手なこと、うっとなること
- 自分はどのようにチーム・班に貢献していきたいか
- それぞれのメンバーに期待すること(他メンバーへの期待を一人ずつ書く)
- 会では読み合わせを行いながら質問や会話をすることで理解を深める
⚪︎グランドルール
- 安心してこの会に参加して会話できるように以下を意識して参加する
- 少しでも良くするための活動であり、お互いや現状を非難するものではないです!
- 会話が大事なので小さいことや重複する意見だと感じても積極的に会話に参加して欲しいです!
- できるだけ質問をしてみましょう!
- お互いの考えを否定せず、考えについて質問をしたり異なる意見について会話してみましょう!
- 不安や悩みはウェルカムです!不得意なことを周りがサポートしやすくなります!
ドラッカー風エクササイズの開催
(ドラッカー風エクササイズの風景)
⚪︎読み合わせ
一人ずつ自分の得意と感じていること、苦手と感じていること、どのように貢献したいと思っているかを話していきます。その後、期待することについては記載したメンバーが本人に対して賞賛し、ネガティブなFBも交えながら期待することについて伝えていきました。
今回は会話することが重要と考え、制限時間を設けずに実施しました。
⚪︎会話
会の雰囲気は最初は緊張感もありつつ、参加者全員が一人一人の記載について意見を出していく形で終始記載内容について会話がありました。
以下のような会話をもとに参加者が深掘りのコミュニケーションが行われました。
- 得意/苦手だと思っていた
- 得意/苦手だと知らなかった
- 得意なことに書いてないけどこれも得意じゃないですか?
- こういった部分でも貢献してると思う
期待のパートでははっきりと期待を伝えるということを各自行っており前向きに会話がされていました。
- 期待されていると知らなかったので次からやる
- 今はできていないけど目標にしようと思った
- この期待されている部分は苦手なので何を求められてるのか確認したい
- 言われて気づいた
ネガティブなフィードバックについても、ネガティブなフィードバックも前向きに捉え改善のために会話を行うことができました。
- 受けた側は反論をせず学びとなる部分や改善方法について会話をする
- 普段のコミュニケーション齟齬から受けたネガティブフィードバックについては受けた側から意図を説明を行い、フィードバックを行った人が納得して次から気にならなくなる
冒頭に挙げたチームビルディングを行う前の課題感についても期待として率直に伝え合うことで各メンバー同士で認識を合わせることが出来ました。
良いチームや良いチームの行動をまとめる会の開催
ドラッカー風エクササイズでお互いを知り、期待を伝え合うことが出来た雰囲気のまま、各自が良いチームや良いチームと思う行動を出し合い、班の行動規範としてまとめる活動をしました。
⚪︎意見を出し合って分類
参加者で各々が考える良いチームについて自由に意見の付箋を書き出し、付箋について感想や別の考え方について会話しながらカテゴリごとにまとめていく活動を最初にしました。
⚪︎完成イメージ
活動の成果
参加者したメンバーは会を通して得たフィードバックをもとにできることから改善活動をしており、冒頭に挙げた「チームでの仕事のしにくさ」は改善していると感じています。特に積極的に発言をして関わるなど、できるところから仕事をリードする姿勢は班の中の行動として現れてきておりチームビルディングをした効果を実感できています。コミュニケーション不安や苦手な部分を補うことに躊躇はなくなり、今後ユーザーへの価値提供に集中するための土台ができたと感じています。
会を通しての参加者の反応
活動の学び
私がチームビルディングの実施前に課題と感じていた部分は蓋を開けてみると「期待を率直に伝え会話をする」ことで改善に向かうものでした。参加者が各々勇気を持って期待やネガティブフィードバックを率直に伝え、会話をすることが出来たため効果が現れたのだと思っています。共に働くメンバーとコミュニケーションをとる大切さについて再認識できる良いきっかけでした。
また、今回良かったことの一つとして会の設計段階で班内、班外のメンバーに意見を聞き具体的な会を設計したことがあります。準備段階で一人で考えたことの方向性は誤ってないか、どうしたら改善に向かうのかについて会話をすることで班に向いているチームビルディングを設計できることが出来たと思っています。
今後はチームビルディングの場に頼ることなく、班の中で期待や考えを伝え合い振り返り・改善していけるようになれたらと思います。