CES 2025 現地レポート: XRとFashion Techの未来を探る

CES 2025 現地レポート:XRとFashion Techの未来を探る

こんにちは、XR × Fashion TechやXR × Beauty Techといった領域を推進している創造開発ブロックの@ikkouです。

2025年1月7日から10日の4日間にかけてラスベガスで開催された「CES 2025」に一般参加者として現地参加してきました。なぜZOZOがCESに参加するのか、疑問に思われる方もいるでしょう。私自身が注力しているXR領域に関する最新動向の調査と、ZOZOとしても親和性の高いFashion Tech・Beauty Techのトレンドを一次情報として得るためです。現地で最新技術を直接体験することで、記事やニュースでは得られない深いインサイトを得られます。

私個人としては通算で6度目、ZOZO所属としては2020年、2023年、2024年に続き4度目の参加となります。継続して参加することで定点観測の意味もあります。

前半はCESの概要と関連する情報のアップデートを、後半は特に私が注目したトピックについてお伝えします。

CES 2025全体のトレンドについては、Day 2から会場で配布されているCES Daily Showのデジタル版 Day 1Day 2Day 3などをご覧ください。

CESとは

Venetian Expoの1Fと2Fをつなぐエスカレーター付近に設置されているCESの看板

CESはCTA(Consumer Technology Association)が主催する、毎年1月にラスベガスで開催される世界最大級を誇る「テクノロジーのショーケース」です。

読み方は「せす」と呼ぶ方もいますが、正しくは「シーイーエス」です。CESはかつて『Consumer Electronics Show』と呼ばれていましたが、現在この表記は使用されていません。CESは現在、何かの略称ではなく、単独の名称として使用されています。

CES 2025からCESのロゴが刷新された

昨年、CESを主催しているCTAは記念すべき100周年を迎えました。そしてCES 2025にあわせてCTAとCESのロゴがリニューアルされました。

CES 2025の6つのトレンドと49個のカテゴリー

CESには毎年CTAの打ち出すトレンドがあり、2025年1月5日に発表されたCTAのプレスリリースによると、2025年のトップトレンドとして、以下の6つが発表されました。

  • AI / Artificial Intelligence
  • デジタルヘルス / Digital Health
  • エネルギートランジション / Energy Transition
  • モビリティ / Mobility
  • クオンタム / Quantum
  • サステナビリティ / Sustainability

2024年はAI・万人のための人間の安全保障・モビリティ・サステナビリティの4つでした。2025年は万人のための人間の安全保障の代わりに、デジタルヘルス・エネルギートランジション・クオンタムが加わった形になります。

トップトレンドとは別に、次に挙げる49の技術領域が公式カテゴリーとして設定されています。

3D Printing, 5G Technologies, Accessibility, Accessories, AgTech, AR/VR/XR, Artificial Intelligence, Audio, Beauty Tech, Blockchain, Cloud Computing, Construction Tech, Content and EntertaInment, Cryptocurrency, Cybersecurity, Digital Health, Drones, Education Tech, Energy Transition, Energy/Power, Enterprise, Fashion Tech, Fintech, Fitness, Food Tech, Gaming and Esports, Home Entertainment and Office Hardware, Imaging, Investing, IoT/Sensors, Lifestyle, Marketing and Advertising, Metaverse, NFT, Quantum Computing, Retail/E-Commerce, Robotics, Smart Cities, Smart Home and Appliances, Sourcing and Manufacturing, Space Tech, Sports, Startups, Streaming, Supply and Logistics, Sustainability, Travel and Tourism, Vehicle Tech and Advanced Mobility, Video

かつて『家電見本市』と形容されていたCESですが、現在は家電だけに留まらず、非常に幅広い技術領域を網羅していることが印象的です。私が注目しているAR/VR/XRをはじめとする技術領域は太字で示しています。

CES 2025のメインテーマは「DIVE IN」

LVCC West Hallに設置されている#CES 2025のモニュメント

CES 2024のメインテーマ「All ON」に続くCES 2025のメインテーマは「DIVE IN」でした。直訳すると「飛び込む」ですが、物事に対して積極的に取り組むという意味もあります。未来への飛躍を象徴するテーマと言えるでしょう。

出展社数と参加者数の推移

コロナ禍以降の出展社数は減少しましたが、CES 2025では過去最高の4,500社以上が出展していました。参加者数は最盛期ほどではありませんが、昨年・一昨年に比べると少しずつ戻ってきています。コロナ禍前後の出展社数と参加者数の推移は以下の通りです。

年度 出展社数 参加者数
CES 2018 3,900社以上 182,198人
CES 2019 4,500社以上 175,212人
CES 2020 約4,500社 171,268人
CES 2021 約2,000社 約80,000人
CES 2022 2,300社以上 44,000人以上
CES 2023 3,200社以上 117,841人
CES 2024 4,300社以上 138,789人
CES 2025 4,500社以上 141,000人以上

なお、CESの参加者数は1桁単位で精密な数字が公表されていますが、これは参加バッジの発行数をもとにした重複カウントなしの純粋な参加者数です。CES 2025の正確な参加者数は後日公開される見込みです。

チケットの価格

LVCC West Hallのエントランスを仰ぐ

CES 2024の参加登録は2024年9月11日に開始され、チケットの価格は同12月5日までの早期登録が149 USD、以降は350 USDでした。私は昨年に続き「貴重なCESの卒業生(英語表記は“valued CES alum”)」向けの特典により無料でした。

直近半年間でドル円の為替相場が大きく変動したため、チケットの取得タイミングによっては多少の差が生じました。例えば早期登録の期間中にチケットを購入していた場合は149 USDで約21,200〜22,400円の変動幅に、通常登録の期間中にチケットを購入していた場合は350 USDで約52,500〜55,200円の変動幅になります。

昨年はCES公式のカンファレンスプログラミングパスを追加しましたが、今年は追加せずにブースのみを巡りました。これは単純に、カンファレンスに参加するとブースを巡るための時間を削減せざるを得ないこともありますが、セッション動画は後日公開されるため、そこに金銭的・時間的コストをかける必要はないと判断しました。これは参加する目的によっても異なると思いますが、私にとっては、ブースを巡ることが主目的のため、今回はカンファレンスプログラミングパスを追加しませんでした。

会場の概要

Image Source. https://www.ces.tech/explore-ces/maps-and-locations/

CESの展示会場はこれまでTech East・Tech West・Tech Southという3つのエリアに大別されていましたが、CES 2025ではTech EastがLVCC Campusに、Tech WestがVenetian Campusに、そしてTech SouthがC Space Campusにリネームされました。

工事が完了し再び利用されるようになったLVCC South

CES 2024ではTech EastにWestgateRenaissanceが含まれていましたが、CES 2025ではLVCCのみになりました。また、工事の完了したLVCC Southが再び利用されるようになりました。結果的にLVCCのみとなったことがリネームの理由と考えられます。同様にTech WestもVenetian Expoに統合されました。Tech SouthはC Spaceのため会場だったため、よりわかりやすい会場名になったと言えるでしょう。

一般の来場者向けの会期は4日間ありますが、1人で全ての会場・全てのブースを巡るのは非現実的です。私は例年通り主にマーケター向けのC Space Campusには行かず、以下の工程で会場を巡りました。

  • Day 1:LVCC Campus(WestとNorth)
  • Day 2:Venetian Campus全体
  • Day 3:LVCC Campus(Central)
  • Day 4:LVCC Campus(South)

4日間とも、とにかく歩き回りました。歩きやすい履き慣れた靴の準備が欠かせません。事前にある程度は計画して効率的に巡っているとはいえ、4日間の平均歩数は1日平均20,000歩を超えていました。

会場間の移動

とにかく会場間の移動には時間がかかります。今回、会場間の移動には徒歩、Vegas Loop、そしてLyftを利用しました。徒歩とLyftについては昨年からの特筆すべきアップデートはありませんでした。

Vegas Loop

Vegas Loopで見かけたTesla Model X

昨年、一昨年と毎回お世話になっているVegas Loopですが、今年もLVCC各ホール間の移動に何度か利用しました。

Image source. https://www.lvcva.com/vegas-loop/

Vegas LoopはLVCCのWest Hall・Central Hall・South Hall間を結ぶ無償のLVCCラインと、RESORT WORLDとLVCCの間を結ぶ有料のRESORT WORLDラインがあります。RESORT WORLDラインは開通当初、1日乗り放題で2.5 USDでしたが、CES 2023時は1日乗り放題で4.5 USDに値上がりしました。そしてCES 2024では5 USDに、今年のCES 2025では10 USDと大幅に値上がりしていました。

WESTGATE RESORT STATIONが延伸される予定

各ステーションに掲示された路線図には、LVCC RIVIERA STATIONからWESTGATE RESORTへの延伸予定が示されていました。これはWESTGATE RESORTのページでも示されています

The new Vegas Loop will connect to the existing station, making it easy for guests of Westgate Resorts to get around town.

そして、この路線は1月18日に開通したことが、The Boring CompanyのXアカウントで投稿されています

CES 2025ではWESTGATEが会場として利用されることはありませんでしたが、過去には利用されていたので、再び会場として利用される可能性も考えられます。また、会期中はビジネスミーティングのためのプライベートブースとして利用されているので、この延伸はビジネスミーティングの利便性向上にも寄与するでしょう。

Official CES Store

Official CES Store @ LVCC North Lobby

CES 2025ではCES公式のOfficial CES Storeが会場内に4ヵ所設置されていました。名称は異なりますが、CES 2024ではOfficial Show Storeとして同様のストアが会場内に5箇所設置されていました。

Official CES Storeで販売されていた$40の公式Tシャツ

様々なグッズが販売されていましたが、昨年同様、Tシャツやフーディーは生成AIで作成されたと思われるビジュアルが多く感じました。特にモナリザがVR HMDを装着しているユニークなデザインに惹かれました。

XR Tech

前述の通り、CESのカテゴリーのひとつに「AR/VR/XR」が設けられています。このパートでは、それらをXR Techとしてまとめてお伝えします。

XR関連企業の出展動向

Image source. https://exhibitors.ces.tech/8_0/floorplan/?hallID=B

CES 2025では、LVCC Central Hallに「GAMING | XR」とカテゴライズされた一画が設けられていました。「AR/VR/XR」と「Gaming and Esports」が統合された形です。

CES 2020では「AR/VR & Gaming」、CES 2023、2024では「GAMING | METAVERSE | XR」でした。私は昨年のレポート記事で「個人の感覚として、2024年においてもメタバースムーブメントが去年同様盛り上がっているかどうかについて疑義があります」と述べました。その通り、いよいよ「メタバース」というキーワードがカテゴリー名から消えました。事実、メタバースを全面に押し出したブースはほとんど見られませんでした。

Image source. https://exhibitors.ces.tech/8_0/floorplan/?hallID=B

このLVCC Centralの「GAMING | XR」エリアには62ブースが出展していました。VR HMDの「Pimax」、アクションカメラの「Insta360」、そしてARグラスの「XREAL」など中国企業が目立っていました。

LVCC Central Hallに単独初出展した日本発XR企業のShiftall(左)とDiver-X(右)

一方で、これまでPanasonicのブース内に出展していた「Shiftall」は独立してブースを初出展しました。また、CES 2023でJ-Startup枠に出展していた「Diver-X」も単独でブースを初出展するといった日本発XR企業が躍進している様子が見受けられました。

また、例年はスタートアップ企業が集まるVenetian CampusのEureka ParkにもXR関連エリアが設けられていましたが、CES 2025では見当たりませんでした。

CES 2023では「Gaming/Metaverse/XR」エリアとして16社が出展、CES 2024では「Gaming/XR」エリアとして7社が出展していました。このように、近年では関連するブース数が減少傾向にありましたが、CES 2025では、いよいよエリア自体が消失してしまいました。

ただし、XR関連ブースが必ずしもこれらのエリアに出展しているとは限りません。LVCC Campus・Venetian Campusともに、このエリアに限らずXR関連のブースは多くあり、「AR/VR/XR」カテゴリーとして登録されているブース数は355にも及びました。

CES Innovation Awardsから見るXRデバイスのトレンド

CESでは毎年、デザインやエンジニアリングにおいて優れた製品を表彰するCES Innovation Awardsを実施しています。XR関連の製品はXR Technologies & Accessoriesとしてカテゴライズされ、いわゆるHMD型・眼鏡型のXRデバイスは次の4製品が受賞しました。

3/4が眼鏡型のXRデバイスでした。これは、HMD型のXRデバイスが一般的になりつつある中で、眼鏡型のXRデバイスが注目されていることを示していると言えるでしょう。

ただし、CES Innovation Awardsは自発的な応募が必要なため、すべてのXRデバイスの中から選出されているわけではありません。そこで、次に出展ブースで実際に試したXRデバイスからトレンドを見ていきます。

出展ブースのXRデバイスから見るXRデバイスのトレンド

CES 2025で体験したXRデバイス(HMD型・眼鏡型)の一部

例年通り、CES 2025でもたくさんのXRデバイスを試してきました。この写真はHMD型・眼鏡型のXRデバイスの一部です。この他にも、例えば「Mudra Band」のような手首に装着する筋電デバイスもあります。

写真から一目瞭然ですが、非常に多くの眼鏡型デバイスが出展されていました。これは、HMD型デバイスが普及する中、眼鏡型デバイスへの関心が高まっていることを示していると考えています。

ARグラスとスマートグラス

一口に眼鏡型デバイスといっても、その機能や性質から「ARグラス」と「スマートグラス」に大別できます。

ARグラスは、現実世界にデジタル情報を重ね合わせることができるデバイスです。CES 2025への出展はありませんでしたが、SnapchatのSnapがクリエイター向けに展開している「Spectacles」は代表的なARグラスです。ARグラスは原則としてディスプレイを搭載し、スマートグラスと比較してトラッキング性能が優れていることが特徴です。

ARグラスに対してAR機能を持たない眼鏡型デバイスがスマートグラスです。市販されているMetaとRay-Banによる「Ray-Ban Meta」やAmazonの「echo frames」、そしてCES 2025の会場で試したほとんどの眼鏡型デバイスはスマートグラスです。スマートグラスはディスプレイを搭載しているものと搭載していないものに細分化できます。CES 2025では特にAI機能を搭載し、リアルタイムで会話を翻訳するスマートグラスを多数見かけました。

ここでスマートグラスの例として挙げている「Ray-Ban Meta」はまだ日本で販売されていませんが、USではある程度普及しているように感じました。ラスベガス市内で「Ray-Ban Meta」を取り扱っている店舗で聞いた話では、継続的に品薄または売り切れ状態が続いているとのことでした。

補助デバイスとしてのスマートグラス

XR Techというと五感の内、視覚に焦点が当てられがちですが、これは「見える」ことを前提としています。しかし、加齢や健康状態の影響で視覚を含む五感の機能が低下することもあります。CESでは、こうした視覚や聴覚の補助を目的としたデバイスもいくつか出展されていました。

エルシオによる「オートフォーカスグラス」

大阪大学発スタートアップのエルシオによる「オートフォーカスグラス」
出典:https://elcyo.com/

大阪大学発スタートアップのエルシオは、自動でピントが合うメガネ「オートフォーカスグラス」を出展していました。見る距離や目の状態に合わせてフレネル液晶レンズが変化し、近視・遠視に問わずひとつの眼鏡で快適な視界を提供するものです。ジャンルとしてはスマートグラスに分類されますが、視覚の補助デバイスの一例と言えます。

技術的なアプローチは異なりますが、CES 2024に出展していたViXionも「ViXion01S」というオートフォーカスアイウェアを2025年5月に発売予定です。

EssilorLuxotticaによる「Nuance Audio」

EssilorLuxotticaによる「Nuance Audio」
出典:https://www.nuanceaudio.com/en-us/c/hearing-glasses

EssilorLuxotticaはCES 2024に続き、CES 2025でも聴覚を補助する機能を持つヒアリンググラス「Nuance Audio」を出展していました。眼鏡型デバイスなので、視覚にあわせて聴覚も補助できるヒアラブルデバイスとも言えます。

EssilorLuxotticaはRay-Ban Metaも手掛ける世界最大手の眼鏡ブランドで、和真眼鏡の和真や福井めがね工業など、複数の日本企業も傘下に持っています。

USでは補聴器に分類されるため、現在はFDAの承認待ちとのことです。2024年にはAppleのワイヤレスイヤホン「AirPods Pro 2」も補聴器としてFDAが承認し、日本でも同年11月からヒアリング補助プログラムが提供されています

私は以前患った突発性難聴が完治せず、聴覚に対して課題を抱えているため、このようなヒアラブルデバイスに対しては特に興味を持っています。普段使いしやすい見た目にも惹かれます。

Gentex Corporationによる「eSight Go」

Gentex Corporationによる「eSight」
出典:https://www.nuanceaudio.com/en-us/c/hearing-glasses

eSight Go」は加齢に伴う黄斑変性などを始めとする課題を、カメラを通した映像で自然に補える視覚障がい者向けのウェアラブル補助デバイスです。ズーム機能により、遠方の対象を拡大して見ることもできます。

Gentex Corporationは例年CESでeSightを含む各種製品を出展しています。もともとはeSightと協力して開発していたデバイスですが、2024年の買収により、Gentex Corporationによって買収されています。

要素技術

CESでは完成している製品の他、製品を構成する要素技術となるものも多数出展されていました。その中で日本発の気になるものをいくつか紹介します。

Cellidによる「最新のウェイブガイド」

CellidによるメガネタイプARグラスと最新のウェイブガイド
出典:https://cellid.com/news/20241216

世界最大級の視野角を持つガラス製ウェイブガイドをはじめとするARグラス用ディスプレイを開発するCellidは、メガネタイプARグラスのリファレンスデザインの他、最新のウェイブガイドを出展していました。

CellidはCES 2022以降、毎年出展している日本発のスタートアップで、これまではウェイブガイドを中心に出展していましたが、いよいよ自社開発のARグラスを開発しました。毎年確実に進化を遂げていて、将来的には数多の眼鏡型デバイスに使用されると考えています。

DUAL MOVEによる「tXR display」

JAPAN TECH出展企業のひとつであるDUAL MOVEは、透過型の裸眼立体視ディスプレイ「tXR display」を出展していました。

これは、眼鏡型デバイス向けのものではなく、自動車のフロントガラスなどに搭載しているもので、いわゆる「車窓XR」として利用されることを想定しています。一般的なディスプレイと比較すると解像度は高くありませんが、透過で利用できることと、裸眼で立体視可能であることが大きな特徴です。

CESではモビリティも人気の技術領域で、特に自動運転は注目されています。tXR displayのような透過型の裸眼立体視ディスプレイはナビゲーション用途だけではなく、自動運転中のエンターテイメントにも活用できると考えられています。日本でも複数の「XRバス」が既に運用されていますが、その多くは平面なので、立体視ディスプレイを搭載することで、よりリアルな体験が可能になるかもしれません。

AGCによる「AR/MRグラス向け高屈折率ガラス基板」

ガラスをはじめとする製品を取り扱うAGCは、AR/MRグラス向けの高屈折率ガラス基板M100/200シリーズ」を出展していました。これは眼鏡型デバイス向けのディスプレイに使用することを想定したもので、視野角の拡大や画像の鮮明化に繋がるとされています。

Fashion TechとBeauty Tech

CES 2024でBeauty Techの集まる一画が設けられたものの、カテゴリーとしては存在していませんでした。しかし、CES 2025では注目の高まりに伴い、Fashion TechとBeauty Techがそれぞれカテゴリーとして設けられました。また、CES Innovation Awardsのカテゴリーとしても設けられています。

「Fashion Tech」カテゴリーとして登録されているブース数は97、そして「Beauty Tech」カテゴリーとして登録されているブース数は130でした。ただし、カテゴリーは出展企業が複数指定できますが、これまではDigital Healthカテゴリーなどを設定していた企業も多く、必ずしもFashion TechやBeauty Techとして登録されているわけではありませんでした。個人的に興味を惹かれたブースをいくつか紹介します。

コーセーによる「Mixed Reality Makeup」

コーセーによる「Mixed Reality Makeup」

CES 2023に初出展したコーセーが、当時出展した『デジタルパーソナルカラー体験「COLOR MACHINE」』を『Mixed Reality Makeup 0 min try-on studio』として進化させて出展していました。先に紹介したCES Innovation AwardsのXR Technologies & Accessories部門にも選出されています。

これはいわゆる「ARメイク」や「Virtual Try-on」と呼ばれる取り組みで、プロジェクターで顔にメイクのテクスチャを投影することで、実際にメイクをしているかのような体験ができます。化粧品の色味を正確に再現することと、1000fpsの超高速プロジェクションマッピングにより顔の動きに追随することが特徴です。

体験している様子を私のXアカウントに投稿しているので、興味がある方はぜひご笑覧ください。

Mixed Reality Makeupの体験後、実際にタッチアップしてもらえた

この取り組みは実店舗に設置することを想定しています。この記事を読んでいる皆さんもコーセーの旗艦店である「Maison KOSE銀座店」で「COLOR MACHINE」を体験できます

私たちも「ZOZOCOSME」の「ARメイク」や「WEAR by ZOZO」の「WEARお試しメイク」を提供していますが、オンラインでのEコマースとは異なる、オフラインの実店舗ならではの取り組みとして注目しています。

アシックスとダッソー・システムズによる「パーソナライズドフットウェア」

アシックスとダッソー・システムズによる「パーソナライズドフットウェア」

日本発のアシックスは、2024年7月にフランス発のダッソー・システムズと提携し、パーソナライズドフットウェアを開発すると発表しました。ダッソー・システムズのブースではこの取り組みの一環として、既に発売されている3Dプリント製のサンダル「ACTIBREEZE 3D SANDAL」の他、スニーカーのプロトタイプも展示されていました。このスニーカーを試し履きしましたが、中空構造の独特な歩き心地がとても印象的でした。

私たちも計測技術のひとつとして足の形をミリメートル単位で3D計測できる「ZOZOSHOES」を提供しているので、ある側面では競合にあたるかもしれません。しかし、こうした取り組みは、計測技術を用いたパーソナライズドフットウェアの普及に向けた一歩と言えるでしょう。

ブースの様子はダッソーシステムズのFacebookページで確認できます。映像中にも登場しますが、Meta Quest 3を用いたXRコンテンツも体験できました。

Prinkerによる「Prinker POP」

Prinkerの新製品「Prinker POP」

例年CESにテンポラリータトゥーデバイスを出展していたPrinkerは、CES 2025にあわせて「Prinker POP」を発表、出展しました。Prinker POPは、従来のPrinkerとは異なり、キオスク端末でユーザーがカスタムしたメイクアップパレットを作成できるパーソナライズドサービスです。

実際にキオスク端末で作成したカラーパレット

これまでのPrinkerは個人が所有するtoC向けのデバイスでしたが、Prinker POPは店舗などに導入することを想定しているtoB向けのデバイスです。カメラを通して自身の顔でシミュレーションした色味をメイクアップパレットに出力するものなので、ARメイクの一種と捉えることもできます。テンポラリータトゥーのPrinkerは日本でも購入できますが、このPrinker POPが日本に上陸するかどうかは未定です。

その他の気になったFashion TechとBeauty Tech

ロレアルグループによる「ロレアル セル バイオプリント」

ロレアルグループによるパーソナライズされた肌分析を提供する卓上型ハードウェアデバイス「セル バイオプリント」
出典:https://www.loreal.com/ja-jp/japan/press-releases/group/j-ces-2025/

CES 2024でBeauty系企業として初めてキーノートを開催したロレアルグループは、CES 2025にあわせてパーソナライズされた肌分析を提供する卓上型ハードウェアデバイスの「ロレアル セル バイオプリント」を発表しました

このデバイスは、2025年後半にアジア圏で試験的に導入される予定とされています。初出がアジア圏ということには驚きましたが、これは韓国のスタートアップ企業とのパートナーシップによって実現している背景からだと考えられます。近隣の日本でも導入される可能性があるため、注目していきたいと思います。

Withingsによるスマートミラー「OMNIA」

www.youtube.com

スマート体組成計をはじめとする健康に結びつくスマートデバイスを提供するWithingsは、CES 2025にあわせてスマートミラー業界に参入して「OMNIA」を発表しました。

OMNIAは、体組成はもちろん、あらゆるデータをAIとともに可視化してくれるデバイスです。ブースではまだデモ展示のみでしたが、どんなことができるかはYouTubeに公開されているティザー動画で、どんなことができるかがわかります。

CES 2025ではSamsungも同様にスマートミラー業界に参入して「MICRO LED Beauty Mirror」を発表しました。以前からスマートミラーは出展されていましたが、2社の参入により今まで以上にBeauty Techとして注目される分野になると考えています。

おわりに

ラスベガスの玄関Harry Reid Airport

例によって今回のCES視察は開発部門の福利厚生である「セミナー・カンファレンス参加支援制度」を利用しての参加となります。

今回は直行便を選択したためフライトのコストはCES 2024当時よりも高くつきましたが、乗り継ぎがない分、時間を有効に使えたと考えています。CES 2026の開催日程は、すでに2026年1月6日から9日の4日間と発表されています。参加意向のある方は、できるだけ早く手配することをおすすめします。

例年通りのことですが、フライトとホテル以外にも一定の金銭的コストが発生しています。CESに限らず、海外で開催されるカンファレンスにおいては、そのコストに対して得られる成果に対するコストの正当性を説明するのは難しいかもしれません。しかし、XR領域は「百聞は一見ならぬ“一体験”にしかず」です。CESに関するニュース記事はCESの会期中から多く目にしますが、現地に足を運び、自らの目と手で体験し、一次情報を得る重要性を再認識しました。

そして、CESはビジネスショーという性質上、個別に会話するプライベートブースが用意されています。いくつか参加しましたが、こういったオンサイトならではの対面コミュニケーションも、インターネットメディアの記事等からは得られない大きなメリットだと考えています。せっかく参加するのであれば、あらかじめそういった場をセッティングしておくことを強くおすすめします。

最後までご覧いただきありがとうございました。来年もまた、CES 2026のレポートをお届けできるように努めてまいります。

ZOZOでは、各種エンジニアを採用中です。ご興味のある方は以下のリンクからご応募ください。

corp.zozo.com

現場からは以上です!

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