物流業界で利用されるシステムの一つが倉庫管理システム(Warehouse Management System、以下WMS)です。WMSは、倉庫内の物品の入出庫や在庫管理、ピッキングなど、さまざまな物流業務を統合的に管理します。物流業務の効率化と精度向上を目的としており、正確な在庫管理や出荷プロセスの最適化を支援します。
e-Statによると日本国内における2023年度の営業用トラックによる輸送量は約2,000億トンキロを超えており、さらに増加する予想となっています。そのため、物流業界はさらなる効率化が求められており、その中でWMSの重要性はますます高まっています。本記事では、品質の高いWMSを実現するのに欠かせない、テスト自動化の導入ポイントについて解説いたします。
[出典]: 自動車輸送統計調査 自動車輸送統計年報 年度次 2023年度 \| ファイル \| 統計データを探す \| 政府統計の総合窓口
WMSシステムの概要
WMSの主な機能は以下が挙げられます。
- 在庫管理
- 入出庫管理
- ピッキング管理
- 棚卸管理
- 発送管理
こうした機能は、倉庫の大小に関わらず必要な機能になります。日々の入出庫データを入力し、データに合わせて在庫管理を行うことで、在庫の適正化を図ります。ピッキングは手作業で行われるケースも多いですが、ピッキングリストはWMSから出力されます。同時に送り状も印刷され、ピッキングされた物品に対して貼り付けられます。
入荷時には検品を行い、不具合なく物品が入庫したことを確認します。この時、バーコードやRFIDを利用して在庫データを更新します。逆に出荷時にはピッキングリストに合わせて製品をピックアップし、出荷情報をバーコードやRFIDと紐付けて管理します。
入出庫データは基幹システムである販売管理や、生産管理システムと連携しています。そのため、WMSは基幹システムとの連携が重要であり、データの整合性を常に保ちづけなければなりません。
在庫は常に正しいのが基本ですが、さまざまな事情で数が合わなくなります。たとえば雨漏りなどによる商品の破損、盗難、商品の不良などが考えられます。そのため、定期的な棚卸しを行い、在庫数と実数の差異を確認します。
この際、WMSは在庫数の更新を行い、データの正確性を保ちます。なお、在庫数の増減に際しては常に日付や作業者とともに記録する必要があり、履歴としてデータを管理します。これにより、過去の在庫数の変動を追跡し、問題が発生した際に原因を特定できます。
WMSはビジネスの成長とともに拡張、または縮小が発生します。たとえば倉庫の追加や拡大、物流業者の追加、国内だけでなく海外の倉庫が追加されるケースもあります。そのため、WMSには高い柔軟性と拡張性が求められます。柔軟性に欠けるWMSを構築してしまうと、ビジネスの拡大に対応できず、ボトルネックにつながりかねません。
さらに、WMSはユーザーフレンドリーなインタフェースが求められます。倉庫スタッフはITシステムの専門家ではなく、かつ実製品を扱うのが主な業務になります。実際の入力は社員ではなく、アルバイトやパートスタッフが行うケースも良くあります。システムに不慣れな人員でも理解しやすく、入力ミスが発生しづらいインタフェースが求められます。
2024年物流問題
最近の物流業界で度々話題に挙がるのが「2024年物流問題」です。これは、物流ドライバーの働き方改革に伴うもので、労働時間に上限が課されることになりました。時間外労働時間が、年間960時間に制限されます。これにより、物流業界は大きな変革を迫られています。
問題視されているのは、労働力不足に伴う輸送能力の低下です。ソフト的、ハード的な解決策がさまざまに行われていますが、WMSへの影響も少なくはありません。これまでトラックに頼っていた物流を、鉄道や船舶、航空機を利用するケースも増えます。そのため、WMSは新しい輸送手段への対応が求められます。
また、環境問題も大きな課題です。トラックでの輸送はCO2排出量が多く、環境負荷が大きいとされています。そのため、輸送ルートや在庫管理の最適化を実現するWMSが求められます。
物流業界全体での人材不足も深刻です。在庫管理やピッキングでの自動化、ロボティクス導入も進められています。少ない人員でも効率的に業務を遂行し、生産性の維持が求められるでしょう。自動化が進めば、より高いレベルでのWMSとの連携が必要になるでしょう。
物流システムにおけるテスト自動化
WMSでは、帳票や入出庫など実際の物品が伴う業務が多数あります。そうしたシステムのテストでは、完全な自動化を実現するのは難しいでしょう。しかし、システム間のデータフォーマットや入出力タイミングなど、自動化できる部分も多数あります。こうした部分についてテストを自動化すれば、手動テストの領域を少なくできるでしょう。
WMSは他の基幹システムとの連携が多く、システムが複雑になります。また、入出庫は企業のビジネスに直結しているため、万一の不具合がビジネスに与える影響が小さくありません。在庫管理、ピッキング、発送管理などミスが許されない重要な業務を扱うため、手動テストでは膨大な時間と労力がかかります。テストを自動化することでテスト工数を大幅に軽減し、さらにシステム修正に伴うデグレをいち早く発見できます。
テスト自動化のメリットとしては、高速なテスト実行はもちろん、さまざまな条件を利用したテストの実行、一貫性の確保、そして工数の削減が挙げられます。一度テストスクリプトを作成すれば、何度も繰り返し実行できるのがメリットであり、24時間いつでもテストを実行できます。デメリットとしては、初期導入コストの高さやテストスクリプトのメンテナンスが挙げられます。なるべく学習コストの小さい、メンテナンス工数の低いツールを選定しましょう。
WMSではバーコードリーダーやプリンターとの連携も求められます。そのため、Windowsのようにサポートされるハードウェアデバイスが多いOSをクライアントアプリケーションとして選ばれるケースが多いです。こうしたWMS特有の要件に応じた自動化テストツールの導入も重要です。
バルテスの提供するT-DASHは「誰でもカンタンにテスト自動化ができる時代へ」をコンセプトに、低学習コストで利用できるテスト自動化ツールを提供しています。Windowsアプリケーションにも対応しているので、WMSのクライアントアプリケーションの自動化テストにもご利用いただけます。
まとめ
物流業界は2024年問題を皮切りに、さらなる進化と効率化が求められています。WMSはその根幹を支えるシステムとして、ますます重要性を増していくことでしょう。
より品質と信頼性の高いWMSを構築するために、テスト自動化を積極的に導入してください。
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