なぜGoogle Apps Scriptは企業のDXに必要不可欠なのか

Google Apps Scriptとは？

※画像引用元：https://developers.google.com/apps-script?hl=ja

Google Apps Script（GAS）は、Google Workspaceの各アプリケーション（Google スプレッドシート、Google ドキュメント、Google ドライブ、Gmailなど）を連携させ、自動化や拡張を可能にするスクリプト言語です。JavaScriptをベースにしており、初心者でも比較的容易に学習・開発できるのが特長です。

また、ブラウザ上での開発が可能で、ユーザーはサーバーを別途準備する必要もありません。 Google Cloudにはさまざまなサーバーレス・プロダクトが存在しますが、 GASはGoogleが一番最初にリリースしたフルマネージドのサーバーレス・プロダクトであると言えます。

生成AIの出現により、GASの利用者が増加？

昨今、生成AIの発展により、プログラミングのハードルが下がり、私の周りでは、 GASの利用者が増加しています。従来はスクリプトの記述にある程度のプログラミングスキルが必要でしたが、AIの支援を受けることで、非エンジニアでも簡単にスクリプトを作成できるようになりました。

GeminiやChatGPTを利用することで、ある程度の品質のGASコードを生成することが可能になり、弊社でも、非エンジニアが実際にGASを使って業務の自動化を実施しています。もちろん、生成AIにはハルシネーションのリスクがあるため、100%の精度は期待することはできませんが、生成AIの出現により、 GASがローコードツールとしてより、市場に受け入れられ始めていると感じています。

企業のDX推進におけるGoogle Apps Scriptの強みとは何か

GASの一番の強みは、私たちの日々の業務で発生する「繰り返し作業」を自動化してくれるところです。特にGoogle Workspaceを導入している企業であれば、Gmailやスプレッドシート、ドキュメントといったツールを利用して、日々の業務を実施していると思いますが、これらツールを活用した連続する業務タスクをGASによって、全て自動化することができます。本章では、DXにおけるGASの役割について、ポイントをまとめます。

Google Workspaceとのシームレスな統合と業務の自動化

GASはGoogle Workspaceとネイティブに連携できるため、新たなツールを導入することなく、既存の環境内でDXを推進できます。たとえば、以下の用途での利用が考えられます。

• Google スプレッドシートをデータベースとして活用し、動的なデータ管理を実現する
• Google ドライブのフォルダ・ファイル整理を自動化し、検索性を向上させる
• Google カレンダーと連携し、会議の自動予約やリマインダー通知を実施する

Google Workspace以外の業務サービスとの連携

GASはGoogle Workspaceの各プロダクトをシームレスに統合することが強みであると説明しましたが、それはGoogle Workspaceだけに留まりません。APIが公開されているツールであれば、論理的にはどのようなサービスであっても連携が可能です。たとえば、以下の用途での利用が想定されます。

• CRM（Salesforce, HubSpot, Zoho CRMなど）との連携
  • Google スプレッドシートとCRMを連携し、営業データをリアルタイムで同期する。
• プロジェクト管理ツール（Trello, Asana, Jiraなど）との連携
  • Google フォームの入力内容をTrelloやAsanaに自動登録し、タスク管理を最適化する。
  • Jiraの課題管理をGoogle スプレッドシート上で可視化する。
• カスタマーサポートツール（Zendesk, Freshdesk, Intercomなど）との連携
  • サポートチケットのデータをGoogle スプレッドシートに自動同期し、分析を実施する。
  • Google カレンダーと連携し、サポート担当者の対応スケジュールを自動更新する。

低コストでの導入と運用

GASはGoogle Workspace含めたGoogleアカウントを保持するユーザーであれば、誰でも無料で利用可能であり、追加のインフラ投資が不要なため、低コストで業務改善を図ることができます。具体的には以下のようなメリットがあります。

• サーバーレス環境のため、インフラ管理が不要
• ライセンス費用がかからず、スモールスタートが可能
• 社内の担当者がスクリプトを作成・運用できるため、開発コストを削減することができる

Google Apps Scriptの活用事例

私がこれまで実施してきたGASの事例化のユースケースをいくつかご紹介します。

社員総会スライドの英語化対応

弊社では、半期に一回社員総会を実施しているのですが、海外にもいくつか支社があるため、日本語で作成したスライドを、翻訳する必要があります。社員総会チームでは、これまで日本語で作った資料に対して、英語が扱えるメンバーのリソースを使って、英語化対応を実施していましたが、スケジュール的な問題で間に合わない可能性が出てきたため、私の方でGASによる自動化の支援を実施しました。対応はとても簡単なもので、単純にGoogle スライドの全テキストを抽出し、GASが標準で用意している翻訳機能を使って、テキストを英語に置換しただけです。動作確認も含めて、約30分ほどで実施し、数日間かかる予定だった作業があっという間に完了しました。

プロダクトの開通作業をAppSheetとGASで完全自動化

弊社内で取り扱っているサービスの開通プロセスとステータス管理をサポートチームが複数のツールの組み合わせで実施していましたが、ツールを横断するのが手間なのと、情報共有のコストが大きな負荷になっていたため、 AppSheetとGASによって、開通プロセスの最適化を行いました。各ツールでの作業については、GASからAPIを実行することで自動化し、ステータス管理は全てAppSheetで行うようにしました。AppSheetは非常に便利なツールではありますが、開発するには受け入れないといけない制約が存在するため、その制約回避にGASを活用することにしました。

顧客に返信忘れのメール件数を担当者に定期通知

業務の中で顧客への返信漏れが発生し、この問題の回避策としてGASを活用しました。Gmail APIをラップしたGASの関数を利用して、返信忘れのスレッド一覧を取得し、件数とメール内容を担当者にSlaskで通知するスクリプトを実装しました。これにより、メンバーは通知によって、メールの返信漏れに気づくことができるようになりました。

以上がGASによるユースケースの一例になりますが、GASがさまざまな要件にも柔軟に対応できるローコードツールであることが実感できたのではないでしょうか。

まとめ

GASは、企業のDXを推進し、業務の効率化と自動化を実現する強力なツールです。Google Workspaceとの統合、柔軟なカスタマイズ、低コスト運用のメリットを活かすことで、企業は迅速かつ効果的に業務改善を進めることができます。

特に、GASの活用は、手間のかかる定型業務を自動化することで、従業員の生産性を向上させるだけでなく、データの一元管理やリアルタイムな情報共有を可能にし、組織全体の業務の透明性を高める効果があります。また、生成AIとの組み合わせにより、非エンジニアでもスクリプトを活用しやすくなり、業務の自動化がより広範に進められるようになっています。

GASの導入は、単なる効率化の手段ではなく、企業のデジタル変革を推進するための重要なステップとなります。競争力を強化し、DXを推進するために、Google Apps Scriptの活用を積極的に検討してみてはいかがでしょうか？

※Google CloudおよびGoogle Cloud製品・サービス名称はGoogle LLCの商標です。
※ChatGPTはOpenAI OpCo, LLCの商標です。
※JavaScriptはOracle America, Inc.の商標です。
※SalesforceはSalesforce, Inc.の商標です。
※HubSpotはHubSpot, Inc.の商標です。
※ZohoはZoho Corporation Private Limitedの商標です。
※TrelloはTrello, Inc.の商標です。
※AsanaはAsana, Inc.の商標です。
※JiraはAtlassian Pty Ltdの商標です。
※ZendeskはZendesk, Inc.の商標です。
※FreshdeskはFreshworks, Inc.の商標です。
※IntercomはIntercom, Inc.の商標です。