Amazon Web Services ブログ
株式会社サンブリッジ様の AWS 生成 AI 事例「Slack と連携したシームレスな生成 AI チャットボットを作成し、累計 1,750 分の業務時間削減に成功」のご紹介
本ブログは株式会社サンブリッジ様と Amazon Web Services Japan が共同で執筆いたしました。
みなさん、こんにちは。AWS ソリューションアーキテクトの杉山です。
生成 AI の活用シーンが急激に増えてきており、今この瞬間に時代が変化しているのだと感じる毎日です。本日は、社内の業務効率化における生成 AI の活用事例として、株式会社サンブリッジ様 (以下、サンブリッジ様) の取り組みをご紹介します。わずか 2 週間という短期間で構築された社内向け AI チャットボットが、どのように業務改革を実現したのか、その導入プロセスから具体的な成果までをお伝えしていきます。
株式会社サンブリッジ様は、企業のビジネスモデルに合わせて AWS や Salesforce をはじめとした、お客様の課題解決において最適なクラウドサービスを用いてビジネス分析や導入、運用までをワンストップでトータルコーディネートし、お客様のビジネス拡大・業務改善を支援する企業です。今回、サンブリッジ様は AWS Japan が主催する「生成 AI コンテスト」に参加したことをきっかけに、Amazon Bedrockや Amazon Kendra といった AWS のサービスを組み合わせて、わずか 2 週間で社内向けの AI チャットボットを構築しました。Slack とのシームレスな連携によって問い合わせ対応を集約し、1 週間で累計 1,750 分もの業務時間削減を実現しています。
背景と課題
サンブリッジ様では、企業成長とともに社員数および社内ドキュメントの量が増大してきました。ドキュメントはクラウドストレージやファイルサーバなどに分散しており、アクセス方法も保管場所も統一されていない状態が続いていました。このため、必要な文書へアクセスするだけで大きな手間が発生し、対応に時間がかかる場面が日常的に見受けられました。さらに、部署やプロジェクトによってチャットツールが異なるなど、問い合わせチャネルが複数存在していたことも問題となり、同じような質問が部署ごとに何度も繰り返されるケースが生じていました。結果として特定の社員に問い合わせが集中し、問い合わせを受ける側は「同じ回答を繰り返す」「一貫した回答をするために最新の資料を探す」などの作業に時間を費やす状況になっていました。
ソリューション構築のアプローチ
こうした課題を解消するため、サンブリッジ様は AWS Japan 主催の「生成 AI コンテスト」に参加し、社内向けの AI チャットボットを構築するプロジェクトに取り組みました。プロジェクトの進め方としては、まずコンテスト期間という明確な締め切りがあるため、短期間で検証から実装・運用開始まで走り切ることを目標に設定しました。チャットボットには Amazon Bedrock を活用し、大規模言語モデル (LLM) が柔軟かつ安全に応答を生成できるようにしています。さらに Amazon Kendra を組み合わせることで、高精度な検索結果を得られる仕組みも導入されました。これによりチャットボットが回答を生成する際に、質問と関連性の高い文書やナレッジを素早く検索し、根拠のある回答を提示できるようになりました。
接続されるチャットツールとしては Slack を採用し、既に社員が日常的に使っている環境へスムーズに組み込みました。短期間のプロジェクトであることからスコープは最小限に絞り、PoC (概念実証) レベルで AI チャットボットのコア機能を作り込んだうえで、本番環境でのクローズドテストを実施して精度向上や機能追加を行う手法を採用しました。社内文書はおよそ 9,000 件をKendra に登録し、Retrieval-Augmented Generation (RAG) の手法で回答と一次情報 (文書ソース) を紐付ける仕組みも取り入れることで、回答の信頼性を高めています。
導入後の成果
この AI チャットボットは約 80 名の従業員を対象に早期からテスト稼働が行われました。稼働開始から 1 週間で、250 回以上の問い合わせと回答が Slack 内でやりとりされ、従来の問い合わせ対応が抱えていた課題の大部分が解消されています。
1 回の問い合わせに要していた時間は平均 7 分程度であると計算されており、チャットボットを導入して 1 週間の間に対応業務が累計 1,750 分 (約 29 時間) 削減できたという試算が得られました。これは、以前は担当者がドキュメントを探したり他部門と連携を図ったりして回答していた手間を省けるようになったことが大きく寄与しています。回答の根拠となる文書 URL も自動で提示されるため、回答の信頼性が向上しただけでなく、「どこを参照すればよいのか」が明示されることで、社員の情報リテラシー向上や文書の管理意識の再確認といった副次的効果も生まれています。
今後は AWS Glue を活用したコンテンツ収集・登録の自動化を視野に入れており、より多くの社内文書を継続的に Kendra へ取り込むことで、回答の網羅性を高める計画です。サンブリッジ様はこれによって、累計で 50,000 分 (5人月以上) に相当する工数を削減できる可能性を見込んでいます。
今後の展望とまとめ
サンブリッジ様は生成 AI コンテストという外部イベントに参加することで、AI チャットボット導入のアイデアを短期間で具体化し、さらに実際の業務上の課題を解決する段階まで速やかに移行できました。今回導入したチャットボットは、すでに問い合わせ集約と回答の一元化による効果を示しており、その成功を踏まえて今後はさらなる機能拡張に着手する方針です。
例えば社内で利用する他のチャットツールや CRM (Salesforceなど) とも連携し、問い合わせの履歴や回答内容をスムーズに共有するなどのアイデアが検討されています。RAG の高度化やユーザーインターフェイスの改善によって、回答の精度向上や使い勝手の向上を追求していく計画です。
サンブリッジ様の取り組みは、わずか 2 週間でチャットボットを立ち上げ、1 週間で 1,750 分の業務効率化を実現するという成果をあげています。こうした成功の背景には、Amazon Bedrock やAmazon Kendra といった AWS のサービスを柔軟に組み合わせ、既存のコミュニケーション基盤である Slack と連携させるという、精度・実用性・導入ハードルを両立する設計上の工夫があります。
「AWS が主催する生成 AI コンテストに参加することで、ユースケース選定からサービス実装までを短期間で実現することができました」と語るのは、株式会社サンブリッジ 執行役員の山﨑 秀樹氏です。その言葉の通り、本事例は生成 AI を業務改善に役立てたいと考えている企業にとって、多くの示唆を与えるものと言えるでしょう。