生成AIが組み込まれたBIツール「Amazon Q in QuickSight」のご紹介

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サーバーワークスの村上です。

このブログではAmazon Q in QuickSightについてご紹介させていただきます。

AWSの生成AIスタック全体像

AWSの生成AIスタックは主に3つの層に分かれています。

  • 最下層:大規模言語モデル (LLM) の学習や推論を支えるインフラストラクチャ
  • 中間層:生成AIアプリケーションを構築するために必要なモデルやツールを用意
  • 最上層:生成AIが組み込まれたアプリケーション

この中で、Amazon Q in QuickSightは最上層に位置し、生成AIがBIツールに統合されたアプリケーションを提供します。

Amazon Q in Quicksightは最上位のLLMアプリケーション層に位置する

今回利用するデータ

携帯電話サービスの顧客データを利用します。

居住する都道府県や請求金額、解約したか否か(True/False)などのカラムが用意されています。

データはこちらのハンズオンで提供されています。

機能紹介

自然言語によるビジュアル作成・編集

Amazon Q in QuickSightの魅力的な機能の一つが、自然言語によるビジュアルの作成です。

例えば、「県ごとの請求額」と入力すると、Amazon QによってTotal 全利用請求料金 by 都道府県と解釈され、ビジュアルが作成されます。 ADD TO ANLYSISのボタンを押すことで、生成されたビジュアルが画面上に描画されます。

エグゼクティブサマリーの自動生成

複数のビジュアルから何が言えるのか要約を自動生成する機能も魅力的です。

以下のような複数の分析を見せられても、「で、何が言えるの?」と思うかもしれません。

そこでエグゼクティブサマリーの生成機能を利用すると、例えば以下のような要約が作成されます。

電話番号の解約率を都道府県別にビジュアル化したもの。
・解約率トップ3は、広島県61.22%、山口県56.76%、岩手県56.67%。
・解約件数が最も多かったのは東京都の146件、次いで大阪府の112件、神奈川県の88件だった。
・全電話番号に対するキャンセル率が最も高かったのは茨城で43.82%、次いで大分が43.3%、長野が43.16%だった。

このように、データから重要なポイントを自動的に抽出し、人間が理解しやすい形で提示してくれます。

QA機能によるインサイトの獲得

Amazon Q in QuickSightには、自然言語で質問できるQA機能が実装されています。例えば「夜間の通話数と解約に相関があるか?」といった質問を投げかけると、AIがデータを分析し、関連するインサイトを提供します。

この機能によって、データアナリストでなくても、業務に関連する質問をして答えを得ることができ、データドリブンな意思決定を全社的に促進できます。

データストーリーで次のアクションにつなげる

データから得られたインサイトを「データストーリー」として構成し、次のアクションを促すレポートを作成する機能も備えています。

例えば、解約防止のためのレポートを作成するよう依頼してみました。

すると、あらかじめ選択したビジュアルを使ってアクションプランを含むレポートを作成してくれました。

データから分析アプローチの提案や推奨アクションを生成するScenarios

2025年3月25日に一般提供が開始された「Amazon Q in QuickSight Scenarios」は、データから分析アプローチの提案や推奨アクションを生成する機能です。

さきほどのストーリーはあくまで選択したビジュアルをもとにレポートを作成する機能ですが、Amazon Q in QuickSight Scenariosは作成したダッシュボードまたは直接アップロードしたデータを起点に分析を開始します。

例えば「解約率が高い都道府県にどのようなアプローチをすべきですか?」といったプロンプトを入力します。

すると、この入力をもとに複数の分析シナリオを提案してくれます。

提案された中にある、「一部顧客に10%割引を適用したときの費用対効果」を選択し分析を依頼します。すると以下のようにデータから必要なビジュアルと考察を生成し始めます。

最終的に以下のような推奨アクションをまとめてくれました。10%割引は実施すべきと結論付けていますね。※一部抜粋しており機械翻訳です。

ステップ5:次に、主要な洞察、割引戦略に関する提言、高リスク地域における顧客損失を削減するための代替アプローチ、およびさらなる調査に関する提案を含む、分析の包括的な要約を提供します。

実施した分析に基づく主な所見と提言は以下の通り:

  1. 解約率の分析:

  2. 全体の解約率は現在24.9%。

  3. リスクの高い顧客の解約率は51.6%とかなり高い。

  4. 解約率の高い県は福岡、静岡、宮崎、長崎、愛知など。

  5. 国際電話の利用状況:

  6. 国際電話の利用率が「中低~中高」の顧客は、「低」(24.6%)、「高」(22.1%)に比べ、解約率がやや高い(26.6%、26.1%)。

3.10%割引戦略の影響:

  • この割引により、国際電話から年間989,277円の減収となる。

  • 約126人のハイリスク顧客を維持できる可能性がある。

  • 獲得コスト削減の見積もり: ¥1,339,336.

  • ハイリスク解約率は51.6%から41.3%に減少する可能性がある。

  • ただし、全体の解約率は24.9%から28.9%に若干上昇する可能性がある。

提言

  1. 国際電話の10%割引戦略を実施する:

全体的な解約率は若干上昇するものの、割引による収入減を上回る獲得コスト削減の可能性がある。この戦略は、特にリスクの高い顧客をターゲットにしており、解約率を大幅に下げることができる。

  1. 補完的アプローチ:

  2. 福岡や静岡のような離職率の高い県にターゲットを絞ったリテンション・プログラムを開発する。

  3. ロイヤリティ・プログラムやバンドル・サービスを導入し、契約期間の延長を促す。

  4. 解約につながる前に潜在的な問題に対処するため、特にリスクの高い顧客に対するカスタマーサービスの質を向上させる。

  5. さらなる調査のための次のステップ

  6. 解約リスクの高い都道府県における解約の主な理由を把握するため、顧客調査を実施する。

  7. 現在の顧客サービスの有効性を分析し、改善点を特定する。

  8. より的を絞った顧客維持戦略を開発するため、国際電話の利用率が中低~中高の顧客の特性を調査する。

  9. 10%割引戦略の影響を長期的にモニターし、実際の結果に基づいて必要に応じて調整する。

  10. 利用レベルまたは契約期間に基づいて段階的な割引を提供する可能性を検討し、収益の損失を最小限に抑えながら最大限の維持を図る。

これらの提言を実施し、顧客行動の分析を継続的に行うことで、同社は、特に高リスクの顧客や解約率の高い都道府県において、解約率の削減と顧客維持率の向上に取り組むことができる。

使用できる言語について

正式には日本語対応していませんが、入力するプロンプトは日本語でも対応していました!

Data Story on QuickSight - 日本語で質問 | Q&A - Amazon QuickSight Community

以下の公式ブログにも記載されています。

2025 年 2 月 17 日更新:日本語フルサポートではないので正式にアナウンスはされていませんが、日本語でプロンプトできるようになっています。
Amazon QuickSight の生成 AI アシスタンスを使用して小売データを分析する | Amazon Web Services ブログ

料金とサポートされている機能について

料金体系とユーザーのロールについては公式ブログとドキュメントにまとめられていますのでそちらをご紹介します。

aws.amazon.com

例えば、Amazon Q でダッシュボードを構築するにはAuthor Proのロールが必要で、1 人あたり月額 $ 50 必要です。

docs.aws.amazon.com

また、少なくとも 1 名の Pro ユーザーまたは少なくとも 1 個の Amazon Q トピックを持つアカウントには、アカウントごとに 250 USD/月の Amazon Q 有効化料金が適用される点に注意が必要です。

まとめ

Amazon Q in QuickSightは、生成AIの力を活用することで、従来のBIツールの枠を超えた機能を提供しています。特に以下の点が大きなメリットです:

  • 自然言語でのデータ操作によるアクセシビリティの向上
  • 複雑なデータから重要なインサイトを自動抽出
  • 「何が起きているか」だけでなく「次に何をすべきか」まで提案

お客様のデータ活用にどのように役立てられるか、ぜひ検討いただければ幸いです。

村上博哉 (執筆記事の一覧)

2020年4月入社。機械学習が好きです。記事へのご意見など:hiroya.murakami@serverworks.co.jp