1枚のSIMでキャリアを冗長化!Active Multi-access SIMの特長と仕組み [Active Multi-access SIM開発シリーズ 第1回(全3回)]

本記事では、Active Multi-access SIMの特長やユースケースとともに、1枚のSIMで通信キャリアの冗長化を実現する仕組みについてご紹介いたします。

はじめに

こんにちは、5G&IoTサービス部の高野です。普段はIoT向けコネクティビティサービスの販売企画業務を担当しています。

突然ですが、みなさんは利用されているスマホで通信キャリア障害が起きたときにどのような対応をしますか?近くで飛んでいるWi-Fiに接続したり、サブ回線を契約している場合はそちらに切り替えたりして通信復旧を試みるのではと思います。

ではIoT用途の回線の場合はどうでしょうか?数多くのデバイスを各地に展開しているケースが多いため、人が各現場に駆けつけて手動で通信復旧をするのは難しいでしょう。

人が手動で対応できないということは、通信ができなくなったときに自動的にサブ回線に切り替えて通信を継続できる仕組みが必要ということです。ただそのような仕組みを実装するためには、

  • 対応デバイス(デュアルSIM等)の選定
  • 複数の通信会社との契約
  • デバイスへの機能開発・検証 など…

さまざまなステップを踏む必要があります。通信障害によるIoTサービスの停止や収集データの欠損は避けたいところです。でも実装にかかる手間やコストのことを考えると「今回のIoTサービスでは通信の冗長化は諦めよう」と考えてしまう方も多いのではと思います。万が一のためのリスクヘッジに長い検討期間、多大なコストを費やしてしまうのは避けたいですよね…

Active Mult-access SIM(マルチアクセスSIM)とは?

マルチアクセスSIMは、そんな課題を持つ方々にぜひご活用いただきたい、キャリアの冗長化を手軽に、簡単に実現するコネクティビティサービスです。IoT向けモバイルデータ通信サービスIoT Connect Mobile Type Sの提供品目の1つとしてお申込みいただけます。

特長① 1枚のSIMで2つのキャリアに接続可能

1枚のSIMにメインキャリア(ドコモ網)とサブキャリア(他キャリア網)、2つのネットワークへの接続情報を保有しているため、2つの通信会社からそれぞれSIMを調達しなくても大丈夫です。SIM調達コスト、通信の月額費用を安価に抑えられます。また、SIM1枚挿しの通信デバイスでも冗長構成にできます。

特長② SIMの機能により自動でキャリアの切り替えが可能

通信デバイスではなく、SIM自体の機能によって有事の時に自動でキャリアを切り替える仕組みを持っています。人の手を介さず通信キャリアの切り替えができ、デバイスへの追加開発も不要です。

キャリアの冗長化を実現する仕組み

それではどのようにキャリア切り替えを自動で行うことができるのか、仕組みを見ていきましょう。

まず、前提としてSIMの中には 「通信プロファイル領域」「アプレット領域」 が存在していて、この2つの領域の連携により自動切換えを実現しています。

アプレット領域とは?

アプレット領域とはSIMの中にあるJavaアプリケーション実行環境です。この領域に通信監視・キャリア切替のアプリケーションを組み込むことでマルチアクセスSIMの仕組みを実現しています。
NTT Comはこのアプレット領域にお客さま独自のアプリケーションを実装できる「SIMアプレット」サービスを提供しています。一般的なSIMではアプレット領域はお客さまに開放されていませんが、通信プロファイル領域とアプレット領域を分割し、アプレット領域のみお客さまに開放し活用いただく仕組みを独自開発しました。 このサービスを使うと、マルチアクセスSIM以外にも、SIM通信の死活監視、機器設定の自動化、機微情報の安全な取り扱いなどさまざまな便利機能をSIMに実装可能です。最近ではGSM Associationが策定するセキュリティフレームワークであるIoT SAFEの実用化に向け、IoTデバイスとクラウド間の通信を保護するためのmTLS(相互TLS)の実装に取り組んでいます。詳しくはこちらの記事、「 IoT SAFEを試してみた - NTT Communications Engineers' Blog 」もぜひご参照ください!

アプレット領域を活用したマルチアクセスSIMの仕組み

「アプレット領域」のなかの通信を監視する機能は①定期的に通信の正常性をチェックし、もし通信断が起きたらそれを検知し、②キャリア切り替えの指示を出します。


マルチアクセスSIMは1枚のSIMの中にキャリア1の接続情報とキャリア2の接続情報を両方保持していて、障害が起きたら③キャリア切替機能によりキャリア1の接続情報をキャリア2に書き換えます。


このような仕組みで通信デバイスではなく、SIMのアプリケーション領域を活用して自動でキャリアの切り替えを行い、④キャリア障害時でも通信を継続できるのです。


ちなみに、切り替え後も⑤キャリア1の正常性確認は継続して行い、キャリア1が正常に戻ったらそれを検知して⑥自動で切り戻しする機能も備わっています。

これらの自動キャリア切り替えの仕組みは特許取得済のNTT Com独自技術1です!

どんなシーンで活用できるのか?

マルチアクセスSIMとの相性がよいのは、

  • (IoT用途のように)各地に通信デバイスが点在している
  • 有事の際もできる限りサービスを止めたくない
  • 通信の冗長化実装のためにあまりコストはかけられない
  • SIMが1枚しか挿さらない通信デバイスを使う
  • デバイスに通信冗長化の設定・開発をするのが難しい

といったケースです。

たとえば、工場内の産業用機器防災監視システムフォークリフトなどの遠隔監視用途では、一般的に固定回線を引くことのできる環境が少なく、モバイル通信回線を採用されるケースも多いと思います。ただ、キャリア障害などで通信が切れると遠隔からの監視やデータ収集ができなくなってしまいます。このようなケースでぜひマルチアクセスSIMを活用いただき、万が一のときにも安心なIoTサービスをお客さま、パートナーの皆さまと一緒に構築できたらうれしいです。

まとめと次回予告

今回の記事ではマルチアクセスSIMのおすすめポイントや仕組み、活用シーンをご紹介させていただきました。次回は、本サービスの開発秘話をサービス企画チーム、開発チームのメンバーにインタビューしその内容を記事にしたいと思います!サービス企画と開発の裏話担当者たちのサービスにかける熱い想いを記事にまとめられたらと思いますので、またぜひ次回の記事も併せてお読みいただけたら幸いです!

今回ご紹介したマルチアクセスSIMの詳細情報についてはこちらをご参照ください。

マルチアクセスSIMのオフィシャルサイト
Active Multi-access SIM|ドコモビジネス|NTTコミュニケーションズ 法人のお客さま

また、本サービスは1枚からWeb購入・検証可能です。まずは試してみたいという方はぜひ以下のページからお申込みください!

ドコモビジネスオンラインショップ
IoT Connect Mobile® Type S|ドコモビジネスオンラインショップ|NTTコミュニケーションズ

記事に関するお問い合わせは、
iot-connect@ntt.com までメールでご連絡ください。
※お手数ですが、@を半角文字に置き換えてください


  1. 特許第7478277号「SIM、通信装置、切替方法、及びプログラム」に関する発明
© NTT Communications Corporation 2014