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Alexaスキルの人気傾向から考える スマートスピーカーの「弱点」を克服するスキル設計

2018.12.01

アドベントカレンダー2018 テクノロジー

技術本部の龍島です。アドベントカレンダーの最初の記事ということで何を書こうかと考えていたんですが、以前記事を書いたAlexa、スマートスピーカーについて書こうと思います。いくつかのAlexaスキル開発に携わり、スマートスピーカー、VUIの特性、弱みやその補い方が見えてきました。

以前の記事はこちら

echo dot

人気スキルの傾向

はじめにAlexaスキルの人気傾向からどのようなスキルが使われるのか考えてみたいと思います。少し前のデータになりますが、Amazonランキング大賞2018上半期を見ると、人気のスキルは大きく以下に分類できるでしょう。

情報提供系

野村證券の株式市場の情報提供スキル、JR東日本の運行情報提供スキル、Yahoo!ニュースのように一般的な情報を提供するスキルです。特徴としてユーザごとの情報の出し分けは基本的に無く、あってもよく使う路線を登録する(例:JR東日本列車運行情報案内)などで、ユーザ毎に得られる情報は大きく変わりません。

キャラクター系

ピカチュウトーク、豆しばをはじめとしたキャラクターとの会話を楽しむものです。特徴としてユーザは会話の内容よりキャラクターの声を重視していると言えるでしょう。

ゲーム系

駅しりとり powered by 駅すぱあと、アルクの英語クイズのようにゲームを楽しむスキルです。しりとりのようにユーザが発話すべき単語が少ないものや、英語のリスニングのように問題文が流れてユーザは選択肢から答えるといったものが多いようです。

音楽系

radiko.jp、カラオケJOYSOUNDのように音楽を流すタイプのスキルです。スピーカーから流れる音自体に価値があるのでスマートスピーカーとの相性はよく、人気なことはうなずけます。

スキルの苦手なところ

人気のスキルから見て取れることは、インプットの情報量(ユーザ→スキル)が少なく、アウトプットの情報(スキル→ユーザ)は量の多寡はあるものの種類が少ないということかと思います。これにはスマートスピーカー、VUIの特徴である「音声で操作する」という性質が影響しています。ユーザの発話は、長くなればなるほど複雑さや聞き取りの難易度が上がります。そのため、単体のユーザ発話はできるだけ短くしたいところですが、細かく何度も質問するとユーザを疲れさせてしまいます。

インプットの情報が少ないということはそれに応じて返却するアウトプットの情報の種類も少なくなってしまうということであり、ユーザに多くの情報を入力させ最適な情報を提供するようなサービスは設計が難しくなります。

苦手を克服するには?

インプットの量が必要なサービス、例えばユーザの好みに応じた商品を提供するECサイトや、旅行商品を検索するようなサービスはスキルで実現できないのでしょうか?

そんなことはないと考えています。アメリカのスターバックスのスキルはこの問題の解決のヒントになるでしょう。

アメリカのスターバックスのスキルはAlexaからコーヒーを注文して店舗で受取ることができるのですが、それに必要なユーザの発話は「Alexa, order my Starbucks」のみです。どういう仕組みになっているかと言うと、オンラインオーダーが可能なスターバックスアプリ上で「デフォルト注文」が設定されており、Alexaからはスキルを呼び出すだけでその注文が行われるというわけです。スタバの注文のためには「コーヒの種類」「サイズ」「ミルクの量」などのインプットが必要ですが、それには適したツールのスマホアプリをユーザに利用させ、注文の機能のみをより手軽に使えるAlexa上からも行えるようになっているのです。発想としてはAmazon Dash Buttonに近いですね。

さいごに

インプットの情報量が少ないことはAlexaに限らず、スマートスピーカーに共通した弱点と言えます。情報のインプット部分はより適したデバイス(スマホ、PC)を利用し、強みである「手軽さ」を生かして実行部分のみをスマートスピーカー上から行えるようにしたスターバックスの例は一つの解だと思います。インプット情報を補完する点はユーザに別端末で入力させる以外にも、ユーザのwebサイトでの行動履歴を利用する、似たユーザの情報を使うなどが考えられるでしょう。スマートスピーカー、VUIの特性を理解し、得意な部分を任せ、苦手とする部分は他の方法で取得するといったことがスキルの設計では重要だと考えられます。

この記事を書いた人

龍島広人

技術第一本部 エンジニア 2016年新卒入社。
Alexa向けスキル開発や社内開発インフラ業務を主に担当。
興味のある分野はDevOpsや仮想化技術。