Interop Tokyo 2022 〜400G-ZRを用いたイーサネット回線とローカル5G検証・展示のご紹介〜

はじめに

こんにちは、データプラットフォームサービス部の下公、真山、イノベーションセンターの原田です。 NTTコミュニケーションズ株式会社 (以下、NTT Com) は、世界最大級のイベントネットワークである 「Interop Tokyo 2022(会場:幕張メッセ、会期:2022年6月15日〜17日)」 において構築されるShowNet *1 に対して、400G-ZR *2 を用いたイーサネット回線を提供し、実運用することに成功しました。

また、今年のShowNetでは多種多様なローカル5Gシステムが集合し、マルチベンダーでの5Gコア/RAN端末の相互接続や多様なローカル5G実現方法について提案します。NTT Comはコントリビューターとしてスライシングの検証と、ローカル5Gの低遅延通信を活用したアプリケーションについて紹介します。

400G-ZRを用いたイーサネット回線

NTT Comは、長距離での400ギガビットイーサネット接続を可能とする400G-ZRを用いて、今年初めてShowNetへ400Gアクセス回線を提供しました。 本回線はトランジット・IXに接続し、Interop会場の出展社・来場者のインターネットアクセスに利用されています。

400G-ZRは、コヒーレント伝送技術を利用した光トランシーバをスイッチ/ルータに直接搭載し、接続する規格です。 専用の伝送装置を複数用意する必要があった従来の構成に比べ、よりシンプルな構成を実現できるため消費電力が少なく、また標準化により異なるメーカー同士であっても柔軟な長距離接続が可能となっており、DCIなどの拠点間通信に適用する際、特に注目されている技術です。

次世代の拠点間通信のプロトタイプとして、今回は光増幅器(アンプ)にあたる光トランシーバ(OSFP-LS)と8チャネルのMux/Demuxを行えるブレークアウトケーブル(Colorless Fiber Mux/Demux)、OSFP 400G-ZRをすべて1Uのスイッチに搭載し、省スペースで大容量の長距離伝送を実現しました。

また、本回線の構築にあたり、ShowNetを構成する機器の回線に対する試験を事前に実施しました。 スループットや遅延、ゆらぎなどの一般的な試験項目に加えて、400G-ZRの評価に必要となる光トランシーバ内部で実施されているエラー訂正の状況についても確認し、拠点間で送受信される通信の品質が実運用に耐えるものであることを確認しました。 本回線の試験についてはArista Networksとアンリツ株式会社の協力のもと、実施しました。

ローカル 5G の技術検証・展示内容

今年のShowNetでは5G/ローカル5Gを取り入れ、下記のテーマで多数のベンダーがコントリビューターとして参加し、技術検証・アプリケーションを展示しています。

  • マルチベンダーでの5Gコア/RAN/端末の相互接続への挑戦
  • 多様なローカル5G実現方式
  • ローカル5Gを利用したデモンストレーション

マルチベンダーによるEnd to Endスライシング

私たちは、ユーザーの要求に応じてネットワークやエッジコンピューティング環境といったリソースを柔軟に提供することを目標としています。 それを達成するには、ユーザーやアプリケーション単位での細かい粒度でネットワークスライシング技術が必要になります。 今回、NTT ComではShowNetにて、マルチベンダーによる基地局(gNB)から5Gコアの先のData Network (N6) 含めたEnd to Endスライシングの実現にチャレンジしました。

5Gではユースケースに合わせて異なる性能や機能のネットワークを提供できることが特徴とされており、「大容量(eMBB)」「超低遅延(URLLC)」「大量接続(mMTC)」の3つの要件が定義されています。 ネットワークスライシングとは、単一のネットワークを複数の論理的なネットワークに分割し、それぞれの論理ネットワークに対してユースケースに合わせた異なる経路や品質制御を提供する仕組みのことです。 ネットワークスライシングにより、高精細カメラの映像を流すスライスは大容量(eMBB)の経路を選択したり、自動運転車のような低遅延を要求するスライスは遅延の少ない経路(URLLC)を選択したりすることが可能となります。

5GCのアーキテクチャの大きな特徴として、マイクロサービス志向のサービス分割がなされ、コンテナプラットフォームでの運用を想定している点が挙げられます。 コンテナプラットフォームを採用することで、機能単位での迅速なデプロイや負荷に応じたスケーリング、故障時のオートヒーリングなどが可能となります。 また、商用使用において特に期待される機能として、E2EでのネットワークスライシングやAPIを介したオーケストレーション、トラフィック制御の容易性が挙げられます。 本検証では、コンテナ型5GCとしてCapgemini Engineering ViNGCを、コンテナ型UPFとしてKaloom Cloud Edge Fabricを用いて構築します。 ユーザー端末(UE)と基地局(gNB)は、スパイレントコミュニケーションズ社のシミュレータLandslideを使用します。

Capgemini Engineering ViNGCは、Kubernetes/OpenShiftで動作する5GCであり、各Functionは1つ以上のPodとして構成されます。 C/U分離が可能であることから、UPFはKaloom UPFを使用します。Kaloom UPFはOpenShift上で動作するUPFであり、Edgecore Networks社のホワイトボックススイッチ上で動作します。 LeafとUPFからなる1つのクラスタで、複数の仮想UPFを動作させることが可能です。 N3/N6でのネットワークスライシングを実現できることから、Capgemini Engineering ViNGCとの異ベンダー構成として検証していきます。 今回は、5Gの3要件として挙げられている”eMBB(高速大容量)”、”URLLC(超低遅延)”、”mMTC(超大量端末)”を想定した3つのスライスを作成し、N6でのスライシングによるそれぞれ異なる経路でネットワークに抜けていくような構成を構築しました。 UPFはBGPでShowNetのバックボーンに接続されます。

上述したCapgemini Engineering ViNGCおよびKaloom UPFを用いた構成において、スライシングの分割はgNBでのDNN及びS-NSSAIとVLAN mappingによりN3/N6区間において実現し、N6から先のネットワークはFlex-Algoによりそれぞれ異なる経路を通って上流ネットワークに抜けていくという、gNBからData Network間のEnd to Endでのネットワークスライシングにチャレンジしました。 検証結果についてはShowNet会場にて展示します。ぜひお越しいただければと思います。

ローカル5Gの低遅延通信を利用した遠隔操作アプリケーション

NTT Comは、スライシング技術などの最先端な技術検証だけでなく、現在黎明期であるローカル5Gの様々なユースケースを創造することも、自社のミッションだと考えています。 従来技術では解決が困難であったお客様の課題をローカル 5G を用いることでいかに解決できるのか?といった観点のもと、Smart Data Platformを含む様々なアプリケーションとの相互検証を実施しています。

今回のShowNetでは、NTT Comのローカル5G環境が提供する低遅延通信を活用し、ソリトンシステムズ社のSmart-telecaster Zao-X *3 を搭載した遠隔操作型ラジコンカーを用いたアプリケーションを展示します。 Smart-telecaster Zao-Xは4Kの映像伝送が可能で高精細映像をモバイル回線で伝送できます。 H.265/HEVC コーデックにより転送データ量を抑え、ローカル5GやMECといった低遅延通信と親和性の高いアプリケーションです。

ラジコンカーにカメラを搭載し、Zao-Xを通じて走行中の映像をローカル5Gシステムを経由してリアルタイムに伝送します。 またローカル5Gシステムを経由してラジコンカーの走行を制御し、遠隔でも操縦性に違和感なく低遅延通信を実感いただけます。

ShowNet会場にて設置しているシールドテント内にローカル5G端末およびZao-Xを搭載したラジコンカーを配置し、Data Network (N6) に接続しているサーバーにてラジコンカー視点での映像およびラジコンカーの操縦をご覧いただけます。

おわりに

この記事では、Interop Tokyo 2022(会場:幕張メッセ、会期:2022年6月15日〜17日)において構築されたShowNetについて、400G-ZRを用いたイーサネット回線の提供、およびローカル5GのマルチベンダーによるEnd to Endでのスライシングとアプリケーションの検証を紹介しました。今後は、今回のフィールドテストの成果を踏まえ、NTT Comのネットワークサービスへの応用について検討していきます。

*1:ShowNet:Interop Tokyoにおいて、様々な機器・サービスの相互接続性検証を実施するとともに、近未来のサービスアーキテクチャを実際に動かしている形で見ることができる世界最大規模のライブネットワークデモンストレーション。Interop Tokyoへの出展社がインターネットへの接続性を利用して製品の動態展示のほか、来場者のインターネットへのアクセスとしても利用されるネットワーク。https://www.interop.jp/2022/shownet/

*2:400G-ZR:業界団体であるOIF(Optical Internetworking Forum)が標準化し、単一波長により400ギガビットイーサネットを最大40kmまで接続可能とする光トランシーバの規格。光増幅器(アンプ)を組み合わせることで最大120kmまでの長距離接続にも対応する。

*3:Zao-X:モバイル回線を利用して高画質の動画をライブ中継する”Smart-telecaster™”シリーズの最新モデルです。 モバイル回線に最適化されたSolitonオリジナルプロトコル「RASCOW2」を採用。映像伝送の課題だった遅延を大幅に短縮し、解像度を4Kに拡大。https://www.soliton.co.jp/lp/zao-x_h/

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