エンタープライズな領域にWeb APIを

多くの企業では元々Webサービスやリアルビジネスを提供しており、その機能の一つとしてAPIを提供します。APIは開発者にとって便利な仕組みですが、提供開始したからといっていきなり利用が拡大する訳ではありません。きちんと啓蒙活動を行わなければならないでしょう。

そこで今回は特にビジネスにおけるAPIについて、どう利用を広めていくかを紹介します。

特定のクライアントとはじめる

ビジネス用APIの利用者の多くはすでにリアルビジネスを提供している企業になるでしょう。最も多く利用している企業ほど、自動化やシステム化のニーズがあるはずです。まずそうした企業と個別にコンタクトを取り、APIの設計から入ってもらうべきです。

APIをサービス提供側だけの視点で組み立てると、実際のワークフローを行う上で必須の情報が見落とされる可能性があります。そうした実状とかけ離れたAPIは提供しても使ってもらえない可能性が高くなりますので、実際のニーズに合わせて作るのは大事です。

ただし、あまり細かな部分まで最適化してしまうとその顧客しか使えないAPIになってしまう可能性があります。今後広くあまねく提供していく上でも個別のワークフローにまで落とし込まないように注意しましょう。

APIや最新テクノロジーに関心のあるクライアントとはじめる

さらにAPIなどに関心を持ってくれる開発力のあるクライアントとはじめるのが良いでしょう。いくら最大手であっても技術的関心の低い企業と進めるのはよくありません。最初の設計から一緒に行っていくのであれば特にそうです。

特に利用者側の開発が必要になりますので、自社に開発リソースを持った企業と行うのが良いでしょう。SIerに丸投げしてしまう企業ではスピード感あるAPI開発は難しいでしょう。

多数の事例

APIを使う側の立場に立って考えると、最初はなかなか利用法が分からないものです。その結果、単純にステータスを取得して表示するだけのものが多くなってしまいます。これではなかなか普及が進まないでしょう。

そのため実例としての利用事例を増やしていきましょう。企業においてはそうした事例を公開したがらないケースが多いので注意が必要です。最初の段階から公開事例を作ること、プロモーションや開発で協力することで承諾を得ていきましょう。

そうした現実に即したワークフローとAPI活用法が見えることで、他の利用者にもアイディアが沸きやすくなります。

同業種への展開

APIの利用事例が増えたとしても、他業種での実例というのはなかなか自社のことに結びつきづらいものです。そのため最初の事例では同じ業種ばかりではなく、幅広い業種で実践していかなければなりません。

逆に事例ができあがったら同じ業種のクライアントに提案しやすくなるでしょう。事例が経理や人事など、バックオフィス側の業種によらないものであれば、支社がある場合や多国籍企業といった打ち出し方で事例化するのが良いでしょう。

社内で啓蒙

クライアントに使ってもらう必要があるAPIである以上、クライアントと最も接触する機会がある営業職の人たちへの啓蒙は欠かせません。APIは技術的なものなので、なかなか理解してもらうのは難しいでしょう。その結果、特にクライアントに利用を提案することもなく放置されてしまいます。APIの利用が自分たちはもちろん、クライアントのビジネス拡大やコスト削減にどう役立つのかを説明しなければなりません。

ビジネスにおいてはいいものだから使ってもらえるという単純な式はなかなか組み上がらないものです。相互にメリットがあるのは当然として、さらに導入や開発を後押しする理由が必要でしょう。

ドキュメントを拡充させる

ビジネスでのAPI利用においてドキュメントは絶対的に重要です。提供側が考える以上に提供する必要があるでしょう。それは単純なAPI仕様だけでなく、使い方やTipsのようなものも必要です。

実際に提供を開始すると様々な質問が寄せられるはずです。そうした声をドキュメントに反映していくことで、同じ質問が出るのを回避したり、ユーザが自分の力だけで開発できるのを後押しできます。

多数のサンプルコードとベストプラクティス

ドキュメントの中に多数の再現可能なサンプルコードがあるのは大事です。一部だけ載せてもさほど意味がありません。コードをコピー&ペーストしてドキュメントに記載されている内容がそのまま返ってくるのが理想です。

なお、その際のプログラミング言語は慎重に選ぶ必要があります。多数の言語について載せるのは簡単ですが、メンテナンスまで考えて載せる必要があります。最初からあまり多くの言語を載せると更新が大変になってしまうでしょう。

言語はサービスのターゲットが必要としているものに合わせる必要があります。エンタープライズであればJavaや.NETの利用が多いかも知れません。またスマートフォンアプリを対象としているならば各プラットフォームで使えるものになるでしょう。


開発者向けのサービスでもない限り、APIへの理解度はまだまだ低いのが現状です。そうした中でAPIを知らない人たちにも理解しやすい形で進めていくのは大事になります。特に「自分たちにも言えることだ」と考えてもらえるのは近い業種や職種の場合です。そうした事例を増やす必要があるでしょう。

プレスリリースなどによって広く浅く狙うのではなく、既存顧客の中からピンポイントでニーズを汲み取っていくのがお勧めです。

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