Enterprise APIs Hack-Night #4が開催されました

企業におけるAPI活用を広めていくEnterprise APIs Hack-Nightの第4回がTECH LAB PAAKにて開催されました。今回のテーマはFinTechで、雨にも関わらずたくさんの方々に参加いただきました。

今回からEnterprise APIs Hack-NightではxTech(エクステック)に注目しており、各種マーケット×テクノロジーをテーマにしてイベントを開催していきます。今回はFinTech(ファイナンス×テクノロジー)になります。

当日の模様はYouTubeにて公開しています。最初の方に機械操作音が入ってしまっています、ご了承ください。

「X-Tech」という潮流

NTTデータ経営研究所 妹尾 直紀さん

コンピュータは最初期において、単純な計算を行うだけでした。それが数十年経ち、技術連携が行われ、最適化の時代になりました。そして最近ではディープラーニング、A.Iなどによって自ら想像していく時代に入ってきたと認識しています。

それに伴い、これまで業界には存在しなかった企業(IT企業)が市場に参入するようになってきました。ITを活用することで、これまでの事業規模よりも小さくとも十分に収益をあげられるようになっています。そのような中で、市場×テクノロジーというx-Techという流れが生まれています。

幾つかあるのですが、代表的なものとしてはHealthTech、ReTech、FoodTech、EdTech、AdTechなどがあります。主な企業は下記の画像をご覧ください。

実際に様々なサービスが生まれているのですが、その本質は何かを考えると

  • 思考能力のプロモーション
  • 個人と企業のボーダーレス化
  • 使い道のイノベーション

に分類されると言えます。その結果として将来どうなっていくかを考えていくと、

  • 思考能力のプロモーション:提供価値の先鋭化
  • 個人と企業のボーダーレス化:プレイヤーの多様化
  • 使い道のイノベーション:ビジネスリソースに関する利用方法の拡大

となっていくのではないでしょうか。この結果として注目したいのがサービスのアンバンドル(先鋭化)です。従来の商品はパッケージングされて、組み合わせ販売されてきました。しかしx-Techによって特化型サービスが登場していくことでパッケージから外れた存在が増えていくことでしょう。その結果、サービスが氾濫してしまい、再度サービスをピックアップして組み合わせた、リバンドルという流れができててくると考えています。

そして、そのアンバンドル/リバンドルを支える存在として、APIをはじめとした共通化されたインタフェースが必要になってくるのではないでしょうか。

ガラケーが支える発展途上国のFintechとAPIの関係

REDKNEE 志田 典道さん(当日の動画 当日の資料

FinTechは世界全体で見た時にお金持ちのための仕組みであるというのが志田さんの考えです。世界のお金持ち、約10億人はクレジットカードを持ち、銀行口座を持っています。そうではない世界60億人の多くは銀行口座すら持っていません。しかし彼らは携帯電話は持っています。ケニアにおける携帯電話保有率は82%となっています。

その携帯電話はいわゆるスマホではなく、SMSと通話機能が中心のガラケーとなっています。そうした地域ではネットワークもLTEではなく2Gが中心です。そして、彼らの中で注目が高いのがモバイル送金サービスです。今回はエムペサというサービスを中心に紹介してもらいました。

モバイル送金サービスはSMSを使って送金を行う仕組みで、仮想通貨に当たる仕組みを使っています。銀行口座がないため、プリペイドでの携帯電話の利用が基本となっています。その充当した金額を他人に送ったり、場合によっては電気料金の支払いにも使われています。

仮想通貨はエムペサの店舗によって実際の通貨に換金できるようになっています。エムペサはケニアの銀行とオペレータ(通信企業など)が作った仕組みになっています。

Q&A

未成年についてはどうか?

残念ながら未成年、女性に対する現金以外の決済手段はほぼないのが実情です。

オープンソース仮想通貨を使ってリアル通貨の国際送金を実現する

PayPal 岡村さん(当日の動画

FinTechのイチ技術として注目を集めているのがBitCoinをオリジナルとする仮想通貨技術ではないでしょうか。仮想通貨とは国が価値を保証する法定通貨とは異なり、後ろ盾のない通貨になります。BitCoinの場合は中央サーバの存在しないP2Pネットワーク網の中に構築されていますが、派生パターンとしては中央サーバが存在するものもあります。BitCoinの計算処理は数十秒を要しますが、中央サーバがあることで数秒で計算処理が終わるようになります。

BitCoinにない機能を実装しているサービスも出てきています。メタデータを追加したり、そもそもブロックチェーンの外に別なサービスを作って、それとブロックチェーンとつなぎ合わせるサービスもあります。

今回はRippleとステラというサービスを紹介してもらいました。

Rippleは外国為替送金を効率化するためのネットワークとなっています。現在、外国為替の送金(例えばUSドルからユーロなど)はとても複雑で手数料がかかる状態です。これをブロックチェーン技術によって効率化します。

Rippleは元々オープンソースでしたが、今は一部を除いてクローズドになり、企業が運営しています。そしてステラは現在もオープンソースとなっており、自由に仮想通貨プラットフォームを構築できるようになっています。テストネットワークも用意されており、すぐに試せるようになっています。

金融機関とフィンテック、APIへの取組み

三菱UFJフィナンシャル・グループ 藤井 達人さん(当日の動画

バンキングAPIについての現状について説明がありました。取り組みについてはイギリスが進んでおり、さらにEUでもバンキングAPIの普及を推し進めています。APIを使うことで1週間以内に別な銀行の口座にデータを移すといったことが可能になっています。

日本ではまだまだ特定企業間に限定されていたり、家計簿サービスが銀行のID/パスワードを使ってスクレイピングをしてデータを取得している状況です。APIが普及することによって改善できる可能性があります。特にセキュリティ面において、ID/パスワードではなくOAuth2によって安全に必要なデータだけを公開できるようになるでしょう。

バンキングAPIを標準化するといった動きもありますが、ビッグバンクと地方銀行で熱量が違っていたり、各銀行の特徴をなくさざるを得ないといった問題があります。おそらく最大公約数的な機能だけになってしまうと思います。

さらにAPIをサードパーティーが使って誤った送金処理を行った場合、その責任範囲が誰にあるのかといった問題が不明確になります。その意味ですべての機能をバンキングAPIとして提供する必要があるのかについても議論が必要です。

三菱UFJとしては3月にハンズオンを実施しました。そこではダミーのAPIを提供し、開発者ポータルも作ったのですが、開発者の方々から多くのフィードバックを得られました。こうした活動を通してよりよいAPI設計を行っていきたいと考えています。

Q&A

IBMが標準APIを提供しますとアナウンスしていますが?

正直どうなるか分かりません。ベンダーが売り込めば標準的になっていく可能性もあると思います。

SIerができること?

ベンチャーはtoCに強いイメージがあるので、SIerはtoBをやっていくのが良いのではないでしょうか。

銀行に勤めている側から見て、銀行APIの実用に対する足枷はなにか?

何が起きるのか分からないという人が多いです。私の周りはバンキングAPIを推し進めようとしている人ばかりなので、反対する人はそんなにいない印象です。ただし、お金がかかりそうだ、という意見が多いです。後、セキュリティの話題が多かったり、送金って本当にやるのかといった点が最近のよくある話題です。

なお、国としてもバンキングAPIを検討するというのをロードマップに組み込んでいます。

APIが出て普及した時、地方銀行はどうなっていくのか?

地方銀行が自前でAPIを作って提供するのはまだしばらく先になりそうです。APIが地場のビジネスに影響を及ぼすかどうかは分かりません。個人的にはポジティブな面を見ていくべきじゃないかと思っています。

外部コミュニティとどう付き合っていきますか?

まだAPIを公開すると決まっておらず、実現までにまだいくつかのステップがあるのが実情です。GitHubとかを積極的に使っていくべきだと思っています。自分たちが作ったのを使って、という姿勢ではダメだと思います。皆さんの意見を取り入れていきたい。また、一度作って終わりじゃなくβテスト的なものも必要だと考えています。


発表後は懇親会を開催しました。FinTechは注目の高いキーワードだけに、懇親会も盛り上がっていました。

LTにて三菱総研DCSの人見さんが「BTMU FinTech Challenge 2016銀行ハッカソンにAPIパートナーとして参加した」を発表されました。

次回は6月、RetailTechをキーワードに行う予定です。ぜひご参加ください!

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