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AIとIoT、その密接な関係を知る

公開2020.12.22 更新2023.3.1

概 要

あらゆるモノがネットにつながる「IoT」がAIと共に語られることは珍しくなくなりました。AIとIoTの両方を用いたさまざまなサービスが登場している中、AIとIoTそれぞれの概要や互いの関係性、実際の活用事例について紹介します。

目 次

AIとは
 ・AIの定義
 ・機械学習
 ・AIのメリット
 ・AIのデメリット
IoTとは
 ・IoTの経済効果、成長性
 ・IoTでできること
 ・IoTのメリット
 ・IoTのデメリット
AIとIoTの違い、関係
 ・5Gによるさらなる進化
 ・AI とIoTの組み合わせによりできること
  ・流通業
  ・製造業
  ・健康管理
AIとIoTを組み合わせて活用するときの注意点
AI・IoTの活用事例
 ・スマート農業
 ・交通機関のロケーションシステム
 ・医療・介護のベッドセンサーシステム
 ・スマートシティ
今後も発展が期待されるIoT

AIとは

AI(Artificial Intelligence)は、日本語では「人工知能」と訳されます。AIと聞いて人間のような知能を持つSF的なロボットを思い描いてしまう方はさすがに少なくなってきた印象がありますが、現段階でのAIは一定の機能に優れた「特化型AI」であり、特定のタスクを高い精度やスピードで完了させることを得意とします。

AIの定義

AIという言葉は、一般的には産業ロボットのような存在を指して用いられることもある一方、AIの1分野であるディープラーニング技術に対して用いられることもあります。

AIの定義は、研究者によってさまざまにされており、支配的なものはないのが現状です。比較的多く用いられるものとしては、一般社団法人 人工知能学会の設立趣意書にある「大量の知識データに対して、高度な推論を的確に行うことを目指したもの」があります。ここでは人間が行う知能的な活動の一部を模してコンピュータに処理させる技術だと理解するのが良さそうです。

機械学習

AIという技術体系の中にはさまざまな技術が含まれています。近年注目を集めているのが「機械学習(マシーンラーニング)」と呼ばれる技術分野です。機械学習は大量のデータを学習することにより、コンピュータがその法則性や共通点などを見つけ出すことを得意とする技術です。

機械学習の中でも、特に活用が盛んになっているのが画像認識です。例えば、AIで手書きの数字を認識することを目指す場合には、0~9までの手書きの数字を大量に用意しデータとして学習させることで、コンピュータに手書きの数字の特徴を覚えさせ、だんだんと認識できるよう訓練していきます。こうして学習の精度を上げていき、学習させていない新たな手書きの数字を読み込ませても、これまで学習したパターンと照らし合わせることで、その数字を正確に識別できるようになっていきます。

AIのメリット

AI、とりわけ機械学習を導入するメリットには大きく二つあります。一つは、大量のデータを学習することによりパターンを見つけ出し、ある程度の単純作業を自動化できる「業務効率化」です。ヒューマンエラーを避けるのが難しいような業務でも、AIの得意分野であればAIによって代行することができ、人手不足や業務負担の解消につながる可能性があります。もう一つが、大量のデータを分析し、従来なかった高度なサービスという「新しい付加価値」を生み出せる可能性も秘めています。

AIのデメリット

結論から言えば、AIを導入するメリットは特にありません。ただし、導入前後にAIそのもの以外のコストがかかってきます。

自社の業務にぴったりのAIサービスがあったとしても、それを導入して大きな効果を得たいと思った場合、導入のために業務フローを大きく改変しなければならないケースは少なくありません。業種によってはAI導入コストを大きく上回る効果を得にくいこともあります。さらに、導入後もAIによる出力の観察や、それによっては再度学習をさせる必要が出てくるなど、見守り続けることが必要です。

IoTとは

IoT(Internet of Things)は、あらゆるモノがネットにつながっている状態を指します。インターネットは人間が必ず介在して使うものだったという従来の理解と対比し、人間の操作を介さず、モノそのものがインターネットとつながっている状態にあることを表しています。

IoT技術が進化した世界では、これまでインターネットとの接続とは無縁だったテレビやエアコンのような家電が相互に通信したり、遠隔操作でモノの周囲の環境を認識・計測・制御したりするといったことが可能となります。

IoTの経済効果、成長性

総務省が発表した「情報通信白書(2017年版)」によれば、IoTによって社会改革が進展するケース(経済成長シナリオ)と、IoTをもってしても改革の効果がないケース(ベースシナリオ)とを比較した場合、2030年時点での経済成長のインパクトとして、市場規模にして271兆円もの差が出ると試算されています。さらに、同2021年版では、世界のIoTデバイス導入数が2020年に253億台だったところ、2023年には341億台まで伸びるという予測を立てています。このことからも、IoTが経済に与える影響の大きさをうかがい知ることができます。

出典:総務省「情報通信白書平成29年版」
   総務省「情報通信白書令和3年版」

IoTでできること

IoT機器として一番身近なのは、スマートフォンでしょう。スマートフォンはセンサーから絶えず何らかのデータを収集し、インターネットを介してデータを送信しています。例えばGPS(全地球測位システム)による位置情報は持ち主の行動データとして蓄積され、人々の行動のパターン分析などに役立てられています。

こうして見ると、IoTはセンサーとインターネット接続がセットになった機器だとも言えます。センサーにより人間がどれだけ移動したか、どのような動きをしたのか、ドアは何回開けられたのか、温度はどう変化したのかなどのデータを収集し、インターネットに接続することでそれらのデータをリアルタイムに送信することがIoTによる大きな進歩だと言えます。

つまり、IoT機器はセンサーから情報を収集し、インターネットを介してそれを送信することで、ビッグデータを蓄積することに貢献する機能を持っているということです。

IoTのメリット

IoTのメリットとしては、人の手をできるだけ介さずにビッグデータを収集できる点が挙げられます。生産や製造の現場のデータをIoT機器を用いて収集することで、人の監視コストを減らしつつさまざまな分析につなげられるビッグデータを収集可能です。IoT機器を通して良質なビッグデータを収集できれば、機械学習を通じて良質なAIを開発でき、より精度の高いサービスの構築にもつながっていきます。

IoTのデメリット

あらゆるモノがネットにつながると、ハッキングや情報漏えいといった、悪意ある第三者によるセキュリティの脅威が高まります。セキュリティ対策を十分に対応していく必要があります。

IoTでは機器の数がある程度ないと威力を発揮しません。機器の数が多くなると、作動するためや通信量に伴う電力が増えていきます。電力需要やそれに伴う燃料需要の逼迫が社会的関心になっている中、IoTによる消費電力が懸念されている可能性があります。通信量の増大という面では、通信の輻輳や遅延が起きやすくなるかもしれません。

出典:DIGITAL SHIFT TIMES「IoTが普及するメリットとは?具体例を交えて分かりやすく解説」

AIとIoTの違い、関係

AIは、画像の認識や言語の理解、コミュニケーション、状況の判断など、人間が行う知的な活動の機械での再現を試みるものです。IoTは、センサーとインターネットを用いてデータの収集を自動化するものです。「モノのインターネット」の名前の通り、必ず何かしらのモノを使ったソリューションであるという特徴もあります。

ビッグデータは、AI、とりわけ機械学習において重要な要素になります。機械学習では大量のデータを学習しますが、ただデータがあればいいわけではなく、質も十分に担保された「ビッグデータ」が必要となります。十分な量と質のビッグデータがなければ、機械学習の技術は生かしきれず、その精度を上げることも難しくなってしまいます。ビッグデータを集めるために有効な技術がIoTであり、この点からAIとIoTとの密接な関係が見えてきます。

ちなみに、現在世界で300億台のIoT端末が存在していると言われており、新たなデータを生み出し続けています。企業がIoT技術によって生み出されるデータを取得・解析することによって、さらにモノに新たな価値を付与し続けるという循環システムを構築することが期待されます。

5Gによるさらなる進化

また、AIとIoTの活用は5Gの普及によってさらに加速すると考えられています。「第5世代移動通信システム」を意味する5Gは、現行の移動通信システムである4GLTEを大きく凌ぐ性能を持つとされています。具体的には、最高伝送速度は約100倍、遅延は10分の1、機器の同時接続可能台数は約100倍という性能で、IoT機器による情報の送信も大幅に高速化されます。5Gが普及するにつれ、IoT機器の普及やAIの活用も拡大していくと見られています。

5Gについては以下もご覧ください。

5Gの普及は、AIに何をもたらすのか

AI とIoTの組み合わせによりできること

AIとIoTは互いに親和性の高い技術であり、組み合わせることでさまざまなメリットをもたらします。両者の組み合わせによってできることの例を挙げます。

出典:DXGO「AIとIoTを組み合わせると何ができる?活用方法とその注意点」

流通業

流通業においては、入荷・在庫・出荷管理を効率化できる可能性があります。例えば、RFIDタグを用いることでどの物品がどこにあるかをコンピュータ上で把握でき、ピッキング作業の効率化などにつながります。

製造業

製造ラインが正常に稼働しているかどうかの監視をIoTで行い、IoTで得られた画像・映像データをAIが分析して故障や危険を予知するといった運用が可能です。ウエアラブル端末を用いて作業員の健康状態のモニタリング、顔認証を用いた入退場管理といった活用もあります。

健康管理

今や珍しくなくなったスマートウォッチは代表的なIoT機器の一つであり、健康状態を常にチェックし、AIの分析により異常な状態をアラートすることもできます。心拍数をモニタリングすれば最適な強度でのトレーニングをできるなど、普段の健康増進に役立てることもできます。

トレーニングやスポーツとAIの活用については下記もご覧ください。
試合、トレーニング、観戦まで。進むスポーツ業界のAI活用

AIとIoTを組み合わせて活用するときの注意点

AIやIoTはどちらもインターネット環境が重要なテクノロジーであり、サイバー攻撃からデータや機器を守るためのセキュリティ対策は欠かせません。

また、AIを導入するには多大なコストが必要となる場合が少なくなく、AIを十分に活用するためのデータサイエンティストを始めとした人材が不足している現状もあります。そのため、誤ったデータ収集や分析により、AIが見当外れの分析を行い、導入に失敗する可能性もあります。

AI導入のコストや必要な人材については、以下のコラムをぜひ参考にしてください。
AI導入のメリット、コスト、気にすべきデメリット
AIは不完全。本当に必要な「AI人材」の役割とは

AI・IoTの活用事例

AIとIoTを活用した事例を四つ紹介します。

スマート農業

AIとIoTの活用分野として注目を集めているのが農業です。農業は作業面積が広い上、人手によるチェックや作業に負うシーンが多く存在します。IoTは農業における人の目や勘を代替するのに適した技術であり、AIやIoTを活用した農業は「スマート農業」と呼ばれます。

例えば、ワイン用のブドウで地域振興を目指す長野県の「信州ワインバレー構想」では、一定の品質のブドウを安定的に供給するためにAIやIoTを活用しています。具体的には、さまざまなセンサーを搭載した機器を農園に設置し、気温や湿度、日射量、風の強さなどを計測。機器はインターネットに接続しているため、これらのデータは常に送信され、スマートフォンやタブレットから確認できます。そしてこれらのデータを分析することで、例えば栽培している樹木や果実の病気の発生を予測するといった活用が見込まれます。

出典:長野県公式観光サイト Go NAGANO「もっと知りたい、きちんと知りたい長野県産ワイン「NAGANO WINE」

交通機関のロケーションシステム

国土交通省は、岡山県玉野市でバスロケーションシステムの実証実験を2017年12月15日から約2カ月の予定で実施しました。

バスやタクシーの高精度な位置情報を一元的に収集することで、利用者は乗りたいバスがどこにいるのかをリアルタイムで知ることができます。到着時間を推測しにくい交通機関が、IoT技術により乗り継ぎなどの不安が解消され、より利用しやすくなることが目指されています。

出典:国土交通省「日本版GPS「みちびき」を活用した高精度バスロケーションシステムの実証実験を開始します

医療・介護のベッドセンサーシステム

高年齢化が進み、介護現場の負担の問題が顕在化している中、その問題を解決へと導く一つのソリューションとしてベッドセンサーシステムの導入が進んでいます。例えば、リコーが提供する「リコー みまもりベッドセンサーシステム」はその一つです。

ベッドセンサーシステムには、非常に精度の高いセンサーがベッドに取り付けられており、「どの位置にどんな体勢で寝転んでいるのか」「眠っている/起きている」「呼吸などのバイタルデータ」「体重」などのさまざまな情報を取得し発信することができます。

出典:株式会社リコー「リコー みまもりベッドセンサーシステム

スマートシティ

AIとIoTを活用することで、街全体で人々の生活を改善していこうという構想をスマートシティと呼びます。スマートシティでは、家の中の家電だけでなく、街の中にあるあらゆるモノがインターネットに接続し、モノ同士が連携することにより、例えば、交通渋滞を予測して最適なルートを検出したり、犯罪を未然に防いだり、市民サービスを向上させたりといったことが可能になると期待されています。

分かりやすいスマートシティはまだ実現していませんが、千葉県柏市にある「柏の葉スマートシティ」や、トヨタ自動車が構想する「ウーブン・シティ」など、すでに実験的なプロジェクトが複数登場しています。

出典:柏の葉スマートシティ

今後も発展が期待されるIoT

これまで見てきたようにAIとIoTは、ビッグデータの取集・送信・分析といった観点から密接な関係があります。さらに今後は5Gの普及により、さらなる進化と活用が期待されます。

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