LIFULL Creators Blog

LIFULL Creators Blogとは、株式会社LIFULLの社員が記事を共有するブログです。自分の役立つ経験や知識を広めることで世界をもっとFULLにしていきます。

学会イベント「DEIM 2023」参加報告

こんにちは。AI戦略室 主席研究員の清田陽司です。

LIFULLが取り組んでいるさまざまな研究開発の課題を、より多くの社外の方々(とくに大学の研究者や学生)に共有することで、LIFULLだけではなし得ないより大きな研究成果につなげる、「産学連携」という活動を行っています。

実は、LIFULL HOME'S 3D間取りというサービスも、産学連携の長年の取り組みの成果の一つです。

このたび、3月に開催された第15回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(通称 DEIM 2023)に、協賛企業の担当者、かつ「産学連携委員長」という役割で関わりましたので、その様子を報告します。

event.dbsj.org

開催会場の長良川国際会議場(岐阜県岐阜市)

DEIMは、いわゆる「学会イベント」の一つで、日本データベース学会情報処理学会データベースシステム研究会電子情報通信学会データ工学研究専門委員会による共催です。 前身の「データ工学ワークショップ」から30年以上続いていて、例年600名以上の参加者を集めています。 LIFULLはもちろん、多くの企業がこのような学会イベントに協賛・参加しています。

この記事では、コロナ禍を経て4年ぶりに実現した現地開催の様子や、企業がこのような学会イベントに関わる意義について、お伝えしたいと思います。

コロナ禍と学会イベント

2020年初頭から続くコロナ禍は、多くの人が集まることに意義のある学会イベントに、大きな打撃を与えました。

2020年3月に開催されたDEIM 2020は、まさにコロナ禍の直撃を受けた学会イベントの一つでした。

DEIMは、例年合宿形式で開催され、参加者間の濃密な議論や交流が行われることを、大きな特色としていました。

私自身も毎年参加し、昼のさまざまなセッションでの発表や参加だけでなく、夜の美味しい料理やお酒を嗜みながらの多くの方々との交流も楽しみにしてきました。

しかし、新型コロナウイルス感染症が急激に拡大する中、このような濃密な交流をすること自体が許されない状況となり、実際に、多くの学会イベントが開催中止に追い込まれました。

DEIM 2020は、磐梯熱海温泉での開催が予定されていましたが、急遽現地開催から、当時ほとんど実績やノウハウのなかったオンライン会議システムによる開催に切り替えられました。

多くの学会イベントが中止に追い込まれる中、質疑応答を含む発表セッションをフルオンラインで実施できるシステムを短期間で構築し、フルオンライン開催を実現したDEIM 2020の挑戦は大きな注目を集め、メディアでも取り上げられました。

www3.nhk.or.jp

www.asahi.com

www.businessinsider.jp

私自身も協賛企業担当者としてDEIM 2020に参加していました。

オンライン開催のシステムを構築された関係者の方々の奮闘を目の当たりにし、大きな感銘を受けたことを鮮明に覚えています。

LIFULLでも、オンライン開催への切り替えを受けて、協賛を継続するか取りやめるかの判断を迫られましたが、このような危機的状況だからこそ継続して学会イベントの成功を支える、という決断に至りました。

いま振り返っても、この決断をしてとても良かったと思います。

国立情報学研究所(NII)に急遽設置されたDEIM 2020運営事務局

これに続くDEIM 2021DEIM 2022も、当初は現地(それぞれ磐梯熱海温泉、名古屋市)での開催が計画されましたが、コロナ禍での感染拡大のリスクが懸念されたため、いずれもフルオンラインでの開催を余儀なくされました。

オンラインでの学会イベントにいくつも参加してきて、オンライン開催にはメリット、デメリットの両方があることを感じてきました。

「参加者の幅が拡がる」ことは、オンライン学会イベントの良さの一つです。

参加費用、子育てや介護などの個別の事情により、これまで参加をあきらめてきた方々が多く参加し、議論や交流を楽しまれている様子を、私自身も数多く見ることができました。

より多様な方々が参加することで、議論の幅も拡がることは、オンライン学会イベントならではのメリットだと思います。

DEIM 2022では、過去最大となる1376名の方々が参加し、大盛況でした。

一方で、オンライン学会イベントには、「参加者間の交流が減ってしまう」という課題もあります。

現地開催の学会イベントでは、休憩時間中に顔なじみの方とたまたま出会っての雑談など、数多くの交流機会がありますが、オンライン開催ではどうしても減ってしまいます。

より多くの交流機会をもつことがメリットとなる協賛企業にとっても、交流機会が減ってしまうのは大きな悩みでした。

「直列ハイブリッド開催」という挑戦

オンライン開催と現地開催の良いとこ取りをする「ハイブリッド開催」は、すでにいくつかの学会イベントで取り入れられています。

私自身も、人工知能学会全国大会(JSAI 2022、京都)など、いくつかのハイブリッド開催の学会イベントに参加し、その良さを実感しました。

一方で、ハイブリッドのイベント開催は本当に大変です。

現地参加者とオンライン参加者がスムーズに交流できるようなシステムは大がかりになりますし、トラブルが起きたときに対応できるスタッフも多数必要となります。

そこで、DEIM 2023では、3年間続いた完全オンライン開催の経験を踏まえて、新たに「直列ハイブリッド」という開催形式に挑戦しました。

具体的には、最初の3日間(3月5日〜7日)に一般発表セッションを完全オンライン開催で実施し、その後(3月8日〜9日)に現地会場(岐阜市)に集まってインタラクティブセッション(ポスター発表)などの交流イベントを実施することになりました。

このように、オンライン開催と現地開催を時間的に分ける(これを「直列ハイブリッド」と呼ぶことになりました)ことで、ハイブリッド開催の「コストや労力がかかる」というデメリットを最小化しながら、オンラインイベントだけ参加したい方々、現地で多くの参加者と交流したい方々の、両方のニーズを満たすことを目指しました。

結果として、直列ハイブリッド開催という形式は大成功だったという感想をもちました。

オンラインでの一般発表セッションで、より多くの発表をオンラインで視聴した上で、現地のインタラクティブセッションで、興味のある研究内容について、発表者とポスター前でじっくりと議論する、という、新たな学会イベントの形が実現できたように思います。

開催期間が5日間と長くなってしまうのが課題ですが、「学会の目的は何か」という原点に立ち返り、時代の変化に合わせてイベントのあり方を柔軟に変えていくことは、とても大切なことだと感じました。

「直列ハイブリッド」という前例のない開催形態に挑戦された実行委員長の鈴木優先生(岐阜大学)を代表とする幹事団の皆さまに、心からの敬意を表したいと思います。

この写真は、現地にて開催されたネットワーキングセッションの様子です。

Open Space Technology(OST)という枠組みで、参加者が話したいテーマをシェアし、それに興味をもつ人々が自由に集まって対話するという時間となり、大変盛り上がりました。

産学連携委員長としてのお仕事

今回のDEIM 2023では、産学連携委員長という役割を担当しました。

企業向け協賛プログラムの枠組みを設計するとともに、協賛企業各社と、大学の研究者を中心とする委員の方々とをつなぎ、産学連携をより密接にするという役割です。

今回は、「直列ハイブリッド」という開催形態のもとで、どのような協賛プログラムにすると多くの方に価値を感じていただけるか、幹事団や協賛企業の担当者など、多くの方々と相談しながら模索しました。

その結果、「4年ぶりの現地開催の機会を生かして、企業ブースに多くの参加者が集まる仕掛け」、および「協賛企業各社からの技術報告発表を、一般発表と同じオンラインセッションの時間に組み込むことで、参加者からより多くの質問が集まる仕掛け」に注力した協賛プログラムとすることになりました。

非常に有り難いことに、今回も19社もの企業から協賛をいただくことができ、充実した協賛プログラムを参加者の方々にご提供することができました。

とくに、最終日の常設ブースは、各社のブースに多数の参加者が集まり、大変盛況でした。

私自身も、LIFULLのブースにポスターを出して不動産分野でのAI関連の研究テーマなどをお伝えし、さまざまな反響をいただきました。

何よりも、参加者の方々が4年ぶりの現地での交流を楽しまれている様子が感じられ、主催者としても大変嬉しかったです。

協賛いただいた各社の皆さま、技術報告発表や常設ブースにて交流いただいた参加者の皆さまに、心より御礼申し上げます。

常設ブースの様子

オンライン会議用に参加者に配布されたバーチャル背景

企業が学会イベントに関わる意義

多くの企業がこのような学会イベントに積極的に関わっているのはなぜでしょうか?

優秀な学生の採用につなげたいという目的は、すべての企業が共通してもっています。

しかし、学会イベントを単に自社の魅力をアピールする場として活用するだけでは、効果も薄く、また長続きもしないように感じています。

学会イベントでは、学生さんだけでなく、大学の研究者の方々、他社の研究者や人事担当者など、さまざまな方々と交流することができます。

大学の先生方とお話しすることで、いまの学生が関心をもっているテーマなどについて詳しく知ることができます。

他社の方々とお話しすることで、他社がどのような考え方をもとに研究開発を進めているかなどについて、理解を深めることができます。

学会イベントの参加者との交流を深める上で非常に大切なのが、学会イベントの価値を高めるために、自社としてどのような貢献ができるのかという視点です。

LIFULLは、利他主義を社是として掲げています。

目の前にいる人をHAPPYにすることで自分もHAPPYになれるという考え方を、私達は学会イベントに関わる上でも大切にしています。

最後になりますが、LIFULLでは共に成長しながら働く仲間を募っております。 AI戦略室ではシニアデータサイエンティストを募集中です。

hrmos.co

カジュアル面談もありますのでご興味ある方は是非ご応募ください!

hrmos.co

今後も、LIFULLでの産学連携活動について本ブログで発信していきます。どうぞよろしくお願いいたします!