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論文系 高度情報処理試験 合格のコツ

こんにちは、上野です。

この記事では、出題形式に論述式が含まれる、以下試験の勉強方法や解き方について解説します。

私自身は上記の高度情報処理試験はすべて合格しています。なお、高度情報処理試験すべてで言うとエンベデッドスペシャリストだけ持っていません。社内では同期の小林さんがすべての情報処理試験区分に合格しているため、私は社内でドヤ顔できません。

論文形式の試験ですが、基本的にはどの試験も傾向と対策は似ており、ポイントを掴むとどの試験も取りやすいという特徴があります。「論文なんて難しい・・」と言うイメージのある方も是非本記事を読んでトライしてみてください。午前は簡単に私がやっていた勉強方法を共有します。難しくなってくる午後Ⅰについては解き方を紹介し、論述となる午後Ⅱについてサンプル論文を一部書きながら解説します。

1. 本を読んで基礎用語を理解する

試験区分の役割経験のない方は、その役割にどういった能力が求められるのか、1冊教科書のような本を読んでみるのがオススメです。経験のある方も、試験内では自分が知っている単語が違う呼び方で登場することも多いので、復習も兼ねて読んでみるのがオススメです。特に会社内のプロジェクトでは独自の用語も多く使われていることも多いので注意しましょう。

私は以下のような参考書を1度ざっと読むようにしていました。

読む際のポイントですが、読みすぎないことです。試験合格に向けては後述する過去問や論文対策に時間をかけることをオススメします。基礎知識を一度知るくらいの認識で本は一度読み、あとは必要に応じて読み返すくらいが良いでしょう。上記のような参考書は練習問題も含まれるので、1冊で過去問や似た問題も合わせて勉強するという手法もありかと思います。

2. 午前Ⅰ、午前Ⅱ対策

基礎を理解している状態であれば、基本的に過去問をやりこめばOKです。以下のようなスマホアプリも充実しているので、スキマ時間で過去問を読み込みます。

apps.apple.com

過去10年分ほど読み込み解けるようにしておけば合格できるかと思います。私はこのやり方で勉強していましたが、午前で落ちたことは(記憶上)ありません。

午後Ⅰ対策

午後Ⅰについては勉強方法というより、解答方法のポイントを紹介します。ずばりポイントは解答に問題文の文章を使用することです。極力自分の言葉を使わないのがコツです。実際の問題を見ていきましょう。2022年度のプロジェクトマネージャ試験、午後Ⅰ問題を見てみます。過去問はIPAのサイトからダウンロード可能です。

問1について見ていきます。「SaaSを利用して短期間にシステムを導入するプロジェクト」が題材になっています。問題文をざっくりまとめると以下の通りです。

  • M社はECサイトでギフト販売を行なっている
  • 問い合わせはコールセンター経由で電話かメール、FAQの掲載あり
  • 以下のような課題あり
    • FAQ外の質問が多く、顧客を待たせており不満が発生
    • 過去の問い合わせデータは登録、管理されておらず商品企画や販売に活かせていない
  • 課題を解決するためにAIチャットボットの開発を決定
    • AIによる自動回答で満足度向上
    • 問い合わせデータを自動登録し、分析することで販売に活かしUX改善
    • 2ヶ月後のクリスマス商戦までに運用を開始したい
  • 開発は2段階で実施
    • 第1次開発:AIボットの基本機能を実装、2ヶ月後に運用開始
    • 第2次開発:問い合わせデータを分析し、UX改善のための機能を実装、9ヶ月後に運用開始
  • 導入プロジェクト終了時にはAI活用のノウハウを取りまとめる

実際に最近でもありそうな内容で面白いですね。解答例を見ていきます。

設問1について開発を2段階で分けた理由について聞かれていますが、解答例では以下のようになっています。問題文に出てくる部分を赤くしています。

AIボット運用開始クリスマスギフト商戦に遅れるリスク

単語はほぼすべて問題文に出てきているものなので、いかに本文を読み解いて何を聞かれているのか理解する力が大事かがわかります。たまたまだと思われる方もいると思うので、全ての解答例を記載し、問題文から取っている部分を同じく赤字にしてみます。

  • 設問1:AIボット運用開始クリスマスギフト商戦に遅れるリスク
  • 設問2
    • (1)-例1:AIボット導入によるコールセンター業務の実施イメージ
    • (1)-例2:顧客がどのようにAIボットを使うのかイメージ
    • (2):より類似性の高い質問や回答の提示状況
    • (3):FAQの自動更新に関わる要求
    • (4)a:パラメータ設定の変更だけで実現できる。
  • 設問3
    • (1):顧客の真のニーズを踏まえたギフトを販売できるかどうか
    • (2):デジタルマーケティング戦略の立案を先にすべきだから
    • (3):マーケティング業務でAIを活用したデータ分析などを行う。

問題文章に書かれてることをそのまま書いて「書いてる通りだから当たり前じゃん」と考えてしまうような回答もありますが、自分の言葉で書くよりは文章の言葉をできるだけ使うのがオススメです。

たとえば設問2(1)-1の回答ですが、私であればもっと直接的に文章の言葉を使って「オペレータの運用がどのように変わるのかというイメージ」といった具合に書きます。(※その解答が完全に正解になるかは採点次第なのでわかりません)

適切な言葉を選ぶだけと言えば簡単ですが、実際に解いてみると難しい部分もあります。特に後半の問題では問題文章の前半部分から回答となる文章を選択する場合も多く、見つけるのが難しくなります。逆に前半の問題で後半の文章が解答の選択肢になることは経験上無いので、設問で聞かれている部分以前の文章を読むのが良いでしょう。

ということで、午後Ⅰのポイントは悩んだら文章を読み込むというところです。自分の言葉を使い出したら怪しいなと思うようにしましょう。

午後Ⅱ対策

本ブログの本題とも言える午後Ⅱの論文対策となります。先にポイントを書いておきます。

  • 設問で問われてることに対し、自分の経験をもとに具体的に答える
  • 試験区分の立場として書く、たとえばプロジェクトマネージャ試験ならプロジェクトマネージャとしての行動を書く
  • 設問ア→イ→ウの流れを意識する
  • 文字数は設問で指定された条件を守って書く、時間内に
  • 読みやすい文章を意識する、箇条書きで見やすく、自分の言葉を使うなど

2022年度のプロジェクトマネージャ試験の午後Ⅱ、設問1を例に実際の論文を私なりに書いています。すべて書くと長くなるので設問アのみ書いてみます。

問1の題材は「システム開発プロジェクトにおける事業環境の変化への対応」についてです。

問題文の前半部分は以下のようになっています。

システム開発プロジェクトでは、事業環境の変化に対応して、プロジェクトチームの外部のステークホルダからプロジェクトの実行中に計画変更の要求を受けることがある。このような計画変更には、プロジェクトにプラスの影響を与える機会とマイナスの影響を与える脅威が伴う。計画変更を効果的に実施するためには、機会を生かす対応策と脅威を抑える対応策の策定が重要である。(続く)

設問アは以下のとおりです。

あなたが携わったシステム開発プロジェクトの概要と目的、計画変更の背景となった事業環境の変化、及びプロジェクトチームの外部のステークホルダからプロジェクトの実行中に受けた計画変更の要求の内容について、800字以内で述べよ。

私のサンプル解答は以下のとおりです。実際に合格した論文ではなく、問題文を読んで本ブログ用に書いたものになります。


  1. クラウドセキュリティソリューションの開発と計画変更の要求内容

1.1. クラウドセキュリティソリューションの開発
 私はシステムインテグレーターN社でクラウドを活用したシステム構築を担当するプロジェクトマネージャである。多くの企業が大手パブリッククラウドベンダーA社のクラウドサービスを使用しているが、サービスが多くうまく活用できておらず、特にセキュリティ面においてクラウド特有の設定が多く不安と感じている企業も増えてきている。そこでN社ではA社クラウドのセキュリティ関連の設定を自動で行うクラウドセキュリティソリューションを開発することになり、私がプロジェクトマネージャを担当することになった。A社はセキュリティ関連のサービスも多く提供していたため、それらをうまく組み合わせることがポイントとなる。すでに需要も多くあった状態であったため、いち早く本ソリューションによるN社のビジネス拡大を目指すという目的で、サービス提供までの開発期間は6ヶ月となった。

1.2. 事業環境の変化と計画変更の要求内容
 A社で提供されている既存のサービスを活用してソリューションを開発する計画で進んでいたが、A社からCという新たなサービスが発表された。クラウドサービスはアップデートが頻繁にあり、こういった新サービスも発表されることがある。新サービスCの発表を受けて、営業部門から話題になるから使って外部へアピールしたい、ソリューション構築部門のリーダーからは機能面も優秀で開発や運用が楽になりそうという声が上がった。私はこれらの声を受けて、新サービスCの検証を行いながら、問題なければ既存のサービスではなく新サービスCをうまく活用してソリューションを開発する方向へ計画変更を行なった。

(729文字)


最初のポイントについて、サンプルの解答と共に振り返ってみます。

設問で問われてることに対し、自分の経験をもとに具体的に答える

プロジェクトの概要はどの論文問題でも聞かれるところなのである程度共通的に書けるところかと思います。今回問われているのは事業環境の変化計画変更の要求内容という2点です。私のサンプルでは以下の観点で記載しています。

  • 事業環境の変化:クラウドで新サービスが発表されて環境が変化した
  • 計画変更の要求内容:新サービスを使いたいという要求があり、使う計画に変更

聞かれていることに対し、できるだけ具体的に経験を答えるというのがポイントです。なお、私の場合は会社名やサービス名はアルファベットで置き換えることが多いです。A社はもちろんAWSを想定して書いています。

私は自分が経験したプロジェクトをインプットとして書いていたので、試験前日あたりに自分が経験したプロジェクトを棚卸するといった準備はしていました。

試験区分の立場として書く

今回のサンプルはプロジェクトマネージャなので、最初に私はプロジェクトマネージャと言い切っています。他の試験区分でもそう書いてきました。言い切るのも重要ですし、立場としてのエピソードを書くということも重要です。たとえばプロジェクトマネージャの本来の役割はメンバーの管理や指示、意思決定になるので、開発タスクの詳細など、立場的に異なる内容を多く書いてしまうと減点対象になる可能性もあるでしょう。試験区分の立場は書きながら常に意識した方が良いです。

設問ア→イ→ウの流れを意識する

設問は3つに分かれていますが、ストーリーとしては1つになるので、設問アの解答は設問イにつながるような記載にします。意識的には設問は3つだけど1つの論文を書いているようなイメージです。

たとえば今回選んだサンプルでは、設問イで機会を生かす対応策(ポジティブ)と、脅威を抑える対応策(ネガティブ)を書く必要があります。私が続けて書くとしたら以下のようなことを書くでしょう。

  • 機会を生かす対応策:新サービスによる話題性で販売効果UP、開発者のモチベーション向上
  • 脅威を抑える対応策:知識や実績不足による遅延、未知のバグ遭遇

機会を生かす対応策については、設問アの解答で一部触れている部分もあり次(設問イ)に繋がるような意識で書いています。

文字数は設問で指定された条件を守って書く、時間内に

文字数は必ず設問に書かれた条件以上を書くようにしましょう。目安としては設問ア:600〜800、設問イ:1000〜1600、設問ウ:800〜1200くらいで書いた方が良いかと思います。時間内に書くというのもポイントです。私自身は文字を書くのが速くないので、基本的には時間をフルに使ってなんとか書ききることが多かったです。時計と自分の進捗は随時確認しましょう。

読みやすい文章を意識する

採点者も人間ですので、人が見やすい文章を意識した方が良いでしょう。たとえばタイトルによるブロック分けです。私は書き始める前に以下のように中タイトルレベルで構成を書き出します。

  1. クラウドセキュリティソリューションの開発と計画変更の要求内容
    1.1. クラウドセキュリティソリューションの開発
    1.2. 事業環境の変化と計画変更の要求内容

こうすることで文章の構成として読みやすくなります。また、このタイトルには問題文の言葉を使うことにより、問題で聞かれていることを意識できるという効果もあります。

使用する単語選びも注意しましょう。本やサンプル論文を見ると見慣れないカッコいい言葉がたくさん出てくるかもしれませんが、自分が使い慣れてない言葉を使っても基本的には伝わりやすい文章は書けないと思います。できるだけ自分が使い慣れている言葉を使用し、伝えることを最優先で書きましょう。

今回はブログ内で準備しながら文章を書きましたが、実際の試験ではもっと雑な文章になっていました。時間が無い中、多くの文字を書かなきゃいけないという条件は受験者全員同じなので、合格者が皆キレイな文章を書いているわけでは無いはずです。条件の文字数を守って、聞かれている質問に答える文章を書ければ合格は狙えますので、そこを最優先に書いてみてください。

論文(午後Ⅱ)対策は以上となります。

業務と試験について

よくある疑問として「試験内容は業務に役立つのか?」という点です。私は試験のスキルを業務に活かすとという感覚ではなく、業務で得たスキルの力試し的な意識で特に論文系は受けていました。

というのも、論文系試験はシステム構築の上流工程に近い感覚があるためです。論文系の試験では、問題文から課題の状況を理解して、それに対する状況や解決策を文章化するというのが基本となります。一方業務、特に上流工程である要件定義や基本設計では、既存資料や計画書、ステークホルダーとの打ち合わせなどのインプットを元に、計画を文章化するというタスクがメインになります。この2つ、よく似ているなと思います。

試験区分の役割の基礎知識や経験が少しあって、ドキュメンテーション(文章化)と状況理解力の知識があれば受かる試験なのかなと思います。ということで私は自分の経験と理解力、文章力を試してみるくらいの気持ちで臨んでました。どの試験もポイントは同じなので取れそうだったからという気楽な理由もありますw。

勉強、受験後の感想としては、IPAではこういうふうに言うのかーという一般的な知識は得られて良かったと感じています。

さいごに

大事なことを書くのを忘れていましたが、高度情報試験は試験時間も長くそもそもすべて解くという部分で体力と集中力が必要になります。午前Ⅰから受ける場合は朝起きて時間どおり会場に着けるかも重要なポイントになってきます。せっかくの試験、受けるなら合格したいですよね。直前はしっかり休んで合格するつもりで受験に臨みましょう。

試験合格に悩まれている方の助けになれば幸いです!

執筆者上野史瑛

Japan APN Ambassador
AWSを中心としたクラウドの導入、最適化を専門に行っています。