LIFULL Creators Blog

LIFULL Creators Blogとは、株式会社LIFULLの社員が記事を共有するブログです。自分の役立つ経験や知識を広めることで世界をもっとFULLにしていきます。

学会イベント「人工知能学会全国大会(JSAI 2023)」参加報告

こんにちは、AI戦略室の清田です。

2023年3月に岐阜で開催されたDEIM 2023に続き、6月に熊本で開催された人工知能学会全国大会(JSAI 2023)に参加いたしました。

www.ai-gakkai.or.jp

今年は、恒例の「不動産とAI」をテーマとした企画セッションにも関わりましたので、その内容も合わせて報告します。

生成AIブームがAI研究コミュニティにもたらした影響

今回のJSAI 2023は、過去最高となる3,566名もの参加者があり、大盛況でした。 2022年に相次いで登場した生成AI技術を用いたサービス(Stable Diffusionなどの絵画生成、ChatGPTなどの自然言語生成)の影響で、AI研究が改めて大きな注目を集めていることを感じます。

ディープラーニングの登場などを受けて10年前ほどから始まった第3次AIブームは、ある程度の落ち着きを見せていましたが、「冬の時代」を迎える前に、第4次ブームが始まったのかもしれません。

生成AI技術は、大きな期待を集めている一方、著作権の問題、情報の信頼性の問題など、さまざまなリスクが指摘されてもいます。

私がオブザーバーとして関わっている人工知能学会 倫理委員会でも、マスメディアからの取材依頼などが多数入っている状況を受けて議論を行い、「人工知能学会としての大規模生成モデルに対してのメッセージ」を公表しました。

www.ai-gakkai.or.jp

本大会では、「日本は生成AIを起爆剤にできるのか」をテーマとした緊急企画セッション、「アートにおいても敗北しつつある人間 〜人の美意識もAIにハックされるのか?〜」と題した倫理委員会主催セッションなどが実施され、多くの参加者を集めていました。 その様子は、NHKなどのメディアでも報道され、生成AIへの社会からの関心の高さを実感しました。

www3.nhk.or.jp

生成AI技術をめぐっては、大規模言語モデルなどの技術面だけでなく、倫理や法律、収益の配分、人の創造性など、さまざまな課題が入り交じっていて、正しい理解に基づいた議論がなかなか成立しづらいように思います。

正しい理解に基づいた生産的な議論を成り立たせる上で、学会というコミュニティの役割に、大きな期待が寄せられています。 こうした役割を果たす上で、生成AIの開発に関わる各企業がより主体的に関わることが求められているように感じます。

企画セッション「少子高齢化と「住まい」産業のDXを考える」

LIFULLでは、名古屋で開催されたJSAI 2017から、継続的に「不動産とAI」をテーマとしたセッションを、同じ関心を持つ大学や企業の方々と共同で開催しています。

今回は、「少子高齢化と「住まい」産業のDXを考える」と題した企画セッションを開催しました。 少⼦⾼齢化の進展に伴う「住まい」の課題に取り組まれている方々をお招きし、さまざまな事例を共有いただきました。

不動産、AIにかかわる方々だけでなく、これからの時代に求められている新たな「住まい」の価値を追求されている方や、人々の行動データをさまざまな社会課題の解決に活用する取り組みをされている方も交えた議論を行うことで、「不動産とAI」の研究領域をさらに広げることを目指しました。

sites.google.com

LIDAR測量、簡易BIMによるリノベ・維持管理へのデータ活用

スターツ社の清水哲志様・城戸祐一様からは、既存建築物のリノベーションにかかる膨大な手間を、スマートフォンに搭載されたLiDAR(ライダー)機能を活用して作成された簡易BIMモデルを用いて削減する取り組みなどを発表いただきました。 (国土交通省の「令和4年度住宅生産技術イノベーション促進事業」として、LIFULLも開発に協力しています)

xtech.nikkei.com

リノベーション事業の最前線の話題

福岡を中心に築古ビルのリノベーションを多数手がけられているスペースRデザイン代表の吉原勝己様からは、「共感価値」によって、築数十年の築古ビルの資産価値を向上するという興味深い事例を発表いただきました。

www.reizensou.com

www.space-r.net

これらの事例は、本セッションに参加されていたAI研究者の方々からも驚きをもって受け止められました。

地⽅⾃治体における⾼齢社会デザインへのビッグデータ活⽤ソリューション事例

ヤフー社でビッグデータを活用したデータソリューション事業を担当されている大屋誠様からは、DS.INSIGHTを用いた分析事例をご発表いただきました。

パネルディスカッション

皆さまからのご発表を受けて、以下のようなテーマで多岐にわたる議論を行いました。

  • 既存ストックの価値を高めるためにAI技術が果たせる役割
  • 2025年問題にどのように向き合うべきか
  • 九州をフィールドとした協働の可能性

今回の議論は非常に刺激的で、お互いに接点の少なかった領域の人々どうしが対話を重ねることが、「住まい」産業の形を大きく変革するきっかけになるのではという大きな可能性を感じました。

来年に浜松で開催予定のJSAI 2024でも、引き続き「不動産とAI」をテーマとしたセッションを企画予定です。

多くの方々のご参加をお待ちしております!

おわりに

LIFULLでは、生成AI技術を活用したプロダクトの開発を加速するため、専門部署としてジェネレーティブAIプロダクト開発室を2023年5月に設置しました

www.lifull.blog

AI戦略室も引き続き研究開発に取り組んでおり、今後はジェネレーティブAIプロダクト開発室とともに連携して生成AIの活用に取り組んでいく予定です。

ChatGPTを活用した「AIホームズくん LINE版」、ChatGPTプラグインなど、国内不動産ポータルとして初めてとなるサービスを続々とリリースしています。

lifull.com

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生成AI技術は強力な技術であるがために、ユーザーにとって多くの利便性をもたらす一方、使い方によってはユーザーの利益を損ねるリスクもあります。

AI戦略室では、『創造と革進で喜びを届ける』というチームビジョンを掲げ、AI技術シーズの創出と活用を通じて、多様な社会課題や事業課題の解決に挑戦しています。 今回のJSAI 2023への参加を通じて得られた生成AI技術をめぐるさまざまな課題を踏まえつつ、社会課題や事業課題の解決につながる活用のあり方を考えてまいりたいと思います。

AI戦略室では、共に成長しながら働く仲間を募集しています。ご興味をお持ちの方のご応募をお待ちしております!

hrmos.co