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AWSとSAP Business Technology PlatformのジョイントレファレンスアーキテクチャでSAPへの投資価値を拡大

この投稿は、AWS と SAP の以下のメンバーによって共同執筆しました。
Ferry Mulyadi, Partner Solution Architect SAP Alliance APJ, AWS
Manjunath Chandrashekhar, Director SAP Business Technology Platform CoE APJ, SAP

はじめに

多くの SAP のお客様は、SAP への投資をより有効活用できるために、コア SAP ERP または SAP S/4HANA 内にカスタムコードの導入を検討しています。アメリカ SAP ユーザーグループ ( ASUG 2021 ) が行った市場調査によると、91% 以上の顧客が重要なビジネスプロセスを実現するためにカスタムコードに依存しています。そのうちの 57% は、重要なビジネスプロセスの半分以上を SAP のカスタムインターフェースに依存しています。
これらのカスタムアプリケーションとインターフェースは、ビジネスライン全体でより効率的にプロセスを推進するために構築されたものですが、同時に企業に大きなオーバーヘッドをもたらしました。

  • アプリケーションは通常、 6 ~ 8 年前にレガシー開発フレームワークを使用して構築されました。
  • アプリケーションのメンテナンスと改善ノウハウは、従業員の減少によって失われています。
  • 既存のアプリケーションを維持するコストのコントロールは難しくなっています。

SAP Business Technology Platform ( SAP BTP ) と Amazon Web Services ( AWS ) のクラウドサービスにより、SAP のお客様は SAP S/4HANA の重要なビジネスプロセスの改革に目を向けることができます。

SAP BTP on AWS を選択する理由

SAP BTP は、データ分析、人工知能、機械学習、アプリケーション開発、自動化、統合の機能を1つの統一プラットフォームに集約しています。、2022 年 9 月 15日時点のSAP Discovery Center によると、SAP BTP には 96 のサービスがあり、そのうち 83 のサービスが 世界中で9 つの AWS リージョンで稼働されています。以下は例のサービスです。

  • Forms Service by Adobe は、SAP S/4HANA Private Cloud Edition ( PCE ) または RISE with SAP では常に必要なサービスです。このサービスがないと、請求書、販売注文書、船荷証券などの PDF 出力、印刷やインタラクティブフォームを生成できません。
  • SAP Process Automation は、ワークフローとロボティックプロセスオートメーションを組み合わせ、SAP のお客様がコードレスでビジネスプロセスの自動化を実現できるサービスを提供しています。
  • SAP Analytics Cloud は、SAP Data Warehouse Cloud ( SAP DWC ) と組み合わせた包括的なレポート、分析、計画のソリューションを提供しています。

SAP S/4HANA ( または RISE with SAP on AWS ) と SAP BTP を AWS 上で稼働する場合、すべてのインスタンスが AWS グローバルネットワーク内で稼働し、AWS PrivateLink にもサポートされるため、より安全なアーキテクチャを実現でき、追加のデータ通信料金、データ通信レイテンシー、および追加のストレージ費用を回避できます(参考文献: SAP PrivateLink サービスを使用して SAP BTP サービスと AWS サービスを接続する方法データ転送に関するアナウンスAmazon VPC FAQ )。これにより、SAP DWC と AWS のデータ分析サービス間の双方向データ連携など、強力なソリューションへが可能になり、ニーズに応じた最適なスケール、パフォーマンス、コストでニアリアルタイム分析を実現できます。

AWS と SAP BTP ジョイントレファレンスアーキテクチャが必要になる理由

AWS と SAP BTP のジョイントレファレンスアーキテクチャは、様々なビジネスソリューションのシナリオに SAP BTP または AWS サービスを使用する方法に関して、お客様やパートナーから来た共通の質問に答えるために作られました。それぞれのユースケースを深堀すると、AWS と SAP BTP のサービスが互いに補完し合い、ビジネス課題を解決するために連携が可能であることがわかりますでしょう。AWS と SAP BTP のジョイントレファレンスアーキテクチャでは、お客様にとって最高の Time-to-value と最小の TCO を達成するためのアーキテクチャの選択について、その指針を説明します。

基本方針

サービス機能

各サービスのビジネス課題を解決するための機能及び、どの技術領域に活用できるのかにより、アーキテクチャが決まります。以下は例のサービスです。

  • 発注書承認のためのモバイルアプリを構築するために、ノーコードアプリ開発環境として SAP AppGyver を使用
  • AWS IoT Greengrass と IoT Core を利用して、製造ライン向けの IoT との統合を構築

プリビルドコンテンツ

既にデータ連携又はレポート機能を持っているサービスがあれば、そのサービスを利用し、より良い Time to Value と 低い TCO を達成することが望ましいです。例としては、以下のようなサービスがあります。

  • SAP Integration Suite には、S/4HANA と SAP SuccessFactors との連携機能は持っています。SAP は、SAC、Planning と SAP DWC を使ったデータ分析ユースケースのために、あらかじめプレビルドビジネスコンテンツを提供しています。
  • Amazon AppFlow は、non-SAP エンタープライズアプリケーション又は Amazon S3 との連携機能を持っています。

データフェデレーション

トランザクションデータレポーティング、人工知能 ( AI )、機械学習 ( ML ) などのユースケース向けの統合分析ソリューションが必要な場合、データレプリケーションではなくソースからデータにアクセスすることが望ましいです。理由は、パフォーマンス向上、レイテンシーの回避、作業の軽減、ストレージなどの追加コストの削減です。以下は例となります。

  • AWS IoT、SAP Plant Maintenance、Amazon Redshift からのデータに対して、 SAP DWC の機能を使ってデータフェデレーションを実現すれば、全体の機器の効率 ( OEE ) ダッシュボードをより効率的に構築できます。
  • リアルタイムで Amazon Athena に直接クエリーをフェデレートする SAP Data Warehouse Cloud の分析モデルを通じてライブデータをもたらし、SAP Analytics Cloud で売上比較分析チャートを示すエンドツーエンドシナリオです。

データロケーション

ユースケースと合わせて、データが存在する場所によって、どのサービスを使うべきかの優先順位が決まります。例えば、以下のような例があります。

  • データソースが SAP アプリケーションにある場合、データミックスが主に SAP 主導であるため、可視化と分析の要件には SAP DWC と SAC を使用することが望ましいです。
  • データソースが Amazon S3 や Amazon Redshift にある場合(例えば、AWS IoT のデータストリームからのデータ)、可視化ツールには Amazon Quicksight を使用することが好ましいでしょう。
  • また、あるシナリオでは、ユースケースの要件で適切なツールの選択が決まり、データが存在する場所だけではソリューションの設計が決まらないこともあるので、注意してください。

このブログに記載している基本指針は原則的なものではなく、お客様のシナリオ、考慮事項、ユースケースに基づいて常にカスタマイズできます。

AWS と SAP BTP ジョイントレファレンスアーキテクチャのユースケース例

機械学習のためのデータフェデレーションアーキテクチャ

図 1 のアーキテクチャで、SAP FedML ( Federated Machine Learning Libraries) を活用し、ビジネスデータの抽出・移行をしなくても、 Amazon SageMaker で機械学習モデルの構築や学習させることができます。

このライブラリは、SAP Data Warehouse Cloud のデータ連携アーキテクチャを使って、ユーザやデータサイエンティストが Amazon SageMaker 上で機械学習モデルを構築、トレーニング、デプロイできるようにします。ソースからデータを複製または移行する必要性を回避できます。

図1. 機械学習のためのデータ連携アーキテクチャ

SAP と AWS のモダンデータアーキテクチャ

お客様がデジタルコアとして SAP S/4HANA を選び、エンタープライズデータ統合分析プラットフォームとして AWS を選択した場合、SAP とエンタープライズのデータの統合が重要になります。これは、データフェデレーションやデータレプリケーションにより実現できます。図 2 はモダンデータアーキテクチャであり、パートナーやお客様が SAP BTP と AWS のレポーティング、分析、ビジネスプランニングに関するサービス活用し、ビジネス課題を解決し、これまで不可能だった新しいビジネスの可能性を見いだすことにつながります。

図 2. SAP と AWS のモダンデータアーキテクチャ

SAP と AWS のパートナー

AWS と SAP BTP とのジョイントレファレンスアーキテクチャのシナリオに基づいたソリューションの構築を支援するため、複数の SAP と AWS のパートナーがいます。多くの国で展開している中、アクセンチュアデロイトPwCIBMCapgeminiDxCFAIR Consulting GroupDalRae SolutionsBourne DigitalCitra Solutions などの SAP と AWS のパートナーに、ジョイントレファレンスアーキテクチャをお届けました。これらのパートナーは、ジョイントレファレンスアーキテクチャを利用して、複数の業界やビジネスドメインのお客様が直面する課題を解決することで、その専門知識の幅と深さを発揮できます。

AWS と SAP BTP ジョイントレファレンスアーキテクチャの成功事例

1/東南アジアのある資源会社は、データからタイムリーでインサイトを得ることに苦労しており、複数の異なるソースからのデータを統合することに多大な工数をかけていました。また、一部のデータソースが社外のアプリケーションやシステムに存在するため、データガバナンスとセキュリティも懸念事項となっています。お客様のデジタルトランスフォーメーション取り組みはアクセンチュアが支援しました。アクセンチュアは、お客様の課題の解決及び、データからより質の高いインサイト、透明性と価値を得て、業務の生産性と効率性を向上させるための支援を行っています。
アクセンチュアは、AWS と SAP BTP ジョイントレファレンスアーキテクチャをベースとして、カスタマイズされたソリューションを構築することで、この東南アジアの資源会社の目標達成を支援しています。ソリューション立ち上げ時のパートナーとして、アクセンチュアは AWS とSAP BTP ジョイントレファレンスアーキテクチャの開発とフィードバックに貢献しています。アクセンチュアは、スモールスタートで目的に合った設計を行うことで、お客様の投資収益率を最大化し、TCO を削減することを目指しています。これにより、ソリューションの柔軟性、拡張性、将来性を高め、段階的に機能を追加することで、さらに価値を高められます。
この事例は、AWS と SAP BTP のジョイントレファレンスアーキテクチャがAWSと SAP BTP 両方の技術の利点と価値を最大化し、参考可能なアーキテクチャ設計図とガイドラインをお客様に提供できている証拠です。AWS とSAP BTP を活用しお客様のための価値提供へのコミットメントにより、アクセンチュアは AWS Partner of the Year 2022SAP Asia Pacific Japan Award for Partner Excellence 2022 for SAP BTP を受賞しました。
2/ あるコンシューマー製品のメーカー ( FCMG ) は、販売パートナーからのフィードバックに基づき、自社のプロセスは複雑で不透明であり、価格・クレジット・製品デリバリー情報に関するコミュニケーションが不十分である課題を発見しました。この会社は、顧客中心になるために改善するために、販売パートナーとの取引プロセスを簡素化する必要があると判断しました。
カスタマーエクスペリエンスを改善するために、FAIR コンサルティンググループ ( FAIR ) が支援しました。FAIR は、SAP BTP と AWS サービスを使用したクラウドベースのソリューションを導入し、お客様の業務の整理や効率化することに成功しました。完全統合された「 Inquiry-to-cash 」(問い合わせから、見積もり、注文と契約、顧客専用の価格設定、とアカウントと支払いまでのプロセス)と「 Cash-to-service 」(クレーム、クレジット、リベート、資産管理のプロセス)のポータルなど、組織のデジタル化要件に沿った性能向上、自動化やセルフサービス機能を提供できました。
FAIR の統合アクセラレーターや標準化された会計・財務・販売・サービスプロセスを活用することで、お客様の業務が簡素化され、顧客とのつながり方が変わりました。その結果、手作業で入力される注文数が 30% 減少し、収益の増加、業務の簡素化、顧客とのコミュニケーションの改善につながりました。これは、優れた性能性や自動化機能に加え、リアルタイムで簡単にアクセルできるユーザーインターフェースによって実現されました。
FAIR は、エクスペリエンスデザイン、SAP カスタマーエクスペリエンス、システム連携、AWS および SAP BTP、SAP クラウド移行などのコンサルティングサービスを提供しています。FAIR は SAP ゴールドパートナーおよびAWS パートナーです。AWS および SAP BTP ジョイントレファレンスアーキテクチャを対応できるパートナーとして、FAIR は SAP と AWS を高度なサービスに活用し、革新的なカスタマーエクスペリエンスを提供するための信頼できるアドバイスや導入サービスを提供しています。

結論

このブログでは、SAP への投資から価値を更に引き出すための AWS と SAP BTP ジョイントレファレンスアーキテクチャについて説明しました。これにより、ベストプラクティスと適切なソリューションや適切なツールを使用して、新しいビジネスチャンスやビジネス価値を創出できます。以下は、AWS と SAP BTP サービスによるモダナイゼーションの旅を開始するのに役立つ参考リソースです。

SAP on AWSAWS 上のデータレイクの詳細については、AWS 製品ドキュメントSAP BTP ユースケースレポジトリSAP Discovery Center – ServicesSAP Discovery Center – Missions をご参照ください。

SAP と AWS とのパートナーシップについて

SAP と AWS は、10 年以上にわたって何千もの共同顧客を持つ戦略的関係を築いてきました。ジョイントレファレンスアーキテクチャと結合されたビジネス能力は、2 つの強力なエンジニアリング組織を結集してイノベーションを推進し、持続可能でインテリジェントな企業になるためのお客様のジャーニーをサポートするという点で重要な意味を持っています。実際、SAP はネットゼロカーボンにコミットし The Climate Pledge に署名され、SAP は 2030 年までのサステナビリティへのコミットメントを加速させています。

SAP on AWS のディスカッションに参加

お客様のアカウントチームと AWS サポートチャンネルに加えて、私たちは最近、re:Post – A Reimagined Q&A Experience for the AWS Community を開始しました。SAP on AWS ソリューションアーキテクトチームは定期的に SAP on AWS トピックを確認し、お客様やパートナーを支援するための議論や質問にお答えしています。もしご質問がサポート対応範囲外である場合、re:Post に参加し、コミュニティのナレッジベースを追加することをご検討ください。

クレジット

AWS と SAP BTP ジョイントレファレンスアーキテクチャは、パートナーを含む  SAP と AWS のパートナーシップと貢献の結果です。次のチームメンバーの貢献に感謝します:Nitin Joshi, Raymond Ho, RJ Bibby, Spencer Martenson, Derek Ewell, Anil Nallamotu, Marius Batrinu, Leo An, Mattia Colagrossi, Barry Hodges, Henry Victor, Ashok Munirathniam Nagichetty, Marin Videnov, Andrew Song, Chris Cormack。

翻訳は Specialist SA トゥアンが担当しました。原文はこちらです。