カケハシで開発ディレクター/スクラムマスターをやっている三浦です。
この記事では、スクラムのプラクティスを通じてより優れたチーム・組織を作っていくためにはスクラムだけでは不十分であり、その効果をさらに引き出すための工夫を組織学習の側面からどのように考えたらよいかを大雑把に書いていきます。 以下のような方に読んでいただけたら嬉しいです。
- 開発組織・チームとしての学習機会について悩んでいる方
- 業務と学習の住みわけ・バランスについて悩んでいる方
「学習」というと個人のお勉強というイメージを持ちやすいかもしれませんが、ここでは組織・チームとしての知識の変化、行動の変化、認知(モノの見方・捉え方)の変化、習慣の変化なども「学習」とみなして考えていきます。
なぜ組織学習が大切なのか
私たちは、自分たちがより優れたチームとなって成果を出していくためには継続的な改善活動が重要だと考えています。そして、より効果的な改善活動を行えるようになるためには様々な知識・知恵が必要だと考えており、知識・知恵を身に着ける活動の一環として、組織での学習機会が大切だと考えています。
もう少し丁寧に整理してみたいと思います。 学習主体は大まかに以下3ステップで広げていくことができると思います。
- 個人の学習
- スクラムチームでの学習
- 組織全体・複数チームでの学習 ※注:組織全体をさらに4としてくくりだしても良いが、今回はまとめて失礼します。
スクラムのプラクティスに沿って真面目にレトロスペクティブをやっていれば、上記2の「スクラムチームでの学習」まではいけそうです。 しかしながら、スクラムチームメンバーの持つ知識・経験の集合和が学習効果の限界になりそうにもみえます。実際のソフトウェア開発の現場では、複数のチームがあって連携・連動しながら仕事を行うことも少なくないと思います。そのため、組織・チームとしての効果をより高めるには、上記3の「組織全体・複数チームでの学習」のステップまで踏み込んで継続的な取り組みを行いたいと感じます。(欲張りですね)
組織全体・複数チームでの学習をどのように実現するか
きっと多くの組織は、みんな忙しい中でベストを尽くしてくれている環境だと思います。 そのため、ココでは限られた時間の中でできることを探ってみた例を書きます。 まだまだ効果としては検証不十分なモノだと思いますので、何か学びの"きっかけ"になれば嬉しいです。
月1最大60分のLT会(LT=Lightning Talk)
私たちの開発組織では月1最大60分のLT会を行っています。 この会の目的は「エンジニアの学習の"きっかけ作り"の場」です。
開催の背景になったのは以前から不定期での勉強会でした。様々なテーマでの勉強会・輪読会が有志によって行われており、継続的な学習の意識・意欲・習慣がもともと組織の中にあったのですが、事業成長が加速すると組織もどんどん大きくなったり業務も忙しくなったりしてくると勉強会を開催する余地が少なくなったり巻き込む人の範囲も小さくなったりしていました。個別勉強会は1つの良い取り組みだと思いますが、開催にあたっては共通の課題や関心を持つ仲間を組織の中で見つけることが必要になると思います。しかし、組織が成長して人数が増えてくると誰が何をやっているのか、何が得意なのか、何に困っているのかなどを把握するのは困難になってきます。そこで共通の課題や頼れる仲間を見つける"きっかけ"をLTという形を通して情報提供できればと思い、まずはLT会を開催してみようと思いました。
月に1回・最大60分のLT会では、正直一発で困難な課題解決や効率アップにつながるほどの即時性のある効果は期待できません。そのため、組織の中でより成果を出したり問題を解決したりするための知恵を少しでも一人ひとりのメンバー、あるいは各チームに提供・蓄積・更新していくことを期待値として開催しています。LT会をゆるく続けることで定期的に知識情報を変化させることができるかもしれませんが、その後の行動・認知・習慣の変化につなげられるかどうかはメンバー次第です。「組織全体・複数チームでの学習」をLT会のみで100%実現することはできないので、LT会はあくまで学習のきっかけに過ぎませんが、繰り返し組織の中の情報量を増やし続けていくことで行動や習慣の変化につながる確率が少しずつでも上がっていけば良いと思います。
Next Action
毎月のLT会の何度か開催してみて、以下のようなフィードバックを参加者のエンジニアからいただくことができました。
- LTだと発表者主体のインプットになってしまいがちなので、複数人でざっくばらんに議論してみたい
- 外部の講師を招待して社内セミナーをやってみたい
これらのフィードバックを踏まえて、今後はLT会だけではなくテーマ持ち寄りのフリーディスカッションの場を開催してみたり社内セミナーを開催してみたりと他の形式にもどんどんTryしていってみたいと考えています。
まとめ
- より優れたチームとなって成果を出していくためには継続的な改善活動が重要
- 改善の質を高めるためにもっと組織内にある知識・知恵を活かしたい
- もっと知識の変化、行動の変化、認知(モノの見方・捉え方)の変化、習慣の変化を引き出していきたい
そのためにスクラムマスターができることは何かと考えると、今は"きっかけを与えること"しかできないのかなぁと思っています。 自分よりも圧倒的に現場のことをよく知るメンバー一人ひとりの力をより強く繋げて引き出して行ける工夫をこれからも考え続けて、できるだけたくさんの"きっかけ"を提供していきたいと思います。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。