BASEプロダクトチームブログ

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エンジニアの評価グレード制の導入について

こんにちはBASE株式会社取締役EVP of Developmentのえふしん( @fshin2000 )です。 今回は、年末の給与改定から運用を開始する評価グレード制導入のお話を書いてみたいと思います。

これまで人材採用時の給与決定や社員の評価時には、マネージャ間で相談し役員承認の上で給与を決めていましたが、その基準や空気感は詳しく社内のメンバーに共有できていませんでした。理由として、中途主体の採用だとどうしても前職給与に影響され、人によって給与にばらつきがでてしまうため、体系だった形に整える機会がなかったのですが、今度、社内に評価グレード制というものを導入することになり、各給与レンジの方に求めるスキルや意識についてまとめたのでこちらで公開いたします。

評価グレード制というのは、一般的に等級と呼ばれるもので、一定サイズ以上の会社のご経験がある方なら、類する制度はどこでもあると思いますので詳細説明は割愛いたします。

(採用面接等で詳しくご説明差し上げられれば幸いです ^^ )

以前からある当社の報酬体系で特徴的なのは、年収7〜800万円以上とそれ以下で給与の上がり方が変わるということが挙げられます。社員の評価は半期毎に行っているのですが、700万円以下の給与の人はスキル向上がそのまま役割向上につながるレンジと捉えていて、仕事を頑張る努力が昇給に反映されやすいのに対して、700万円以上の人はそのような概念をなくして、その代わり、役割や期待値の変更に対して大幅な給与アップを目指す。エンジニアリングマネージャもそれを前提として期待を設定していくという考え方があります。

700万円以上の人は、国内の転職市場においても経験豊富なハイスキル層とみなされると思います。マネジメント側の責務として、評価面談やOKRの設定を通じて、大きな期待をかけ、大きな成果をあげてもらい、大きな昇給を実現することが仕事です。エンジニアリングマネージャは、チームメンバーをプロデュースするという仕事の結果、自分自身の評価と昇給にもつながります。

この以前から取っていた給与の構造を踏襲し、グレードを定めました。これまでやっていた給与決定プロセスを言語化したというのが、作業にあたってやったことです。

評価グレード制に至るまでの過程

歴史ある大企業や老舗企業で働いている人たちは、等級制度、評価制度が当たり前に存在していると思いますので、あまり意識したことはないかもしれませんが、スタートアップ企業が評価グレード制を導入する動機には組織の拡大におけるマネージャへの権限移譲の文脈が存在します。

  • 数年前まで昇給額を役員で決めてた。役員もマネージャから報告されるメンバーの活躍を感じられる組織サイズでもあったし、役員がマネージャも兼ねるケースが多かったので、一定の納得感は得られていたと思われる。
  • 役割や期待に対する給与レンジや昇給額のような基準は、役員とマネージャ間には存在していて、採用活動や半年ごとに行われる評価会議を重ねるたびにブラッシュアップされていった
  • 組織が大きくなりマネージャも増えるなか、その基準を言語化することで、どうしたら給与が上がるのかをフレームワーク化し、目標設定と評価をスケールするようにしたもの

一般にマネージャに給与の提案権限を移譲するにあたって、評価クオリティを維持し、評価への納得感と事業成長を実現するための取り組みとして導入されるものが評価制度や等級制度ということになります。

評価グレードの分類

評価グレードは、 A1・A2・Ex1・Ex2・Ex3・Ex4の6段階 に分類されます。 ※A(エー)=Associate、Ex(イーエックス)=Expert

新卒やキャリアが浅い方はA1から始まって、グレードが上がっていけば行くほど、サービスや会社に対する影響範囲は広く、未来を見据えた課題解決や課題設定力に対する期待が設定されます。

グレードに対しては報酬の下限額が設定されています。上記例に挙げた700万円のラインはEx2の下限値に設定されています。

また、皆さんに親しみやすい役割名としてはリード職がありますが、現在、当社ではテックリードと呼ばれる役割の人がいます。彼らはEx3の枠に該当します。当社ではさらにテックリード of テックリードとしてのプリンシパルテックリードが設定されており、それが最上位のEx4に位置づけられます。完全にBASEの未来を作る期待に対して設定した役割です。

各グレードに対する報酬の上限額は設定されていますが、グレードをまたいだ金額の被りは存在しています。

これは中途採用において、実績のある方はもちろん、期待値込みで若くても高い給与で採用することを想定し、入社後に当社のサービスの経験を積んでいただく中で、適切なグレードに合うようにマネジメントしていくための高速道路の合流車線的なバッファとして存在しています。この辺をあまり厳密にしすぎると採用活動に影響が出てしまうので柔軟性をもたせています。

といろいろ前置きを書きましたが、抽象的には以下のようにグレードに対する期待が設定されています。

A1 (新入社員や経験の浅い社員)

  • 指示/指導を受けながら業務を遂行する
  • 自らの業務領域について、業務改善や課題解決の提案をする

A2

  • 特定領域において自立した業務遂行をする
  • 所属チームの業務について、業務改善や課題解決の提案および実行する

Ex1

  • 特定領域において、所属チームをリードする水準の事業成果を生む

Ex2

  • 特定領域において、所属チームをリードする水準の事業成果を生む
  • 所属Division全体の課題解決に影響力を持つ
  • 同職種における社内比較で高い専門性や課題解決能力を有する

Ex3 (テックリードなどのリード職相当)

  • 全社をリードする水準の事業成果を生む
  • 全社の将来的な課題を解決する事業成果を生む
  • 同業種における全社トップレベルの高い専門性や課題解決能力を有する

Ex4(プリンシパルテックリードなど)

  • 全社をリードする水準の事業成果を生む
  • 全社の将来的な課題を解決する事業成果を生む
  • 全社の課題解決に影響力を持つ
  • 同業種における業界トップレベルの高い専門性や課題解決能力を有する

Web系エンジニアの具体例

以下は、各グレードをWeb系エンジニアに比較的具体例として割り当てたものになります。すべてを満たさなくてはグレードが上がらないというわけではありません。その人の個性と期待する役割にあわせて評価しますが、グレードが上がれば上がるほど、未来をつくることへのビジョン、プロダクトクオリティの実現、不確実性へのチャレンジを求めることになるという部分は、共通して期待することになります。

A1 (新入社員や経験の浅い社員)

  • 通常プロジェクトの開発メンバーとして参加し、開発、テストを任せることができる
  • 比較的平易な難易度のお客様のお問い合わせや不具合対応の解決を任せることができる
  • 周囲の助言を受けながら、所々の問題を解決できる

A2

  • 通常プロジェクトの開発者として参加し、一人でも開発、テスト、リリースを任せることができる
  • お客様問い合わせや不具合について、解決を任せることができる
  • 本番運用の安定性実現のための障害対応、高負荷対応のオペレーションに参加できる

Ex1

  • 通常プロジェクトの技術責任者としてメンバーをリードすることができる (技術責任者とは主にプロジェクトの設計レビューを主導する人)
  • 当社にて求められているソースコード、プロダクト等の品質向上を自ら実現し、メンバーに広げることができる
  • 本番運用の安定性実現のため、障害対応、高負荷問題等を率先して発見、対応し解決に導ける
  • 経験の少ないメンバーに対する技術指導を日常的に任せられる
  • Webサービスを運営するエンジニアとしてPJと日常的な改善を並行して行うために、適切な段取り、スピード、クオリティを実現できる

Ex2

  • 難易度の高い技術課題やプロジェクト(決済の追加や商品オプション機能、抽選販売など)の開発の設計、改善について、見積もり、スケジュール通りの実現を任せることができる
  • 技術的負債の返済を自ら先導し、解決することができる
  • 現状のソースコード、プロダクトについて、チームでの品質向上を率先してリードできる
  • 常に稼働しているサービスに目を向けて、技術的な問題を解決し続ける
  • 自動テストやデプロイ改善等を通じて、デプロイ後の問題発見や運用中のサービス改善をリードできる
  • 一つの技術に依存せず、自分が関わる事業領域で求められる技術への適応力がある。開発言語、フロントエンドやサーバサイド、インフラなどの技術概念に囚われず、近接領域の技術を学び続けて問題解決に貢献できる
  • システム改善が必要になる難易度の高い障害対応を率先してリードしクローズに導ける

Ex3 (テックリードなどのリード職相当)

  • 難易度の高いPJを実現するためにアーキテクチャ設計、作業段取り、見積もりを行い、メンバーを引っ張ることでスケジュールと品質を実現する
  • 計画の有無に関わらず、短期的、中期的な事業成長を見据えながら、現状のサービス、技術の問題に目を向けて、改善提案および改善実施ができる
  • 技術提案、サービスの問題提起、研究等を常に行っている
  • 自分にとって未知の技術を現状にフィットするように取り入れ、サービスの成長を実現することができる
  • 品質、機能、スケーラビリティ、セキュリティ等を改善する技術的課題を提起し、メンバーをアトラクトしながら改善をリードできる

Ex4 (プリンシパルテックリードなど)

  • 会社の中期目標を技術で実現するための技術方針や組織方針の立案および遂行ができる
  • 開発組織に起きる問題点を発見し、技術力の底上げに対する抜本的な施策、生産性の改善を任せることができる
  • セキュリティ、ビジネス、スケーラビリティ等のリスクに目を向け続け、改善提案を行い、組織計画、開発計画に結びつける

今後も役割に対する肩書や、金額構成、トップラインの給与の上限額などは変えていきたいと思っています。Webサービスを支えるエンジニアは一人一人の主体的な活躍がすべてです。非・労働集約的な役割の働き方に対する制度として、ここで決めた制度が今後も固定的であるわけではなく、流動的に見直していけるように業績を上げていきたいと思っています。

それこそEx3やEx4のグレードの人たちが活躍し、サービスクオリティ、業績への寄与を行い給与のトップラインを向上させることが、全エンジニアのスキル、社会的評価、給与水準の底上げにもつながると考えていますし、それがやりやすい組織構造を常に模索していきたいと思っています。

エンジニアリングマネージャのグレード設定について

エンジニアリングマネージャにも評価グレードの基準が設定されていますが、こだわりポイントだけ抜粋しますと、以下の特徴があります。

・採用候補者の適切な給与提案ができる

・新規ビジネス等の際に送り出せるマネージャ、リード候補の育成ができる

・ 組織拡大、分割を前提としたマネージャの育成ができる

つまり、人を育てていき、新規事業や組織変更に伴って、一番できる部下を送り出すことを前提としたマネジメントをしてくださいということです。安定した自分の城を作るのではなく、常に不確実である前提で会社全体が成長するように採用とチームを作ることに専念してください。

マネージャは新たに人を採用し、成長をプロデュースして、新たに送り出すことでBASEというサービスのドメイン知識や哲学を兼ね備えた人材が、新規事業や新しい組織のマネージャとして新しい活躍をするというループを描いていきたいと思っています。特に新人マネージャは、既存メンバーのいい兄貴、チームリーダーとしては積み上げた経験が使えるのですが、採用となると経験のない新しい取り組みになるので、時間の使い方として主体的に動けるようになるには時間がかかります。採用に対して、自分事かつ主体的に動けるようになって初めてマネージャとして一人前とみなされます。それはまた全体視点で事業を捉えられるようになり、未来を見据えるようになったという意味でもあります。

そして、よく大企業の新規事業で言われることとして、エースは温存され、そうでない人材が新規事業にあてがわれるという話があります。これはこれで大企業において若手がチャンスを得るという構図になっていると思いますが、当社のように年功序列ではなく若手をガンガン重用していきたい組織においては、なんなら一番できる人が抜けてしまうことを前提としたマネジメントを求めています。

例えば子会社のBASE BANK社を支えるプロダクトマネージャとテックリードは、元々、BASEの決済チームのど真ん中を支えていた若手メンバーでした。新規事業に手を上げてくれて、彼らは今、BASE BANKチームでいきいきと仕事をしていますが、そこでのチャレンジをまたBASEのチームにフィードバックしてもらいたいと思っています。そういったことの再現を今後もやっていきたいと思っています。

現状のエンジニア組織の課題

現状、Web技術に関しては、CTOとプリンシパルテックリードの2トップがサービスの最先端の進化をリードしています。しかし、増えゆくGMVを支えながら、機能性向上、プロダクト品質の向上等を行っていくにはとてもとても手が足りません。

こちらの記事にある通り、来年以降、CakePHP2.xをなくしていくことをサービスを維持、成長させながら行うという難しいプロジェクトにも挑みたいです。おそらくDDD等のノウハウを活用して再設計をすることになると思いますが、それらを支えていく各分野のエキスパートであるテックリード候補やハイスキルエンジニア層、組織の作り手であるエンジニアリングマネージャ候補を募集していくことになります。

上のグレード表現で言うと、エンジニア組織をリードできるEx2以上の人たちを増やしながら、若手の有望株であるEx1候補を採用して、組織としてスケールさせていきたいです。そのためにもありとあらゆる方策を取って、社内のエンジニアのスキル向上はもちろんのこと、採用を推進していきたいと考えています。

もし、BASEの未来を作ることに興味を持っていただける方がいらっしゃったら是非お話しましょう。エンジニアとしての成長をチャレンジできる環境を用意したいと思っていますし、人材投資をできる環境は整っていますので、一緒に仕事をしましょう!

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