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Google Cloud Next '25 Developers Keynote 速報まとめ

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はじめに

現在ラスベガスで開催されている Google Cloud の旗艦イベント「Google Cloud NEXT'25(以下、Next'25)」に現地参加中の赤髪\textcolor{red}{赤髪}の Shanks / kazz / 小堀内 / 岸本 です。

Google Cloud NEXT'25 で発表された 最新情報 を現地からお届けしています。

Next'25 の Developers Keynote では、開発者の生産性を飛躍的に向上させ、新しいアプリケーション開発の可能性を広げるための AI 技術、特に Gemini モデルAI Agent のエコシステムに焦点が当てられました。
Google AI Studio での迅速なプロトタイピングから、複雑なマルチエージェントシステムの構築・運用、さらにはデータ分析やソフトウェア開発プロセス自体を支援する次世代エージェントまで、開発ワークフローのあらゆる側面を AI がどのように変革していくかが示されました。
本記事では、この Developers Keynote で発表された主要なアップデートとデモンストレーションを、日本のエンジニア向けに速報としてまとめます。

主要ポイント

  • Gemini と AI Studio による開発の加速: Gemini の長いコンテキストウィンドウやマルチモーダル機能(画像生成・編集、動画分析)、Google AI Studio を活用した迅速なプロトタイピングにより、アイデアを素早く形にすることが可能になりました。
    Google 検索連携によるグラウンディングも実用性を高めます。
  • AI Agent 開発・運用エコシステムの整備: オープンソースの Agent Development Kit (ADK)、フルマネージドな実行環境 Vertex AI Agent Engine、エージェント共有ハブ Agent Space により、単一およびマルチエージェントシステムの構築からデプロイ、共有までがシームレスに行えます。
  • 開発者の選択肢の尊重: Vertex AI Model Garden を通じて Gemini 以外のモデル(Llama 3, Claude 3 など)も容易に利用でき、各種 IDE (VS Code, IntelliJ, Cursor, Windsurf など) との連携により、開発者は使い慣れた環境で Gemini のパワーを活用できます。
  • 次世代の開発支援 Agent: コーディング、レビュー、バグ修正などを支援するソフトウェアエンジニアリングエージェント (Gemini Code Assist) の登場により、開発プロセス全体の効率化と高度化が期待されます。
  • AI 活用の新たな応用: 動画分析 (MLB ハッカソン事例) など、従来は困難だったタスクへの AI 応用デモが示され、AI の適用範囲の広がりが示唆されました。

Keynote 詳細

Gemini と AI Studio: アイデアからプロトタイプへ

studio

Google Deepmind の Paige Bailey 氏と Logan Kilpatrick 氏が AI Studio を使い、キッチンリノベーションという身近なテーマで、以下の機能を紹介しました。

  • マルチモーダル入力と推論: テキストだけでなく、キッチンの写真や間取り図を入力とし、Gemini がリノベーション計画を立案。単に応答するだけでなく、地域の規制やコスト、素材のメリット・デメリットを考慮する思考プロセス (Thinking Box) を経て詳細な提案を行います。
  • グラウンディング: Google 検索連携により、最新の材料費や地域の条例などのリアルタイム情報を参照し、提案内容の現実性と信頼性を高めます。
  • 画像生成・編集: Gemini 2.0 Flash を使い、既存のキッチンの写真をもとにリノベーション後のイメージ画像を生成。さらに「グローブライトを 2 つ追加して」といった自然言語の指示で、生成画像をインタラクティブに編集する能力も示されました。
  • 迅速なプロトタイピング: Google AI Studio を使うことで、「このアイデアは AI で実現可能か?」という問いに素早く答えを見つけ、本格的な開発に進む前に検証できます。

Google AI Studio で検証したアイデアは、API キーを取得し、Vertex AI を使ってスケーラブルなアプリケーションとして構築できます。

Agent Development Kit (ADK): オープンソースで Agent を構築

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Dr. Fran Hinkelmann 氏が、新しく公開されたオープンソースの Agent Development Kit (ADK) を紹介しました。
ADK は、開発者が AI Agent を容易に構築するためのフレームワークです。

  • 3 つの構成要素:
    1. Instruction (指示): Agent の目標や振る舞いを自然言語で定義。
    2. Tools (ツール): 外部 API 呼び出しやデータベース検索などの機能を Python 関数として定義。
      docstring に機能を自然言語で記述することが、LLM がツールを理解する上で重要です。
    3. Model (モデル): 指示とツールを実行する LLM 。ADK はモデル非依存 (Model Agnostic) です。
  • RAG と MCP: デモでは、地域の建築基準法を検索するツールが RAG (Retrieval Augmented Generation) を使用していました。この際、Model Context Protocol (MCP) を活用して外部データソース (データベース) と連携していました。
  • 開発フロー:
    1. 環境設定 (.env ファイル)。
    2. Python SDK で Agent、Tool、Model を定義。
    3. adk run コマンドでローカル開発用 UI (Dev UI) を起動し、テスト実行。この UI はマルチモーダル入力もサポートします。

マルチエージェントシステムとデバッグ

multi-agent

Dr. Abirami Sukumaran 氏が、ADK を使って複数の専門 Agent を連携させるマルチエージェントシステムを構築・運用する方法をデモンストレーションしました。

  • 構築: 提案書作成、許可・コンプライアンス、資材発注の 3 つのサブエージェントを定義し、それらを統括するルートエージェントを構築。ルートエージェントの指示 (instruction) に、リクエスト内容に応じたサブエージェントへのルーティングロジックを自然言語で記述します。
  • デプロイ: ADK から直接 Vertex AI Agent Engine (フルマネージドな実行環境) にデプロイ。
  • 実行・共有: Agent Space (組織内の Agent ハブ) からデプロイしたマルチエージェントを呼び出してテスト。
  • デバッグ: デモ中に発生したバグ (DB カラム名の間違い) を、Cloud LoggingCloud Investigations を使って解決する流れが示されました。
    1. Cloud Logging でエラーを特定。
    2. Gemini によるコード修正案が提示され、ワンクリックで適用・再デプロイ。
  • 相互運用性: 異なるフレームワークやベンダーの Agent を連携させるためのオープン標準 A-to-A (Agent-to-Agent) プロトコルにも言及がありました。

開発者の選択肢: IDE & Model Garden

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Debi Cabrera 氏が、開発者が好みのツールやモデルを選べる Google Cloud のオープンな姿勢を強調しました。

  • IDE 連携:
    • Windsurf, Cursor, IntelliJ など、様々な IDE で Gemini を利用可能
    • コード生成、リファクタリング、テストコード作成などをデモンストレーション。
    • VS Code, Databricks など、他のツールへの対応も進んでいます。
  • Vertex AI Model Garden:
    • Gemini 以外にも、Llama 3, Claude 3, Mistral など 200 以上のモデルが利用可能。
    • UI から簡単にモデルをテストでき、インフラ管理は不要。
    • 必要に応じて Vertex AI エンドポイントにデプロイ可能。
    • デモでは、外部 API で Claude を使っていたコードを、わずかな変更で Model Garden 経由の Claude 3.7 を使うように移行。
      これにより、レイテンシ削減やセキュリティ向上に繋がります。

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開発者は、慣れ親しんだ環境や、プロジェクトの要件に最適なモデルを柔軟に選択できます。

その他新機能

Android Studio

Android Studio にも Gemini Code Assist がサポートされるようになりました。

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Firebase Studio

ブラウザから、フルスタックの AI 搭載アプリを迅速かつ効率的にプロトタイプ化することができるプロダクトが登場しました。

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まとめ

Developers Keynote では、Gemini と AI Agent が開発者の生産性を向上させ、ソフトウェア開発のあり方そのものを変革していく具体的なツール、フレームワーク、そして未来像が示されました。

AI Studio での迅速なプロトタイピング、ADK による柔軟な Agent 構築、Model Garden と IDE 連携による選択の自由、そして Cloud Investigations のような運用支援ツールは、日本のエンジニアが日々の開発で直面する課題を解決し、新しいアイデアを実現するための強力なサポートとなるでしょう。

特に、オープンソースの ADK や A-to-A プロトコルは、コミュニティ主導での Agent エコシステムの発展を促し、多様な Agent が連携する未来を加速させることが期待されます。データサイエンスやソフトウェアエンジニアリングのプロセス自体を支援する Agent の登場は、開発者がより本質的な問題解決に集中できる環境をもたらします。

これらの新しい技術をキャッチアップし、まずは AI Studio や ADK を試してみることから、AI を活用した次世代の開発スタイルへの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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