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Next'25 速報 - ルノーが実現した開発革命:Cloud Workstations と Gemini が拓く未来

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はじめに

現在ラスベガスで開催されている Google Cloud の旗艦イベント「Google Cloud NEXT'25(以下、Next'25)」に現地参加中の Shanks / kazz / 小堀内 / 岸本 です。
Next'25 で発表された 最新情報 を現地からお届けしています!

本記事では、ルノーグループが Google Cloud を活用してソフトウェア定義型車両(SDV: Software-Defined Vehicle)の開発プロセスを事例についての紹介です。
SDV

自動車業界では、ソフトウェアによって継続的に機能が更新され、パーソナライズされた体験を提供する SDV が主流になりつつあり、その開発効率化は競争力の源泉となっています。

本記事では、ルノーが直面した課題と、それを Google Cloud の技術、特に Cloud Workstations、Gemini Code Assistを活用してどのように克服したのかを紹介します。

TL;DR

  • 開発環境の劇的な改善: Cloud Workstations の導入により、開発者のオンボーディング時間を 2〜6日から 15分 へ、コード同期と初期ビルド時間を 3時間半から 3分 へと、驚異的に短縮しました。
  • AI による開発者支援: Gemini Code Assist を開発環境に統合し、コード生成やテストケース生成を支援することで、開発者の生産性を大幅に向上させました。
  • セキュリティとグローバル開発: Cloud Workstations のセキュリティ機能により、重要な IP (知的財産) を保護しつつ、世界中に分散した開発チームが安全かつ効率的に協業できる環境を実現しました。

1. Cloud Workstations: セキュアで高速な開発環境の実現

ルノーが SDV 開発で直面した主要な課題の一つは、開発環境の準備と管理の複雑さでした。
従来のローカル環境では、セットアップに時間がかかり、環境の一貫性を保つのが難しく、さらにソースコードという重要な IP のセキュリティリスクも懸念されていました。
challenges

直面した課題

  • 開発者のオンボーディングに 2〜6日 を要する
  • ローカルマシンへのコード同期による IP 漏洩リスク
  • 開発環境の不整合によるビルドエラーや手戻り
  • 物理的な開発マシンの管理・維持コスト

Cloud Workstations による解決

Cloud Workstations
これらの課題を解決するために Cloud Workstations を導入しました。
Cloud Workstations は、Google Cloud 上で実行されるマネージドな開発環境です。

  1. VPC 内での実行: WorkstationsはルノーのVirtual Private Cloud(VPC、Google Cloud上のプライベートネットワーク空間)内で実行されるため、ネットワーク隔離およびセキュリティ強化の実現
  2. カスタマイズ可能な構成: 事前に定義されたコンテナイメージの活用による、ツールチェーン・依存関係が統一された開発環境の迅速なプロビジョニングの実現
  3. スナップショットからの高速起動: ビルド済みスナップショットからワークステーションを起動する機能を開発。これにより、コード同期と初期ビルドにかかる時間が 3時間半からわずか 3分 に短縮
  4. セキュリティ強化:
    • ローカルマシンへのコードダウンロード/アップロードを禁止
    • 外部ネットワークアクセスを制限し、許可されたリポジトリ (GitLab, Artifact Registry など) やツール (Jira など) のみに接続を許可
    • sudo アクセスを削除し、開発環境外への権限昇格を防止

導入効果

  • オンボーディング時間はセルフサービスで 15分 に短縮 (99%以上の削減)
  • 開発環境の一貫性が保たれ、ビルド成功率が向上
  • IP がクラウド上で保護され、セキュリティが向上
  • 世界中の開発者が場所を選ばずに、同じ環境で安全に開発可能に

2. Gemini Code Assist: AI が開発者の生産性を加速

開発環境の効率化に加え、ルノーは開発者自身のコーディング作業の生産性向上も目指しました。
ここで活用されたのが Gemini Code Assist です。

開発における課題

  • 複雑なコードベースの理解と実装にかかる時間
  • 定型的なコードやテストコードの作成にかかる手間
  • 開発中のコンテキストスイッチによる集中力の低下

Gemini Code Assist による解決

Gemini Code Assist
Gemini Code Assist は、Cloud Workstations 上の IDE (例: VS Code) に統合され、開発者のコーディングをリアルタイムで支援します。

  1. コード補完・生成: 文脈に応じたコードスニペットを提案・生成し、コーディング速度の向上
  2. テストケース生成・検証支援: 単体テストや統合テストのコード生成を支援し、テスト作成の負担軽減
  3. RAG による最適化: Gemini は、RAG(Retrieval-Augmented Generation)により、単なる一般的な提案ではなく、プロジェクトに最適化されたコードや説明を生成
  4. IDE 内での完結: 開発者は IDE から離れることなく、必要な情報を得たり、コード生成の支援を受けたりできるため、最小限のコンテキストスイッチ

導入効果

  • コーディング時間の短縮と開発者体験の向上
  • コード品質の向上とバグの早期発見
  • テストカバレッジの向上とテスト工数の削減

appendix

【Google Cloud で実現したオンボーディングの結果】
sumup

【構成図(基本版)】

architecture1

【構成図(改善版)】
architecture2

まとめ

このセッションでは、ルノーが Google Cloud を戦略的に活用し、SDV 開発における生産性、効率性、セキュリティを向上させた事例が紹介されました。

  • Cloud Workstations は、開発環境のセットアップと管理の課題を解決し、オンボーディングとビルド時間を 99% 以上削減しました。
  • Gemini Code Assist は、AI の力で開発者のコーディングとテスト作業を支援し、生産性を飛躍的に高めました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考リンク

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