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東杜シーテック 株式会社 /
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「魚の雌雄判別装置」開発で、

震災後の水産業の人材不足を解決する

仙台市に本社を置くシステム開発会社「東杜シーテック」は東日本大震災後、魚の雌雄を超音波エコー画像で判別する装置「Smart Echo(スマートエコー)」を開発した。ユニークな製品が開発されるに至った背景には、地域の研究機関と連携した高い研究・開発力と、震災で大きな被害を受けた水産業の復興をめざす、地域企業としての熱い思いがあった。

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リーマンショックから身につけた、
地域の課題を解決する開発力

仙台市内3カ所に拠点を構える東杜シーテック。2002年の創業以来、ソフトウェアなどの受託開発に取り組むシステム開発会社として着実に存在感を増してきたが、2008年のリーマンショックで大きな影響を受け「仕事が大幅に減った」と、代表取締役の本田光正は明かす。

危機的状況の中、本田は受託開発中心のビジネスモデルから、自社サービスの開発へ注力するようになる。そこで会社では多いときには5、6人の社員が東北大学の研究室へ先端技術を学びに行く、留学のような取り組みがスタートした。「新しいことを始めるには、まず学びが最優先。会社の利益を元に、積極的にトライしてきた。」

2011年には東日本大震災が発生し、宮城県の経済は大打撃を受けた。だが自立した事業展開を目指し、開発力を身につけていた東杜シーテックは「復興の役に立ちたい」という思いから、地域の課題解決につながるサービス開発に乗り出す。東北大学の産学官連携研究開発拠点「情報知能システム(IIS)研究センター」と三陸沿岸部で水産業の課題を調査したところ、現場では人材不足で「タラの雌雄を見分けられる人が減っている」という課題があることがわかってきた。

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水揚げされたタラは白子の有無で商品価値が5倍以上変わるといい、最近では正月に白子のあるタラの需要が高まる傾向もある。雌雄がわからない状態での仕入れは、売る側買う側双方にとって大きな損失が発生する恐れがある。これまで熟練のプロが目で判断していた雌雄判別を「機械化」することで、現場の課題を解決できないか。そんな思いから、同社はプロダクト開発に乗り出した。

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5年の歳月をかけ、
全国の漁港を飛び回って開発した
Smart Echo

2008年に入社したSEの村山結美は、入社1年目から東北大学大学院情報科学研究科の青木孝文教授の研究室で高度画像処理を学んだ。その経験を評価され、タラの雌雄判別装置「Smart Echo(スマートエコー)」の根幹の仕組みの開発に携わった。タラのお腹の中を見るには安全面から超音波が有力で、人間の目ではわからない違いを判別するにはAIを組み合わせるのが効果的ではないかと踏んだ。

「合わなかった手法もあり、当初の精度は全然だめでした。そこからいくつもの組み合わせを試し、手法を絞り込んで、最終的に98%の精度で判別できるようになりました」

精度が安定するまで5年。全国の漁港を飛び回り、ときには会社でタラを購入して確認のために判別後にさばき、地道に数万匹を調査した。タラが白子・魚卵を抱える時期は年に2~3カ月と限られており、チャンスを逃すと次の調査は翌年に持ち越しだ。漁獲の地域や水揚げの時間帯によっても微妙に個体差や鮮度の違いがあり、たくさんの種類のデータ取得に力を注ぐ日々だった。

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現在は気仙沼市の漁港での活用や、北海道、青森でのトライアルで感触をつかんでいる。エンジニアリングマネージャーとして開発の中心にいた横山桂一郎は、漁港での調査を通じて震災直後の「回復」を中心とした取り組みから、漁港機能の修復にとどまらない「付加価値」にも関心が広まっていることを感じていると手応えを語る。

ニーズに応える以上の、うれしい波及効果もあった。雌雄判別の目利きができる人材が自分しかおらず、後継者もいないため漁をやめようとしていた漁師がいた。雌雄の仕分けができない状態では、本来の値がつかず二束三文になってしまうためだ。そこでスマートエコーを導入したところ、漁師は水揚げしたタラの仕分けを他の人に頼むことが可能に。装置の存在が、「やっぱり漁業を続けよう」との決意の後押しになった。

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東北の課題を解決するサービスが、
世界につながる

宮城、仙台で事業に取り組む以上、地域の役に立つものをつくりたい。本田は「東北は他の地域より早く人口が減る。つまり東北で起きることはこれから日本全国や世界で起きることであり、東北で生まれたものが世界に広まる可能性を秘めています」と、地域の課題解決のために開発したサービスが、全国、世界の課題をも解決すると語る

大都市に勝るとも劣らない研究力や技術力がある仙台。プロダクトマネージャーの藤田知之は、ハードウェアの組み立てまで含めた自社開発を行っている気風に魅力を感じていると話す。「仙台だとソフトからハードまで自社で開発している企業はあまりなく、開発に携われるのは技術者としてモチベーションになります」

社内外の人をつなぐ新連携担当の佐藤恵理は震災後に東杜シーテックに中途入社したが、新入社員が開発の中心になったり、皆でああでもないこうでもないと工夫をこらす姿に感銘を受けた。50人程度から100人規模になった現在も変わらず「社員で協力しながら楽しく仕事をしている、と感じています」と、その風土はしっかりと受け継がれている。

同社ではスマートエコーの他にも、東日本大震災時に用いられた歯の治療痕から身元確認ができるシステム「Dental Finder」や、スマホの写真撮影でゴルフの「芝目を読む」ことができる「GREEiN」などさまざまなツールを開発している。なぜユニークな発想が生まれ、形にできるのかという問いに、村山は「日々、これができたら面白いね、ということをストックしているんです」と明かす。

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高度な技術を、開発者、営業担当などの垣根なく追求している東杜シーテック。本田は会社が目指す未来をこう語る。「私たちは新しいことをやりたいし、今まで誰もやっていないことに挑戦している。考えたものがそのままリアルに世界を変えていく。新しい常識をつくる者として、自信をもって事業に臨みたいですね」

まあ、あとは自分が歳をとったときに助けになるソフトをつくることかな、と笑って付け加えた言葉に、社員が和気あいあいと反応した。気軽に笑い合える信頼関係と、地域に根づきながら常にアップデートし続ける企業の、芯の強さを感じた。

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東杜シーテック株式会社

2002年設立。カーナビや製品組み込みソフトウェアなどの開発を経て、画像解析やAIの技術を活用した幅広いツールを開発、研究。光学式検知装置など特許取得も多数。魚の雌雄判別を行う「Smart Echo」シリーズはみやぎ認定IT商品に認定された。