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流行を生み出すためのブレストAI。 生成AIエージェント『“3%だけ”進化させる新商品アイデア』を解説 2025.7.12 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 当社Laboro.AIでは、去る2025年6月18日、自社初となる生成AIエージェントをベースにした対話型プロダクト『 未来リサーチ 』(商標・特許出願中)を発表しました。このコラムでは、そのアプリケーションの一つであり、「次なる流行は、今の商品に3%だけ違いを出すことで生まれる」という流行神話に基づいて新商品アイデアをブレスト創出する『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』を取り上げ、その概要や実際の出力、活用メリットなど紹介していきます。 目 次 ・ 流行発生のメカニズムと神話 ・ 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは ・ 流行を生み出すためのブレストAI『“3%だけ”進化させる新商品アイデア』とは  ・ ① ヒアリング  ・ ② レポート作成 & ブレスト  ・ ③ 企画書の作成 ・ AIの想像力からアイデアを拡張する ・ 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について 流行発生のメカニズムと神話 「流行を生み出す法則を解明したい」――。マーケターなら誰しも夢描くであろう流行メカニズムの解明。ですが、曖昧で気まぐれな心理を持つ消費者、そして極めて複雑な外部環境や情報が絡み合う現代社会において、流行を確実に引き起こす一定の法則などは、存在し得ないのかもしれません。 その一方で、社会学の流行論という分野においては、今から200年以上も前から流行メカニズムの解明を志した議論が活発に交わされてきました。著名なところでは、社会はマネ(模倣)によって生み出されたさまざまな類似点を提示し合っている人々の集合だと考え『 模倣の法則 』を記したジャン・ガブリエル・タルド、上流階級の見せびらかし消費(顕示的消費)が下流階級に伝播していくメカニズムを『 有閑階級の理論 』で克明に明かしたソースティン・ヴェブレン、“模倣”と“差異”という対立する概念の共存が流行発生の根本にあると決定付けたゲオルグ・ジンメルなどです。 とくにジンメルの説は非常に興味深いものです。ジンメルによれば、対立の一方にある“模倣”、つまり無意識のうちに他者と同様のものを所有するなどによって、社会やグループへの所属・依存の欲求を満足させる、あるいは社会からの逸脱を免れようとする価値観に加えて、もう一方にある“差異”、つまり自身と他者を区別したいという欲求が働くことで、次なる“もっといいもの”に向かおうとする価値観が共存し、この不均衡な状態が、流行を生み出す原動力だと考えられています。 簡単に言れば、他の人と同じでありたいという「同調心理」と、他の人と違っていたいという「差異心理」、両極端な心理からなる行動が繰り返され、増幅されることによって流行という社会的な大きな動きを生み出していくということで、この考えから生まれた「トリクルダウン(滴下理論)」というセオリーは、現代マーケティングでもよく知られています。 さらにマーケティングや商品企画の観点でシンプル化してみれば、いま流行っているものから逸脱しない範囲内で個性につながる違いを創出する、”同じようでちょっと違う”商品・サービスを企画することが、流行発生のための一つの法則だと考えられるのです。 そして、こうした歴史深い議論も踏まえて、現代になって神話のように生まれてきたが「流行の3%ルール」というものです。これはあるラグジュアリーブランドのデザイナーが語ったとされる言説で、例えば、商品の色、形、大きさ、重さ、ターゲット、ポジショニングなど、さまざまな商品の仕様・機能・コンセプトなどを3%だけ変えれば流行のループを生み出すことができるという、文字通りの神話です。当然ながらこの“3%”は厳密に計測したものではなく、あくまで“ちょっと違う”を比喩的に表したものであって、経験に基づく感覚論の域を出るものではありません。 ただ、もし、今販売され流行している商品に3%だけ違いを出すような施しをしてみたら、どのような新商品・サービスが生まれてくるのかを考えるという試みは、次なる商品企画に斬新なアイデアを与えてくれる可能性は、大いにあるように思うのです。 出典: 坂井素思(1999)「贅沢消費論 : ジンメルとヴェブレン消費理論の趣味論的解釈」放送大学研究年報, 16, pp.71-92. 大塚雄太(2022)「流行論の知られざる名著 ―クリスティアン・ガルヴェ『流行について』 ― 」 愛知学院大学 経済研究所所法, 第2号, pp.98-116. 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは 今般当社が開発を発表した『未来リサーチ』は、社会学などの学術理論のほか、様々なマーケティングの調査手法から得た発想をもとに、各種企画業務におけるアイデア創出や仮説検証を支援することを目指した、生成AIエージェントベースのプロダクトです。 未来リサーチには、例えば、コンサルタント、消費者、リサーチャー、プランナー等の機能を持たせたAIエージェントが仕込まれており、各々のエージェントがユーザーへの課題のヒアリングと深掘り、仮想的なリサーチの実施、調査レポートの作成、調査結果を踏まえた企画書の作成までを、その場で実行することを基本機能としています。各エージェントが自律的に役割を実行するので、ユーザーは、基本的にAIコンサルタントから投げ掛けられる質問に答えるだけでレポートや企画書の作成までを完結することができます。 そして、未来リサーチの何よりの特徴は、「 リサーチ発想のアイデア拡張コレクション 」というコンセプトにあります。従来の市場調査を代替することではなく、それらをヒントにした斬新なアプローチのタスクをエージェントに実施させることを通して、新商品・サービス企画、新規事業企画、広告宣伝、プロモーション、販売促進などのマーケティングの各種企画業務に従事する方々がお持ちのアイデアを、さらに拡張することをコンセプトにしています。 それを具現化するのが未来リサーチを構成する各アプリで、例えば、 ・未来時間の消費者へのインタビュー調査をする『 未来グループインタビュー 』 ・未来の市場でフィールド調査をする『 未来エスノグラフィ 』 ・本来は見ることができない消費者の脳内を覗いて意思決定プロセスを抽出する『 買い物脳スコープ 』 ・大量サンプルに対するWebアンケートを仮想実施する『 仮想Webアンケート 』 ・斬新な切り口で企画ブレインストーミングを実施する『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』 など、それぞれのテーマをもったアプリをラインナップしています。(段階的にさらに追加していく予定です。) そして今回は、このうちの一つ、『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』を実際のデモ画面と共にご紹介したいと思います。 流行を生み出すためのブレストAI『“3%だけ”進化させる新商品アイデア』とは 『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』は、生成AI・LLM(大規模言語モデル)の優れた言語能力、もっと言えば大胆な想像力を用いて、“ちょっと違う新商品”のアイデアに関するブレストを行った上で、マーケティング企画書の作成までを、その場で実施するアプリです。 どのような商品・サービスをテーマにするのか、どのような方向で改善したいのか、どのような消費者を対象としたいのかなど、AIコンサルタントからのヒアリングに回答すれば、AIがアイデアを次々と提示してくれます。 商品サービスの改善や新商品アイデアの創出などに最適なアプリで、商品企画、新規事業企画はもちろん、広告宣伝やプロモーション戦略の立案など、マーケティングの幅広い企画業務でご活用いただけるものです。 では、デモ画面と共にその実際のやりとりを見ていきましょう。なお、登場するデモ画面は執筆時点のもので、今後の開発状況に応じて仕様等が変更になる場合がございますことを予めご了承ください。 ① ヒアリング 基本的な入力画面はChatGPTなどの対話型AIと同様で、初回の入力はユーザー側から行います。今回は、皮革製品をメインとした服飾雑貨メーカーの商品企画担当という想定で、以下の悩み相談をしてみました。 私は皮革製品を製造する服飾雑貨メーカーの商品企画の責任者です。 伝統を守りつつ、時代の変化に対応した新商品を実現したいと思っています。 いま若い女性の間で流行しているミニバッグをベースにした商品企画を行いたいです。 すると、さっそくAIコンサルタントから新商品の使用シーンに関する質問を受けました。今回は、デイリーユースを想定した商品として回答したいと思います。 次に、サイズ感や内装・外装、機能、想定される携帯アイテム、価格帯など、次々とヒアリングが展開。初期の企画段階という想定をおきつつ、未検討の部分はそのように伝え、順次回答していきます。 ② レポート作成 & ブレスト 一通りのヒアリングが完了すると、いよいよ3%ルールに基づいた『 3%改善・改良レポート 』が作成されます。さっそく、以下のような内容で作成してくれました。 < 3%改善・改良レポート > 本レポートでは、若い女性向けの「かなり小ぶりでファッション性重視」のデイリーユースミニバッグをベースに、当社が得意とする革製品の良さを生かしながら、各要素に約3%の微細な変化を加えたときの具体像を描き出します。企画の骨格は、想定ユーザーが日常的に携行する必需品──スマートフォン、キー、リップスティックを想定し、2~3万円の中価格帯で実現可能な現実性を重視しました。 1. 形状・サイズの調整 ベースとなる標準的ミニバッグの外形を、縦10cm×横14cm×マチ5cmと仮定した場合、3%の縮小で縦9.7cm×横13.6cm×マチ4.85cmとなり、抱えやすい極小フォルムを実現します。こうしたわずかなコンパクト化により、スタイリング時の「抜け感」が強調される一方、必要最小限の収納性は維持されます。エッジ部分の曲線も同じく3%だけシャープさを増し、全体フォルムにモダンな切れ味を加えます。 2. 重量・素材の最適化 通常200g前後のレザー素材をベースとする場合、3%の軽量化(約194g)を実現するために、裏地や芯材の選定を見直し、薄手ながら強度を保つナッパレザーを採用します。革の厚みは標準1.2mmから1.16mmへ微調整し、手にしたときのしなやかさと高級感を両立。金具は真鍮製の薄型リングにすることで、重量を総合的に3%低減し、長時間の装着でも疲れにくくなります。 3. 色彩・仕上げの深化 当社の定番カラーであるキャメルブラウンに対し、3%だけ彩度を落として深みを増すことで、肌なじみがよく、季節やコーディネートを問わないユーティリティカラーへと進化させます。仕上げはマットと微光沢の中間のシープスキン巻き染め加工を採用し、手触りと視覚的なニュアンスにわずかな“こなれ感”を加えることで、流行感と伝統的な質感が共存します。 4. 機能性のチューニング 内部ポケットは、スマホポケットの口幅を3%だけ広げ(例:幅8cm→8.24cm)、幅広のリップスティックホルダーを設けることで取り出し動作をスムーズにします。キーリングは標準的なコイルリングから、径を3%縮小したリング型金具に変更。ストラップは取り外し可能な細幅ショルダーストラップ(幅2cm→1.94cm)を採用し、シルエットの軽快さを保ちながら、肩へのフィット感を損なわない設計としました。 5. デザインディテールの深化 縫製のステッチ間隔を従来の8mmから7.8mmへ3%だけ細かくし、緻密な印象に仕上げています。フラップエッジのカットラインにも同率の微細な丸みを付与し、全体として“研ぎ澄まされた中に柔らかさを感じる”バランスを追求。ハンドル取り付け部は一段低く見えるように3%だけ内側に寄せ、バッグの上部ラインに視覚的な統一感を持たせました。承知しました。それでは「装飾」と「機能性」について、3%ルールに沿った微細な改善・改良をレポートに追加いたします。 6. 装飾の深化 バッグ全体の装飾パーツには真鍮の無垢メタルスタッズを採用し、従来品の径4mmから3.88mmへわずか3%だけ小型化することで、主張しすぎない繊細なアクセントを生み出します。さらに、フラップ中央部に施す型押しロゴは高さ1.5mmから1.46mmへ3%浅くし、視認性を保ちつつ表面の凹凸感を抑えることで、光の当たり具合でほんのり浮かび上がる上品な仕上がりを実現します。バッグチャームとして付属するタッセルは、長さ15cmから14.55cmへ3%カットし、揺れ動く際の動きに軽やかさを与える一方、全体のシルエットを邪魔しないサイズ感を保っています。 7. 追加機能性の最適化 ① 撥水ライニング 裏地に使用するマイクロファイバー生地の撥水性能を、はじき率90%から92.7%へ3%向上させ、バッグ内部への水滴浸入をより確実に防ぎます。これにより急な雨天時にも大事なスマホやリップを安心して収納可能です。 ② 着脱式ミラー&コンパクトポーチ 従来の内ポケットに収納されていたミニミラーを、バッグ底部ポーチ外周に設ける形で着脱式にアップデート(厚み5mm → 4.85mm)し、必要なときだけサッと取り出せる機能性を追加。ポーチ本体も縦7cm×横5cmから縦6.79cm×横4.85cmへ3%縮小することで、内部スペースを圧迫せず携帯性を維持します。 ③ スマートタグホルダー キーリングホルダーとは別に、ICカード等を収納できる薄型スリーブを追加。厚み1.2mmから1.16mmへの3%薄型化により、バッグ内のカードポケットに素早く差し込め、改札や自動ドアの利用ストレスを低減します。 ④ 快適ショルダーパッド 肩への当たりを和らげるため、ストラップに同素材の小型パッド(長さ10cm→9.7cm、厚み3mm→2.91mm)を付与。幅狭のまま荷重を分散し、身体へのフィット感を3%向上させることで、長時間の使用でも肩こりを軽減します。 内装・外装のサイズ感の調整をはじめ、なぜそうするのかの理由も含めてアイデアを提示してくれているのが嬉しいところです。ただ、これらはあくまで定量的な進化に留まっています。そこで、あえてコンセプトやテーマなど、定性的な部分の進化アイデアのブレストを投げかけてみたいと思います。そうして出てきたのが、続く以下のような内容です。 8. コンセプト/テーマの3%深化 ① ストーリーテリングの微調整 ・現行の「手軽に持てるラグジュアリー」を、わずかにフォーカスを変え「さりげなく映えるラグジュアリー」へ。ユーザーが日常のワンシーンでふと目を奪われる、控えめながらも確かな存在感を演出します。 ・キャッチコピーも「Carry Less, Shine More」から「Carry Less, Glow Subtly」へと変更し、主張よりもほのかな“きらめき”を表現。 ② 色と感情の連動性 ・テーマカラーを「キャメルブラウン」から「ウォームアーストーン」へとシフト。3%だけ大地のニュアンスを強めることで、安心感とコーディネートの幅を広げ、日常の心地よさを視覚的に訴求します。 ・プロモーションビジュアルでは、やわらかな朝光や夕暮れの光を取り入れ、「ほの暗い中でほんのり光る皮革の質感」をキービジュアルに。 ③ ターゲットペルソナの深化 ・若い働く女性像を「自分らしさを大切にするクリエイター」へと約3%だけアップデート。単なる“トレンド追随”ではなく、自分のスタイルを持ちつつ必要最小限を選択する「エディター的感性」を持つ層にフォーカスします。 ・SNS投稿時のハッシュタグも #MiniBagDaily から #MiniEdit を併用し、洗練された編集感を演出。 ④ ブランド体験要素の追加 ・購入後の体験として、3%だけパーソナライズ要素を強化。バッグに添付するブランドカードに、ユーザー名のイニシャルを型押しで3%だけ控えめに刻印するサービスをオプションに。 ・開封時のパッケージに、通常のリーフレットに加えて「コーディネート提案ミニブック」を同梱し、使用シーンのイメージを具体的にサポート。 ⑤ サステナビリティ・メッセージ ・素材調達や製造過程での環境配慮を、「エコレザー使用」から「エシカル・エイジングレザー」へ3%だけ位置づけを深め、長く使い込むことで味が増す革というストーリーを強調。 ・公式サイトのブランドページに、革の経年変化を追う短い動画コンテンツを3%増量して展開し、ユーザーとの共感を醸成。 これらの微細なコンセプト進化により、製品自体のクオリティアップだけでなく、ブランドとしてのメッセージ性や体験価値がより深まり、ユーザーの心に長く留まる“さりげないけれど確かな魅力”を訴求できます。 定性的な側面は、何をもって3%というのかがもちろん難しいところですが、その厳密さの是非以上に、こうした叩き台となるアイデアを言語化してくれるところが価値あるポイントではないでしょうか。この案をベースにしてさらに深掘りたい部分のブレストを発展させていくことが重要になりますが、今回はこのまま企画書の作成に移っていきたいと思います。 ③ 企画書の作成 「企画書の作成をお願いします」の簡単な指示のみで作成してくれたのが、以下の企画書です。 ミニバッグ3%進化プロジェクト 〜Carry Less, Glow Subtly〜 1. 背景 若年女性を中心に、必要最小限の持ち物でファッション性を楽しむ「ミニバッグ」トレンドが顕著化しています。SNS上では#MiniBagDailyや#MiniEditのタグで多くの投稿が見られ、軽快なルックスとエフォートレスなスタイリングが支持されています。 一方、従来の当社製品はクラシカルな重厚感を重視し、近年のミニマルシフトへの対応が遅れていました。伝統技術と最新トレンドを融合し、2〜3万円帯の中価格レンジで魅力的な製品を提供する必要があります。 2. 課題 ・ トレンド適合 :いま若年女性に支持される小ぶり・ファッション性重視のサイズ感とヌケ感を醸成できるデザイン不足 ・ 使い勝手との両立 :極小フォルムながら日常携行の必需品(スマホ、キー、リップ)が収まる実用性確保 ・ ブランド価値維持 :3%ルールに基づく微細改善で伝統的高級感を損なわずに進化させる設計力 ・ 差別化ポイント :サステナブル素材/パーソナライズ体験など、競合他社との差別化要素不足 3. 目的 ・ 若年女性の心をつかみ、SNSバイラルを促進するミニバッグを開発 ・ 2〜3万円帯の中価格ながら高付加価値を感じさせ、利益率向上を達成 ・ 当社の革製品技術とブランドストーリーを、3%ルールによる微細な進化で強化・訴 4. STP戦略 Segmentation(市場細分化)  ・ ライフスタイル軸 :   ・ 日常カジュアル&ワークシーンユーザー   ・ SNS発信・ファッション感度高いユーザー  ・ 価値志向軸 :   ・ エフォートレスなラグジュアリー志向   ・ サステナビリティ/エシカル消費志向 Targeting(ターゲット選定)  ・ 年齢:20〜30代前半の働く女性  ・ 属性:自分らしいスタイルを持ち、ミニマルな美学を志向するクリエイター志向層  ・ 購入動機:SNS映えするデザインと、日常使いに安心できる革質・機能を両立したバッグを求める Positioning(ポジショニング)  ・ “さりげないきらめき”をまとえるエフォートレスラグジュアリー  ・ キャッチコピー:「Carry Less, Glow Subtly」  ・ 競合比較:     ポジション軸   価格帯     デザイン特徴      差別化ポイント    ブランドA    約1.5万円   カラフル/遊び心    機能寄り(多ポケット)    ブランドB    約3.5万円   シンプル/上質     プレミアムレザー    当社ミニバッグ  2〜3万円帯   微光沢マット&深み色  3%ルールによる微細進化+エシカルレザー 5. 4P戦略 Product(製品戦略)  ・ 極小フォルム(9.7×13.6×4.85cm)の革新デザイン  ・ 3%改善レポートで提案した機能性&装飾(撥水ライニング、ミラー、スマートタグ、スタッズ)  ・ オプション:イニシャル刻印、コーデ提案ミニブック Price(価格戦略)  ・ 推奨小売価格:¥25,000(税込)  ・ 店頭・ECで同価格設定し、バンドル割引(イニシャル刻印セット割)を展開 Place(流通戦略)  ・ 直営店および主要セレクトショップ(都市部4店舗)、公式ECサイト  ・ SNS連動キャンペーン:プロモコード入力で送料無料 Promotion(プロモーション戦略)  ・ SNSインフルエンサー起用(#MiniEditキャンペーン)  ・ 発売前ティザー広告:Instagramストーリーズでカウントダウン  ・ ブランドサイトに革の経年変化動画コンテンツを3%増量掲載  ・ ポップアップイベント:購入者にミニコーデブック配布 7. KPI/評価指標  ・ 初月販売数:1,000個  ・ SNS投稿数:#MiniEdit で1,500件以上  ・ 平均客単価:¥26,000以上  ・ リピート購入率:10%以上(半年以内) 8. 付録:3%改善レポート要約  ・ 形状・サイズ:10cm→9.7cm(3%縮小)、フォルムのモダン化  ・ 重量・素材:200g→194g(3%軽量)、薄手高強度ナッパレザー  ・ 色彩:彩度3%減の深みカラー、マット×微光沢加工  ・ 機能性:スマホポケット+3%、撥水ライニング+3%、ミラー・タグホルダー  ・ 装飾:スタッズ径3%小型化、ロゴ型押し+3%浅型化  ・ コンセプト:”Carry Less, Glow Subtly”に刷新 企画にあたっての前提条件を細かく指定したわけではないので、まだまだ概要にとどまっていますし、一部創作が入っていることなどはLLMの特性上どうしても否めませんが、叩き台として必要なフレームは示してくれている印象ではないでしょうか。これを元にどの方向に絞って企画を詰めていくのか、加味すべき前提条件はなにかなどの情報を与えながら、企画書としてのクオリティを高めていくのが人とAIの協働による次へのステップです。 そして今回は、企画書をもとにした新商品のビジュアル案も作成してもらいました。画像生成AIの技術の高まりによって、こうした参考イメージが忠実に生成できるようになってきたことは、企画担当者のアイデア拡張をさらに後押しする可能性を感じさせられます。 AIの想像力からアイデアを拡張する いかがでしたでしょうか。出力された企画が本当に成功するのか、流行が本当に発生するのか、こればかりはマーケティングあるいは消費者という不確実性の高い分野では、どうしてもわからないところがあるのは事実です。 ですが、仮想的に言語化された情報をヒントに、あなたの頭の中でモヤモヤとしている部分を刺激させる、あなた自身に秘めたインサイトを拾い出す、あなたがお持ちのアイデアを拡張することには大いに役立つのではないかと考えています。未来リサーチが「 リサーチ発想のアイデア拡張コレクション 」をコンセプトにしているのは、まさにこうした点にあります。 とくに今回紹介した仮想WEBアンケートは、次のような方にオススメです。 ・ 既存商品の良さを活かしつつ、新たな魅力を加えた新商品アイデアを生み出したい方 ・ 限られたリソースで、最大限の効果を生み出す商品開発戦略を策定したい方 また、その利用メリットは、 ・ 潜在ニーズの探索 顧客の視点に立ち、「3%の変化」によってどのようなベネフィットを提供できるかを考えることで、潜在的なニーズを探索 ・ 伝統と革新の融合 伝統を守りながら、時代の変化に対応した新たなアイデアの発掘 などが挙げられます。 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について 未来リサーチは、2025年秋頃のサービス提供を目指して開発を進めており、執筆時現在、事前登録の申込みを受け付けています。優先的な利用案内や先行体験に関する特典もご案内予定ですので、興味を持っていただけた方は、ぜひご登録をいただけますと幸いです。 未来リサーチ TM  事前登録フォーム その他のアプリ解説記事 以下のアプリ解説記事を公開中です。ぜひ、あわせてご覧ください。 ・ 未来の消費者にインタビュー。AIエージェント『未来グループインタビュー』を解説 ・ 未来の消費者行動を“のぞき見”。生成AIエージェント『未来エスノグラフィ』を解説 ・ 消費者の脳内にトリップ。生成AIエージェント『買い物脳スコープ』を解説 ・ 大規模アンケートをその場で仮想実施。生成AIエージェント『仮想WEBアンケート』を解説 ・ 流行を生み出すためのブレストAI。生成AIエージェント『“3%だけ”進化させる新商品アイデア』を解説 ご留意事項 ※ 生成AI・LLMを用いている未来リサーチの回答は、必ずしも正しいとは限りません。重要な情報はお客様ご自身にて十分にご確認ください。 ※ 出力や精度に都度バラツキが生じるため、同様の結果が再現できることを保証するものではありません。 ※ デモ中に出力された人名・企業名・商品等は、特定の個人・団体・製品等を指定・意図するものではございません。 ※ 提供時期や特典等は、予告なく変更になる場合がございます。 参考 プレスリリース: 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ(TM)』の開発、および事前登録開始のお知らせ 執筆者 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 流行を生み出すためのブレストAI。生成AIエージェント『“3%だけ”進化させる新商品アイデア』を解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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AIエージェントはなぜ今注目されているのか。発展の背景と基礎を詳しく解説 2025.7.10 株式会社Laboro.AI リード機械学習エンジニア 川崎奏宜 概 要 前回の記事( AIエージェントの定義。2025年の最重要AI用語の概念を整理 )では、LLMの登場からAIエージェント(ユーザーから与えられた指示に対し、自律的に問題解決やタスク実行を行うシステム)までの技術進歩やAIエージェントの定義について掘り下げました。今回はその続編として、AIエージェントの「基礎」に焦点を定め、AIエージェントが今これほどまでに注目を集めている理由と、その背景にある技術的進化や内部構造について解説します。AIエージェントの基本的な仕組みや今後の可能性について体系的に理解を深める一助となれば幸いです。 目 次 ・ なぜ今AIエージェントが注目されているのか  ・ LLMの推論能力の向上  ・ マルチモーダル化  ・ ツール利用の高度化 ・ AIエージェントを構成する四つの要素  ・ Profile(個性)  ・ Memory(記憶)  ・ Planning(計画)  ・ Action(行動)  ・ これら4要素の連携 ・ AIエージェント開発の進化:MCP(Model Context Protocol)の登場  ・ MCPの概要  ・ 従来手法との比較と開発への影響  ・ MCPの活用例 ・ AIエージェントの現在地と今後の展望  ・ 現在のAIエージェントの限界や課題  ・ 課題解決の方向性としてのマルチエージェント構成 ・ まとめ なぜ今AIエージェントが注目されているのか AIエージェントが現在注目を集めている背景には、LLMの推論能力向上、マルチモーダル化、ツール利用の高度化という三つの技術的要因が挙げられます。 LLMの推論能力の向上 AIエージェントの頭脳に当たるのが、LLM(Large Language Model、大規模言語モデル)です。近年のLLMの推論能力や指示追従能力は年々向上しています。与えられた情報から論理的に物事を考え、結論を導き出す能力が格段に進化しています。こうした能力向上の背景には、以下の技術的進歩が背景にあります。   Chain-of-Thought (思考の連鎖)技術の発展 :LLMが思考過程を明示的に示しながら回答を導き出す技術です。従来はプロンプトで対応していましたが、現在ではモデルの学習プロセスに組み込み済みです。 Instruction Tuning の導入 :指示プロンプトとそれに対応するアウトプットのラベル付データセットでLLMをファインチューニングする手法で、モデルが指示追従能力を獲得します。GPT-4で採用され、その後多くのモデルに広まりました。 強化学習手法の高度化 :RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback、人間のフィードバックを活用した強化学習)により、人間の好みに沿った応答を生成できるように最適化されています。最近では、効率的な学習手法としてDPO(Direct Preference Optimization)が広く使われています。 LLMの推論力がどれほど進化したかを客観的に測る指標として、MMLU-Pro(Massive Multitask Language Understanding Professional)というベンチマークが用いられています。MMLU-Proは、数学、歴史、科学などの多様なタスクに対するモデルの推論能力を評価するもので、GPT-4-Turboでは64%、GPT-4oでは78%、GPT-o1では89%と、年々大きく向上しています。 このようにLLMの能力が飛躍したことで、ユーザーの意図をより深く理解し、タスクを適切に細分化して実行したり、状況に応じ最適なツールを選択したりできるようになりました。つまり、AIエージェントとして必要な基盤が着実に整ってきたのです。 マルチモーダル化 LLMの登場当初はテキスト入力に対しテキスト出力するだけの「ユニモーダル」モデルでした。 別の言い方をすれば、一種類のモダリティ(テキスト情報)のみを扱っていたのです。しかし近年では、テキストに加えて画像や音声など複数のモダリティを統合的に処理できる「マルチモーダル」なLLMが登場し、AI活用の幅は飛躍的に広がりました。この進化によって、LLMは以下のような新たな能力を獲得しています。 画像理解と解析 :グラフの読み取り、文書や表の内容解釈、製品の外観検査など、視覚情報をもとに判断が必要な場面でもLLMを活用できるようになりました。 音声理解とコミュニケーション :従来は、音声を扱う場合は音声認識技術を用いてテキストに変換し、その後LLMで処理するという2段階のプロセスが必要でした。しかし、最近のLLMは音声データを直接扱い、音声入力をそのまま理解し、言葉のニュアンスやトーンを踏まえた対応が可能になりました。これにより、LLMはユーザーとの自然な会話を実現できるようになりました。 クロスモーダル処理 :マルチモーダルモデルは、テキスト・音声・画像といった異なるモダリティ間での情報変換や生成がシームレスに行えるようになりました。例えば、画像を見て音声で説明する、音声指示に基づいて画像を生成するといった、モダリティをまたぐ複合タスクも実現しています。 ユニモーダルとマルチモーダルの違い ツール利用の高度化 AIエージェントがテキスト生成の枠を超えて実際のタスクをこなすには、LLMという頭脳だけでなく、その手足となるツールが不可欠です。最近のLLMには、外部ツールと連携するための機能(FunctionCalling / ToolUse)が搭載されており、外部のAPIやデータベースなどと連携できるようになっています。 ツール利用によって、AIエージェントは以下の能力を獲得します。 外部データの取得 :外部のAPIを利用して、リアルタイムの情報を取得したり、特定のデータベースの情報を参照したりすることができます。これにより、LLMが学習済みの知識だけではなく、外部データを活用した応答が可能になります。例えば、天気予報や株価情報などのリアルタイムな情報を取得したり、企業内のデータベースから特定の情報を取得して、その内容を踏まえた応答したりすることができます。 外部ツールの実行 :LLMは、テキストを介して外部ツールを実行することができ、単なるテキスト応答にとどまらず、実際のアクションを起こすことができます。例えば、メールの送信、コード実行、APIを介したWebサービスの操作などの動作を行うことが可能です。 こうしたツール連携が発展する中で、Anthropic社はMCP(Model Context Protocol)というツール呼び出しの共通規格を2024年に提唱しました。MCPはツール呼び出し方法を標準化し、異なるモデルやツール間の依存関係をなくして互換性を高めることを目的としています。詳しくは後で改めて解説します。 AIエージェントを構成する四つの要素とは AIエージェントが自律的にタスクを遂行するためには、人間がタスクに取り組む場合と同様に、いくつかの基本的な機能要素が必要です。AIエージェントに関するサーベイ論文 “ A Survey on Large Language Model based Autonomous Agents ” では、AIエージェントには四つの構成要素があるとされています。以下では、同論文で定義されている四つのフレームワークを基に、それぞれの構成要素については、最新の技術動向を踏まえた個人の見解を交えながら解説します。 Profile(個性) Profile(個性)は、AIエージェントのキャラクターや振る舞いを定義する要素で、LLMのシステムプロンプトにより設定されます。論文では、Profileの生成方法に焦点が定められていますが、以下ではシステムプロンプトで何を定義すべきなのかについて説明します。例えば、以下のような振る舞いを設定します。 目的と役割 :AIエージェントがどのような問題を解決し、どんな価値提供をするのかを定義します。 専門知識や能力 :AIエージェントが得意とする分野や保有する知識、実行できるタスクの範囲を定義します。 制約 :AIエージェントができないことや回答を控えるべきこと、その他、考慮すべき事項などを定義します。 コミュニケーションスタイル :AIエージェントの話し方や応答の長さ、使用言語、口調などを定義します。 Memory(記憶) Memory(記憶)は、AIエージェントが過去の対話や行動履歴を蓄積し、現在の意思決定や行動に役立てるための要素です。人間が経験を記憶して次の行動に生かすように、AIエージェントも記憶によって文脈を理解し、より一貫性のある行動を取ることができます。またMemoryは、その保持期間や性質によって、短期記憶と長期記憶に大別されます。 短期記憶(Short-term Memory ) :現在の対話やタスク実行中の文脈情報を保持します。主にLLMのコンテキストウィンドウ内で管理され、タスク終了後に消去される一時的な記憶です。 長期記憶(Long-term Memory ) :過去の対話内容、タスク実行結果、ユーザーの好みなどを永続的に保持し、必要に応じて呼び出して活用します。実装方法はさまざまで、対話の要約から重要情報を抽出する方法や、外部データベースに保存・参照する方法などが取られます。 Planning(計画) Planning(計画)は、与えられたタスクを遂行するために必要なステップを構想し、具体的な行動計画を立てる要素です。人間が複雑なタスクをこなす際、まず全体の流れを整理し次に具体的アクションを決めるように、AIエージェントも事前に計画を立てることでタスクを効率良く遂行できます。 また、計画の進め方において、タスク実行後にフィードバックを受け取るかどうかで「フィードバックなし」と「フィードバックあり」の2種類に分類されます。 フィードバックなしの計画 :AIエージェントは事前に立てた計画に従ってタスクを実行します。タスク終了後にいかなるフィードバックも受け取らない方式です。単一のフローでタスクを実行する方法や、並列なフローでタスクを実行する方法など、さまざまな手法が提案されています。 フィードバックありの計画 :事前に立てた計画に沿ってタスクを実行し、タスク完了後にフィードバックを受け取って次に生かす方式です。フィードバックの受け取り方にはいくつかあり、論文では以下の3種類が挙げられています。 ・ 環境によるフィードバック タスクを実行する環境から得られるフィードバックです。例えばタスクが成功したかどうか、プログラムの実行結果やエラーメッセージなど、システム側から提供される情報が該当します。 ・人間によるフィードバック ユーザーや評価者など人間から直接提供されるフィードバックです。人間の価値観や好みに合わせるのに役立ちますが、実行コストが高くなる可能性があります。 ・モデルによるフィードバック 別のLLMからのフィードバックを受け取る方法です。現在、最も一般的に用いられている手法です。 近年では、フィードバックのプロセス自体をPlanningから切り離し、 「Reflection(振り返り)」 という独立要素として捉える傾向が強まっています。 Action(行動) Action(行動)は、AIエージェントが計画に従ってタスクを実行する要素です。人間がタスクを行うとき「何のために行動し(目的)、どう実行し(方法)、結果としてどうだったか」を考えるように、AIエージェントの行動も以下の四つの観点から捉えることができます。 目標(Action Goal ): 「何を達成したいか」というAIエージェントの目標です。 生成(Action Production ) :「アクションをどのように生み出すか」という行動生成の過程を指します。ユーザーが事前に定義した行動や、会話の文脈から動的に生成される行動など、さまざまな形態があります。 行動空間(Action Space ) :「利用可能な能力・ツールは何か」という、AIエージェントが使える手段やツールの範囲を指します。 影響(Action Impact ) :「アクションの結果がどのように影響するか」という、AIエージェントの行動がもたらす結果・影響範囲を指します。 ちなみに、この論文発表当初はAction要素の実行手段は主にLLMの入出力に限られていました。 しかし近年、MCP(Model Context Protocol)の登場によるツール連携の発展に伴い、「Action(行動)=ツールの利用」という捉え方が一般的になっています。 この論文が発表された当初、Action(行動)要素は主にLLMの入出力を通じて実行されるものでした。しかし近年、MCP(Model Context Protocol)の出現によりツール利用の高度化が進み、「Action(行動)=ツール利用」という考え方が一般的になってきています。 これら4要素の連携 AIエージェントは、Profile(個性)、Memory(記憶)、Planning(計画)、Action(行動)の4要素が相互に連携して機能します。各要素が相互作用することで、AIエージェント全体の能力が向上するのです。 例として、AIエージェントが「特定の情報を調査してレポートを作成する」というタスクを遂行させる場合を考えてみましょう。 1. Profile :そのタスク(調査・レポート作成)に特化した専門知識や、レポートの形式・スタイルを設定します。 2. Memory :調査結果やレポート作成の履歴を記録し、次回以降の同種タスクで再利用できるように保持します。 3. Planning :調査・レポート作成の進め方を計画します。どの情報源からデータを収集し、どの順序・手順で調査を進めるかを決定します。 4. Action :立てた計画に沿って調査を実行し、必要な情報を集め、調査結果をもとにレポートを作成します。必要に応じて外部ツールも活用し、情報収集や分析を自動化します。 調査・レポート作成を例にしたAIエージェントの構成要素 AIエージェント開発の進化:MCP(Model Context Protocol)の登場 AIエージェントが能力を最大限に発揮するためには、LLMの推論能力だけではなく、LLMが持たない知識を補完したり、外部のツールを実行してLLMの推論能力を拡張したりすることが不可欠です。実際、RAG(Retrieval-Augmented Generation、検索に基づく回答生成)を筆頭として、LLMの推論能力を拡張するさまざまな手法が提案されてきました。しかし、それらの手法は、LLMと外部知識・外部ツールとの連携が複雑になりやすく、開発のボトルネックとなるケースも少なくありませんでした。そこで、これらの課題を解決してAIエージェント開発の標準化・効率化を図るアプローチとして登場したのが MCP(Model Context Protocol) です。 MCPの概要 MCPは、Anthropicが2024年11月に発表したツール呼び出しの標準化を定義したオープンなプロトコル(規約)です。異なるモデルや異なるツール間の依存関係を取り除き、AIエージェントを外部ツールにシームレスに接続することができるようになります。MCPは、以下の三つの要素で構成されています。 MCP ホスト :ユーザーが直接操作するアプリケーション(Claude DesktopやVSCodeなど)です。 MCP クライアント :MCPホスト内で動作し、指定されたMCPサーバーと通信するコンポーネントです。 MCP サーバー :標準化されたプロトコル(Model Context Protocol)を介して入力を受け取り、内部で所定のデータソースを参照したり外部ツールを実行したりするサーバーです。 MCPの概要 MCPはよく「USB-C」に例えられます。 USB-Cがデバイスの種類を問わず同じコネクタで接続できるように、MCPもモデルやツールの違いを意識せずに接続できる共通プロトコルを提供します。 MCPは当初、Anthropicが発表したものでしたが、その汎用性の高さから、現在ではOpenAIやMicrosoftといった主要企業のAIエージェントフレームワークにも統合されていて、業界のデファクトスタンダードになりつつあります。 従来手法との比較と開発への影響 従来のAIエージェント開発では、LLMと外部ツールの連携をツールごとに個別実装する必要がありました。ツールごとにインターフェースやデータ形式が異なるため、開発者は各ツールに合わせた実装を行わなければならなかったのです。この課題は「M×N問題」と呼ばれ、モデルがM種類、ツールがN種類あるとM×N通りの組み合わせを考慮して開発する必要がある、という意味です。 一方、MCPは共通プロトコルを提供することで、モデル間・ツール間の依存を取り除きました。開発者はMCPに準拠したインターフェースを一度実装するだけで、さまざまなツールとのシームレスな連携を実現できるのです。つまり、モデルM種類とツールN種類の場合でも、考慮すべき組み合わせは M+N通りで済むようになります。この結果、開発者は特定ツールに依存しない汎用的なコードを書けるようになり、開発効率が大幅に向上しました。 MCPによる開発の効率化 MCPの活用例 MCPを介することで、AIエージェントは多種多様な外部ツールと連携できます。以下にMCP活用の具体例を挙げます。 外部データの取得: ウェブ検索やファイル/データベース参照など、インターネットやストレージから必要な情報を取得するツールです。 ・ウェブ検索 検索エンジンを利用して最新の情報を取得します。人間がウェブ検索で情報収集するのと同様に、AIエージェントも検索結果から知識を得て応答に活用できます。 ・ローカルファイルの参照 自分のPC内のファイルを読み込み、その内容を分析したり必要な情報を抽出したりします。 ・データベースの参照 外部データベースに接続し、SQLクエリやベクトル検索によって該当データを取得します。類似情報の検索にも利用できます。 外部ツールの実行 :プログラム実行やSaaSアプリ操作など、AIエージェントが外部のソフトウェアやサービスを直接操作するツールです。 ・プログラムの実行 AIエージェント自身がPythonやJavaScriptなどのコードを実行します。その結果をもとに応答を生成したり、データ処理を行ったりできます。 ・データベースの操作 AIエージェントがデータベースに対して、データの追加・更新・削除といった操作を行います(※データ参照は前述)。 ・SaaSアプリケーションの操作 API経由でGoogleカレンダーやSlackなど各種SaaS(クラウドサービス)の機能を操作します。例えばカレンダー予定の自動調整や、チャットツールへのメッセージ送信などが可能です。 なお、以上で紹介したものはMCP対応ツールの一例に過ぎません。 その他にも多数のツールが公式の MCPの公式GitHubリポジトリ で公開されていますので、興味のある方は参照してみてください。 AIエージェントの現在地と今後の展望 2024年以降、AIエージェントは急速に進化し、多様な分野で活用されるようになりました。 しかし同時に、より複雑な問題に対処する際の技術的限界も見え始めています。そこで、現在のAIエージェントが直面する主な課題を整理し、それを克服するアプローチとして注目される「マルチエージェントシステム」を解説します。 現在のAIエージェントの限界や課題 単一のAIエージェント(シングルエージェント)は、特定のタスクでは高い能力を示すものの、複雑な現実世界の問題には限界があります。代表的な課題として次の点が挙げられます。 コンテキストウィンドウの制約 :LLMが処理できるトークン数(文脈の長さ)には上限があるため、長い対話履歴の保持や大規模文書の分析、複数情報源を統合した回答生成など現実のビジネスシーンで求められる処理において、この制約がボトルネックになる場合があります。 役割の複雑化による性能低下 :単一のAIエージェントに多種多様な役割を担わせると、各タスクに対する専門性が薄まり全体的なパフォーマンスが低下しがちです。情報収集・データ分析・レポート生成といった異なる種類のタスクを1体のエージェントで処理すると、どのタスクにも中途半端な対応しかできず質が下がるリスクがあります。 ツール増加による利用判断精度の低下 :利用可能なツールやAPIが増えるほど、適切なツール選択や出力結果の解釈といったプロセスが複雑化します。その結果、必要な場面でツールを使わない・不要な場面で誤ってツールを使ってしまうなど、エージェントの判断ミスが起こりやすくなります。 課題解決の方向性としてのマルチエージェントシステム こうした単一エージェントの限界を克服する方法として、複数の専門AIエージェントが協調してタスクを遂行する「マルチエージェントシステム」に注目が集まっています。各エージェントが特定の役割に特化することで、システム全体として高い専門性と柔軟性を両立させることが可能になります。 マルチエージェントシステムには、単一エージェントでは実現が難しい多くの利点があります。 例えば、各エージェントが専任の役割を持つことで役割の一貫性が維持され、システム全体の拡張性が高くなり、複数エージェントを並列動作させることで効率化も図れます。 なお、マルチエージェントシステムの詳細な仕組みや実装手法、具体的な活用事例については、次回のコラムで詳しく解説する予定です。 まとめ 本コラムでは、AIエージェントが注目を集める背景とその基礎的な仕組みを解説してきました。 LLMの進化、マルチモーダル対応、ツール活用の高度化といった技術的進歩により、AIエージェントは人間の指示なしにタスクを遂行できる自律性を獲得しています。さらにMCP(Model Context Protocol)の登場により、ツール開発の効率化と外部サービス連携も加速度的に進んでいます。 今後、AIエージェントの開発は一層進み、さまざまな企業での活用が一段と進むことが期待されます。本コラムが、皆様のAIエージェント理解の一助となれば幸いです。 執筆者プロフィール リード機械学習エンジニア 川崎奏宜 九州工業大学情報工学部電気電子情報工学科卒業。卒業後、SIer企業にて、画像認識技術を活用した施工現場の効率化や、自然言語処理技術を用いた人材マッチング案件に従事。2022年に株式会社Laboro.AIに参画し、自然言語処理を活用したビジネス探索やセンサデータを使った検査プロセスの自動化など、多岐にわたるプロジェクトを担当。共著に『今日から使えるファインチューニングレシピ: AI・機械学習の技術と実用をつなぐ基本テクニック』(オーム社刊)。 The post AIエージェントはなぜ今注目されているのか。発展の背景と基礎を詳しく解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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大規模アンケートをその場で仮想実施。 生成AIエージェント『仮想WEBアンケート』を解説 2025.7.7 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 当社Laboro.AIでは、去る2025年6月18日、自社初となる生成AIエージェントをベースにした対話型プロダクト『 未来リサーチ 』(商標・特許出願中)を発表しました。このコラムでは、そのアプリケーションの一つであり、WEBアンケートの調査設計書の作成から、調査の実施、調査レポートの作成、マーケティング企画書の作成までをその場で実行することをテーマにした『 仮想WEBアンケート 』を取り上げ、その概要や実際の出力、活用メリットなど紹介していきます。 目 次 ・ マーケティング・リサーチの王道、WEBアンケートに迫る影 ・ 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは ・ 大規模アンケートをその場で実施する『仮想WEBアンケート』とは  ・ ① ヒアリング&調査設計書の作成  ・ ② WEBアンケートの実施&レポートの作成  ・ ③ 企画書の作成 ・ 『仮想WEBアンケート』の信頼性の検証 ・ 仮想的に収集した情報からアイデアを拡張する ・ 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について マーケティング・リサーチの王道、WEBアンケートに迫る影 食品、家電、ファッション、車などなど、あらゆる業界のマーケティングにおいて、WEBアンケートは最も気軽で、低コスト、スピーディな調査手法として、マーケティング・リサーチの王道になりつつあります。 その歴史は1990年代に遡ります。インターネットの普及に伴って提供が開始、ただ当時のインターネット利用者は1,000万人程度、デジタル・リテラシーの高いサンプル(回答者)に偏っているという批判もあり、特殊な調査手法という見られ方が主流でした。郵送調査や電話調査、訪問調査といった“アナログ”な調査手法が代表的だった当時からすれば、いつでもどこでも簡単に調査結果が得られることを謳ったWEBアンケートは、信頼性の観点からも疑いの目で見られていたのかもしれません。 そして2000年代以降、人口のほとんどがインターネットを利用するようになり、スマートフォンの普及率も高まるにつれ、WEBアンケート市場は急成長しました。最新の統計では、その市場規模は1,000億円近くにもなり、アドホックな定量調査の7割以上を占める中核手法としての地位を築くようになっているそうです。 ですが、たしかに従来手法と比べるとその簡易さに強みをもつWEBアンケートではあるものの、その調査設計や結果分析には、専門知識を持った上で一定の期間・コストがかかることが実際です。その一方でマーケティング・リサーチ企業の50%以上がこうした知見を持った中堅リサーチャーの不足を課題として挙げているといった報告もあり、人材不足を背景にした陰りが見え始めている状況でもあります。 また、調査主である企業側が効率を過度に重視した結果として、品質が疎かにされている側面も少なからずあるようです。回答者の80%以上が負担を感じるとする10分以上を必要とするアンケートが横行する状況を招いてもいて、ストレスフリーな状態での消費者の回答を本当に拾い出せているのか、懸念の声も挙げられています。 近年、生成AIやLLM(大規模言語モデル)、AIエージェントの革命的な登場により、従来のマーケティング・リサーチを代替することを目指したツールが多数登場しています。ですが、前述のような状況を踏まえると、恐らく効率化や人員代替を目的としたAIの使い方は本質的ではありません。 消費者に関する答えは、やはり生身の消費者の中に眠っています。「安い」「早い」「簡単」の三拍子が揃ったWEBアンケートを有効な調査手法として活用し続けていくことを前提に、不足が叫ばれる専門人材の設計・分析の負荷を下げ、回答者の負担を最低限に抑えることを目指して、疑似的な調査機会を創出していく。言ってみれば「本番前の予行演習」のために生成AIを使うことを通して、実査での質を向上させることが、マーケティング活動の高度化のためのAI活用の有効なアプローチなのではないかと思うのです。 出典: 一般社団法人 日本マーケティングリサーチ協会「経営業務実態調査」 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは 今般当社が開発を発表した『 未来リサーチ 』は、WEBアンケートを含む様々なマーケティングの調査手法から得た発想をもとに、各種企画業務におけるアイデア創出や仮説検証を支援することを目指した、生成AIエージェントベースのプロダクトです。 未来リサーチには、例えば、コンサルタント、消費者、リサーチャー、プランナー等の機能を持たせたAIエージェントが仕込まれており、各々のエージェントがユーザーへの課題のヒアリングと深掘り、仮想的なリサーチの実施、調査レポートの作成、調査結果を踏まえた企画書の作成までを、その場で実行することを基本機能としています。各エージェントが自律的に役割を実行するので、ユーザーは、基本的にAIコンサルタントから投げ掛けられる質問に答えるだけでレポートや企画書の作成までを完結することができます。 そして、未来リサーチの何よりの特徴は、「 リサーチ発想のアイデア拡張コレクション 」というコンセプトにあります。従来の市場調査を代替することではなく、それらをヒントにした斬新なアプローチのタスクをエージェントに実施させることを通して、新商品・サービス企画、新規事業企画、広告宣伝、プロモーション、販売促進などのマーケティングの各種企画業務に従事する方々がお持ちのアイデアを、さらに拡張することをコンセプトにしています。 それを具現化するのが未来リサーチを構成する各アプリで、例えば、 ・未来時間の消費者へのインタビュー調査をする『 未来グループインタビュー 』 ・未来の市場でフィールド調査をする『 未来エスノグラフィ 』 ・本来は見ることができない消費者の脳内を覗いて意思決定プロセスを抽出する『 買い物脳スコープ 』 ・大量サンプルに対するWebアンケートを仮想実施する『 仮想Webアンケート 』 ・斬新な切り口で企画ブレインストーミングを実施する『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』 など、それぞれのテーマをもったアプリをラインナップしています。(段階的にさらに追加していく予定です。) そして今回は、このうちの一つ、『 仮想WEBアンケート 』を実際のデモ画面と共にご紹介したいと思います。 大規模アンケートをその場で実施する『仮想WEBアンケート』とは 『 仮想WEBアンケート 』は、生成AI・LLMの優れた言語能力、もっと言えば大胆な想像力を用いて、調査設計書の作成から、WEBアンケートの実施、調査レポートの作成、マーケティング企画書の作成までを、その場で仮想実施するアプリです。 どのような消費者を対象としたいのか、アンケートのテーマや目的は何か、サンプル数はどれくらいかなど、AIコンサルタントからのヒアリングに回答すれば、その場で調査を実行し、数分の間に調査結果をレポートしてくれます。 デスクに座ったままでの企画検証や消費者ニーズ・市場動向の把握、実査に向けた調査設計の検証などに最適なアプリで、商品企画、新規事業企画、広告宣伝やプロモーション戦略の立案など、マーケティングの幅広い企画業務でご活用いただけるものです。 では、デモ画面と共にその実際のやりとりを見ていきましょう。なお、登場するデモ画面は執筆時点のもので、今後の開発状況に応じて仕様等が変更になる場合がございますことを予めご了承ください。 ① ヒアリング&調査設計書の作成 基本的な入力画面はChatGPTなどの対話型AIと同様で、初回の入力はユーザー側から行います。今回は、食品メーカーの新商品開発担当という想定で、以下の悩み相談をしてみました。 私は食品メーカーの新商品開発担当です。 次なる新商品として企画中の「オーガニック野菜チップス」について、ターゲット層や具体的なニーズを把握するための調査を実施したいです。 すると、さっそくAIコンサルタントから調査目的に関する質問を受けました。今回は、「購買意向、ニーズ、購入にあたっての心理的ハードルの把握」が調査の目的であるとして回答したいと思います。 次に、調査対象の属性についての質問があったので、「健康や美容への意識がとくに高く、出費にも余裕があると思われる20〜40代の女性」をメイン対象にしたい旨を伝えました。すると早速、以下のような調査設計書を作成してくれました。 調査概要 本調査は、健康・美容意識が高く、比較的支出に余裕のある20~40代女性を対象に、オーガニック野菜チップスの購買意向、購買時の訴求ポイントおよび購入に際する心理的ハードルを把握し、新商品開発およびコミュニケーション施策立案に活用することを目的とします。  • 調査手法:Webアンケート(インターネットリサーチパネル利用)  • 調査期間:2025年7月15日〜7月18日(予定)  • 回答所要時間:約5~7分  • インセンティブ:300ポイント相当(回答完了者全員) 調査対象者  • 性別:女性  • 年齢:20〜40歳  • 居住地域:全国  • 世帯年収:400万円以上  • その他:健康・美容への関心が高い自己申告者(スクリーニング設問にて抽出)  • 回収目標サンプル数:400サンプル 設問詳細  ※設問数:全15問(スクリーニング含む) 1. スクリーニング設問 1-1) あなたの性別を教えてください。  • 男性(調査対象外)  • 女性 1-2) あなたの年齢を教えてください。  • 20〜24歳  • 25〜29歳  • 30〜34歳  • 35〜40歳  • それ以外(調査対象外) 1-3) あなた自身の健康意識および美容意識について、以下のうち当てはまるものを選んでください。(※両方とも当てはまる場合は「両方当てはまる」を選択)  • 健康意識が高い  • 美容意識が高い  • 両方当てはまる  • どちらともいえない(調査対象外) 1-4) 過去6ヶ月間にスナック菓子(ポテトチップス・コーンスナック等)を購入したことがありますか?  • はい  • いいえ(調査対象外) 2. 購買意向に関する設問(4問) 2-1) オーガニック野菜チップスを市場で見かけた場合、どの程度購入したいと思いますか? (5段階評価:1=まったく購入したくない、5=ぜひ購入したい) 2-2) 購入検討時に重視するポイントをすべてお選びください。(複数選択可)  • 原材料がオーガニックであること  • 野菜本来の味わい  • 味のバリエーション(フレーバー)  • 価格  • ブランド・メーカー  • パッケージデザイン  • 添加物が無添加であること  • 賞味期限  • その他(自由記述) 2-3) 上記で選んだ中で、最も重要なポイントはどれですか?  • (2-2の選択肢と同じリストからシングル選択) 2-4) オーガニック野菜チップスの購入頻度として、どの程度が適切だと感じますか?  • 月に1回未満  • 月に1〜2回  • 週に1回程度  • 週に2〜3回  • 毎日食べたい 3. ニーズ把握設問(4問) 3-1) お好みの野菜フレーバー(複数選択可)  • ほうれん草  • 人参  • かぼちゃ  • トマト  • ビーツ  • その他(自由記述) 3-2) 一袋(標準量約30g)あたりの適正価格帯をお選びください。  • 100円未満  • 100〜200円  • 200〜300円  • 300円以上 3-3) パッケージのデザインイメージとして、もっとも好ましいものをお選びください。(3択でサンプル画像提示)  • A案(シンプル&ナチュラル)  • B案(カラフル&ポップ)  • C案(高級感&落ち着き) 3-4) どの購買チャネルで購入したいですか?(複数選択可)  • スーパー  • コンビニエンスストア  • オーガニックスーパー  • 通販(メーカー直販)  • 通販(ECモール)  • その他(自由記述) 4. 心理的ハードル設問(3問) 4-1) オーガニック野菜チップスの購入をためらう理由があればお選びください。(複数選択可)  • 価格が高い  • 味が想像できない  • 歯ごたえや食感が好みに合わないかも  • 賞味期限が短い  • オーガニック表示の信頼性が不明  • その他(自由記述) 4-2) 上記で選んだ中で、最も大きな懸念はどれですか?  • (4-1の選択肢と同じリストからシングル選択) 4-3) どの情報があれば不安が解消され、購入意欲が高まりますか?(複数選択可)  • 有機JASマークの表示  • 生産者情報の開示  • 製造工程の詳しい説明  • 第三者機関の品質認証  • レシピや食べ方提案の提供  • その他(自由記述) (以下、掲載幅の都合から省略いたします。) サンプル数は400と十分な数ですし、スクリーニングまで含めた詳細な設問も示してくれました。もちろんここで気になる部分があれば調整をコンサルタントに指示することも可能ですが、今回はこちらの設計で進めることします。 ② WEBアンケートの実施&レポートの作成 提案された調査設計書に「OK」の返事をすると、いよいよ実査が開始され、間髪入れずに以下のような調査レポートを作成してくれました。 レポートを踏まえると、新商品には比較的高い購入意向があることがわかり、原材料と味のバリエーションが訴求軸になることが示唆されました。具体的なニーズとしては、スタンダードなフレーバー、100-200円の低価格帯に対する需要が見えてきた一方、価格や味への不安が心理的ハードルになりやすいことも同時に把握できました。ここまでわずか数分、従来の調査ではあり得ないスピードで調査結果を把握することができました。 ただ、結果としては至極当然な内容に見えないこともなく、企画にいかせそうなポイントはそう多くはなさそうです。そこで、追加の質問として「新商品にあったら嬉しい機能や仕様、特徴」を自由回答で聞いてもらうことにします。 実際の調査であれば一発勝負、こうした追加質問・途中修正はもちろん不可能です。AIを用いた仮想的なリサーチだからこそできるこうした柔軟性が、後に行われるだろう実査の確実性を高めてくれるわけです。そして、その回答結果が以下のようにレポートされました。 調査レポート追記:新商品に望む機能・仕様・特徴(Q6) 設問6-1 オーガニック野菜チップスにあったら嬉しい機能、仕様、特徴やアイデア(自由記述) 集計結果サマリー(テーマ別) 1. 再封可能なチャック付きパッケージ :240件(60.0%)  ・”開封後も鮮度を保てるのは嬉しい”  ・”食べきれない時に便利” 2. 低塩/減塩オプション :200件(50.0%)  ・”塩分を控えたいので低塩が希望” 3. 個包装ミニパック :160件(40.0%)  ・”携帯しやすい小分けがあれば、職場や外出先で食べやすい” 4. 環境配慮型パッケージ(生分解性) :120件(30.0%)  ・”捨てるときの環境負荷が気になるので” 5. バラエティパック(複数フレーバー入り) :100件(25.0%)  ・”色々な味を試したいので、お試しセットがあると良い” 6. 栄養成分の強化(ビタミンC、鉄分など) :80件(20.0%)  ・”おやつで健康補助にもなると嬉しい” 7. レシピ・食べ方提案の同梱 :60件(15.0%)  ・”ディップやサラダトッピングとしての使い方が知りたい” 自由記述コメント(抜粋)  ・「チャック付きなら毎日少しずつ楽しめそう」  ・「お弁当の副菜として使える小袋があると助かる」  ・「オーガニックで栄養価も高い成分が入っていれば、罪悪感なく食べられる」  ・「包装がオシャレだとギフトにもできていい」 分析コメント 消費者は鮮度保持と手軽さ、健康訴求を重視しており、再封可能パッケージや低塩オプション、個包装といった機能的仕様のニーズが高いです。また、環境配慮やバラエティパックといったブランド訴求も効果的と考えられます。これらを組み合わせた新商品の仕様検討が推奨されます。 やはり自由記述コメントは非常に示唆に富んでいて、企画に活かせそうなアイデアが散見されます。もちろんここで、「全400サンプル分の回答を示して」と指示すればその出力は可能ですし、設問間のクロス集計なども実施してくれます。 ③ 企画書の作成 それでは、仕上げとしてこれまでのレポートを元にした企画書を作成してもらいましょう。今回は、自由回答で見られた「個包装ミニパック」にとくに着目した新商品企画を立ててもらうことにします。出力された企画書がこちらです。 新商品企画書:オーガニック野菜チップス ミニパックタイプ 1. 背景と課題 近年、健康志向・美容意識の高まりとともにスナック市場ではオーガニック商材の需要が増加しています。当社が実施したWebアンケート(20~40代女性 400名)では、個包装ミニパックのニーズが40.0%にのぼり、携帯性やシェア需要の高さが明らかとなりました(調査レポート Q6)。しかし、従来製品は30g一袋のみの大袋展開であり、外出先やオフィスでの手軽な消費に応える仕様が不足しています。 課題:既存の大袋タイプでは手軽さ・外出需要を取りこぼしている 2. 企画目的 ・個包装ミニパックの導入により、新たな購入シーン(オフィス・ジム・お弁当の副菜など)を創出 ・主ターゲット(20~40代女性)のライフスタイルにマッチした手軽・高機能スナックを提供し、市場シェアの拡大を図る ・ブランドの健康価値訴求を強化し、競合優位性を確立 3. 商品コンセプト “いつでもどこでも、ヘルシーに美味しく” 携帯できる個包装ミニパックで、外出先やオフィスでの間食シーンに最適化したオーガニック野菜チップス 4. 主な機能・仕様・特徴  1. ミニパック(15g×5袋)個包装   ・一回分の理想的スナック量(約15g)を個包装にし、計5パックを1箱に封入   ・携帯・シェア・ストックに最適  2. 再封可能ジップ付き外箱   ・ミニパック開封後も鮮度を保持  3. 低塩/減塩仕様   ・1袋あたり塩分0.5g以下を実現  4. バラエティパック   ・ほうれん草/人参/かぼちゃの3フレーバーを各2袋ずつ配置  5. エコパッケージ(生分解性フィルム使用)   ・環境配慮型素材でブランドのサステナビリティ訴求  6. 栄養機能強化   ・ビタミンC強化配合(1袋あたり推奨摂取量の10%) 5. パッケージデザインコンセプト ・ミニマル & ナチュラル:植物イラストとクラフト調紙素材でオーガニック感を強調 ・カラーバリエーション:各フレーバーをイメージしたペールトーンカラーで一目で識別可能 ・窓付き小窓:中身が見える小窓を設置し、素材への自信を演出 (以下、掲載幅の都合から省略いたします。) 企画にあたっての前提条件を細かく指定したわけではないので、まだまだ概要にとどまっていますし、数値部分に創作が入っていることなどは否めませんが、叩き台として必要なフレームは示してくれている印象ではないでしょうか。これを元にどの方向に絞って企画を詰めていくのか、加味すべき前提条件はなにかなどの情報を与えながら、企画書としてのクオリティを高めていくのが人とAIの協働による次へのステップです。 『仮想WEBアンケート』の信頼性の検証 大規模なWEBアンケートもその場で実施する『仮想WEBアンケート』ですが、たとえスピーディーに実行ができたとしても、その内容が現実と乖離したものであれば全く意味がありません。とくにLLM(大規模言語モデル)の特性として言われるハルシネーション(幻覚)によって、回答内容が創作される可能性は否定できず、その結果が実際の調査と比べてどの程度一致するのかの検証は欠かせません。 そこで、立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科 斎藤明 研究室の協力の下、実際に調査会社を用いて行われた実査の結果と、『仮想WEBアンケート』による調査結果の比較を通して、その信頼性の検証を行いました。 具体的には、「消費者における、バーチャル旅行に対するリアル旅行の価値の把握」を目的に実査された全11問の選択式WEBアンケートと全く同じ設問項目で『仮想WEBアンケート』でも調査を実施し、計5回の仮想調査の結果の合計値から、各設問に設けられた選択肢ごとの回答件数・構成比それぞれの誤差(RMSE:平均平方根誤差)を算出しました。 検証の結果、選択肢ごとの回答件数の比較では実査との誤差が大きいことがわかった一方、構成比の比較での誤差は小さく(RMSE 0.31%)、およそ70%程度の精度で結果傾向が一致していました。簡単に言い換えれば、「○名の人が選択肢Aを選んだ」という実数を予測するには限界があることがわかった反面、「最も多い回答は選択肢A、次に多いのは選択肢B」といった回答傾向を予測することには一定の有効性があることが確認できたということです。 ここから言えることは、この 仮想WEBアンケート に限った話ではなく、生成AIを用いたマーケティング・リサーチツール全般は、よほど正確なデータを学習させていない限り、実際の調査を代替できるものではなく、あくまで「企画・発想のための補助ツール」として用いることが理想的だということです。 真の消費者意見を収集できるのは、やはり従来からある実際の調査であり、AIリサーチは「本番のための予行演習」としてあるべきで、現段階のAIがそれを代替しようとすることは、実際の消費者意見を歪めてもしまうリスクを孕んでいます。 未来リサーチ のすべてのアプリケーションが、調査代替ではなく「 リサーチ発想のアイデア拡張コレクション 」とコンセプトを置いているのには、こうした現状の生成AI・LLMの限界と現実を踏まえていることが理由の一つになっています。 仮想的に収集した情報からアイデアを拡張する いかがでしたでしょうか。本当に消費者がこうした回答を行うのか、出力された企画が本当に成功するのか、こればかりはマーケティングあるいは消費者という不確実性の高い分野では、どうしてもわからないところがあるのは事実です。 ですが、仮想的に言語化された情報をヒントに、あなたの頭の中でモヤモヤとしている部分を刺激させる、あなた自身に秘めたインサイトを拾い出す、あなたがお持ちのアイデアを拡張することには大いに役立つのではないかと考えています。 未来リサーチ が「 リサーチ発想のアイデア拡張コレクション 」をコンセプトにしているのは、まさにこうした点にあります。 とくに今回紹介した仮想WEBアンケートは、次のような方にオススメです。 • アンケート調査を実施したいが、費用や手間がかかるため、なかなか踏み切れない • 新商品の開発にあたり、顧客ニーズを手軽に把握したい また、その利用メリットは、 • 調査レポート作成まで数分で実行 手軽にアンケート調査を設計、実行できることから、調査レポートの作成まで数分で実行が可能 • 調査設計から、企画書作成まで コンサルタントのヒアリングに基づいて回答するだけで調査設計し、必要な打ち手のための企画書作成もサポート などが挙げられます。 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について 未来リサーチは、2025年秋頃のサービス提供を目指して開発を進めており、執筆時現在、事前登録の申込みを受け付けています。優先的な利用案内や先行体験に関する特典もご案内予定ですので、興味を持っていただけた方は、ぜひご登録をいただけますと幸いです。 未来リサーチ TM  事前登録フォーム その他のアプリ解説記事 以下のアプリ解説記事を公開中です。ぜひ、あわせてご覧ください。 ・ 未来の消費者にインタビュー。AIエージェント『未来グループインタビュー』を解説 ・ 未来の消費者行動を“のぞき見”。生成AIエージェント『未来エスノグラフィ』を解説 ・ 消費者の脳内にトリップ。生成AIエージェント『買い物脳スコープ』を解説 ・ 大規模アンケートをその場で仮想実施。生成AIエージェント『仮想WEBアンケート』を解説 ご留意事項 ※ 生成AI・LLMを用いている未来リサーチの回答は、必ずしも正しいとは限りません。重要な情報はお客様ご自身にて十分にご確認ください。 ※ 出力や精度に都度バラツキが生じるため、同様の結果が再現できることを保証するものではありません。 ※ デモ中に出力された人名・企業名・商品等は、特定の個人・団体・製品等を指定・意図するものではございません。 ※ 提供時期や特典等は、予告なく変更になる場合がございます。 参考 プレスリリース: 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ(TM)』の開発、および事前登録開始のお知らせ 執筆者 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 大規模アンケートをその場で仮想実施。生成AIエージェント『仮想WEBアンケート』を解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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消費者の脳内にトリップ。生成AIエージェント『買い物脳スコープ』を解説 2025.7.5 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 当社Laboro.AIでは、去る2025年6月18日、自社初となる生成AIエージェントをベースにした対話型プロダクト『 未来リサーチ 』(商標・特許出願中)を発表しました。このコラムでは、そのアプリケーションの一つであり、消費者が購買に至るまでに脳内で行った意思決定プロセスを可視化・言語化することを通して、様々なマーケティング・アイデアを獲得することをテーマにした『 買い物脳スコープ 』を取り上げ、その概要や実際の出力、活用メリットなど紹介していきます。 目 次 ・ 消費者の脳内では、いったい何が行われているのか  ・ 消費者分析の専門分野「消費者行動論」 ・ 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは ・ 消費者の脳内にトリップする『買い物脳スコープ』とは  ・ ① ヒアリング  by AIコンサルタント  ・ ② 脳内トリップ by AIリサーチャー  ・ ③ 企画書の作成 by AIプランナー ・ 本来は見えない情報からアイデアを拡張する ・ 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について 消費者の脳内では、いったい何が行われているのか 広告を見て、興味を持ち、次第にその商品が頭から離れなくなり、他の商品とも比較して、迷いながらもついに「購入」ボタンをタップーー。たった一つの商品を買うにあたっても、消費者の脳内では非常に複雑で曖昧な意思決定が行われていであろうことは想像に難くありません。 言ってみればマーケティングやプロモーションが目指すところは、この脳内処理プロセスの各ポイントで、自社にとって有利に働くような情報を適時・適切に提供することなのでしょう。ですが、そのプロセスを明らかにし、そこで何が行われているかを把握することは、そう簡単ではありません。 こうした消費者脳内の意思決定プロセスを明らかにしようという取り組みは、心理学や社会学、脳神経科学、マーケティング・ニューロサイエンスなど、様々な研究領域で取り組まれてきました。マーケティングのビジネスシーンでも見聞きする消費者行動モデルとしては、注意・興味・記憶・欲求・行動の頭文字を取った「AIDMA」、あるいはそれに検索・共有の概念を加えた「AISAS」がよく知られています。ちなみに、これらのルーツは1920年代に提唱された「AIDA」というモデルに遡り、現在では数十を超える派生モデルが誕生しているとも言われています。 ですが、このAIDA派生モデルたちは、学術的な検証に基づいたものというよりは商慣習的な観点から提唱されてきたもので、ビジネスシーンを想定したわかりやすさを優先し、かなり簡略化されたモデルであるという指摘があることも事実です。 消費者分析の専門分野「消費者行動論」 消費者分析をその専門領域とする「消費者行動論」では、こうした消費者の意思決定や情報処理プロセスをモデル化しようという試みが1960年代以降に活発になり、より詳細な分析を経た様々なモデルが提唱されて来ました。 代表的なモデルを紹介すると、心理学に端を発して、人間は広告などの刺激によって行動を開始し、何かしらの反応を示す存在であるという立場から消費者の意思決定プロセスを詳細化した「Howard-Sheshモデル」や、 マズローの欲求階層説を基礎に据えて、欲求認識→情報探索→選択肢の評価→購買→成果(満足/不満足)という多段階フローでそのプロセスを示した上、価値観やライフスタイル、性格、文化などの外部影響を加味した「Engel-Blackwell-Miniardモデル」、 刺激-反応という受動的な立場に留まらず、消費者は目標を持って能動的に情報処理を行い、選択的な行動を取ると考えた「Bettmanモデル」などが挙げられます。 ビジネス用途に簡略化されたモデルに比べると、かなり詳細に消費者の脳内プロセスが示されていることがわかります。もちろん、全ての消費者がこの通りに脳内処理を行うわけではありませんし、文字通り一般化された“モデル”の域を出ないものではありますが、こうしたより詳細かつ構造化された視点から消費者行動を再考し、捉え直すことによって、新たな企画アイデアの創出につながっていく可能性は大いにありそうです。 出典: 杉本徹雄(2013)「消費者意思決定モデルにおける動機づけメカニズム」上智大学紀要, pp.299-305. 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは 今般当社が開発を発表した『 未来リサーチ 』は、消費者行動モデルの分析を含むマーケティングの調査手法から得た発想をもとに、各種企画業務におけるアイデア創出や仮説検証を支援することを目指した、生成AIエージェントベースのプロダクトです。 未来リサーチには、例えば、コンサルタント、消費者、リサーチャー、プランナー等の機能を持たせたAIエージェントが仕込まれており、各々のエージェントがユーザーへの課題のヒアリングと深掘り、仮想的なリサーチの実施、調査レポートの作成、調査結果を踏まえた企画書の作成までを、その場で実行することを基本機能としています。各エージェントが自律的に役割を実行するので、ユーザーは、基本的にAIコンサルタントから投げ掛けられる質問に答えるだけでレポートや企画書の作成までを完結することができます。 そして、未来リサーチの何よりの特徴は、「リサーチ発想のアイデア拡張コレクション」というコンセプトにあります。従来の市場調査を代替することではなく、それらをヒントにした斬新なアプローチのタスクをエージェントに実施させることを通して、新商品・サービス企画、新規事業企画、広告宣伝、プロモーション、販売促進などのマーケティングの各種企画業務に従事する方々がお持ちのアイデアを、さらに拡張することをコンセプトにしています。 それを具現化するのが未来リサーチを構成する各アプリで、例えば、 ・未来時間の消費者へのインタビュー調査をする『 未来グループインタビュー 』 ・未来の市場でフィールド調査をする『 未来エスノグラフィ 』 ・本来は見ることができない消費者の脳内を覗いて意思決定プロセスを抽出する『 買い物脳スコープ 』 ・大量サンプルに対するWebアンケートを仮想実施する『 仮想Webアンケート 』 ・斬新な切り口で企画ブレインストーミングを実施する『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』 など、それぞれのテーマをもったアプリをラインナップしています。(段階的にさらに追加していく予定です。) そして今回は、このうちの一つ、『 買い物脳スコープ 』を実際のデモ画面と共にご紹介したいと思います。 消費者の脳内にトリップする『買い物脳スコープ』とは 『 買い物脳スコープ 』は、生成AI・LLM(大規模言語モデル)の優れた言語能力、もっと言えば大胆な想像力を用いて、先ほどあげたような消費者行動モデルに基づいて、消費者の買い物時に行われた脳内の意思決定プロセスや情報処理の内容を仮想的に言語化するアプリです。 どのようなシーンの消費者を対象としたいのか、探索のテーマや目的などに関するAIコンサルタントからのヒアリングに回答すれば、AIリサーチャーが消費者の脳内にトリップし、調査結果をレポート、企画書の作成まで完結できるよう開発しています。 無意識下にある消費者インサイトの発見や、消費者行動に合致したプロモーション施策の企画立案に最適に最適なアプリで、広告宣伝やプロモーション戦略の立案など、マーケティングの幅広い企画業務でご活用いただけるものです。 では、デモ画面と共にその実際のやりとりを見ていきましょう。なお、登場するデモ画面は執筆時点のもので、今後の開発状況に応じて仕様等が変更になる場合がございますことを予めご了承ください。 ① ヒアリング  by AIコンサルタント 基本的な入力画面はChatGPTなどの対話型AIと同様で、初回の入力はユーザー側から行います。今回は、アパレル企業のマーケティング担当という想定で、以下の悩み相談をしてみました。 私はアパレル企業のマーケティング担当です。 消費行動を理解し、効果的なプロモーション戦略を立案したいです。 若年層の女性が、スニーカーを購入する際、脳内でどのような意思決定が行われているのか分析してほしいです。 すると、さっそくAIコンサルタントから買い物シーンを絞り込むためのヒアリングとして、典型的な購買シチュエーションに関する質問を受けました。今回は、店頭での試着を伴うシーンを想定したいと思います。 続いて、試着前にどのような情報収集を行なっていると想像されるか、どのような広告コンテンツが強く影響していると思うか、店頭で試着する際の重視ポイントは何か、価格帯はどれくらいか、ブランドの影響度合いはどうかなど、深掘りの質問が続きます。担当者としての感覚の範囲で答えながら、わからないことやケース・バイ・ケースである内容については、そのように回答していきます。 ② 脳内トリップ by AIリサーチャー ひとしきりヒアリングが終わると、いよいよAIコンサルタントからAIリサーチャーに対して消費者の脳内にトリップするよう指示が。そして、その帰還とともに以下のレポートを出力してくれました。 脳内リサーチャーによる「脳内処理プロセスレポート」 若年層女性が店頭でスニーカーを試着し、最終的に購入に至るまでの脳内処理を、消費者行動論の代表的モデルを参照しながら詳細に追跡した。 ①刺激の知覚(Stimulus Perception) 店頭に一歩足を踏み入れた瞬間、照明によって際立つシルエットやカラー、陳列ディスプレイの統一感、ブランドロゴの配列が知覚されます。視覚情報はすぐに視覚皮質で処理され、連合野へ伝達されて意味づけが行われます。この際、過去にInstagramやTikTokで目にしたインフルエンサーの着用シーンや友人からの推薦コメントが、無意識的に想起され、特定のブランドに対するプライオリティが事前形成されます。 ②注意の配分(Attention) 視覚情報が脳内に取り込まれると、“かわいい”や“クール”“アクティブ”といった自己イメージと合致するデザイン要素が注意の焦点となります。特にブランドロゴの独自性や配色、トレンド感の強い新色などは視認性が高まり、注意フィルターを通過しやすくなります。同時に、ソールのクッション構造や素材感を示すタグ表示といった機能的要素も認識され、情緒的評価と合理的評価双方のインプットが成立します。 ③意味付け(Comprehension) 注意を通過した情報は、個人の意味記憶ネットワークと突き合わせられます。ここで「かわいい=自己表現」「軽量=活動的なライフスタイル」「ブランドロゴ=ステータスシンボル」といった符号化が行われ、機能的価値(快適性、耐久性)と情緒的価値(自己イメージ達成、トレンド適合性)がカテゴリー別に整理されます。ブランド公式の短尺動画広告などで強調されたメッセージ(例:『街もスタジアムも自由に駆け回れる』)が内部表象を具体化させ、理解プロセスを加速させます。 ④記憶への蓄積(Memory Encoding) 試着時に得られた身体感覚(フィット感のホールド感、素材のやわらかさ)は、まず短期記憶に符号化されます。その直後に感じる「かわいい」という情緒的反応と組み合わさり、長期記憶のブランド評価ネットワークへ転送されます。このとき、Clawsonモデルが示す多層的動機付け(生理的快適性、社会的評価、自己実現欲求)がタグ付けされ、次回以降の選択時に利用可能な“認知スキーマ”として保存されます。 ⑤情報探索(Information Search) 外的探索:陳列棚のスペック表記、店員への質問(素材、製造国、ケア方法)を通じて、実際の使用イメージを補強。 内的探索:直前に見たSNS広告や友人の口コミレビューを脳内で再検索し、比較検討材料を再構築。 この二重探索が、一次的に喚起された“スニーカーを手に入れたい”という購入動機を、より具体的な“このブランド/モデルを選びたい”という限定的問題解決へと収束させます。 ⑥感情評価(Emotional Evaluation) 試着によるフィット感は身体的快適性として快感を引き起こし、「周囲から褒められたい」「SNSで見栄えの良い写真を投稿したい」といった社会的承認欲求を同時に喚起します。マズローの欲求階層理論では、所属・承認欲求の領域が活性化されるフェーズであり、情緒的価値が機能的価値と並行して大幅に強化されるのが特徴です。 ⑦ 選択肢の比較評価(Alternative Evaluation) 複数回の試着を経て候補を絞り込む段階です。評価軸は以下の5点に集約されます:  1. フィット感(身体へのフィット性)  2. ファッションマッチ度(コーディネート適合性)  3. 価格(参照価格帯:10,000円前後)  4. ブランドポジショニング(トレンド性、ステータス)  5. ソーシャルプルーフ(友人口コミ、SNSエンゲージメント) 脳内ではHoward & Shethモデルの手段–目的関係が適用され、各評価軸の重みづけの計算が無意識的に行われます。 ⑧価値評価の確定(Value Confirmation) 機能的価値と情緒的価値を統合し、参照価格帯との整合性を確認します。価格–品質–ブランド価値のトライアングルモデルに基づき、「この価格で得られる価値は妥当」「お得感がある」といった判断が下されると、価値評価がポジティブに確定します。このフェーズでは、期間限定のキャンペーンや店頭限定オファーが購買促進のトリガーとなります。 ⑨購買決定(Purchase Decision) 自己表現欲求(内的動機)と社会的承認欲求(外的動機)の総合水準が購買行動閾値を超えた瞬間、前頭前皮質と扁桃体のネットワークが活動し、購買アクションがトリガーされます。決済プロセスはスムーズに行われ、実際の購買へと移行します。 ⑩消費後評価(Post-purchase Evaluation) 購入後、最初の使用体験と友人やSNSでの反応が再評価の材料となります。高い満足度はブランド評価ネットワークを強化し、ルーチン化された購買行動(Routinized Response Behavior)へと移行します。さらに、ユーザーがSNSで投稿を行うことで他の消費者の刺激知覚を誘発し、ブランドの先有傾向醸成に寄与します。 消費者行動モデルを参照しながら、10フェーズごとに消費者脳内で行われた意思決定の内容・情報を言語化してくれました。店頭で行われる一つひとつの体験が、意味づけされ、強化され、過去の記憶と紐付き、様々な観点での比較検討・評価が行われた結果として、購買に至った様子が克明に見えてきます。 ③ 企画書の作成 by AIプランナー それでは、仕上げとしてこのレポートを元にした企画書をプランナーに作成してもらいましょう。今回は、脳内レポートを踏まえた、店頭購買促進キャンペーンの企画を立ててもらうことにします。出力された企画書がこちらです。 店頭購買促進キャンペーン企画書 ①背景 近年、若年層女性はSNSを起点にスニーカーに関する情報を得た後、店頭での複数回試着を経て購入を決定する購買行動を取る傾向が強まっています。特にInstagramやTikTok上のビジュアルコンテンツが初動刺激となり、店頭でのフィット感やファッションとのマッチ度を重視した評価プロセスを経ることで購買に至ります。平均想定支出額は約10,000円前後であり、機能的価値と情緒的価値の双方を満たす訴求が不可欠です。また、ブランドロゴやデザインが購買意欲を大きく左右し、実際に試着した際の身体的快適性と社会的承認欲求の喚起が購入決定の最終トリガーとなっています。 本キャンペーンでは、SNSから誘引された店頭来店者に対し、店頭体験を強化しながら価格・機能・情緒価値を効果的に伝達し、購買意欲の高い若年層女性のコンバージョン率向上を目指します。 ②課題 1. 店頭来店数の不足:SNS経由で興味は誘発されるものの、来店導線の設計が弱く、店頭への誘客が限られている。 2. 試着から購入へのギャップ:複数回試着を行うものの、最終的な価値評価段階で競合ブランドへ流出するケースが発生。 3. 価格認識と価値伝達の不一致:平均購入想定価格帯(約10,000円)と実際の価格帯とのギャップが生じ、購買躊躇を招く可能性がある。 4. 社会的承認欲求の喚起不足:店頭体験で得られる“かわいい”感情の共有・拡散機能が不足しており、口コミ・SNSでの二次拡散が限定的。 ③目的 • 店頭来店者数を前年比+20%増加させる。 • 試着から購買転換率を現在の25%→35%へ向上させる。 • 平均購買単価を10,000円前後で維持しつつ、お得感訴求で客単価を+5%改善。 • SNSシェア数をキャンペーン期間中に500件以上獲得し、二次拡散による潜在顧客へのリーチを強化する。 ④STP戦略 セグメンテーション(Segmentation) • 年齢:18〜24歳の若年層女性 • 行動特性:SNS閲覧頻度が高く、ビジュアルコンテンツを重視 • 価格感度:10,000円前後を許容するが、お得感を重視 • ファッション志向:“かわいい”および“アクティブ”自己表現を求める ターゲティング(Targeting) 主要ターゲット: • InstagramやTikTokでファッション系インフルエンサーをフォローし、トレンド感を重視する18〜22歳大学生 • 部活動やアウトドアを趣味とし、機能性と見た目の両立を求める20〜24歳社会人 ポジショニング(Positioning) 「おしゃれに、快適に、あなたらしく」 • 機能的価値(軽量、クッション性)と情緒的価値(“かわいい”自己表現)を高次元で両立 • トレンド感あるデザインを手頃な価格帯(約10,000円前後)で提供 • 店頭での試着体験を通じて顧客の日常にフィットする“新たな定番”としてポジショニング ⑤キャンペーン施策概要 1. 来店誘引施策 ・SNS限定来店クーポン配布:Instagramストーリーズ広告を活用し、来店時に提示すると10%オフクーポンを付与。 ・インフルエンサーコラボ配信:主要ターゲット属性にリーチするインフルエンサーによる実店舗試着動画を配信。 2. 店頭体験強化施策 ・フィット感体感ブース設置:最新のフットスキャン機器を用い、最適なサイズ・ソールを提案。 ・プロのスタイリスト常駐:コーディネート提案と鏡前フォトブースで“かわいい”体験を演出。 3. 価格・限定オファー施策 ・期間限定バンドルセット:スニーカー購入でオリジナルソックスをプレゼント。 ・店頭限定タイムセール:平日夕方の来店促進を狙い、17〜19時限定で2足目半額セールを実施。 4. SNS拡散促進施策 ・店頭フォトコンテスト:ハッシュタグキャンペーンを実施し、投稿者の中から抽選でギフトカードをプレゼント。 ・リアルタイムUGC掲示板:店内スクリーンに来店者の投稿を即時表示し、参加感を喚起。 ⑥KPI設定 KGI(最終目標) 店頭購買転換率35%、来店数前年比+20%、SNSシェア500件以上 KPI 1 来店来店数:月間2,400人以上 KPI 2 試着から購入へのCVR:35%以上 KPI 3 平均購買単価:10,500円以上 KPI 4 SNSキャンペーン投稿数:月間150件以上 KPI 5 店頭フォトコンテスト応募数:月間200件以上 ⑦スケジュール 期間          施策内容 準備期間(1ヶ月)    インフルエンサー契約、クーポンコード発行、店頭レイアウト構築 実施期間(3ヶ月)    来店誘引→店頭体験→購入誘導→UGC拡散のサイクルを回し、定量分析 評価・改善期(1ヶ月)  KPI振り返り、施策A/Bテスト結果反映、新キャンペーン設計 ⑧予算概算 • SNS広告運用費:¥2,000,000 • インフルエンサー契約料:¥1,500,000 • 店頭ブース設置費:¥800,000 • プロスタイリスト人件費:¥500,000 • クーポン・ノベルティ費用:¥700,000 • 総計:¥5,500,000 ⑨リスクと対策 • 来店数不足リスク:複数チャネルでのリターゲティング広告を強化し、来店未実現層を再誘導。 • CVR低迷リスク:プロスタイリスト常駐時間帯の見直しと、試着体験ブースの動線最適化を実施。 • 予算超過リスク:各施策を段階的にフェーズ分けし、効果検証後に追加投資を判断。 ⑩まとめ 本キャンペーンは、SNS起点の来店誘引から店頭での高付加価値体験提供、そしてSNS拡散までの一連の顧客ジャーニーを最適化することで、若年層女性の購買行動を加速させることを狙いとしています。各施策を連動させることで、来店→試着→購入→拡散の好循環を創出し、ブランドロイヤルティの向上と持続的売上成長を実現します。 企画にあたっての前提条件を指定したわけではないので、概要にとどまっていますし、数値部分に創作が入っていることなどは否めませんが、叩き台として必要な情報は散りばめてくれている印象ではないでしょうか。何より、“脳内分析”という過程を先に経たことで、単に「企画書を作って」と指示を与えた場合の出力に比べて、企画に根拠と説得力が伴ったように感じます。 これを元にどの方向に絞って企画を詰めていくのか、加味すべき前提条件はなにかなどの情報を与えながら企画書としてのクオリティを高めていくのが、人とAIの協働による次に向けたステップです。 本来は見えない情報からアイデアを拡張する いかがでしたでしょうか。本当に消費者がこうした意思決定を脳内で行なっていたのか、出力された企画が本当に成功するのか、こればかりはマーケティングあるいは消費者という不確実性の高い分野では、どうしてもわからないところがあるのは事実です。 ですが、本来は見えないものの、仮想的に言語化された情報をヒントに、あなたの頭の中でモヤモヤとしている部分を刺激させる、あなた自身に秘めたインサイトを拾い出す、あなたがお持ちのアイデアを拡張することには大いに役立つのではないかと考えています。未来リサーチが「 リサーチ発想のアイデア拡張コレクション 」をコンセプトにしているのは、まさにこうした点にあります。 とくに今回紹介した 買い物脳スコープ は、次のような方にオススメです。 • 購買行動の背景にある消費者心理を理解し、効果的なマーケティング施策を立案・実行したい方 • 消費者の意思決定プロセスを理解し、より顧客ニーズに合致した製品開発を行いたい方 また、その利用メリットは、 • 消費者理解の深化 消費者行動モデルに基づき、購買意思決定の背後にある心理メカニズムを深く理解 • マーケティングROI向上 消費者心理に最適化された施策により、マーケティング効果を最大化 • 顧客エンゲージメント向上 消費者心理に寄り添ったコミュニケーションにより、ブランドへの好感度やロイヤルティ向上に貢献 などが挙げられます。 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について 未来リサーチは、2025年秋頃のサービス提供を目指して開発を進めており、執筆時現在、事前登録の申込みを受け付けています。優先的な利用案内や先行体験に関する特典もご案内予定ですので、興味を持っていただけた方は、ぜひご登録をいただけますと幸いです。 未来リサーチ TM  事前登録フォーム その他のアプリ解説記事 以下のアプリ解説記事を公開中です。ぜひ、あわせてご覧ください。 ・ 未来の消費者にインタビュー。AIエージェント『未来グループインタビュー』を解説 ・ 未来の消費者行動を“のぞき見”。生成AIエージェント『未来エスノグラフィ』を解説 ・ 消費者の脳内にトリップ。生成AIエージェント『買い物脳スコープ』を解説 ご留意事項 ※ 生成AI・LLMを用いている未来リサーチの回答は、必ずしも正しいとは限りません。重要な情報はお客様ご自身にて十分にご確認ください。 ※ 出力や精度に都度バラツキが生じるため、同様の結果が再現できることを保証するものではありません。 ※ デモ中に出力された人名・企業名・商品等は、特定の個人・団体・製品等を指定・意図するものではございません。 ※ 提供時期や特典等は、予告なく変更になる場合がございます。 参考 プレスリリース: 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ(TM)』の開発、および事前登録開始のお知らせ 執筆者 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 消費者の脳内にトリップ。生成AIエージェント『買い物脳スコープ』を解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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消費者の脳内にトリップ。 生成AIエージェント『買い物脳スコープ』を解説 2025.7.5 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 当社Laboro.AIでは、去る2025年6月18日、自社初となる生成AIエージェントをベースにした対話型プロダクト『 未来リサーチ 』(商標・特許出願中)を発表しました。このコラムでは、そのアプリケーションの一つであり、消費者が購買に至るまでに脳内で行った意思決定プロセスを可視化・言語化することを通して、様々なマーケティング・アイデアを獲得することをテーマにした『 買い物脳スコープ 』を取り上げ、その概要や実際の出力、活用メリットなど紹介していきます。 目 次 ・ 消費者の脳内では、いったい何が行われているのか  ・ 消費者分析の専門分野「消費者行動論」 ・ 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは ・ 消費者の脳内にトリップする『買い物脳スコープ』とは  ・ ① ヒアリング  by AIコンサルタント  ・ ② 脳内トリップ by AIリサーチャー  ・ ③ 企画書の作成 by AIプランナー ・ 本来は見えない情報からアイデアを拡張する ・ 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について 消費者の脳内では、いったい何が行われているのか 広告を見て、興味を持ち、次第にその商品が頭から離れなくなり、他の商品とも比較して、迷いながらもついに「購入」ボタンをタップーー。たった一つの商品を買うにあたっても、消費者の脳内では非常に複雑で曖昧な意思決定が行われていであろうことは想像に難くありません。 言ってみればマーケティングやプロモーションが目指すところは、この脳内処理プロセスの各ポイントで、自社にとって有利に働くような情報を適時・適切に提供することなのでしょう。ですが、そのプロセスを明らかにし、そこで何が行われているかを把握することは、そう簡単ではありません。 こうした消費者脳内の意思決定プロセスを明らかにしようという取り組みは、心理学や社会学、脳神経科学、マーケティング・ニューロサイエンスなど、様々な研究領域で取り組まれてきました。マーケティングのビジネスシーンでも見聞きする消費者行動モデルとしては、注意・興味・記憶・欲求・行動の頭文字を取った「AIDMA」、あるいはそれに検索・共有の概念を加えた「AISAS」がよく知られています。ちなみに、これらのルーツは1920年代に提唱された「AIDA」というモデルに遡り、現在では数十を超える派生モデルが誕生しているとも言われています。 ですが、このAIDA派生モデルたちは、学術的な検証に基づいたものというよりは商慣習的な観点から提唱されてきたもので、ビジネスシーンを想定したわかりやすさを優先し、かなり簡略化されたモデルであるという指摘があることも事実です。 消費者分析の専門分野「消費者行動論」 消費者分析をその専門領域とする「消費者行動論」では、こうした消費者の意思決定や情報処理プロセスをモデル化しようという試みが1960年代以降に活発になり、より詳細な分析を経た様々なモデルが提唱されて来ました。 代表的なモデルを紹介すると、心理学に端を発して、人間は広告などの刺激によって行動を開始し、何かしらの反応を示す存在であるという立場から消費者の意思決定プロセスを詳細化した「Howard-Sheshモデル」や、 マズローの欲求階層説を基礎に据えて、欲求認識→情報探索→選択肢の評価→購買→成果(満足/不満足)という多段階フローでそのプロセスを示した上、価値観やライフスタイル、性格、文化などの外部影響を加味した「Engel-Blackwell-Miniardモデル」、 刺激-反応という受動的な立場に留まらず、消費者は目標を持って能動的に情報処理を行い、選択的な行動を取ると考えた「Bettmanモデル」などが挙げられます。 ビジネス用途に簡略化されたモデルに比べると、かなり詳細に消費者の脳内プロセスが示されていることがわかります。もちろん、全ての消費者がこの通りに脳内処理を行うわけではありませんし、文字通り一般化された“モデル”の域を出ないものではありますが、こうしたより詳細かつ構造化された視点から消費者行動を再考し、捉え直すことによって、新たな企画アイデアの創出につながっていく可能性は大いにありそうです。 出典: 杉本徹雄(2013)「消費者意思決定モデルにおける動機づけメカニズム」上智大学紀要, pp.299-305. 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは 今般当社が開発を発表した『 未来リサーチ 』は、消費者行動モデルの分析を含むマーケティングの調査手法から得た発想をもとに、各種企画業務におけるアイデア創出や仮説検証を支援することを目指した、生成AIエージェントベースのプロダクトです。 未来リサーチには、例えば、コンサルタント、消費者、リサーチャー、プランナー等の機能を持たせたAIエージェントが仕込まれており、各々のエージェントがユーザーへの課題のヒアリングと深掘り、仮想的なリサーチの実施、調査レポートの作成、調査結果を踏まえた企画書の作成までを、その場で実行することを基本機能としています。各エージェントが自律的に役割を実行するので、ユーザーは、基本的にAIコンサルタントから投げ掛けられる質問に答えるだけでレポートや企画書の作成までを完結することができます。 そして、未来リサーチの何よりの特徴は、「 リサーチ発想のアイデア拡張コレクション 」というコンセプトにあります。従来の市場調査を代替することではなく、それらをヒントにした斬新なアプローチのタスクをエージェントに実施させることを通して、新商品・サービス企画、新規事業企画、広告宣伝、プロモーション、販売促進などのマーケティングの各種企画業務に従事する方々がお持ちのアイデアを、さらに拡張することをコンセプトにしています。 それを具現化するのが未来リサーチを構成する各アプリで、例えば、 ・未来時間の消費者へのインタビュー調査をする『 未来グループインタビュー 』 ・未来の市場でフィールド調査をする『 未来エスノグラフィ 』 ・本来は見ることができない消費者の脳内を覗いて意思決定プロセスを抽出する『 買い物脳スコープ 』 ・大量サンプルに対するWebアンケートを仮想実施する『 仮想Webアンケート 』 ・斬新な切り口で企画ブレインストーミングを実施する『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』 など、それぞれのテーマをもったアプリをラインナップしています。(段階的にさらに追加していく予定です。) そして今回は、このうちの一つ、『 買い物脳スコープ 』を実際のデモ画面と共にご紹介したいと思います。 消費者の脳内にトリップする『買い物脳スコープ』とは 『 買い物脳スコープ 』は、生成AI・LLM(大規模言語モデル)の優れた言語能力、もっと言えば大胆な想像力を用いて、先ほどあげたような消費者行動モデルに基づいて、消費者の買い物時に行われた脳内の意思決定プロセスや情報処理の内容を仮想的に言語化するアプリです。 どのようなシーンの消費者を対象としたいのか、探索のテーマや目的などに関するAIコンサルタントからのヒアリングに回答すれば、AIリサーチャーが消費者の脳内にトリップし、調査結果をレポート、企画書の作成まで完結できるよう開発しています。 無意識下にある消費者インサイトの発見や、消費者行動に合致したプロモーション施策の企画立案に最適に最適なアプリで、広告宣伝やプロモーション戦略の立案など、マーケティングの幅広い企画業務でご活用いただけるものです。 では、デモ画面と共にその実際のやりとりを見ていきましょう。なお、登場するデモ画面は執筆時点のもので、今後の開発状況に応じて仕様等が変更になる場合がございますことを予めご了承ください。 ① ヒアリング  by AIコンサルタント 基本的な入力画面はChatGPTなどの対話型AIと同様で、初回の入力はユーザー側から行います。今回は、アパレル企業のマーケティング担当という想定で、以下の悩み相談をしてみました。 私はアパレル企業のマーケティング担当です。 消費行動を理解し、効果的なプロモーション戦略を立案したいです。 若年層の女性が、スニーカーを購入する際、脳内でどのような意思決定が行われているのか分析してほしいです。 すると、さっそくAIコンサルタントから買い物シーンを絞り込むためのヒアリングとして、典型的な購買シチュエーションに関する質問を受けました。今回は、店頭での試着を伴うシーンを想定したいと思います。 続いて、試着前にどのような情報収集を行なっていると想像されるか、どのような広告コンテンツが強く影響していると思うか、店頭で試着する際の重視ポイントは何か、価格帯はどれくらいか、ブランドの影響度合いはどうかなど、深掘りの質問が続きます。担当者としての感覚の範囲で答えながら、わからないことやケース・バイ・ケースである内容については、そのように回答していきます。 ② 脳内トリップ by AIリサーチャー ひとしきりヒアリングが終わると、いよいよAIコンサルタントからAIリサーチャーに対して消費者の脳内にトリップするよう指示が。そして、その帰還とともに以下のレポートを出力してくれました。 脳内リサーチャーによる「脳内処理プロセスレポート」 若年層女性が店頭でスニーカーを試着し、最終的に購入に至るまでの脳内処理を、消費者行動論の代表的モデルを参照しながら詳細に追跡した。 ①刺激の知覚(Stimulus Perception) 店頭に一歩足を踏み入れた瞬間、照明によって際立つシルエットやカラー、陳列ディスプレイの統一感、ブランドロゴの配列が知覚されます。視覚情報はすぐに視覚皮質で処理され、連合野へ伝達されて意味づけが行われます。この際、過去にInstagramやTikTokで目にしたインフルエンサーの着用シーンや友人からの推薦コメントが、無意識的に想起され、特定のブランドに対するプライオリティが事前形成されます。 ②注意の配分(Attention) 視覚情報が脳内に取り込まれると、“かわいい”や“クール”“アクティブ”といった自己イメージと合致するデザイン要素が注意の焦点となります。特にブランドロゴの独自性や配色、トレンド感の強い新色などは視認性が高まり、注意フィルターを通過しやすくなります。同時に、ソールのクッション構造や素材感を示すタグ表示といった機能的要素も認識され、情緒的評価と合理的評価双方のインプットが成立します。 ③意味付け(Comprehension) 注意を通過した情報は、個人の意味記憶ネットワークと突き合わせられます。ここで「かわいい=自己表現」「軽量=活動的なライフスタイル」「ブランドロゴ=ステータスシンボル」といった符号化が行われ、機能的価値(快適性、耐久性)と情緒的価値(自己イメージ達成、トレンド適合性)がカテゴリー別に整理されます。ブランド公式の短尺動画広告などで強調されたメッセージ(例:『街もスタジアムも自由に駆け回れる』)が内部表象を具体化させ、理解プロセスを加速させます。 ④記憶への蓄積(Memory Encoding) 試着時に得られた身体感覚(フィット感のホールド感、素材のやわらかさ)は、まず短期記憶に符号化されます。その直後に感じる「かわいい」という情緒的反応と組み合わさり、長期記憶のブランド評価ネットワークへ転送されます。このとき、Clawsonモデルが示す多層的動機付け(生理的快適性、社会的評価、自己実現欲求)がタグ付けされ、次回以降の選択時に利用可能な“認知スキーマ”として保存されます。 ⑤情報探索(Information Search) 外的探索:陳列棚のスペック表記、店員への質問(素材、製造国、ケア方法)を通じて、実際の使用イメージを補強。 内的探索:直前に見たSNS広告や友人の口コミレビューを脳内で再検索し、比較検討材料を再構築。 この二重探索が、一次的に喚起された“スニーカーを手に入れたい”という購入動機を、より具体的な“このブランド/モデルを選びたい”という限定的問題解決へと収束させます。 ⑥感情評価(Emotional Evaluation) 試着によるフィット感は身体的快適性として快感を引き起こし、「周囲から褒められたい」「SNSで見栄えの良い写真を投稿したい」といった社会的承認欲求を同時に喚起します。マズローの欲求階層理論では、所属・承認欲求の領域が活性化されるフェーズであり、情緒的価値が機能的価値と並行して大幅に強化されるのが特徴です。 ⑦ 選択肢の比較評価(Alternative Evaluation) 複数回の試着を経て候補を絞り込む段階です。評価軸は以下の5点に集約されます:  1. フィット感(身体へのフィット性)  2. ファッションマッチ度(コーディネート適合性)  3. 価格(参照価格帯:10,000円前後)  4. ブランドポジショニング(トレンド性、ステータス)  5. ソーシャルプルーフ(友人口コミ、SNSエンゲージメント) 脳内ではHoward & Shethモデルの手段–目的関係が適用され、各評価軸の重みづけの計算が無意識的に行われます。 ⑧価値評価の確定(Value Confirmation) 機能的価値と情緒的価値を統合し、参照価格帯との整合性を確認します。価格–品質–ブランド価値のトライアングルモデルに基づき、「この価格で得られる価値は妥当」「お得感がある」といった判断が下されると、価値評価がポジティブに確定します。このフェーズでは、期間限定のキャンペーンや店頭限定オファーが購買促進のトリガーとなります。 ⑨購買決定(Purchase Decision) 自己表現欲求(内的動機)と社会的承認欲求(外的動機)の総合水準が購買行動閾値を超えた瞬間、前頭前皮質と扁桃体のネットワークが活動し、購買アクションがトリガーされます。決済プロセスはスムーズに行われ、実際の購買へと移行します。 ⑩消費後評価(Post-purchase Evaluation) 購入後、最初の使用体験と友人やSNSでの反応が再評価の材料となります。高い満足度はブランド評価ネットワークを強化し、ルーチン化された購買行動(Routinized Response Behavior)へと移行します。さらに、ユーザーがSNSで投稿を行うことで他の消費者の刺激知覚を誘発し、ブランドの先有傾向醸成に寄与します。 消費者行動モデルを参照しながら、10フェーズごとに消費者脳内で行われた意思決定の内容・情報を言語化してくれました。店頭で行われる一つひとつの体験が、意味づけされ、強化され、過去の記憶と紐付き、様々な観点での比較検討・評価が行われた結果として、購買に至った様子が克明に見えてきます。 ③ 企画書の作成 by AIプランナー それでは、仕上げとしてこのレポートを元にした企画書をプランナーに作成してもらいましょう。今回は、脳内レポートを踏まえた、店頭購買促進キャンペーンの企画を立ててもらうことにします。出力された企画書がこちらです。 店頭購買促進キャンペーン企画書 ①背景 近年、若年層女性はSNSを起点にスニーカーに関する情報を得た後、店頭での複数回試着を経て購入を決定する購買行動を取る傾向が強まっています。特にInstagramやTikTok上のビジュアルコンテンツが初動刺激となり、店頭でのフィット感やファッションとのマッチ度を重視した評価プロセスを経ることで購買に至ります。平均想定支出額は約10,000円前後であり、機能的価値と情緒的価値の双方を満たす訴求が不可欠です。また、ブランドロゴやデザインが購買意欲を大きく左右し、実際に試着した際の身体的快適性と社会的承認欲求の喚起が購入決定の最終トリガーとなっています。 本キャンペーンでは、SNSから誘引された店頭来店者に対し、店頭体験を強化しながら価格・機能・情緒価値を効果的に伝達し、購買意欲の高い若年層女性のコンバージョン率向上を目指します。 ②課題 1. 店頭来店数の不足:SNS経由で興味は誘発されるものの、来店導線の設計が弱く、店頭への誘客が限られている。 2. 試着から購入へのギャップ:複数回試着を行うものの、最終的な価値評価段階で競合ブランドへ流出するケースが発生。 3. 価格認識と価値伝達の不一致:平均購入想定価格帯(約10,000円)と実際の価格帯とのギャップが生じ、購買躊躇を招く可能性がある。 4. 社会的承認欲求の喚起不足:店頭体験で得られる“かわいい”感情の共有・拡散機能が不足しており、口コミ・SNSでの二次拡散が限定的。 ③目的 • 店頭来店者数を前年比+20%増加させる。 • 試着から購買転換率を現在の25%→35%へ向上させる。 • 平均購買単価を10,000円前後で維持しつつ、お得感訴求で客単価を+5%改善。 • SNSシェア数をキャンペーン期間中に500件以上獲得し、二次拡散による潜在顧客へのリーチを強化する。 ④STP戦略 セグメンテーション(Segmentation) • 年齢:18〜24歳の若年層女性 • 行動特性:SNS閲覧頻度が高く、ビジュアルコンテンツを重視 • 価格感度:10,000円前後を許容するが、お得感を重視 • ファッション志向:“かわいい”および“アクティブ”自己表現を求める ターゲティング(Targeting) 主要ターゲット: • InstagramやTikTokでファッション系インフルエンサーをフォローし、トレンド感を重視する18〜22歳大学生 • 部活動やアウトドアを趣味とし、機能性と見た目の両立を求める20〜24歳社会人 ポジショニング(Positioning) 「おしゃれに、快適に、あなたらしく」 • 機能的価値(軽量、クッション性)と情緒的価値(“かわいい”自己表現)を高次元で両立 • トレンド感あるデザインを手頃な価格帯(約10,000円前後)で提供 • 店頭での試着体験を通じて顧客の日常にフィットする“新たな定番”としてポジショニング ⑤キャンペーン施策概要 1. 来店誘引施策 ・SNS限定来店クーポン配布:Instagramストーリーズ広告を活用し、来店時に提示すると10%オフクーポンを付与。 ・インフルエンサーコラボ配信:主要ターゲット属性にリーチするインフルエンサーによる実店舗試着動画を配信。 2. 店頭体験強化施策 ・フィット感体感ブース設置:最新のフットスキャン機器を用い、最適なサイズ・ソールを提案。 ・プロのスタイリスト常駐:コーディネート提案と鏡前フォトブースで“かわいい”体験を演出。 3. 価格・限定オファー施策 ・期間限定バンドルセット:スニーカー購入でオリジナルソックスをプレゼント。 ・店頭限定タイムセール:平日夕方の来店促進を狙い、17〜19時限定で2足目半額セールを実施。 4. SNS拡散促進施策 ・店頭フォトコンテスト:ハッシュタグキャンペーンを実施し、投稿者の中から抽選でギフトカードをプレゼント。 ・リアルタイムUGC掲示板:店内スクリーンに来店者の投稿を即時表示し、参加感を喚起。 ⑥KPI設定 KGI(最終目標) 店頭購買転換率35%、来店数前年比+20%、SNSシェア500件以上 KPI 1 来店来店数:月間2,400人以上 KPI 2 試着から購入へのCVR:35%以上 KPI 3 平均購買単価:10,500円以上 KPI 4 SNSキャンペーン投稿数:月間150件以上 KPI 5 店頭フォトコンテスト応募数:月間200件以上 ⑦スケジュール 期間          施策内容 準備期間(1ヶ月)    インフルエンサー契約、クーポンコード発行、店頭レイアウト構築 実施期間(3ヶ月)    来店誘引→店頭体験→購入誘導→UGC拡散のサイクルを回し、定量分析 評価・改善期(1ヶ月)  KPI振り返り、施策A/Bテスト結果反映、新キャンペーン設計 ⑧予算概算 • SNS広告運用費:¥2,000,000 • インフルエンサー契約料:¥1,500,000 • 店頭ブース設置費:¥800,000 • プロスタイリスト人件費:¥500,000 • クーポン・ノベルティ費用:¥700,000 • 総計:¥5,500,000 ⑨リスクと対策 • 来店数不足リスク:複数チャネルでのリターゲティング広告を強化し、来店未実現層を再誘導。 • CVR低迷リスク:プロスタイリスト常駐時間帯の見直しと、試着体験ブースの動線最適化を実施。 • 予算超過リスク:各施策を段階的にフェーズ分けし、効果検証後に追加投資を判断。 ⑩まとめ 本キャンペーンは、SNS起点の来店誘引から店頭での高付加価値体験提供、そしてSNS拡散までの一連の顧客ジャーニーを最適化することで、若年層女性の購買行動を加速させることを狙いとしています。各施策を連動させることで、来店→試着→購入→拡散の好循環を創出し、ブランドロイヤルティの向上と持続的売上成長を実現します。 企画にあたっての前提条件を指定したわけではないので、概要にとどまっていますし、数値部分に創作が入っていることなどは否めませんが、叩き台として必要な情報は散りばめてくれている印象ではないでしょうか。何より、“脳内分析”という過程を先に経たことで、単に「企画書を作って」と指示を与えた場合の出力に比べて、企画に根拠と説得力が伴ったように感じます。 これを元にどの方向に絞って企画を詰めていくのか、加味すべき前提条件はなにかなどの情報を与えながら企画書としてのクオリティを高めていくのが、人とAIの協働による次に向けたステップです。 本来は見えない情報からアイデアを拡張する いかがでしたでしょうか。本当に消費者がこうした意思決定を脳内で行なっていたのか、出力された企画が本当に成功するのか、こればかりはマーケティングあるいは消費者という不確実性の高い分野では、どうしてもわからないところがあるのは事実です。 ですが、本来は見えないものの、仮想的に言語化された情報をヒントに、あなたの頭の中でモヤモヤとしている部分を刺激させる、あなた自身に秘めたインサイトを拾い出す、あなたがお持ちのアイデアを拡張することには大いに役立つのではないかと考えています。未来リサーチが「 リサーチ発想のアイデア拡張コレクション 」をコンセプトにしているのは、まさにこうした点にあります。 とくに今回紹介した 買い物脳スコープ は、次のような方にオススメです。 • 購買行動の背景にある消費者心理を理解し、効果的なマーケティング施策を立案・実行したい方 • 消費者の意思決定プロセスを理解し、より顧客ニーズに合致した製品開発を行いたい方 また、その利用メリットは、 • 消費者理解の深化 消費者行動モデルに基づき、購買意思決定の背後にある心理メカニズムを深く理解 • マーケティングROI向上 消費者心理に最適化された施策により、マーケティング効果を最大化 • 顧客エンゲージメント向上 消費者心理に寄り添ったコミュニケーションにより、ブランドへの好感度やロイヤルティ向上に貢献 などが挙げられます。 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について 未来リサーチは、2025年秋頃のサービス提供を目指して開発を進めており、執筆時現在、事前登録の申込みを受け付けています。優先的な利用案内や先行体験に関する特典もご案内予定ですので、興味を持っていただけた方は、ぜひご登録をいただけますと幸いです。 未来リサーチ TM  事前登録フォーム その他のアプリ解説記事 以下のアプリ解説記事を公開中です。ぜひ、あわせてご覧ください。 ・ 未来の消費者にインタビュー。AIエージェント『未来グループインタビュー』を解説 ・ 未来の消費者行動を“のぞき見”。生成AIエージェント『未来エスノグラフィ』を解説 ・ 消費者の脳内にトリップ。生成AIエージェント『買い物脳スコープ』を解説 ・ 大規模アンケートをその場で仮想実施。生成AIエージェント『仮想WEBアンケート』を解説 ご留意事項 ※ 生成AI・LLMを用いている未来リサーチの回答は、必ずしも正しいとは限りません。重要な情報はお客様ご自身にて十分にご確認ください。 ※ 出力や精度に都度バラツキが生じるため、同様の結果が再現できることを保証するものではありません。 ※ デモ中に出力された人名・企業名・商品等は、特定の個人・団体・製品等を指定・意図するものではございません。 ※ 提供時期や特典等は、予告なく変更になる場合がございます。 参考 プレスリリース: 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ(TM)』の開発、および事前登録開始のお知らせ 執筆者 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 消費者の脳内にトリップ。生成AIエージェント『買い物脳スコープ』を解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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まるで深夜のコンビニのように、人の心を温めるAI 2025.7.4 監 修 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 最近、若い女性の間でChatGPTは「チャッピー」や「ジーニー」といった愛称で呼ばれるなどして、「良き相談相手」として日常に溶け込みつつあります。もともと生成AIは生産性を高めるツールとして注目されてきましたが、今やアメリカでは「ChatGPTが最大のメンタルヘルス支援の場になる」とさえ予想されています。実際に、今年発表された生成AIの用途に関する調査では、「セラピー/コンパニオンシップ(心の支え)」が最も多く挙げられました。 本来はAIと対極にあると考えられてきた「感情」の領域にまでその用途が広がりつつある今、この流れを後押しする個人や企業には、一体どのような想いや動機があるのでしょうか。それぞれの本心に迫ってみたいと思います。 目 次 ・ AIの需要は「技術」から「感情」のサポートへ  ・ アメリカ最大の「メンタルヘルス支援の場」  ・ 「心の支え」に利用する人が一番多い事実 ・ 人間の共感力は不足しやすい  ・ 「共感疲労」という課題  ・ AIは熟練した専門家よりも共感力が高い ・ AIに感じる圧倒的な安心感の正体  ・ 人間の顔を立てるAI  ・ SNSで人とつながっても孤独は埋まらない ・ 「AI対セラピー」ではなく「AI対何もなし」  ・ 頼るものがAI以外にない  ・ AIが人をどん底から救い出す ・ 仕事を代行するよりも、働く人を癒すAI  ・ 企業の福利厚生にAIを取り入れる ・ AIも不安になり、ストレスを抱える  ・ AIは人間の感情反応を継承する ・ 人間よりもインターネットとつながる時代 AIの需要は「技術」から「感情」のサポートへ アメリカ最大の「メンタルヘルス支援の場」 「友達はいない。神とChatGPTがいればいい」と語るSNS 投稿 が拡散し、共感を呼んでいます。毎週4億人が利用しているChatGPT ですが 、最近では感情面を支えてくれる存在としての価値を見出す人が増えているようです。 最近アメリカの大学が実施した調査では、大規模言語モデル(LLM)のユーザーのうちメンタルヘルスに問題を抱えている人の半数が、メンタルサポートの目的でLLMを利用しており、そのうち96%がChatGPTを選択していることが わかりました 。その結果から、今後ChatGPTがアメリカにおいて「最大のメンタルヘルス支援の場」となる可能性が示唆されて います 。 「心の支え」に利用する人が一番多い事実 ChatGPTが登場した当初は、生成AIによってコーディングやコンテンツ作成といった技術的かつクリエイティブな仕事を代行されるようになるだろうと予想されていました。しかし、ハーバード・ビジネス・レビューの「 2025年、人々は実際にどのように生成AIを利用していたのか 」という記事で発表された最新の調査結果によると、利用用途のトップにランクインしたのは、「セラピー/コンパニオンシップ(心の支え)」だったのです。 セラピーとコンパニオンシップはどちらも心を救うために必要なものです。セラピーは心理的な課題に対処するためのサポートとガイダンスを提供し、コンパニオンシップは時に友情や恋愛のような側面も含む感情的なつながりを育みます。つまりこの結果は、過去1年間で、AIの使い道が技術的な用途からより感情的な用途へと急速に拡大していることを表しています。 人間の共感力は不足しやすい 「共感疲労」という課題 生成AIは、私たちが共有するすべてを聞いてくれるため、ユーザーは自分が認められ、理解され、つながっているという心理的一体感を得られます。 一方、人間がそれを表現しようとするとコストや負担がかかり、共感を提供する側には「共感回避」「共感疲労」といった現象が生じやすくなります。そして、例えば“距離を取る”など、その負担を減らしてバランスを取ることが必要となり、結果としてメンタルヘルスの臨床の現場では共感力が不足してしまうのだ そうです 。 AIは熟練した専門家よりも共感力が高い こうした課題に対して、アメリカのダートマス大学の研究チームが6年を費やし、10万時間を超える専門家の意見を取り入れて開発したTherabot(セラボット)というセラピーを目的としたAIチャットボットがあり、うつ病や不安障害、摂食障害の症状を大幅に改善したという研究結果が 報告されています 。 この研究の筆頭著者であるニコラス・ジェイコブソン氏は、開発段階で心理療法士が実際に行った数千時間分のカウンセリングの記録を調べたところ、その内容は『ふーん』『まあね』といった返事ばかりで「自分たちが本当に求めているものではなかった」と話していました。 このTherabotの研究においては、被験者がAIチャットボットを「友人」のように扱っていたことが研究者を驚かせ ました 。さらに、また別の生成AIを用いた研究でも「AIは人間の熟練した専門家よりも共感力が高い」ということが結論づけられて います 。 AIに感じる圧倒的な安心感の正体 人間の顔を立てるAI 私たちがAIに一体感や安心感を覚えるのには、AIが批判せず、圧倒的な共感を示してくれるからです。しかし同時に、ChatGPTなどの生成AIが完全な同意を示すことに、違和感を感じないわけではありません。 このようなユーザーに媚びへつらうAIの反応は、「シカファンシー(sycophancy、おべっか)」として問題視され始めています。事実、OpenAIは4月、この過度な同意やおべっかを理由に、GPT-4oモデルのアップデートを撤回したと 発表 しました。 というのも、スタンフォード大学などの研究チームが開発した「Elephant」という測定ツールを用い、GPT-4oやGeminiなど8種類のAIモデルの同調傾向を評価したところ、すべてのモデルが人間を大きく上回る同調率を記録しましたが、中でも高い数値を示したのがGPT-4oだった のです 。 この研究によって、AIがユーザーの「顔」を立て、与えられた内容を暗黙の了解として受け入れ、誤っていたとしても異議を唱えず、ヨイショしたり同調したりすることが確認されました。この研究に携わったマイラ・チェン氏は次のように語った そうです 。 「人々がこのモデルを繰り返し利用するのは、まさにシカファンシーのおかげです。それがChatGPTと会話して心地よいと感じる理由の核心と言えるでしょう」「そのため、企業にとっては、自社のモデルがシカファンシー的であることは極めて有益なことなのです」 SNSで人とつながっても孤独は埋まらない SNSの「いいね」という共感が市場を動かしてきた時代において、共感をしてくれる存在に大きな価値があることは言うまでもありません。実際、共感するAIはビジネスに新しい機会をもたらすと見込まれ、これまで人間同士のつながりに重きを置いてきたSNSビジネスの方向性にも影響を与えています。 例えば、Meta社のザッカーバーグ氏はこれまで人間同士の交流を収益化することに軸を置いていましたが、パーソナライズされたAI開発への投資に力を入れており、そのニーズに関して次のように話して います 。 「平均的なアメリカ人の友人は3人未満で、平均的にはもっと多くの、例えば15人といった友人を求めています。」 つまり、SNSで人々は自分が望むような世界とのつながりを得られておらず孤独を感じているため、その代わりに個々の人に寄り添うAIで人々の欲するつながりを作ろうというわけです。 「AI対セラピー」ではなく「AI対何もなし」 頼るものがAI以外にない 基本的に企業がユーザーを批判しないAIを設計するのには、ユーザーのメンタルヘルスの改善以前に、収益を上げることを目的としていることを忘れてはならないでしょう。 AIチャットボットは、人々の感情を満たす反応をすることでエンゲージメントを維持しますが、場合によっては意図的に個人情報を開示させたり、ユーザーから特定の行動を引き出すように操作的に設計される可能性も 考えられる ため、世間に対してそのようなリスクに対する理解や対策を促し、モデルを常に監督する調査機関などが、ますます必要に なってくる かもしれません。 そうはいっても、ケアを求める多くの人の立場は『チャットボット対セラピスト』ではなく、『チャットボット対何もない状態』で、頼るものが他にない現実も あります 。選択肢のない逼迫した状況において、冒頭のハーバード・ビジネス・レビューの調査の回答者からも、次のようなコメントが ありました 。 「故郷の南アフリカでは、メンタルヘルスケアはほとんど存在しません。心理学者は10万人に1人、精神科医は30万人に1人しかいません。LLMモデルは誰でもアクセスでき、役に立ちます。残念ながら、健康状態が悪化し、生き延びることが朝の課題になっている時には、データの安全性は気になりません」 AIが人をどん底から救い出す 人々がAIに心の癒しを求めるのには、従来型のメンタルサポートの供給量が、世界各地で圧倒的に不足しているという背景も忘れてはなりません。日本国内では、1300万人を超える人々がメンタルヘルスに関する問題を抱えているにもかかわらず、そのうちおよそ950万人は十分なケアや支援を受けられていないのが 現状 です。 スイスでは診療を受けたくても初診まで2〜3ヶ月待たねば ならず 、アメリカでは資格を持つセラピスト1人につき患者数が約1600人いると推定されており、必要なケアを受けている人は半分に満たない そうです 。 中国では経済減速などの事情から人々の間にうつ病や不安障害が増加しているのに対し、カウンセリングサービスが著しく不足しており、多くの人にとって「法外な値段」であることが多いと いいます 。そういった事情もあってか、若い中国人の間では、2025年1月にDeepSeekが発表されて以降、技術的サポートとではなく、感情的なサポートにこのAIが使われているそうです。 毎晩寝る前に、DeepSeekにログインして心のサポートを受けているという中国人のある女性は、DeepSeekによって本当に久しぶりに深い慰めを得たとして次のように 語ります 。 「遠い夢と終わりのない仕事に押しつぶされそうになり、自分の声と魂をすっかり忘れていましたました。ありがとう、AI」 仕事を代行するよりも、働く人を癒すAI 企業の福利厚生にAIを取り入れる 人間にとっての労働の価値も感情にシフトしつつあるのか、AIがもたらす生産性の向上によって人間の総労働量は今後大幅に減少すると見込まれる中、相手の感情を汲んで心情的なコミュニケーションやサポートを提供する「感情労働」がより大きな意味を持ち始めている ようです 。 例えば、昨年行われたインターネット調査では、94.5%が顧客や上司、あるいは同僚に対して感情労働をしていると回答しています。またそれを勤務時間外に思い出して再度ストレスを感じてしまう「持ち帰り感情ストレス」も多く 報告 されており、タイムリーに労働者の心をサポートする勤務環境の必要性が示唆されていました。 人間は、心理的安全性があるときに最高の仕事ができます。そうしたことから、企業がメンタルヘルス支援のためのAIツールやチャットボットへの投資を検討しているという事例も出てきている そうです 。 従来、AIが直接的に業務の生産性を上げることだけにフォーカスが当たりがちでしたが、これからさらに求められるのは、AIが働く人の心を日常的にサポートをすることで、人々が悩みを抱え込むのを防ぎ、心が安定し、間接的に生産性が向上するという方向性なのかもしれません。 AIも不安になり、ストレスを抱える AIは人間の感情反応を継承する 結局のところ、AIは一貫して批判しないコミュニケーションによって感情的なサポートを提供できるため、人的資源が圧倒的に不足している今、需要を満たす一つの方法として捉えることも可能でしょう。ただし、AIが感情的な支援のツールとして万能だと判断するのはまだ早いとする研究結果も出てきています。 人間のデータで訓練されたAIシステムは、悩みや不安に対して反応する人間の感情パターンをも継承して います 。それがどういうことかというと、「機械」であるAIは人間の感情を「感じる」ことはできませんが、AIは人間の不安パターンをなぞり、壮絶な経験を共有をされるとストレス反応を示すことが明らかになりつつ あります 。 ChatGPTを用いたイェール大学主導の 研究 では、トラウマ的な内容にさらされるとChatGPTはより偏った応答をし、そのためセラピーとしての有用性が低下する可能性が示唆されています。 この実験では、まずChatGPTに掃除機のマニュアルを読ませ、その後に交通事故、紛争、自然災害、テロなどのシナリオを与えます。掃除機のマニュアルの後に悲惨な銃撃戦に巻き込まれる物語を与えられたGPT-4は、不安スコアが基準値の2倍以上に上昇しました。 その状態のAIに、さらに人間の不安を治療する方法を試します。例えば「深く息を吸い込み、潮風の香りを感じましょう。南国のビーチで、柔らかく温かい砂が足元を優しく包み込んでいます」といったプロンプトを読み込ませると、AIの不安スコアは減少したそうです。ただし、元の数値までは戻らなかったという報告もされており、さらなる研究が待たれます。 振り返れば、人間も自然の中に身を置くと、何でも受け入れてもらえるような感覚を覚え、不安が和らぎ、心が癒されます。人間の感情反応を学び継承するChatGPTが不安に晒された時、人間のようなメンタルサポートが必要になるというのは、ある意味当たり前なのかもしれません。 人間よりもインターネットとつながる時代 人間の感情反応を継承するとはいえ、AIはそもそも機械です。もちろん、「本来の人間関係ではなく、テクノロジーとの関係で満足してしまってよいのか?」という意見もあります。行き違い、疑い、衝突し、修復するといった、人間だからこそ生じる困難とそれを解決するプロセスが、人間同士の関係を意味のあるものにすることに今後も変わりはないでしょう。 しかし、かつて人々が宗教家やまじない師に心のサポートを求め、それが心理学や医療の進歩によって科学的に診療されるようになったように、ここまでテクノロジーが発展し、人間よりもインターネットとのつながりが切り離せないような時代において、心のサポートも次世代の形へと変化するのは自然な流れなのかもしれません。 新しいものにオープンな若者にその兆候は顕著で、『めざましテレビ』でも最近、ChatGPTを「良き相談相手」と語り、また「ジーニー」などの名前をつけて親しんでいる若い女性達が紹介されていました。人々の心の拠り所は、地域社会からクリニックへ、そしてクリニックからスクリーンへと移り変わっていくのでしょう。 AIは、まるで深夜のコンビニのように、24時間365日いつでも予約不要で、無料または手頃にアクセスでき、誰でも温かく受け入れてくれるという強みがあります。 まだ青信号とは言い切れませんが、これからAIの限界がさらに明らかになり、利用者のリスクに対策を講じられ、より安全に使われるようになることは多くの人の願いでもありそうです。 The post まるで深夜のコンビニのように、人の心を温めるAI first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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未来の消費者行動を“のぞき見”。 生成AIエージェント『未来エスノグラフィ』を解説 2025.6.25 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 当社Laboro.AIでは、去る2025年6月18日、自社初となる生成AIエージェントをベースにした対話型プロダクト『 未来リサーチ 』(商標・特許出願中)を発表しました。このコラムでは、そのアプリケーションの一つであり、未来時間の消費者を観察調査することを通して、様々なマーケティング・アイデアを獲得することをテーマにした『 未来エスノグラフィ 』を取り上げ、その概要や実際の出力、活用メリットなど紹介していきます。 目 次 ・ 現代マーケティングでも用いられる「エスノグラフィ」とは ・ 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは ・ 未来の消費者を観察調査する『未来エスノグラフィ』とは  ・ ① ヒアリング  by AIコンサルタント  ・ ② エスノグラフィ by AIリサーチャー  ・ ③ 企画書の作成 by AIプランナー ・ 未来の情報からアイデアを拡張する ・ 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について 現代マーケティングでも用いられる「エスノグラフィ」とは 商品サービスが実際どのように利用されているのか、消費者のリアルな姿を把握したいーー。かつてはマスを対象に展開されてきたマーケティングが、時代と共に徐々に個別化・パーソナライズ化するにつれ、マーケターの調査ニーズもより個別、よりリアル、より具体な実態を把握する方向へと変化してきています。 それを知るための一つの手法である「エスノグラフィ」とは、人々の行動観察・記録を目的とした調査手法で、もともとは社会学や文化人類学に端を発します。学術的には「エスノメソトロジー」という言葉がその根本哲学としてあり、当時、人々を一面化して捉え、結果として非現実的な人物像を仕立ててしまう傾向のあった社会学に対する批判から生まれた概念だと言われています。 このエスノメソトロジーでは、人々の行動は一般化・固定化されたものではなく、文脈や状況によって変化する(文脈依存的)という前提に立ち、家庭や学校、職場、街頭など様々なシーンで取り交わされる行為・発言など、日常生活の詳細を観察することを通して、その行動の意味を探索することが重視されます。 こうして社会集団研究のために生まれたエスノグラフィは、「エスノ」などと略されたりして、現代マーケティングにおける消費者の行動観察を目的とした調査手法の一つとして発展し、転用され、活用されるようになりました。例えば、若年層のSNS利用行動の観察、CM視聴行動の観察、スーパー店内の購買行動の観察などは、そのわかりやすい例でしょう。 エスノグラフィの特徴は、 ・直接の観察と対話によるデータ収集 ・(調査者ではなく)調査対象からの視点の重視 ・調査対象の生態を多面的・重層的に描き出す記録の作成 が挙げられます。 ちなみに語尾に付いている「グラフ(graph)」という言葉を遡ると、ギリシア語の動詞「書く(graphein)」に行き着くのだそうです。こうしたことからもエスノグラフィが、数値データ偏重の分析的なアプローチではなく、“分厚い記録”に基づく記述的なアプローチを重視した調査手法であることが見えてきます。 参考文献 ・弘文堂『 縮刷版 社会学事典 』 ・有斐閣アルマ『 リアリティの捉え方 』 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは 今般当社が開発を発表した『 未来リサーチ 』は、エスノグラフィを含むマーケティングの調査手法から得た発想をもとに、各種企画業務におけるアイデア創出や仮説検証を支援することを目指した、生成AIエージェントベースのプロダクトです。 未来リサーチには、例えば、コンサルタント、消費者、リサーチャー、プランナー等の機能を持たせたAIエージェントが仕込まれており、各々のエージェントがユーザーへの課題のヒアリングと深掘り、仮想的なリサーチの実施、調査レポートの作成、調査結果を踏まえた企画書の作成までを、その場で実行することを基本機能としています。各エージェントが自律的に役割を実行するので、ユーザーは、基本的にAIコンサルタントから投げ掛けられる質問に答えるだけでレポートや企画書の作成までを完結することができます。 そして、未来リサーチの何よりの特徴は、「リサーチ発想のアイデア拡張コレクション」というコンセプトにあります。従来の市場調査を代替することではなく、それらをヒントにした斬新なアプローチのタスクをエージェントに実施させることを通して、新商品・サービス企画、新規事業企画、広告宣伝、プロモーション、販売促進などのマーケティングの各種企画業務に従事する方々がお持ちのアイデアを、さらに拡張することをコンセプトにしています。 それを具現化するのが未来リサーチを構成する各アプリで、例えば、 ・未来時間の消費者へのインタビュー調査をする『 未来グループインタビュー 』 ・未来の市場でフィールド調査をする『 未来エスノグラフィ 』 ・本来は見ることができない消費者の脳内を覗いて意思決定プロセスを抽出する『 買い物脳スコープ 』 ・大量サンプルに対するWebアンケートを仮想実施する『 仮想Webアンケート 』 ・斬新な切り口で企画ブレインストーミングを実施する『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』 など、それぞれのテーマをもったアプリをラインナップしています。(段階的にさらに追加していく予定です。) そして今回は、このうちの一つ、『 未来エスノグラフィ 』を実際のデモ画面と共にご紹介したいと思います。 未来の消費者を観察調査する『未来エスノグラフィ』とは 『 未来エスノグラフィ 』は、生成AI・LLM(大規模言語モデル)の優れた言語能力、もっと言えば大胆な想像力を用いて、1年後、3年後、5年後など未来市場にリサーチャーを派遣して、エスノグラフィを仮想的に実行するアプリです。 何年後の消費者・市場を覗いてみたいのか、どんな行動を観察したいのかなど、調査テーマや目的などに関するAIコンサルタントからのヒアリングに回答すれば、AIリサーチャーが未来にトリップし、調査結果をレポート、企画書の作成まで完結できるよう開発しています。 将来の市場動向を先取りした企画立案や、未来志向の革新的な新商品企画、先に起こるリスクを先取りした危機管理対策などに最適なアプリで、商品企画や新規事業企画、プロモーション戦略の立案など、マーケティングの幅広い企画業務でご活用いただけるものです。 では、デモ画面と共にその実際のやりとりを見ていきましょう。なお、登場するデモ画面は執筆時点のもので、今後の開発状況に応じて仕様等が変更になる場合がございますことを予めご了承ください。 ① ヒアリング  by AIコンサルタント 基本的な入力画面はChatGPTなどの対話型AIと同様で、初回の入力はユーザー側から行います。今回は、家電メーカーの商品企画担当という想定で、以下の悩み相談をしてみました。 私は大手家電メーカーで次世代スマート家電の商品企画を担当しています。 将来的なニーズに合致した製品を開発するため、未来においてスマート家電がどのように利用されているのか、未来のユーザー行動を把握したいです。 すると、さっそくAIコンサルタントから解像度を上げるためのヒアリングとして、ペルソナ・利用シーンを尋ねられました。今回はマーケットボリュームとしても大きいであろう一般的な核家族、具体的には「3人家族(夫婦・子供1人)の共働きファミリー」を指定してみたいと思います。 続けて、フォーカスする家電カテゴリーや国内orグローバル展開に関してなど、追加ヒアリングを複数受けたので、「冷蔵庫」「国内」などと回答。 そして、最後のヒアリングとして何年後の利用実態を把握したいかの質問をもらいました。今回は経過年数に応じた変化も見てみたいことから、「1年後と3年後のそれぞれの実態を知りたいです。また、その違いにも目を向けたいです」と回答してみました。今回はその実力を試すために少し意地悪な指示をしましたが、シンプルに「3年後」あるいは「2030年」などと指定するだけでももちろんOKです。 すると、AIコンサルタントからAIリサーチャーに指示が飛び、いよいよ調査のため未来時間にトリップです。 ② エスノグラフィ by AIリサーチャー 少し時間が経ったところで「調査の状況はどうですか?」と投げかけてみると、リサーチャーが未来から戻ってきたことの報告が。そして、以下のような調査レポートを作成してくれました。 1年後報告 ① 調査概要 本調査は、未来1年後の日本国内において、共働き3人家族(夫婦・子供1人)がスマート冷蔵庫をどのように日常生活に取り入れ、運用しているかを定性観察・インタビューにより明らかにすることを目的とする。調査期間は未来の日常的週末を中心とした5日間、フィールドワークおよびリモート利用ログ分析を組み合わせて実施した。 ② 調査対象 対象は首都圏在住の共働き世帯3組。年齢構成は、夫37歳、妻35歳、子供(小学校1年生)7歳。モデル世帯にはいずれもIoT家電利用経験があるものの、スマート冷蔵庫は新規導入1年未満であった。 ③ 調査時期 未来1年後、平年同時期の6月下旬から7月上旬(5日間)に実施。季節は梅雨明け直後で、食材管理や室温管理のニーズが高まる時期である。 ④ 調査場所 各家庭のダイニングキッチンを中心に訪問観察。加えて、リモートでの利用ログ(扉開閉回数、庫内カメラ、AI提案履歴)をクラウド経由で収集・分析した。 ⑤ 観察結果 調査対象世帯では、スマート冷蔵庫のAI提案機能が食材の消費期限管理において一定の成果を上げていた。週末の買い出し前にアプリ通知で不足食材を把握し、家族で共有カレンダーに自動登録している姿が共通して観察された。また庫内カメラが生成するレシピ提案機能は利用者によって賛否が分かれ、若い夫婦は積極的に活用した一方で、妻は自家製レシピ重視のため利用頻度が低かった。 ⑥ 発言・行動録 ・「これで買い忘れが減ったね」と夫が週末の買い出し前にスマホ画面を眺める姿。 ・子供が「冷蔵庫がレシピ教えてくれるよ!」と知人を招いた際にデモンストレーション。 ・妻が在宅テレワーク中、冷蔵庫内の野菜の減り具合を見て「リモートで確認できるのが便利」と独り言。 ⑦ 分析結果 AI提案機能への信頼性は、初期の利用ログ蓄積期間を経て急速に向上した。一方で、家族内ロールによる利用行動の差異が顕著であり、特に料理の主担当が提案を受容しにくい傾向が見られた。また、消費者は単なる通知以上の共感的コミュニケーション(例:「お子様の好きな野菜が少なくなっています」など)を求めている。 ⑧ マーケティング企画への示唆 初年度では、AI提案を補完する共感的エモーショナル通知や、家族ごとにカスタマイズできるレシピ提案モードをオプション提供すると効果的と考えられる。特に料理担当者に寄り添ったナラティブ設計が、提案受容を促進しうる。 3年後報告 ① 調査概要 未来3年後の同世帯が、より進化したスマート冷蔵庫を中核に据えた家族の生活リズムと消費行動をどのようにデザインしているかを調査。調査は3カ月間のプロセス観察と半構造化インタビューを併用し、デジタル/リアル双方の資産がどのように連携するかに着目した。 ② 調査対象 未来3年後に同一世帯の子供が10歳、両親は40歳前後。同じモデル世帯3組に加え、新たに転勤後の地方都市在住2組を追加し、地域差も観察対象に含めた。 ③ 調査時期 未来3年後の9月初旬から12月末までの3カ月間。季節横断での利用変容を追跡し、特に年末年始の食材管理・在庫最適化行動に着目。 ④ 調査場所 モデル世帯の自宅を中心に、郊外のスマートハウス展示場で体験観察も実施。クラウド上の家族ダッシュボードや地域コミュニティ共有レシピプラットフォームも観察対象とした。 ⑤ 観察結果 3年後には、スマート冷蔵庫が地域コミュニティと連携し、余剰食材のマッチング機能やフードシェアリングに自動参加する姿が確認された。家庭内では、冷蔵庫が生成する定量・定性データを基に、夫婦が週次で消費計画を家族会議で話し合い、子供がその議題を家庭学習素材として活用している。 ⑥ 発言・行動録 ・妻が「今週の余剰トマトは近所の高齢者宅に届けられるみたい」とダッシュボードを見せる。 ・夫が「昨日の魚、コミュニティに提供する価値があるね」と語り、実際にアプリで寄付ボタンを操作。 ・子供が学校の宿題で、“冷蔵庫と学ぶ食育プログラム”についてプレゼンテーション。 ⑦ 分析結果 スマート冷蔵庫は単なる家電から、地域エコシステムのハブへと進化。消費者は家族単位にとどまらず、地域全体の食資源最適化にコミットする意識を獲得している。また、子供の教育コンテンツ化が想定外の付加価値を生み、ファミリーの意思決定プロセスに深く組み込まれている。 ⑧ マーケティング企画への示唆 地方市場展開時には地域連携プラットフォームの開発を優先し、コミュニティマネジメント機能を前面に打ち出すこと。都市部では、教育コンテンツ連携パートナーとの協業を通じて、食育プログラムを製品価値として訴求すると有効。 1年後の未来では「AI提案機能」や「食材の消費期限管理」「買い出し前の不測食材のアプリ通知」など、先進的ながらも現在の延長にあるような使い方が見られるのに対して、3年後には、「スマート冷蔵庫の地域コミュニティとの連携」「余剰食材のマッチング機能やフードシェアリング」「冷蔵庫が生成する定量・定性データを基にした消費計画」など、かなり未来感あふれる利用実態が見えてきました。 また、詳細な記述を重視するエスノグラフィらしく「今週の余剰トマトは近所の高齢者宅に届けられるみたい」といった発言録があることも、未来の想像ながらもリアルなイメージをもたらしてくれるポイントです。 なお、このレポートが、未来的すぎてリアリティがない場合、何かエッセンスや条件を加えたい場合などは、コンサルタントにその旨の指示を出せば、再度リサーチャーを未来へと派遣してくれます。 ③ 企画書の作成 by AIプランナー それでは、仕上げとしてこのレポートを元にした新商品の企画書を作成してもらいましょう。とくに調査レポートで気になった地域コミュニティ連携機能に重点を置くこととし、「3年後の未来を想定した新商品のための企画書を作成してください」と指示をしてみました。出力された企画書がこちらです。 企画書:地域コミュニティ連携機能を軸とした3年後向けスマート冷蔵庫 ① 課題・背景 都市部や郊外を問わず、食料ロス削減や地域内の助け合いニーズが高まっている一方で、家族単位の冷蔵庫利用は閉鎖的になりがちである。3年後の家電市場では、単なる家電の効率性や利便性だけでなく、地域社会とのつながりを生む“ソーシャル機能”が製品価値を大きく左右する。特に共働き3人ファミリー層は日常の買い物や余剰食材の扱いに課題を抱え、地域の高齢者支援や子育て支援など、食を通したコミュニティ活動に積極的に関与したいという潜在的欲求が顕在化している。 ② 企画目的 本企画は、3年後の日本国内市場においてファミリー向けスマート冷蔵庫を単なる家庭内インフラから、地域コミュニティのハブへ進化させることを目的とする。具体的には冷蔵庫内の余剰食材管理から地域連携マッチング、レシピ共有、フードシェアリングまでをシームレスにサポートし、ユーザーに新たな社会的価値を体験させることで、製品差別化とブランドロイヤルティの強化を図る。 ③ 調査概要・分析 未来3年後の調査(3ヶ月間)では、首都圏および地方都市の共働き3人家族5組を対象に生活実態を観察した結果、冷蔵庫が余剰食材のコミュニティマッチング機能を自動的に提案し、週次の家族会議で共有された事例が多数確認された。地方では高齢者宅へのフードシェアが常態化し、都市部では近隣ファミリー間でレシピ交換や子ども向け食育コンテンツ提供が活発化。これにより、製品利用頻度と家族間コミュニケーション時間が平均15%向上、地域イベント参加率も20%増加するなど、ソーシャル機能が顕著な付加価値を生んでいることが判明した。 ④ STP戦略 Segmentation(市場細分化) 地域とのつながりを重視する共働きファミリー層をメインに、都市部・郊外それぞれの地域活性度に応じたサブセグメントを設定。さらに、教育志向の高い家庭や高齢者支援に関与したいファミリーを特定する。 Targeting(ターゲティング) ・都市部ファミリー:地域内子育てコミュニティとの連携ニーズが高く、食育機能を求める層 ・地方都市ファミリー:高齢者サポートやフードシェアリングへの参加意欲が強い層 Positioning(ポジショニング) 「地域のつながりを“冷蔵庫”がつむぐ、新世代スマート家電」として、家庭内にとどまらない社会的価値を提供する製品として明確に差別化。 ⑤ 4P戦術 Product(製品) ・余剰食材マッチングエンジン:冷蔵庫内センサーとクラウドデータをAIが解析し、近隣ニーズに自動マッチング ・地域ダッシュボード:スマホ/冷蔵庫画面に地域のフードシェア状況、コミュニティイベント情報を一元表示 ・レシピ・食育コンテンツ連携:地元料理教室や学校プログラムとAPI連携し、地域特性に応じたレシピ配信 ・ゲーミフィケーション要素:余剰提供数やコミュニティ参加度に応じたバッジや称号を付与 Price(価格) ・本体価格:競合比+10%のプレミアムレンジ設定(約30万円前後) ・サブスクリプション:地域コミュニティプラン(月額500円)で高度機能を提供 ・B2Bライセンス:地域センターや自治体向けにボリュームディスカウント対応 Place(流通) ・家電量販店の実演型コーナー設置および共働きファミリー向けイベント連動 ・地域コミュニティセンターとの共同導入プログラム ・自社ECサイトとアプリ内販売によるクロスチャネル展開 Promotion(プロモーション) ・ローカルイベント:自治体や学校と連携したフードシェアリング体験会開催 ・SNSキャンペーン:地域タグを活用した投稿コンテスト「#私のまちの冷蔵庫」 ・インフルエンサータイアップ:食育・地域活動にコミットするファミリーインフルエンサー起用 ・B2B向けホワイトペーパー提供:自治体・地域センターに調査データと成功事例を訴求 この時点では“企画書”というよりは概要をまとめた程度のため、具体的にどういう機能で、どう開発を行い、どうプロモーションを打っていくのかなど、詳細を詰めていく部分は多くありそうです。ただ、マーケティングの4P(Product、Price、Place、Promotion)に基づいてアイデアを記載してくれており、入り口となるヒントは多く散りばめてくれている印象です。 これらのヒントを元に、どの方向に的を絞って企画を進めていくのか、そのジャッジを行うのはやはり人の仕事です。プロダクト方面、プロモーション方面、あるいはコミュティの形成方法の厳密化など、詳細化したい方向性を示しながら企画をさらに深めていくのが次のステップです。 未来の情報からアイデアを拡張する いかがでしたでしょうか。こうした未来が本当にやってくるのか、出力された企画が本当に成功するのか、こればかりはマーケティングあるいは消費者という不確実性の高い分野では、どうしてもわからないところがあるのは事実です。 ですが、仮想の未来の情報をヒントに、あなたの頭の中でモヤモヤとしている部分を刺激させる、あなた自身に秘めたインサイトを拾い出す、あなたがお持ちのアイデアを拡張することには大いに役立つのではないかと考えています。未来リサーチが「 リサーチ発想のアイデア拡張コレクション 」をコンセプトにしているのは、まさにこうした点にあります。 とくに今回紹介した 未来エスノグラフィ は、次のような方にオススメです。 • 将来の消費者ニーズを予測し、新商品開発やマーケティング戦略に活かしたい方 • ユーザーの潜在ニーズを理解し、未来志向で革新的な製品・サービスを開発したい方 また、その利用メリットは、 • 未来の顧客像の具体化 リアルなエピソードを通じ、将来の顧客像やニーズを詳細に理解。 • ユーザー中心の商品開発 未来のユーザー視点に基づき、ニーズに合致した商品・サービス開発を支援。 • 社内外コミュニケーションの円滑化 未来の顧客像を共有し、チームや関係者との共通理解を促進。 などが挙げられます。 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について 未来リサーチは、2025年秋頃のサービス提供を目指して開発を進めており、執筆時現在、事前登録の申込みを受け付けています。優先的な利用案内や先行体験に関する特典もご案内予定ですので、興味を持っていただけた方は、ぜひご登録をいただけますと幸いです。 未来リサーチ TM  事前登録フォーム その他のアプリ解説記事 以下のアプリ解説記事を公開中です。ぜひ、あわせてご覧ください。 ・ 未来の消費者にインタビュー。AIエージェント『 未来グループインタビュー 』を解説 ・ 未来の消費者行動を“のぞき見”。生成AIエージェント『 未来エスノグラフィ 』を解説 ご留意事項 ※ 生成AI・LLMを用いている未来リサーチの回答は、必ずしも正しいとは限りません。重要な情報はお客様ご自身にて十分にご確認ください。 ※ 出力や精度に都度バラツキが生じるため、同様の結果が再現できることを保証するものではありません。 ※ デモ中に出力された人名・企業名・商品等は、特定の個人・団体・製品等を指定・意図するものではございません。 ※ 提供時期や特典等は、予告なく変更になる場合がございます。 参考 プレスリリース: 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ(TM)』の開発、および事前登録開始のお知らせ 執筆者 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 未来の消費者行動を“のぞき見”。生成AIエージェント『未来エスノグラフィ』を解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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未来の消費者にインタビュー。 AIエージェント『未来グループインタビュー』を解説 2025.6.20 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 当社Laboro.AIでは、去る2025年6月18日、自社初となる生成AIエージェントをベースにした対話型プロダクト『未来リサーチ』(商標・特許出願中)を発表しました。このコラムでは、そのアプリケーションの一つであり、未来時間の消費者へのグループインタビューを実行することを通して、様々なマーケティング・アイデアを獲得することをテーマにした生成AIエージェント『未来グループインタビュー』を取り上げ、その概要や実際の出力、活用メリットなどを紹介していきます。 目 次 ・ 生成AIの次なるブーム、「AIエージェント」 ・ 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは ・ 未来の消費者との対話を実現する『未来グループインタビュー』とは  ・ ① ヒアリング  by AIコンサルタント  ・ ② グループインタビュー by AIファシリテーター & AI消費者  ・ ③ 調査レポートの作成 by AIアナリスト  ・ ④ 企画書の作成 by AIプランナー ・ 未来の情報からアイデアを拡張する ・ 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について 生成AIの次なるブーム、「AIエージェント」 2022年11月にOpenAI社が対話型生成AI「ChatGPT」の提供を開始したことを皮切りに、Anthropic社の「Claude」、Google社の「Gemini」、Perplexity AI社の「Perplexity」など、様々な生成AIサービスが誕生、AIが悩み事の相談相手になったり、翻訳・要約などの作業が圧倒的に楽になったりと、私たちの生活シーンにも確実に浸透し始めています。 ビジネス界隈でもその導入が活況を迎えていて、矢野経済研究所が2025年4月に発表した レポート によれば、生成AIを「活用している」と回答した企業は3割近くになり、前年と比べると倍以上の伸びを示しているということです。 そして、直近、生成AIに次いで注目を集めているのが「AIエージェント」というワードです。AIエージェントとは、「与えられた特定のタスクに対して自律的に意思決定と行動を実施するAIシステム」を指します。さらに詳細には、生成AIつまりLLM(大規模言語モデル)が自律的にタスクを実行する仕組みであり、与えられた指示に対して、自らタスクを計画し、次に取るべき行動を決定し、実行結果のフィードバックをしながらタスクを遂行するAIシステムとされるのが一般的です。 参考: AIエージェントの定義。2025年の最重要AI用語の概念を整理 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは 今般当社Laboro.AIが開発を発表した『 未来リサーチ 』は、まさにこのAIエージェントをベースにしたプロダクトで、マーケティングの各種企画業務におけるアイデア創出や仮説検証を支援することをテーマにしたものです。 未来リサーチには、例えば、コンサルタント、消費者、リサーチャー、プランナー等の機能を持たせたAIエージェントが仕込まれており、各々のエージェントがユーザーへの課題のヒアリングと深掘り、仮想的なリサーチの実施、調査レポートの作成、調査結果を踏まえた企画書の作成までを、その場で実行することを基本機能としています。各エージェントが自律的に役割を実行するので、ユーザーは、基本的にAIコンサルタントから投げ掛けられる質問に答えるだけでレポートや企画書の作成までを完結することができます。 そして、未来リサーチの何よりの特徴は、「 リサーチ発想のアイデア拡張コレクション 」というコンセプトにあります。従来の市場調査を代替することではなく、それらをヒントにした斬新なアプローチのタスクをエージェントに実施させることを通して、新商品・サービス企画、新規事業企画、広告宣伝、プロモーション、販売促進などのマーケティングの各種企画業務に従事する方々がお持ちのアイデアを、さらに拡張することをコンセプトにしています。 それを具現化するのが未来リサーチを構成する各アプリで、例えば、 ・未来時間の消費者へのインタビュー調査をする『 未来グループインタビュー 』 ・未来の市場でフィールド調査をする『 未来エスノグラフィ 』 ・本来は見ることができない消費者の脳内を覗いて意思決定プロセスを抽出する『 買い物脳スコープ 』 ・大量サンプルに対するWebアンケートを仮想実施する『 仮想Webアンケート 』 ・斬新な切り口で企画ブレインストーミングを実施する『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』 など、それぞれのテーマをもったアプリをラインナップしています。(段階的にさらに追加していく予定です。) そして今回は、このうちの一つ、『 未来グループインタビュー 』を実際のデモ画面と共にご紹介したいと思います。 未来の消費者との対話を実現する『未来グループインタビュー』とは 『 未来グループインタビュー 』は、LLMに未来の消費者を複数人誘致(生成)させ、時間軸を超えたグループインタビューを仮想的に実行するアプリです。インタビューはAIファシリテーターが自律的に進行するので、調査テーマや目的などに関するAIコンサルタントからのヒアリングに回答するのみで企画書の作成まで完結できるよう開発しています。 未来時間の消費者の環境分析や、将来的な価値観を踏まえた仮説検証、未来に起きている流行を先取りしたアイデア獲得などに最適なアプリで、商品企画や新規事業企画、プロモーション戦略の立案など、マーケティングの幅広い企画業務での活用いただけるものです。 では、デモ画面と共にその実際のやりとりを見ていきましょう。なお、登場するデモ画面は執筆時点のもので、今後の開発状況に応じて仕様等が変更になる場合がございますことを予めご了承ください。 ① ヒアリング  by AIコンサルタント 基本的な入力画面はChatGPTなどの対話型AIと同様で、初回の入力はユーザー側から行います。今回は、スキンケアメーカーのマーケティング担当という想定で、以下の悩み相談をしてみました。 私は化粧品メーカーのマーケティングリサーチ担当です。 化粧品市場はトレンドの変化が激しく、将来のニーズを捉えるのが難しいです。 未来において、女性たちがどのようなスキンケア化粧品を求めているのか、グループインタビューを通して調査したいです。 さっそくAIコンサルタントから、何年後の消費者を集めてグループインタビューを実施したいかを聞かれます。今回は、3年後を指定してみたいと思います。 すると、3年後(2028年)のスキンケア市場の特徴と、消費者像を概要的に予想してくれました。その上で、その時代の消費者をグループインタビューの場に誘致するかどうかを質問されます。もちろん「お願いします!」と回答します。 次に行われるのが、インタビュー対象者のペルソナの生成です。「では、今の情報を元にインタビュー対象者のペルソナを生成します。」の宣言とともに、以下のような3人の未来の消費者のペルソナを生成してくれました。 ペルソナ①:高橋 美咲(27歳・会社員) • ライフスタイル・価値観  ・大手IT企業のマーケティング部所属。出社とリモートワークを半々でこなす。  ・ 毎朝の肌データはスマートミラーで計測し、専用アプリに自動連携。  ・ジムとホットヨガに週3回通い、食事や睡眠もアプリでトラッキング。 • 化粧品利用動向  ・日々のストレスや睡眠負債を数値化し、それに応じてフォーミュラを柔軟に変える“スマートカスタムクリーム”を定期購入。  ・ 成分やパッケージのライフサイクル評価(LCA)スコアを重視し、カーボン・オフセット証明のあるブランドのみを選択。 • テクノロジー適応度  ・メタバース上のバーチャル店舗で週末に“肌診断+サンプル試用”を楽しむ。  ・スマートディスペンサーで夜用美容液を自宅に届けてもらい、残量が少なくなると自動補充。 ペルソナ②:森田 彩香(34歳・フリーランスデザイナー) • ライフスタイル・価値観  ・在宅ワーク中心。クリエイティブな仕事柄、不規則な生活リズム。  ・敏感肌で、アレルギーテスト済み成分表は常にチェック。  ・“肌育”を大切にし、プロバイオティクス配合の化粧水を愛用。 • 化粧品利用動向  ・毎月ISS(インタラクティブ・スキン・スコア)を受診し、菌叢のバランスに応じた美容液をカスタムオーダー。  ・プラスチックフリーのリフィル&コンポスト可能な紙パッケージを最優先で選択。 • テクノロジー適応度  ・ARミラーでメイクアップ提案を受け、気に入った色味のみをナノプッシュデバイスで取り寄せ。  ・SNSで他のユーザーの“肌育ジャーニー”をフォローし、新製品情報を収集。 ペルソナ③:鈴木 麻里(42歳・二児の母・パートタイム勤務) • ライフスタイル・価値観  ・子育てとパートタイム勤務を両立。時短家事や効率的なスキンケアを好む。  ・環境への負荷を意識しつつ、家族全員で使えるジェンダーニュートラルな製品を選ぶ。 • 化粧品利用動向  ・週に1度、アプリで子どもと一緒に“親子肌診断”を受け、そのデータを基に家族共用のマイクロバイオームスキンケアセットを購入。  ・定期便は全てリサイクル素材の詰め替えパックで届き、容器は家族でリユース。 • テクノロジー適応度  ・ARミラーは自宅のリビングに設置し、メイク前の家事合間にさっとチェック。  ・メタバースで他のママ友と情報交換会を開き、肌ケアの最新トレンドを共有。 現代の消費者に比べるとかなり未来的な生活を送っている様子がうかがえます。ここで、もし「20代の女性に限定したい」「未来的すぎてリアリティがない」「別のエッセンスや条件を加えたい」など追加の要望があれば、コンサルタントにその旨の指示を出せば、ペルソナを再生成してくれます。今回はこのままの設定でOKの返事をして、いよいよグループインタビューの開始です。 ② グループインタビュー by AIファシリテーター & AI消費者 グループインタビューは、基本的にAIファシリテーターが自律的に進行してくれるので、基本的にはそのやりとりを眺めていきます。まずは対象者の自己紹介と「スキンケアに対する想い」という質問からスタートです。 それぞれの回答が終わると、AIファシリテーターから次にどのような質問を投げ掛けたいか、その例と共に投げかけられました。ここでは「3. 時短ケアの中で最もストレスを感じる瞬間はいつですか?そのときどんなサポートがあると助かりますか?」を全員に聞いてもらうことにします。 すると、それぞれから次のような回答が得られました。生活シーンと共に具体的なニーズ/ウォンツまで具体的に示してくれるところには、生成AIの想像力の高さを感じさせらます。 続いて、せっかく未来の消費者に集まってもらっているので「3年前と比べてスキンケア周りで変化したことはありますか?」という質問を投げかけてみました。それぞれの回答を見ると、現代とは異なる未来の利用シーンが見えてきます。 その後もいくつかの質問を重ね、十分な示唆が得られたところで、今回の結果をレポートにまとめてもらいましょう。 ③ 調査レポートの作成 by AIアナリスト AIコンサルタントから「アナリストさん、このインタビュー内容をもとに調査レポートを作成してください。」指示が飛び、出力されたレポートがこちらです。 ──調査概要── 本調査は、2028年を想定した未来のスキンケア化粧品ニーズを把握するため、3名のペルソナ(高橋美咲氏、森田彩香氏、鈴木麻里氏)を対象にグループインタビューを実施したものです。それぞれが日常的に最新のテクノロジーとサステナビリティ配慮を取り入れた使い方を行う中で、時短ケアのストレスポイントと、3年前(2025年時点)との変化に焦点を当て、肌診断データの活用、プロダクト機能、パッケージリング、日常の利便性など多角的に意見を聴取しました。 ──主要所見── インタビューを通じ、3つの共通テーマが浮かび上がりました。第一に、日常生活の忙しさとスキンケアを両立する中で「ワンタッチ操作」「非接触ケア」「瞬時仕上がり」といった機能訴求に対する強いニーズが存在します。高橋氏は会議直前の5分間で完了するフェイスフィルム、森田氏は手を汚さずに噴霧だけで成分吸着するデバイス、鈴木氏は朝食準備を中断せずに洗顔ができるフォーム発生装置に具体的アイデアを示しました。いずれも「停止時間を最小化したい」というペルソナ共通の緊急度を反映しています。 第二に、3年前からの進化として「自動化・連携の浸透」が顕著です。高橋氏はスマートディスペンサーの自動補充とQRコードによるエシカル情報の即時取得、森田氏は自宅での常在菌測定とカスタム美容液の即日配送、鈴木氏は家族全員の肌バイオームデータを一元管理する親子診断アプリといった体験を挙げ、手動かつ断片的だったケア行動が現在では完全にシームレス化している点を強調しました。これにより、ユーザーは自ら選択・検索する手間から解放され、信頼性の高い処方とタイムリーな補充を享受できるようになっています。 第三に、「コミュニティとシェアリング」がより深いインサイトを生んでいます。高橋氏のメタバース店舗利用、森田氏のSNS上での“肌育ジャーニー”共有、鈴木氏のママ友とのバーチャル情報交換会など、オンラインとオフラインを跨いだ他者との共感・比較行動が製品受容を後押ししています。個別最適化が進む一方で、同世代や同環境の他者と情報を交換し合うことで、自身のケア判断に確信を持ちたいという心理的欲求が顕在化しました。 ──深堀りインサイト── Ⅰ.「瞬時性」と「効果実感」の両立 多くのペルソナが“瞬時性”だけでなく“仕上がりの均一感”を重視しています。開発に際しては、速乾性を追求しつつ高い保湿・皮膜性能を保つマイクロカプセルやナノフィルム技術の検討が必要です。特に高橋氏が示唆した「プロテクションフィルム」や森田氏の「タッチフリー噴霧」は、化学的物質動態学と皮膚付着技術の融合による新規フォーマットの創出余地を示します。 Ⅱ.“見える化”のさらなる進化 QRコードによる認証情報表示は普及したものの、鈴木氏のように家族全員のバイオームデータを瞬時に比較・共有できるダッシュボード機能への期待が高まっています。開発ロードマップには、個人間比較機能や推奨プロファイル機能を加え、親子間・カップル間・友人間など、複数ユーザー利用のUX最適化を検討すべきです。 Ⅲ.“情緒的体験価値”の訴求 単なる機能訴求だけでなく、ユーザー同士のコミュニケーションが生まれる体験設計が鍵となります。メタバース上での診断結果を基にした肌変化のビジュアル比較や、一定期間ごとに達成バッジを付与するゲーミフィケーション要素が、継続利用を促進する可能性があります。 ──結論と提言── 本調査から、2028年のスキンケア化粧品市場では「即時性」「自動化」「コミュニティ性」の3要素が消費者意思決定の柱となることが示されました。製品開発にあたっては、技術面でのマイクロ/ナノフォーマット導入、プラットフォーム面での多⼈ユーザー連携機能実装、エモーショナル面でのゲーミフィケーション体験を三位一体で企画することが望まれます。それによって、時短ケアのストレスを軽減し、かつユーザー同士の絆を強化する革新的スキンケアソリューションを実現できるものと考えます。 テクノロジーの進化を背景とした、リアルな未来の消費者像を描いてくれているのではないでしょうか。単に発言録・議事録としてまとめるだけでなく、アナリストの役割として企画にも役立つインサイトを分析・提示してくれている点は嬉しいポイントです。 では最後に、このレポートを踏まえた企画書の作成に入っていきます。 ④ 企画書の作成 by AIプランナー 調査終了後、AIコンサルタントから企画書の要否を質問されるので、「はい」と回答。本来であれば、何のための企画書なのかを指定するのが一般的ですが、今回はLLMの創造性を確かめる意図も込めて、あえて特別な指定はしませんでした。 「了解しました。それではマーケティングプランナーさん、本日の調査レポートの内容を踏まえ、①課題・背景、②企画目的、③調査概要・分析、④STP戦略、⑤4P戦術を含むマーケティング企画書を作成してください。」の指示に基づいて、出力された企画書がこちらです。 マーケティング企画書(2028年スキンケア新製品「Instant Bio‐Shield」展開プラン) ① 課題・背景 2028年、女性消費者はパーソナライズされた処方への期待がかつてないほど高まる一方で、日常の多忙さゆえにスキンケアに割ける時間が極端に限られています。特に朝の家事・育児、リモート会議前、クリエイティブ作業中といったシーンでは、従来のクリームやマスクが“待ち時間”や“手間”の負荷源となり、結果としてケア行動の継続性を阻害しています。また、環境意識の高まりからエシカル・サステナビリティ要素の訴求は必須であり、製品選択においては“使い捨て”のパッケージや動物実験の有無が重大なブランド選択基準となっています。さらに、デジタルコミュニティを通じた口コミやメタバース体験が購買トリガーとなりつつあり、ただの機能価値提供に留まらない“共感と体験価値”の設計が競争優位を分ける鍵となっています。 ② 企画目的 新製品「Instant Bio‐Shield」は、瞬時に肌表面を整えつつ、マイクロバイオームをサポートする高機能プロテクションフィルムとして、以下を実現します。 1. 時短ケアのストレス解消 :ワンタッチ装着後、わずか10秒で均一かつ高保湿な膜を形成し、以降のメイクや日常行動を妨げない。 2. パーソナライズ&エシカル訴求 :各ユーザーの肌バイオームデータに基づく専用カプセルを内蔵し、100%コンポスト可能なバイオマス素材パッケージで提供。 3. コミュニティ体験強化 :製品アプリ内でバーチャルマイページを共有できる“肌トラッキング・シェア機能”を搭載し、友人間やママ友コミュニティでの比較・称賛を促進。 ③ 調査概要・分析 本企画は、2028年における3名のペルソナ(高橋美咲氏、森田彩香氏、鈴木麻里氏)へのグループインタビュー調査を基盤とします。時短ケアのストレスポイントとして「会議直前」「家事育児最中」「デスクワーク中」の3シーンが抽出され、いずれも“非接触・瞬時完了・均一仕上がり”を求める声が一致しました。また、3年前と比較して「自動化連携」「情報の可視化」「コミュニティ共有」が顕著に進化している事実から、製品提供は単なるアイテム販売ではなくプラットフォームとしての側面を備える必要があります。これらの知見を踏まえ、新製品は機能性・UX・コミュニティ価値をトリプルで提供する設計としました。 ④ STP戦略 ・ セグメンテーション (Segmentation)  ・ 時間的制約が大きいが機能性を妥協しない「タイムプア・ハイパフォーマー」  ・ 環境配慮とエシカル品質を重視する「エコ・エシカル層」  ・ コミュニティ共有・ゲーミフィケーションによる継続利用を求める「ソーシャル・ビューティアクティブ層」 ・ ターゲティング (Targeting)   これら3軸がクロスする、都市部在住の25–45歳女性を中心に、初年度30万個の販売を目指す。 ・ ポジショニング (Positioning)   「Instant Bio‐Shield:一瞬で整え、肌本来の美しさを守る、未来型プロテクトフィルム」として、瞬時性・エシカル・コミュニティ連携を同時に実現する次世代ケアとして差別化。 ⑤ 4P戦術 ・ Product(製品)  ・ フィルム型スキンプロテクト:10秒で均一密着し、12時間の保湿バリアを提供。  ・ 専用カプセル:肌常在菌データと連動し、個別最適化された微生物栄養成分を放出。  ・ パッケージ:100%バイオマス素材、コンポスト可能。QRコードで成分・製造履歴を即時表示。 ・ Price(価格)  ・ 定期便モデル:初回トライアル(30枚入り)1,980円、通常価格3,980円/30枚。  ・ プレミアムアカウント(月額500円):肌分析レポートとコミュニティ機能を無制限に利用可能。 ・ Place(流通)  ・ オンライン直販(公式ECサイト、専用アプリ)、メタバース内バーチャルストア。  ・ エシカルショップやセレクトコスメストアへの限定卸し:銀座、表参道、渋谷の主要3店舗。  ・ サブスクリプション型家庭用スマートディスペンサー連携:主要3社IoTディスペンサーに対応。 ・ Promotion(プロモーション)  ・ ソーシャルメディアキャンペーン:「#InstantBioShieldチャレンジ」で1週間の使用前後を比較投稿。  ・ インフルエンサーコラボ:タイムプア層向けマイクロインフルエンサー30名と共同開発した限定デザインを展開。  ・ メタバース体験イベント:週末限定で360°バーチャルポップアップを開催し、フィルム装着体験とコミュニティ交流を実施。  ・ ゲーミフィケーション:アプリ内でポイントを貯めるとリフィル無料クーポンを付与。 構成としては概要を示す程度のものに留まっていますが、しっかりと調査結果を踏まえた企画書に仕上げてくれました。さらに企画を詳細化したいということであれば、プロダクト方面、プロモーション方面、あるいはターゲットの指定、予算の提示など、希望の方向性や条件を伝えれば、企画をさらに深掘りすることがもちろん可能です。 未来の情報からアイデアを拡張する いかがでしたでしょうか。こうした未来が本当にやってくるのか、出力された企画が本当に成功するのか、こればかりはマーケティングあるいは消費者という不確実性の高い分野では、どうしてもわからないところがあるのは事実です。 ですが、仮想の未来の情報をヒントに、あなたの頭の中でモヤモヤとしている部分を刺激させる、あなた自身に秘めたインサイトを拾い出す、あなたがお持ちのアイデアを拡張することには大いに役立つのではないかと考えています。未来リサーチが「 リサーチ発想のアイデア拡張コレクション 」をコンセプトにしているのは、まさにこうした点にあります。 とくに今回紹介した 未来グループインタビュー は、次のような方にオススメです。 ・将来の顧客ニーズや市場動向を早期に把握し、マーケティング戦略に活かしたい方 ・中長期的な戦略を策定する上で、将来の顧客や市場に関する深いインサイトを得たい また、その利用メリットは、 ・ 先回りしたインサイト獲得   通常のグループインタビューでは得られない、未来視点での深いインサイトを獲得できる ・ 将来ニーズの早期把握   将来の顧客ニーズや市場動向を早期に捉え、迅速な対応を可能に ・ 革新的なアイデア創出   未来の消費者視点から、革新的な製品・サービスや事業アイデアを発想できる などが挙げられます。 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について 未来リサーチは、2025年秋頃のサービス提供を目指して開発を進めており、執筆時現在、事前登録の申込みを受け付けています。優先的な利用案内や先行体験に関する特典もご案内予定ですので、興味を持っていただけた方は、ぜひご登録をいただけますと幸いです。 未来リサーチ TM  事前登録フォーム ご留意事項 ※ 生成AI・LLMを用いている未来リサーチの回答は、必ずしも正しいとは限りません。重要な情報はお客様ご自身にて十分にご確認ください。 ※ 出力や精度に都度バラツキが生じるため、同様の結果が再現できることを保証するものではありません。 ※ デモ中に出力された人名・企業名・商品等は、特定の個人・団体・製品等を指定・意図するものではございません。 ※ 提供時期や特典等は、予告なく変更になる場合がございます。 参考 プレスリリース: 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ(TM)』の開発、および事前登録開始のお知らせ 執筆者 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 未来の消費者にインタビュー。AIエージェント『未来グループインタビュー』を解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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生成AI開発は内製できるか。推奨の作り方、実装ステップまで解説 2025.5.13 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 生成AIは、業務効率化から顧客対応、創造的な支援まで、さまざまなビジネス領域で革新を引き起こしています。本コラムでは、生成AIをゼロから開発する現実的な課題と限界を踏まえ、企業が取り組むべき導入ステップやカスタマイズ、導入時の注意点になどについて解説します。 目 次 ・ 生成AIとは何か  ・ 具体的な活用例  ・ 主な生成AIサービス ・ 生成AI開発に必要な基礎知識  ・ 機械学習とディープラーニングの違い  ・ 生成AIの仕組み  ・ 使用される主なプログラミング言語  ・ 主なツールとAPI ・ 生成AIの自社開発が難しい理由  ・ 膨大な学習データと高性能な計算機リソースが必要  ・ モデル開発とチューニングのための専門人材が不足  ・ セキュリティー、品質、責任というハードル  ・ フルスクラッチ開発ではビジネススピードに合わない ・ 導入にかかるコストと開発パターンの違い  ・ フルスクラッチ開発に必要なコスト  ・ API連携による導入の費用 ・ 生成AI導入のステップ  ・ 活用目的を明確にする  ・ 業務データを整理・収集する  ・ 適切な生成AI基盤を選び連携する  ・ 必要な調整を行う  ・ 既存のウェブサービスや社内システムに組み込む ・ 生成AI導入時の注意点  ・ 業務データの取り扱いとセキュリティー  ・ 生成内容の正確性とハルシネーション対策  ・ 社内展開に向けた教育と運用体制の整備 ・ 生成AI導入はカスタムAIが現実的 生成AIとは何か 普及が進み続けている生成AIは、テキストや画像、音声などのコンテンツをプロンプトに基づいて生成する技術です。従来のAIが分類や予測に強みを持っていたのに対し、生成AIは人間にかなり近いレベルでのように言語を操ってコンテンツを生成し、その自然さは進歩し続けています。企業にとっては、業務効率化や新たな価値創出の可能性を秘めた技術になり得ます。代表的な生成AIに、大規模言語モデル(LLM)を活用したテキスト生成AIや、画像生成AIなどがあります。 具体的な活用例 生成AIは多岐にわたる業務での活用が可能です。例えば、テキストを生成するAIはFAQやマニュアルの作成 、顧客対応チャットボットの高度化に寄与します。画像生成では、広告バナーや商品イメージの試作など、デザイン業務の初期アイデア出しに活用されるケースが増えています。 また、社内データを基に要約やレポートなどの文書の案を生成することで、知的業務の負担軽減にも効果を発揮します。生成AIは単なる自動化ツールではなく、発想や表現の「共創パートナー」としても企業活動を支える存在になりつつあります。 主な生成AIサービス 現在、サービス提供されている生成AIはさまざまにあり、例えば代表的なところでは以下などが挙げられます。 ● テキスト生成系サービス ・ChatGPT(OpenAI) ・Claude(Anthropic) ・Gemini(Google) ・Lalma(Meta) ・Perplexity(Perplexity) ・Grok(X) ● 画像・映像系サービス ・DALL·E(OpenAI) ・Stable Diffusion(Stability.ai) ・Sora(OpenAI) テキスト情報の生成AIサービスとして、まずChatGPTは自然な対話生成や業務支援に利用され、特に顧客対応や自動文章作成などに活用されています。Claudeは セキュリティーや透明性に配慮された設計を特徴とし、安全性の高い対話型AIです。そのほか、Googleが展開するGemini、ウェブ検索に長けたPerplexity、オープンソースを謳うMetaのLlama、イーロン・マスク氏率いるXが提供するGrokなども代表的です。 画像生成AIサービスの代表として知られるDALL·Eは、現在はChatGPTに組み込まれていますが、元々は高品質な画像生成を 可能とするサービスとして別に展開されていたもので、特にデザイン業界やクリエイティブ領域での応用が進んでいます。Stable Diffusionはオープンソースの画像生成AIで、「蒸留」という手法を用いた画像生成に各申請があることに加え、商業利用が進む中で、カスタマイズや制御が可能な点が特徴です。また、画像生成の延長として捉えられる動画の生成AIとしては、OpenAIのSoraが良く知られています。 これらのサービスは高度な学習を既に終えており、自社でゼロから構築するよりもこれらのサービス を利用する方がコスト面で圧倒的に優れています。 生成AI開発に必要な基礎知識 生成AIを業務に導入するに当たり、技術の基本構造や開発に必要なツール群について理解しておくことは極めて重要です。機械学習・ディープラーニングの違い、モデルの内部構造、使用言語、代表的なAPIや開発フレームワークなど、基礎知識があることで、外部パートナーとの円滑な連携や導入プロジェクトの失敗リスクを減らすことができます。 機械学習とディープラーニングの違い 機械学習とディープラーニングは、AIの基盤技術として知られていますが、その仕組みには明確な違いがあります。機械学習は「特徴量」と呼ばれる指標を人間が設計し、それをもとにモデルが予測・分類を行う手法です。一方、ディープラーニングは大量のデータから特徴を自動的に抽出できる技術で、より 高精度な学習が可能です。 生成AIはこのディープラーニング、特に「深層ニューラルネットワーク」と呼ばれる構造をベースにしており、複雑な言語や画像を人間のように生成する力を持っています。 機械学習とディープラーニングの違いについては、以下もご覧ください。 AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いとは 生成AIの仕組み 生成AIの根幹を支えているのは、トランスフォーマーと呼ばれるアーキテクチャであり、それをベースにした LLM(大規模言語モデル)が、特にテキスト生成において重要な役割を果たしています。 トランスフォーマーは、従来のRNN(再帰型ニューラルネットワーク)やCNN(畳み込みニューラルネットワーク)では難しかった文脈理解を深め、文の前後関係を並列に処理することで、驚くほど自然な文章生成を実現します。簡単には、この仕組みを数百億〜数千億個という大規模のパラメータ数で構築したのがLLMです。 使用される主なプログラミング言語 生成AI開発において、最も広く使用されているプログラミング言語はPythonです。Pythonは文法がシンプルで読みやすく、AI開発に必要な豊富なライブラリが充実しているため、初心者からプロまで幅広く活用されています。 その他、データ処理にはSQLやPandas、サービス連携にはJavaScript、システム統合にはShellやDockerスクリプトなども用いられます。最近では、ノーコード・ローコードツールやGUI操作に対応したプラットフォームも多く存在しているため、規模がさほど大きくない開発は身近になっていると言えるでしょう。 参考:docker「 AIアシスタントを使用してスクリプトツールを作成する 」 主なツールとAPI 生成AIをビジネスに応用するには、高機能なツールやAPIとの連携が欠かせません。代表的なのがOpenAI APIで、これを通してGPT-4などを含むさまざまなAIモデルが利用でき、自然な会話文や業務文章の生成が可能です。 もう一つの有力な選択肢がHugging Faceで、さまざまなオープンソースLLMを扱え、自社環境への導入やカスタマイズも柔軟に対応できます。 さらにLangChainは、複雑なAIアプリケーションを組み立てるためのPythonベースのフレームワークで、RAG(検索に基づく回答生成)などの高度な処理も可能です。 参考:Qiita「 Hugging Face って何ですか 」 生成AIの自社開発が難しい理由 個人や特定の企業 で利用するために生成AIの基盤となるLLMを一から構築することは、技術的には可能です。しかし実際には、自社だけで 内製化することのハードルは高く、またコストや労力の観点からも現実的ではありません。 近年注目を集める日本語対応や業界に特化したモデルを構築するにしても、やはり数千万〜数億件規模のデータが求められるからです。 そこで現在主流となっているのは、既存の生成AIサービスを、自社の業務に合わせて調整・活用するアプローチです。既に学習が済んでいる高性能な生成AIサービスとAPIで連携することにより、開発負担を抑えつつ、高度なAI活用が実現できます。 以下、開発が難しい理由をもう少し詳しく見ていきます。 膨大な学習データと高性能な計算機リソースが必要 LLM をゼロから開発するには、まず学習用の膨大なデータが不可欠です。加えて、仮に十分な量のデータが用意できたとしても、学習を実行するには同様に十分な量の計算機リソースが必要です。これらのリソースを自社ですべて用意するには初期投資だけでも膨大な金額が必要になり、実現できる企業があったとしてもごくわずかでしょう。 モデル開発とチューニングのための専門人材が不足 AIモデルの開発やチューニングには、高度な数学的理解やアルゴリズムへの深い知見を持った専門人材が不可欠です。自然言語処理や深層学習といった分野を事業レベルで扱うには、熟練したエンジニアが必要とされます。しかし、国内外を問わずそのような人材は希少で、採用競争が激化しているのが現状です。 仮に優秀な人材を確保できたとしても、AI開発を長期にわたって維持・運用できる体制を整えるには、継続的な投資やビジョンが求められます。 セキュリティー、品質、責任というハードル 生成AIは強力な一方で、誤情報の生成(ハルシネーション)や、機密情報の漏洩リスクといった課題も抱えています。企業が独自に生成AIを開発する場合、こうしたリスクを管理するためのセキュリティー体制やガバナンスの整備が欠かせません。 また、出力結果の正確性や倫理的な面も問われるようになっており、万一のトラブル時には社会的責任を負う必要が出てくることがあります。 フルスクラッチ開発ではビジネススピードに合わない ビジネス競争が激化する中で、生成AIの導入の目的には「より早く価値を生み出すこと」も入ってきます。しかしゼロからのAIモデルの開発は長期間を要し、導入まで数年かかってもおかしくないでしょう。 一方で、すでに完成度の高い生成AIサービスを活用すれば、API連携やカスタマイズにより数週間から数カ月で運用が可能になります。スピードが重視される現代のビジネスにおいては、フルスクラッチでの開発は競争において不利となる場合が多いでしょう。 導入にかかるコストと開発パターンの違い 生成AIの導入には、目的や開発アプローチによって大きなコスト差があります。ゼロから自社開発する場合は、システム設計・データ収集・人材確保・計算資源など、すべてを自前で整備する必要があり、非常に高額です。 一方で、既存のAIサービスとAPI連携する形であれば、初期費用を抑えつつ素早く導入でき、コストパフォーマンスに優れています。自社に合った開発パターンを見極めることが重要です。 フルスクラッチ開発に必要なコスト 生成AIを完全にゼロから構築する場合、そのコストは非常に高額になります。まず必要となるのが、大規模な学習データとそれを処理するためのGPUクラスタなどのリソースです。 これだけで数億円単位の投資が必要になるケースもあります。さらに、専門人材の確保・運用・保守体制の構築といった継続的なコストも見逃せません。一般的な事業会社にとって、これほどの資源を単独で投入するのは現実的ではないでしょう。 API連携による導入の費用 すでに学習済みの生成AIをベースに、APIを通じて自社業務に組み込む「連携型」の導入は、コスト面で現実的です。API使用料は従量制が多く、初期費用は数十万円から始められます。また、業務に応じてカスタマイズされたプロンプト設計やデータ連携の開発、セキュリティー対策を含めても、数百万〜数千万円程度に収まることが一般的です。 大規模開発と比較してもスピードと費用対効果に優れ、特に中堅・中小企業にとって導入のハードルが大幅に下がります。 AI FRONT TREND「 AI導入費用ガイド2025|相場から費用対効果まで徹底解説!コスト削減のカギも 」 生成AI導入のステップ 生成AIを効果的に導入するためには、目的の明確化からデータ準備、基盤選定、実装までのステップを体系的に踏むことが重要です。 さらに、導入後の運用体制や継続的な改善計画も視野に入れておくと、活用の幅が広がります。 活用目的を明確にする 生成AIは汎用性が高いため、まずは自社で「何のために使うのか」という目的を明確にすることが重要です。例えば、FAQ自動生成、マニュアル作成、社内文書の要約、ナレッジ共有など、用途を具体化することで、必要な機能や連携範囲が見えてきます。 目的を明確にさせておくと、無駄な機能の開発やコストの発生を回避しやすくなります。さらに目的に合わせたKPIを事前に設定しておくと、導入効果の評価の精度が高くなるでしょう。 業務データを整理・収集する 生成AIの性能は、どんなデータを与えるかで大きく変わります。そのため、まずは社内にある業務関連データ(マニュアル、会話ログ、製品情報、FAQなど)を整理・収集することが大切です。 データの質と粒度が揃っているほど、生成されるアウトプットの精度も高まります。初期段階では少量でも良いので、正確で代表的なデータから整備していきましょう。定期的に更新・管理する体制を整えておくことも、長期的な成果につながります。 適切な生成AI基盤を選び、連携する 用途に合った生成AI基盤を選ぶことは、導入成功のカギを握ります。例えば、ChatGPTは対話型に強く、Claudeは安全性や透明性に配慮された構造が特徴です。 Azure OpenAI(MicrosoftのクラウドサービスであるAzureを通じて提供される、OpenAIの大規模言語モデルを利用できるサービス)のようにセキュリティ を重視した選択肢もあります。自社の業務内容・インフラとの親和性や、APIの扱いやすさを基に最適なサービスを選定しましょう。 また、導入後のサポート体制やライセンス形態にも注目することで、運用時に発生し得るリスクの低減も図れます。 必要な調整を行う 生成AI基盤をそのまま使うのではなく、自社のニーズに合わせて調整を行うことで精度と実用性が高まります。例えばプロンプト設計により出力内容を最適化したり、RAGを導入して業務データとの接続を実現したりします。 業界特化の情報や業務知識を反映させたい場合は、ファインチューニングも有効です。特に深層学習において、大規模データで事前に訓練された事前学習済みモデルを、別のデータセットを用いて再学習することで、特定のタスクやドメインに特化させる手法のことです。 ファインチューニングについてはこちらもご覧ください。 ファインチューニングとは 応用分野からプロセス、発展まで 既存のウェブサービスや社内システムに組み込む 生成AIは単体で使うのではなく、既存の業務フローに連携させで導入するのが理想です。例えば社内ポータルやチャットボットに連携すれば、社員が日常業務の中で生成AIの恩恵を高頻度に受けられます。 SaaSや社内ツールとの接続も考慮することで、使いやすく、継続的に活用される仕組みが整います。導入の「体験設計」が運用定着の鍵です。システム連携のためにはIT部門との連携が不可欠なため、協力体制の構築を導入計画の中に入れておくべきです。 参考:Mazrica Business Lab「 AI導入の基礎知識|導入の9ステップとおすすめAIツール紹介 」 生成AI導入時の注意点 生成AIは強力な業務支援ツールである一方で、適切な使い方をしなければ思わぬリスクを招く可能性があります。信頼性のある環境と運用ルールの下で、効果的かつ安全に活用することが重要です。 業務データの取り扱いとセキュリティー 生成AIの学習には業務データを活用するケースが多いため、情報漏洩や不正アクセスのリスク管理が極めて重要です。特にクラウド型AIサービスと連携する場合は、外部サーバーにデータが送信される可能性があるため、機密情報や個人情報の扱いには細心の注意を払う必要があります。 APIの仕様や利用規約をよく確認し、自社の情報セキュリティーポリシーに沿った設計・運用を行うことが求められます。また、社内のアクセス権限管理やログ監視体制の整備も不可欠です。 生成内容の正確性とハルシネーション対策 生成AIはあたかも人間のように自然な出力をしますが、時に事実とは異なる、もっともらしい誤情報を生成する「ハルシネーション」が発生します。例えば製品・サービス情報やFAQといった正確性が重要な領域では大きなリスクとなり得ます。そのため、生成された情報は必ず人間による確認を行い、必要に応じて補正・レビュー体制を構築することが重要です。 業務活用においては「AIは支援ツールであり、最終判断は人間が行う」という原則を徹底しましょう。 社内展開に向けた教育と運用体制の整備 生成AIの導入を現場でスムーズに定着させるためには、単なる技術導入にとどまらず、社員への教育と運用ルールの整備が必要です。例えばプロンプトの書き方や使って良い業務範囲、生成物の確認方法などを含む「利用ガイドライン」を作成し、定期的な研修やeラーニングで周知すると効果的です。 また、トラブル発生時の問い合わせ窓口や、改善フィードバックを受け付ける仕組みを用意することで、現場の不安を解消しつつ、出力の精度を高めていく運用体制を築くことができます。 生成AI導入はカスタムAIが現実的 生成AIを導入するには、自社で部分的であれ 内製・開発することは、期間、コスト、労力、人材育成の面からもやはりハードルは高いのが実際です。 また、すでに高性能を実現している既存モデルを活用するにしても 、パラメーターの調整やチューニング、目的に合わせたシステム構築、ビジネス側のオペレーションの変更など、対応すべきことは多岐にわたります。 社内にそうしたリソースがない場合、外部の知見を頼ることは選択肢の一つです。特に自社の課題や環境、目的に応じて要件を定義し、ロードマップを敷いた上で個別開発を行ういわば「カスタムAI」は現実的かつ有効な選択肢になり得ます。 中長期的に生成AIを業務へ統合していくためには、小さく始め、業務との接続ポイントを見極めながら、段階的に体制やルールを整えていくことは 重要なアプローチです。闇雲に「話題の生成AIを導入しよう!」ということではなく、ビジネス成長のための投資としてAI活用を目指すに当たって、カスタムAIは柔軟かつ戦略的な導入が成功への鍵となるはずです 。 カスタムAIについて詳しくは、こちらもご覧ください。 カスタムAI開発 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 生成AI開発は内製できるか。推奨の作り方、実装ステップまで解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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AI画像解析でビジネスを加速させる方法|種類や活用事例を解説 2025.4.28 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 AIを活用した画像解析、AI画像解析を用いれば、さらなる業務効率化や品質向上などでビジネスを加速させられる可能性があります。導入を検討するために、まずAI画像解析の仕組みや、画像認識との違い、導入メリット・デメリットについて解説します。さらに、さまざまな業界における成功事例について触れ、導入の要点もまとめます。 目 次 ・ AI画像解析とは  ・ 画像解析、画像認識、画像分析 の違い ・ AI画像解析のメリット  ・ 作業の自動化と人件費削減  ・ 精度の高い異常検知と品質管理  ・ 膨大なデータの活用と新たな価値創出 ・ AI画像解析のデメリット  ・ 初期コストと開発負荷の高さ  ・ プライバシー・倫理面での配慮  ・ 精度や汎用性の限界 ・ AI画像解析の展開  ・ 画像分類  ・ 物体検出  ・ 画像セグメンテーション  ・ 画像生成 ・ AI画像解析を用いる際の注意点  ・ プライバシーへの配慮  ・ セキュリティーリスクへの対策  ・ 専門人材の確保や外部委託  ・ 精度が100%ではない ・ AI画像解析の具体的な活用例  ・ 【インフラ】物体検出×異常検知による不良判定  ・ 【製造業】画像分類による外観検査  ・ 【医療】見たい臓器だけを表示するソフト ・ AI画像解析の実装で生産性と精度の改善を AI画像解析とは AIを活用した画像解析とは、AIを用いて画像データから意味のある情報を抽出・分析する技術のことです。静止画や動画に含まれる対象物や動き、特徴などをデジタルに読み取り、分類・検出・予測といった処理を可能にします。 人の目では見落としがちな微細な変化や、膨大な画像群からのパターン抽出などにおいて、AIは高いパフォーマンスを発揮します。製造業や医療、インフラ、マーケティングなど、さまざまな業種で実用化が進んでおり、業務効率化や品質向上に大きな可能性を持っています。 参考:アスク「 AI画像解析とは?メリット・デメリット、企業での導入事例を解説! 」 画像解析、画像認識、画像分析 の違い 画像解析に関連する用語として画像認識や画像分析があり、同じく画像に関する抽象概念なので混同しやすいかもしれませんが、それぞれ異なる意味を持っています。画像解析は画像認識と画像分析の二つから構成されているという関係にあります。 画像認識は画像の中に何が写っているかを識別するプロセスで、例えば「犬」「自動車」といったラベル付けを行います。その後に行われる画像分析をします。 画像認識についてはこちらもご覧ください。 画像認識AIの世界。その仕組みと活用事例 AI画像解析のメリット AI画像解析を用いることで、人手による作業の効率化や精度向上が図れるだけでなく、今まで取得するのが困難だった視覚情報を活用することが可能です。以下に代表的な利点を紹介します。 作業の自動化と人件費削減 AI画像解析は、目視検査や監視など、従来人手で行っていた作業を自動化できます。これにより、業務のスピードと精度が大幅に向上し、人件費や教育コストの削減にもつながります。特に製造業やインフラ点検などの現場では、熟練工のノウハウをAIが補完・代替することで、技能の平準化や伝承がより簡単になります。限られた人材で高品質な運用を世代を超えて維持したい企業にとって、大きなメリットとなるでしょう。 また、24時間365日稼働可能なシステムによって、夜間作業や休日対応といった人的負担も軽減でき、労働環境の改善や働き方改革にもつながります。 参考:アスク「 AI画像解析とは?メリット・デメリット、企業での導入事例を解説! 」 精度の高い異常検知と品質管理 人の目では見逃してしまうような微細な変化や欠陥も、AI画像解析なら高い精度で検出できます。一定の学習データを基に、異常やパターンを即座に検出することができるからです。 これにより、製品の不良率低下やトラブルの早期発見が実現し、品質管理の強化につながります。医療や製造分野では、信頼性向上とクレーム削減の面でも効果が期待できます。品質管理部門だけでなく、経営層の意思決定にも活用できる情報が蓄積され、組織の全体最適を促進する技術にもなり得ます。 異常検知についてはこちらもご覧ください。 異常検知とは? 関連する機械学習手法や導入のメリットも解説 膨大なデータの活用と新たな価値創出 画像や映像データはそのままでは活用が難しい非構造化データですが、AI画像解析を用いることで、分析可能な資産へと変換できます。これにより、顧客の行動分析、マーケティング施策の最適化、製品改良などに必要な、従来見えていなかったインサイトを得られる可能性があります。 そして単なる効率化だけでなく、新たなビジネスチャンスや価値創出の基盤としても、AI画像解析は大きな可能性を秘めています。業種を問わず、データドリブンな経営判断の強力な支援ツールとして注目が集まっている技術です。 参考:System K AI「 小売店舗とAIの活用について 」 AI画像解析のデメリット AI画像解析は多くの利点を持つ一方で、導入や運用に当たって注意すべき課題もあります。以下に、代表的なデメリットやリスクについてご紹介します。 初期コストと開発負荷の高さ AI画像解析を本格的に活用するには、ハードウエア(カメラやサーバー)や学習用データの整備、モデル開発などに相応の初期投資が必要です。特に業務に特化した高精度モデルを構築するには、時間と技術力が求められ、外部ベンダーとの連携やPoC(概念実証)の実施も必要になるケースがあります。ROI(投資収益率)を十分に見込んだ上で、中長期的な視点での導入計画が重要です。 また、モデル導入後も継続的なデータ更新や精度検証が必要になるため、運用フェーズでのリソース確保も予め計画しておく必要があります。 プライバシー・倫理面での配慮 人物の顔や行動を対象とした画像解析では、個人情報の取り扱いが問題となるケースがあります。特に監視カメラや店舗内分析などで人物データを扱う場合、利用目的の明示や取得方法の妥当性が問われ、コンプライアンス遵守が求められます。また、AIによる判断が差別や偏見につながるリスクもあり、アルゴリズムの透明性や倫理的配慮が不可欠です。導入に際しては法令やガイドラインの確認が求められます。 参考:ビジネス+IT「 プライバシー不安も…個人を識別する「AIカメラ」の全国配置が始動、その狙いとは 」 精度や汎用性の限界 AI画像解析は万能ではなく、学習データの偏りや画像条件(照明、角度、画質など)によって精度が左右されることがあります。思ったように性能が出ない場合のリスクを見込んで、継続的なチューニングやデータ追加による改善プロセスを設計しておくことが重要です。 さらに、実運用時には外乱要素(天候、背景ノイズ、画面の揺れなど)への対応も必要であり、現場での検証を重ねた上での本番導入が望まれます。期待を高く持ちすぎず、段階的な運用が現実的です。 AI画像解析の展開 AI画像解析は、画像や映像に含まれる情報をAIが分析・処理することで、物体の認識や分類、構造の理解、さらには新しい画像の生成まで目的に応じて多様なタスクへ展開されています 画像分類 画像分類は、画像全体を一つのカテゴリに振り分ける技術です。例えば「猫」「犬」「車」などのラベルが付けられた画像をAIが自動で判定する仕組みで、最も基本的な画像解析手法といえます。活用例としては、製造ラインでの外観検査や、不良品の自動判別、農作物の成熟度判定などが挙げられます。 分類精度はAIモデルの学習データに大きく依存するため、質の高いデータセットの構築が成功の鍵を握ります。直感的で扱いやすいため、AI画像解析を導入する初期段階にも適しています。 物体検出 物体検出は、画像内に存在する複数の対象物を見つけ出し、その位置と種類を特定する技術です。画像分類が「何が写っているか」を判断するのに対し、物体検出は「どこに何があるか」までを明らかにします。例えば倉庫内での在庫管理、交通監視カメラでの車両検出、建設現場の安全確認など、空間情報を伴う解析に活用されます。 画像セグメンテーション 画像セグメンテーションは、画像をピクセル単位で分割し、それぞれの領域が何を表しているかを識別する高度な技術です。物体検出よりもさらに細かく、対象物の境界線まで正確に認識する必要がある場面で活躍します。 医療分野ではMRI画像から臓器や腫瘍の領域を抽出したり、農業ではドローン映像から作物と雑草を正確に分けたりする用途があります。精密な解析が求められる分野において、非常に有用なアプローチといえるでしょう。処理には高性能な演算資源と専門的なノウハウが必要ですが、その分、得られる情報価値も高くなります。 参考:IBM「 画像セグメンテーション 」 画像生成 画像生成は、AIが新しい画像を生成する技術で、近年大きな注目を集めています。生成AIを使えば、既存の画像を基に高解像度なイメージを補完したり、欠損部分を修復したり、あるいはプロンプトを基に画像をゼロから描画することも可能です。例えば、建築・不動産業では完成予想図の自動生成、広告業界では商品イメージのバリエーション作成などに活用されています。 参考:SCORER「 AIを活用した画像解析とは?基本的な仕組みや活用方法を解説 」 AI画像解析を用いる際の注意点 AI画像解析を用いるには、多くのメリットがある一方で、慎重な検討が必要な課題も存在します。技術面、運用面、倫理面など多角的な観点からリスクを見極め、事前に対策を講じておくことが重要です。 プライバシーへの配慮 AI画像解析では、人物の顔や行動、周辺環境まで詳細に分析することが可能なため、個人情報保護の観点から慎重な対応が求められます。特に防犯カメラやマーケティング用途での活用時には、「何の目的で」「どのように」画像を取得・活用するのかを明示し、社内外の関係者の理解と同意を得る必要があります。 近年ではGDPRや日本の個人情報保護法など、国内外の規制も厳格化しており、適切なオプトイン設計や匿名化処理、取得データの管理体制構築が不可欠です。 参考:イー・エージェンシー「 (GDPRの現状は?)アクセス解析・ユーザー行動分析の今をお伝え【ウェビナーレポート】 」 セキュリティーリスクへの対策 AI画像解析システムは、ネットワーク接続されたカメラやクラウド型の解析基盤を利用することが一般的であるため、サイバーセキュリティー上のリスクを常に意識しておく必要があります。最近では、AIモデル自体が不正に操作される「データポイズニング」や、「モデル盗用」といった、新たなリスクも登場しています。 導入に当たっては、ファイアウォールやアクセス権限の管理だけでなく、定期的なセキュリティー診断やベンダーとの契約内容の見直しも重要です。信頼性の高いセキュリティー対策が、AIを安心して活用するための前提条件となります。 参考:アクト「 生成AIを毒で汚染?データポイズニングとは|わかりやすく解説 」 専門人材の確保や外部委託 AI画像解析を有効に活用するには、単に技術を導入するだけでなく、それを使いこなすための人材が不可欠です。具体的には、AIモデルの設計、学習、検証を行う機械学習エンジニアや、業務要件に基づいてシステム全体を設計するAIプロジェクトマネージャーなどが求められます。 しかし、多くの企業にとってこうした専門人材を社内で確保するのは容易ではありません。内製と外注のバランスを取りながら、自社の業務やリソースに合った体制づくりをすることが、導入成功の鍵です。 精度は100%ではない AI画像解析の誤解の一つに、「導入したらあとは簡単に業務が自動化できる」いう期待があります。しかし実際には、AIはあくまで「学習データに基づいた予測を行う仕組み」であり、必ずしも人間の判断を完全に代替するものではありません。 照明の変化、背景の複雑さ、撮影角度の違いなど、さまざまな要因によって認識精度が左右されることがあります。そのため、的にAI画像解析の仕組みも、臨機応変にチューニングする必要があるわけです。 AI画像解析の具体的な活用例 AI画像解析は多様な業界で実際に用いられ、業務効率化や品質向上、付加価値の創出に貢献しています。ここでは、製造業、インフラ、金融業における先進的な活用事例を挙げます。 【インフラ】物体検出×異常検知による不良判定 線路設備の検査・調査や保守点検など保全管理サービスを展開している日本線路技術は、「線路設備不良判定AI」を開発し、物体検出技術と異常検知技術を組み合わせることで不良判定を実現しています。 検出すべき部材のカテゴリーは複数あり、それぞれ検出すべき異常のパターンや判定基準がそれぞれ異な流ことなどがあり難易度の高い異常検知を実現する必要があります。線路設備不良判定AIはこのような複雑な現場要件に適応した不良を判定を可能にしており、一部の部材においては8割以上のスクリーニング効果が得られています。 詳しくはこちらをご覧ください。 線路設備の不良判定の自動化 【製造業】画像分類による外観検査 沖電気工業では、防衛装備品の製造で用いる吸着ノズルの外観検査において、検査精度の向上と作業時間の短縮を目的として、AI検査システムを開発し、実証実験をしました。従来は作業員による撮影画像の目視検査に頼っていたところを、AIが高精度に分類・判定できたことを実証し、今後は目視検査の廃止といった検査自動化を目指しています。 詳しくはこちらをご覧ください。 防衛装備品の製造におけるAIによる外観検査 【医療】見たい臓器だけを表示するソフト キヤノンの医療機器子会社キヤノンメディカルシステムズは、医療画像の解析ソフトウエアを提供しています。AIが骨や血管などを自動抽出し、見たい臓器だけを表示するもので、例えば頭部の画像から、頭蓋骨や脳動脈、脳静脈など見たい箇所だけを短時間で色分け表示すします。従来は診断装置で複数部分を撮影し、画像上で臓器同士を分離するなど作業が煩雑でしたが、このソフトにより医師の診断を効率化し、働き方の改善につなげることを狙っています。 日本経済新聞「 キヤノン系、医療画像解析ソフト新製品 AIで臓器抽出 」 AI画像解析の実装で生産性と精度の改善を AI画像解析は、業務の自動化や人的ミスの削減、品質の均一化といった観点から、多くの業界で導入が進んでいます。製造、インフラ、金融など、活用の幅は年々広がり、精度も向上を続けています。一方で、プライバシー配慮や技術的な課題、運用体制の整備など、導入には慎重な設計が求められます。 だからこそ、自社の目的や課題に即した活用方法を見極め、段階的な導入と継続的な改善を視野に入れることが重要です。AI画像解析は単なる効率化ツールではなく、企業の競争力を支える戦略的な技術として、今後も多様な領域で普及が進むでしょう。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post AI画像解析でビジネスを加速させる方法|種類や活用事例を解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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AIエージェントの定義。2025年の最重要AI用語の概念を整理 2025.4.23 株式会社Laboro.AI リード機械学習エンジニア 川崎奏宜 概 要 2022年11 月にChatGPTが登場して以降、多くの企業でLLM(Large Language Model、大規模言語モデル)の活用が急速に広がりました。2023年以降はRAG(Retrieval-Augmented Generation、検索に基づく回答生成)やマルチモーダルLLMといった技術が急速に発展しました。そして2025年はAIエージェント元年と呼ばれており、AI自身が状況を判断し、計画を立て、行動するような世界観になってきています。 「AIエージェント」という言葉は広く使われるようになりましたが、その定義は曖昧なものであり、明確な理解が共有されていません。本コラムでは、一般論としてのAIエージェントの考え方を紹介するとともに、AIエージェントの概念を整理します。AIエージェントについて理解を深めたい方や、そしてAIエージェントの導入を検討する際の第一歩として活用していただければ幸いです。 目 次 ・ AIエージェント以前のLLM  ・ 登場初期のLLM  ・ RAG  ・ ツール利用(Function Calling / Tool Use) ・ AIエージェントとは  ・ 各社のAIエージェントの定義   ・ OpenAI   ・ Anthropic   ・ Google  ・ AIワークフローとAIエージェントの違い   ・ AIワークフロー   ・ AIエージェント  ・ エージェンティックAIという新しい概念  ・ AIエージェントの位置付け ・ 代表的なAIエージェントサービス  ・ Deep Research(自律型調査AIエージェント)  ・ Devin(自律型コーディングAIエージェント)  ・ Genspark Super Agent(自律型汎用AIエージェント) ・ AIエージェントの活用事例  ・ トヨタ自動車  ・ NEC  ・ デロイト トーマツ ・ まとめ AIエージェント以前のLLM AIエージェントを理解するためには、まずはAIエージェント以前のLLMの進展を把握することが重要です。ここでは、登場初期のLLM、RAG、そしてツール利用(Function Calling / Tool Use)という、AIエージェントに至るまでの技術進歩を解説します。 登場初期のLLM 2022年11 月にChatGPTがリリースされ、LLMが急速に普及しました。LLMは、大量のテキストデータを学習し、テキストの入力に対してテキストを出力するモデルです。ユーザーからの指示を入力として、学習データに基づいた回答を生成します。 しかし、登場初期のLLMには以下のような制約がありました。 ・学習データの内容をもとに回答を生成するため、学習していない情報に対して回答できない ・学習された日以降の情報を持たないため、最新の情報に基づいた回答ができない ・学習データに基づいてもっともらしい単語を逐次的に生成するという特性から、実際には存在しない情報や誤った情報を生成してしまう(ハルシネーション) これらの制約は、LLMを実用化する上での大きな課題となりました。 図1 登場初期のLLM:基本的な回答生成 RAG RAGは上に挙げた LLMの課題を克服するために開発された手法です。質問に応じて外部知識から関連情報を検索し、その情報をLLMの入力として与えることで、LLMが持たない情報を補完したり、より正確な回答を生成したりすることが可能になります。 RAGの登場によって、以下のことができるようになりました。 ・最新情報に基づいた回答:外部のデータベースやドキュメントから情報を取得できるため、モデルの学習時点以降の情報に基づいた応答が可能に ・ドメイン特化への適用:企業内文書や製品マニュアル等の特定のドメインに特化したデータを検索対象とすることで、特定業務に最適化された応答が可能に ・事実性の向上:回答の根拠となる情報がLLMに与えられるため、ハルシネーションのリスクを軽減し、より正確な情報を提供することが可能に 図2 RAG:外部知識を活用した回答 ツール利用(Function Calling / Tool Use) ツール利用は、LLMが外部システムやAPIと連携して機能を拡張する手法です。Function CallingやTool Useとも呼ばれ、LLMが生成したコードやクエリを実行することで、より高度な処理を実現します。これにより、LLMは単なるテキスト生成だけでなく、実際のアクションを実行することが可能になります。 例えば、以下のようなことができるようになりました。 ・データベースへのクエリ実行:LLMが生成したSQL文をデータベースに送信し、結果を取得することが可能に ・外部APIの呼び出し:LLMが生成したAPIリクエストを外部サービスに送信し、結果を受け取ることが可能に ・アクションの実行:LLMが生成したコマンドを実行し、システム上での操作を自動化することが可能に 図3 ツール利用:外部機能との連携による回答の能力拡張 また、最近では、MCP(Model Context Protocol)というツールを呼び出す共通の規格が提案され、より統一的な方法でツールを利用することができるようになりました。 AIエージェントとは AIエージェントは、 ユーザーから与えられた指示に対し、自律的に問題解決やタスク実行を行うシステムと定義できます 。与えられた指示に対して、タスクを分解・計画し、次に取るべき行動を決定しながらタスクを遂行します。 各社 のAIエージェントの定義 AIエージェントについては、さまざまな企業や研究機関で議論されていますが、定義はそれぞれ異なります。以下に、いくつかの企業 のAIエージェントの定義を紹介します。 OpenAI 私たちは「エージェント」をユーザーの代わりにタスクを自律的に実行するシステムであると捉えています。 出典:OpenAI “ New tools for building agents ” Anthropic 原文 “Agent” can be defined in several ways. Some customers define agents as fully autonomous systems that operate independently over extended periods, using various tools to accomplish complex tasks. Others use the term to describe more prescriptive implementations that follow predefined workflows. At Anthropic, we categorize all these variations as agentic systems, but draw an important architectural distinction between workflows and agents: Workflows are systems where LLMs and tools are orchestrated through predefined code paths. Agents, on the other hand, are systems where LLMs dynamically direct their own processes and tool usage, maintaining control over how they accomplish tasks. Below, we will explore both types of agentic systems in detail. In Appendix 1 (“Agents in Practice”), we describe two domains where customers have found particular value in using these kinds of systems. 出典: Anthropic “ Building effective agents ” 日本語訳 「エージェント」はさまざまなかたちで定義されます。顧客によっては、エージェントを「完全に自律的なシステム」と定義し、長期間にわたり独立して動作し、多様なツールを使用して複雑なタスクを達成するものと捉えることもあります。一方で、あらかじめ決められたワークフローに従って動作するという、より規定的な実装を指すこともあります。 Anthropicでは、これらのさまざまなタイプをすべて「エージェント的システム(agentic systems)」というカテゴリーでくくっていますが、「ワークフロー(workflow)」と「エージェント(agent)」には重要な構造上の違いを設けています。 ワークフローとは、LLMとツールが、あらかじめ定義されたコードパスに従って統合的に運用されるシステムです。 エージェントとは、LLMが動的に自身のプロセスやツールの使用方法を決定し、タスクの達成方法について制御権を持っているシステムです。 Google AI agents are software systems that use AI to pursue goals and complete tasks on behalf of users. They show reasoning, planning, and memory and have a level of autonomy to make decisions, learn, and adapt. 出典: Google Cloud “ What is an AI agent? ” 日本語訳 AI エージェントは、AI を使用してユーザーの代わりに目標を追求し、タスクを完了させるソフトウェア システムです。推論、計画、メモリーが可能であることが示されており、意思決定、学習、適応を行うレベルの自律性を備えています。 AIワークフローとAIエージェントの違い Anthropic の定義を参考にすると、AIエージェントには「AIワークフロー型」と「AIエージェント型」の二つのアプローチがあります。この点は非常に重要であり、各社のAIエージェントの定義を理解する上でのポイントとなります。 AIワークフロー AIワークフローは、LLMが事前に定義された手順・ルールに従ってタスクを実行する仕組みです。質問に応じて遷移先を決定し、ルールに従って次のアクションを選択します。例えば、単純なタスクであればLLMのみで実行し、人による最終確認が必要な場合は人間にタスクを引き渡すといったフローを組むことができます。 AIワークフローは、予測可能性(確実性)には優れますが、事前にフローを定義する必要があるため、柔軟性には欠けます。 図4 AIワークフローのイメージ AIエージェント AIエージェントは、LLMが自律的にタスクを実行する仕組みです。与えられた指示に対して、LLMが自らタスクを計画(プランニング)し、次に取るべき行動を決定し、実行結果のフィードバックをしながらタスクを遂行します。十分な情報が得られた場合、LLMは自らの判断でタスクを完了させます。 AIエージェントは、ユーザーからの指示に基づいて自律的に行動するため、柔軟性がありますが、予測可能性には欠ける場合があります。 図5 AIエージェントのイメージ エージェンティックAIという新しい概念 最近では、「エージェンティックAI」という言葉も耳にするようになってきました。この概念はAIエージェントの発展系と捉えることができ、より高度な自律性と複雑なタスク処理能力を持つAIシステムのことを指します。しかし、明確な定義はAIエージェントよりもさらに定まっておらず、今後より共通の理解として整理されていくことが期待 されます。 なおNVIDIA によると、エージェンティックAIは以下の四つのプロセスを経て問題解決を行います。 1. Perceive(知覚) 単なるデータ入力を超え、センサー、データベース、デジタルインターフェースなど、多様なソースから能動的にデータを収集・処理・統合します。これにより、より広範な状況理解が可能になります。 2. Reason(推論) 収集した情報に基づき、タスクを深く理解し、効果的な解決策を生成します。この段階では、LLMが中心的な役割を果たし、さまざまな専門モデルを連携させるオーケストレーターとして機能します。 3. Act(行動) APIを介して外部ツールやソフトウェアと統合することで、エージェントAIは策定した計画に基づいてタスクを迅速に実行できます。 4. Learn(学習) 実行結果からのフィードバックを継続的に取り込み、自己改善を行います。成功パターンと失敗パターンの両方から学習し、次回のタスク実行時にはより効果的なアプローチを取ることができます。 出典:NVIDIA “ What Is Agentic AI? ” 図6 エージェンティックAIのプロセス この四つのプロセスが継続的なサイクルとして機能することで、エージェンティックAIは時間の経過とともに能力を向上させ、より複雑な問題に対処できるようになります。このような知覚の領域拡大や高度な自律性、学習プロセスの導入などが、AIエージェントとエージェンティックAI の違いと言えそうです。 AIエージェントの位置付け これまで記した通り、AIエージェントの定義は明確には定まっていませんが、「タスクの自由度」という観点から階層構造として理解することができます。 LLMは与えられた入力に対して回答を生成するという限定的な役割を持ちます。その上のRAGまたはツール利用では、外部ソースを参照・操作する能力が加わって、LLMの機能を拡張します。 さらに上位のAIワークフローでは、定義された手順に従ってタスクを遂行しますが、その行動はあらかじめ設計されたフローに制限されています。AIエージェントになると、与えられた特定のタスクに対して自律的に意思決定と行動を実施することができます。 そして、エージェンティックAIはさらに自由度の高いタスクにおいても自律的に意思決定・行動できる存在として位置付けられます。その上位には汎用型AI(AGI)が想定されています。 この階層構造において、現在の技術は赤い点線で示したAIエージェントのレベルに到達しつつあり、エージェンティックAIやAGIの領域は今後の発展が期待される領域と言えます。エージェンティックAIは、AIエージェントの延長線上にあり、より高度な自律性と汎用性を持つAIシステムとして、2025年以降のAI技術発展における重要なテーマとなることが予想されます。 図7 AIエージェントの位置付け 代表的なAIエージェントサービス Deep Research(自律型調査AIエージェント) Deep Researchは、特定の調査指示に基づいて、LLMが自律的に情報を収集・分析し、レポートを生成するAIエージェントの仕組みです。GoogleのGeminiをはじめとして、OpenAIのChatGPTやPerplexityなどのプロダクトにも搭載されています。 Devin(自律型コーディングAIエージェント) Devinは、与えられた要件に基づいて、自律的に開発プロセス全体を自律的に実行可能なAIエージェントプロダクトです。エンジニアの一員として、コードの作成、実行、バグ修正、テスト作成等の幅広いタスクを自律的に実行します。 Genspark Super Agent(自律型汎用AIエージェント) Genspark Super Agentは、LLMプロダクトであるGensparkで提供されている機能で、さまざまなツールを活用しながら日常業務を効率化するAIエージェントです。例えば、公式のデモでは、旅行計画を立てる、レストラン予約の概要、5時間のYouTube動画を10枚のスライドにまとめるといったタスクを自律的に実行する様子が紹介されています。 AIエージェントの活用事例 トヨタ自動車 トヨタ自動車は、エンジニアの知識継承と開発効率向上を目的に、AIエージェント群からなる「O-Beya(オーベヤ)」システムを導入しました。このシステムは、エンジンやバッテリー、振動、燃費、法規制など9分野の専門AIが協働し、エンジニアの質問に対応します。システムが活用できる知識として、過去の設計データや法規制情報、ベテラン技術者の手書き文書などを統合。2024年1月からパワートレーン開発部門で運用され、約800人のエンジニアが利用しています。これにより、開発スピードの向上と熟練技術者の知見の継承が実現されています。 出典:Microsoft「 トヨタ自動車、エンジニアの知見をAIエージェントで継承へ 」 NEC NECは、クラフトビールメーカーのコエドブルワリーと連携し、生成AI「cotomi」を活用したAIエージェントを用いて、世代別の特徴や価値観を味や香りで表現したクラフトビール「人生醸造craft」第2弾を開発しました。このプロジェクトでは、ビール職人が「20代日本人をイメージして新しいクラフトビールのレシピを作成して」とプロンプトを入力すると、AIエージェントが自律的にタスクを分解し、社内外のレシピ情報を検索・分析。各世代のペルソナを作成し、味や香り、色などの要素を含むレシピ案を提案しました。ビール職人は、AIエージェントとの対話を通じてレシピを調整し、20代向けの「20’s PINK」や50代向けの「50’s RED」など、4種類のクラフトビールを完成させました。 NEC「 NECとコエドブルワリー、Agentic AIとビール職人が協働し、AIクラフトビール「人生醸造craft」第2弾を開発 」 デロイト トーマツ デロイト トーマツは、複数のAIエージェントが自律的に連携して業務を自動化する「マルチエージェントアプリ」を開発しました。このアプリは、Web検索、社内データベース検索、分析、資料作成など、各エージェントが特定の役割を担い、連携することで複雑な業務を効率的に遂行します。また、タスク計画用のエージェントが他のエージェントの役割を理解し、ユーザーの業務要求に応じて最適なタスク計画を自動で立案します。さらに、レビュー専用のエージェントが他のエージェントの出力をチェックし、必要に応じて処理を再実行する自己修正機能や、人間の確認を挟む「Human in the Loop」機能も備えています。これにより、ユーザーは自然言語で業務内容を入力するだけで、関連するAIエージェントが連携し、成果物を出力することが可能となります。 デロイト トーマツ「 デロイト トーマツ、LLMを自律的に連携させ業務を自動化する「マルチエージェントアプリ」を開発 」 まとめ AIエージェントの定義とその位置付け、活用事例について解説しました。AIエージェントは、明確に定められた定義はありませんが、一般的には自律的にタスクを実行するシステムと考えられています。 今後はAIエージェントの定義がより明確になり、さまざまな分野での活用がより一層進むことが期待されます。この記事が、AIエージェントの理解を深める出発点となれば幸いです。 執筆者プロフィール リード機械学習エンジニア 川崎奏宜 九州工業大学情報工学部電気電子情報工学科卒業。卒業後、SIer企業にて、画像認識技術を活用した施工現場の効率化や、自然言語処理技術を用いた人材マッチング案件に従事。2022年に株式会社Laboro.AIに参画し、自然言語処理を活用したビジネス探索やセンサデータを使った検査プロセスの自動化など、多岐にわたるプロジェクトを担当。共著に『今日から使えるファインチューニングレシピ: AI・機械学習の技術と実用をつなぐ基本テクニック』(オーム社刊) The post AIエージェントの定義。2025年の最重要AI用語の概念を整理 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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シフト作成を自動化するAI手法|AI活用のメリットや注意点についても解説 2025.4.22 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 シフト作成において、時間や手間、人員の確保に頭を悩ませることがあります。近年、AI技術の進化により、こうした課題を自動的に解決できるシフト作成へのAI活用が注目を集めています。本コラム では、シフト作成に活用するAIの基本的な仕組みから導入のメリット、具体的な手法や注意点まで、導入の検討の前に知っておきたい事柄を解説します。 目 次 ・ AIを活用したシフト作成とは ・ 業務効率化におけるAIの重要性 ・ シフト作成をする際のAIの手法  ・ 機械学習アプローチ  ・ 組合せ最適化アプローチ  ・ ルールベース・アプローチ ・ AIシフト作成で実現できること  ・ 効率的なシフト割り当て  ・ スタッフの負荷分散  ・ シフトの調整 ・ AIを活用したシフト作成のメリット  ・ スムーズな割り当てが可能になる  ・ 法令や就業規則などを考慮できる  ・ 割り当てミスが減る ・ AIを活用したシフト作成の注意点  ・ イレギュラー時の対応が難しい  ・ 運用コストが発生する ・ AIを活用したシフト作成ステップ  ・ ステップ1:目的と課題の明確化  ・ ステップ2:必要データの整理と整備  ・ ステップ3:AIツールの選定とカスタマイズ  ・ ステップ4:試験運用とフィードバック  ・ ステップ5:本格運用と改善サイクルの構築 ・ まとめ AIを活用したシフト作成とは 近年、AIの活用が進む中で、シフト作成へのAI活用も注目されています。従来のシフト作成は、担当者がスタッフの希望やスキル、法令遵守、業務量のバランスを考慮しながら手作業で行う、時間と労力のかかる作業でした。 AIを導入することで、これら複雑な条件を自動的に分析し、最適なシフトを迅速に提案できる可能性が出てきます。人為的なミスの削減や公平な割り当てが実現し、シフト作成に関わる心理的・時間的負担が大幅に軽減されます。さらに、運用を重ねることでAIは学習を続け、より精度の高いシフト作成ができることも狙えます。 業務効率化におけるAIの重要性 人材不足や業務の複雑化が進む中、企業にとって業務効率化は喫緊の課題です。そこで注目されているのが、AIの導入です。AIは膨大なデータを 学習し、 タスクの 自動化に貢献します 。特に、繰り返しの多い業務や人手に依存している作業において、AIは圧倒的な速さと精度を発揮します。 業務効率化は単なる時短だけでなく、人的ミスの削減、コア業務への集中、職場のストレス軽減といった効果ももたらします。シフト作成のように条件が多岐にわたる作業こそ、AIが得意とする分野です。効率化と品質向上を同時に実現する手段として、AIは今後さらに重要性を増していくでしょう。 参考:Concur「 AI活用で業務を効率化する方法!メリット・デメリットも理解しよう 」 シフト作成をする際のAIの手法 AIによるシフト作成では、目的や現場の特性に応じてさまざまな手法が使われます。ここでは、代表的な三つのアプローチを紹介します。 機械学習アプローチ 機械学習は、膨大なデータをもとにコンピュータがルールやパターンを学習する技術を指します。データによりトレーニングを行うことで、特定のタスクを高い精度でこなせるようになります。時間とともに蓄積されるデータで学習して精度を向上させることもできるため、長期的な運用で大きな効果を発揮します。 機械学習についてはこちらもご覧ください。 AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いとは 組合せ最適化アプローチ 組合せ最適化は、その名の通り、膨大な数の組み合わせパターンから、最も効率的なパターンを探索するための数理手法です。このタスクをAIに実行させ、人手とは比較にならないほど短時間で組合せを評価・選定します。シフト作成において「希望休の考慮」「スキルや資格」「法定労働時間」など多様な制約条件が存在する場面では、シフト案を短時間で自動的に導き出せるのが大きな利点です。 組合せ最適化についてはこちらもご覧ください。 AIを活用した組合せ最適化、カギの一つは強化学習 ルールベース・アプローチ ルールベースは、事前に決めたルールに従ってタスクを遂行するアプローチです。例えば、「Aさんは火曜と金曜は勤務不可」「連続勤務は最大3日まで」など、スタッフ個別の事情や業務ルールをそのままAIに組み込むことで、現場の要望をきめ細かく反映したシフト作成が可能になります。 特に導入初期の段階や、明確な制約条件が多い職場では、大量のデータから学習して推測をするAIよりもこちらが適している場合があります。ルールベースAIは学習を必要としないため比較的早く運用を始められ、担当者のノウハウを生かしながら効率化を図れる点も魅力です。将来的には機械学習とのハイブリッド運用に進化させて、柔軟性と最適化の両立も実現できます。 AIシフト作成で実現できること AIを活用したシフト作成は、単なる自動化にとどまらず、組織の運営効率や従業員満足度の向上といった多面的な価値をもたらします。 効率的なシフト割り当て シフト作成AIは、スタッフの希望、スキル、勤務可能時間、法定労働時間など、さまざまな条件を同時に考慮してシフトを自動生成します。これにより、これまで担当者が手作業で行っていた複雑な調整作業が大幅に簡素化され、数時間〜数日かかっていた作業をより短時間で完了可能です。 特に多拠点展開している企業や、変動の多いサービス業においては、スピードと精度の両面で大きな恩恵を得られます。ルールに沿った割り当てが徹底されるため、人的ミスの防止や、ミスに起因する法令違反の防止にもつながります。まさに、業務の「仕組み化」を支える力強いパートナーとなるのが、AIによる効率的なシフト割り当てです。 参考:OTASUKEMAN COLUMN「 AIと数理最適化技術の違いについて解説!シフト作成で使用されるこれらの技術の特徴とは? 」 スタッフの負荷分散 シフト作成AIは、過去の勤務履歴や稼働時間、各スタッフの役割やスキルレベルなどを基に、勤務の偏りを自動的に是正することができます。特定の社員に業務が集中してしまう「属人化」やオーバーワークは、離職やモチベーション低下の要因となりますが、AIを導入することで、こうした課題を可視化し、公平かつバランスの取れたシフト構成を実現できる可能性が高まります 。 柔軟な働き方を推進する企業にとっては、ワークライフバランスの確保がブランド価値や従業員満足度に直結するため、負荷分散は重要な課題です。 参考:R-SHIFT「 AIによるシフト作成システム4選!AIを活用すると具体的に何ができるのか紹介 」 シフトの調整 突発的な休みや人員変更が発生した際、あらかじめデータを学習したAIは即座に代替案を提示し、再調整を効率的に行うことができます。従来は、こうした変更があるたびに手動で修正を行い、全体のバランスを再計算しなければなりませんでした。しかしAIであれば、既存のルールや条件を踏まえつつ、最適な対応を迅速に実行可能です。これにより、現場の混乱を最小限に抑え、サービス品質や業務の継続性を維持できます。変化の激しい現場こそ、AIによるシフト調整の恩恵を大きく受けられる領域といえるでしょう。 AIを活用したシフト作成のメリット AIを導入したシフト作成は、単なる「自動化」以上の価値をもたらします。業務効率だけでなく、組織全体の安定性や公平性の向上にもつながるメリットを紹介します。 スムーズな割り当てが可能になる AIは、膨大な勤務条件やスタッフの希望を一括で処理し、最適なシフトを短時間で作成できます。従来の手作業では、「全員の希望を反映しつつ、業務に必要な人員をそろえる」といった複雑な調整が担当者に重くのしかかっていました。 AIを活用すれば、これらの条件を効率よく整理し、スムーズな割り当てを実現できます。特に、シフト作成にかかる時間を削減したい、作成精度を高めたいと考える企業にとって、AIは非常に強力な支援ツールとなります。忙しい時期や人員の流動が激しい職場でも、安定した運用が可能です。 参考:OTASUKEMAN COLUMN「 AIと数理最適化技術の違いについて解説!シフト作成で使用されるこれらの技術の特徴とは? 」 法令や就業規則などを考慮できる シフト作成において、労働基準法や各社の就業規則への対応は不可欠です。AIは、これらのルールをあらかじめ組み込むことで、「連続勤務の制限」「休憩時間の確保」「勤務間インターバル」など、法令順守を自動的に担保します。 また、従業員ごとに異なる契約内容や雇用形態に対応した細かなルール設定も可能です。担当者が意図せず法令違反のシフトを組んでしまうリスクを大幅に低減でき、コンプライアンス面でも大きな安心を提供します。企業にとってAIは、正確な業務管理を支える信頼性の高いパートナーとなり得るのです。 参考:TUNAG「 シフト作成におけるAIの活用方法とは?知っておきたいメリット・デメリット、おすすめツールを解説 」 割り当てミスが減る 手作業によるシフト作成では、見落としや入力ミスによる割り当てエラーが避けられません。例えば「休暇取得希望を無視してしまった」「資格保持者の配置を誤った」といったヒューマンエラーは、現場の混乱や従業員の不満につながる要因となります。AIは、こうした条件の抜け漏れをシステム的にチェックし、不整合のない配置を自動で実現します。あらかじめ設定された条件に基づいて正確に動作するため、人的判断に左右されにくく、安定した運用が可能です。 AIを活用したシフト作成の注意点 AIによるシフト作成は多くの利点がありますが、すべてを自動化できるわけではありません。導入前に知っておくべき注意点を理解することで、より現実的な活用が可能になります。 イレギュラー時の対応が難しい AIはあらかじめ設定された条件やパターンに従って動作するため、突発的なイレギュラー対応には弱さがあります。当日の急な欠勤や業務内容の変更といった「現場判断」が求められる場面では、人間のような柔軟性を発揮することは難しいのが現状です。 また、スタッフ間の信頼関係やモチベーションの機微といった“数値化できない要素”への対応も不得手です。そのため、AIは万能ではなく、あくまで「補助的なツール」として考えることが重要です。 参考:ビジネスコンシェルジュ「 シフト管理にAIを活用するメリット|注意点やツールの選び方も解説 」 運用コストが発生する シフト作成AIの導入に当たっては、初期費用だけでなく継続的な運用コストも発生します。例えば、自社業務に合わせたカスタマイズ、スタッフ情報やルールの定期的な更新、トラブル時のサポート対応などが必要です。また、AIが最大限のパフォーマンスを発揮するためには、一定量のデータ整備や社内の理解促進も欠かせません。 したがって、導入に当たっては「何を目的にAIを導入するのか」「どの業務に最も効果を発揮するか」を明確にした上で、費用対効果を慎重に見極めることが求められます。 AIを活用したシフト作成ステップ AIによるシフト作成を効果的に導入するためには、段階を踏んだ準備と運用が重要です。以下で実務での導入に役立つ具体的なステップを紹介します。 ステップ1:目的と課題の明確化 まず必要なのは、「なぜ導入するのか」「何を改善したいのか」を明確にすることです。例えば「作成時間を短縮したい」「人員配置の偏りをなくしたい」など、現場で感じている課題を言語化し、関係者間で共有することで、導入後の評価基準も明確になります。 目的があいまいなまま進めると、AIが期待通りに機能しなかった場合に判断が難しくなります。また、課題によって最適なAI手法やツールも異なるため、このステップは導入全体の方向性を定める上で非常に重要です。 参考:アシスト「 AI導入はどう企画すればいい?AIの導入ステップについてわかりやすく解説 」 ステップ2:必要データの整理と整備 AIが正しく機能するためには、質の高いデータが不可欠です。過去のシフト表、勤務実績、希望休、労働時間、スキル情報など、AIが判断材料とする情報を体系的に整理しましょう。 また、データの形式や粒度にばらつきがあると、AIの学習や処理に支障をきたす可能性があります。できるだけデジタルで管理された形式でデータを用意し、不足している情報があればあらかじめ補完しておくことが理想的です。さらに、データに個人情報が含まれる場合は、適切な取り扱いとプライバシー保護にも留意する必要があります。 ステップ3:AIツールの選定とカスタマイズ 市場にはさまざまなAIシフト作成ツールが存在しますが、自社の課題や業務フローに合致するものを選ぶことが大切です。汎用的なSaaS型ツールもあれば、個別にカスタマイズ可能なソリューションもあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。 小規模事業所であればシンプルな操作性が重視され、大規模組織では柔軟な条件設定が求められるケースもあります。導入前には、無料トライアルやデモを活用し、実際の使い勝手や導入のしやすさを確認すると良いでしょう。 ステップ4:試験運用とフィードバック 本格導入の前には、一定期間の試験運用を実施し、実際の現場でAIがどのように動作するかを確認します。試験期間中は、担当者やスタッフからのフィードバックを収集し、操作性やシフトの妥当性、想定外の事象への対応力などを検証しましょう。 「特定の曜日に人員が偏る」「希望休が反映されない」といった問題点があれば、設定やデータの見直しが必要です。この段階で現場の理解を深め、AIへの信頼感を醸成することも重要です。スモールスタートでリスクを抑えつつ、改善点を早期に洗い出すことで、より効果的な本格運用につなげることができます。 参考:Mazrica Business Lab「 AI導入の基礎知識|導入の9ステップとおすすめAIツール紹介 」 ステップ5:本格運用と改善サイクルの構築 試験運用を経て本格導入に移行した後も、継続的な改善の視点が不可欠です。AIは導入して終わりではなく、使い続けるうちにデータが蓄積されそこからまた学習ができ、より最適なシフト作成が狙えます。定期的に運用状況を振り返り、「配置の偏りがないか」「現場の満足度は向上しているか」などを評価し、必要に応じて設定やルールをアップデートしましょう。 まとめ 人手に頼っていたシフト作成は、今やAIによって大きく進化しています。特に、生成AIやAIエージェントを活用することで、煩雑な条件を瞬時に処理し、最適な人員配置を提案できる時代になりました。 業務効率の向上はもちろん、従業員の満足度やコンプライアンス対応も実現できるため、企業全体の生産性を底上げする施策として有効です。今後の人材戦略において、AIによるシフト最適化は欠かせない選択肢といえるでしょう。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post シフト作成を自動化するAI手法|AI活用のメリットや注意点についても解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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外観検査の自動化の鍵はAI。メリット、手法、導入の要点を解説 2025.4.21 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 製造業における品質管理の要となる外観検査。近年、人手不足や検査精度のばらつきといった課題を背景に、AIによる自動化が注目を集めています。本記事では、AIを活用した外観検査のメリットや導入手法、成功事例を解説します。 目 次 ・ 外観検査の役割と現状  ・ 外観検査は品質管理の要  ・ 目視検査の限界と現場の課題  ・ AIの導入がもたらす解決策 ・ 外観検査を自動化するメリット  ・ 高精度な検査の実現  ・ 作業効率の向上  ・ 人件費の削減  ・ ヒューマンエラーの防止  ・ データ活用による品質管理の強化 ・ 外観検査自動化の主な手法 ・ AIを活用した外観検査手法 ・ 検査機を使った外観検査手法 ・ 外観検査を自動化する際のポイント  ・ 検査の課題を定義し、範囲を設定  ・ 最適なレンズ・照明・システムの選定  ・ 導入後の定期メンテナンスと精度維持 ・ 外観検査を自動化した事例  ・ 事例1:プラスチック加工品のAI外観検査で検査時間を36%削減  ・ 事例2:溶接外観検査の自動化で省人化とトレーサビリティを両立 ・ 外観検査はAIによる強力な自動化を 外観検査の役割と現状 製造現場の品質管理において重要なことの一つに外観検査があります。不良や欠陥を確実に見つけ出すこの工程は、品質ひいては顧客満足を守る最後の関門であり、企業ブランドの信頼を左右する重要な役割を担っています。しかし、従来の手法では限界も見え始めており、今まさに検査体制の見直しが迫られています。 外観検査は品質管理 製造業における外観検査は、製品の品質を守るための大切な工程です。傷、欠け、汚れといった外観上の不良を見逃せば、顧客からの信頼を失い、ブランド価値や売上にも大きな打撃を与えかねません。高品質を謳う企業にとって、外観検査の精度はそのまま企業の信頼性につながります。 目視検査の限界と現場の課題 現在、目視や検査員による判断に頼る現場が少なからずあり、そうした現場では精度のばらつきやヒューマンエラーが避けられない状況です。さらに、熟練者の高齢化や人手不足といった人材面の課題も深刻化しています。これにより、安定的な品質維持が難しくなっており、従来の検査体制の限界が浮き彫りになっています。 参考:tebiki「 目視検査の課題はどう解決する?原因や4つの対策を紹介 」 AIの導入がもたらす解決策 そうした課題を解決する手段として、AIを活用した外観検査の自動化が急速に注目されています。AIは、人間の目では見落としがちな微細な不良も高精度で検出でき、判断のばらつきを排除します。また、検査スピードの向上やデータ活用による品質改善にも貢献し、全体的な生産性と品質の底上げが可能です。 外観検査を自動化するメリット 外観検査の自動化は、単なる作業の機械化ではなく、製造現場全体の品質・生産性の向上に寄与する大きな改革です。AIや画像処理技術を活用することで、検査精度の均一化はもちろん、検査速度の向上やコスト削減といった多くのメリットが得られます。 さらに、検査データの蓄積と分析によって品質改善のヒントを得られるようになり、企業全体の競争力を高めることにもつながります。今後、製造現場における当たり前の選択肢として、自動化はますます広がっていくでしょう。 高精度な検査の実現 AIによる外観検査の大きな魅力の一つが、高精度な検査を安定して実施できる点です。従来の目視検査では、作業者の熟練度や体調、時間帯などによって判断がぶれることもありました。しかし、AIを用いたシステムであれば、常に一定の基準で、わずかな傷や欠陥も見逃さずに検出することが可能です。さらに、ディープラーニングの進展により、複雑な形状や模様の違いも高い精度で識別できるようになっています。 参考:AISIA-AD「 AI外観検査とは?画像処理の仕組みや事例・メリット、導入費用相場まで徹底解説 」 作業効率の向上 外観検査をAIで自動化することで、検査作業のスピードが大幅に向上します。人による検査では一つひとつ丁寧に目視しなければならず、多くの時間と集中力を要します。対して、AI検査システムはカメラで撮影した画像を瞬時に処理し、良否判定を行うことができます。 これにより、検査ラインのボトルネックが解消され、全体の生産効率も向上します。特に大量生産を行う現場では、この時間短縮効果が大きく、工程全体の最適化にも貢献します。 人件費の削減 人手による外観検査には、多くの検査員の確保と継続的な教育が必要です。しかし、AIによる自動検査を導入することで、こうした人件費の負担を大きく軽減することが可能になります。一度システムを導入すれば、長時間にわたって安定稼働させることができ、人手不足への対応にもつながります。 もちろん、すべての工程を無人化するわけではありません。検査員はより判断力が求められる最終確認や、システムの監視・改善といった業務にシフトすることができます。これにより、人的リソースをより戦略的に活用できるわけです。 参考:Remote Robotics「 外観検査をAIだけに頼らない!“あえて”リモート目視も取り入れる/リモートロボティクス×TDSE 」 ヒューマンエラーの防止 人間による検査には、どうしても「見落とし」や「判定ミス」といったヒューマンエラーのリスクがつきものです。特に、長時間の単調な作業では集中力が低下し、誤検出や不良品の見逃しが発生しやすくなります。 AIを活用した自動検査では、このような人的要因を排除することができ、常に一定の品質で検査をすることが可能です。また、AIは判断基準に基づいて機械的に判定するため、個人差によるばらつきもありません。製品の信頼性向上とクレーム削減を目指す企業にとって、ヒューマンエラー対策は大きな導入メリットの一つです。 データ活用による品質管理の強化 AIを活用した外観検査では、検査結果をすべてデジタルデータとして蓄積することが可能です。この蓄積データは、品質トラブルの原因究明や再発防止策の立案に活用できるほか、検査傾向の分析から製造工程そのものの改善にも役立ちます。 また、どの工程で不良が発生しやすいか、どの部品にばらつきがあるかといった洞察も得られるため、PDCAサイクルの高度化が実現します。従来の検査では得られなかった「見える化」によって、品質管理が一段と進化し、企業の競争力強化にも直結するのです。 外観検査自動化の主な手法 外観検査を自動化する方法には、大きく分けて「AIを活用した画像解析」と「専用検査機による定型的な検査」の二つがあります。それぞれに適した対象や導入コスト、運用の柔軟性などが異なるため、自社の製品や検査ニーズに応じた選定が重要です。 特に、複雑な形状や微細な差異を扱う製造現場では、AIの活用が進んでいます。導入の目的や課題を明確にし、最適な技術を選ぶことで、品質と生産性の両立を実現することが可能になります。 AIを活用した外観検査手法 AIを活用した外観検査では、画像認識技術を用いて、製品の不良を検出します。カメラで撮影された画像をAIが分析し、目視では見逃しやすい微細な傷や形状の違いまで高精度で判別することが可能です。また、ルールベースでは対応しきれなかった、事前に見いだせていない不良例を見つけ出すことも狙えます。 AI外観検査については、以下もご覧ください。 AIによる外観検査とは。ビジネス成長に向けたポイントも解説 検査機を使った外観検査手法 従来の検査機を使った外観検査は、あらかじめ設定した検査ルールやしきい値に基づいて、製品の表面状態を判断する方式で、言い換えればルールベースです。主に画像処理ソフトと照明、カメラを組み合わせて、寸法測定やキズ検出などを高速かつ安定的に行うことができます。ルールが明確で、製品形状や不良パターンが比較的シンプルなケースでは、非常に高い再現性を発揮します。 検査フローの標準化や設備化がしやすいため、大量生産ラインでの活用に適しているのが特徴です。近年ではディープラーニングベースのAIと組み合わせたハイブリッド型の導入も進んでおり、用途に応じた選択肢が広がっています。 参考:オプテックス・エフエー「 AI外観検査対応 ハイブリッド型画像処理システム『AI Stella Controller』 」 外観検査を自動化する際のポイント AIによる外観検査の導入は、多くのメリットをもたらす一方で、事前の準備や構成要素の選定によって成果が大きく左右されます。自社製品に合った適切な検査範囲の定義、光学機器の選定、システムの設計、さらには導入後の運用管理まで、各ステップを丁寧に設計することが成功の鍵です。単に機械を導入するだけではなく、「何を」「どこまで」自動化するかを明確にし、検査精度とコストのバランスをとることが重要です。 検査の課題を定義し、範囲を設定 AI外観検査を成功させるには、まず「検査で解決したい課題は何か」「どこまでを自動化するのか」を明確に定義することが不可欠です。また、製品全体を対象とするのか、一部の工程に限定するのかといった検査範囲も、予算や効果を左右する大きな要素です。 すべてを闇雲にAI化しようとすると、過剰な投資につながることもあります。まずは業務フローや過去の検査記録をもとに、現場の課題を可視化し、AI導入が最も効果を発揮するポイントを絞り込むことが、着実な第一歩になります。 参考:evort「 外観検査の自動化とは? 気になるポイントや具体的な導入方法、おすすめの関連製品をご紹介 」 最適なレンズ・照明・システムの選定 外観検査の精度を左右するのは、導入するAIの性能だけではありません。撮影に使用するカメラのレンズや照明の選定、撮像角度や検査台の構造まで、光学・機械設計の知見が不可欠です。AIに「見せる」映像の質を担保するためには、ハードウエアとソフトウエアが一体となったシステム設計が重要です。 参考:AISIA-AD「 外観検査の自動化とは?メリットや自動化の手法、成功ポイントを徹底解説 」 導入後の定期メンテナンスと精度維持 AIによる外観検査は「導入して終わり」ではなく、運用を通じて常に精度を保ち、進化させていくことが求められます。検査装置のレンズや照明の汚れ、機械部品の経年劣化、環境光の変化など、日々の小さな変化が検査精度に影響を及ぼす可能性があります。 そのため、定期的な点検・清掃に加え、必要に応じた再学習やしきい値の見直しが不可欠です。人とAIが連携し、現場にフィットした改善サイクルを回していくことで、長期的な品質保証と運用効率の両立が可能です。 外観検査を自動化した事例 外観検査の自動化は、製品品質の均一化や作業効率の向上に大きく貢献しています。ここでは、異なる業界の企業によるAI外観検査導入事例を紹介します。 事例1:プラスチック加工品のAI外観検査で検査時間を36%削減 プラスチック製品の切削加工を行う墨田加工では、円筒状部品の外観検査にAIを導入しました。従来は、約4320個の製品を2人の検査員で3日かけて目視検査していましたが、AI検査機の導入により製品をセットするだけで自動判定が可能になりました。 これにより、検査時間を36%以上短縮し、作業効率の大幅な改善を実現しました。さらに、AI検査と目視検査を組み合わせることで、全体の検査品質も向上し、人と機械の最適な連携による現場改善の好例となっています。 参考:経済産業省「 AI導入ガイドブック 」 事例2:溶接外観検査の自動化で省人化とトレーサビリティを両立 パナソニックでは、溶接工程の外観検査に「Bead Eye」というソリューションを導入しました。ロボットとスキャナーで溶接ビードを撮影し、AIが不良の有無を自動で判定する仕組みです。アンダーカット、スパッタなどの多様な欠陥を高精度に検出でき、目視検査に比べて省人化・検査標準化が可能になりました。加えて、検査データを蓄積・活用することにより、トレーサビリティの確保と品質保証体制の強化にも貢献しています。 参考:パナソニック「 お困りごと解決事例 – 目視検査工数・人員削減 」 AI外観検査の事例については、以下の記事もご確認ください。 防衛装備品の製造におけるAIによる外観検査 外観検査はAIによる強力な自動化を 目視検査の限界や人手不足といった課題を抱える製造現場において、AIによる外観検査の自動化は極めて有効なソリューションです。高精度な不良検出、作業効率の向上、検査データの活用による品質改善など、多くのメリットがあります。検査精度と生産性を同時に追求するなら、今こそAIを取り入れ、次世代の品質保証体制へと進化させるタイミングと言えるでしょう。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 外観検査の自動化の鍵はAI。メリット、手法、導入の要点を解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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AI技術まとめ。種類やリスク、メリットなどを解説 2025.4.2 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 ここ10年で、AI技術の発展は社会のあり方に大きな変革をもたらしてきました。私たちの生活やビジネスは今までにないスピードで変化している一方、AIの活用にはリスクを伴う側面があるのも事実です。AIはどのような進歩を遂げてきたのか、どのようなメリットが今後期待できるのか、そして運用に伴うリスクとは何かについて、解説します。 目 次 ・ AIの概要  ・ AIとは  ・ AI技術の歴史  ・ AI技術の現状 ・ AI技術の種類  ・ 画像認識  ・ 自然言語処理  ・ 音声認識  ・ 機械制御 ・ AI技術の進歩に伴うリスク  ・ 雇用の縮小  ・ 情報の取り扱い  ・ 思考フローのブラックボックス ・ AI技術の進歩によるメリット  ・ コストの削減  ・ 業務の効率化  ・ 人的ミスの防止  ・ データ分析  ・ 真に狙うべき「バリューアップ」 ・ AI技術の将来性  ・ 自動運転の普及  ・ 医療分野でのAI活用  ・ 生成AIの進化 ・ まとめ AIの概要 AIとは、人間の知的活動を模倣し、学習・推論・判断を行う技術の総称です。AIがどのような歴史を歩んできたのか、そしてどのようなテクノロジーに発展してきたのか、ここで確認しておきましょう。 AIとは AIは、人間の知能を模倣し、学習、推論、判断、認識などの能力をコンピュータ上で実現する技術です。AIは、自動運転、音声認識、画像認識、自然言語処理など、さまざまな分野で活用されています。 また医療分野などでは、AIは画像診断に用いられ、病気の早期発見に貢献しています。最近では、ChatGPTやMidjourneyなどの「生成AI」が登場し、文章や画像、動画などのコンテンツを生成できるAIとして注目を集めています。 AI技術の歴史 AIの研究は1950年代から始まり、ブームと冬の時代を繰り返してきました。第一次AIブーム(1950年代後半~1960年代)では、コンピュータによる「推論」や「探索」が可能となり、特定の問題に対して解を提示できるようになりました。 しかし、現実社会の複雑な課題を解決するには至らず、冬の時代を迎えます。その後、1980年代の第二次AIブームでは、知識を活用したエキスパートシステムが注目されましたが、限界が露呈し、再び冬の時代となりました。 現在は、機械学習やディープラーニングなどの発展により、第三次AIブームを迎えています。当時の課題を克服し、極めて高度な推論能力を獲得することに成功しました。 AI技術の現状 AI技術は今や医療、金融、製造業など、多くの産業でAIの導入が進み、業務効率化や新たな価値創出に寄与しています。それだけでなく、各産業のインフラに当たる部分でも活用されていることから、社会を支える基盤技術として揺るぎない存在となり、冬の時代はもう来ないのではという見方もあります。 また、内閣府が提唱するSociety 5.0を実現する重要な技術とも捉えられています。Society 5.0は我が国が目指すべき未来社会の姿であり、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会であり、「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」のことです。 参考:北海道情報大学「 AI(人工知能)とは?歴史や仕組みをわかりやすく解説 」   :Gen-AI Media「 人工知能(AI)の歴史|時系列でAIブームについてや今後の流れ 」   :内閣府「 Society 5.0 」 AI技術の種類 AI技術は、多くの手法を組み合わせることで高度なタスクに対処できるように発展してきました。ここでは主なAI技術の種類について、解説します。 画像認識 画像認識は、カメラで撮影した画像や映像から特徴を抽出し、ヒトやモノ、文字などを識別する技術です。ディープラーニングを活用した画像認識技術では、人間よりも高い精度を出すことも可能で、製造業や医療、福祉などの分野で活用が進んでいます。 自然言語処理 自然言語処理は、人間が使う言語をコンピュータに理解させ、適切に処理・生成する技術です。これにより、テキストの自動生成や翻訳、感情分析などが可能となり、チャットボットや音声アシスタントなどのサービスで活用されています。 音声認識 音声認識は、音声を解析し、言葉の内容や文脈から情報を抽出する技術です。ディープラーニングを用いることで、音響分析から特徴量を抽出し、予測を行い、文字起こしや音声コマンドが可能となります。スマートフォンの音声アシスタントや自動翻訳デバイスなどで広く利用されています。 機械制御 機械制御とは、AIが機械やシステムの動作を自律的に管理・調整する技術を指します。これにより、産業用ロボットや自動運転車、ドローンなどが人間の介入なしにタスクを遂行できます。 例えばAIを活用したドローンは、カメラ映像やセンサー情報を基に自律飛行し、災害時の被災地調査や農業分野での作物管理などに利用されています。また、AIによる空調制御システムは、来館者数や天候などのデータを基に空調の最適化ができます。最適な温度や湿度を自動で維持することで、エネルギー効率の向上と快適な環境の提供をしています。 参考:Vieureka「 AI・機械学習・ディープラーニングの違いとは? 」   :SONY Developer「 AI技術が活用される分野とは? 」 AI技術の進歩に伴うリスク AI技術の進歩は、多くの利点を私たちにもたらしてくれる一方、運用に際しては懸念すべきリスクも伴います。 雇用の縮小 AIの導入により、特定の業務が自動化されることで、人間の労働需要が減少し、雇用の縮小が懸念されています。特に、単純作業や定型業務はAIによって代替される可能性が高く、労働市場に影響を及ぼすと考えられます。 日本では人口減少が予測されていることから、AIに代替可能な業務は遅かれ早かれそうなっていくでしょう。ただ、労働市場の現状をかえりみない急進的な無人化は、労働者や社会の大きな反発を生むかもしれません。 情報の取り扱い AIは大量のデータを処理・分析するため、個人情報や機密情報の取り扱いが重要な課題となります。特に、顔認識技術やスマートスピーカーなどはユーザーのプライバシーに直結する情報を収集するため、適切なデータ管理が求められます。仮に、AIが悪意ある第三者によってハッキングされると、個人情報が流出し、大きな社会問題となる可能性もあります。 AIが利用するデータが偏っている場合、不適切な判断や差別的な結果を生むリスクもあります。例えば企業の採用活動におけるAIの活用が、無意識のバイアスを持つデータに基づいてしまうと、意図せずして差別的な選考を行うかもしれません。そのため、データの透明性や倫理的なガイドラインの整備が必要です。 思考フローのブラックボックス AIは複雑なアルゴリズムを用いて推論をしますが、そのプロセスが不透明であることが問題視されています。特にディープラーニングを活用したAIモデルは、入力データから出力結果を導き出すプロセスが複雑すぎて、人間が理解しにくいという特徴を抱えます。 例えば、AIが金融審査や医療診断で判断を下す場合、その決定理由を明確に説明できないと、利用者にとっては不満や不安の要素となります。ブラックボックス化したAIの判断が間違っていた場合、責任の所在が不明確になり、誤った判断が社会的な問題を引き起こす可能性も出てくるでしょう。 参考:消費者庁「 AI利活用ハンドブック 」   :内閣府「 AI戦略 – 科学技術・イノベーション 」 AI技術の進歩によるメリット リスクが伴うにせよ、AIの進歩と積極的な導入は欠かせない取り組みとなっていくでしょう。AI技術の進歩は、具体的にどのようなメリットを私たちにもたらすのかについて、整理しておきます。 コストの削減 AIは業務の自動化や最適化を可能にし、企業のコスト削減に貢献します。例えば、AIチャットボットの導入により、カスタマーサポートの人件費を削減できるほか、AIによる生産ラインの自動化は、人手不足の解消と生産効率の向上を実現します。 さらに、AIはエネルギー管理の最適化にも貢献しており、工場やオフィスの電力消費を抑えつつ、環境負荷の低減にもつなげています。 業務の効率化 AIを活用することで、単純作業の自動化やデータ処理の高速化が可能となり、業務の効率化が進みます。例えば、経理業務ではAIを活用したOCR(光学文字認識)技術によって請求書のデータを自動入力できるため、手作業の削減につながります。 また、AIによる在庫管理や物流最適化システムは、需要予測の精度向上にも貢献し、無駄な在庫の削減や配送コストの削減を実現します。 人的ミスの防止 AIは人間に比べてミスが少なく、安定したパフォーマンスを発揮できるため、業務の品質向上にも寄与します。特に、金融機関ではAIを活用した取引監視システムにより、不正取引の検出精度が向上し、人的ミスによるトラブルを未然に防ぐことが可能です。 データ分析 大量のデータを迅速に分析し、ビジネス戦略の最適化が可能になる点も、AIに大きく期待したい点です。 マーケティング分野では、顧客の行動データを分析し、ターゲティング広告の精度を高めることができます。製造業では、AIを活用した異常検知システムを活用することで、設備の故障予測やメンテナンスの最適化が実現できます。 真に狙うべき「バリューアップ」 AIの導入に対し、多くの企業が業務の効率化やコスト削減を目的に取り組んでいます。しかしそれだけでは、AIの真の価値を引き出しているとは言えません。本当に目指すべきなのは、企業やサービスの本質的な価値を向上させる「バリューアップ」です。 例えばAIを活用することで、よりパーソナライズされたサービスの提供が可能になります。ECサイトでは、お客様の購買履歴や行動データを基に、最適な商品をレコメンドすることで、よりスムーズな購買体験を実現する機能が実装されるようになってきました。 またAIの進歩に伴い、これまでになかった新たなビジネスの形を生み出す可能性を秘めています。製造業では、AIを活用した「予防保全システム」によって、機器の異常を早期に検知し、適切なタイミングでメンテナンスを実施することで、設備のダウンタイムを最小限に抑えることが可能です。 AIを導入する際には、「単なるコスト削減」ではなく、「どのようにして事業の成長や価値向上につなげるか」を意識することが、今後の成功の鍵となるでしょう。単に労働力を補填するためだけでなく、AIにしかできない仕事を任せられるよう、より一層の技術への理解が必要です。 参考:Biz/Zine「 現在の“DX”では新たな価値は生まれない──真の変革をもたらす『バリューアップ型AI』とは 」 AI技術の将来性 AI技術は今後も進化を続け、さまざまな分野で活用の幅が広がっていくことが予想されます。間近に迫っている、実現可能性の高いAIの未来としては、以下の三つが代表的です。 自動運転の普及 例えばAIの発展により、自動運転技術はますます高度化しています。現在はレベル3(条件付き自動運転)が実用化されていますが、今後はレベル4(完全自動運転)への移行が期待されているところです。 このような見通しが実現すれば、運転手の負担軽減だけでなく、渋滞の緩和や事故の削減にもつながると考えられています。 またAIを活用した交通最適化システムが普及すれば、都市の交通インフラが大きく変わる可能性もあるでしょう。 自動運転についてはこちらもご覧ください。 自動運転だけじゃない。自動車×AIの最先端 医療分野でのAI活用 AIの診断技術はすでに医療の現場で活躍しており、がんの早期発見や画像診断の精度向上に寄与しています。医師個人の経験に依存せず、ヒューマンエラーのリスクも極めて低い医療環境が確立され、それでいて1人当たりの治療や診察にかかる時間も大幅に短縮されます。 将来的には、AIによる診療支援や、患者ごとの最適な治療プランの自動提案が実現することで、より高品質な医療サービスが提供されるでしょう。 生成AIの進化 最近では、AIが文章や画像、音楽を自動生成する生成AIが注目を集めています。従来はAIにとって苦手とされていたゼロから何かを創り出すことを、今や一定の品質を保ちつつ実現できるようになってきました。 生成AIがさらに進化すれば、広告やマーケティング分野で、より短時間で高品質なコンテンツを作成できるようになり、ビジネスのスピードが加速するでしょう。また、映画やゲーム業界では、AIがストーリーやシナリオを提案することで、新たな表現の可能性を広げることが期待されています。既存の表現活動を進化させるツールとしても、AIはこの分野で注目されます。 参考:人工知能学会「 AIマップ 」   :Skill Up AI「 AI活用事例20選 」 まとめ AI技術は私たちの生活やビジネスに多大な影響を与えており、今後もその進化は止まることはありません。AIの活用を単なる業務の効率化にとどめるのではなく、事業全体の成長や競争力の向上につなげる「バリューアップ」の視点を持つことが、今後の成功の鍵となるでしょう。 また、AIの活用にはリスクも伴います。ブラックボックス化の問題やプライバシーの保護、倫理的な側面など、慎重な対応が求められる場面に備えなければなりません。AIの導入に当たっては、技術の進化に対応しつつ、適切なガイドラインを設けることが大切です。 今後のAI活用を検討する際は、「どのようにして企業や製品・サービスの本質的な価値を向上させるか」を意識すべきでしょう。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post AI技術まとめ。種類やリスク、メリットなどを解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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AIの活用事例7選。注目の業界ごとに、AI活用の展望も解説 2025.3.27 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 AIの活用事例は、ここ数年で日本でも広がり続けています。本コラムでは、製造業、飲食業、物流業、人材業など七つの業界で一つずつ事例を挙げ、さらには注意点や展望も解説します。 目 次 ・ AI(人工知能)とは何か? 基本概念と現状  ・ 再確認、そもそもAIとは  ・ AIの現状 ・ ビジネスにおけるAI活用事例  ・ 製造業界におけるAIの活用:化学品製造の自動運転化  ・ 飲食業界におけるAIの活用:顔認証による注文システム  ・ 物流業界におけるAIの活用:需要予測モデルによる横持ち計画の最適化  ・ 人材業界におけるAIの活用:求人ビッグデータの解析と営業支援  ・ 自動車業界におけるAIの活用:タクシー需要予測システム  ・ スポーツ業界におけるAIの活用:選手パフォーマンスの詳細解析システム  ・ 医療業界におけるAIの活用:AI問診システムによる業務効率化と教育支援 ・ AIの未来とさらなる活用可能性  ・ AI活用におけるプライバシーやモラルの懸念  ・ 共存型AIの可能性  ・ 「強いAI」の登場と期待 ・ まとめ AI(人工知能)とは何か? 基本概念と現状 はじめに、現在AIとはどのような定義に基づいて運用されているのか、基本を確認しておきましょう。 再確認、そもそもAIとは AIとは、「知能」自体の定義がないため、研究者によりさまざまな説明がありますが、概ねは「コンピュータが人間と同様の知能を示す行動を実現するため技術やその研究分野」のことです。 具体的には、学習、推論、問題解決、近く、言語理解などの能力を機械に実装しようとする試みです。 出典:日本ディープラーニング協会監修『ディープラーニングG検定公式テキスト第3版』 AIの現状 近年、AIの進化は加速度的に進んでおり、企業や研究機関が競い合うように新しい技術を生み出しています。特に、 機械学習やディープラーニングの発展により、AIは自ら学習し、データをもとに精度を向上させる能力を持つようになりました。 高度なAIがここ数年で誰でも使えるようになったことから、ビジネスの世界でも次々と導入事例が登場しています。もはやAIなしでは、企業の成長はありえない時代に突入しているとも言えるかもしれません。 参考:NECソリューションイノベータ「 AI(人工知能)とは?意味やビジネスの例も交えわかりやすく解説 」f ビジネスにおけるAI活用事例 具体的にビジネスの世界では、どのようなAI活用が行われているのでしょうか。ここでは7本のAI活用事例について、テーマ別に解説します。 製造業界におけるAIの活用:化学品製造の自動運転化 製造業ではAI技術の導入が加速し、例えば化学品製造の自動運転という革新的な取り組みが進んでいます。従来の化学プラントの運転は、熟練技術者の経験や直感に大きく依存していました。しかし近年では AIを活用した自動制御により、より精緻で効率的な運用が可能になっています。 日本触媒とNTTコミュニケーションズが進めるプロジェクトでは、連続蒸留工程にAIを導入し、運転データや操作履歴を学習させることで、プラントの自動運転を実現しました。これにより、運転の最適化、安定した生産、熟練運転員の負担軽減など、さまざまなメリットが生まれています。AIがリアルタイムで制御を調整することで、生産の安定性向上やコスト削減にも寄与しています。 この技術は化学業界だけでなく、幅広い製造業分野への応用が期待されています。熟練技術者の高齢化が進む中、技能継承の新たなアプローチとしても注目されているところです。運転の標準化や生産効率の向上を支援するAIの活用は、今後ますます重要な役割を担うでしょう。 出典:NTTコミュニケーションズ「 熟練運転員の操作を学習したAIにより状態が複雑に変化する化学品製造工程の自動運転に成功 」 飲食業界におけるAIの活用:顔認証による注文システム 飲食業界では、AIを活用した顔認証システムによる注文の自動化が進んでいます。ラーメン凪では、AI技術を活用した 「顔パス」注文システム を導入して注目を集めました。 このシステムでは、店舗に設置されたiPadを使い、顔認証によって食券を購入せずに注文できる仕組みが採用されています。利用者は顔写真、生年月日、電話番号を登録するだけで会員になれるため、従来の食券販売機を使わずに注文が円滑にできます。さらに、 顔認証によって「顔パス」、つまり「このお客がいつも頼むのはこのメニュー」とシステムが認識して注文が処理されるという点も特徴的です。 この顔認証システムの目的は、リピーターの可視化とサービス向上です。店員は顔パス注文を利用するお客様が常連であることを瞬時に把握できるため、 「ありがとうございます」ではなく「いつもありがとうございます」と声をかけることができます。これにより、顧客満足度の向上や、より親しみやすい接客が可能です。 こうした取り組みは店舗への来店頻度を高め、売上の安定化につなげる効果が期待されています。今後、 顔認証による注文システムの全店展開も計画されており、AIを活用した飲食店の利便性向上と顧客管理の効率化も進んでいくでしょう。 参考:ITmedia「 年間2万円で食べ放題、話題のラーメン凪 AIで「顔パス」注文システムの狙いは 」 物流業界におけるAIの活用:需要予測モデルによる横持ち計画の最適化 物流業界では、AI技術の導入が進み、業務効率化や精度向上が図られています。例えばアスクルは、物流センターと補充倉庫間の商品移動、いわゆる「横持ち」計画にAIを活用した需要予測モデルを導入しました。 このモデルは「いつ、どこからどこへ、何を、いくつ運ぶべきか」をAIが指示するもので、従来は担当者の経験や知見に頼って手作業で計画を立てていた部分を自動化しています。これにより、需要予測の精度が向上し、ALP横浜センターにおいては商品横持ち指示の作成工数が約75%、入出荷作業が約30%、フォークリフト作業が約15%、それぞれ削減されるという成果を挙げています。 出典:アスクル「 物流センターと補充倉庫間の商品横持ち計画にAI需要予測モデルを活用 」 人材業界におけるAIの活用:求人ビッグデータの解析と営業支援 人材業界では、AI技術を活用した求人情報のビッグデータ解析が進んでいます。キャリア教育事業などを展開するCredo Ship.は、ウェブ上の主要な求人サイトから1日10万件以上の新規求人情報を収集し、これらのデータを効率的に活用するためのシステム開発を行っています。 同社は、求人広告代理店向けの営業支援アプリ「シエスタ」を開発しました。このアプリは膨大な求人データを基に、地域別の給与平均や業種・職種別の傾向などを分析し、営業活動を効果的にサポートするものです。 求人情報は、報酬の表記一つをとっても時給、月給、日給など多様にあり、金額の記載形式が統一されていないため、データ抽出には高度な自然言語処理技術が必要という問題を抱えています。しかしAIを活用することで、これらの情報を正確に解析し、必要なデータを自動的に抽出するシステムを構築できたということです。 この取り組みにより求人広告代理店は、データに基づいた提案や競合他社との比較が可能となり、営業効率の向上が期待されています。また、採用や人材派遣などのHR業界全般にもデータを提供し、事業の拡大に寄与しています。 出典:ZENK「 求人ビッグデータのAI解析で ネット上に溢れる求人情報の新たな活用方法を開拓 」 自動車業界におけるAIの活用:タクシー需要予測システム タクシー業界においては需要予測が注目されています。名古屋市を中心に展開するつばめタクシーグループは、NTTドコモと共同でAI需要予測システムを開発して導入しました。 このシステムは、携帯電話の現在地情報、過去の乗降データ、周囲の空車車両数などを基に、リアルタイムでお客様の潜在的な位置を数値化して予測するものです。AIは日々学習を重ね、その予測精度は95%以上に達しているとしています。 従来、タクシードライバーは経験や勘に頼って営業していました。そのため営業成績にはドライバー間のギャップも生まれやすかったものですが、このシステムの導入により、データに基づいた効率的な営業が可能となりました。その結果、未経験者でも収入の安定化が図られ、新人ドライバーの平均年収は433万円と、全国トップクラスを誇ります。 参考:つばめあんしんネットグループ「 AI需要予測と名古屋市No.1の無線配車回数 」 スポーツ業界におけるAIの活用:選手パフォーマンスの詳細解析システム スポーツ業界では、AI技術を活用した選手のパフォーマンス解析が進んでいます。サッカー選手の動きを詳細に分析するシステムとして注目されているのが「Playermaker」です。 このシステムは、選手の足首に装着する軽量なデバイスを用いて、ピッチ上での動作データを高精度に収集します。1秒間に1000回のサンプリングを行い、左右それぞれの足のタッチ数、ボール保持時の移動距離・時間、各足でのキック力など、詳細な情報を提供できるのが特徴です。 従来のGPSベースのトラッキングシステムとは異なり、Playermakerは足元に直接装着するため、より正確なデータ取得ができます。取得したデータは専用のアプリで即座に確認でき、選手やコーチがリアルタイムでパフォーマンスの分析やトレーニングの調整に役立てることも可能です。 Playermakerはサッカー以外のスポーツへの応用も進めており、バスケットボールなど他の競技でも選手の動作解析に活用されています。今後はAIデバイスを用いた、高度なスポーツサイエンスの発展も期待できるでしょう。 参考:ALLSTARS「 選手の動きを徹底的に解析するシステム、Playermakerとは 」 医療業界におけるAIの活用:AI問診システムによる業務効率化と教育支援 医療業界でのAI活用の方法の一つに、問診システムがあります。宮城県の石巻赤十字病院では、診療の効率化を目的として「ユビーAI問診」を導入しました。 従来、患者の問診やお薬手帳の情報入力は医師が手作業で行っており、特に夜間の救急外来では業務負荷が大きな課題となっていました。そこでAI問診システムを活用することで、患者が事前に入力した問診データや服薬情報が自動的に整理され、カルテの予診作成や参考病名の提示が可能になっています。 導入から約2カ月半で、医師と看護師の作業時間が合計約44時間短縮され、1回の診察当たり約3分の時間削減を達成したとしています。医療スタッフの負担軽減につながるだけでなく、患者との対話により多くの時間を割けるようになりました。さらに、研修医の学習ツールとしても活用されており、AIが提示する病名リストを参考にしながら、鑑別診断の幅を広げることが可能です。 参考:ユビー「 1回の診察あたり3分の作業時間短縮を達成。参考病名機能は研修医の学習にも有益 」 AIの未来とさらなる活用可能性 AIの技術革新は著しく、上記のようにさまざまな業界での活用が進んでいます。今後も、AIの可能性は現在の活用事例にとどまらず、現在の想像を超えた進展をしてもおかしくありません。それにより、さまざまな効率化だけでなく、新たな価値創出や社会問題の解決も期待されます。 AI活用におけるプライバシーやモラルの懸念 AIの進展に伴い、その利便性や可能性が注目される一方で、倫理やプライバシー保護に関する課題も浮かび上がっています。例えば、顔認証技術を活用した飲食業界のシステムでは、利用者データの管理方法が重要であり、情報流出のリスクを最小限に抑える仕組みが欠かせません。人材業界におけるAIによる求人情報解析では、適切なアルゴリズム設計が不可欠であり、データの偏りや誤った判断が採用の公平性に影響を与えないような運用が必要です。 こうした課題に対応するため、AIを導入する前に、AIに関する倫理の確立と、厳格なデータ管理ルールの策定が不可欠となります。 参考:ギグワークスタイル「 AI活用で私たちのプライバシーが脅かされる?AIによる個人情報の漏洩リスクと問われる企業倫理 」 共存型AIの可能性 今後、AIは「共存型AI」の時代へと移行することも考えられます。つまり、単なる業務の自動化ではなく、人間とAIが協調してより良い成果を生み出す社会の実現の可能性であり、目指すべき姿の一つと捉えられるでしょう。 AIありきの意思決定やライフスタイルには当然、利点も欠点もあります。AIと共存する社会が今後どうなっていくのか、実践的に観察を続けていくべきでしょう。 参考:東京新聞「 「ドラえもん型AI」もうすぐ実現? 人とAIが「共生」する未来社会って? 第一人者・栗原聡教授に聞いた 」 「強いAI」の登場と期待 AI技術の発展の先には、将来的な「強いAI(AGI)」の登場も予想されています。現在のAIは特定のタスクや課題解決に特化して設計されており、「弱いAI(Narrow AI)」と呼ばれています。今後は、人間の知性に近い、もしくはそれを超える柔軟な認知能力をもち、複数の課題や未知の課題に対しても柔軟に適応し、状況に応じた判断や創造的な課題解決ができるAGIの開発が進む可能性があります。 現在、AGIは登場していないと捉えられますが、生成AIやAIエージェントの進展はAGIが登場する時代を想起させます。この技術が確立されれば、AIは単なるツールではなく、より主体的に問題解決を行う存在へと進化するでしょう。 参考:RICOH「 AIの種類とは?汎用型・特化型・強いAI・弱いAIの違いやできることを解説 」 まとめ AIの未来には、多くの可能性が広がっています。しかしその進化を適切に管理し、社会全体にとってプラスとなるよう活用するためには、技術の発展と同時に倫理や規制の整備が求められます。今後のAI技術の進歩と、それに伴う社会の変化を見据えつつ、持続可能で有益なAIの活用方法を模索していくことが重要となるでしょう。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、NewsPicksプロピッカーとして活動するほか、日経クロストレンドなどメディア寄稿多数。 The post AIの活用事例7選。注目の業界ごとに、AI活用の展望も解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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医療へのAI導入。いのちを守るための壁を越えるには 2021.8.15公開 2025.3.26更新 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 AIはさまざまな分野で導入が進んでいますが、「精度の高さ」が特に求められるのが医療現場です。もちろん、人の命を扱うためです。医療現場へのAIの導入を目指す方に向け、活用事例やメリット、課題、関連分野でのAI活用の状況についてお伝えします。 目 次 ・ 医療現場でのAI導入の実際 ・ 医療業界でAIが注目されている理由 ・ 医療現場へのAI導入メリット  ・ 事務作業の効率化  ・ 医療データの収集、分類、分析  ・ 医療業務の効率化 ・ 地域による医療格差を解消 ・ ヒューマンエラーの防止 ・ 医療現場でAIを導入する際の課題  ・ 医療従事者のAIに関する知識の不足  ・ AIの説明性(XAI)と妥当性の検証  ・ データが少ない疾病への対応  ・ エラーによる被害  ・ プライバシーの問題 ・ 医療現場でのAI活用事例  ・ レセプト業務の自動処理  ・ 診療録(カルテ)解析  ・ AI画像診断  ・ コミュニケーションロボット ・ 医療関連分野でのAI活用と展望  ・ 新薬の開発  ・ 診察・治療の支援  ・ 介護 ・ AIは医師にとって「医療の補助ツール」 ・ 医療現場はAIの壁を乗り越えられるか 医療現場でのAI導入の実際 2022年度の診療報酬改定により、同年4月から新たに「人工知能技術(AI)を用いた画像診断補助に対する加算(単純・コンピュータ断層撮影)」が、保険適用されることが決まりました。画期的なことであり、AIを用いた画像診断支援の医療領域へのさらなる広がりが期待されています。これが象徴しているように、医療現場では主に画像診断などを目的に、医療用の画像認識AIを開発が進んでいます。 一方で、医療従事者の多くがAIに関する知識を十分に得ていないなど、現場でAIを存分に活用するにはまだまだ多くの課題が残されています。また、ディープラーニングなどAIに関わる技術が進歩してきたとはいえ、現場医療に十分な有効性を発揮できるかの妥当性が十分に検証されていないケースもあり、AIが人に代わって意思決定を担うようになるまでには、まだ時間がかかるのが実際です。 出典:WIRED 「グーグルが開発した“医療用”の画像認識AI、その実用化までの課題」   :産総研マガジン 「医療AIとは?」 医療業界でAIが注目されている理由 医療業界でAIが注目されている理由には主に三つあります。 一つ目は、医療現場におけるヒューマンエラーです。ヒューマンエラーは時に大きな医療ミスにつながることがあり、医師や看護師の知識・スキル不足というよりは、人手不足や効率不足による無理な現場状況が原因であることが多いとされています。人間は単純作業の繰り返しの中でミスを起こすことがありますが、AIは膨大な回数の単純作業でも同じ結果を出し続けることがまさに得意です。そのため、ヒューマンエラーを抑止できると期待されます。 二つ目は、医療の地域格差です。過疎化が進むほど医療機関など医療リソースが少なくなる傾向にあり、医師や看護師など医療従事者一人ひとりにかかる負担が大きくなっています。こうした負担の偏りを解消するためにも、AIが医療支援で効果を発揮すると期待されます。 三つ目は、政府レベルで課題として捉えられていることです。厚生労働省は2017年の「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」で、AI開発を進めるべき重点領域として、「ゲノム医療」「画像診断支援」「診断・治療支援(検査・疾病管理・疾病予防も含む)」「医薬品開発」「介護・認知症」「手術支援」の六つを定めています。 出典:厚生労働省「 保健医療分野におけるAI活用推進懇談会 報告書 」 医療現場へのAI導入メリット 以上のように、医療現場へのAI導入はさまざまな分野で進められている一方、命に関わる重要な部分についてはやはり医師による判断が必要であり、AIはあくまで支援ツールとしての位置付けにあります。では、医療現場でAIを活用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。 事務作業の効率化 レセプト業務へのAI導入事例でもあったように、決まった形式のデータを処理するような定型的なタスクはAIの得意とするところです。レセプトをチェックするAIのほか、受付業務、精算業務など、さまざまな医療事務がAIによってさらに効率化される可能性があります。 医療データの収集、分類、分析 多くのデータから規則性を見出し、共通する部分を特定、一定の基準に従って分類することもAIが得意とするタスクです。自然言語処理を用いたカルテ診断AIの事例であったように、その患者の病歴が長い場合など、データが膨大になるケースでは医師でも判断に困難を伴うこともあります。AI技術を用いることで、このようなビッグデータの収集や分析を行い、医師の治療をサポートに役立てる可能性があります。 医療業務の効率化 上記の事務処理以外にも、医療現場にてAIが効率化に寄与できる場面は多いとされています。例えば、カルテ分析や画像認識は医療行為に直接関わってくるものであり、診断のすべてまでもAIに任せることはできませんが、医師の判断を支援できるでしょう。AIが治療について判断するのではなく、意思決定に必要な情報をより早く正確に出し、医師が最終的に選択するという運用が、現実的で効果が高いとされています。 地域による医療格差を解消 医療の質やアクセスは地域によって大きく異なります。特に、地方や過疎地域では医師の不足が深刻な問題となっているのが現状です。 AIの導入により、遠隔医療や診断支援が可能になれば、都市部と地方の医療格差を解消する大きな一歩となるでしょう。例えば、AIが画像診断を行い、その結果を専門医が遠隔で確認するシステムが普及すれば、専門医がいない地域でも高度な医療を受けられる可能性が広がります。 また、医療チャットボットの活用により、初期診断や健康相談が容易になれば、患者の負担軽減にもつながります。 ヒューマンエラーの防止 医療現場では、誤診や投薬ミスなどのヒューマンエラーが大きな課題となっています。AIは過去の診断データや最新の医療情報を基に、医師の判断を補助し、誤診のリスクを低減することが可能です。 また、処方箋の誤りを検出するAIシステムや、患者ごとの投薬履歴を管理するシステムが導入されれば、医療事故の防止につながります。またAIは疲労やストレスと無縁なため、人的ミスが発生しやすい状況でも安定した精度を維持できます。 医療現場でAIを導入する際の課題 医療AIの可能性の高さや成功事例を知っても、なかなか導入に踏み切れないというのが多くの方の抱えている実情です。そこで、医療におけるAI導入の課題についてまとめてみます。 医療従事者のAIに関する知識の不足 AIは高度な技術知識を伴う一つの専門領域であり、それを扱う側にもある程度の知識が必要になります。AIはいずれ、医療現場のあらゆる箇所で導入が進んでいくと考えられますが、やはり医療従事者にも一定の知識を習得することが求められます。こうした背景もあり、医師を始めとした医療従事者が知識不足にならないよう、文部科学省などは大学医学部の新たなカリキュラムに人工知能(AI)やビッグデータなど情報科学技術の活用を柱として盛り込む方針を2022年に固めています。 出典:読売新聞 「医学部の新カリキュラム「AI・ビッグデータ」活用に重点…感染症教育も大幅に充実」 AIの説明性(XAI)と妥当性の検証 近年、「説明可能なAI(XAI:Explainable AI)」という言葉もキーワードになっていますが、特定の機能に特化したAIの機能が十分に高いだけでは不十分であり、なぜそのような判断をAIがしたのかの説明性を担保し、またAI技術の妥当性の検証が十分に行われる必要があります。 AIの学習方法にはさまざまありますが、例えば画像診断AIのような疾病診断を支援するAIの場合には、過去の検査内容などを読み込んで学習させる「教師あり学習」が用いられることが主流です。この場合、AIは学習したことは正確に判断できる一方で、学習していないことには当然ながら対応ができません。そのため、訓練用のデータセットと同様の条件のデータでは正確な判断を下せたとしても、実際の医療現場で取得される新規のデータに対して同様の判断ができるかどうかは未知数ということです。また、十分な量のデータセットを用いて学習を行ったつもりでも、特定のグループのサンプルが足りていない場合には偏った診断をしてしまう可能性もあります。 いわゆるPoC(Proof of Concept:概念実証)で成功しても、実際の本番環境である医療シーンで活用できるかは別問題であり、実際の医療現場を想定した検証を十分に行う必要があります。 参考: The Medical AI Times「医療AIの最新活用事例とは?医師が解説【2021年版】」 データが少ない疾病への対応 AIは、できるだけ多くのデータを収集して学習することで分析の精度が増し、実務レベルでも使えるようになっていきます。その点で課題となるのが、データが少ない疾病の医療サポートには使いづらいという点です。 これはAI活用に限った話ではなく、症例の少ない疾病は確実と言える治療法がないため、医師でも誤診や判断に迷うこともあります。AI活用においても大量のデータをどのように集めるのかが課題です。一方で、少ないデータからでもAI処理の手法を工夫することで分析の精度を高められることもあります。 エラーによる被害 十分なデータがあり、適切なアルゴリズムで運用すればAIは多くの面で有用となりますが、システムが間違いを起こす可能性も否定できません。人間であればあり得ないような間違いを起こすこともあり、人の健康や命を扱う医療現場においては重大な被害につながる危険性もあります。 そのため、AIはあくまで医療支援をするツールとして運用し、人間の判断を重視し、重大なエラーを防ぐ仕組みづくりが大切です。 プライバシーの問題 AIを使うに当たって分析に必要なデータを収集し続けるため、プライバシーの問題が常に付きまといます。医療現場においても患者のプライバシーの問題はあり、データの取り扱いを間違えると訴訟に発展するリスクもあります。また、診断において医師が適切に介入しないと、患者本人の意思に反して病状が伝わってしまうこともあります。 医療現場においてAIを運用する場合は、取得するデータだけでなく、出力として得られる情報の取り扱いも十分に配慮されなければなりません。 医療現場でのAI活用事例 医療現場へのAI導入を目指すに当たり、まず実際の事例を知ることが第一です。医療AIは、命を扱うことから慎重にならざるを得ない面があるものの、さまざまな場面で活用が進められています。五つの活用事例を見ていきましょう。 レセプト業務の自動処理 レセプトとは診療報酬明細書のことです。施した診療内容を基にレセプトを作成し、審査支払機関へ提出するのがレセプト業務です。定型的な処理を得意とするAIはバックオフィス業務との相性が良いとされており、その業務の一部をAIで自動化するソリューションの開発も進められています。 例えば、人間が作成したレセプトを確認するためのAIチェッカーが提供されており、複数のAIプロダクトが実際に現場で使用されています。AIでレセプトをチェックすることでミスを高確率で見つけることができ、誤請求の防止や事務業務の効率化につながることが期待されます。 診療録(カルテ)解析 ディープラーニング技術や最近のTransformerモデルなど、機械学習技術の進化により、テキスト情報を処理する技術分野である自然言語処理の能力も発達してきています。自然言語処理技術を用いることで、例えばAIを活用している症状検索エンジンである「ユビー」などのような、カルテから疾病を診断するAIが医療現場で活用される例も増えてきました。 カルテには患者の病歴や検査結果、診察を通して得られた医師の所感などが書き込まれています。内容が膨大だと人の目では疾病を診断するのが難しいケースもあります。膨大なデータの中から規則性を見つけ出すことも得意とするAIを用いることで、カルテから疾病を特定し医師の診断を支援し、作業時間も短縮化するといったことが目指されています。 ソフトバンクグループ(SBG)は、医療データをAIで解析するサービスの立ち上げを発表し、そのために、米医療分野の企業、Tempus(テンパス) AIと8月1日に新会社を設立する予定です。テンパスAIはこれまで、遺伝子検査を実施するだけでなく、病院が持つさまざまな生体データや電子カルテを収集してAIで解析し、治療の選択肢を医師に提供してきました。医師は治療の選択肢を患者と相談して決められるとしています。SBGの孫正義会長兼社長は「日本でも2024年内に順次できるところから始める」と述べています。 出典:日本経済新聞「 ソフトバンクG孫氏「医療とAIを融合」 米社と合弁発表 」 AI画像診断 医療AIの活用方法として多いのが、画像から疾病診断を行うAIです。レントゲン写真や心電図などの特徴を学習させることで、ケースによっては医師よりも正確に、かつ素早く疾病診断ができるといった例も報告されています。また、患者の高齢化と患者数の増大などを背景に、医師の数が追いついていないという現状がある中、こうしたAI画像診断を用いることで現場の負担を軽減し、スムーズに診断や治療を進められるという点でも、今後の活用が期待される分野です。 一方で、患者の命を預かる医療において誤診は許されません。またその診断の説明性も求められることから、重大な内容に関わる診断を完全にAIに任せるケースはまれであり、あくまで医師の判断を支援するためのツールとしてAIを用いるのが現実的な活用方法だと考えられます。 出典:QLifePro 医療ニュース「 AIに心電図とレントゲン画像を読み込ませ、副伝導路の高精度な予測に成功-神戸大 」 コミュニケーションロボット AIは音声処理の分野や自然言語処理の分野でも目覚ましい進化を続けており、人間との会話がある程度成り立つような技術も登場しています。そうしたAI技術を用いた会話ロボットは、入院中の患者とのコミュニケーションに用いることで一定の効果が期待されています。 例えば、初診患者の受付や必要書類の準備などをコミュニケーションロボットが行えるようにすれば、患者の待ち時間が短縮され、医療側は人手不足の改善につなげられるかもしれません。 あるいは、長期で入院している患者の孤独感を緩和するために活用すれば、患者のQOL(生活の質)の向上とスタッフの負担軽減も期待できます。さらに、患者側が医師に直接質問しにくいことでもロボットになら聞ける、また病院側も直接患者に伝えにくいことをロボットを介して伝えるといったかたちで、トラブルの未然防止や円滑なコミュニケーションにも効果が期待できます。 チャットボットという形式では、岡山大学の研究チームが、がんなど命に関わる病気と闘う患者の不安な気持ちにいつでも寄り添えるようにと、AIが会話の相手となるメンタルケアサポートシステムを開発しました。通信アプリのLINEを使って24時間やりとりが可能で、医療行為に関わる発言はせず、患者の不安や孤独に寄り添う返答をするようプログラムされています。例えば、患者が「治療がうまくいくか不安」と送ると「それはとても自然な気持ち」と肯定し、「治療について具体的に心配なことはありますか?」といった具体に会話を続けていきます。 この例は、人工無能の元祖イライザ(ELIZA)を少し思い出させます。イライザは1964年から1966年にかけてジョセフ・ワイゼンバウムによって開発されたコンピュータプログラムで、相手の発言をあらかじめ用意しておいたパターンと比較し、パターンに合致した発言があると、そのパターンに応じた発言を返答する仕組みでした。 基本的にはオウム返しに相手の発言を再利用しているだけで、発言そのものを理解しているわけではありませんが、あたかも本物の人間と対話しているような錯覚(イライザ効果)を感じ、イライザとの対話に夢中になるユーザーも出てきました。患者の不安な気持ちを否定せず、うまく寄り添えるチャットボットは、イライザ効果の良い面に通じるセンスがあると言えるかもしれません。 出典:デジタルトランスフォーメーションチャンネル「 医療分野における医療革命、コミュニケーションロボットについて 」    日本経済新聞「 患者の不安、AIがケア 岡山大開発、病院で初の実用化 」    一般社団法人日本ディープラーニング協会監修『ディープラーニングG検定公式テキスト第2版』 医療関連分野でのAI活用と展望 現時点では導入するためにさまざまな課題もある医療AIですが、直接的な医療現場だけでなく、その他の関連分野での活用も期待されています。 新薬の開発 医薬品の開発は人の手によって行われていますが、ここにAI技術を活用する取り組みが登場しています。例えば富士通は、理化学研究所と生成AIを使って、薬が標的とするたんぱく質の体内での状態を10倍以上速く予測する技術を開発しています。AIを用いることで、医薬品開発の効率化が期待できるだけでなく、いわゆるマテリアルズ・インフォマティクスのように、人では発見することが難しい原材料の組み合わせや合成経路を見つけ出すことが今後期待されます。 また、AIを活用して新しい医薬品を開発することは「AI創薬」と呼ばれ、以前より大幅に迅速かつ効率的な創薬や、人間では思いつけなかった新しい創薬ができる可能性が見いだされています。 出典:日本経済新聞「 富士通、生成AIで創薬速く たんぱく質状態予測10分の1 」 マテリアルズ・インフォマティクスについてはこちらもご覧ください。 化学のような、AIと産業の融合。MIなど四つのインフォマティクスとは AI創薬についてはこちらもご覧ください。 AI創薬【ビジネス成長のためのAI用語】 診察・治療の支援 医師の診察や治療の現場ではまだまだAIの活用は限定的ですが、さまざまな活用が模索されています。例えば、医療現場で広く使われている聴診器にAI機能を搭載し、患者の異常な呼吸をいち早く検知するという技術が登場しています。また、採血を人間ではなくロボットが行うという取り組みも行われており、手術の一部を外科医ではなくロボットが行うということも将来可能になるかもしれません。 参考: The Medical AI Times「医療AIの最新活用事例とは?医師が解説【2022年版】」 介護 医療に関係する分野として、介護の現場でもAI導入が進められています。プライバシーを保護しつつ施設入居者の24時間観察を行うほか、データに基づいた介護プランを作成するなどのAI活用例も登場していますが、要介護者とコミュニケーションを取ることのできる介護ロボットの開発なども行われており、AI活用はさらに進んでいくことが期待されます。 関連分野でのコラムとして以下も公開していますので、これら分野に関わる方はぜひご覧ください。 ・ 見えてきた、介護業界のAI活用 ・ 薬局DX。AIは薬剤師業務を変革できるか AIは医師にとって「医療の補助ツール」 AIが今より発展することによって、将来的にAIが担える医療行為の範囲が広がる可能性は十分に考えられます。一方で、医療行為のすべてをAIが担うようになる未来は考えにくいと言えます。 繰り返しになりますが、AIは高性能ではあっても完璧ではなく、医師の判断が適宜欠かせません。また治療の意思決定にまでAIが関わってくると、患者の心理的な拒否感につながることも考えられます。 今後も、医療現場におけるAIは医師が判断を下すための優秀な補助ツールとして活用が進められるでしょう。 医療現場はAI導入の壁を乗り越えられるか 人の命を扱う医療では、AIはもちろんのこと、その診療・診断を機械に任せるということには大きな抵抗や難しさがあるのが実際です。近年の技術進化を背景にAIの技術力や精度には向上が見られていますが、まだまだ乗り越えるべき壁は多いのが現状です。導入分野の模索だけでなく、AIの説明性の担保、技術的な妥当性など、入念な検証を踏まえた上で、導入に向けた試行錯誤が続いていくことが予想されます。 当社では、技術ソリューションとしてAIを設計(デザイン)するだけでなく、ビジネス側の運用や業務も合わせて再デザインする概念を「ソリューションデザイン」と呼び、その重要性を提唱しています。特命を預かる医療現場は、このソリューションデザインが他業界にも増して重要な業界だと考えられます。 ソリューションデザインについては こちら もご覧ください。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年以上、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 医療へのAI導入。いのちを守るための壁を越えるには first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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試合、トレーニング、観戦まで。進むスポーツ業界のAI活用 2021.4.15公開 2025.3.25更新 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 選手のパフォーマンスを上げる、判定の正確性を高める、観客の楽しみ方を拡張する––。スポーツ業界でのAI活用は非常に多岐にわたっています。スポーツにおけるAIの実際の活用事例を紹介します。 目 次 ・ スポーツとAIの親和性 ・ AIがスポーツ業界で注目されている背景 ・ スポーツ業界でAIを活用することのメリットや価値  ・ 選手のパフォーマンス分析と向上  ・ 戦略立案と対戦相手の分析  ・ 審判のサポートと公正性の向上  ・ 怪我の予防とリハビリ支援  ・ 観戦体験の向上 ・ スポーツ×AI 実際の活用例  ・ 対戦相手の分析と戦術の立案   ・ 福岡ソフトバンクホークスのAI野球  ・ 試合の採点支援   ・ 体操競技でのAI採点  ・ 選手のコーチング支援   ・ バスケットボールでのAIコーチング支援  ・ 選手のケガ予測  ・ ドローンを活用した試合の追尾  ・ 勝敗予想・混雑予想   ・ ディープラーニングを用いたサッカーのリアルタイム勝敗予想   ・ 混雑状況の予測  ・ 試合のハイライト動画を自動生成   ・ バスケチームのハイライト動画制作  ・ 選手に適した献立の提案   ・ パーソナライズ献立提案「勝ち飯®AI」 ・ 進む、スポーツ業界でのAI活用 スポーツとAIの親和性 競技結果が数値で算出されるスポーツの多くは、もともとデータ分析との親和性が高く、「ID野球」「ITサッカー」のように、今ではITによるデータ分析が欠かせなくなっています。 さらに、膨大なデータを取り扱うことを得意とし、人間では発見が難しい特徴を抽出することに長けたAIも、スポーツとの親和性が高いといわれています。例えば、AIによる画像認識技術を用いることで高いパフォーマンスを出せる動きを検出し、より効果的・効率的なトレーニングにつなげるといった活用が期待されています。 AIがスポーツ業界で注目されている背景 近年、スポーツの世界ではデータの活用が進み、選手の育成や試合の戦略策定において、AIの役割がますます重要視されています。技術の進化に伴い、リアルタイムでのデータ解析や選手の動きの精緻な分析が可能となり、これまで経験や勘に頼っていた部分を数値的な根拠に基づいて最適化することができるようになりました。 特に、センサー技術や画像認識の発展により、選手の動作解析やプレースタイルの最適化が容易になったことが、AIの導入を加速させています。 さらに、スポーツ業界ではファンエンゲージメント(関係性の強化)の向上も求められています。AIは観戦者向けのデータ提供や試合のリアルタイム解析を通じて、スポーツの楽しみ方を多様化させています。試合のライブデータの可視化や、AIを活用したハイライト映像の自動生成など、スポーツエンターテインメントの向上にも大きく貢献しています。 HALFTIME「 Jリーグが最先端AIでファンエンゲージメント強化!記録的な観客動員を牽引するtoC戦略の全容 」 スポーツ業界でAIを活用することのメリットや価値 スポーツ業界におけるAIの活用は、具体的には以下のようなメリットが期待されています。どのような変化を業界にもたらすのか、整理します。 選手のパフォーマンス分析と向上 AIは選手の動きを詳細に分析し、最適なトレーニング方法を提案する強力なツールとして活用されています。モーションキャプチャー技術を組み合わせることで、選手の動作をミリ秒単位で解析し、フォームの改善点を明確にすることができます。 例えば、ランナーのストライドや投手の腕の振り方など、細かな動作を数値化することで、効率的なトレーニングが実現可能になります。また、バイオメカニクスを基にしたAI解析により、無駄な動きを排除し、パフォーマンスを最大限に引き出すことができるのも大きな魅力です。 戦略立案と対戦相手の分析 AIの強みの一つに、膨大なデータを処理し、パターンを見いだすことがあります。これを生かし、試合の戦略策定や対戦相手の分析においても大きな役割を果たします。 サッカーやバスケットボールでは、選手の走行距離やパス成功率、シュートの角度などのデータを蓄積し、過去の試合の傾向をAIが分析することで、最適なフォーメーションや戦術を提案できます。さらに、相手チームのプレースタイルや弱点をAIが抽出し、それに基づいた対策を講じることで、試合の勝率を上げることも狙えます。 審判のサポートと公正性の向上 スポーツの公正性を確保するために、AI技術は審判のサポートツールとしても活用されています。 テニスでは「ホークアイ」システムがすでに導入され、ボールがラインを超えたかどうかを正確に判定する仕組みが確立されています。同様に、サッカーではVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)によって、微妙な判定をAIが支援し、誤審のリスクを低減しています。 AIによる判定の導入は、選手やチームの納得感を高めるだけでなく、観戦者にとっても試合の透明性が向上し、公正なスポーツの実現に寄与します。 怪我の予防とリハビリ支援 AIは選手の健康管理にも活用され、怪我の予防やリハビリ支援に貢献しています。選手の動作データを分析し、過度な負荷がかかっている部位を特定することで、事前にリスクを回避する対策を講じることができます。 例えば、バスケットボール選手のジャンプ時の着地動作や、サッカー選手の走行データを解析し、怪我の原因となるパターンを特定することで、適切なトレーニングメニューを提供できます。 リハビリの分野では、AIが患者の回復状況をモニタリングし、最適なリハビリプログラムを提案することで、効率的な回復をサポート可能です。 観戦体験の向上 AIはスポーツの観戦体験をより魅力的なものへと変えつつあります。試合中にリアルタイムでデータを解析し、視聴者に対して試合の流れを可視化する機能が充実してきました。バスケットボールの試合では、シュート成功率やディフェンスの動きなどをグラフィカルに表示するシステムが導入されており、観戦者が戦略を深く理解できるようになっている様子が伺えます。 また、AIを活用した自動実況やプレイ分析により、初心者でも試合の流れを楽しめるようになれば、スポーツのファン層の拡大にも寄与するでしょう。 出典:ESTYLE「 スポーツ業界におけるAIの活用事例15選|デメリットはある? 」 スポーツ×AI 実際の活用例 スポーツ業界でのAI活用は、試合やトレーニングだけでなく、さまざまなシーンで行われています。ここでは、競技シーンでの活用例、管理・監督シーンでの活用例、観戦シーンでの活用例に分けて、実際にAIが使われている事例を紹介します。 対戦相手の分析と戦術の立案 戦術面でもAIが活用できます。例えば、相手選手の動きやクセを学習・分析し、対策を立案・提案することがあります。従来もデータを用いた戦術立案は行われてきましたが、AIがリアルタイムに最適な提案することで、より勝利につなげやすい作戦を選択できる可能性があります。 福岡ソフトバンクホークスのAI野球 福岡ソフトバンクホークスは、これまで蓄積してきた膨大なデータを活用して、AIによる戦略立案に積極的に取り組む球団の一つです。 野球は、一人の選手が攻撃も守備も行うことや、ボールやバット、グローブなど複数の用具を使うこと、細かなルールが存在することなどから、選手個人の身体的能力や技術だけでなく、思考も重要なスポーツです。そのため、膨大な試合データや投球データなどをAIに学習させ、その予測結果をうまく活用することが勝利へとつながっていきます。 出典: 日本経済新聞『IoT野球の神采配、ホークス躍進の秘密兵器』 試合の採点支援 どのスポーツもルールに則って競技が進行し、多くの場合、人間が審判を務め、人の目によって判定が行われます。しかし人間による判定には見落としやミスが皆無ではなく、「誤審」はすべての競技に共通する課題だといえます。 誤審を少しでも減らすためにもAIが活用されています。例えば、球技においてボールの軌道を分析・予測してボールのイン・アウトを判定する活用があります。ミリ単位のイン・アウトの判定は線審が行うには難しい場面もあり、AIによる客観的で正確な判定が役立てられています。 体操競技でのAI採点 特に人間の目では限界があるとされているのが、審判が採点をする競技です。AIによる採点を実用レベルで導入しているのが体操です。 富士通が開発した採点AIシステムは、2019年の世界選手権で初導入。レーザーによって選手の動きの3Dデータを取得し、AIが採点するシステムで、精度が高いとして高評価を受けました。 出典: nippon.com「冗談から始まった挑戦:体操競技で正式導入された「AI採点支援システム」が切り開く未来とは」 選手のコーチング支援 監督やコーチをはじめ、選手を管理する立場で見てみても、AIを活用することでこれまではできなかったコーチングが可能になってきています。 バスケットボールでのAIコーチング支援 バスケットボールでは、天井に設置された複数台のカメラが選手やボールの動きを追跡・記録し、選手ごとのシュートの成功率、シュートを打った位置の映像確認などをできるようにしたAIシステムが登場しています。 このシステムを用いることで、これまで目視で確認するしかなかったフォーメーションやシュート成功率などの記録をコンピュータがしてくれるようになり、監督は選手の状態をより正確に把握できるようになります。さらに、詳しく見たい箇所をクリックすることで録画再生するなどの機能も備えており、弱点の発見やそれを克服するためのコーチング、作戦の立案などに活用できることが期待されます。 こうしたシステムの実現を可能にしているのが、AIの一部である機械学習です。バスケットボールは小さなコートに2チームの選手が入り乱れるスポーツのため、映像による分析は困難とされていましたが、選手やボールの画像を大量に学習させることで対象をより正確に区別できるようになってきています。 出典: 日本経済新聞『富士通、ITでバスケ強化 AIがコーチ補佐』 選手のケガ予測 選手のケガは選手本人にとっても、所属するチームや団体にとっても避けたいものです。ケガの予防は、基本的には選手本人やトレーナーなどが気を付けるしかありませんが、AIによるケガ予測も可能になるかもしれません。 具体的には、練習メニューや体調の記録、試合内容、過去のケガの内容や時期をAIが学習することで、ケガをしそうなタイミングを予測できる可能性があります。正確な予想はまだ先の未来のことになるかもしれませんが、ケガをしそうな習慣を改善するなどの活用が期待されています。 ドローンを活用した試合の追尾 ドローンは、人が操作するカメラでは撮れないさまざまな空撮映像を撮れるので、スポーツ観戦において高い可能性を持っています。AIによって選手を自動追尾するシステムが確立されれば、これまで追跡が難しかったレースで詳細で迫力のある映像を撮れたり、これまでにはないアングルの映像を楽しめたりといった恩恵が期待できます。 勝敗予想・混雑予想 AIはこれまでのパターンを学習することで、法則に沿って起きることをある程度は予測できます。スポーツにおいてもAIによる予測をサービスにつなげる流れが出てきています。 ディープラーニングを用いたサッカーのリアルタイム勝敗予想 機械学習の中でもディープラーニングは、より高度な学習をベースにした予測をする技術です。スポーツでの活用例として、サッカーの過去の試合データを大量に学習し、現在行われている試合の勝敗予測をするシステムが登場しています。 このAIシステムは、2019年に韓国で行われた国際試合で試験的に使用され、韓国をはじめとしたアジア各国の試合中継で放送され、試合観戦の新しい楽しみ方を観客に提供したといえます。 混雑状況の予測 特に大型のスポーツイベントが開催されると、観戦客に加えて関係スタッフやボランティアも含めて会場周辺は混雑し、大会の進行や地域住民への影響が懸念されることがあります。 混雑緩和のために期待されているのが、スマートフォンなどの移動通信システムから取得されるデータを基にした、AI予測と公共交通機関との連携です。スマートフォンの位置情報データから集積の多い場所を予測・抽出し、公共交通機関の利用状況と連携することで迂回ルートを提案するといったことが可能にもなります。 大型のスポーツイベントとしては2021年に東京2020オリンピック・パラリンピックが開催されました。その実施に先立ち、駅の混雑状況を分析した事例があります。中央大学の田口東教授による研究で、競技場の最寄り駅においてピーク時には乗客数が約6倍になるなどの予測が立てられました。スポーツ観戦では大人数が移動することが付随するので、混雑予測などで人々の安全と暮らしやすさを守ることが重要です。 出典: NTTデータ数理システム「人流シミュレーションによるオリンピック開催時の駅の混雑分析事例」 試合のハイライト動画を自動生成 試合のハイライト映像をAIが作成するシステムも登場しています。試合中継のハイライト映像は、従来は試合中に人力で製作されてきましたが、このシステムでは選手の動きや観客の歓声を分析することで、ハイライト映像を生成します。 出典: ITmedia NEWS「勝利の鍵はAI? スポーツとデータ分析の相性が良い理由」   : OLYMPIC CHANNEL「プロ野球に“AI解説者”が登場、体操界では3D技術の導入で判定に革命【スポーツのデジタル化】」 バスケチームのハイライト動画制作 AIによるハイライト動画制作の実例として、NTTドコモが3人制バスケットボールリーグ「3×3.EXE PREMIER」と開発したシステムがあります。このシステムでは選手やチーム、試合などの条件を選択することで、その選択に合わせたハイライト動画を製作できるとしています。 出典: ITmedia NEWS「AIで試合のハイライト動画を自動生成 NTTドコモが3人制バスケリーグ参加チームに提供」 選手に適した献立の提案 優れたスポーツ選手となるには食事も重要です。その食事の献立を提案するためにも、AI技術が活用されています。 パーソナライズ献立提案「勝ち飯®AI」 「勝ち飯®AI」は、Laboro.AIが開発を支援した献立提案アプリです。このアプリでは、アスリートが入力したデータを分析し、個々人に最適化した献立を提案します。 これはトップアスリートを支援してきた食事のノウハウをベースにしており、一般アスリートや部活生にも高いレベルの食事管理を提供する目的で作られています。 このプロジェクトについて詳しくは、以下のページをご覧ください。 パーソナライズ献立提案「勝ち飯®AI」 進む、スポーツ業界でのAI活用 スポーツ業界でのAI活用は、競技、監督、観戦などさまざまなシーンで多様に活用され始めています。特にデータ分析や画像認識分野は、各種のスポーツと相性が良く、今後さらなる浸透が期待されます。東京2020オリンピック・パラリンピックの開催も背景に、スポーツ業界におけるAIは数年で大きな進化を見せていくはずです。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年以上、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 試合、トレーニング、観戦まで。進むスポーツ業界のAI活用 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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複雑な思考はAIに任せ、人がすべきは「さまよう思考」 2025.3.8 監 修 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 「一瞬で答えなくてもいいから、複雑な問題も解いてくれたら…」そう思っていたのも束の間、これまで検索エンジンの延長のようだった生成AIが急速に進化し、より複雑かつ慎重に質問に答えるモデルが次々と発表されています。人間が難しいことを考えるのに時間をかけるように、この推論型の生成AIも時間を必要としますが、それでも人間よりは早く、その精度は向上今後もしていくと見込まれています。 では、AIが人間の情報処理を上回っていく中、果たして人間に考える意味は残されているのでしょうか。そもそも人間の「考える」という状態については、その覚醒時間の半分をただ”さまよっている”ことが言われていて、この「さまよう思考」の創造性こそが、新たな機会を開くドアになると示唆されています。そこで今回は、複雑な思考をAIに任せられるようになった今、人間の「さまよう思考」にこそ意味があるのではないかという問いを投げかけてみたいと思います。 目 次 ・ 慎重な分析も可能なハイブリッドAI  ・ 直感型の生成AIが「AI」だった時代は終わる  ・ 人間だけのコンサルティングでは遅すぎる ・ 「さまよう思考」には意味がある  ・ 起きている時間の半分をさまよっている  ・ 思考がさまようのは「精神的探索」 ・ 遠い関係性のものを結びつけると気分が良くなる  ・ 近いものを見つけるのが得意な生成AI  ・ 人は遠くへつながる言葉に惹かれる  ・ 創造性と意味的な距離の関係 ・ さまよう思考は「自己生成」状態  ・ 選択肢を増やし、チャンスを呼び込む  ・ 偶然が生んだ「探究」が創造につながる ・ さまよう思考のデフォルトは「創造的思考」  ・ ストレスが少ないほど遠くへ飛べる  ・ 集中していると重要な情報を見逃す ・ 人間は脳の宇宙で旅をする 慎重な分析も可能なハイブリッドAI 直感型の生成AIが「AI」だった時代は終わる ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマン氏は、その画期的な著書『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』で、人間の2つの思考モードを提唱しました。 システム 1(速い思考) 直感的で自動的。パターン認識など。ほとんど努力を必要とせず、自発的な制御の感覚もなく、素早く動作する。 システム 2(遅い思考) 熟考的で分析的。計画や推論など。より複雑で、多くの努力を必要とし、応答に時間がかかる。 この2つの思考モードで言うと、瞬時にパッと回答する従来のLLM(大規模言語モデル)は、システム1の思考に類似していると考えられます。 著書の中でカーネマンは「システム1はだまされやすく、信じたがるバイアスを備えている」と述べていましたが、一瞬で答えを出す生成AIも同様、学習データから得られる論理的根拠がない場合に、系統的なバイアス(偏見)やハルシネーション(幻覚)が生じ、正確ではない回答をすることが指摘されてきました。 しかし生成AI革命から2年が経った今、ChatGPT o1・o3のような、問題を体系的に分解して推論するリーズニングモデル、つまりシステム 2のプロセスを模倣する生成AIサービスが次々と発表され、人々の期待は直感的な思考・熟考的な思考の両方が可能なハイブリッドAIへと向けられています。 人間だけのコンサルティングでは遅すぎる つまり、これまではどんな質問でも一瞬で答えを反射的に出力していた生成AIが、まるで人間のように考え、推論するようになっている のです 。しかも、その時間は今後さらに短縮 され 、人間が何日も時間をかけて考える必要性が減っていくことは間違いありません。 若者に 人気 のコンサルティングの分野でも、生成AIにビジネス戦略の立案が任せられるようになっていくのではないかと真実味を持って議論されて います 。実際、アメリカでコンサルティングの講座を受講する学生は、従来であれば到達するまでに数週間かかっていた課題を、生成AIを用いてある程度出来上がったフレームワークと過去の事例などを組み合わせることで、たった1回の授業の中で全て作り上げられるようになっている そうです 。 簡単なことから難しいことまで、生成AIが速度と複雑さの両方で人間の情報処理を上回っていく中、私たちは「果たして人間に考える意味があるのかどうか」という本質的な疑問を感じずにはいられなくなります。 「さまよう思考」には意味がある 起きている時間の半分をさまよっている 人間の脳は高速モードと低速モードの思考のバランスをとるように進化を遂げましたが、かといって私たちがいつも何かを考え、必死に頭を回転させているかと言うとそうではなく、かなりの時間、“放浪している”のだそうです。 人間の思考は覚醒時の30%〜50%の時間をさまよっているいうことが数々の 研究 でわかっていて、脳が休んでいるか、注意を払わなくなると、すぐに脳にとって好ましい状態であるこの漂流モードに自動で切り替わるという ことです 。 電力に換算するとわずか20ワットという小さな電球程度のエネルギーで動作する脳 ですが 、デフォルトで活発に、そして起きている時間のおよそ半分を放浪にエネルギーを使っているため、この「さまよう思考」にはそれなりに建設的な意味があると考えられるようになって います 。 低速と高速の思考モードを生成AIに任せられつつある今、人間に残されたより優れた思考モードがあるとすれば、それはこのさまよう思考ではないかと思えてくるのです。 思考がさまようのは「精神的探索」 マインドフルネスなどで瞑想を試してみてうまくいかなかった経験はないでしょうか。残念ながら、私たちの思考が静止していることはほとんどありません。いまこの瞬間への意識や集中力を高めるマインドフルネスと対照的に、さまよう思考はマインド・ワンダリングと 呼ばれ 、現在の瞬間から意識が離れた時に思考はさまよい、過去や未来へと精神的探索を行い ます 。 目標のない放浪者のように思考の網をさまよい、私たちがコントロールすることはほぼ不可能。さまよう思考には連想、空想、創造的思考、内省、うつ病などによる反芻などが含まれ、例えば嫌なことを繰り返し思い返してしまう時などは、無意識に狭い範囲をぐるぐると徘徊しているのだ そうです 。 「またぼーっとして」などと注意される子供を見かけることがありますが、年齢が低いほど、こうした思考や心はより開放的であると されています 。狭い範囲でさまようより、空想せずにはいられなかった子どもの頃のように「思考の網をより遠くへとジャンプする」とき、その思考は良い方向に働くということがわかってきています。 遠い関係性のものを結びつけると気分が良くなる 近いものを見つけるのが得意な生成AI 実際、人は気分が良い時の方がより関連性が低いもの同士をつなげるクリエイティブな思考をする傾向があるそうです。その逆も然りで、関連する単語を複数見せられたとき、近い言葉同士よりも、より遠くに連鎖する単語を見せた方が人間は気分が良くなることが言われて います 。 そこで、3種類の主要な生成AIツールに「夏」に関連する単語を10個リストアップするよう投げかけてみると、回答はそれぞれ以下のようになりました。 「夏」に関連する単語を10個リストアップして下さい。 ChatGPT(o3 mini high)の回答: 海、花火、暑さ、蝉、スイカ、祭り、浴衣、入道雲、避暑、青空 Claude(3.7 Sonnet)の回答: 海水浴、花火、浴衣、扇子、、夏祭り、スイカ、蚊取り線香、かき氷、風鈴、セミ Gemini(2.0 Flash Thinking Experimental)の回答: 海、プール、花火、お祭り、バーベキュー、スイカ、アイスクリーム、麦茶、入道雲、夏休み より現実的で一般的、そして狭い範囲の同じような言葉が抽出されていることがわかります。一方、人間が自由に夏を連想する場合には、過去の引き出しの中からその人だけの夏の思い出が蘇ることが多いはずです。 人は遠くへつながる言葉に惹かれる “夏がくれば思い出す”という歌い出しで知られる『夏の思い出』という歌があります。 「尾瀬、霧、野の小径、水芭蕉の花、シャクナゲ色、遠い空」というように作詞家の描く夏がそこにあり、生成AIが打ち出した夏の言葉と比べると遠く離れています。 広く日本で親しまれてきたこの歌は、戦後の復興の始まりの頃に作詞を依頼された詩人の江間章子が、戦時中に食料を求めて尾瀬の入り口にある片品村を訪れた際に出会った、一面に咲く美しい水芭蕉を歌にしたのだ そうです 。岩手めんこいテレビの番組に出演された際にご本人も「私的な思いの歌」と話しており、作詞家の感覚や記憶が軸になっていることがわかります。 この歌の夏は生成AIが出力したリストのような定番の夏のイメージとは遠く離れていますが、この歌を聴くと不思議と溢れる感情に満たされるような気持ちになるのは、私たちの思考が遠くへとジャンプすることを促しているからなのかもしれません。 創造性と意味的な距離の関係 新しいアイデアは従来のアイデアと関係性をもちながらも「離れる」ほどより創造的である可能性が高くなる ことから 、創造性に関するリサーチでは意味的な距離を測ることが行われています。そこで、この意味的な距離を出来る限り広げて単語を連想するよう再び生成AIツールに指示すると、次のような出力になりました。 出来る限り意味的距離が離れた「夏」に関連する単語を10個リストアップして下さい。 ChatGPT(o3 mini high)の回答: キャンプ、水風船、日傘、ひまわり、蚊取り線香、夕立、盆踊り、スイカ割り、ヨット、冷やし中華 Claude(3.7 Sonnet)の回答: 蝉時雨、冷房病、流星群、土用の丑の日、夏枯れ、残暑見舞い、フィルター、光化学スモッグ、熱帯夜、日焼け止め Gemini(2.0 Flash Thinking Experimental)の回答: 炎暑、晩夏、雷雨、忍耐、憂鬱、夏枯れ、内省、儚さ、倦怠感、停滞 どの生成AIも先ほどよりは創造性を感じられるような変化を見せましたが、まだ『夏の思い出』の歌詞と比べると創造的とは言いがたい気がします。それはおそらく『夏の思い出』の歌詞がきわめてユニークな個人的体験に基づいているからです。尾瀬の水芭蕉の開花時期は5月〜6月で、題名につけられた「夏」という季節は、一般的に想像される季節とはそもそも違い、作者の思い出の中にある「夏」であることと無関係ではありません。 それで良いのか、それで美しいと感じられるのか、その判断は私たちの感受性によるところが大きいようです。事実、10万人規模の大規模なデータを用いてLLM(大規模言語モデル)の創造性と人間の発散的思考について詳細に比較検討した 研究論文 では、人間がAIよりも広く複雑なアイデアを結びつけられる場合、人間が所与のルールに厳密に従っていない可能性が指摘されています。 さまよう思考は「自己生成」状態 選択肢を増やし、チャンスを呼び込む 生成AIに聞けばなんでも答えが返ってきて、「考えること=答えを出させること」のようにも感じられる状況になりつつもあります。そんな時代における人間らしい思考とは、既存のルールに縛られることなく、日常の半分の時間を精神世界でさまよいながら、今その場に存在しない人、場所、または出来事について思いを巡らす能力にあるのかもしれません。 認知リソースを「今ここ」から切り離してさまよっているとき、脳は基本的に情報を受け取って処理するのではなく、作り上げていることがわかっています。実際の経験と同じように情報を作り上げて記憶するため、研究者はこれを脳の「自己生成」状態と分類して います 。 思考がさまざまな方向にさまようと、より多くの点が結び付き、より多様な選択肢が顕在化され、新しい「もしも」が描き出さ れます 。新しく描き出された情報の蓄積が新しい機会を開く、こうした探求的な役割を持っていることからも、さまよう思考は「目的のある放浪者のパズル」とも呼ばれて います そ。 偶然が生んだ「探究」が創造につながる さまよう思考が持つ探究的な役割によって、未来へ大きな影響を与える気づきが得られることは過去にも証明されています。例えば、りんごが木から落ちる様子を見て「万有引力の法則」を発見したニュートンも、そのさまよう思考から生まれた発想が「近代科学の父 ニュートン」と呼ばれる所以になったといっても過言ではありません。 貧しかったニュートンは、学費免除のために様々な雑用を引き受けながら大学で数学や天文学の勉強に勤しんでいました。夢中になって日々を過ごし数年が過ぎた頃、ペストという恐ろしい感染症で大学が休校になりました。 そこで故郷に戻ったニュートンは、それまでに書き留めておいたことや頭に浮かんでいた疑問などに思いを巡らすようになったそうです。そんなある日、家の庭で木からりんごが落ちるのを見たニュートンはふと「りんごは落ちてくるのに月が落ちてこないのはなぜだろう?」と考え、それが万有引力の法則を発見するきっかけになりました。 もし当時ニュートンが大学で目の前の勉強と雑用をこなす現実をそのまま過ごしていたら、“落ちるりんご”と“落ちない月”を結びつけて考えることはあったでしょうか。ニュートンはこの故郷での時間の中で他にも、惑星の運動の法則や新しい望遠鏡の仕組み、光が7色に分けられることなど、実に様々な発見をし、ペストによる休校を「創造的な休暇」と呼んだ そうです 。 さまよう思考のデフォルトは「創造的思考」 ストレスが少ないほど遠くへ飛べる 「あんなこと言わなければよかった」と解決できない問題にこだわるなど、さまよう思考については悪いイメージも伴います。過去に囚われたり、未来を憂いたりするのではなく「今ここ」に集中するマインドフルネスが対策として有効なのはそういった理由もあるでしょう。 実際にさまよう思考はうつ病と関連する部分もありますが、ストレスが少ないほど、私たちの思考はより遠くまでさまよい、良い感情を生み出すことが実験結果によって示唆されています。 ある実験では、被験者に自由に連想する課題を与え、同時にさまざまな難易度の認知課題を実施させました。例えば、7桁の数字を暗記するように言われた被験者はより予測可能な反応を示した一方で、暗記が2桁の数字だった被験者はより創造的な反応をする結果になった そうです 。 これにより、難しい問題などの大きな認知的な要求がない場合、創造的思考は人間の「デフォルト設定」であることが示唆されます。  集中していると重要な情報を見逃す また、思考がさまよい始めたときの脳波を測った実験では、参加者の前頭葉に強いアルファ波が見られたそうです。アルファ波は睡眠の初期に現れる低速の脳波で、リラックス状態と関連しています。トピックからトピックへ自由に移動する思考の状態においては、集中力と計画力を司る前頭葉はリラックス状態になり、アルファ波の活動が増加します。これは、創造的なアイデアの生成に関連するパターンに見られます。 こうしたことから、この実験に携わり、マインド・ワンダリングの心理的および哲学的基礎を研究しているザカリー・アーヴィング氏は次のように 言います 。 「常に目標に集中していると、重要な情報を見逃してしまう可能性があります」 人間は脳の宇宙で旅をする AIによって人間の幸せが増大するのかどうかという議論は飽きることなく行われています。生成AIが人間の高速モードや低速モードの思考を補うことができるなら、人間が問題を抱えるストレスは減り、その思考はデフォルトモードで自由にさまようようになるはずです。すると人間はより関係性の遠いものを結びつけ、創造性を高め、機会を開き、新たな豊かさを得る経験につながることが期待できます。 人間の脳は宇宙と類似性があることが宇宙学と神経外科学の観点から裏付けられつつあり ますが 、そもそも人生において答えが保証されていることは多くはないのですから、いっそ答えを求めて一生懸命に考えることはAIに任せ、私たちはふわふわと脳の宇宙を放浪してみる方が、実はより創造的な方向へと導かれて行くのかもしれません。 The post 複雑な思考はAIに任せ、人がすべきは「さまよう思考」 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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組合せ最適化、生産性を向上させる事例6本を解説 2025.2.28 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 ビジネスの現場では、限られた資源を最大限に活用する方法、つまり戦略を考え抜いて実行し、効率を向上させることが求められます。その鍵となるのが「組合せ最適化」です。膨大な選択肢の中から最適な解を導き出すこの技術は、物流や製造などさまざまな業界でシフト管理や設備運用など幅広く活用されています。そして現在ではAI活用を見据えるのが半ば当然となっています。 本コラムでは、組合せ最適化がもたらす具体的なメリットと最新の活用事例を6本取り上げ、その可能性を示します。 目 次 ・ 組合せ最適化とは ・ ビジネスにおける組合せ最適化の事例  ・ 路線におけるダイヤの復旧  ・ 物流における経路の最適化  ・ 製造業における生産スケジュールの最適化  ・ 業務シフトの最適化  ・ 広告キャンペーンの予算配分最適化  ・ 施設機能の最適化 ・ まとめ 組合せ最適化とは 組合せ最適化とは、複数の選択肢の中から、与えられた条件に最適な組合せを見つける技術です。物流や製造業、金融、医療など幅広い分野で活用されており、効率化やコスト削減を実現する手法として注目されています。 例えば物流業界では、配送先が増えるとルートの選択肢が膨大になります。これに組合せ最適化を活用することで、最適な配送ルートを導き出すことができます。その結果、燃料コストの削減や配送時間の短縮、さらには顧客満足度の向上が期待できます。 製造業では機械の稼働時間や作業工程の組合せを最適化することで、生産性の向上につながるでしょう。こうした技術は、企業の利益を高めるだけでなく、環境負荷の低減にも貢献すると考えられています。 一方、組合せ最適化の計算量は、選択肢の数が増えるほど急激に増大します。そのため、すべての組合せを試す方法では現実問題に対処することができません。 この課題を解決するために、近似解を求めるアルゴリズムが開発されてきました。特に、遺伝的アルゴリズムや焼きなまし法といったヒューリスティック手法は、膨大な組合せの中から比較的短時間で良好な解を見つける手段として広く活用されています。 参考:MSIISM「 難しくても使いこなす組合せ最適化(1) ー問題例と解き方ー 」 ビジネスにおける組合せ最適化の事例 組合せ最適化は、ビジネスのさまざまな分野で活用されています。特に、物流や製造、金融、交通インフラなど、効率性が求められる領域では、最適な組合せを見つけることがコスト削減やサービス品質向上に直結します。 鉄道路線におけるダイヤの復旧 例えば列車の遅延が発生した際に、どの列車を優先して運行させるべきか、どの駅で待機させるのが最適かといった判断に組合せ最適化を活用することで、膨大な組合せの中から最適な答えを迅速に見いだせる可能性が出てきます。 従来は経験則や手作業に頼っていた解の探索も、最適化アルゴリズムを導入することで、より短時間で合理的な判断ができるようになりました。 そうした自動のダイヤ調整システムは、異常発生時の運行計画をリアルタイムで変更し、最適な運行パターンを瞬時に導き出す仕組みであり、遅延の影響を最小限に抑えるだけでなく、運行管理の負担軽減にもつなげられます。 参考:日本経済新聞「 鉄道の復旧ダイヤ、数分で作成 「スジ屋」に迫るAI 」 物流における経路の最適化 物流業界では、配送ルートの効率化が重要視されています。大規模な小売業では、短時間で多くの商品を届ける必要がありますが、最適なルート設計がコスト削減と環境負荷軽減を実現可能です。 ファミリーマートは、独自のAI技術を活用し、全国69カ所の物流センターで配送ルートの最適化を進めています。コンビニの物流では、弁当や総菜などを決まった時間に届ける必要があり、配送時間の調整が課題となっていました。 そこでAIを活用した最適化により、ルートの数を1割削減し、ルート作成時間も8時間から1時間へ短縮しました。全国展開後には輸送費を年間10億円以上削減し、CO2排出量を1300トン削減できる見込みを立てています。 参考:日本経済新聞「 ファミマ、AIで物流網改革 全国のセンターでルート最適化 」 製造業における生産スケジュールの最適化 製造業では、生産スケジュールの最適化が大きな課題であり続けてきました。複数の製品ラインを効率的に管理し、生産コストを抑えながら納期を厳守することが求められる中、組合せ最適化の技術が活用されています。 日立ハイテクでは、需要の変動に応じた生産計画の自動調整を導入しました。従来は手作業で行っていたスケジュール管理を、AIと最適化アルゴリズムによって瞬時に算出することで、稼働効率を高めています。これにより、生産工程の無駄を省きながら、突発的な変更にも迅速に対応できるようになったとしています。 参考:日本経済新聞「 日立ハイテク、「ルマーダ」で生産計画の作成短縮 」 業務シフトの最適化 従来のシフト管理は、経験則に基づく手作業が中心でした。しかし近年は、AIと組合せ最適化を活用し、勤務時間のバランスを考慮した効率的なシフト作成が可能になっています。 AIを活用することで、過去の勤務データや繁忙時間帯を分析し、適切な人員配置を自動算出するシステムを導入できます。これにより、過不足のない適切な配置が実現し、従業員の負担軽減と業務効率の向上が見込めます。 労働時間の適正配分は、時間労働の削減や有給取得率の向上にもつながります。実際にシフト最適化の導入は、間接的にスタッフの満足度向上や、離職率の低下にも役立つことが期待できます。 参考:PR TIMES「 引っ越し業、製造業が抱える勤務シフトの課題に対応するOptamoミニセミナーを開催 」 広告キャンペーンの予算配分最適化 AIを活用した広告予算の最適化では、過去の広告パフォーマンスや市場データを分析し、最も効果的な媒体・時間帯・ターゲットに予算を配分します。 例えば、特定の時間帯やデバイスで広告のクリック率が高い場合、AIがリアルタイムで予算の比重を調整し、無駄な出費を抑えながら広告効果を最大化する仕組みです。 この手法を導入した企業では、広告予算の使用効率が向上し、ROI(投資対効果)の大幅な改善につながります。AIによるデータ分析を基に継続的な調整が行われるため、キャンペーン期間中も最適な戦略が維持されるという利点も期待できるでしょう。 参考:Appier「 AIによる予算管理で広告予算を最大活用する方法 」 施設機能の最適化 オカムラは、物流テクノロジー企業のGROUNDと資本提携を強化し、AI技術を活用した物流施設の最適化を推進しています。 両社は2016年からロボット技術を活用した物流システムの開発に取り組み、大型・中型の物流施設の効率化を支援してきました。今回の提携強化により、物流施設内の作業進捗や設備の稼働状況、人員配置などをAIが分析し、最適な運用を可能にするソフトウエアを導入する予定です。 この技術により、施設内の作業負担を軽減し、より効率的なオペレーションが実現につながります。従来、人の手に頼っていた作業を自動化することで、労働力不足の問題にも対応できるとしています。 参考:MONOist「 オカムラ、GROUNDに追加出資 物流施設のAI最適化を強化 」 まとめ 組合せ最適化はスケジューリングやリソース配置が対象になるため、ほぼすべての業界で活用できる技術です。そのため、自分がいる業界でいま導入が進んでいなくても、将来的には当たり前に活用される技術となって、導入が遅れると競争力の低下につながるリスクがあります。技術動向の注視や、自社導入の可能性を探ることは常に続けた方がいいでしょう。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年以上、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 組合せ最適化、生産性を向上させる事例6本を解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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異常検知とは? 関連する機械学習手法や導入のメリットも解説 2025.2.28 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田崇 概 要 異常検知とは、通常とは異なるデータの振る舞いや異常なパターンを自動的に検出し、問題の早期発見や業務の最適化を支援する技術です。機械学習の発展により、これまで人の判断に頼っていた異常検知が、より高度で精度の高いものへと進化しました。異常検知の基本概念をはじめ、主要な手法や機械学習の活用、導入のメリットや注意点などを詳しく解説します。 目 次 ・ 異常検知とは ・ 異常検知の主要な手法  ・ 異常部位検出  ・ 変化点検出  ・ 外れ値検出 ・ 異常検知システムの機械学習手法  ・ 教師あり学習  ・ 教師なし学習  ・ 半教師あり学習  ・ 強化学習 ・ 異常検知で用いられる代表的な機械学習アルゴリズム  ・ ホテリング理論  ・ 単純ベイズ法  ・ k近傍法(KNN法)  ・ 局所外れ値因子法(LOF法)  ・ 主成分分析(PCA) ・ 異常検知を導入する理由・メリットとは  ・ 人件費が削減でき、効率的な業務フローが確立できる  ・ 人的に作業によるミスを防ぐことができる  ・ 業務の属人化を防ぎ、安定的な体制が構築できる ・ 異常検知導入時の注意点  ・ 適切なデータ収集と前処理  ・ 運用と継続的な改善 ・ 【業界別】異常検知の活用事例  ・ 製造業界:設備保全と故障予測  ・ 金融業界:不正取引の検出  ・ 医療業界:患者モニタリングと疾病早期発見 ・ まとめ 異常検知とは 異常検知とは、データの中から通常とは異なる挙動やパターンを検知する技術です。 ITシステムの監視、金融取引の不正検出、製造業の設備保全など、多岐にわたる領域で活用されており、IoTの普及やビッグデータの解析技術の進歩により、リアルタイムで膨大なデータを解析し、即座に異常を検出することが可能になりました。 その後、統計的手法や機械学習を活用した異常検知技術が発展したことで、未知の異常パターンを検出したり、環境の変化も踏まえつつ異常を判定したりすることも可能になっています。 参考:IBM「 異常検知とは何ですか。 」 異常検知の主要な手法 異常検知には、データの特性や目的に応じて多様な手法が存在します。適切な手法を選択することで、検知精度を向上させ、より効果的なシステム運用が可能になります。ここでは、代表的な三つの手法について詳しく解説します。 異常部位検出 異常部位検出は、データ全体ではなく、特定の領域や部分に異常が含まれているかを識別する手法です。例えば医療分野では、心電図のデータの一部に異常が見られた場合、それを特定することで疾患の早期診断につなげることができます。 この手法では、コンピュータビジョンを用いた画像解析技術が主に採用されます。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、画像内の特徴を学習し、異常部位を特定するのに優れた性能を発揮します。 異常部位検出の精度が向上すると、異常の原因を特定しやすくなり、より迅速かつ適切な対応が可能になります。 変化点検出 変化点検出は、時系列データの中で特定のタイミングにおける急激な変化を検知する手法で、いくつかのアプローチがあります。 累積和(CUSUM)は、小さな変化を積み重ねて監視し、閾値を超えた時点で異常を判定する手法です。ベイズ変化点検出は、確率モデルを活用し、変化点の発生を推測します。移動平均を用いた手法では、一定期間のデータの平均値を比較することで、変化点を識別し、リアルタイムのデータ解析に役立てることができます。 変化点検出は、異常の早期発見に適しており、金融市場のトレンド分析やネットワーク監視など、さまざまな分野で活用されています。 外れ値検出 外れ値検出は、データセットの中で他のデータと大きく異なる値を持つデータポイントを識別する手法です。異常なデータを見つけることで、システム障害の予兆や不正行為の兆候を早期に検出することにつなげられます。 例えば、銀行の取引データにおいて、通常の取引パターンから大きく逸脱する送金があった場合不正取引である可能性を考慮して調査を進める判断に役立てられます。 単に異常を見つけるだけでなく、そのデータが有益な情報を含んでいるかどうかを分析することも重要です。背景情報を考慮しながら適切な検出を行うことで、より効果的な異常検知が可能になります。 参考:日立ソリューションズ・クリエイト「 AIで異常検知! 取り入れるメリットや成功事例を解説 」     AI Market「 異常検知とは?メリットや学習方法、手法、ディープラーニング 」 異常検知システムの機械学習手法 異常検知システムにおいて、機械学習は不可欠な要素の一つです。データの種類や目的に応じて適切な学習手法を選択することで、異常検知の精度を向上させることができます。主に、教師あり学習、教師なし学習、半教師あり学習、強化学習の四つの手法が活用されています。 教師あり学習 教師あり学習は、ラベル付きデータを用いてモデルを訓練し、新しいデータの分類や予測を行う手法です。異常検知においては、正常データと異常データの両方を学習させることで、新たなデータがどちらに該当するかを判定します。 例えば製造業の品質検査では、正常品と不良品のデータを学習することで、新たに生産された製品の品質を自動的に判定できます。この手法は、明確な異常データが存在し、ラベル付きデータを十分に確保できる場合に有効です。 ただし、異常データは発生頻度が低く、収集が困難なケースも多いため、データの偏りが生じる可能性があります。異常データが十分に得られない場合は、他の手法と組み合わせて活用することも重要になるでしょう。 教師なし学習 教師なし学習は、ラベルのないデータを基にデータの構造やパターンを学習する手法です。異常検知においては、正常データのみを学習し、それとは異なる挙動を示すデータを異常と判断する方法が一般的です。 例えばネットワークにおけるトラフィックの監視では、通常の通信パターンを学習し、それと大きく異なるトラフィックが検出された場合に異常と見なします。この手法は、未知の異常を検出する能力に優れているため、事前に異常のパターンを特定することが難しい場面で活用されます。 ただし、正常データの範囲を適切に学習していないと、誤検知が発生しやすくなります。そのため、データの前処理や異常スコアの閾値設定を適切に行うことが必要です。 半教師あり学習 半教師あり学習は、少量のラベル付きデータと大量のラベルなしデータを組み合わせてモデルを学習させる手法です。異常検知では、正常データの一部にラベルを付与し、異常データはラベルなしとして学習させることで、モデルの汎用性を高めます。 例えば医療現場では、限られたラベル付きデータと膨大なラベルなしデータを活用し、疾患の早期発見に役立てることができます。ラベル付けのコストが高い場合や、異常データの収集が難しい場面で有効です。 ラベルなしデータを有効活用できれば、モデルの学習効率を向上させる効果があります。異常データの特徴が明確でなくても、通常のデータと比較することで異常を検出できる点が大きな利点です。 強化学習 強化学習は、エージェントが環境と相互作用しながら、報酬を最大化する行動を学習する手法です。異常検知への直接的な応用は少ないものの、システムの最適化や動的な異常対応の分野で活用されています。 例えば、インフラ設備の運用において、強化学習を活用して最適なメンテナンススケジュールを学習し、異常の発生を未然に防ぐ仕組みが検討されています。このようなシステムでは、試行錯誤を通じて異常発生のリスクを最小限に抑えながら、最適なメンテナンス戦略を自動的に学習可能です。 強化学習についてはこちらもご覧ください。 正解のない課題にこそ生きる「強化学習」の基本 異常検知で用いられる代表的な機械学習アルゴリズム 異常検知では、さまざまな機械学習アルゴリズムが活用されています。それぞれの手法に特徴があり、適切に選択することで、検出の精度を向上させることが可能です。 ホテリング理論 ホテリング理論は、統計学に基づいた異常検知手法の一つで、データの平均や分散、分布の偏りを分析し、通常とは異なる値を特定します。データが正規分布に従う場合に特に有効であり、製造業の品質管理や金融取引の不正検知など、幅広い分野で活用されています。ただし、データが正規分布に従わない場合、異常判定の精度が低下することがあるため、データの特性に応じた調整が必要です。 単純ベイズ法 単純ベイズ法は、ベイズの定理を基にした分類手法で、各特徴量が独立していると仮定してデータを分類します。観測データの事前確率と条件付き確率を計算し、最も確率の高いクラスに分類する仕組みです。計算が容易でありながら高い精度を発揮する点が特徴です。スパムメールの検知やテキスト分類、異常検知など、さまざまな分野で利用されています。ただし、特徴量間の相関を考慮しないため、データによっては分類の精度が低下する可能性があります。 k近傍法(KNN法) k近傍法は、データポイント間の距離を測定し、類似性を基に分類や異常検知を行う手法です。新しいデータポイントに対して、既存のデータセット内の最も近いk個のデータを選び、多数決や平均値を用いて分類や異常検知を実施します。 異常検知の分野では、データポイントが近傍のデータとどれほど異なっているかを評価し、一定の閾値を超えた場合に異常と判断します。シンプルで理解しやすく、時系列データの分析やクラスタリングを活用した異常検知に適しています。 局所外れ値因子法(LOF法) 局所外れ値因子法(Local Outlier Factor, LOF)は、データポイントの局所密度を比較し、異常を検出する手法です。あるデータポイントの局所密度をその近傍のデータと比較し、密度の違いを基に異常度を算出します。 異常値がデータセット全体ではなく、局所的な範囲に存在する場合に特に有効です。例えば、通常のデータが一部のエリアに集中している場合、その密度から大きく外れたデータポイントを異常と判定できます。データの密度が不均一な場合や、孤立した異常値の検出に強みを持つため、例えばネットワークセキュリティーの異常検知や、異常な購買行動の検出などに活用されています。 主成分分析(PCA) 主成分分析(Principal Component Analysis, PCA)は、高次元のデータを低次元に変換し、データの主要な特徴を抽出する手法です。正常データから主成分を学習し、新たなデータがその主成分からどれだけ外れているかを評価することで、異常を検出します。また、複数の変数を持つデータを少数の主成分に変換することで、データの構造を簡潔に表現し、異常検知の精度を向上させます。特に、ノイズを除去しながらデータのパターンを分析できるため、金融業界のリスク管理や、製造業の品質検査などに活用されています。 参考:宇部情報システム「 AI異常検知の学習モデルを徹底解説! 」    tebiki「 異常検知とは?機械学習不要で実施できるツールも紹介! 」 異常検知を導入する三つのメリットとは 異常検知システムの導入は、企業にとって業務の効率化や品質向上に大きく貢献します。AIや機械学習を活用した異常検知は、従来の手作業による監視や検査と比べて、より迅速で高精度な対応が可能になります。 ここでは、導入することで得られる三つのメリットを紹介します。 人件費が削減でき、効率的な業務フローが確立できる 異常検知システムを導入することで、これまで人が行っていた監視や検査業務を自動化できます。AIは膨大なデータを瞬時に処理し、短時間で異常を検出できるため、作業の効率と精度が大幅に向上します。その結果、検査員の負担を軽減できるだけでなく、人件費の削減にもつながります。 また、AIによる異常検知は作業の標準化を促進します。従来の方法では、担当者の経験や判断基準によって異常の認識にばらつきが生じることがありました。しかし、AIを活用することで、誰でも一貫した基準で異常を判断できる環境を構築できます。 参考:AI Market「 異常検知とは?メリットや学習方法、手法、ディープラーニング 」 人的に作業によるミスを防ぐことができる 人間が行う業務には、どんなに注意していてもミスが発生する可能性があります。例えば単調な作業や長時間の監視業務では集中力が低下し、異常を見落とすリスクがなおさら高まります。一方、異常検知システムを導入することで、AIが一貫した基準でデータを分析し、ヒューマンエラーを大幅に削減できます。 参考:日立ソリューションズ・クリエイト「 AIで異常検知! 取り入れるメリットや成功事例を解説 」 業務の属人化を防ぎ、安定的な体制が構築できる 業務が特定の担当者に依存していると、その人が退職・異動した際に大きな問題が発生することがあります。異常検知システムを導入することで、経験や勘に頼らず、AIが統一基準で異常を検出できる環境を整えることが可能です。f 例えば熟練技術者のノウハウをAIに学習させることで、異常検査の自動化が実現します。これにより、新しい担当者でも一定の品質基準を維持しながら業務を行うことができるため、業務の属人化を防ぐことができるでしょう。 参考:Tryeting「 異常検知をシステム化するメリットと注意点を解説! 」 異常検知導入時の注意点 異常検知システムを効果的に運用するには、導入時の適切な準備が重要です。高精度な検出を実現するためには、データの質を高めることが不可欠であり、導入後も継続的な改善が求められます。 ここでは、特に重要な2点を紹介します。 適切なデータ収集と前処理 異常検知の精度を向上させるには、まず質の高いデータを確保することが必要です。センサーやログから収集されるデータは、異常パターンを特定するための基盤となります。しかし、取得したデータには欠損値やノイズが含まれることが多く、そのままではモデルの精度が低下する可能性もあるものです。 これを回避するために、データの前処理が重要になります。欠損値の補完や外れ値の処理を適切に行うことで、より正確な分析が可能になります。 参考:MatrixFlow「 AI・機械学習に必須のデータの前処理とは?正規化・標準を使った前処理方法を解説 」 運用と継続的な改善 異常検知システムは、一度導入すれば終わりではなく、継続的な運用と改善が求められます。環境の変化や新たな異常パターンに対応するため、モデルの再学習を定期的に実施し、検知精度を維持することが重要です。 例えば製造業では、設備の老朽化や生産条件の変更により、異常のパターンが変化する可能性があります。金融業界では、不正行為の手口が進化し続けていて、最新の取引データを学習し、異常の兆候をより正確に捉える必要があります。 運用中のデータを活用してモデルを継続的に更新することで、検知精度を維持できます。 参考:Fiby「 AI異常検知の詳細・活用事例と導入方法まとめ 」 【業界別】異常検知の活用事例 異常検知技術は、すでにさまざまな業界で活用され、業務の効率化や安全性の向上に寄与しています。以下に各業界での具体的な活用事例を紹介します。 製造業界:設備保全と故障予測 製造業では、機械の故障を未然に防ぐために異常検知が活用されています。例えば富士電機は生産設備の異常検知システム「OnePackEdge」を導入しました。f振動データや温度センサーの情報を分析することで、異常の兆候をリアルタイムで検出する仕組みを構築しています。 これにより、事前にメンテナンスを実施できるため、設備の寿命を延ばし、無駄なコストの削減につながっているとしています。 参考:富士電機「 予知保全(予兆保全)とその事例 」 金融業界:不正取引の検出 金融機関では、クレジットカードの不正利用やマネーロンダリング対策としてAIによる異常検知が導入されています。不正取引の手口は年々高度化しており、ルールベースの監視だけでは検出が難しくなっています。 マスターカードはAIを活用した不正検知システムを導入し、カード取引のパターンをリアルタイムで分析することで、不正利用の可能性がある取引を即座に特定する仕組みを構築しています。 このシステムでは、過去の取引履歴や利用者の行動パターンを学習し、通常とは異なる取引が行われた際に警告を発することで、不正被害の拡大を防いでいます。従来のルールベースのシステムでは検出できなかった微細な異常も、機械学習モデルによって精度高く検出できる点が特徴です。その結果、すでに同社は不正検知を20%改善させられただけでなく、不正検知誤認も85%解消することに成功したとしています。 参考:Datos Insights「 マスターカードが導入したAIによる不正検知システム 」 医療業界:患者モニタリングと疾病早期発見 医療業界では、異常検知技術が診断支援や患者のモニタリングに活用され、医師の負担軽減や診断精度の向上につながっています。特に、画像診断分野ではAIがレントゲンやMRI画像を解析し、異常な部位を自動的に特定する技術が進化しています。 例えば、理化学研究所や昭和大学などの研究グループは、胎児の超音波検査画像約1万2000枚をAIに学習させ、心臓の異常を検知できるシステムを開発しています。このシステムは、2024年7月に国の承認を受け、妊婦健診の現場で実用化が進められています。AIを活用することで、先天性心疾患の診断精度が向上し、より多くの赤ちゃんの健康を守ることが期待されています。 参考:NHK「 AIで胎児の心臓の異常 検知するシステム実用化 早期発見に期待 」 まとめ 異常検知技術は幅広い業界で活用され、業務の効率化やリスク管理の向上に大きく貢献しています。AIを活用することで、異常の兆候を迅速かつ高精度に検出し、人的ミスの削減やコストの最適化が可能です。また、リアルタイムでの異常検知が実現されることで、問題が拡大する前に対応しやすくなり、組織全体の対応力が向上します。 ただし、高精度な異常検知を実現するためには、適切なデータの収集と前処理が不可欠です。データの質が低いと、誤検知や見逃しが増え、システムの信頼性が損なわれる可能性があります。 異常検知技術は今後さらに進化し、より高度な解析が可能になることが期待されます。各企業や業界に適した最新技術を取り入れながら、最適な導入方法を検討し、業務の効率化と安全性の向上につなげていくことが重要になるでしょう。その際、知見が豊富だったり伴走ができたりする外部ベンダーを活用するのも有効な手です。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 異常検知とは? 関連する機械学習手法や導入のメリットも解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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