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正解のない課題にこそ生きる「強化学習」の基本 2023.4.7公開 2025.2.27更新 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田崇 概 要 AIは学習によって精度が左右されるため、取り組むべき課題に最適な学習方法を選ぶことは非常に重要です。学習方法の一つである「強化学習」について、特徴や代表的なアルゴリズム、教師あり・なし学習との違い、進化の過程、導入のメリットや課題、活用事例を解説します。 目 次 ・ 強化学習とは ・ 強化学習の要素や基本用語  ・ エージェント  ・ 環境  ・ 報酬 ・ 強化学習の仕組み ・ 強化学習の代表的なアルゴリズム  ・ Q学習  ・ SARSA  ・ モンテカルロ法  ・ 「強化」が指す意味 ・ 教師あり学習と教師なし学習  ・ 教師あり学習  ・ 教師なし学習 ・ 強化学習のこれまでの進化   ・ AlphaGo   ・ AlphaGo Zero、AlphaZero   ・ MuZero ・ 強化学習AIを導入するメリット ・ 強化学習AI導入の際の課題 ・ ビジネスにおける強化学習の活用事例  ・ 建設物の制振制御  ・ シフト最適化  ・ 配船計画の最適化  ・ 無線通信のカバレッジ調整の自動化 ・ 正解のない課題に取り組む AIは学習によって精度が左右されるため、取り組むべき課題に最適な学習方法を選ぶことは非常に重要です。学習方法の一つである「強化学習」について、特徴や、教師あり・なし学習との違い、活用事例を解説します。 強化学習とは 主な機械学習の方法には「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の三つがあります。強化学習を一言で言えば、「行動を学習する仕組み」です。AI自らが試行錯誤することを通して、ある環境下で得られる報酬(スコア)を最大化するための行動を学習する手法です。 強化学習の要素や基本用語 強化学習についての理解を深める上では、以下の三つの要素・基本用語への理解を深めておくことが大切です。 エージェント 強化学習におけるエージェントとは、環境と相互作用しながら最適な行動を学習する主体のことです。エージェントは、現在の状態を観測し、方策(ポリシー)に基づいて行動を選択します。選択した行動の結果として、環境から報酬を受け取り、その報酬を最大化するように自身の方策を更新していきます。 エージェントの目的は、長期的な報酬の総和を最大化することです。そのために試行錯誤を繰り返しながら、学習を進めます。 具体的な例として、ゲームAIではプレイヤーキャラクターがエージェントとして機能するものです。ゲーム内の状況(環境)を観察しながら、エージェントは最適な行動を選択して、スコアを高めることを目指します。エージェントの設計においては、観測可能な情報、行動の選択肢、学習アルゴリズムなどが重要な要素です。 参考:スキルアップAI Journal「 強化学習:基本的用語の解説 」 環境 強化学習における環境とは、エージェントが相互作用する外部の世界のことです。環境は、エージェントの行動に応じて変化し、その結果として新たな状態と報酬をエージェントに提供します。 環境の設計は、エージェントの学習効率や成果に大きな影響を与えます。例えばロボット工学の分野では、ロボット(エージェント)が移動する物理的な空間や、障害物の配置などが環境に該当します。環境は、エージェントの行動に対するフィードバックを提供する役割を持ち、エージェントはこのフィードバックを基に自身の方策を調整するという仕組みです。 参考:Qiita「 強化学習の基本を図と数式で理解する① 」 報酬 強化学習における報酬とは、エージェントが特定の行動を取った結果として環境から受け取る評価値です。報酬は、エージェントの行動の良し悪しを数値的に示すものであり、エージェントはこの報酬を最大化するように行動を学習します。 報酬には二つの種類があるのが特徴です。すぐに結果が得られる即時報酬と、将来的な報酬の累積である収益に分けられ、エージェントは長期的な収益を最大化する方策を見つけることを目指します。 例えば、ロールプレイングゲームにおいて敵を倒すと得られるポイントは、即時報酬に相当します。一方で敵を倒すことを続けてあるミッションを達成するのは収益です。強化学習においては、この収益の獲得を目指します。 参考:AI総合研究所「強化学習とは?その種類や理論一覧、具体例をわかりやすく解説」 https://www.ai-souken.com/article/what-is-reinforcement-learning 強化学習の仕組み 例えば自動運転技術において、自動車(技術的にはエージェントと言います)の周りの人などの存在や信号の色などの周囲の状況(環境と言います)を情報として受け取り、それを踏まえて直進、右折、停止などの行動を選択します。するとまた環境が変化し、新しい情報に基づいて次の行動が選ばれるというプロセスを繰り返していきます。 そのシミュレーションの際、取った行動が適切であればあるほど報酬として高いスコアを与えます。すると、エージェントは最初のうちは信号を無視したり、壁に当たったりしますが、そのような行動ではスコアを得られず、「青信号で直進する」「信号がなくても横断歩道に歩行者がいれば停止する」といった高いスコアが得られる行動を次第に取っていくようになります。試行錯誤を重ねながら学習していくのです。試行の回数は一般的に何千回、何万回に及びます。 強化学習では、エージェントが学習するための学習データを用意する必要がありませんし、報酬を最大化するための一連の意思決定ができることになります。言い換えれば、あらかじめ集めておいた大量のデータではなく、刻一刻と変化する環境を入力としています。なお、前者のようなデータの在り方は変化することがないので「静的(static)」、後者のような変化し続けるデータは「動的(dynamic)」と分類されることがあります。 強化学習の代表的なアルゴリズム 強化学習の代表的なアルゴリズムには、Q学習、SARSA、モンテカルロ法などがあります。 Q学習 最も代表的な手法がQ学習(Q-Learning)です。Q関数と呼ばれる行動価値関数を学習して制御を実現します。行動価値関数Q(a|s)とは、s(t)(時刻tのときの状態s)の際に行動aを取った場合、その先どれくらいの報酬がもらえそうかを出力する関数です。例えば、左右に動かせる台の上に棒を立て、なるべく長く立たせるように台を制御したいとします。台を左に動かすときと、右に動かすときの出力を比べ、報酬が多い方を選べば、棒がより長い時間立ち続けることになります。 SARSA SARSAは、現在の状態sで、行動aを取り、エージェントが報酬rを得て次の状態s1に到達し、s1で行動a1を取り…と行動ごとに報酬を得て学習していきます。これらのアルファベットs, a, r, s, aをつなげてSARSAと名付けられました。 Q学習では前述の通り、将来の報酬が最大化するように行動を取るため、一つひとつの行動に「棒が右に傾いたときに垂直に戻すための最適な行動」といった、ある時点ごとの方策に基づくことを重ねているわけではありません。違う言い方をすれば、目的に向かって楽観的に、最短経路で進みます。一方SARSAは、行動ごとに報酬が設定されているため、一つひとつの方策に従って行動していると言えます。そのためQ学習と比べると、慎重に安全な経路で進みます。 モンテカルロ法 とにかく数多くの試行をしてデータを集め、最良の結果を出した方法を選ぶ手法です。2人が対戦するゲームの勝ち方を学習する場合、コンピュータが2人の仮想的なプレーヤーを演じ、完全にランダムに手を差し続けてゲームをシミュレーションし、とにかく終局(プレイアウト)させてしまいます。ある局面からプレイアウトを複数回実行すると、どの方法が一番勝率が高いか計算できます。 なおこの名前は、モナコ公国のカジノで有名な地区モンテカルロが由来です。 「強化」が指す意味 強化学習は英語Reinforcement Learningの和訳です。Reinforcementは何かを強化するための一連の工程を指しますから、上記の強化学習の説明や例で指す内容にぴったりです。また、補強や増援という意味も持ち、外部から何かしらリソースを供給するということで、強化学習の「刻一刻と変化する環境の情報を得続ける」という面と共通しています。 一方、先端技術において「強化学習」と聞くと、機動戦士ガンダムシリーズに出てくる「強化人間」を思い出す人がいるかもしれません。強化人間はArtificial Newtypeと英訳されるようです。Artificialはもちろん、奇しくもAI(Artificial Intelligence)のAと同じです。そしてシリーズ最新作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』には「強化人士」が登場し、こちらはEnhanced personsと英訳されるようです。Enhanceには「強める」という意味はありつつも、reinforcementと違って、「もともと優れている質や能力をさらに高める」という意味の核を持っていて、強化学習の強化とは異なります。 教師あり学習と教師なし学習 一方、機械学習の他の種類である教師あり学習と教師なし学習では、AIが学習するためのベースとなる学習データが必要です。比較して強化学習をより理解するためにも、これら二つの学習方法も解説します。 教師あり学習 与えられたデータ(入力)を元に、そのデータがどんなパターン(出力)になるのかを識別・予測する方法です。学習データに正解を与えることから教師あり(supervised)という名前が付けられました。例えば「過去の売り上げから将来の売り上げを予測する」「与えられた画像にある動物が何の動物なのかを識別したい」といったときに活用できます。 さらに、教師あり学習は二つに分類できます。例で挙げた前者では、過去から未来へと連続して変化していく数値を予測する問題は「回帰問題」と呼ばれ、後者の動物の種類のように互いに連続しない値を予測する問題は「分類問題」と呼ばれます。どちらの問題になるかで用いる手法も変わります。 教師なし学習 「教師なし学習」は、学習データに正解を与えない状態(unsupervised)で学習させる学習手法です。予測や判定の対象となる正解が存在しないため、教師あり学習とは違って回帰や分類の問題には対応できません。 教師なし学習の代表的な手法に「クラスタリング」があります。クラスタリングはデータの特徴からグループ分けします。例えばA、B、Cという特徴を持つデータが無造作に配置されていた場合、人間であれば正解を示さずともAグループ、Bグループ、Cグループとグループ分けできます。教師なし学習のクラスタリングを用いると、自動的にグループ分けすることができます。 このように教師なし学習は、正解・不正解が明確でない場合に効果を発揮します。 強化学習のこれまでの進化 強化学習はゲームの分野で進化してきました。コンピュータに取り込んだゲームでは試行・シミュレーションが容易で、多数回にわたる試行を経た学習に向いています。特に、強化学習の名前を世に広めるきっかけとなったゲームAIとしては、Googleの関連企業であるDeepMindが開発した「AlphaGo」が知られています。 AlphaGo AlphaGoは勝利という報酬のために囲碁の打ち筋を学習し、人間では勝てない領域にまでなりました。2015年に登場し、2017年に当時最強と言われていた棋士、柯潔(カケツ)に勝利したことで人間との対局を引退しています。AlphaGoが衝撃だったのは、囲碁がボードゲームの中でも特に局面が多くて難しく、AIが人間に勝つことはできないと考えられていたためでした。AlphaGoは囲碁に特化したAIですが、強化学習によってAIがこれまでは考えられなかった性能を発揮した点で、AIの可能性を大きく広げたと言われています。 AlphaGoは、方策関数と状態価値関数という役割を担う二つのニューラルネットワークと、ロールアウトと呼ばれるシミュレーション部分、そして囲碁のルールに基づいてニューラルネットワークへの入力を作ったり探索時のゲーム木を展開したりするプログラムで構成されています。革新的であったのは、ニューラルネットワークに基づく技術を従来技術の枠組みの中で高いレベルで統合して、さらに強化学習による棋力の向上に道筋を付けたことにあります。 また、上記のようにニューラルネットワークを基にした深層学習(ディープラーニング)と強化学習を組み合わせている手法は、深層強化学習と呼ばれます。 AlphaGo Zero、AlphaZero AlphaGoが人間との対局から引退した後もDeepMindは開発を続け、過去の対局データを学習せずに自身の対局データだけを元に囲碁の勝ち筋を学習していく「AlphaGo Zero」を発表しました。AlphaGo Zeroは、全く何もない状態から学習を開始し、40日でそれまでのAlphaGoに勝利するようになりました。 AlphaGoでは、ニューラルネットワークの作成の最初の段階で人間の棋譜を用いていました。また、従来型の手作りでチューニングされたシミュレーション部を用いていました。加えて、ニューラルネットワークへの入力も、囲碁についての人間の知識を反映できるように注意深く設計されていました。 AlphaGo Zero は、これらの人手によるチューニングに依存した部分をなくして、ゼロから構成する手法を提案しました。AlphaGoの強化学習では方策関数だけを使って自己対戦と最適化を繰り返していましたが、AlphaGo Zero は方策関数と価値関数の両方を同時に強化していく方法をとっています。 AlphaGo Zeroはその後、囲碁だけでなく、将棋やチェスなどの任意のゲームにも対応できる「AlphaZero」へと発展し、学習を始めて8時間でAlphaGo Zeroに勝利できるようになりました。 MuZero AlphaZeroによって、ボードゲームであれば、そのゲーム専用の人間の知識なしでゼロから強化学習できるようになりました。しかしその探索部分は、ゲームごとに局面の遷移をプログラミングする必要が依然としてあり、一般のゲームへ適用できないという問題がありました。 そこでDeepMindは2020年に、探索における状態の遷移自体もニューラルネットワークによって実現した、さまざまな人間のトッププレーヤーを上回る腕前でプレーできる汎用ゲームAI、「MuZero」を2020年に開発しました。これにより、2人ゲームだけでない任意のビデオゲームに対応できるようになりました。 強化学習AIを導入するメリット まず、正解がない課題に対してAIが自分で学習を続けて最適な行動を追求できる点が挙げられます。教師あり・なし学習と比べると、まとまった量の学習データを必要としない点も導入しやすい点として挙げられます。 例えば、囲碁などのボードゲームのプレイ、自動運転、アンドロイドの動きなど、人間の真似事をさせたい場合、課題に正解も不正解もありませんので、強化学習が適しています。 強化学習AI導入の際の課題 強化学習によるAIの導入で課題となるのは、AIが目標に対して最適な手段を探し出し、ビジネスにおいて実用レベルに達するまでに、膨大な時間と手間がかかる点です。 強化学習は、自転車の乗り方の習得に例えられることもあります。人間が自転車に乗れるようになるまでに転ぶ回数はせいぜい 数十回程度でしょう。しかし強化学習では数万回レベルのシミュレーションが必要になります。 また、細かな検証をしていく手間も出てきます。例えば自動運転では、一つひとつの技術を見れば驚くようなレベルに達しているものが登場していますが、実際に公道を走る際は人間ではあり得ないミスや不具合が発生することがあります。それらがひとたび起きれば人命に関わる事故につながる可能性があるため、徹底的な検証が必要です。 ビジネスにおける強化学習の活用事例 ビジネスにおける強化学習の活用事例をご紹介します。 建設物の制振制御 Laboro.AIが大林組と共同で取り組んだ制振制御のプロジェクトがあります。建物が地震などの揺れによる被害をしのぐ手段の一つである「制振」では、マスダンパーと呼ばれる重りを建物内に設置し、これを揺らすことで地震の揺れを制御します。 このプロジェクトでは、この制振のうちセンサーで揺れを感知してマスダンパーをアクティブに動かす「アクティブ制振」において、どのように動かせば効率良く制御できるかの学習を強化学習で実現しました。 詳しくはこちらをご覧ください。 建設物の制振制御 シフト最適化 非常に多くのパターンが考えられ、最適な組み合わせを導き出すのが困難なテーマを組み合わせ最適化問題と言います。この組み合わせ最適化の例として、例えば勤務スタッフのシフト最適化が挙げられます。少人数の現場であれば難しくはなくても、人数が多かったりシフトのパターンが多かったりすると、人力で最適な組み合わせを見つけ出すのに膨大な時間がかかったり、最適解にたどり着けなかったりしてしまいます。 Laboro.AIでは、このような組み合わせ最適化問題を強化学習を用いて解くソリューション「組合せ最適化ソリューション」を発表しています。最適化問題に強化学習を適用することのメリットとしては、最適化問題が大きくなっても、強化学習では最適化に要する時間(推論時間)が大きくなりにくいという点です。また、最適化問題に対してほぼ一つの枠組みでアルゴリズムの構築が可能な点もメリットです。 詳しくはこちらをご覧ください。 組み合わせ最適化ソリューション 配船計画の最適化 強化学習を具体的な社会問題の解決に用いようとした例として、出光興産とグリッドが共同で進めている配船計画最適化のプロジェクトがあります。配船計画におけるルートの数は膨大であり、配船計画の作成は経験豊富なスタッフに依存せざるを得ませんでした。AIによって最適化・自動化することを目指して実証実験をしたところ、最大約20%も効率化できたとしています。 無線通信のカバレッジ調整の自動化 モバイル通信事業者が基地局を設置して無線エリアのカバレッジを形成している中で、その調整を自動化するのに深層強化学習が活用されています。無線基地局は都市部などでは非常に数多く設置されていて、互いに干渉しないように、またエリアの欠けや抜けができないように設定を調整して、適切なカバレッジの確保を実現しています。これを実現するには、測定車を走らせて計測した上で専門家が日々さまざまな調整が不可欠です。さらに、ビルが新しく建てられたり、人流の在り方が変わったりした際にも、改めて人手で調整しなければなりません。この調整を深層強化学習で自動化する例が出てきています。 正解のない課題に取り組む 現代はVUCA(Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭字語で、先行きが不透明で将来の予測が困難な状態)の時代と言われて久しくなりました。実際に、コロナ禍のようなパンデミックの発生の可能性は語られてきたものの、これだけ長期間、広範囲にわたるという予測は見掛けられませんでした。先行きが不透明ということは、何が正解になるかが状況によって移り変わっていったり、そもそも正解が存在しなかったりするということです。正解がない課題に取り組む強化学習は、今の時代に合った技術と言えるかもしれません。 Laboro.AIでは、強化学習によるAIの産業実装の実績も保有しています。また正解がない課題に取り組むという面では、当社オリジナルのAIコンサルタント「ソリューションデザイナ」は日々、取り組むべき課題に向き合い、エンジニアと共にビジネスソリューションとしてカスタムAIの企画・設計に取り組んでいます。正解が見えないビジネス課題の解決こそ、ぜひ当社にご相談ください。 出典: 猪狩宇司ら『深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト 第2版』 NTT東日本「 教師なし学習とは?覚えておきたい機械学習の学習手法概要 」 「 これから強化学習を勉強する人のための「強化学習アルゴリズム・マップ」と、実装例まとめ 」 GDEPソリューションズ「 AlphaGo とその後 」 物流話「 出光興産/グリッドと業界初の深層強化学習を活用した配船計画最適化の実証実験を完了 」 WirelessWire News「 強化学習による無線エリアの最適化や基地局の省エネ運用など、AIによる自動化の最新技術を見る 」 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 正解のない課題にこそ生きる「強化学習」の基本 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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画像認識AIの世界。その仕組みと活用事例 2021.3.12公開 2025.2.26更新 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田崇 リードマーケター 熊谷勇一 概 要 人間の知能を模した機能をもって高度なコンピュータ処理を行う技術、AI。AIはさまざまな領域で活用が進められており、特に進歩が著しい技術が機械学習と呼ばれる技術領域であり、その中でもビジネス活用が積極的に進んでいるのが画像認識の分野です。機械学習による画像認識の仕組みや活用事例などについて解説します。 目 次 ・ 画像認識AIの仕組み  ・ 画像認識とは  ・ 画像認識の進化  ・ 画像認識ネットワークの進化  ・ 画像内の顔を認識する方法  ・ 画像認識の流れ   ・ データの収集   ・ モデルの定義   ・ 検証 ・ ディープラーニングを用いた画像認識  ・ ニューラルネットワークとディープラーニング  ・ ディープラーニング × 画像認識 ・ 画像系AIの進歩  ・ 画像生成  ・ 物体検出(物体検知)  ・ 異常検知  ・ 顔認証  ・ 文字認識 ・ 画像認識AIのビジネス活用例  ・ 航空写真からの停止線・横断歩道の検出  ・ 動画解析からの感情推定  ・ インフラ設備の劣化箇所検出  ・ 顧客の行動や属性を分析して店内を最適化  ・ 製造ラインでの不良品検知  ・ AIドローンによる低農薬農法  ・ 日本の長大な海岸線を抽出  ・ 顔認証で「手ぶら」で乗れる乗車システム ・ さまざまに進化する画像認識AIの世界 画像認識AIの仕組み AIの技術領域の一つである機械学習は、ディープラーニングや画像分野での大きなブレークスルーがあったことから、特に画像認識の領域で力を発揮しています。 画像認識とは 機械学習を用いた画像認識は、読んで字のごとく、画像内に写っているものが何かをコンピュータに認識させる技術です。 コンピュータは通常、画像をピクセル(画素)の集まりとしてしか認識できません。しかし、その画像には人や動物の姿、イラスト、文字など、必ず何かしらの情報や意味が含まれています。コンピュータは組み込まれた演算処理を通して、ピクセルのパターンから特徴を抽出し、その類似の範囲や差異を学習することでそこに写ったものを認識し、識別、分類などの処理を行えるようになります。 画像認識の進化 画像認識の技術自体は新しいものではなく、さかのぼれば1960年代に登場した「バーコード」も画像認識の一つです。バーコードは日本では1972年に導入され、スキャナによってバーコードの太さやパターンを認識し、商品情報を読み取るための技術として国内での活用が始まりました。また、写真や画像の中にあるものを判定する技術としては、「テンプレートマッチング」と呼ばれるものがあります。これはテンプレート画像を用意し、これと一致するものが該当の画像の中にあるかないかを判定するという技術です。 時を経てディープラーニングなどの機械学習技術の進化が進んだ現代、よりコンピュータが対象物の特徴を正確に把握するためのさまざまな方法が確立され、画像認識は飛躍的に活用の機会を広げています。 画像認識ネットワークの進化 画像認識の技術は2015年には人の認識能力を超えたと言われていますが、ディープラーニングベースの画像認識に用いられるAIのネットワークにも種類があり、それぞれ精度や速度に関わる処理方法や処理能力が異なります。画像認識で発端的なアルゴリズムとしてよく紹介されるものが「畳み込みニューラルネットワーク(CNN: Convolutional Neural Network)」で、さらにそのルーツは日本人研究者・福島邦彦氏が1982年に発表した「ネオコグニトロン」というネットワークであると言われています。 CNNによるディープラーニングが大きく注目されることになったのは2012年のことです。ILSVRC 2012という国際的な画像認識コンペティションで、今では「AI BIG5」の一人に挙げられる研究者ジェフリー・ヒントンが開発したCNNを採用したAlexNetというモデルが、他の競合を大きく引き離す前代未聞の実績を残したからでした。CNNはその後、進化版として登場したLeNet、R-CNN、Fast R-CNN、Faster R-CNN、Google Net、Res Netなど、さまざまな画像認識ネットワークの元祖的なものとして位置づけられています。 画像内の顔を認識する方法 画像認識の活用例の一つとして、カメラの映像から人の顔を認識する活用例があります。画像から人の顔を認識する技術は、従来からカメラのオートフォーカス機能などにも使用されていますが、AI技術の発展によってその精度は現在も向上を続けています。 コンピュータが人の顔を認識できるようになるには、画像の中にあるピクセルの色や組み合わせから「人の顔」のパターンを学習する必要があります。人の顔を構成するピクセルのパターンを大量に学習することで人の顔の特徴を覚え、画像の中から顔を認識できるようになっていきます。 画像認識の流れ 画像内に写ったものを認識する際、以下のような流れで処理が行われます。例として、文字を認識する場合を考えてみます。 まず、画像内には認識を行うAIにとって邪魔になる要素が多く含まれます。そのため、ノイズや背景などを除去し、より正確に、精度高く認識結果が得られるよう前処理が施されます。 次に、AIが「文字らしい」部分の特徴を抽出し、予想される文字情報の特徴と照らし合わせます。その特徴が一致すれば、その文字として認識し結果として出力します。一方、一致しない場合には、別の文字の可能性を予測して照合を行う、あるいはどの文字にも一致しなければ文字として認識しない、というように処理を繰り返し、文字や言葉、文章を認識していきます。 データの収集 画像認識AIを構築する際、最初のステップとして大量の学習用画像データを収集することが不可欠です。AIに多様な画像を学習させることで、認識精度が向上します。 収集するデータは、認識させたい対象物やシーンに関連するもので、かつ多様な条件下で撮影されたものが望ましいです。例えば、異なる角度、照明、背景、解像度などのバリエーションを含む画像を集めることで、AIモデルはより一般化された特徴を学習できます。また、学習させるデータの質も重要で、ノイズや不適切なラベルが含まれないよう注意が必要です。 参考:weel「 画像認識技術の仕組みや活用法を徹底解説!AIを活用した技術や導入方法などを詳しく説明 」 モデルの定義 データの収集と前処理が完了したら、次に行うのがモデルの定義です。これは収集したデータを基に、どのようなアルゴリズムやネットワーク構造を用いて画像認識を行うかを決定するプロセスです。一般的にディープラーニングの手法が用いられ、中でも畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が画像認識に適しているとされています。 モデルの定義では、層の数や各層のニューロン数、活性化関数、最適化手法など、多くのハイパーパラメータを設定します。これらの設定は、モデルの性能に大きく影響するため、タスクの特性やデータセットの性質を考慮して慎重に行わなければなりません。 また過学習を防ぐための正則化手法や、学習の効率を高めるためのバッチ正規化などの技術も取り入れることが重要です。 参考:Locus Journal「 画像認識AIモデル構築の流れとおすすめライブラリ9選 」 検証 モデルの定義と学習が完了した後、次に行うのが検証です。これはモデルが新しいデータに対して、どの程度正確に予測できるかを評価するプロセスです。一般的に、データセットを学習用と検証用に分割し、学習に使用しなかったデータでモデルの性能を測定します。 評価指標としては、精度、再現率、F値などが用いられ、タスクの特性に応じて適切な指標を選択します。また混同行列を用いて、モデルがどのクラスで誤分類しやすいかを分析することも有効です。 検証の結果、モデルの性能が期待に達していない場合は、データの見直しやモデルの再定義、ハイパーパラメータの調整などを行い、再度学習と検証を繰り返します。 参考:AISIA-AD「 画像認識AIの精度を上げるテクニック【中級者向け】 」 ディープラーニングを用いた画像認識 機械学習の中でも、より高度な学習が行える技術がディープラーニング(深層学習)です。ディープラーニングは、ニューラルネットワークと呼ばれるアルゴリズムを用いた学習手法です。 ニューラルネットワークとディープラーニング ニューラルネットワークは、人間の脳内にある神経回路「ニューロン」の仕組みに着想を得て開発された機械学習アルゴリズムです。入力層、中間層、出力層の3層で構成されるニューラルネットワークに対して、中間層の数を増やし、多層化した仕組みを持たせることでより高度な処理を可能とする学習手法が、ディープラーニングです。 しかし、ニューラルネットワークをベースとするディープラーニングは、確かに一般的な手法よりも高度な処理を実現する一方で、やはり高度な計算処理に耐え得るだけのマシンパワーも必要となります。 ディープラーニング × 画像認識 「教師あり学習」に代表される一般的な機械学習の手法では、画像データを学習する際、コンピュータが「どの特徴に着目して学習すればよいか」を示す特徴量を人が指定する必要があります。一方、ディープラーニングではこの特徴量を半自動的に抽出するため、人手による手間を省きつつ、また、人では気付かないような特徴点を見つけ出す可能性も秘めています。なお、ディープラーニングについては以下のコラムでも紹介しています。 Laboro.AIコラム:「 AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いとは 」 画像系AIの進歩 ディープラーニングをはじめとしたAI技術を用いることで、画像分野では次のようなことが可能になってきています。 画像生成 十分な量と質のデータを学習させることで、AIに新しい画像を生成させるといったことも実現されています。なかでも近年話題となったアルゴリズムの一つが、GAN(Generative Adversarial Networks:敵対的生成ネットワーク)です。 GANは生成モデルの一種で、データから特徴を学習することで、実在しないデータを生成したり、存在するデータの特徴に沿って変換したりといったことを得意とします。GANはそのアーキテクチャの柔軟性から、アイデア次第で広範な領域に摘用できるため、応用研究や理論研究も急速に進んでおり、今後のさらなる活用が期待されています。 例えば、実際には存在しないCMタレントの画像・映像を生成したり、手書きの線画から着色を施したり、そのほか、写真をアニメキャラクターに変換する、低画質な画像を高画質化するなど、さまざまな活用事例が生まれています。 なお、AIによる画像生成ですが、こちらも昨今話題になった「ディープフェイク」のように、悪意さえあれば実在する人物が動いたり話したりしている架空の動画を作成することも原理的には可能で、その扱いには十分な注意とモラルが求められます。 引用:” Generative Adversarial Networks “ 物体検出(物体検知) 厳密には画像認識という技術は、あくまで画像内にある特定の対象物が「そこにある」と、その存在を認識するまでの技術領域を言います。一方で、画像の中から「そこに、○○がある」と特定の物を見つけ出す技術は、物体検出(物体検知)と呼ばれます。 つまり、人間であれば見ている画像から物の位置とそれが何であるかの判断が即座に行えますが、コンピュータにとっては、認識することと検出することは別のプロセスであり、分けて実行する必要があるということです。 市場への普及が期待される自動運転車でも、AIによる物体検知が非常に重要な役割を担っています。自動車に搭載されたカメラから周囲の状況を撮影し、その映像中に映る標識や障害物、人などの物体を認識・検出し、さらにそれらに対応すべき適切な操作を瞬時に判断することができてはじめて、自動運転車が現実のものへと近づいていくからです。 異常検知 画像系AIは、工場などの製造現場での異常の検出・検知にもよく利用されています。例えば、ライン上で製造している製品の正常な状態、異常な状態の画像データを大量にAIに読み込ませ、相互の共通点や相違点などを比較分析し、パターンを学習することで、撮影した画像や映像から不良品や損傷箇所を検出し、品質の向上に役立てることも期待されています。 物体検出や異常検知を活用した当社事例としてこちらもご覧ください。 線路設備の不良判定の自動化 防衛装備品の製造におけるAIによる外観検査 顔認証 顔認証技術は、個人の顔の特徴を解析し、本人確認やアクセス制御などに利用される生体認証の一種です。ディープラーニングの進歩により、顔認証の精度と速度が飛躍的に向上しています。最近では、運転免許証など身分証明書書類の写真とセルフィー画像を照合する技術を活用した、オンライン認証やリモートKYC(Know Your Customer)手続きが重要な役割を果たしています。 ただ、IDドキュメントの写真とセルフィー画像の間には、解像度や照明条件、表情の違いなど、さまざまなギャップが存在する課題を抱えている問題もあります。これらのギャップを克服するために、DocFace+のような手法も採用されるようになってきました。 DocFace+は、動的重み付け手法を用いて、IDドキュメントとセルフィー間の特徴量の差異を効果的に学習し、高い照合精度を実現するものです。このような技術革新により、顔認証システムは多様な環境下でも高い信頼性を実現しています。 参考:Cornell University「 DocFace+: ID Document to Selfie Matching 」 文字認識 OCR(光学文字認識)は、画像内の文字情報をデジタルテキストに変換する技術です。紙媒体の文書をデジタル化し、データの保存、検索、編集を容易にするために広く利用されています。 近年、AIや機械学習の進展により、OCRの精度と適用範囲は飛躍的に向上してきました。例えばAIを活用したOCRは、手書き文字や多様なフォント、さらには複雑なレイアウトの文書でも、高い認識精度を実現可能です。従来よりも多様なビジネスプロセスの自動化、業務効率の向上が可能となり、幅広い業界で活躍しています。例えば、金融機関での申請書処理や、医療分野でのカルテ管理などです。 AIを用いたOCRは、従来のルールベースのシステムと異なり、学習を通じて新たな文字パターンや言語にも柔軟に対応できる点も大きな利点です。 参考:smartOCR「 OCRとは文字認識技術のこと!メリット・活用事例・AIとの違いを解説 」 画像認識AIのビジネス活用例 AIを用いた画像認識技術は、実際にさまざまなビジネスシーンで活用されています。 航空写真からの停止線・横断歩道の検出 カーナビや地図アプリに必要なデジタル地図データには、建物や店舗、道路情報、道路標識などの交通情報を網羅することが求められますが、このデジタル地図データの開発にも画像認識AIが用いられています。 一般的なデジタル地図データの開発は、担当者が現場の写真を細かく目視で確認し、交通情報を記録・更新するといった手作業で支えられており、膨大な工数が必要になります。そこでディープラーニングによるAIを用いてコンピュータに航空写真を分析させ、停止線と横断歩道を検出するといった試みが行われています。 もちろん停止線と横断歩道だけではすべての交通情報を網羅することはできません。しかし、膨大な作業工数を考えると、一定の業務効率化につながるだけでなく、人為的な抜け漏れのミスを避けられるようになることが期待されています。 参考: 航空写真からの停止線・横断歩道の検出 動画解析からの感情推定 画像と言うと一般には静止画を指すことが多いでしょう。しかし動画もたくさんの静止画を連続して表示することによって見せる構成になっており、そのAI活用も静止画のそれと関連があります。動画に比べると静止画の方がAI活用が進んでいますが、動画での技術開発も進められています。 例えば、動画に映っている人の表情や動作から感情を推定するための研究開発の事例もあり、こうした技術の精度が高くなれば、対話型システムをはじめとしたさまざまなサービスに活用されることが期待できます。 参考: 動画解析からの感情推定 インフラ設備の劣化箇所検出 インフラ設備を保有する企業にとっては、経年によって発生する設備の劣化は大敵です。ある大手インフラ企業では、それまで人の目視で実施していた劣化箇所の確認作業に、ディープラーニングを用いた画像検出技術を導入し、人の作業や判断をサポートするツールとして役立てています。 参考: インフラ設備の劣化箇所検出 顧客の行動や属性を分析して店内を最適化 小売業で画像認識AIを活用した例として、店舗に来店した客がどのように行動したかを分析し、マーケティングに生かせるデータとして活用する試みが行われています。 具体的には、店舗内に複数のネットワークカメラを設置し、来店者の性別や大まかな年代、どのような動線で店内を移動したかなどを画像から解析する取り組みです。さらに、POSデータや会員情報、天候情報、商品棚に設置したセンサーからのデータ、外部データとの連携によって、より詳細な顧客分析をする例も生まれています。 こうして得られた分析結果は、商品棚や陳列レイアウトの変更や、来店者の属性データを加味した商品ラインナップの拡充、また運営面でもシフトの最適化や防犯対策などに活用されることが見込まれています。 製造ラインでの不良品検知 製造業では、不良品の発見で画像認識AIが活用されています。従来、工場の検品作業は人が目視で行うことが通常でしたが、最近ではAIを活用して自動化する取り組みも増えています。 AIを活用することでチェック漏れなどのヒューマンエラーの低下や、不良品の発見精度の向上といった効果のほかに、働き方改革で作業員の負担を減らす目的からも導入が進められています。 具体的には、工場の製造ラインにカメラを設置、製品を撮影し、学習済みのAIによって不良品を判別するという適用の仕方が代表的です。その判別方法はさまざまですが、不良品と判別されたデータを教師データとして学習させ、それ以外を良品と判別する方法や、ディープラーニングで良品のみを学習し、それ以外を不良品と判別する方法などもあります。個体差があるため、良不良の判別が難しい面もある一方で、熟練者のノウハウを伝承する手段として一層の活用が期待されています。 AIドローンによる低農薬農法 AI搭載ドローンによる画像認識により、害虫や虫に食われた葉の位置を特定し、必要な箇所に必要な量の農薬を散布するといった活用も行われています。 害虫のいる箇所にピンポイントで散布できることから、本来であれば撒く必要のない農薬を削減することになり、また農薬を散布する人手も削減できるなど、コストカットに貢献することが期待されています。 さらに“低農薬”は、農産物にブランドとしての付加価値ももたらしており、低農薬農法で栽培した農産物が「スマート枝豆」や「スマート米」として一般的な農産物よりも高値で取引されています。 日本の長大な海岸線を抽出 政府は、日本各地で広がる海岸浸食を食い止めるため、人工衛星やドローンで撮影した画像をAIで分析する観測システムの導入に乗り出します。日本の海岸線の総延長は約3万5000kmで世界6位の長さです。温暖化による海面上昇の影響などで全国的に海岸浸食が進行していますが、海岸線が長いことで観測や管理に多大なコストがかかることが課題です。そこで、新たなAI観測システムを構築して、衛星画像やドローンが撮影した上空写真などを取り込み、システムが自動的に海岸線を抽出することを狙っています。 出典: 読売新聞「総延長が世界6位の日本の海岸線、ドローンやAIで画像分析…防災利用へ自治体と連携」 顔認証で「手ぶら」で乗れる乗車システム 丸紅と熊本市交通局は、乗客が路面電車に設置されたタブレット端末に顔をかざすと約2秒で運賃の決済が完了するサービスの実証実験を始めました。熊本市内を走る路面電車の約2割に顔認証システムを組み込んだタブレット端末を設置、利用者は事前に決済アプリをダウンロードし、顔認証を登録すると「手ぶら」で交通機関を利用できるとしています。 出典: 日経産業新聞「丸紅、地方交通で顔認証決済 熊本市の路面電車で実験」 さまざまに進化する画像認識AIの世界 画像認識技術は日進月歩で進化しており、ここでは紹介し切れないほどの多様な活用事例が誕生しています。その効果としても業務効率化やコスト削減、商品・サービス品質の向上、付加価値の創出などさまざまです。 一方で、技術開発に関する専門的知識がないままプロジェクトに取り掛かってしまったり、「とりあえずAI使いたい」という目的のないDXが推進されてしまったりと、結果として目的と手段が逆転し、ビジネス上で何の価値も生み出さないAI導入プロジェクトが後を絶たないことも実際です。進化が著しい華やかな先端技術であるからこそ、その限界を知り、どのようにAI技術をビジネスオペレーションに適用させるかを徹底的に考え抜くことが、AI導入プロジェクトの成否を握っています。ビジネスに価値あるテクノロジー活用に向けてAIの導入をお考えの方は、ソリューションデザインを強みとするLaboro.AIへ、ぜひご相談ください。 執筆者 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 The post 画像認識AIの世界。その仕組みと活用事例 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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音声認識AIのいま。その技術や事例を知る 2020.12.1公開 2025.2.25更新 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田崇 リードマーケター 熊谷勇一 概 要 AI技術はさまざまな分野での活用が進められており、中でも私たちの生活の中にも広く浸透している技術が音声認識AIです。音声認識AIの大まかな仕組みや使用されている技術、実際の活用事例を紹介します。 目 次 ・ 音声認識とは  ・ 音声認識AIがもたらす効果  ・ 音声認識の仕組み  ・ 音声認識AIを用いたサービスの普及状況 ・ 音声認識の代表的な技術  ・ 音響分析  ・ 音響モデル  ・ 発音辞書  ・ 言語モデル  ・ ディープラーニング技術 ・ 音声認識の難しさ  ・ 日本語特有の音声や表現に対応しきれない  ・ 標準語以外の方言やスラングの認識に弱い  ・ 発言者の識別は困難 ・ 音声認識と自然言語処理の関係 ・ 音声認識AIの事例  ・ 音声AI家電   ・ 音声アシスタント   ・ スマートスピーカー  ・ クラウド環境で文字起こし  ・ 自動応答で店舗予約を完了  ・ リアルタイムに通訳 ・ 音声だけでなく音の認識も  ・ 動物の鳴き声を認識  ・ 生活音・環境音、異常音を認識 ・ 音声認識AIの今後の課題 ・ 音声認識AIはカスタムが必要な場合も 音声認識とは 音声認識とは、文字通り、人が発した“音声”をコンピュータに“認識”させることを目指した技術領域です。具体的に言えば、人間が話す音声を空気の振動として測定し、そこから得られた波形データを解析、文字データに変換するための技術です。 Amazon Echo(Alexa)やGoogleアシスタント、AppleのSiriなどのスマートスピーカーの存在も日常的に使われるようになってきました。AIによる音声認識が進化したことで、声だけで機械を操作したり、会議の議事録を効率よく作成したりといったことが実現されてきています。 音声認識AIがもたらす効果 現在、さまざまな企業で音声認識AIの導入が行われています。その際に、音声認識AIによって得られる代表的な効果としては、次の三つが挙げられます。 ・業務効率化 ・業務精度の向上 ・顧客満足度の向上 一つ目の業務効率化とは、前述の議事録作成や録音データの文字起こし、記入作業の自動化などに音声認識AIを用いることで、業務の省力化が期待されることです。その他、コールセンターでの活用は特に進んでおり、テキスト化した音声からオペレーターの応対の品質を分析したり、弱み洗い出したりするときなどにも利用されています。 二つ目の業務精度の向上は、例えば文字を記入する作業を人手ですることを考えた場合、長時間のタイピングの中ではどうしても打ち間違いや打ち漏れが発生することについてです。音声認識AIを用いた場合、もちろんある程度の認識間違いや変換ミスはあり得ますが、一定の精度向上が見込まれるほか、人の作業としては文章チェックに集中できるようになるというメリットが生まれます。 最後の顧客満足度の向上では、前述のコールセンターでの活用がまさにその例です。顧客やオペレーターの状態を音声から把握することができれば、さまざま業務品質に関するさまざまな改善点を発見し、顧客満足度の向上を目的とした施策の実施につなげることも期待できます。 音声認識の仕組み 以上のような効果が期待される音声認識AIは、簡単には以下のような仕組みで動作しています。 入力 AIもコンピュータの一種であることから、何かしらのデータの入力が必要になります。音声認識の場合の入力データは、人が発した音声です。まずは、マイクを用いて空気の振動を波形データなどに変換します。その後、周りの不要な声や環境音などのノイズを取り除くための処理を行います。 参考: エンジニアコラム 『声や音を聞き分ける、『音源分離』とは』 テキストへの変換 入力データを処理したら、まずはその音声データを一つひとつの音として認識します。「せんせいこんにちわ」(※)という音声であれば、「せ・ん・せ・い・こ・ん・に・ち・わ」と、一つひとつの音ごとに文字データに変換する具合です。 (音を表記するため、ここでは「わ」と記載しています。以下も同じ) その後、それぞれの音の並びを分析し、単語に変換します。上記の例の場合、「先生 こんにちは」と変換します。最後に、単語と単語のつながりを分析し、一つの文として認識します。ここで、「先生、こんにちは」という文をコンピュータが認識することになります。 音声認識AIを用いたサービスの普及状況 音声認識AIを用いたサービスは、AI活用の中でも非常に普及している分野の一つです。音声認識技術単体での活用はもちろん、後にご紹介する自然言語処理技術と組み合わせた技術が広く普及しており、ビジネス向け・コンシューマー向けどちらにもさまざまなサービスが登場しています。 ビジネス向けでは、音声認識技術を用いた自動文字起こしが挙げられます。これにより会議の議事録を効率よく作成する、音声によるメモをテキストに変換して残すなどの活用がされるようになっています。 コンシューマー向けでは、スマートスピーカーが代表的です。音楽の再生・停止を音声で操作できるほか、家電と接続することで照明やエアコンなどの操作を音声で行うことも今では珍しくなくなりました。 音声認識の代表的な技術 音声認識では、主に以下の四つの技術が用いられています。ここでは、その概要についてご紹介します。 音響分析 音響分析では、録音データを分析し、その音から音声認識に必要な情報を抽出してコンピュータが認識できるデータに変換します。音声認識AIは、生の録音データをそのまま認識できるわけではありません。人間は耳に入ってきた音から言葉を瞬時に認識し、無意識のうちに意味を理解していますが、コンピュータからすれば音声も環境音も同じ一つの音の波形としか認識できないためです。 音声認識で抽出する情報のことを、特徴量と言います。特徴量は、その名の通り、データ内にある特徴を抽出したもので、AIによる分析では欠かせない要素です。音響分析では、音の周波数、強弱、時間情報などが特徴量として挙げられます。例えば周波数のパターンを抽出することで、それが人間の音声なのか環境音なのかをコンピュータが認識できるようになります。 音響モデル 音響モデルでは、コンピュータがあらかじめ学習していた音や単語の情報と照らし合わせ、抽出した特徴量がどのパターンと整合するかを計算します。 例えば「こんにちわ」という音声があったとき、人であれば「こ」という音声を誰が発しようとも「こ」だと認識できます。しかし、実際には声帯や音の高低の差、前後の単語とのつながりにより音は変わっています。AIでは「こ」の音のパターンを学習することで、入力された音声「こんにちわ」の「こ」が「こ」であることを認識できるようになります。 発音辞書 発音辞書は、膨大な情報データベースの中から、音の組み合わせを抽出し、単語として認識する役割を持っています。「こ・ん・に・ち・わ」のそれぞれの音を認識したら、それらを組み合わせて「こんにちは」という単語として認識する要領です。 言語モデル 音響モデル・発音辞書で音や単語を認識したら、言語モデルによりそれらを組み合わせ、意味のある正確な文章として認識します。文章として認識するには膨大な量のデータを学習する必要がありますが、ここでよく使われるのが「隠れマルコフモデル」というモデル化手法です。 隠れマルコフモデルは文字、あるいは文字列の後に続く文字の現れやすさを確率で定義してパターン化するもので、音声だけに引っ張られず、文脈の通った文になるように音や単語をつなぎ合わせていきます。 ディープラーニング技術 ディープラーニング(深層学習)は、AI活用の在り方を刷新した技術として広く知られるようになった手法です。音声認識技術においても、ディープラーニングは標準技術になっています。 ディープラーニング以前の音声認識の音響モデルは、隠れマルコフモデル(HMM)の出力確率にガウス混合分布(GMM)を組み合わせたGMM-HMMが主流でした。しかし、2010年から2012年にかけて、大語彙連続音声認識タスクにおいて、ディープラーニングの適用により最大33%の性能向上が報告されました。これを受け、音響モデルの研究は急速に見直され、現在ではディープラーニングが音響モデルの標準技術として定着しています。 同技術の導入により、音声認識システムは多様な話者や環境に対する適応性が向上し、音声アシスタントや自動翻訳など、さまざまな応用分野での活用が進んでいます。 参考:日本音響学会誌「 音声認識における深層学習に基づく音響モデル 」 音声認識の難しさ 日本語特有の音声や表現に対応しきれない 音声認識に関する四つの技術で実現できることを触れてきましたが、身近にある音声認識サービスを使用していて、うまく認識されないと感じることがあるかもしれません。さまざまな原因があるため一概には言えませんが、日本語の音声認識は多言語と比べて難しい面があると言われています。 例えば、母音と子音の少なさが挙げられます。母音や子音が少ないと、同音異義語や似た発音の言葉が増えてしまい、認識した音をどの言葉に割り振ればよいのかコンピュータが判断しづらくなると言われています。この問題を解決するためには、コンピュータが参照する辞書を充実させていく必要があります。その一方で、この辞書を作るにも日本語には難しさがあります。英語をはじめとした多くの言語は単語と単語の間にスペースを開ける「分かち書き」がありますが、日本語はすべての文字を詰めて書くため、形態素解析と呼ばれる自然言語処理の一手間が必要であるといった課題があります。日本語はコンピュータに学習させるための工夫が特に必要とされるのです。 標準語以外の方言やスラングの認識に弱い 音声認識技術は近年大きな進歩を遂げていますが、標準語以外の方言やスラングの認識においては依然として課題が残ります。これは、音声認識システムが主に標準語を基に学習されているため、地域特有の発音や語彙、文法構造を持つ方言や、日常的に使われるスラングに対応しきれないことが原因です。 例えば、岩手県の方言を用いた音声をOpenAIの音声認識システム「Whisper」で解析した結果、標準語と大きく異なる発音や表現が多く、正確な認識が難しいことが報告されています。このような課題を克服するためには、各地域の方言やスラングを含む多様な音声データを収集し、システムに学習させることが必要です。 ただ、これらのデータの収集やラベル付けには多大な労力と時間がかかるため、一朝一夕に解決することは難しいとされています。現実的な解決策としては、地域ごとに特化した音声認識モデルの開発や、ユーザーからのフィードバックを活用した継続的なモデルの改良です。 参考:Qiita「 音声認識AIのWhisperは方言を理解できるか 」 発言者の識別が困難 音声認識システムにおける発言者の識別、話者識別も大きな課題になり得ます。話者認識は、幅広い応用可能性を有している技術分野であり、例えば音声アシスタントやセキュリティーシステムなどさまざまな用途で使われています。 会議やインタビューなど複数の話者が交互に発言する場面では、各発言者を正確に識別し、その発言内容を紐付けることが求められます。しかし、話者ごとの声の特徴や話し方の違いを正確に捉え、識別するためには、高度な音響分析と大量の学習データが必要です。また話者が変わるタイミングや、重複して話す場合の処理など、技術的なハードルも存在します。 これらの課題を解決するためには、音声認識と話者識別を統合したシステムの開発や、ディープラーニングを活用した高精度な話者識別モデルの構築が必要です。AI活用がうまくいけば、複数の話者が参加する場面でも、各発言者の識別と発言内容の正確なテキスト化が可能となり、より有意義な音声認識技術の活用が実現するでしょう。 参考:議事録総合研究所「 AI音声認識の仕組みと技術からビジネスへの応用まで 」 Laboro.AIでは、話者認識技術の発展を目的に、日本語話者の音声を収録した音声データセット「Laboro-ASV」の無償提供をしています。「話者ごとの発話数」が話者認識のためのデータセットの有効性を決定付ける重要な要素であると考え、Laboro-ASVをデータセットとして充実させることを目的に、出演頻度に基づいて話者を選択し、話者ごとに十分な発話量を確保しています。話者1人当たりの発話数は、同種のデータセットで一般的に100~200であるところ、それをはるかに上回る450超の発話数で構成されています。 詳しくはこちらをご覧ください。 日本語話者の音声を収録した話者認識用データセット「Laboro-ASV」を無償公開 音声認識と自然言語処理の関係 少し触れてきたように、音声認識AIは多くの活用シーンにおいて文字そのものの解析に特化した自然言語処理という技術の組み合わせで運用されています。 音声認識の領域は、録音データから人間の音声を抽出し、文脈の通ったテキストに起こすまでを指します。そのため、例えば、「『こんにちは』という挨拶に対して『こんにちは』と返す」といった命令に対してその操作を実行する技術は、テキストを意味のある文として認識・処理する自然言語処理の領域になります。 AIの各技術は単体ではサービスとして運用しづらいものも多いため、このようにマルチモーダルに技術を組み合わせることで便利なサービスとして活用される可能性が生まれてきます。 なお、音声認識や自然言語処理はAIの中でも「ディープラーニング」と呼ばれる技術の活用が注目される分野の一つです。ディープラーニングは、データに含まれる特徴をある種、自動的に学習することに長けたAIのネットワークです。構築に難しさがある反面、より精度の高い処理が期待できます。ディープラーニングに関しては、以下のコラムでご紹介しています。 Laboro.AIコラム:「 AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いとは 」 音声認識AIの事例 ここでは、音声認識の技術を活用した実際の事例をご紹介します。 音声AI家電 音声認識を身近に体感できる最も分かりやすい例が、近年一般に普及している音声AI家電です。 音声アシスタント iPhoneのSiriやGoogleアシスタントなど、スマートフォンには音声入力・会話システムが搭載されていることが当たり前になりました。これらは「VUI(Voice Use Interface)」と呼ばれ、音声を窓口としたユーザーインタフェースが一般にも浸透し、スマートフォンだけでなく、冷蔵庫や照明など、さまざまな家電の入力操作が簡略化されるようになっています。VUIについては、以下のコラムで詳しくご紹介しています。 Laboro.AIコラム:「 『VUI』と、もっと大切な“UI”=Use Imagination 」 スマートスピーカー 音声アシスタントを搭載した家電としてこちらも一般に行きわたり始めているのが、AmazonのAlexaやGoogleスピーカーに代表されるスマートスピーカーです。音声指示によって音楽再生やニュースの読み上げ、家電の操作などが可能になっており、今後さまざまなデバイスとの連携が期待されるところです。 クラウド環境で文字起こし 音声データをテキストデータに変換する文字起こしは、音声認識の活用としてポピュラーな分野の一つです。 従来は人間が音声を聞きながらタイピングで入力してテキストに起こす必要がありましたが、音声認識による文字起こしは高い精度でこれを代行することができます。もちろん100%の精度とは言えないため、正確なテキストデータが欲しい場合はその後に人力で編集する必要がありますが、最初から人力で入力するよりは全体の作業が効率化される場合や、「だいたいの内容が分かればいい」用途であれば高い効果を発揮します。 この技術を用いたサービスの例として、アドバンスト・メディア社の『ProVoXT(プロボクスト)』が挙げられます。これは文字起こしをクラウドにて提供するサービスで、所定の手順で録音したデータをアップロードすることでテキストデータを得ることが可能なサービスです。 出典: アドバンスト・メディア 『ProVoXT』 自動応答で店舗予約を完了 音声認識と自然言語処理を組み合わせた技術として知られているのが、自動応答です。人間の発話を意味のある文として認識し、それに対する回答をAIが生成して返す技術は研究が進められています。 一例として、Googleが2018年に発表したレストランの予約などをAIが代行する『Google Duplex』があります。これは顧客がレストランに予約を入れる電話をすると、レストランのスタッフではなくAIが受け答えをしながら予約を完了するというサービスで、音声のリアルな合成技術も掛け合わせてまるで人間を相手に話しているかのように予約ができるようになっています。 Google Duplexも完璧ではなく、サービスのローンチ後はいくらかの割合で人間のオペレーターが代わって予約を受けていましたが、Googleは2020年10月15日、Google Duplexによる通話の99%がAIにより自動化されていると発表し話題になりました。 出典: TechCrunch Japan 2020年10月16日 グーグルの会話型AI「Duplex」がコロナ禍で300万件以上のビジネスリスティングを更新 リアルタイムに通訳 インバウンド需要の向上が今後見込まれることに伴ってニーズを増しているのが、リアルタイムに通訳を行うサービスです。音声認識と自然言語処理により発話の内容を分析し、多言語に通訳した上でテキストや音声で出力します。これにより、同じ言語で話せない人同士でもリアルタイムにコミュニケーションを取る端緒となっています。 一例として、85言語(74言語で音声・テキスト、11言語ではテキストのみ)に対応している通訳機「ポケトーク」があります。2022年からはスマホアプリも提供され、使い勝手が増しています。 出典: ポケトーク公式サイト 音声だけでなく音の認識も これまで主に人の音声を対象に事例として紹介してきましたが、人の声を含めてすべて音は波形データとして取得されることから、動物の鳴き声、生活音、機械音など、さまざまな音を対象に音声認識AIの活用可能性を見いだすことができます。 動物の鳴き声を認識 その一例として、豚の鳴き声から感情を推測し、健康状態の監視を可能にしたという研究があります。この研究で分析に使用された音はほとんどが農場や商業施設で録られたもので、報告によればポジティブな鳴き声とネガティブな鳴き声を92%の正解率で予測できたとしています。今後の研究によっては、家畜の鳴き声から健康状態を管理する仕組みへと発展することや、ペットの感情予測などに応用されていくことが期待されます。 出典: allai.jp『AIが動物の鳴き声から健康状態を読み取る』 生活音・環境音、異常音を認識 生活音や環境音を認識してフィードバックし、聴覚障がい者に周囲で何が起きたかを知らせるという研究も進められています。玄関をノックする音や街中でのクラクション音など、生活の中にある音をAIによって把握した上で聴覚に頼らない方法で通知する仕組みが実現すれば、聴覚障がい者へのこれまでにない新たなサポートへとつながっていくはずです。 オーディオ機器「ONKYO」の技術を受け継いでいるオンキヨーは、音の解析技術とAI技術を組み合わせたシステムを開発しており、コマツと共同して異常音からエンジンの異常を検出するシステムの開発を行っています。通常の機械学習では、学習データとそれに紐づく正解ラベルが必要ですが、学習データに紐付く正解ラベルを必要としない方法を取っており、多大なデータを必要とせずに異常を検出することができるとしています。 出典: 富士通『聴覚障がい者のインクルージョンを促進する環境音AI認識システムが、IAUD国際デザイン賞金賞を受賞』     ドリームニュース「オンキヨー株式会社特許出願の発明「異常検出装置及び異常検出方法」公開のお知らせ」 音声認識AIの今後の課題 現在の音声認識技術には、入力速度が速い、操作性が高いという2つのメリットがあります。そのため、音声からテキストへの変換をほぼ遅延なく行うことができ、タイピングで起こすよりも速くタスクを完了することが期待できます。また、両手をフリーにしたまま音声で入力できるメリットもあり、デバイスやシステムの操作性も大きく高まることが期待されています。 一方で、日常会話によく現れるような人が意訳的に発する言葉を理解して返すことはまだ難しく、生活シーンで活用できるような技術に十分に発達しているとは言い切れません。今後さらなる技術進歩と精度の向上、新たなサービスの創出が期待されます。 音声認識AIはカスタムが必要な場合 も AIを用いた音声認識は高いレベルに達しており、さまざまなシーンでこの技術を活用したサービスが登場しています。しかし日常に溶け込んで人々が自然に利用するまでにはまだ大きなハードルがあると言えます。音声認識技術にはまだ伸びしろがあり、今後さらに人々の生活を豊かにするサービスが誕生してくることが期待されます。 しかし、企業への導入を考えた場合、そもそも上に紹介したようなパッケージ型のAIソリューションでは対応が難しい場合も少なくありません。例えばその企業独自の専門用語や業界用語などを認識させたいようなケースはその一つです。あるいは、専門性を伴うような業務プロセスへの導入・運用を考える場合も汎用的なプロダクトでは対応できない可能性があります。 こうした場合には、オーダーメイドによる音声認識AIモデルの開発を検討することも必要になってくるはずです。Laboro.AIでは、『カスタムAI』の開発を特徴に、ビジネス課題に合わせたAI導入を入念なコンサルティングを踏まえて支援しています。自社独自のAI開発の検討が必要になった際には、ぜひご相談ください。 その他のおすすめコンテンツ ・ 日本語音声コーパス『LaboroTVSpeech』を公開 ・ カスタムAI開発について ・ 機械学習とディープラーニング(深層学習)の違いとは? ・ AI導入現場から。企業が抱える検討課題の実際とは ・ 機械学機械学習とディープラーニング(深層学習)の違いとは? ・ 事例から知る!機械学習の基礎と活用5ジャンル ・ AI導入によるメリットやデメリットとは?課題やポイントも含めご紹介 ・ AI開発の基礎!概要から開発の流れ、必要なものを解説 執筆者 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 The post 音声認識AIのいま。その技術や事例を知る first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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2025年注目のAIコラムとキーワード 2025.2.12 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 2025年に入って1カ月が経ちました。早くもさまざまなAI関連のニュースが出てきた中、2024年から引き続き注目を集めている当社コラムをダイジェストで紹介します。AI関連の情報の振り返りや、AI導入の検討に役立てていただければ幸いです。 目 次 ・ 注目を集める当社AIコラムの紹介  ・ 基本のキーワード   ・ 機械学習 ディープラーニング   ・ ニューラルネットワーク   ・ 強いAI 弱いAI   ・ 強化学習   ・ 特徴量  ・ 近年注目のキーワード   ・ LLM、RAG   ・ 組合せ最適化   ・ Web3   ・ 設計最適化   ・ スケジュール最適化  ・ 業界別のAI活用   ・ 化学×AI   ・ 鉄道×AI   ・ 教育×AI ・ AIでビジネス革新を実現 注目を集める当社AIコラムの紹介 当コラムコーナーではAI関連のコラムを100本以上掲載してきました。その中でも、2025年に入ってからも注目されているコラムを簡単な内容と共に紹介します。 基本のキーワード 機械学習 ディープラーニング AI、機械学習、ディープラーニングは同時に語られることが多いですが、これらはAIの一つの技術領域として機械学習があり、機械学習の一つの技術としてディープラーニングがあるという関係にあります。近年AIがブームになっているのは、機械学習の一手法としてディープラーニングが登場し、AIのレベルを大きく引き上げたことが大きな要因だとされています。 Laboroコラム「 AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いとは 」 Laboroコラム「 機械学習の活用事例―機械学習の基本から活用方法まで通しで解説― 」 ニューラルネットワーク ニューラルネットワーク(neural network)とは、人間の脳の中の構造を模した学習モデルのことです。人間の脳にはニューロンと呼ばれる神経細胞が何十億個も張りめぐらされていて、互いに結び付いて神経回路というネットワークを構成しています。人間が何かの情報を感知すると、ニューロンに電気信号が伝わり、ネットワーク内をどのように伝わっていくかによって、人間はパターンを認識しています。ニューラルネットワークはこのニューロンの特徴を再現しようとする手法です。 Laboroコラム「 ニューラルネットワークの基本知識。仕組みや種類、活用事例 」 強いAI 弱いAI AIに関する話題の中で、AIが人の心を持つかどうかで分類する「強いAI」「弱いAI」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。AIが自身よりも賢いAIを作り出して人間がはるかに及ばない知性が誕生する「シンギュラリティー(技術的特異点)」が訪れるという仮説も聞いたことがあるかもしれません。これらはお互いに関係がある考え方です。一見、AIの産業応用にはあまり関係がなさそうに思えるかもしれませんが、これらもしっかり知ることにより、成果をより生み出すAIを構想する助けになります。 Laboroコラム「 「強いAI」と「弱いAI」。AIが人間を超えるかが分かる分類 」 強化学習 AIは学習方法によって精度が大きく左右されるため、取り組むべき課題に最適な学習方法を選ぶことは非常に重要です。学習方法の一つである「強化学習」について、特徴や代表的なアルゴリズム、教師あり・なし学習との違い、進化の過程、導入のメリットや課題、活用事例を解説します。 Laboroコラム「 正解のない課題にこそ生きる「強化学習」の基本 」 特徴量 大量のデータを学習することでパターンや一貫性を見つけ出す機械学習では、ただデータを用意すれば良いわけではなく、データの中のどの特徴に着目し、コンピュータに学習させれば良いかを人が指定する必要があります。これらの特徴を「特徴量」と言い、機械学習を用いるにあたってはとても重要な要素の一つになります。 Laboroコラム「 機械学習の鍵 「特徴量」。その重要性を考える 」 近年注目のキーワード LLM、RAG LLMの利用やそれに寄せられる期待は高まり続けており、RAGのような精度を高める手法の普及も進んでいます。しかし、RAGを組み合わせたLLMのビジネス導入は簡単というわけではなく、いくつかの「落とし穴」があります。LLMやRAGの基本を踏まえた上で、その落とし穴の特徴と回避法を解説します。 Laboroコラム「 LLM・RAGのビジネス導入の落とし穴「回答精度が期待より低い」などの回避法 」 組合せ最適化 ビジネス上のタスクを完了させる方法に複数の組合せから選ばなくてはならない場合、その選択は、意思決定者の経験や知識に基づいた「ビジネス勘」に依存することが少なくありません。しかしAIを活用した「組合せ最適化」で、組合せの数が膨大であっても、最適な解を十分に短時間で導き出すことを実現する例が増えています。 Laboroコラム「 AIを活用した組合せ最適化、カギの一つは強化学習 」 Web3 Web3を理解するためのキーワードは”decentric”です。これは「データセントリック」のように”-centric”(〜を中心とする)という言葉の反対の「非中心の、非中央集権の」という意味を持ちます。これを踏まえた上で、Web3にAIがどう関わり、どのような相乗効果を生んでいき、AIの重要性がさらに高まる背景を理解しましょう。 Laboroコラム「 「Web3.0」じゃないWeb3と、AIの関係性 」 設計最適化 製造業のデジタル化においては、長年、ベテラン技術者の経験知が「最後の難関」とされてきました。しかし近年、強化学習やメタヒューリスティクスなど、高度な最適化技術を活用した「設計最適化AI」によって、複雑な設計に関する意思決定を計算可能なかたちで再現し、飛躍的な効率・品質改善を実現する動きが加速しています。 Laboroコラム「 設計最適化AIが創出する競争優位。製造業プロセスの変革 」 スケジュール最適化 計画策定タスク、いわゆる「スケジューリング」は、考慮すべき制約条件が膨大・複雑であることなどからビジネス課題であり続けているため「スケジューリング最適化AI」の開発・導入・活用が多くの企業で検討されています。その高度化のためのポイントを、導入事例も交えて取り上げます。 Laboroコラム「 スケジューリング最適化AI、高度化の鍵は「戦略」にあり。導入事例も解説 」 業界別のAI活用 化学×AI 日本を代表する輸出産業の一つである化学業界では近年、「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」をはじめとしたAI技術の活用が注目を集めています。研究における新たな付加価値の醸成や効率化を目指す動きが見られるようになっている一方、他国にシェアを奪われている領域も出始め、研究開発のスピード向上が課題の一つになっています。化学分野におけるAIの活用、特にMIを中心に、事例を交えてお届けします。 Laboroコラム「 化学のような、AIと産業の融合。MIなど四つのインフォマティクスとは 」 鉄道×AI 一見、ITやデジタル技術との関わりが薄いと思われがちな鉄道業界ですが、実は、人々の行動履歴をはじめとしたデータの宝庫であることが言われています。近年、鉄道利用者の安全性・利便性の向上やマーケティング利用、抜本的なコスト削減など、膨大なビッグデータをベースとしたAI活用が様々な形で進められています。今回のコラムでは、鉄道業界におけるAI活用方法や事例をご紹介していきます。 Laboroコラム「 線路は続く、未来へと。鉄道業界のAI活用 」 プロジェクト事例「 線路設備の不良判定の自動化 」 教育×AI AIの導入により高い価値を見出せると期待されている分野の一つが、教育です。まだAIの活用は限定的ですが、教育現場が抱える課題を解決し、誰もが必要な教育を効率良く受けられるようになることが期待されます。このコラムでは、教育現場においてAIができることについて考えていきます。 Laboroコラム「 教育もAIも、一律ではダメ。教育変革のためのAI活用 」 AIでビジネス革新を実現 以上、2025年に入ってからも注目されている当社コラムを振り返ってみました。こうした情報収集や技術動向を理解した上で、ビジネス課題を見出してAIで解決し、価値創出を追究していくのが当社の強みです。これを担うのが、AIに関するコンサルタントとプロジェクトマネジャーを務めるソリューションデザイナーと、ビジネス貢献を最優先にしたAI開発に取り組む機械学習エンジニアです。 この体制で各企業に合わせたAI開発をすることで、新規製品・サービス創出やビジネスモデル変革などの新しいビジネス施策展開を狙うことができ、ひいては企業成長を図ることもできます。ぜひ一度、下記フォームからご相談ください。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 2025年注目のAIコラムとキーワード first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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LLM・RAGのビジネス導入の落とし穴「回答精度が期待より低い」などの回避法 2025.1.31 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 LLMの利用やそれに寄せられる期待は高まり続けており、RAGのような精度を高める手法の普及も進んでいます。しかし、RAGを組み合わせたLLMのビジネス導入は簡単というわけではなく、いくつかの「落とし穴」があります。LLMやRAGの基本を踏まえた上で、その落とし穴の特徴と回避法を解説します。 目 次 ・ LLMが注目されるようになった背景 ・ LLMでできること  ・ 自然言語処理  ・ コンテンツ生成  ・ 対話システムと支援ツール  ・ データ分析とインサイト抽出 ・ LLMの精度を向上させるRAG  ・ RAGの仕組み   ・ 検索フェーズ   ・ 生成フェーズ ・ RAGによる精度向上のポイント  ・ ハルシネーションの抑制  ・ 柔軟な適応性  ・ RAG導入時のチューニングポイント  ・ RAG活用による効果的な応用例 ・ LLM・RAGの落とし穴と回避法  ・ 落とし穴①:回答精度への思い込みを放置する  ・ 落とし穴②:十分なデータの前処理をしない  ・ 落とし穴③:ユーザーから得られる改善のチャンスを逃す ・ 落とし穴回避には外部ベンダー活用が有効 LLMが注目されるようになった背景 LLM(Large Language Models、大規模言語モデル)は、その名の通り巨大なデータセットと、ディープラーニング技術を用いて構築された言語モデルです。ここでいう「大規模」とは、従来の自然言語モデルと比べて計算量、データ量、パラメータ数が大幅に増えていることを意味しています。 大規模言語モデルは人間に近い流暢な対話が可能であり、自然言語を用いたさまざまな処理を高精度でできることから、世界中で注目を集めています。 LLMが注目されるようになった主な背景には例えば以下の五つが挙げられます。 ①人間の言語能力に匹敵する性能の実現 :これまでのAI技術では難しいとされていた「人間との自然な対話・応答」がLLMによって可能になり、実用が進展しています。 ②技術的ブレークスルー :2017年に登場した ”Transformer” モデルにより、BERTなどの自然言語処理モデルが飛躍的に進化しました。さらに、OpenAIがGPTシリーズとして文章生成型のLLMを開発し、膨大なデータと高性能なハードウェアを組み合わせることで、文脈を踏まえた自然な言語生成が高速で実施できるようになりました。 ③ビジネス価値の向上 :LLMは、高い意味解釈能力により、従来の検索システムより高精度な情報収集を可能にするだけでなく、質問応答や文章生成、タスク自動化など多様な業務ニーズに応えられる汎用性を備えています。これにより、企業は意思決定のスピードアップや新規サービスの創出といった高付加価値分野にリソースを集中しやすくなり、ビジネスの生産性と競争力を大きく向上させられる可能性があります。 ④多様な応用可能性 :自動化の促進、カスタマーサポートの向上、情報アクセスの改善、創造性の支援など、分野を問わずに幅広く活用できることが見いだされています。 ⑤性能の維持・向上の道筋が複数 :「スケール則」により、パラメータ数、学習量、計算量の増加に伴ってLLMの性能も向上することが分かりました。一方で、パラメータ数はある程度に抑えつつ十分な性能は維持し、より低コストに運用するSML(Small Language Models、小規模言語モデル)も注目されています。 これらの要因により、LLMは企業のDXを加速させ、価値向上・創出をする可能性を秘めており、大きな注目を集めるようになりました。 参考:NRI「 大規模言語モデル(LLM)とは 」 LLMのトレンドについてはこちらもご覧ください。 LLM(大規模言語モデル)、トレンドは「小で事足りる」 LLMでできること 自然言語処理 LLMが実行できる自然言語処理関連のタスクとして以下が挙げられます。 テキスト分類 :テキストを特定のカテゴリに分類(例:スパムメールの検出)。 感情分析 :テキストから感情や意見を抽出。 情報抽出 :特定の情報(例:人名、日付)をテキストから抽出。 文章要約 :テキストの内容を簡潔に要約。 翻訳 :複数の言語間の翻訳。 質問応答 :特定の質問に対する回答を提供(例:FAQ)。 コンテンツ生成 自然言語生成(NLG)の分野でも多様なテキストを作成できます。 テキスト生成:小説、ブログ記事、広告コピー、ニュース記事などに加工し得るテキストを生成。 コード生成:プログラムコードの作成、最適化、バグの検出や修正提案。例えば、製造現場でニッチなプログラム言語を使い続けてきた場合、その知見がベテランスタッフに属人化してしまっていても、その知見をLLMに取り込めることもあり、次代のスタッフがそのプログラム言語を扱えるようにする際に有効です。 対話システムと支援ツール チャットボット・質問応答システム :ユーザーの入力に応じて会話を行うシステムの構築。 業務支援 :ユーザーや企業向けに効率化やタスク自動化の提案。 データ分析とインサイト抽出 市場調査・トレンド分析 :SNSや商品・サービスのレビューなどのテキストを基に、消費者の意見やトレンドを把握。 業務プロセス分析 :文書や業務プロセスを解析し、効率化の提案。 LLMの精度を向上させるRAG RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、LLM に外部知識を組み合わせることで、より詳しく正確な応答の生成を目指す手法です。LLM単体では、学習に使用したデータの範囲でしか回答を生成できません。そのため、学習後に更新された最新情報や、企業内部の非公開情報は参照できず、回答の正確性に限界があります。外部知識を活用するRAGによりその問題が解決できます。 RAGの仕組み まずユーザからの質問に対して最も関連性の高い外部データを検索し(検索フェーズ)、その後、検索結果を基に質問に対する自然な言語での応答を生成する(生成フェーズ)という2段階のプロセスを経ます。これにより、大規模なドキュメントコーパスから適切な情報を効率的に抽出できます。 検索フェーズ ユーザーが入力した質問に基づき、LLMに組み合わせた外部データベースや社内文書などから関連情報を検索します。質問の文脈やキーワードを解析し、最適な情報を取得します。これにより、LLM単体では得られない最新情報や専門知識を補完します。 生成フェーズ 検索フェーズで得られた関連情報を基に、LLMが回答を生成します。ユーザーの質問内容と検索結果をプロンプトとしてLLMに入力し、それに基づいて自然言語処理による回答が生成されます。最終的に生成された回答は、検索結果との整合性が取れているため、より正確で信頼性の高いものとなります。 RAGによる精度向上のポイント ハルシネーションの抑制 LLMでは時に、嘘の情報をあたかも正しいかのように回答してしまうハルシネーションという現象が起きることがありますが、RAGを活用すると検索フェーズでより正確な情報が得られて回答の生成に生かせるため、ハルシネーション発生リスクが軽減されます。 柔軟な適応性 特定分野や業界固有のデータベースを利用することで、専門的な質問にも対応可能です。また、新しいデータを継続的に取り込むことで、システムを最新の状態を維持できます。 RAG導入時のチューニングポイント RAGの精度向上には以下の方法があります。 データ構造化 :データベース内の文書をチャンク単位で分割し、メタデータやナレッジグラフを付加することで検索精度を向上させられます。 ベクトル検索 :質問文や文書内容をベクトル化し、高度な類似度計算アルゴリズムで関連性の高い情報を抽出します。 再ランク付け :検索結果から最も関連性の高い情報を選別するプロセスで、精度をさらに高めます。 プロンプトエンジニアリング:LLMへのプロンプトを最適化し、期待する回答品質を引き出します。 RAG活用による効果的な応用例 カスタマーサポート :顧客から寄せられる多様な質問に対し、自社データベースをLLMと組み合わせてより正確な回答を提供し、顧客満足度と対応効率の向上を狙えます。 専門分野での知識提供 :医療や法律など、高度な専門知識が必要な場面でも、信頼性の高い外部データをLLMと組み合わせて、より正確な回答を得られるようにすることが狙えます。 LLM・RAGの落とし穴と回避法 以上のように、LLMはRAGと組み合わせれば精度を高められることから、導入も簡単に思えるかもしれません。しかしそこには意外な難しさがあります。なぜなら、RAGには以下の三つの落とし穴があるからです。 落とし穴①:回答精度への思い込みを放置する 開発チームとしては、LLM・RAGを使ったシステムの回答精度を、例えば「80%程度」などのように、ある程度の誤りも含めて見積もることが多いでしょう。しかし、LLMやAIの技術に明るくない現場のユーザーや決済者が、精度に過度の期待をしてしまうことや、メディアなどの情報から「当たり障りのない回答しかしてくれなかったり、ハルシネーションが起きたりする」と思い込んでいるために、実用的には問題にならない程度の誤りに対して過敏に否定的な反応をしてしまうことがあります。このように開発チームと現場のユーザーや決済者で、精度に対する判断基準が大きくずれてしまいがちです。 こうしたギャップを解消するために、例えば、現場のユーザーと開発チームの間で期待値をすり合わせながら導入を進めるアジャイル開発を採用する方法があります。その際、適切なタイミングで開発内容や進捗を関係者に伝える確認会を開催するのも有効でしょう。さらに、生成AIを含むDX関連の情報を取り上げる勉強会も、知識を底上げして齟齬を生まないために開催する意義があります。 落とし穴②:十分なデータの前処理をしない LLM・RAG導入が簡単ではない理由には、回答精度が落ちる原因が前出の検索フェーズと生成フェーズの2カ所にあることもあります。生成フェーズは、使用するLLMのモデル自体の変更とプロンプト改良などでチューニングすることが知られていますが、検索フェーズにも改良の余地があります。 検索フェーズでの精度が落ちる原因としては「関連性の低い情報の取得」や「必要な情報の不足」が考えられます。その具体的な要因の一つとして、引用するデータがRAGに適したデータ構造になっていないことがあります。逆にいえば、データの前処理をすることが検索精度の向上の鍵を握ります。 データの前処理はユーザー自身でもできますが、単純ではありません。まず、例えばExcelファイルから正しい順番でテキストを抽出するといった、「データの整備」をしなければなりません。次に、「データクレンジング」や「データクリーニング」と呼ばれる作業が必要です。例えば、文字を主体としたデータのクレンジングには、「不要な文字や記号の削除」「空白や改行の調整・削除」「誤記や脱字の修正」「全角・半角や大文字・小文字の統一」「表記ゆらぎの統一」「重複データの削除」などがあります。さらに、ドキュメントに図や画像、動画、音声といったテキスト以外のデータ含まれている場合もあり、そうした場合には画像や動画などを事前にテキスト化する必要があります。 参考:日経クロステック「 「RAGはすごい」とのユーザーの期待が落とし穴、検索精度はデータの分け方で向上 」 落とし穴③:ユーザーから得られる改善のチャンスを逃す RAGを改善する方法としては、意外に思えるかもしれませんが、RAGを活用したLLMアプリケーションのユーザーインターフェース(UI)の改良も挙げられます。RAG活用のLLMの良し悪しは、最終的にはユーザーが納得感を得て使えるかどうかで決まる面があります。その際、回答の精度ももちろん納得感に影響しますが、直接見て操作するUIも重要です。 例えば、十分な回答をするには情報が足りない場合に、追加の情報を入れてもらうようにユーザーに聞き返す、「こんなことを聞きたいのではないか」という質問候補をレコメンドする、といったことをUIに組み込み、ユーザーの納得感を高め、「いいツールだから使い続けよう」と思ってもらうことです。 これが実現すると、システムとユーザーの対話のデータが蓄積し、さらには「いいねボタン」の設置などの上でフィードバックを得やすくなり、開発側だけでは気付きづらい改善点が見つかりやすくなります。 参考:日経クロステック「 実運用では細かい工夫が不可欠なRAG、導入後にも継続的な改良やユーザー教育 」 落とし穴回避には外部ベンダー活用が有効 以上、LLMの落とし穴とその回避方法を示しましたが、自社でこれらをすべて実施するのは、まずそうした人材を育成または採用することから始める必要もあり、簡単ではないでしょう。そこでAIベンダーを活用するのも有効な手段です。 その際、単にLLM・RAGのシステムを開発・運用できるだけのベンダーではなく、LLM・RAGを手段としてビジネスにおいて本当に成し遂げるべきことから議論でき、その結果を実現できるベンダーが理想でしょう。前述のデータの前処理はAIベンダーを名乗るところであればいずれも得意とするところかもしれません。しかし、こちらもまた前述の、現場のユーザーと開発チームの間での期待値のギャップを解消できたり、ユーザーの納得感を高めつつシステムを改善できたりすることに、ビジネス成果もきちんと見据えることは深い関係があることは想像に難くなく、ビジネスとAIの両方をよく分かったベンダーは限られるでしょう。 Laboro.AIでは、「LLMなどAIをビジネスにどう活用すべきか」「活用する方法はいったん設定したけれども、外部の知見も生かして再設定し、ビジネスインパクトを高めたい」といった課題を解決するコンサルティングサービスを提供しており、ビジネス成果を導き出します。 これまでお客様から「なんとなく考えていた構想を形にしてくれて、プロジェクトの成功を怪しんでいた人も巻き込んで実現することができた」「開発初期のLLMの出力の精度の目安を示してくれて、周りを納得させながらプロジェクトを進められた」といったお声をいただいており、目標設定からビジネス成果を出すまでの伴走型のコンサルティングサービスを提供している強みを発揮しています。ぜひ一度ご相談ください。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post LLM・RAGのビジネス導入の落とし穴「回答精度が期待より低い」などの回避法 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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AIとビッグデータの正の連鎖。事例やビジネス成長のポイントも解説 2025.1.20 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田崇 概 要 ビッグデータの活用は、現在AIがこれほど進展する前から言われてきましたが、そのAIの進展にはビッグデータが欠かせません。AIが学習するデータも、解析の対象にするデータも、ビッグデータであることが多いからです。本コラムでは、AIとビッグデータの正の連鎖にある関係を再確認し、AIをより深く理解して活用するためのポイントを解説 します。 目 次 ・ ビッグデータとAIの関係性  ・ ビッグデータとは  ・ ビッグデータの発展と現状までの流れ  ・ ビッグデータとAIの関係性 ・ AIにビッグデータを活用するメリット  ・ 業務効率化と生産性向上  ・ 顧客ニーズの予測と現状分析  ・ データに基づく意思決定の強化 ・ AIとビッグデータを活用した事例  ・ 事例① 潜在ニーズ探索によるAIレコメンド  ・ 事例② AIオーダーシステムによる発注業務の効率化  ・ 事例③AIヘルプデスク導入により対応効率の向上 ・ ビッグデータ活用の際に起きる課題  ・ データ解析基盤の作成・整備の複雑さ  ・ 構築・活用ができる人材の不足 ・ AIとビッグデータを活用する際のポイント  ・ 外部委託などを活用しながらスピード感を持っての実装を行う  ・ ビッグデータの収集・保管環境を整備する ・ まとめ ビッグデータとAIの関係性 ビッグデータとは ビッグデータとは、従来のデータ処理技術では扱いきれないほど膨大で複雑なデータ群を指します。例えば、多数のユーザーによるスマート家電の使用状況や、ウエアラブルデバイスの健康データ、ECサイトの閲覧・購買履歴などが挙げられます。また、単にデータ量が膨大なだけでなく、そのデータを有効に活用できる方法が見いだされているときに、ビッグデータと呼ばれる向きがあります。 これらのデータは、IoTデバイスやSNSなど、さまざまな媒介を通じて収集・蓄積され、企業や組織にとって価値ある取り組みを実現する上で有効活用ができるかどうか、検討の対象になり得ます。 また近年は、ウェブサービスやセンシング技術の進展により、これまでは把握されてこなかった情報や事象もデータ化され、ビッグデータの一部として扱われるようになってきました。 ビッグデータの登場と現状までの流れ ビッグデータは、1990年代のデータマイニングの普及を皮切りに、2010年ごろからデータベース管理システムであるNoSQLや分散処理システムであるHadoopなどが活用されることによって扱えるデータ量が大幅に増えたことから注目され、発展してきました。近年ではリアルタイムデータ分析や、クラウドストレージの進化が進み、ビッグデータはインターネットなどと同様に、ビジネスだけでなく人々の生活の上でも、もはや意識せずとも幅広く利用されて恩恵を授けている存在になっています。 今後はIoTの高度化や 5G技術のさらなる進展により通信が高速化することで、得られるデータの種類や量は増加していき、ビッグデータを活用できる領域はさらに広がっていくでしょう。 参考:TRYETING「 ビッグデータの基礎知識 」    総務省「 ビッグデータ活用の現状と課題 」 ビッグデータとAIの関係性 ビッグデータとAIは、互いに価値を引き出し合う関係にあります。ビッグデータはAIが学習するための膨大なデータとなり、学習して性能が向上したAIは、また他のビッグデータを分析・解釈して有用な洞察を引き出し、さらにAIがビッグデータで学習して…と正の連鎖を生み出せる関係ともいえます。 ビッグデータと呼ばれるほど膨大なデータ群は、2000年代まではその処理ができる計算機が一般にはなかったため、活用されてきませんでした。その後に処理ができるシステムが普及してきたからこそ活用が見いだされ、名付けられた概念ともいえます。AIは逆に、性能向上のための学習には基本的に膨大なデータが必要なため、十分なデータを用意することが不可欠という課題が常にあり、AI開発において乗り越えるべき過程の一つになっています。 AIは20世紀から存在していますが、ここ数年で生活者が使えるまでに進展してきた背景として、ビッグデータの活用が実現したことが欠かせません。 ビッグデータとAIの連携により、業務の効率化や顧客ニーズの予測、データに基づく意思決定といったことが高い精度で可能となりました。例えば、AIがビッグデータから市場のパターンやトレンドを抽出し、マーケティング戦略の最適化や在庫管理の効率化に役立てるような使い方です。人間が実施するそれよりも、速度や品質においてはるかに優れているケースも現れています。ビッグデータとAIの正の連鎖は、現代のビジネスにおいて競争力を高める重要な要因にもなり得ます。 参考:Jitera「 AIとビッグデータの関係性 」 AIにビッグデータを活用するメリット AIとビッグデータの組み合わせるメリットを、もう少し詳しく見ていきます。そうしたメリットへの理解を深めることで、自社における活用の可能性を正しく探ることや、AI導入に際しての意思決定を円滑に進められることにつながります。 業務効率化と生産性向上 AIによるビッグデータ解析は、単なるデータ処理の効率化だけでなく、業務全体の構造を見直すきっかけも提供します。例えば生産工場では、センサーによって得られたリアルタイムデータをAIが解析し、機械の稼働効率の向上につなげられます。そうした運用を継続することで現場のデータを蓄積し、AIのさらなる学習につなげられ、正の連鎖の精度向上も見込めます。 顧客ニーズの予測と現状分析 AIは、膨大なデータからパターンを見いだすことに長けており、例えば顧客データの中から価値あるパターンを見いだすこともその一部です。従来の方法である、購買履歴や市場調査を人間が分析するだけでは見つからなかった、潜在的な傾向を見いだすこともあります。 例えばECサイトの運営においては、閲覧・購買履歴をAIが分析し、個別のユーザーに合った商品を提案するレコメンド機能が実現されています。リアルタイムの行動分析によって、人間がレコメンドを行うよりもはるかに素早く、それでいてパーソナライズなレコメンドも可能です。 また、ある商品の購買者の居住地や年齢といった属性を数多く掛け合わせた分析や、広告の特徴を細かく分析して、そのそれぞれがどういった属性を持つ人に高い効果を出しているのかの分析など、精密なマーケティング施策の前提となる精密な調査・分析ができます。 データに基づく意思決定の強化 AIの解析は、膨大なデータを短時間で処理し、時間の面でも意思決定に役立つ洞察を提供します。特定の意思決定者による直感や経験に頼りがちな経営判断に、データドリブンな洞察が加わり、入れるべき考慮を抜け漏れなくさせたり、必要な検討に十分な深さを与えられたりします。 AIとビッグデータを活用した事例 実際にAIとビッグデータを活用して一定の成果を収めている事例を取り上げます。 事例① 潜在ニーズ探索によるAIレコメンド ある大手自動車メーカーは、従来の目的地検索システムが明確なニーズにしか対応できず、潜在的なニーズを引き出すことができない課題を抱えていました。 Laboro.AIは「潜在ニーズ探索型レコメンドAI」の提供によりこの問題の解決に取り組みました。導入したAIは、ユーザーが直感的に選択できる「好き・嫌い」「行きたい・行きたくない」といった感覚的な回答を基に、提案を行う仕組みを採用しています。活用したデータは、インターネット上にある口コミなどの「ユーザーの声」が記載されたビッグデータや、選択履歴データ、ユーザーのデモグラフィックデータ、嗜好度合のデータなどです。 その結果、同サービスにおける目的地提案の精度向上と多様性の拡大に成功し、選ばれる目的地の種類を30%増加させています。さらに、システム利用に必要な時間も20%短縮されるなど、直感的で効率的なユーザー体験にも貢献しました。 詳しくはこちらをご覧ください。 Laboro.AI「 潜在ニーズ探索によるAIレコメンド 」 事例② AIオーダーシステムによる発注業務の効率化 イオンリテールは、店舗運営における発注業務の効率化と精度向上を目指し、独自開発の「AIオーダー」システムを導入しました。 従来の発注業務では、担当者が過去の販売実績や経験に基づいて手作業で行っており、時間がかかる上に、品切れや過剰在庫のリスクが大きいという課題を抱えていました。この課題に対処すべく導入されたAIオーダーは、日々刻々と変わる顧客数や売上データ、天候といったビッグデータの要因を分析し、最適な発注数を自動で算出する仕組みを実装しています。 このソリューションを導入した結果、同社では従来よりも発注作業時間が約50%短縮され、発注精度も最大で40%向上しました。在庫削減や従業員の業務効率化が実現し、店舗運営の最適化に大きく貢献しています。 参考:PR TIMES「 AI活用で“発注ミス”を解消!イオンリテールが独自開発したAIオーダー 」 事例③「宇宙ビッグデータ」を水道管老朽化対策に活用 天地人が提供する「天地人コンパス宇宙水道局」は「宇宙ビッグデータ」とも呼ばれる衛星データを活用するサービスです。衛星が観測したデータや、水道事業者が保有する水道管路情報などを組み合わせ、それをAIで解析することで、約100メートル四方の区画ごとに漏水リスクを評価したり、点検や修理などの記録を管理したりできます。例えば、現在起きている漏水や、近い将来起き得る漏水のリスクが一目で分かるように提示することができます。 このサービスの導入によって、水道事業者は調査期間を短縮し、点検費用を削減できるとしています。例えば、1000キロメートル以上の管路延長を保有するある水道事業者では、調査対象を漏水リスクが高いエリアに絞り込み、その結果、調査期間が12年から1年に大幅に短縮させ、費用も約3割削減できる見通しだといいます。 参考:日経XTECH「 宇宙スタートアップの天地人、水道管老朽化問題に挑む 」 ビッグデータ活用の際に起きる課題 ビッグデータとAIの正の連鎖は、企業に大きな成長可能性をもたらしてくれる一方、期待しているような結果を得るためには乗り越えるべき課題もあります。 データ解析基盤の作成・整備の複雑さ ビッグデータは、膨大なデータ量とそれに伴う多様性をはらんでいるため、堅牢な解析基盤の構築が不可欠です。これには高度な技術と専門知識が求められることから、システムの設計や運用に多大な労力を費やすこととなるでしょう。 またビッグデータの保存や処理に際しては、大容量のストレージや高性能な計算リソースが必要です。これらのインフラ整備に対してコストがかかる上、データのセキュリティーやプライバシー保護を実現するための、厳重な管理体制を構築しなければなりません。 これらの条件をすべて満たした環境構築は、人材確保や予算、そして時間的コストがかかるため、すべてを自前で対処することは困難といえます。 参考:さくらのクラウド「 ビッグデータ分析のメリットと課題 」 構築・活用ができる人材の不足 ビッグデータの効果的な活用には、データサイエンティストやデータエンジニアといった専門人材が不可欠です。しかしこういった高度IT人材の需要は高まり続けており、確保は容易ではありません。 ITの中でもデータに関する専門的なスキルを身に付けている学生の数は多いとはいえず、新卒採用での人材獲得競争は激しいでしょう。また、中途採用においてもエンジニア需要は高く、それを見据えて、働きながらデータサイエンスのスキルを身に付けようと学習を進めている人も少なからずいるのが現状です。 ましてや経験豊富で即戦力となれる人材は、相応のオファーを提示しなければ獲得は難しいことから、採用計画においても見直しが求められるかもしれません。 参考:Workship ENTERPRISE「 データサイエンティスト不足の理由と対策 」 AIとビッグデータを活用する際のポイント こうした課題を乗り越えつつ、AIとビッグデータの正の連鎖の中に自社のビジネスも組み込んでいくには、以下の点を踏まえた対応の検討が必要です。 外部委託の活用で素早い実装 AI・ビッグデータの活用には、専門知識が求められます。そのため社内に十分なリソースがない場合、外部のAIベンダーなどの力を借りることが、迅速なプロジェクトの遂行には大切です。 そうした専門企業の力を借りることで、AIやビッグデータの知見がなくとも最新の技術やノウハウを迅速に取り入れ、プロジェクトの遂行能力を獲得できます。また、外部の視点を取り入れることで、社内だけでは気づきにくい本当に解決すべき課題の発見や、イノベーションにつながるアイデアの創出にもつながります。 ビッグデータの収集・保管環境を整備する ビッグデータは効率良く、それでいて法的に問題ない方法で収集することが大切です。顧客データなどはあらかじめ許可を得た上で取り扱わないと、プライバシーの侵害に抵触する恐れがあります。各種APIやデータベース、IoTなど、ソフト・ハードを問わず柔軟にデータ収集のための手法を取り入れましょう。 またビッグデータの保存や取り扱いには、データの量や種類に応じた適切なストレージや管理システムの選定が必要です。セキュリティーやプライバシー保護の観点から、アクセス権限の管理や暗号化などの対策も欠かせません。 参考:ゼンリンデータコム「 ビッグデータの基本と活用法 」 まとめ AIとビッグデータの正の連鎖は、現在のビジネスにおいて競争力強化の鍵を握ります。これらを上手に組み合わせて運用することで、精度の高い意思決定や提供する価値の向上、業務効率化といったメリットを期待できます。 一方でAIとビッグデータの活用には、データ解析基盤の構築や専門人材の確保といった課題も解決しなければなりません。これらの課題に対しては、AIベンダーなど外部の専門会社と協力して、業務の効率化や、適切なデータ管理を図っていくことが有効です。 AIとビッグデータの正の連鎖は、今この時も、意識しなくても進んでいます。だからこそ、その重要性を意識して細かな進展も追いかけるようにし、より良いビジネス活用の在り方を常に考えていくことが、さらなる価値向上につながるでしょう。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post AIとビッグデータの正の連鎖。事例やビジネス成長のポイントも解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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データ分析へのAI導入メリットと課題、AI 導入ステップを解説 2025.1.20 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田崇 概 要 データ分析には高度なスキルが必要といわれてきましたが、今やAIの登場により身近さが一段と増しています。大量のデータを学習 して推論させるというAIの優れた能力を活用することで、データに基づく高度で客観性の高い意思決定や成果につなげられる可能性も出てきました。AIを活用したデータ分析の基本のほか、AI導入の際の課題や活用事例などについても解説します。 目 次 ・ AIによるデータ分析とは ・ AIをデータ分析に活用する三つのメリット  ・ 分析作業の自動化による効率化  ・ 高度な未来予測によるコスト削減  ・ パーソナライズサービスの提供 ・ AIデータ分析のトレンド ・ AIを活用したデータ分析のリスクと課題  ・ データの品質と偏り  ・ ブラックボックス化と説明責任  ・ セキュリティーとプライバシーの懸念  ・ 倫理的・法的な課題  ・ 導入・運用コストと専門人材の不足 ・ AIを活用してデータ分析を行うためのステップ  ・ ゴールを明確にする  ・ 必要なデータをそろえる  ・ データ形式を整える  ・ モデルやツールを選定する  ・ 分析結果の確認と評価をする ・ AIを活用したデータ分析事例  ・ 複数フォーマットのデータを分析・回答する生成AI  ・ 過去データから類似度をスコア化し、マッチング  ・ ニオイセンサーデータの分類 ・ まとめ AIによるデータ分析とは AIを活用したデータ分析によって、従来の統計的手法に比べ、より高度で効率的なデータ処理が可能になります。AIは膨大な量のデータからパターンやトレンドを検出し、未来の予測や意思決定を支援することができます。 AIの大きな特徴の一つに、継続的な運用によって能力を向上させられる点があります。運用を続けることによって実地のデータが蓄積されていき、そのデータでまたAIを学習させて精度向上が図れるからです。 また近年AIでは、数値やメタデータに基づく構造化データに加え、画像や音声、テキストといった非構造化データの解析能力が飛躍的に向上しています。さまざまな形態のデータを加工しなくても分析対象にできるという強みも持っているということです。 参考:Jitera「 AIとビッグデータの関係性 」 AIをデータ分析に活用する三つのメリット データ分析をAIに任せることによって、期待できるメリットを三つ挙げます。 分析作業の自動化による効率化 一つ目は、分析作業そのものの飛躍的な効率化です。例えば、数百万件に及ぶ販売データや顧客データを、AIなら短時間で分類・分析できるため、人間が手作業で行う場合に比べてはるかに効率的です。これがうまくいけば、人的リソースを価値創出・向上のために割り当てられ、組織全体の生産性の向上やイノベーションの創出につなげられる可能性が出てきます。 参考:AI総合研究所「 日本のAI導入状況は?現状や実際の導入事例、メリットデメリットを解説 」 高度な未来予測によるコスト削減 二つ目は、AIの予測モデルは、過去のデータからトレンドやパターンを見いだし、将来の需要や消費動向を予測することを得意とします 。これにより、企業はさまざまな将来計画の精度を高めることが を改善でき、不要なコストを削減することが可能になります 。 例えば、小売業 であれば、需要予測に基づいて適切な在庫量を確保することで、欠品や過剰在庫を防ぐ活用があります。製造業であれば、 設備の故障を事前に予測してメンテナンス計画を立てることで、ダウンタイムを最小限に抑えることに活用できます。 参考:ゼンリンデータコム「 ビッグデータ活用の基本と事例 」 パーソナライズサービスの提供 三つ目は、顧客にとって魅力的な体験を提供する上でも役に立つことです。AIによるデータ分析により、顧客ごとの嗜好や行動パターンを詳細に把握して、個別に最適化された、つまりパーソナライゼーションが施されたサービスの 実現につながる からです。 例えばECサイトでは、顧客の過去の閲覧・購入履歴を基に、関連性の高い商品をレコメンドすることで購買意欲を促進させます。サブスクリプションサービスでは、利用状況を基により合うと思われる他のプランを提案し、顧客満足度を向上させる仕組みを構築するケースも見られます。 パーソナライズによる顧客満足度の改善は、顧客のリピート率を高め、長期的なロイヤルティーの向上につながる施策です。ロイヤルティーの向上により、企業は収益基盤をさらに強化させることも図れます。 AIデータ分析のトレンド AIを活用したデータ分析は、近年急速に進化し、その市場規模も拡大しています。総務省の「令和6年版 情報通信白書」によれば、世界のAI市場規模は2022年に前年比78.4%増の18兆7148億円に達し、2030年まで加速度的な成長が予測されるなど、今後のさらなる規模拡大が期待できます。 また、日本国内ではAIシステム市場が2023年に6858億7300万円となり、2028年には2兆5433億6200万円に拡大すると見込まれています。特に生成AI分野の成長は著しく注目されており、2023年の670億ドルから2032年には1兆3040億ドルと大幅な成長が予測されています。 行政機関でも生成AIの導入意欲が高まっています。SASの調査では、調査対象者の68%が導入を検討し、そのうち74%が12〜24カ月の間の導入を計画しています。民間・公的機関を問わず、今後生成AIを使ったデータ分析は当たり前のものとなっていくと考えるべきでしょう。 参考:総務省「 令和6年版 情報通信白書 」    SAS「 政府機関向け生成AI導入レポート 」 AIを活用したデータ分析のリスクと課題 AIを活用したデータ分析は、多くの期待が集まる一方、そのアプローチについて懸念も残ります。今後AI活用を推進していく際に、以下の課題をどのように乗り越えるかが、鍵を握るでしょう。 データの品質と偏り AIモデルの性能は、学習に使用するデータの質に大きく依存します。不正確なデータや偏りのあるデータを使用すると、モデルの予測精度が低下し、誤った推論を出力する可能性があります。 AIによるデータ分析を行うためには、データ収集の段階からその質に配慮することが重要です。 ブラックボックス化と説明責任 高度なAIモデルは、その推論の過程が可視化されず、いわゆる「ブラックボックス化」することがあります。そうなると、結果の妥当性を説明することや、説明責任を果たすことが難しくなるほか、意思決定の際の障害となることもあるでしょう。AIデータ分析の推論の過程を可視化し、外部監査の実施や透明性の確保を図る必要があります。 セキュリティーとプライバシーの懸念 AIシステムは膨大なデータを扱うため、その運用過程においてサイバー攻撃やデータ漏洩のリスクが高まります。特に個人情報や機密情報が流出した場合、企業の信用失墜や法的トラブルに発展する可能性があり、リスクを最小限にとどめる体制を整えることが重要です。データの暗号化やアクセス制御を強化し、脆弱性の評価を定期的に実施することが求められます。 倫理的・法的な課題 AIによるデータ分析はこれまでの通り有用ですが、過度に依存してしまうと、AIの判断が倫理的に問題視されるケースや、法的な規制に抵触するリスクを見逃してしまう可能性があります。 例えば、AIが学習データの偏りを引き継いで差別表現を出力する場合です。AIの出力結果を鵜呑みにしてしまった結果、ブランドを毀損するという、評判リスクが出てきます。 AI導入に際しては、あらかじめ倫理的ガイドラインを設け、定期的な監査を実施することが重要です。 AIの導入・運用コストと専門人材の不足 データ分析だけでなく、AIシステムの導入や運用には、コストが少なからずかかり、さらに専門知識を持つ人材の確保が難しいという課題があります。初期投資の段階はもちろん、継続的にコストが発生するため、費用対効果を正しく評価し、予算をどのように確保するかが重要です。 参考:AI未来研究所「 AIプロジェクト失敗事例から学ぶ教訓 」    AI総合研究所「 AI導入時の課題と解決策 」 AIを活用してデータ分析を行うためのステップ AIを活用してデータ分析を推進していくためには、以下のステップに則ることが求められます。 ゴールを明確にする まず「何を達成したいのか」というゴールを明確に設定することが重要です。 売り上げの向上、業務効率の最適化、顧客満足度の改善など、具体的な目標を設定することで、データ分析の方向性が定まり、関係者間での目標共有が可能となります。 必要なデータをそろえる ゴールを設定した後は、分析に必要なデータを収集します。社内データだけでなく、市場動向や競合の情報など、外部データを活用することで、分析の精度をさらに向上させることができます。 データ収集に際しては、その網羅性や正確性を確認することが重要です。データにそうした面の品質に問題がある場合、AIが適切な学習を実施できなくなるためです。 データ形式を整える 収集したデータはそのままでは分析に適さない場合が多く、AIに入力する前に加工します。具体的には、クレンジング、正規化、異常値の除去、欠損値の補完などを通じて、AIが効果的に学習できる状態にします。 この過程では相応の時間と人手を必要とするため、最近ではこの作業自体をAIにさせたり、専門会社に委託したりするケースも見られます。 モデルやツールを選定する データの準備が整ったら、分析の目的に応じたAIモデルやツールを選定します。例えば、分類タスクには決定木やサポートベクターマシン、予測タスクには回帰分析やニューラルネットワークを使用する、といった具合です。 また、クラウドベースの分析ツールを使って施策を進めることも増えてきました。データの分析は負荷の大きい作業であるため、外部の計算リソースを頼ることにより、効率的にモデリングが行えます。 分析結果の確認と評価をする 最後に、分析結果を確認し、目標に対する達成度を評価します。モデルの精度や妥当性を検証し、必要に応じてチューニングや再学習をしましょう。また、分析結果がビジネスの意思決定に本当に活用できるかという観点からも検討することも重要です。 参考:AIToolGo「 AIデータ分析の統合成功のためのベストプラクティス 」    AI未来研究所「 AIプロジェクト失敗事例から学ぶ教訓 」 AIを活用したデータ分析の事例 AIを活用したデータ分析の事例は、すでに多く見られるようになってきました。弊社事例を含めた三つの事例を取り上げます。 複数フォーマットのデータを分析・回答する生成AI 米国のデータ分析ツール大手のクリック・テクノロジーズは、ビジネス上の課題解決やマーケティングなどに使う生成AIを使った新サービスを2025年5月に始める予定です。企業側が生成AIに問い合わせると、電子メールやワード、エクセルなど複数のフォーマットから大量のデータを集めた後に、独自技術で分析して回答するとしています。 例えばカスタマーサービス部門の担当者が「自社のある製品に高評価を付けた顧客の購入頻度を教えてほしい」と質問すると、受発注履歴や問い合わせ件数、電子メールや顧客からの口コミなどをまとめて分析して生成AIが回答するというシステムです。 参考:日本経済新聞「 米クリックが生成AIサービス エクセルやワード一括分析 」 過去データから類似度をスコア化し、マッチング パーソルクロステクノロジーでは、求職者と企業の間で生じるマッチングの精度を向上させるために、Laboro.AIのAIソリューションを導入しました。同社では従来、求職者データを個別に確認し、適切なマッチングを判断する過程が人的リソースを圧迫していました。 Laboro.AIが提供したソリューションでは、過去の求職者データや求人情報を基にAIが類似度をスコア化し、自動的に最適なマッチングを提案します。このAIモデルは、職務経歴、スキルセット、業界動向など多様な要因を考慮してスコアを算出する仕組みです。導入の結果、マッチング成功率が大幅に向上し、従業員の業務負担も軽減されました。 詳しくはこちらをご覧ください。 Laboro.AI「 人と職の最適なマッチング 」 ニオイセンサーデータの分類 Laboro.AIでは、複数のニオイを分類するためのカスタムAIを開発したこともあります。大手自動車メーカーに導入されて20を超えるニオイの分類に成功し、その中には、同種の商品を区別するような非常に似たニオイも含まれており、分類精度の高さを示しています。 さらに開発した分類器は、一部のデータのみを学習することで、未学習のニオイを分類できることが確認されています。この成果は、新たなターゲットのニオイが追加された場合でも、追加学習が不要になる可能性も秘めていることから、実用性と効率性の面で優れた結果をもたらすでしょう。 詳しくはこちらをご覧ください。 Laboro.AI「 ニオイセンサーデータの分類 」 まとめ 本コラムでは、AIを使ったデータ分析のメリットや、データ分析にAIを 導入するためのステップを解説しました。データ分析にAIを導入する効果は多大になる可能性がある一方、導入に際してはデータの品質や、分析過程の不透明さ、倫理などの問題などを解決する必要もあります。AIの実装に際しては、これらの課題を乗り越えてリスクを低減するガイドラインの策定や、適切な運用体制を整える必要もあるでしょう。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post データ分析へのAI導入メリットと課題、AI 導入ステップを解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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パーソナライゼーションとは。マーケティングを加速するAI活用法 公開2024.1.4 更新2025.1.14 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田崇 概 要 市場のトレンド変化が急速なものになるのに伴い、マーケティング上で広く注目されているのがパーソナライゼーションです。一人ひとりの顧客のニーズに特化したサービスの提供は、新規顧客獲得はもちろん、リピーター、ロイヤルカスタマーの獲得という面でも重視されている取り組みです。パーソナライゼーションには、膨大な量のデータとそこから顧客ごとの特性を見いだすことが必要ですが、AIを活用することでより精度の高いパーソナライズを実現した例も出てきています。 目 次 ・ AIによるパーソナライゼーションの重要性が高まっている理由  ・ 顧客期待の高まり  ・ 取得できるデータの多様化とデータ活用の進化  ・ 競合サービスに対して競争優位性を生む ・ AI技術で進化するパーソナライゼーション  ・ 協調フィルタリング:ユーザー行動データの活用法    ・ コンテンツベースフィルタリング:好みに合わせたパーソナライズ  ・ 強化学習を利用したリアルタイムの最適化  ・ 多腕バンディット ・ AIを活用したパーソナライゼーションの上で起き得る問題  ・ コールドスタート問題  ・ 顧客情報不足 ・ パーソナライゼーション×AIの活用事例  ・ AIを活用した福利厚生代行サービス  ・ メール文面案を顧客に合わせて自動で作り分け  ・ 生成AI対話サービスでスキンケア  ・ パーソナライズされた献立を提案するAI ・ クロスセルとアップセルの両方を狙える ・ まとめ AIによるパーソナライゼーションの重要性が高まっている理由 パーソナライゼーションとは、「パーソン」の派生語で、「個人的なものにすること」「個人に応じて変更したり作り変えたりすること」です。マーケティングの分野では、インターネットなどを通じて各ユーザーの情報を取得・解析し、その人に合った広告を配信したり、商品やサービス、コンテンツをレコメンドしたりすることを指します。 似たような概念にカスタマイゼーションがあります。パーソナライゼーションでは、商品・サービスを提供する側が顧客の興味・関心を引くことを目指して、レコメンドの内容を最適化し、購買につなげることが目的とされます。それに対してカスタマイゼーションは、ユーザー自身が最適化を実施し、商品・サービスを使いやすくすることが目的です。動画投稿サイトで言えば、サイト側から動画をレコメンドするのはパーソナライゼーションで、ユーザー一人ひとりによる再生リストの作成や再生速度の調整はカスタマイゼーションです。 パーソナライゼーションの例には他に、ネット検索もあります。例えばGoogleは、ユーザーが検索したキーワードを基に、求めているものや意図、目的を予測して、検索結果に反映する「パーソナライズド検索」を2005年から導入しています。ユーザーの所在地、過去に検索したキーワード、過去に訪問したウェブサイトなどを参考にして検索結果に反映させていると言われています。 出典:デジタル大辞泉「 パーソナライズ(personalize) 」    Adobe Experience Cloud「 マーケティングにおけるパーソナライゼーションとは?MAとの組み合わせや注意点 」 顧客期待の高まり パーソナライズな顧客体験は、すでに消費者の間で当たり前のニーズとして広がりつつあることを示す調査結果も出てきました。2022年にAdobe社が発表した調査によると、AIによる製品レコメンデーション機能によってパーソナライズされたプロモーションやオファーを、67%の消費者が実店舗やオンラインで提供されたいと考えているとのことです。また、パーソナライズされたレコメンデーションを受けた消費者のうち、72%が「想定より多くの商品を購入することになった」と回答しています。 これは言い換えれば、AIを活用してパーソナライズされた情報は消費者にとって有益であり、購買意欲を高める施策として機能しているとも言えるでしょう。 参考:Adobe「 Adobe Commerce消費者調査:パーソナライズされた顧客体験の重要性が明らかに 」 取得できるデータの多様化とデータ活用の進化 AIによるパーソナライゼーションへの注目が集まっているのは、個別最適化するために扱えるデータの種類や量が増えたこと、そしてデータ活用の手法が進化を遂げていることも理由です。 世界で生まれ利用されるデータの量は、2025年に180ゼタバイトに上るという予測があります。この数字は2022年の2倍に当たる量であり、急激なデータ増が進んでいることが分かります。 また、そうした膨大なデータを扱うAIの進化も著しくあります。生成AIの代表格であるChatGPTは、言語モデルのアップデートを頻繁に繰り返しており、最新モデルに至ってはもはや人間の応答と同じくらい自然なものになっていると言われます。 こうしたデータやAIに関する環境の急激な変化とそれに伴う進化が、AIによる実効的なパーソナライゼーションの可能性を高め、関心を集めているというわけです。 参考:日本経済新聞「 データ量爆発、25年に2倍 」 競合サービスに対する競争優位性を生む AIを活用したパーソナライゼーションは、競合サービスとの競争優位性の面からも注目を集めています。現状ではまだ多くのサービスが比較的大きな集団を対象としたマス・マーケティングの領域を脱し切れていないのが実情で、それぞれの顧客についての動向を幅広いソースからリアルタイムで収集し、より個別化された情報をレコメンド内容に反映できれば、商品サービスの独自性を醸成することにつながるからです。 特に、食品や日用品などのコモディティ化が進んで差異が少なくなっている商品カテゴリー、いわゆる最寄品においては、顧客の好みを迅速かつ正確に把握し、最適化された提案ができることが、競合商品との差別化に効果を発揮する可能性が高く、競争力を高めることにつながります。さらにオンラインだけでなく、カメラ映像の解析などを通してオフラインでも顧客ごとの活動を収集し、パーソナライゼーションに活用できることは、AIならではの強みです。 参考:IBM「 AIパーソナライゼーション 」 AI技術で進化するパーソナライゼーション  パーソナライゼーションは、AIの力でより正確で強力なものへと進化しています。以下は、競争力を確保するためのパーソナライズを実施する上で、欠かせない技術です。 協調フィルタリング:ユーザー行動データの活用法 他ユーザーの行動パターンやアイテムの類似性を対象のユーザーと比較するレコメンドシステムが協調フィルタリングです。「似ているユーザー」を購入履歴やレーティングから導き、「ユーザー同士」あるいは「ユーザーとアイテム」を結び付けることで実装されます。対象ユーザーの行動分析を基に他のユーザーに対する類似度を算出し、類似度が高いユーザーが分かると、その類似ユーザーが購入した商品を対象ユーザーにレコメンドするユーザーベースの協調フィルタリングと、訪問ユーザーの行動分析を基に商品(アイテム)同士の類似度を算出するアイテムベースの協調フィルタリングの二つに大別できます。 コンテンツベースフィルタリング:好みに合わせたパーソナライズ あるユーザーの購入履歴やプロフィールなどから、そのユーザーの個人的な嗜好を見つけて商品やコンテンツを薦める手法がコンテンツベースフィルタリングです。協調フィルタリングと違い、他ユーザーのデータは使用しません。例としては、「筋トレが好き」とプロフィールに記載しているユーザーに筋トレ関連のグッズを勧めることなどが挙げられます。 強化学習を利用したパーソナライズ 強化学習を利用したパーソナライズとは、データが十分になくて後述する「コールドスタート問題」が起き得る状態からでも正確なパーソナライズを行う可能性を持った手法です。閲覧履歴や購入履歴などの情報が不足していも、あらかじめ学習しておいたユーザーの好みや嗜好性に関するデータを基に、正確なレコメンドを狙えます。 この機能は、常に収集され続けているユーザーのログを参考に、リアルタイムでパーソナライズされた顧客体験を提供する上で有効です。 参考:DOORS DXMedia「 「強化学習」を活用したレコメンドの精度向上で、顧客コミュニケーションはどう変わるか 」 多腕バンディット さらにパーソナライゼーションの性格を強めた手法の一つに「多腕バンディット」があります。バンディットとはスロットマシンのことで、多数用意されたバンディットを限られた回数操作して払戻金をいかに多く得るかという問題に例えて名付けられました。言い換えると、払戻金という報酬が多く得られる方法を学習するという、強化学習の一種です。この派生手法に当たるのが「文脈バンディット」で、例えばある人が職場にいるときは反応されたが自宅にいるときには反応されなかったレコメンデーションは「その人にとって職場向きのレコメンデーション」として、居場所という文脈を考慮して学習していくことです。 レコメンデーションにおいて、どこからどこまでがパーソナライゼーションたり得ているかの明確な線引きはありません。しかし文脈バンディットのように居場所まで考慮したレコメンデーションは、パーソナライゼーションの度合いが高いと言えるでしょう。 AIを用いたレコメンデーションについては、こちらの弊社コラムもご覧ください。 潜在意識も刺激する、AIを用いたレコメンデーション AIを活用したパーソナライゼーションの上で起き得る問題 AIを活用したパーソナライゼーションは、強力な競争優位性をもたらす一方、注意すべき問題点もあります。 コールドスタート問題 ユーザーベースのレコメンデーションを始める場合、サービスを始めたばかりはユーザー情報が当然まだ少なく、有効なレコメンドをすることができないという「コールドスタート問題」があります。アイテムベースは商品・サービスの類似度を中心にした仕組みなので、コールドスタート問題をカバーする手になり得ますが、弱点もあります。商品・サービスが増えるにつれて、それら同士の類似度を評価・管理するのに手間が増えていくことや、すでに保有している商品・サービスを何度もレコメンドしてしまうことなどがあります。なお、こうしたお互いの弱点を補うために、両方を組み合わせて最適化を図る手法はハイブリッドレコメンドシステムと呼ばれます。 商品に関するデータの拡充や、ランキング方式、検索ワードに基づくレコメンデーションなどによって、AIの能力を補うことも大切です。 参考:Silveregg Technology「 AIに「温故知新」ができないとき – ビジネスの現場における、コールドスタート問題の解決策 」 顧客情報不足 顧客に関する情報が不足していても、AIによるパーソナライゼーションはうまく作用しません。少ないデータから顧客へレコメンドを実施する技術は進んでいますが、最低限の嗜好性や、行動に関するログ情報は確保する必要があります。 参考:Adobe「 Adobe Targetによって実現するパーソナライゼーション戦略 」 パーソナライゼーション×AIの活用事例 AIを活用した福利厚生代行サービス テレワークの環境整備を手掛けるHQ社は、AIを活用した福利厚生代行サービスを始めています。利用者の性別や年代といった属性や好み、悩みなどのデータを活用してAIがパーソナライズしたメニューを提案できます。一人ひとりの個性が注目される時代においては、考えているキャリアプランやワークライフバランスの取り方も大きく異なってきます。そこで活躍するのがカフェテリアプラン(選択型福利厚生)サービスで、特に企業の人材育成戦略に合わせた資格取得や語学学習などのメニューを、従業員ごとに推奨してマッチングできることを強みとしています。 参考:PRTimes「 国内初、AI活用の福利厚生プラットフォーム「カフェテリアHQ」を提供開始 」 メール文面案を顧客に合わせて自動で作り分け セールスフォースは、営業や問い合わせ対応のメール文面案を顧客に合わせて自動で作り分ける技術を国内で導入しており、そこでは生成AIが活用されています。特に顧客情報やチャットツールなどと直接連携できるというセールスフォースの強みを生かし、顧客対応のパーソナライズ化を進める狙いです。 例えば、得意先に「昇進祝い」のメールを送りたい場合、お祝いの言葉に加えて、過去のメール内容から得意先の関心事を文面に盛り込んだり、打ち合わせの予定調整用のリンクを自動で加えたりできるとしています。メーカーにおける購入者による問い合わせ対応においても同サービスが有効で、以前の問い合わせ履歴や購買履歴を確認の上、AIによって正確な自動返信をしたり、人間による軽微な修正だけで返答を実現したりと、日々の業務負担の削減に貢献しているのも特徴です。 参考:日本経済新聞「 セールスフォース、購買歴でメール作り分け 生成AI活用 」 生成AI対話サービスでスキンケア フランスの化粧品メーカー・ロレアルは、生成AIを活用した対話サービス「Beauty Genius」を発表しています。「あなたの肌タイプは」「長時間のフライトの後なのでかなり乾燥していると思う」「色素沈着はなさそうですね」「日焼け止めを毎日使って、しみを防いでいるんだ」「肌に合わせたスキンケアを提案します。まずは1.5%のピュアヒアルロン酸にモイスチャライザーとウオータークリーム…」といった対話ができ、スマホのカメラを使った肌診断も経て、スキンケアに関する助言が得られるとしています。 同社ではこれまでも肌の状態を分析するアプリを展開しており、10ペタバイトものデータをロレアル・データ・プラットフォームに保有していると言います。肌診断のAIは、50カ国のメーキャップアーティスト1万人以上の知見を基に、皮膚科医がタグ付けした15万枚以上の画像で学習。10以上の異なる大規模言語モデル(LLM)を統合することで助言が出せると発表しています。 出典:日本経済新聞「 仏ロレアルがCESで基調講演 AI時代の「美の形」提示 」 パーソナライズされた献立を提案するAI 当社Laboro.AIでもこうしたパーソナライゼーションAIの開発実績として、味の素様に向けて開発を支援したAIエンジン「献立検索エンジン」があります。同社は製品開発や研究開発で培った健康や栄養に関する知見やノウハウ、データ、数々のレシピデータを保有しており、さらなる顧客価値向上とビジョン実現に向け、これらのデータの活用方法を模索していました。そこで料理をつくる多くの人が抱える悩みとして、献立づくりがあることに着目したのが開発のきっかけです。 詳しくはこちらをご覧ください。 ユーザーニーズを満たす「献立作成エンジン」 クロスセルとアップセルの両方を狙える パーソナライゼーション・レコメンデーションを含めて広く最適な提案をしていくことのメリットには、クロスセルとアップセルの向上が挙げられます。クロスセルでは、顧客が興味を持ちそうな関連商品・サービスを提案することで、顧客の購買体験を豊かにし、同時に売り上げの向上を図ります。例えば、ある本を購入した顧客に対して、同じ著者の別の作品や類似のジャンルの本を推薦することが当てはまります。 アップセルでは、顧客が検討している商品よりも高価格帯や高機能の商品・サービスを推薦することで、平均購買価格の増加を目指します。もちろんアップセルでも「高くてもいいから高機能が欲しかった」といった豊かな購買体験を得てもらうことも狙えるでしょう。 まとめ 商品・サービス提供におけるパーソナライゼーションを最適なものにできれば、カスタマーエクスペリエンス(CX、顧客体験)が向上し、より売上への貢献も期待できます。しかしその際、商品・サービス提供に付随して提示する情報も大量かつ複雑になり管理コストがかかることに加え、人力で最適な提案メニューを考案するには限界があることから、その分、AIの力を借りる価値は大きいと言えます。 一方、前述の通り、ユーザーの所在地や過去に検索したキーワードといった個人情報を活用している面もあり、プライバシー保護は欠かせません。2022年に米国の18歳以上1000人を対象に実施された調査では、53%が「媒体が何であれブランドと関わるたびにユニークでパーソナライズされた体験を期待している」と回答した一方、49%が「自分のデータが保護されているという感覚はパーソナライゼーションよりも価値がある」と答えています。パーソナライゼーションへの期待と同じくらい、プライバシーを守りたい気持ちもあるということです。 パーソナライゼーションの進展においては、プライバシー保護とCXの向上を両立させることが必須です。さらにはそこに関わるAI技術も日々進化していることから、その動向を追いながら導入内容を検討していくことが、マーケティングにおけるパーソナライゼーション活用のポイントになるはずです。 出典:Braze「 消費者にとってのプライバシーとパーソナライゼーション:透明性の重要性 」 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post パーソナライゼーションとは。マーケティングを加速するAI活用法 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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仕組みから知る生成AIと技術研究の今 2023.8.25公開 2025.1.10更新 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田崇 概 要 生成AIの進展が続いています。新しい生成AIサービスや最新版の登場が相次いだり、多くの人が生成AIの働きを意識せずともその恩恵にあずかっていたりと、使うかどうかを検討するより、まずは使ってみて出力の一部だけでも活用できれば生産性が向上するという状況になっています。生成AIの仕組みを今一度確認しつつ、サービス例や技術研究のトレンドも見ていきます。 目 次 ・ 生成AIとは  ・ 従来のAIとの違い  ・ generativeやgeneration(世代)、general(将軍)はなぜ同じ語源か ・ 生成AIの仕組み  ・ 生成AI全般で言われるTransformerとは  ・ 言語生成AIで言われるGPTとは  ・ 画像生成AIで言われるCLIPとは  ・ 画像生成AIで言われるStable Diffusionとは  ・ その他の画像生成AIモデル例①Midjourney  ・ その他の画像生成AIモデル例②DALL-E ・ その他の生成系AIサービス・活用例  ・ 言語生成   ・ ChatGPT   ・ Gemini   ・ Claude   ・ Sora  ・ 動画生成(text to video)   ・ Runway Gen-3 alpha   ・ Pictory.AI  ・ 音声生成(text to audio)   ・ MusicLM   ・ Suno AI  ・ 3D生成(text to 3D)  ・ コード生成(text to code) ・ 生成AI技術研究のトレンド  ・ オープンソース化とモデルの縮小化  ・ 超大規模モデルのファインチューニング手法  ・ 生成ジャンルの細分化  ・ 「AIエージェント」の普及 ・ 加速する生成AIの産業応用 生成AIとは 生成AI(英:Generative AI)は、画像、文章、音声、プログラムコード、構造化データなどさまざまなコンテンツを生成することのできる人工知能のことです。大量のデータを学習した学習モデルが、人間が作成するような絵や文章を生成することができます。 出典:NIKKEI COMPASS「 生成AI(ジェネレーティブAI) 」 従来のAIとの違い 「Generative」という言葉は、「生産または発生することができる」という意味です。生成AIという言葉が注目されている理由としては、「従来のAI」(生成AIが登場する前のAI)とはいくつかの違いがあることが挙げられます。 従来のAI も、正解として与えられるデータの特徴を学習し、その学習内容 に基づいて予測を行い、結果を出力するものでした。ですが、そこで出力される結果は、学習した内容に対する誤差や合致度などを表す正解率や適合率といった数値データが主でした。目的は、例えば「キズを検出する」のように、決まったタスクを自動化することに置かれることが多く、何かを新たに生成・創造することが目的とされることはありませんでした。 生成AIの場合は、もちろん予め定まった正解としてのデータ学習もしつつも、主にはデータ間の関係性やパターンが学習対象となり、さらに自律的に学習を進めその精度を更新していくための仕組みも施されています。 学習に使うアルゴリズムのベースは、両者ともニューラルネットワークです。生成AIでは、画像やテキストなど構造化されていないデータセットや後述するRLHFという仕組みを基に学習し、新しいコンテンツを生成することを目的にします 。 出典:NRI「 生成AI 」 generativeやgeneration(世代)、general(将軍)はなぜ同じ語源か ところで、generativeと聞くと、関連語としてgenerate(生成する)、generation(世代、生成)、general(一般的な、将軍)を思い出す人もいるでしょう。「世代」や「将軍」がなぜ同じ語源なのでしょうか。gen-は、「出産する、生み出す」を意味する原始インドヨーロッパ語根です。generateはgenerationの基になった言葉のように見えますが、実は逆で、generationからgenerateが派生しています。generationはラテン語generatus(「生む、生産する」の過去分詞形)が基です。そしてgenerateを形容詞化したgenerativeは「生み出す力を持つ」を意味の核として持ち、「生成的な、生成力を持つ」といった訳語が当てられるようになっています。 generationがなぜ「世代」という意味を持つかというと、 子が生まれその子が成長して子をもうけるまでの期間が約30年と考えられる一代が意味の核であり、これをよく使う表現にすると 「世代」になるわけです 。generalが「一般的な」という形容詞になるのは、「生み出された集団全体の」という意味が源です。そこからさらに「集団全体を管理する人」という意味も持つようになり、「将軍」という意味が現在も使われています。AIを活用して生成がある面では容易にできるようになった現在、この「管理」という派生の意味が重要になってくるかもしれません。 出典:エティモンライン – 英語語源辞典「 generation (n.) 」    TOEFL® Web Magazine「 第25回 gene│TOEFL® TESTスピーキング英単語 ワンポイント講義 」    語源英和辞典「 general 」 生成AIの仕組み 生成AIのモデルはさまざまにありますが、 その 一例を、文章生成(text to text)と画像生成(text to image)を例に説明します。下図の通り、文章生成の代表モデルとして GPTを挙げると 、その要素技術にTransformer(トランスフォーマー)があります。画像生成の代表モデルとしては Stable Diffusionが知られていて 、要素技術にDiffusionとCLIPがあり、それらはGPTと同じくTransformerにつながっています。以下、一つずつ説明していきます。   生成AI全般で言われるTransformerとは 前述の通り、Transformerは文章生成でも画像生成でも使われている要素技術です。文章に含まれる単語のように、連続したデータの関係を追跡することによって、文脈ひいては意味を学習するニューラルネットワークです。Transformer モデルは、進化する一連の数学的手法 (アテンションまたはセルフアテンションと呼ばれます)を適用して、同じ系内にある隔たったデータ要素間の微妙な相互影響や相互依存関係を見つけます。そしてモデルが持つパラーメーター数が大規模になればなるほど、精度が格段に向上するという「スケーリング則」が言われるようになりました。 この長所を生かそうと、Transformerの登場以降、モデルの 規模が求められ始めました。 Transformerにとって重要な技術に「自己教師あり学習」があります。自然言語処理の場合は、途中までの部分を読み込ませて次の単語を予測します。そうすると、正解データ、正解のラベルを用意しなくてよくなります。文章があるだけで、途中までの文章から次の単語を予測するという予測問題を作ることができ、この問題を使って学習をさせると、次の単語がうまく当てられるモデルができるわけです。これにTransformerを使うと、次の単語を当てはめる際に必要な単語の連接の確率や文法構造、トピックのつながり、背景知識などを学習させられ、精度が上がりやすくなりました。 出典:NVIDIA「 Transformer モデルとは? 」    日本経済新聞「 AI、閉塞破る第3の革新 「トランスフォーマー」の衝撃「ChatGPTエフェクト 破壊と創造のすべて」(2) 」    logmi Tech「 技術の鍵は「トランスフォーマー」と「自己教師あり学習」松尾豊氏が、第3次AIブームからひもとく“AIの歴史” 」 言語生成AIで言われるGPTとは GPT(Generative Pre-Trained Transformer)は2018年に発表されましたが、2022年11月にOpenAIがChatGPTを発表して広く知られるようになりました。大規模なTransformerモデルで、大量の学習データから次に来る単語の確率を予測する技術です。従来の言語AIと比較すると、「データ量の増大」「パラメータの数の増大」「多くのタスクで追加学習なしで高精度 」という特長があります。 一方、ChatGPTなど では、命令(プロンプト)の出し方次第で得られる回答が異なるため、より最適なプロンプトを入力することが求められます。言い換えると、プロンプトを使いこなせないと、意図した通りの回答を得ることができません。そこで現在では、AIから望ましい出力を得るために、指示や命令を設計、最適化するスキルである「プロンプトエンジニアリング」という概念も登場・発達しています。 関連して、ChatGPTでは、 ある質問から会話学習済みモデルが回答した文章に対し、どれくらい人間の感覚に近いかを報酬モデルが判定し、元のモデルにフィードバックすることを繰り返して強化学習を実施しました。このRLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback:人間のフィードバックによる強化学習)というステップによって人間の感覚を教え込んだため、ChatGPTは適切な文章を出力できるようになりました。 出典:NRI「 プロンプトエンジニアリング 」 画像生成AIで言われるCLIPとは CLIP(Contrastive Language–Image Pre-training、クリップ)は、2021年2月にOpenAIによって公開された、言語と画像のマルチモーダルモデル(数値、画像、テキスト、音声など複数のモダリティー(データ種別)を組み合わせて、もしくは関連付けて処理できる単一のAIモデル)です。ある画像とそれに対する説明文の類似度を出力でき、text to imageの画像生成では欠かせないモデルになっています。ウェブ上に豊富にある画像とテキストのペアのみの学習を行い、ImageNet(カラー写真の教師ラベル付き画像を1400万枚以上も持つ大規模なデータベース)やその関連データセットで高い精度での分類が可能です。画像とテキストの関連性のランク付けもできます。 出典:TRAIL「 CLIP:言語と画像のマルチモーダル基盤モデル 」  画像生成AIで言われるStable Diffusionとは Diffusion(ディフュージョン:拡散)モデルによる高品質な画像生成モデルと、前述のCLIPが融合したモデルです。CLIPがテキストと画像の関係性を学習するのに対し、Diffusionは画像に対してランダムノイズを徐々に当てていく過程を学習し 、完全にノイズになったものを逆再生 させることで生成を実現するというもので、ノイズ除去後の画像と元の画像の差分を少なくするように学習した技術です。 計算に時間がかかる欠点はあるものの、GAN(Generative Adversarial Network、敵対的生成ネットワーク)などより多様な画像を安定して出力可能です。 なおGANは、発表された2014年当時かなり話題になった一世代前の画像生成AIで、 画像を生成する「ジェネレータ」と、「その画像が本物か、ジェネレータによって生成された偽物か」を予測して出力する 「ディスクリミネータ」を競い合わせることで 新しい画像を作り出すことを狙ったものです 。 出典:スタビジ「 画像生成AIで頻出の拡散モデルについて分かりやすく解説! 」 その他の画像生成AI ①Midjourney 単語、文章を問わず、描いてほしい絵のイメージやキーワードを入力すると、それに沿った画像をAIが作成してくれるサービスです。「Discord」というチャットサービス上で動くツールで、利用するにはDiscordのアカウント登録が必要です。テキストは日本語に対応していますが、英語を入力した方がより高品質のイラストが作成される傾向にあるようです。ウェブアプリ版のみ無料利用が可能で、「1アカウントあたり約25枚」の枚数制限があります。有料利用は使用規模に合わせて月額10、30、60、120ドルの4プランがあり、商業利用もできます。 その他の画像生成AI ②DALL-E DALL-E(ダリ)は 、OpenAIがChatGPT PlusとMicrosoft Copilot上で使えるサービスとして2023年10月にリリースしました。画家のサルバドール・ダリとピクサーアニメ映画に登場するキャラクター「ウォーリー」(WALL-E)名前が由来とされています。ChatGPTでは有料プランであるChatGPT Plus(月額20ドル)上で利用できるほか、無料ユーザーでも1日最大2枚まで利用できます。Microsoft CopilotとBing Image Creatorは基本的に無料です。 画像生成AIについてはこちらもご覧ください。 出典:SE Design「 DALL・E2とは?基本機能や使い方、利用料金、注意点などを解説 」 画像生成AIについてはこちらもご覧ください。 私たちが画像生成AIで描くものは、アートか、それとも心か その他の生成AIサービス・活用例 文章生成と画像生成で生成AIの仕組みを見てきましたが、生成するものはそれらにとどまりません。代表的な例を見ていきます。 言語生成 言語生成分野は、出力の精度が広く分かりやすいこともあり、進展している領域の一つです。テキストの作成に関わるタスクであれば、使い方次第ではあらゆる目的に対応できるよう、機能・精度の向上が目覚ましく進んでいます。 言語生成AIは次々と登場する中、現在この分野を代表するサービスは、以下のChatGPTとGemini、そしてClaudeが挙げられます。それぞれの概要をここで確認しておきましょう。 ChatGPT ChatGPTは、OpenAI社が手がける対話型の生成AIです。ChatGPTの大きな特徴は、高度な言語モデルが頻繁なアップデートによって実装されている点です。一般利用可能なモデルの「GPT-4o」は、従来のモデルよりも応答速度や対応品質が飛躍的に向上しており、人間の対応と大差がなくなっていることを体験できるかもしれません。 2024年にはChatGPT Plusの上位サービス「ChatGPT Pro」も提供され、同社による最新のLLM(大規模言語モデル)であり推論能力を高めた「OpenAI o1 (オーワン)pro」などが利用可能で、進化し続けています。なお、2024年末には「o1」の性能をさらに高めた後継モデルにあたる「o3」が発表され、一般公開が待たれるところです。 ChatGPTはAPI連携による自社サービスへの組み込みも容易です。生成AIを一から開発することなく、自社サービス向けにチューニングを行うだけでオリジナルなAIサービスを提供できる点は、強力なメリットといえます。 出典:NEC「 ChatGPTとは?できることや活用事例などをわかりやすく解説 」 Gemini GeminiはGoogleが新たに提供を開始した、マルチモーダル型の生成AIです。自然言語を使った言語生成機能はもちろんのこと、画像や動画、音声データを入力として扱え、テキスト、画像を出力できるため、幅広い利用法が期待されています。 ChatGPTの強みの一つは、比較的に頻繁に更新されるモデルに表されている進化・品質向上です。Geminiに搭載されているモデルは、GPT-4と同等、あるいはそれ以上という評価されたこともあり、モデル開発競争の結果、進化することも期待されています。 Geminiの最大の特徴は、Google公式の生成AIである点です。そのため、GoogleドキュメントやGmailなど、各種Googleサービスと相性良く連携でき、それを強みとした進展が予想されます。 出典:スキルアップAI Journal「 最新の生成AI「Gemini」とは?3つのモデルや利用料金、使い方などを解説 」 Claude Claude(クロード)は米国のAI企業であるAnthropicによって提供されている言語生成型の生成AIです。ChatGPTなどと同様に、チャット形式でAIと対話を重ねながら、テキストを生成することができます。 Claudeの特徴は、GPT-4と同等のモデルを、ChatGPTよりも安価に利用できる点です。また、一度に対応可能な文章量についても、GPTのそれを上回るため、費用対効果や業務効率の面で高い評価を獲得しています。 ChatGPTと同様にAPI連携に対応しているので、自社システムに組み込んで運用することも可能です。 出典:AISmiley「 Claude(クロード)とは?Anthropicの最新AIモデルの使い方や活用例を紹介 」 Sora Soraは、2024年にOpenAIが発表した動画生成AIモデルです。テキストでプロンプトを入力するだけで、最長1分間の高品質な動画を生成できます。数行の文章に基づいて写実的や絵画的な映像、シミュレーションゲーム風の映像を瞬時に高品質に生成することから、驚きをもって迎えられました。 動画生成(text to video) Runway Gen-3 alpha 1枚の画像からAIが動画を生成する「Gen-2」で話題になったのが、ランウェイ(Runway)社のサービスです。 2023年2月に発表された「Gen-1」は、動画をプロンプトに応じて別の動画へと変換する(video to video)サービスでしたが、同年6月に一般にもリリースされたGen-2からは、描いてほしい場面をテキストプロンプトとして入力すると、動画を生成する「text to video」が実現できるようになりました。さらに7月下旬にアップデートして、画像から動画を生成する「image to video」が追加。1コマ目の画像を指定できるようになり、狙った場面を作り出しやすくなりました。2024年にリリースされた「Gen-3 Turbo」は、従来のサービスより動画生成時間が早まり、高画質かつ低料金にもなっているなどの特徴を持っています。 出典:ASCII×AI「 動画生成AIがすごすぎる 映画登場も遠くない 」    EdgeHUB「 動画生成AI「Runway Gen-3 Alpha Turbo」使い方や料金を初心者向けに解説! 」 Pictory.AI Pictory.AIは、動画生成AIサービスです。AIに自然言語でプロンプトを与えることで、そのプロンプトに則した動画を生成してくれます。 キャプションも生成できるのも特徴の一つです。多言語対応もしているので、グローバルにコンテンツを生成・発信したい場合にも有利です。 操作がクラウド上で完結するのも魅力です。動画編集や作成はもともと負荷が大きいため、実現には相応のマシンスペックが求められてきました。その制約がかなり軽減されることになるので、動画作成をより手軽に始められることになります。 出典:Strategy「 Pictory.AIとは?使い方や料金、日本語対応や商用利用について解説 」 音声生成(text to audio) MusicLM 2023年1月にGoogleの研究部門である「Google Reserch」は、文章を入力として音楽を生成するAIツール「MusicLM」を発表しました。28万時間に及ぶ音楽のデータセットを用いて学習したAIを使用し、同年5月に体験版が出ました。ユーザーによる「ディナーパーティーのためのソウルフルなジャズ」や「催眠術にかかるようなインダストリアルなテクノサウンドを作る」といった複雑な文章に応じた曲をいくつか作成することが可能としています。 Soundmain「 Google、テキストから音楽を作れる音楽生成AIツール「MusicLM」試用版を公開 」 Suno AI Suno AIは、米国のSuno社が2023年12月20日に発表した音楽生成AIで、ボーカルと楽器演奏を組み合わせた楽曲や、楽器演奏だけで構成される楽曲を、テキストから生成できるサービスです。音楽制作の知識がなくても、歌詞や曲のイメージをテキストで入力するだけで、オリジナルの楽曲を作ることができます。パソコンとiOSのスマホの両方から利用できる手軽さも特徴です。最新バージョンでは、無料ユーザーでも高度な機能を使用可能になっており、生成速度の向上、楽曲のバリエーション拡大などのさまざまなアップデートもされました。 3D生成(text to 3D) 大手半導体メーカーでありAI開発にも力を入れているNVIDIAが2022年11月に、入力したテキストを基に3Dモデルを生成するAI「Magic3D」を発表しました。Magic3Dは3Dモデル生成に2段階のプロセスを使用しています。最初に入力されたテキストを基に、NVIDIAが提供している画像生成AI「eDiffi」で2D画像を生成。その後、画像から空間を構築するNVIDIA Instant-NGPを使用し、2D画像から低解像度の3Dモデルを生成します。次に、低解像度3Dモデルメッシュから高解像度の3Dモデルを合成する「DMTet AI」を使用し、高解像度の3Dモデルを抽出しています。  Gigazine「 テキストから高解像度の3Dモデルを生成するAI「Magic3D」をNVIDIAが発表、テキストの微調整やスタイルの模倣も可能 」 コード生成(text to code) GitHubは2023年3月に、プログラマー支援ツール「GitHub Copilot X」を進化させた「GitHub Copilot X」を発表しました。OpenAIのGPT-4(Generative Pre-trained Transformer 4)を採用し、チャットと音声機能が組み込まれ、プロジェクトのあらゆる場面でAIが利用可能としています。 GitHub Copilotとは、OpenAIのGPT-3を改良したテキスト生成の言語モデルである「OpenAI Codex」を利用するコード生成・変換を得意とするプログラマー支援ツールです。GitHub Copilotに対してコードを書いたり、コードにさせたいことをコメントとして伝えたりすると、プログラムに必要なコードの候補を提示してくれます。また日本語のコメントも処理できることが確認できています。 アンドエンジニア「 「GitHub Copilot X」が発表!開発者を支える新技術 」 生成AI技術研究のトレンド 生成AI技術研究のトレンドとして以下の四つが挙げられます。   オープンソース化とモデルの縮小化 クローズなモデルであるOpenAI一強の状態から、Meta AIによるLLaMA、スタンフォード大学によるAlpacaなどオープンソースで高精度なモデルが登場してきました。さらに、モデルの縮小化も進んでいます。例えば、OpenAIによるGPT-3のパラメータ数は1700億、GoogleによるPaLMは5400億でしたが、前述のLLaMaは650億、Alpacaは70億と文字通り桁違いに減っていつつ、精度は維持されていることが報告されています。 さらに、2024年3月にSakana AIが複数の小型モデルをマージ(統合)する「進化的モデルマージ」という方法を発表したり、同年4月にMicrosoftが「Phi-3」、12月に「Phi-4」という小規模言語モデル(SLM)をリリース、また、検索エンジンBingにおいて「LLMとSLMを組み合わせる方式へ移行する」と発表したりするなど、縮小化の傾向が見られます。  超大規模モデルのファインチューニング手法 LoRA(追加学習の際に必要となるメモリと計算量を大幅に削減し、かつ数十枚という少ない画像データでも良好な結果が得られる手法)やその派生手法であるAdaLoRAなど、ファインチューニングを効率的に実施する手法が登場しています。   生成ジャンルの細分化 前述のStable Diffusionを開発したStability AIは、テキストと画像を同時に生成できるDeepFloydもリリースしています。例えば、「腹部に『おやすみ』という文字が書かれた服を着たコアラ」というテキストプロンプトを入力すると、このテキストの通りの画像が出力されます。 生成AIと関連の深いLLM(Large Language Models、大規模言語モデル。大量のテキストデータを使ってトレーニングされた自然言語処理のモデル)は産業別に特化する動きが見られ、医療系の「ChatDoctor」、金融系の「BloombergGPT」、化学系の「BO-LIFT」などが登場しています。 「AIエージェント」の普及 本コラムで取り上げてきた生成AIは基本的に、人間が出すプロンプトで持って出力をするもので、「指示待ち型」ともいえます。しかし2024年秋以降、「自分でタスクを理解し、最適な行動手順を考え、必要に応じて外部リソースを参照しつつ結果を出す」という自律的な問題解決が可能なAIが登場してきました。そうしたAIは「AIエージェント」と呼ばれます。 例えば、Anthropicが2024年10月に発表した「Computer use(コンピューターの使用)」という機能は、AIエージェントが人間と同じように、マウスやキーボードでパソコンのGUI画面を直接操作できるようにするものです。これにより、APIが提供されていないアプリケーションにも対応可能となり、従来はRPAツールで行っていた定型作業などの自動化も、今後はAIエージェントで代替できるかもしれません。 出典:@IT「 2025年、「AI」はこう変わる! 注目トレンド8選 」 加速する生成AIの産業応用 生成AIに関して日本は、ChatGPTの利用度合いが世界的に見て高いという 調査結果 があったり、国内企業による独自のLLMの開発宣言が相次いでいたり、そして何より、生成AIが活用されているかどうかを意識せずとも利用しているサービスが当たり前に存在したりして、利用・開発の両側面でビジネス活用が今後促進されるであろう状況がうかがい知れます。 しかしその用途に目を向けてみると、コールセンター業務のチャットボット化や、広告デザインの生成、文章要約・翻訳といったバックオフィス業務の効率化など、総じてみれば既存にあった業務をAIに代替させるケースが多い状況です。生成AIを活用した新製品開発、新サービス開発、新規事業の開発など、ビジネスモデルの変革にもつながるような本来の意味でのDXを目的とした用途での生成AIの活用は、まだまだ始まったばかりです。 急速に技術進展を見せる生成AIですが、その真価は、中長期的な視点でビジネス成長をもたらせるかどうかにあり、当社ではこうした成長投資としてAI活用を目指すようなテーマを「バリューアップ型AIテーマ」と定義しています。そして、バリューアップを目的としたAI開発においては、 そもそもビジネス課題が何であり、それを解決するためのソリューションとして生成AI をどう設計(デザイン)すべきか、AI技術と現場ビジネスの両方を見据えて検討を入念に行う必要があります。 さらに当社ではこのテクノロジーとビジネスをつなぐプロセスを 「ソリューションデザイン」という名で体系化し、AI開発に必要なコンサルティング・プロセスとしてサービス提供しています。 テクノロジーとビジネスの両面の視点を携えてソリューションデザインを行い、中長期的なバリューアップのために活用していけるかどうかが、今後の生成AIの産業応用においては重要になってくるはずです。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 仕組みから知る生成AIと技術研究の今 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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設計最適化AIが創出する競争優位。製造業プロセスの変革 2024.12.27 株式会社Laboro.AI ソリューションデザイナ 上田知広 執行役員 マーケティング部長 和田崇 概 要 製造業のデジタル化においては、長年、ベテラン技術者の経験知が「最後の難関」とされてきました。しかし近年、強化学習やメタヒューリスティクスなど、高度な最適化技術を活用した「設計最適化AI」によって、複雑な設計に関する意思決定を計算可能なかたちで再現し、飛躍的な効率・品質改善を実現する動きが加速しています。従来、日数を要していた設計検証が最適化アルゴリズムにより数秒で完了し、ベテラン技術者の暗黙知がモデル化されることで、設計期間の短縮、コスト削減、品質の安定化、さらには差別化アイデアの創出が可能となりつつあるのです。本コラムでは、こうした「設計最適化AI」の最新動向や、そのビジネスインパクトを分かりやすく解説します。 目 次 ・ デジタル化が難航した設計領域  ・ 配電盤設計の革新 ・ なぜ設計のデジタル化は遅れたのか ・ 設計最適化のためのAI活用  ・ 1)ルールベース  ・ 2)数理最適化  ・ 3)メタヒューリスティクス  ・ 4)強化学習 ・ 設計最適化AIがもたらすブレークスルー  ・ 思考速度の飛躍的向上  ・ 暗黙知の形式知化  ・ 創造性の拡張 ・ 設計最適化AI導入の成功のポイント  ・ 設計プロセスの現状分析  ・ データ収集・整備  ・ 人間の技能とAIの相互補完  ・ 定量指標による継続的改善  ・ 固有要件の特定 ・ 設計最適化AIの開発フロー  ・ フェーズ①:ビジネス要件の整理  ・ フェーズ②:技術的検証プランの策定  ・ フェーズ③:プロトタイプ開発(単一問題)  ・ フェーズ④:実用レベルモデル開発(単一問題)  ・ フェーズ⑤:実用レベルモデル開発(汎化問題) ・ 設計最適化AIは共創的アプローチへ デジタル化が難航した設計領域 商品企画から設計、開発、生産準備へと至るエンジニアリングチェーンは製品競争力の源泉です。その中でも、無数の候補から最適な設計案を導くことは、ベテラン技術者の経験則や直感に長年頼ってきたため、定式化が困難とされてきました。 しかし近年、強化学習、遺伝的アルゴリズム、シミュレーテッドアニーリングなどのメタヒューリスティクス系手法、並びにCSP(制約充足問題)を扱う技術が成熟し、こうした複雑なプロセスを数理モデルとして扱い、コンピュータ上で自動探索することが可能になりつつあります。 配電盤設計の革新 具体的な実践ケースの一つとして、例えば配電盤設計では、限られた3次元空間内に多数の機器を配置し、放熱・配線・保守性など複雑な制約を満たす必要があります。従来は熟練者の経験則でその「空間パズル」を解いてきたわけですが、最適化手法を用いると、JIS規格や保守要件を含めた多元的制約を数学的モデルに変換することが可能になります。 なぜ設計のデジタル化は遅れたのか 品質向上を目指せば開発リードタイムとコストが膨らみ、効率重視に寄せれば品質低下を招く――。設計現場は長らく、このジレンマに直面してきました。その一方で、人材不足やベテランの退職による技術消失が深刻化しており、若手人材が高度な知見を身に付けるには長い年月が必要です。国際競争が激化する環境において、こうした厳しい人材状況では、デジタル化に手を付ける余裕はなく、優先度を下げざるを得なかったというわけです。 こうした製造業を取り巻く課題を背景として、今、従来ある多様な最適化技術を活用しながらも先進的なアプローチによる設計最適化AIが、飛躍的進歩をもたらす技術として期待されています。 設計最適化のためのAI活用 そもそも設計最適化は「組合せ最適化」の一つとして位置付けられます。組合せ最適化とは、条件を満たす解の中で一番良いものを求める「最適化問題」の中でも、膨大な数の組合せから、条件を満たす組合せや、最も良い組合せを探索することです。設計最適化を含む、こうした複雑な条件の組合せを考えるタスクは「組合せ最適化問題」と呼ばれ、世の中の多くの領域で適用されています。 AIを活用した組合せ最適化には、考えられる諸条件の組合せをどう探索させるかのアプローチがさまざま存在し、それぞれのビジネス環境や課題の特性に応じた最適な方法を選ぶことが鍵になります。ここではAIを活用した代表的な四つのアプローチを取り上げます。 1)ルールベース 人間が事前に定めたロジックに基づいて計画を出力させる手法であり、比較的シンプルな問題で、かつ説明性(提案する組合せに至った論理が説明できること)が求められるような場合での利用が向いています。 2)数理最適化 より良い組合せをその都度、しらみ潰し的に探索して出力させる手法で、ルールベースよりも複雑性への対応力がやや高い手法です。一方、用いるデータ量に応じて計算処理時間と負荷がかかる特徴があるため、制約条件がある程度ありながらもロジックが組めるという、中程度の複雑性を持つ問題への利用が向いています。 3)メタヒューリスティクス 特定の問題に依拠せず、幅広い分野に適用できる最適化・AI手法です。都度組合せを探索するものの、現実的な時間内で質の良い組合せを探索・出力させることができることに特徴があります。 4)強化学習 「うまい組合せの方法」を自律的に身に付けたAIに、AIが考える最適な組合せを出力させるアプローチです。複雑な問題への対応力が非常に高く、計算処理時間も短く済む点にメリットがあります。ただし、シミュレータなどを含めた開発期間に時間がかかる上、説明性が低いという特徴があります。そのため、中長期的な期間で解決が必要な複雑性の高い問題、かつ説明性がそれほど求められないケースでの利用が向いています。 なお、組合せ最適化についてはこちらのコラムで詳しく解説しています。 AIを活用した組合せ最適化、カギの一つは強化学習 設計最適化AIがもたらすブレークスルー 上記のように設計最適化AIと一言で言ってもさまざまなアプローチが存在することから、その設計・開発には十分な検討が必要になり、そこには大きく三つのブレークスルーがあると考えられます。 思考速度の飛躍的向上 ます、機械学習を用いて従来の数値シミュレーションを代替する手法であるサロゲートモデル(近似モデル)や高度な最適化アルゴリズムにより、従来数日以上を要していた設計検証が数秒程度で完了することが可能になります。これによって、設計者がアイデアを頭の中で試行錯誤するように無数の仮説を短時間で検証でき、意思決定速度が劇的に向上することが見込まれます。 暗黙知の形式知化 強化学習をはじめとする機械学習技術の高度化によって、ベテラン設計者が蓄積してきた経験的ルール・制約判断軸をモデル化が可能になりつつあります。これにより、口伝的だったノウハウが再現可能なかたちで次世代に継承され、設計品質の一貫性確保と人材育成が容易になることが期待されます。 創造性の拡張 特定の問題に依存しないアプローチである最適化手法の一つであるメタヒューリスティクスの活用によって、人間には着想しにくい最適解候補を広大な探索空間から発見することが可能になり、設計者と最適化AIが対話的に解を洗練することで、新規アイデアの創出につながることが期待されています。 設計最適化AI導入の成功のポイント 設計最適化AIの効果的な導入において重要なポイントは、次の通りです。 設計プロセスの現状分析 まず現在の設計プロセスの分析です。どの工程にボトルネックが存在し、どの領域で最適化の余地があるのかを明確にする必要があります。この際、風呂敷を広げるのではなく、まずは小規模な領域から着手し成功体験を積むことがやはり重要です。 データ収集・整備 次に、データの収集と整備、つまり過去の設計データ、性能評価結果、不具合情報などを体系的に収集し、AIが学習可能な形式に整備することも重要なポイントです。設計意図や制約条件を整理し、データ基盤を確立することで、モデルの学習精度・再現性が高まります。 人間の技能とAIの相互補完 また、設計者とAIの協調も重要なポイントです。AIを「ブラックボックス」として扱うのではなく、設計者が意思決定の根拠を理解し、必要に応じて介入できる仕組みを構築することが望ましいでしょう。 またAIは熟練技術者の代替ではなく、その経験知を形式知化した、次世代の人材が活用するためのツールだと捉えることも大切な視点です。人間の創造性とAIの探索力を組合わせることで、より高次元の設計価値を創出できるようになるはずです。 定量指標による継続的改善 一度開発・導入したら終わりではなく、継続的に評価・改善を行うことはどのようなAIシステムも重要になります。時間短縮率、品質改善度、コスト削減率など定量的な評価軸を設定し、導入効果を測定・改善することで持続的に競争力を強化していく運用体制を組むことが重要です。 固有要件の特定 最後に、特に注意すべきは、汎用的なパッケージ型のAIでは対応できない企業固有の要件の特定です。例えば、特殊な製造条件や品質基準、サプライチェーンの制約条件などを、AIにどのように組み込むかを検討する必要があります。既存のパッケージ型のAIソリューションが、各企業固有の設計要件や制約条件に十分対応できていないことは少なくありません。 例えば、自動車部品メーカーでは、数万点に及ぶ部品それぞれに異なる設計制約があり、これらを統合的に最適化する必要があります。また、重工業メーカーでは、極限環境下での製品性能を考慮した設計最適化が求められ、これには高度な物理モデルとの連携が不可欠です。 このような複雑な要件に対し、市販のパッケージAIでは十分な対応が困難であることが多く、結果として導入後の運用でさまざまな制約に直面するケースがあることも事実です。 設計最適化AIの開発フロー 特に当社の「カスタムAI」のように受託開発/個別開発/オーダーメイドで設計最適化AIを開発する際には、体系的かつ段階的なアプローチが必要です。その開発プロセスは大きく五つのフェーズに分けられ、各フェーズでの確実な実行が成功の鍵となります。 フェーズ①:ビジネス要件の整理 第1のフェーズでは、ビジネス要件の整理を行います。具体的には、クライアントが直面している現状の課題を明確化し、AI活用による解決可能性を検討します。また、言語化されているビジネスルールを理解するためマニュアルなどを精読し、また関係者へのヒアリングを通じて暗黙知を含む要件を把握します。これらの情報を基に、ビジネス観点から対応すべき項目とその優先度を整理します。 フェーズ②:技術的検証プランの策定 第2のフェーズでは、技術的な検証プランを策定します。整理された要件に対して、実装方法の概要や技術的課題を検討・評価します。ビジネス視点と技術的観点の両面から優先度を調整し、リリースまでの期間を考慮した実装計画を立案します。さらに、問題を定式化し、プロトタイプ開発に向けた技術検証プランを決定します。 フェーズ③:プロトタイプ開発(単一問題) 第3のフェーズでは、プロトタイプ開発を実施します。まず、最小機能を特定し、アプローチの妥当性確認のための実装を行います。プロトタイプでは単一問題に焦点を定め、計算時間と解の品質から実装手法を策定します。この段階で、汎化モデルの開発スコープも精緻化します。 フェーズ④:実用レベルモデル開発(単一問題) 第4のフェーズでは、実用レベルモデルの開発に移行します。プロトタイプに対して制約条件を実装し、単一問題ごとに学習と性能評価を行います。必要に応じて制約条件のビジネス解釈や技術的対応を見直し、目的関数を更新します。 フェーズ⑤:実用レベルモデル開発(汎化問題) 第5の最終フェーズでは、汎化問題への対応を行います。前フェーズの結果をもとに汎化モデルの開発スコープを確定し、機械的に正解データを生成します。この段階では、単一のモデルで複数問題に対応できる汎化性能の確保が重要となります。 このように段階的なアプローチを採用することで、リスクを最小限に抑えながら、確実な成果を積み上げることが可能となります。特に、開発プロセス全体を通じて、社内外との密接なコミュニケーションを維持し、要件の変化や新たな課題にも柔軟に対応できる体制を整えることが重要です。 設計最適化AIは共創的アプローチへ 将来的に設計最適化AIは、人間の設計者が定義する制約・目標に対して、AIが多数の解候補を瞬時に提示し、また設計者が最適なアイデアを選択・拡張するという「共創的」なプロセスが主流になると考えられます。こうしたプロセスはGenerative Designなど新興手法との組合せによって発想の幅がさらに広がることもあるでしょうし、より革新的な製品開発・製品設計に向けた試行錯誤が続けられていくはずです。 その中核となるのが、「デジタルツインを活用したアジャイル設計プロセス」の実現です。具体的には、設計者がアイデアを入力すると、AIが瞬時に実現可能性を評価し、最適な設計案を提示するといったように、設計、シミュレーション、プロトタイピング、評価のサイクルが、AIによって大幅に加速・最適化され、製造条件や市場要求の変化にも柔軟に対応し、リアルタイムで設計を最適化することが可能になるような世界観です。 こう考えると、確かに、現状の設計最適化AIの実力は業務効率化ツールの域を出ませんが、本来的には競争優位をもたらす経営戦略上の武器として位置付けるべきです。短縮された開発期間とコスト削減、品質の安定化をベースとした新規アイデア創出による製品差別化など、より長期的かつ多面的なメリット創出を模索していくことが、ビジネス成長の鍵になることは間違いありません。 こうした、いわば「競争のための設計最適化AI」を実現するためには、既存の設計ルールや社内の品質基準をAIモデルに組み込む必要があるでしょう。さらには、設計データの蓄積と活用の仕組みも各企業の業務フローに合わせて最適化する必要もあり、企業固有の要件に合わせたAIシステムの構築が不可欠になります。当然、ここまで来るとパッケージ型AIではとても対応できず、受託開発による柔軟なカスタマイズに基づいたAI導入が価値を発揮します。 今こそ、自社環境に適した最適化技術を段階的に導入し、AIと人間の共創関係を築くことで、厳しい国際競争下での持続的な成長と競争優位の実現に向けて動き出すべき時です。 まずは次なる第一歩として、当社のようなビジネス視点も保有した専門AIベンダーの活用や社内PoC(概念実証)プロジェクトの立ち上げを検討し、これらの技術がもたらす実利を自社で体感してみてはいかがでしょうか。 執筆者 ソリューションデザイン部 ソリューションデザイナ 上田知広 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大手インフラ企業にて、電力事業にかかわるシステム企画・導入やデータ分析などに従事。その後、大手総合系コンサルティング会社の戦略部門にて、SI・リース・コールセンターなど幅広い業種のクライアントに対し、新規事業・経営管理・営業戦略などの構想策定を支援。2020年、Laboro.AIへ参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 設計最適化AIが創出する競争優位。製造業プロセスの変革 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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自然言語処理:AIで言葉を活用してビジネスを変える仕組みを解説 2022.10.21公開 2024.12.25更新 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷 勇一 執行役員 マーケティング部長 和田崇 概 要 インターネット検索、ニュース記事などのウェブページの機械翻訳、スマートフォンでの音声認識、問い合わせの際のチャットボット、そして近年注目を集めるChatGPTなどなど、私たち人間が扱う言葉を認識して何かしらの出力を返すサービスは、最も身近なAIの実装例といえるでしょう。これらに共通するAI技術は「自然言語処理」と呼ばれ、生成AIの進展によって、AIの中でも近年特に発展している分野の一つです。 目 次 ・ 自然言語処理とは  ・ 無意識に使っている自然言語処理  ・ 意識的に使うべき自然言語処理 ・ 自然言語処理の種類  ・ 自然言語理解(NLU)  ・ 自然言語生成(NLG) ・ 自然言語処理が注目される理由  ・ インターネット、スマホの進展に伴う莫大なテキストデータの流通  ・ ビジネスシーンにおける大きな需要 ・ 自然言語処理の仕組み  ・ コーパス  ・ フェーズ1:形態素解析  ・ フェーズ2:構文解析  ・ フェーズ3:意味解析  ・ フェーズ4:文脈解析 ・ 自然言語処理の活用事例​  ・ 金融機関で目指す「AI営業」の基盤にLLM  ・ セキュリティー運用支援を生成AIがアドバイス  ・ 熟練技術者のノウハウで学習、トラブル対処法を出力  ・ 自動運転システムの開発にもLLMを活用  ・ ブランド人格を反映した対話テキスト自動生成 ・ 自然言語処理の未来と課題  ・ あらゆるコミュニケーションがAIありきで行われる将来も  ・ ブラックボックス化されている生成AIの自然言語処理 ・ 自然言語処理との付き合いはもう前提 「自然言語処理」とは 自然言語とは、我々人間が操る言語のことを指しており、「自然」は人間のことを指しています。AI活用における自然言語処理について話すとき、自然言語の対になる概念は、機械語などを要素として持つプログラミング言語です。 自然言語は人同士がコミュニケーションを取るために発達してきたもので、ある程度の曖昧性(一つの文字列で意味が複数成り立つこと)を含んでいます。例えば同じ言葉の並びでも、切り方で意味が違ったり、状況によって捉え方が変わったりします。 一方のプログラミング言語は、記述された文は一意であり、コンピュータはプログラミング言語に従って決められた処理を行います。 自然言語処理とは、コンピュータをプログラミング言語ではなく自然言語に対応させることを指します。AIの代表的な技術である機械学習、とりわけディープラーニングが発達し、ゲームや画像認識などで先に活用・実装例が出てきましたが、自然言語処理は後述するTransformerというアーキテクチャを核に近年大きく発展してきています。 こうした自然言語処理は、Natural Language Processingの和訳で、エンジニアの間では専ら略称のNLPと呼ばれています。ただ、NLPというと、Neuro-Linguistic Programming、神経言語プログラミングの略称でもあり、プログラミングという名前が付いていますが、学問としては心理学の領域です。文脈によってどちらを指すか変わってきますので、注意が必要です。 無意識に使っている自然言語処理 パソコンやスマートフォンで使えて私たちが最も頻繁に使っているNLPは、予測変換かもしれません。日本語の場合、単語ごとではなく、1文などある程度の長さの文字列を入力すると、品詞ごとに変換候補を示してくれることがあります。これは後述する形態素解析ができている状態です。また、採用数が多い変換候補は次に出てきたときは最初に示してくれたり、Wordなど文書作成ソフトの製作者側に形態素解析や変換候補表示の質についてフィードバックを与えるとゆくゆくは改善されたりします。 インターネット検索も、NLPの賜物です。検索したい言葉を入力して、その文字列と一致する文字列を含むウェブページを提示するのはもちろん、検索したい言葉と一緒によく検索されている言葉を提示(サジェスト)したり、検索語にスペルミスやタイプミスがあっても正しいであろう文字列で検索してくれたり、といった機能が拡張しています。 意識的に使うべき自然言語処理 近年、急速に精度が上がってきたと言われているのが、機械翻訳です。英語ではMachine Translationなので、略してMTと呼ばれることもあります。今ではChatGPTのようなLLMでも十分な性能での機械翻訳が可能になっていますが、例えば2017年にサービス提供を始めたドイツのDeepL(ディープエル)は、それまで精度がかなり高いと見られていたGoogle翻訳よりも精度が高いということで当初は特に評判を集めました。2024年12月現在、日本語を含む31言語に対応しています。 しかし、いくら精度が高いといっても、文末表現が単調といった読みやすさの問題だけでなく、文脈に合致しない訳文の出力や、ある1文を丸ごと出力から漏らしてしまう「訳抜け」の発生という致命的な問題が起きるなど、出てきた訳文がそのまま翻訳書となって出版できるレベルには全く到達していません。仕事上で外国語で書かれた資料を要約してレポートを作るなどという場合にも、MTが生成した訳文をそのまま使うのは避けた方がいいでしょう。もし使うとしても、少なからず書き直しをすることを前提とした土台の文章を出力してくれるシステムとして捉えるべきです。 けれども機械翻訳は、外国の好きなアーティストや友人のSNS投稿などの意味をなんとなく知るくらいであれば、価値があるでしょう。特に英語以外の言語で書かれていればなおさらで、従来であれば多くの人にとって全く調べようがなくお手上げだった文章の意味が少しでも分かるようになったのは画期的です。グローバルなコミュニケーションが促進されているとも言えるでしょう。 文字起こしや議事録作成サービスもAIの恩恵で生まれた便利なシステムです。従来は他人が話していることをその場でなるべく文字入力していくなり、ノートや録音を駆使して記録して後で見返し・聴き返しするなりして、文書を作成する必要がありました。しかし現在実現している文字起こし・議事録作成サービスは、精度はもちろん完璧ではありませんが、感覚的にいえば「しょうがない、直してやるか」と作業したくなるほどの精度で仕上がってきます。この「作業したくなる」というのが重要で、後で一から録音データを聴き直して文書を作成することと比べたら、格段に気が楽です。行動経済学で言うところの「ナッジ(そっと促す)」にも通じるでしょう。「AIは人間活動の補助をするためにある」ことにもつながります。 Microsoftのサービスでは、Wordなどの文書作成ソフトに実装されて久しいのが校正機能で、これも自然言語処理の恩恵です。同社は2023年に生成AIアシスタントであるCopilotをリリースし、Wordなどのソフトと組み合わせて活用できるという強みを持っています。Word上で文章生成や要約、翻訳、Excel上でデータの可視化・分析、Outlook上でメールの要約や下書きといった自動化・効率化が図れます。 自然言語処理の種類 自然言語処理と似た概念に、自然言語理解(NLU: Natural Language Understanding)と自然言語生成(NLG: Natural Language Generation)があります。それぞれどのような違いがあるのか、確認しておきましょう。 自然言語理解(NLU) 自然言語理解は、ある文章に対して、テキストの解析や音声の意味解析・構文理解によって、文章を把握するという、自然言語処理の1分野を指します。 人間は自然言語を扱うときに、必ずしも構文化されていなくとも、その意味を理解できます。一方、コンピュータの場合、自然言語を理解するためには構文化、すなわち文章の文法的構造と、その文が意図するところを定義しなければ、言語として理解することができません。 自然言語理解という仕組みを実装することで、AIは自然言語の要点や話題、話者・筆者の感性・感情や意図といった意味を理解できるようになります。 また、オントロジーを構築する上でも自然言語理解は重要です。オントロジーとは、言葉の意味を正確に伝えて知識の共有をするために、言葉同士の関係がどのようなものになっているかを定めるデータ構造です。例えば、「カレー」は「料理」という概念の要素の一つであり、「カレーを作る手順」は「切る」「炒める」「煮る」という順になり、「切る」とは…、と言った具合に概念との関係性や順序などが整理されたものです。こちらも人間は自然と会話の中で把握することができますが、コンピュータは自然言語理解を通じた分析によって解釈する必要があり、その高度化によってもAIの自然言語処理は進化を遂げてきました。   自然言語生成(NLG) 自然言語生成は、自然言語理解の技術を出力のために応用することを指すための概念です。 ChatGPTのような生成AI、特にLLM(大規模言語モデル)は、自然言語生成の技術の進化がもたらしたAIの形態です。自然言語として人間がストレスなく理解できる出力をするには高度な技術を要します。語彙や構文、文法的な正しさ、そして質問にきちんと対応していてなおかつ適切な回答は、数十年の研究を経て現在かなり得られるようになりましたが、ハルシネーションはまだまだ起き得る状態で、今なお研究が進められています。 人間は情報の処理と入出力を自然言語で脳内で瞬時に行っていますが、現状の生成AIは情報の入出力は自然言語でありつつも、処理はプログラミング言語に代表される人工言語で実施されています。しかし将来、すべての情報処理を自然言語で行うAIが登場する可能性もあるかもしれません。 自然言語処理が注目される理由 自然言語処理が、現代で大きく注目を集めているのには、どのような理由があるのでしょうか。ここでは主な二つの理由を解説します。 インターネット、スマホの進展に伴う莫大なテキストデータの流通 自然言語処理の重要性が高まっているのには、インターネットの普及と密接な関係があります。私たちが一般生活で使用するコミュニケーションツールである自然言語は、日常会話だけでなく、インターネット上の通信でも広く使用されています。スマートフォンの登場によってインターネットの利用者が一段と広まり、SNSの登場と相まって、インターネット上に膨大な自然言語情報が蓄積されるようになりました。 AIを高度に学習させる上で、そうした自然言語のデータを効率良く処理できる仕組みは有用ですが、そうしたデータは構造化されておらず、従来のAIでは学習に利用するのに限界がありました。しかし例えばGoogleが開発した自然言語処理モデルであるBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)は、インターネット上にある大量のラベル付けされていないデータから事前学習ができるようになっています。これを支えているのが、「BERT」さらには「ChatGPT」の“T”の部分を指すTransformerというアーキテクチャです。Transformerは、文章中のすべての単語同士の関連性を把握することを通して、より高度な文脈・意味の理解、複雑なテキスト処理に対応することを可能にし、自然言語処理の可能性を開拓しました。 今後、自然言語を用いるAIがより広まって質の良い学習データも蓄積され、それによってまたAIが進化して…といった正の連鎖が起き、人間と見分けがつかないレベルの出力をするAIが実現するかもしれません。 ビジネスシーンにおける大きな需要 人間が扱う言語が自然言語なのですから、日常生活を通して膨大な自然言語情報がやり取りされているのは当然です。そしてそのことから分かるのが、自然言語を入力とするAIは人間にとって使いやすく、もちろんビジネスでも幅広く適用しやすいことから、効率化や付加価値の増大も狙えるため、その普及は年々高まっています。 いわゆる単純作業のデスクワークだけでなく、例えばAIに複数の人格を演じてもらってのアイデア出し・企画書作成や、自然言語で指示をして画像データとして出力させるデザイン制作といった、比較的複雑な作業にも使えるようになっています。 上で挙げた例は1種類(モーダル)のデータを入力とし、1種類のデータを出力とする(入力データのモーダルと同じでも異なっていてもよい)「シングルモーダルAI」ですが、例えば音声、画像、音、テキストという複数(マルチ)のモーダルを用いて環境認識というタスクを実現する「マルチモーダルAI」にも自然言語処理は活用され、より多様で複雑なタスクを実現するのに役立っていくでしょう。 自然言語処理の仕組み AIが自然言語を処理するときに必要となるのが「コーパス」というツールです。これを用い、四つのフェーズで処理していきます。以下、コーパスとフェーズを一つずつ解説します。 コーパス コーパスは、簡単に言えばその言語において実際に使用されている例文を集め、文法などの構造情報を整理したデータベースです。新聞記事や小説、辞書、インターネット上の記事、SNSなどから文章を集めたものをテキストコーパス、インタビューや講演などを収録した音声データを集めたものを音声コーパスと言います。 人間が母国語以外の言語を学ぶとき、単語や熟語の辞書的な意味を覚えるだけでは不十分で、例文にいくつも触れることで学習を進めていきます。AIによる自然言語処理も同様で、辞書的な意味を覚えさせるだけでは不十分のため、学習のためにコーパスが使用されます。 コーパスの中には、各単語に品詞のタグを付けたコーパスや、語義のタグを付けたコーパスなどがあります。自然言語処理をするAIは、このコーパスを使って頻出する単語同士の関係性やよく使われる会話パターンなどを学習していきます。 テキストコーパスはオンライン辞書サービスであるWeblioなどで見たことがあってなじみがある方が多いかもしれませんが、音声コーパスはちょっとイメージがつきづらいかもしれません。 Laboro.AIではTV録画から長時間音声と字幕テキストを抽出して音声コーパスを自動構築する独自システムを用い、約2000時間に及ぶ音声データから構築した日本語音声コーパス「 LaboroTVSpeech(ラボロティービースピーチ) 』を開発し、、2024年にはデータ量を約3倍に増量して、より高品質な音声データとしてアップデートした「 LaboroTVSpeech2 」を開発・提供しています。 フェーズ1:形態素解析 自然言語処理の第1段階として行われるのが、形態素解析です。 形態素とは、意味を持つ最小単位を指します。厳密には、形態素は品詞よりもさらに細かく分類したものを指しますが、さしずめ品詞と言っても差し支えありません。「私は犬が好きです」という文があったとき、形態素に分割すると以下のようになります。 私 は 犬 が 好き です 形態素解析では読み込んだ文を上記のように一つひとつの形態素に分割し、名詞や助詞といった品詞に分類し、コンピュータが一つひとつの意味を認識できるようにします。 形態素解析には、専用の形態素解析エンジンが使われます。 フェーズ2:構文解析 形態素解析の次は、文の構造を理解するための構文解析が行われます。 構文解析では、分割した形態素同士がどのような関係になっているかを解析し、構文としてつなげていきます。 例えば、上記の例では「私は」「犬が」といったように文節(日本語の言語単位の一つ。文の構成要素で、文を実際の言葉として不自然にならない程度に区切ったとき得られる最小のひとまとまりのもの)にまとめることはできますが、「は犬」「が好き」でまとめることはできません。構文解析を行うことで、文を構成する形態素がそれぞれどのような関係なのかを解析していきます。 フェーズ3:意味解析 構文解析の次は、意味解析が行われます。 これは名前の通り、解析した構文がどのような意味を持つかをコンピュータが判断するために行われます。コーパスを使って学習するなどしてさまざまな意味を学習しているAIが、解析した構文を参照し、どのような意味になっているかを解析します。文が曖昧さを持っていて解釈の可能性が複数ある場合、どの解釈が妥当かの判断もここで行われます。 フェーズ4:文脈解析 最後に、文脈解析が行われます。 文脈解析では、複数の文を解析し、その文脈ではどのような意味を持つのかを判断します。自然言語は同じ単語でも文脈によって意味が変わることがあるため、ここではそうした意味の変化をAIが認識します。 自然言語処理の活用事例​ AIによる自然言語処理を活用することで、我々の生活を便利にするさまざまなサービスが登場しており、特に近年はLLMによってテキスト生成を大きく超えた活用法が実現しています。 金融機関で目指す「AI営業」の基盤にLLM 三菱UFJフィナンシャル・グループは生成AIの導入に向けた2027年3月期までの中期計画の中で、生成AIが提案書作成や、電話や店頭で顧客対応する「AI営業」なども視野に入れています。それを実現するため、AIベンダーなどと連携して、生成AIの基盤となるLLMも開発するとしています。提案書の作成は、顧客との会話内容などを含めた記録を詳しくとってAIに読み込ませることで実現を狙っています。AI営業は、店頭で生成AIを搭載した機械が応対したり電話で生成AIが営業したりする方法を計画しています。 出典:日本経済新聞「 三菱UFJ、「AIで営業」視野に 3年で500億円投資 」 セキュリティー運用支援を生成AIがアドバイス NTTコミュニケーションズは、NTT独自のLLM「tsuzumi」などを活用したセキュリティー運用支援アプリ「AI Advisor」を2025年1月から提供すると発表しました。自社のIT環境などの構成情報やNTTが蓄積してきたセキュリティー運用ノウハウを学習させることで、顧客企業の環境に基づいたリスク評価や、会社規定に合わせた周知文案やレポート作成も支援できるとしています。さらに、企業のセキュリティー運用者は生成AIにサイバー攻撃時の復旧対応の方法などを問い合わせられることなども通して、経験の少ない運用者の負担を減らすことを見込んでいます。 出典:NTTコミュニケーションズ「 生成AIを活用したセキュリティ運用支援ソリューション「AI Advisor」を開発 」 熟練技術者のノウハウで学習、トラブル対処法を出力 TOPPANホールディングスは工場で技能伝承に使う生成AIを、仏ミストラルAIや米グーグルなどのLLMを基に開発しました。熟練技術者が生産設備の稼働データから想定する問題点など設備保全ノウハウのデータベースをAIに学習させ、生産現場でのトラブルの内容を入力すると対処法を出力するAIです。例えば「包装材フィルムの印刷装置で異音がする」と入力すると「温度が200度超に上がっているのでは」「ネジが緩んでいないか」などと返します。包装工場など6工場にすでに導入しており、生成AIはベテラン技術者と遜色ない対応能力を発揮したとしています。さらに、設備トラブル対応の迅速化や担当外の設備保全ノウハウ共有により、導入済み6工場合計で年間約750時間の事務作業が削減できメンテナンスによる停止時間も短縮できています。 出典:日本経済新聞「 TOPPAN、生成AIに熟練技術者の知見 故障対応素早く 」 自動運転システムの開発にもLLMを活用 自動運転システムの開発にもLLMが活用されています。AIユニコーンの英ウェイブ社は、LLMを使って運転判断の理由を自然言語でリアルタイムに説明し、利用者の信頼を高めるこれらのシステムを開発しています。実社会での精度はまだ不明ですが、自然言語を使って運転判断の理由を説明し、自動運転システムの透明性向上と説明可能なAIを追究し、規制面での自動運転車の導入の壁になっているアルゴリズムの意思決定の「ブラックボックス」問題に対処することを目的としています。 また米ウェイモ社は、周囲の車や歩行者などの動きを予測するプロセス「軌道予測」を向上させるために、言語モデルの活用を研究しており、2023年にはクルマや歩行者など周囲の複数のエージェントの動きを同時に予測する方法を示しています。 CBインサイツ「 生成AI、自動運転車の開発加速 仮想空間で公道訓練 」 ブランド人格を反映した対話テキスト自動生成 大広様とLaboro.AIは、近年注目を集める生成AI「ChatGPT」をカスタマイズし、ブランドにふさわしい対話を自動生成する独自のテキスト自動生成エンジン「Brand Dialogue AI(ブランド ダイアログ エーアイ)」のプロトタイプの開発に取り組みました。企業ブランド、商品ブランドに立脚したオリジナルなブランド思想を維持しつつ、顧客ごとに最適化されたOne to Oneコミュニケーションを展開する必要があることが背景にあります。 開発は、OpenAI社のChatGPT(GPT 3.5 turbo API)にブランドコミュニケーションの起点となるブランド人格を反映してオリジナルの言語生成AIとして構築、さらにユーザーおよび対話内容に応じて瞬時にプロンプトを入れ替える「ダイナミックプロンプト」を活用し、各企業が保有するパーソナルデータや商品データ、コンテンツデータを対話に反映しました。ブランドらしさを体現する生成AIが、各顧客とブランド思想に沿ったOne to Oneでの対話を可能にする仕組みと位置付けられます。 ブランド・コンセプトやブランド・ストーリーなど、ブランド思想を維持したコミュニケーションを実現することから、多数の顧客ごとにパーソナライズしながらも一貫したブランド体験を提供する、新たなブランディングツールとしての活用が期待されます。 出典:Laboro.AI「 ブランド人格を反映した対話テキスト自動生成 」 自然言語処理の未来と課題 自然言語処理には多くの可能性があると考えられている一方、課題も残ります。自然言語処理の将来性と課題について、主な議論の対象となっているのは以下の通りです。 あらゆるコミュニケーションがAIありきで行われる将来も 生成AIによる自然言語処理能力は、すでに人間のコミュニケーション能力のそれと違わないレベルに達しています。前述の通り、自然言語処理を扱う現状のAIは、入出力は自然言語、処理は人工言語ですが、将来的には自然言語だけで入出力も処理も実行するAIが登場し、より高度なタスクをこなせるようになるかもしれません。入出力と処理の時間がもっと短縮されれば、人間による同時通訳を超える翻訳が実現し、使用言語が異なる人同士のコミュニケーションにおける言語の壁がほとんどなくなる未来も想像できます。 また、立場やその時々の微妙なコミュニケーションのニュアンスをAIが把握し、人間の発言やテキスト作成をリアルタイムで修正しながら発信するような仕組みが成立することもあり得ます。コミュニケーションが先天的に不得手な人でも、AIの力を借りることで、より社会的な生活を営めるようになるかもしれません。 ブラックボックス化されている生成AIの自然言語処理 一方、AIによる自然言語処理の代表的な課題はブラックボックス化です。処理の過程を明確に説明しきれないことがあり、特に例えば倫理的に問題のある出力がなされたときに「なぜそうなたのか」が不明であることは、問題を大きくします。また、倫理的でなくても単に事実と異なっているなど問題のある出力はハルシネーションと呼ばれ、その正誤の確認をするのにさまざまなコストがかかり、初めから人間がすれば良かったとなることも、まだまだあります。 つまり、コミュニケーションにおいてAIは便利さゆえに普及して欠かせなくなる一方、ハルシネーションなどの問題が起きたときの責任は、法的判断としては別に、実態としては使用者が中心になるということです。AIの開発者に責任を求めることももちろん考えられますが、自然言語処理を活用したAIが直面しやすいリアルタイムのコミュニケーションで問題が起きたときは、開発者に問い合わせる時間はもちろんなく、やはり使用者が当座の対応することになります。自然言語処理を活用したAIに限らず、AIを利用する際には、どれだけ便利になっても、ユーザーの管理能力や責任をはるかに超えるスケールでの運用には相応のリスクが伴うことを理解し、対策を立てておきましょう。 自然言語処理との付き合いはもう前提 以上のように、自然言語処理は私たちの生活や仕事の中にかなり入ってきています。「自然言語処理による出力の精度はまだまだ高くないので、なるべく使わないようにしよう」ではなく、精度に注意しつつどううまく付き合っていくかを探り続けるのが、生活や仕事での変化に対応していくのに求められる態度でしょう。 Laboro.AIでは自然言語処理に関して多くのソリューション提供だけでなく、独自の開発でも複数の実績があります。ぜひお気軽にご相談ください。 The post 自然言語処理:AIで言葉を活用してビジネスを変える仕組みを解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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配送ルート最適化×AIで効率化。新しい物流の姿を実現するには 2024.12.23 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田崇 概 要 物流業界では、「2024年問題」の到来やそれに伴うサービスの在り方によって配送ルートの最適化の重要性が増し続けています。配送ルートを低コストで策定できることが、業務の効率化や業界内での競争力強化が進み、ひいては新しい価値の創出にもつながる可能性があります。本コラムでは、配送ルート最適化の基本や求められる背景、そこでのAI活用の可能性を解説します。 目 次 ・ 配送ルート最適化とは ・ 配送ルート最適化が必要な理由  ・ 労働人口の減少見込み  ・ 働き方改革の推進 ・ 配送ルート最適化がもたらすメリット  ・ 配送効率の向上(燃料費削減、移動時間短縮)  ・ ドライバーの負担軽減(労働時間の適正化)  ・ CO2排出削減による環境配慮  ・ 顧客満足度向上(納期遵守率アップ、サービス品質向上) ・ 配送ルート最適化の具体的な方法  ・ 「スケジューリング最適化」のためのAI活用 ・ 配送ルート最適化の手順  ・ 1) データ活用による効率化  ・ 2) リアルタイム最適化  ・ 3) 配送エリアの分割と負荷分散  ・ 4) 配車計画の改善 ・ 配送ルート最適化を実現するサービス  ・ LYNA CLOUD  ・ GuRutto  ・ 輸配送管理システム(TMS)ULTRAFIX ・ 配送ルート最適化における課題  ・ 仕事の分配に公平性を持たせる  ・ 再配達の問題を考慮しなければならない ・ 配送ルート最適化を成功させるためのポイント  ・ より大規模な物流DXにも注目する  ・ 積載率を改善する  ・ 「配送ルート最適化の実現」にこだわらない ・ 配送ルート最適化を始めるためのステップ  ・ ステップ1:現状課題の把握  ・ ステップ2:目標設定  ・ ステップ3:システム導入形態の検討  ・ ステップ4:PDCAサイクルの実践と全社活用の検討 ・ まとめ 配送ルート最適化とは 配送ルート最適化とは、その名の通り配送車の配送ルートを見直し、より効率良く配送ができるようにするための荷物を運べるようにするためのタスクのことです。 ECの進展などに伴い、物流業界は急激な荷物量の増加に対応し続けています。従来と比べて、ドライバーの数に対して荷物量が増えているため、繰り返される運賃の値上げ、配送所要日数の増加、お届け可能時間帯の短縮、業界他社同士での共同配送といった対応が続けられています。 そこで重要性が増しているのが、配送ルート最適化です。道路の混雑状況や配送する荷物の住所などの条件に合わせ、最適化された配送ルート立案最適化のためのシステムを構築あるいは導入し、走行距離・時間などを考慮した最適なルートを出力してドライバーに共有します。 配送ルート最適化は、走行距離・時間だけでなく刻々と変わる道路状況など複雑な要因も考慮しないと、ビジネスを好転させるほどの成果結果は出せない得られないため、人間のが計算では追いつけません。そこで、コンピュータだけでなくAIを活用したシステムを用いることによる手が打たれ始めてが当たり前となっています。 配送ルート最適化が必要な理由 配送ルート最適化が必要とされている背景を、もう少し詳しく見ていきましょう。 労働人口の減少見込み 配送ルート最適化は、人海戦術に頼ることなく多くの荷物をさばけるようにするためのソリューションともいえます。 従来であれば、荷物の量が増えたら新たにトラックやドライバーを確保し、量に対して量で対処するという方法をとるしかほとんどありませんでした。しかし近年は少子高齢化に伴う、深刻な労働人口の不足が進行しつつあります。 また、働き手の不足は物流業界だけにとどまりません。あらゆる業界で人材不足が深刻化しつつあるため、人手の確保・育成に伴うコストは年々高まっているのが現状です。 物流業界は他の業界に比べ、肉体労働や長時間労働が慢性的に発生しているイメージから、人手の確保に特有の難しさがあるという問題も抱えています。そこで、配送ルート最適化が有用となり得るのです。 人海戦術に頼らず、既存のリソースを効率良く配置できるようになる配送ルート最適化の手法を採用することで、人手不足という問題の低減またはカバーを狙えます。 働き方改革の推進 働き方改革は、物流業界でも強く求められてきました。従来はドライバーの長時間労働によって配送能力が支えられてきたという背景があります。 しかし、2024年にドライバーの長時間労働が大幅に制限されたことで、従来の働き方では配送ノルマを達成することが難しくなったことなどの問題が現実のものになりました。これがいわゆる物流業界の「2024年問題」です。 働くことのできる人が減っているだけでなく、働くことのできる時間も少なくなっている以上、配送ルート最適化による効率的な配送ルートの開拓は、欠かせない取り組みになったといえるでしょう。 また、労働人口の減少や働き方改革による労働時間そのものの減少は、今後も増える見込みのない不可逆な変化であると考えられます。遅かれ早かれこれらの問題に対処することが必要であるため、業界各社は対応を始めています。 配送ルート最適化がもたらすメリット 配送ルート最適化によって、物流事業者はどのようなメリットを得ることができるのでしょうか。 実際のところ、配送ルート最適化は現場に多くの利点をもたらしてくれる、魅力的な取り組みです。メリットに対しての理解を深め、積極的に推進すべきでしょう。 配送効率の向上(燃料費削減、走行距離・時間短縮) 配送ルート最適化によって、配送効率が高まることはさまざまなメリットをもたらします。例えば、トラックの燃料費の低減です。 物流ビジネスを営む上で、燃料費は当然にかかるコストです。ガソリン価格は高い水準で安定しており、産油国ではない我が国は常に、国際情勢による原油価格高騰のリスクにさらされていて、いつ起きてもおかしくなく、いつまで続くかも分からないリスクとして捉えておく必要があります。このリスクを低減させる方法の一つとして、走行距離・燃料費をなるべく減らすことが挙げられます。 配送ルート最適化は、配送ルートから無駄を排除することにより、燃料消費の無駄を排除する上で役に立ちます。長期的に見れば、配送ルート最適化のためのソリューションの導入コストを、燃料費削減によって埋め合わせることもできるかもしれません。 ドライバーの負担軽減(労働時間の適正化) 配送ルート最適化によるルート策定時間と移動時間の削減は、ドライバーの負担を低減する上で効果的です。ドライバーの拘束時間をできる限り少なくすることは、ドライバーの身体的な負担を減らす上でも重要です。拘束時間や肉体労働の負担が大きいという業界のイメージを刷新できるかもしれません。 長時間労働を減らすだけでなく、「人間の計算では手に負えない最適なルート探索をシステムが短時間で出してくれる」と実感できれば、効率の良い仕事をこなせているという満足感も得られ、心身ともに充実した労働ができることにもつながるかもしれません。ひいては、難しくなりつつある人手の確保も進めやすくなるでしょう。 CO2排出削減による環境配慮 物流業界が近年強く求められている取り組みの一つに、温室効果ガスの排出抑制が挙げられます。化石燃料を使用するトラックがなければ業務が成立しない以上、ある程度の排出は仕方がありませんが、それでも過剰な排出を抑制する手段はいくらか見られるようになってきました。 配送ルート最適化により、移動時間を最小限に抑えられるようになれば、それだけガソリンの使用を抑え、CO2の排出量が少なくなります。 事業上CO2排出をする企業が、その抑制に取り組むのは、SDGsなどを持ち出すまでもなく、もはや当たり前のこととなりました。取り組むことで評価が高まるを受けることよりも、取り組まないと評判が下がるというリスクの方が大きくなってきたかもしれません。 配送ルート最適化は、業務効率化だけでなく、ブランディングにも影響を与える取り組みなのです。 顧客満足度向上(納期遵守率アップ、サービス品質向上) 顧客満足度の向上においても、配送ルートの最適化は有効です。荷物が届くまでの時間がより短くなり、配達遅延のリスクも小さくなるでしょう。 また、効率的な配送ルートの開拓により、慌てて荷物を配送することで生じるリスクを回避することにもつながります。荷物の扱いが雑になり、荷物の破損・汚損が発生する問題や、交通事故、配送時の接客トラブルが少なくなることも期待できるでしょう。 配送ルート最適化の基本具体的な方法と手順 以上のように、配送ルート最適化は物流業界にとって魅力的なメリットを多くもたらしてくれます。その基本具体的な方法や手順は以下の通りです。 「スケジューリング最適化」のためのAI活用 そもそも配送ルート最適化は「スケジューリング最適化」の一つとして位置付けられます。スケジューリングとは、一言で言えば、「定められた期限までにより高い成果を得るため、その計画を構成する人員や機械、予算などの資源をそれぞれの制約条件を踏まえて最適な配分を考えること」です。スケジューリングを含む、こうした複雑な条件の組合せを考えるタスクは「最適化問題」と呼ばれ、世の中の多くの領域で存在しています。 そのうちAIを活用した「スケジューリング最適化AI」には、考えられる諸条件の組合せをどう探索させるかのアプローチがさまざま存在し、それぞれのビジネス環境や課題の特性に応じた最適な方法を選ぶことが鍵になります。ここではAIを活用した代表的な四つのアプローチを取り上げます。 1)ルールベース 人間が事前に定めたロジックに基づいて計画を出力させる手法であり、比較的シンプルな問題で、かつ説明性(提案するスケジューリングに至った論理が説明できること)が求められるような場合での利用が向いています。 2)数理最適化 より良い計画をその都度、しらみ潰し的に探索して出力させる手法で、ルールベースよりも複雑性への対応力がやや高い手法です。一方、用いるデータ量に応じて計算処理時間と負荷がかかる特徴があるため、制約条件がある程度ありながらもロジックが組めるという、中程度の複雑性を持つ問題への利用が向いています。 3)メタヒューリスティクス メタヒューリスティクスは、特定の問題に依拠せず、幅広い分野に適用できる最適化・AI手法です。都度計画を探索するものの、現実的な時間内で質の良い計画を探索・出力させることができることに特徴があります。 4)強化学習 「うまい計画策定の方法」を自律的に身に付けたAIに、AIが考える最適な計画を出力させるアプローチです。複雑な問題への対応力が非常に高く、計算処理時間も短く済む点にメリットがあります。ただし、シミュレータなどを含めた開発期間に時間がかかる上、説明性が低い特徴があります。そのため、中長期的な期間で解決が必要な複雑性の高い問題、かつ説明性がそれほど求められないケースでの利用が向いています。 なおスケジューリング最適化については、こちらのコラムで詳しく解説しています。 スケジューリング最適化AI、高度化の鍵は「戦略」にあり。導入事例も解説 配送ルート最適化の手順 1) データ活用による効率化 手順として最初にしなければならないのが、従来の業務からデータを収集・分析することです。荷物の特徴、届け先の住所や受け取り可能時間、配送車の特徴、ドライバーの労働可能時間などを収集・整理し、システムへの入力ができるようにします。 2) リアルタイム最適化 リアルタイム最適化は、配送中の状況に応じた、最適なルートの探索を行うものです。例えば交通事故などにより道路の混雑が確認できた場合、渋滞に巻き込まれることなく配送を遂行するためのルート探索をその場で実行します。 常に配送ルートが最新の状態にアップデートされ、予期せぬアクシデントに伴う悪影響を最小限に抑えられる仕組みです。 3) 配送エリアの分割と負荷分散 各配送車・ドライバーが担当する配送エリアも、配送効率を最も高められるように、配送ルート最適化で定義します。住所に基づいた従来の画一的なエリア分割ではなく、より柔軟な配送効率重視の分割も視野に入れています。エリア分割という作業の効率化ではなく、あくまでドライバーの負荷を最適に分散することを目的にすべきです。 4) 配車計画の改善 配送ルート最適化というと、ルートの最適化が中心となるように思えますが、目的は配送に関わる諸コストを低減させることであるため、配車計画も対象になります。ごく簡単な例を挙げると、単に積載可能量が多めの配送車を使えば、1回で多くの配送ができて効率的に見えるかもしれませんが(あまり考えなくてよいという面では思考のコストはかからないともいえますが)、さまざまなデータで学習させた配送ルート最適化システムならば、小さな配送車で複数回にわたって配送した方が実は全体の配送コストが安いことを見いだせるかもしれません。 配送ルート最適化を実現するサービス 手軽に利用でき得るSaaS型の配送ルート最適化のサービスには、現在以下のような例があります。前述の通り、AIを活用したシステムが珍しくありません。 LYNACLOUD 配送計画をAIによって自動で策定できる配送ルート最適化ツールです。クラウドサービスのため導入に伴うコストやセットアップ負担が小さく、気軽に利用を開始できます。知識・経験の浅い社員でもより良い配車計画を策定でき、業務の効率化が期待できるでしょう。 参考:LYNACLOUD「 LYNA 自動配車クラウド 」 GuRutto GuRuttoは地図上の拠点を一筆書きで巡回して効率的なルートを策定できるツールです。行き先と各種条件を設定すれば、あとは自動でルートが設定されます。独自の「効率化エンジン」を活用し、効率的な配送計画を短時間で実現できるサービスです。 参考:GuRutto「 GuRutto 」 輸配送管理システム(TMS)ULTRAFIX 配送最適化に向けた運輸管理や輸配送進捗管理などの機能がそろっているサービスです。独自のアルゴリズムによる配送ルート最適化や、ドライバーの現在地をリアルタイムで可視化し、質の高い管理を実現できます。積載率の向上や配送車数・走行距離の最小化を図るAI機能の追加もしている事例も出てきています。 参考:NECソリューションイノベータ「 輸配送管理システム(TMS)ULTRAFIX 」 配送ルート最適化における課題 配送ルートの最適化は、積極的に推進すべき施策である一方、実施に際しては課題も残ります。 仕事の分配に公平性を持たせる 配送ルート最適化が全体としてはうまくいっているように見えても、ドライバーごとの仕事の配分に偏りがある場合、多くの配分を担っているドライバーのエンゲージメントが下がることがあります。優れた配送ルート最適化を実践できたとしても、それを担う人が不満に思っていたら、最悪離職にもつながる原因となり、元も子も無くなってしまいます。効率化は大事ですが、それによってやりがいを持って働けているかどうかも注視しましょう。 再配達の問題を考慮しなければならない 配送ルートを最適化して、最短ルートで荷物を届けられるプランを組み立てた場合でも、特に宅配では再配達の問題がなくなるわけではありません。再配達が発生すると、事前に組み立てた配送計画通りに荷物の受け渡しが進まず、将来の配送リソースを逼迫することがあります。 再配達の問題を解消するために既に、宅配ボックスを含めた置き配や、宅配便ロッカーなどのサービスが導入されていますが、持ち去りや、宅配ボックスが埋まっているために再配達の必要が出てくることもあり、問題を完璧に解決できているわけではなく、多かれ少なかれリスクがあることは折り込んでおくべきです。 配送ルート最適化を成功させるためのポイント 配送ルート最適化を成功に導くためには、以下の点を踏まえて実施しましょう。 より大規模な物流DXにも注目する 配送ルートの最適化だけでは、単なる業務効率化に終始してしまい、本来的に目指すべきビジネス満足のいく業務効率化成果に至らないが実現できないこともあります。場合によっては配送業務以外の領域で、問題を抱えている会社もあるでしょう。 その場合、視野を広げて配送ルート最適化以外のDXも合わせて検討することが大切です。そのすべてをうまく連携させれば、全社的なビジネスの進化やイノベーションも視野に入れることができ、将来にわたっての成長につなげることもできます。 積載率を改善する 少し先述もしましたが、配送車の積載率も配送ルート最適化の一部と捉えるべきでしょう。より効率的に荷物を積載、単純には可能な限り多くの荷物を積載すれば、荷物を積み直す回数が減り、走行距離・時間の短縮が見込めます。それにより、ドライバーだけでなく他の従業員の残業時間を減らせることも狙えます。 「配送ルート最適化の実現」にこだわらない 課題を設定する上では、たとえ配送ルート最適化ありきで議論をが始めたとしても、それをいったん脇に置いておいて、本当の問題を見極めて、それを解決する方法を検討することが重要です。例えば、ある特殊な製品を配送する場合、自社よりも得意な事業者に外注したり、その製品をデジタル化してそもそも運ばないようにしたりすることも、最適解となり得ます。そうした気づきや発想は自社ではなかなか見いだせないことがあるので、外部の識者に相談するのも有効です。 配送ルート最適化を始めるためのステップ 配送ルート最適化は、以下のステップを踏んで進められます。 ステップ1: 現状の問題の把握、課題設定 まず必要なのは、現状どのような課題を抱えているかの把握です。配送ルートが効率良く組めない理由はどこにあるのかを調べた上で、解決すべき課題を設定します。ここをうまくしないと、最終的に開発・運用するシステムが現場で役立たなくなる可能性が高まり、膨大なコストの無駄遣いになってしまいます。入念に行いましょう。 ステップ2: 目標設定 課題の設定ができたら、目標の設定に進みます。目標設定は、いわゆるKGIとして数値で示してできるだけ具体的にするのはもちろん、簡単すぎでも難しすぎでもないちょうどよい値にすべきです。その後、その目標に関係のある部署・担当者ごとの目標、つまりKPIを設定し、それぞれが具体的な目標を意識して業務に取り組めるようにします。また最適化のためのAIを導入した際のROIを見るためにも、正確な目標設定が重要です。 ステップ3: システム導入形態の検討 配送ルート最適化システムは、パッケージ型とオーダーメイド型に大別できます。パッケージ型は導入コストが比較的低いことが大きな利点ですが、自社特有の事情に対応できるとは限らず、導入効果がある程度にとどまることがあります。また、中長期的に利用したいと考えていても、ビジネス環境の変化に対応してくれる保証はありません。一言で言えば「安いが融通がききづらい」となります。 一方オーダーメイド型は、PoCなどを経た導入のコストが比較的安くありませんが、自社の事情に合わせた開発ができるので、導入効果が期待を下回るリスクが低いといえます。さらに、AIを活用したシステムであれば、導入後の業務で得られるデータでAIのを学習やチューニングを続けられ、精度の向上やビジネス環境の変化への対応もしやすいのです。 ステップ4: PDCAサイクルの実践と全社活用の検討 現場への導入を始めると同時に、PDCAサイクルを実践しましょう。継続的・連鎖的な改善を図っていくということですが、この面でも有利なのがAIを活用したオーダーメイド型のシステムです。ステップ3の通り、AIは継続的な学習による精度向上がしやすく、オーダーメイド型はパッケージ型と比べてカスタマイズによる改善がしやすいからです。 そうして現場での運用がうまくいったら、全社的に活用できるよう、システムの拡大や連携を検討しましょう。この面でも、カスタマイズができるオーダーメイド型の方が有利です。 まとめ 以上、配送ルート最適化の基本、導入に際して知っておきたい点を解説しました。 繰り返しになりますが、配送ルート最適化では現在、AI活用が有効です。さらにその中でも、自社のビジネス事情に合わせてカスタマイズした開発ができるオーダーメイド型であれば、継続的な精度向上やビジネス環境の変化への対応がしやすいだけでなく、配送ルート最適化を超えて全社的にビジネスを変革するシステムへの発展も見込めます。 オーダーメイド型AIを開発・導入するには、本当の問題を見つけて課題を設定する面から、自社だけではなかなか難しく、外部のAIベンダーに相談するのが有効です。配送ルート最適化はAIのタスクでいえば「組合せ最適化」であり、弊社Laboro.AIが得意としています。ぜひ一度ご相談ください。 組合せ最適化についてはこちらもご覧ください。 AIを活用した組合せ最適化、カギの一つは強化学習 強化学習 x 最適化 組合せ最適化ソリューション 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 配送ルート最適化×AIで効率化。新しい物流の姿を実現するには first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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企業がAI導入を迷ってしまう障壁とは。 AI活用の現場から。​ 2020.7.21公開 2024.12.20更新 株式会社Laboro.AI ソリューションデザイナ 上田知広 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 AI導入に対する企業の期待が高まる一方、“AI導入の壁”とも言える現実とのギャップが、その実現を難しくしていることが多くの調査で明らかになってきました。AI導入を検討する企業が実際にどのような点に課題を感じているのか、そしてそれらにどう向き合えばよいのか、多くのAI導入を支援してきた経験から、その実際を振り返ります。 目 次 ・ AI導入への期待と現実 ・ AI導入の際に検討すべき二つのアプローチ  ・ 既存パッケージ型AIやAIサービスの導入  ・ 自社にカスタマイズして開発 ・ AI導入時の検討課題の実際と、持つべき視点  ・ ①自社内でAIへの理解が不足している  ・ ②導入効果が得られるか不安である  ・ ③導入費用が高い ・ AI導入のステップ  ・ 構想  ・ PoC  ・ 実装  ・ 運用 ・ 各業界におけるAIの導入事例  ・ 製造業  ・ 食品メーカー  ・ 建設業 ・ まとめ AI導入への期待と現実 富士キメラ総研が2024年12月3日に発表したプレスリリースによれば、2024年の生成AIを含む国内AI市場は、前年比29.1%増の1兆4735億円規模にもなると予想されています。市場を牽引しているのはやはり近年の技術進化が著しい生成AIで、ChatGPTやGemini、Claude、Perplexityなどの主要なLLM(大規模言語モデル)サービスの業務利用はもちろん、新規サービスやソリューションの創出、さらには新たなイノベーション創出による一層の市場拡大が見込まれています。 そうした状況から同調査では、市場規模が2028年には2兆7780億円にまで成長していくと予測しており、わずか1年前の予測値が1兆円程度だったことを思うと、急速かつ爆発的なAIの進化・普及が進んでいることが分かります。 これら調査でAI導入の重要性が示される中、ロイターが国内企業250社を対象に2024年7月に実施した調査を通じて、約4分の1がAIを業務に導入している一方、40%以上がそうした最先端技術を活用する予定がないことを報じています。同じ国内企業であってもAIの受け入れ度合いに大きなばらつきがあることが見えてきているのです。その結果を支持するように、情報処理推進機構(IPA)がまとめた『DX白書2023』の調査によれば、日本企業のAI導入率は22.2%、PoC(Proof of Concept:概念実証・実証実験)を行っている企業を含めても31.3%足らずで、米国の57.2%という値に比べると大きな差があることが分かりました。ちなみに導入課題としては、「自社内でAIへの理解が不足している」「AI人材が不足している」を上げる企業が顕著に多いことが報告されています。 AIの著しい技術進歩を背景に企業からの期待が高まる一方で、「導入したいけど、導入できない」という多くの企業の現実が見えてきます。この”AI導入の壁“とでも言うべき難しさは、一体何が要因となって生まれてくるのでしょうか。 AI導入の際に検討すべき二つのアプローチ AIの導入に際しては、大きく分けて以下の二つの方法が考えられます。既存システムの流用と自社カスタマイズや開発では、どのような違いがあるのかをまずは確認しておきましょう。 既存パッケージ型AIやAIサービスの導入 AI導入を最もシンプルに進めていくための方法として、既存のAIサービスをそのまま導入する方法が挙げられます。 そもそも生成AIがここ数年で広く普及したのは、ChatGPTやMicrosoft Copilotなど、汎用性に優れたAIサービスが次々と登場したからで、それ以前のAI導入の大きな障壁として、AI開発のコストが大きいことがありました。しかし既成のパッケージ型のAIサービスの品質やコストパフォーマンスが飛躍的に改善したことにより、多くの企業で生成AIの導入が進んでいます。 既存のパッケージ型AIを導入する最大の利点は、運用に至るまでのハードルの低さが挙げられます。特にChatGPTのようなSaaSとして提供されている生成AIの場合、ソフトウエアのインストールなどの手続きがほぼ発生しません。 また、主要な生成AIサービスの多くが比較的安価に利用できる点も魅力です。クラウドサービスとして提供されている生成AIなら、月額数千円程度でAI導入の恩恵を受けられます。ChatGPTに至っては、基本機能を無料で利用できるため、金銭的なコストを全くかけずに始めることができ、使い勝手を確かめてから必要に応じて有料でアップグレードすることもできます。 一方、既存のパッケージ型AIをそのまま導入する場合のデメリットもあります。それは、そうした汎用的な機能をベースとしたAIと自社の課題との相性が良いとは限らず、機能や性能が期待を下回ってしまうことがあり得る点です。さらには、導入直後は良い精度であったとしても、ビジネス環境が変化してAI活用の方法も変えなければならなくなったとき、カスタマイズができないパッケージ型AIを使い続けることには限界があると考えておいた方がいいでしょう。 業界や自社特有の課題解決にパッケージ型AIの導入を検討している場合、AIの扱いに熟達した人材を確保し、適切に運用できるかどうかの検証をしっかり実施することが大切です。 また、ChatGPTのようなLLMに代表される既存のパッケージ型AIの一部は著作権や肖像権、さらにはセキュリティー上の問題を抱えていることがあります。AIがどのような情報を学習し、何を根拠にアウトプットしているかどうかは、少なからずブラックボックス化されたままであり、出力結果をそのまま世に出すことが大きなリスクにつながりかねません。加えて、パブリックなサーバーに接続されているAIサービスをそのまま使用すると、社外秘データが第三者に流出してしまうリスクもゼロではありません。 自社にカスタマイズして開発 自社の事業・業務に合ったAIを新たに開発することも有効なアプローチです。もちろん、既存のパッケージ型AIを適用するよりも、金銭的・時間的コストが基本的にはかかります。しかし、業務だけでなく事業、ひいては会社全体を成長させるという目的に立ち返れば、自社に合ったAIを開発することは長期的に見て賢い選択になり得ます。 なぜなら、AIは従来のITシステムのように一度開発・導入すれば終わりという代物ではなく、導入後に得られるデータでさらなる学習やチューニングを繰り返すことによってビジネスとの適合性が上がっていき、その結果ビジネス環境の変化にも対応でき得るからです。これを実現させるためには、AIだけでなくビジネスにまで通暁した人材を社内で育成するか、そのような人材を外部に求めて一緒に開発を進めていく必要が出てきます。 AI導入時の 検討課題の実際 と、持つべき視点 前述の通り『DX白書2023』では、AI導入に当たっての課題も調査しています。理由として特に気になるものが次の三つの項目です。 ① 自社内でAIへの理解が不足している ② 導入効果が得られるか不安である ③ 導入費用が高い 当社にも多種多様な規模・業種のさまざまな部門の方からお問合せを頂きますが、最近の傾向としては、一昔前によくあった「何でもいいからAIを導入したい」といったAIへの過剰な期待は減り、AIを実用的なものにするためにどうすればよいかを、現実的に考えられているケースが増えていると感じます。 ですが、やはり導入前のコンサルティングフェーズでは、上記のような課題感をお持ちになり、ご相談いただくのが通常です。とはいえ、上の調査で検討課題として挙げられていた三つの項目は、あくまで表面的な部分を表した回答に過ぎません。そこで以下では、この三つの課題について、現場でのヒアリングを通して私たち自身が感じていることをお伝えし、これからAI導入を検討する方々のヒントにしていただければと思っています。 ① 自社内でにAIへについての理解が不足している ある意味当然かも知れませんが、この点は、特に最近AI導入の検討を開始された企業や、担当者に属人化する形でAIプロジェクトが行われている企業の方々から多く出てくるものです。一方、早い段階からAI導入に取組まれてきた企業では、例えば「データが不足している」「PoCを行ってもうまくいかず原因が不明」など、より具体的な課題に直面されています。 内容に違いはありますが、導入経験の有無やレベル感によって、こうした理解不足はあって当然で、これ自体は大きな問題ではないと考えられます。ですが、知識と経験の不足よって起こり得る、より重要な問題があります。それは、AIへの理解が不足しているため、AIを用いる場面イメージが想像できず、結果として、 社内メンバー間で実際に利用する際のイメージがバラバラになってしまう ということです。 AIを導入して何をしたいのか、どのようなデータを活用するのか、現場のどの業務を改善し、どのように評価し成果に結び付けるのかといったイメージが、当初段階で擦り合っていないと、結果、何を開発すればいいかの話もまとまらず、仮に開発できたとしても何の役に立つAIなのかよく分からないものが出来上がってしまうということも少なくありません。 AI導入で持つべき視点 こうした事態を回避するためには、AI導入後のビジネス・業務の姿を「これでもか」というほど具体的に描いて、社内関係者と早期に共有・軌道修正していくことが重要になります。場合によっては、 AI専門ベンダーの力を借りることも選択肢の一つ です。AIは様々な面で不確実性が高い技術ではあるものの、たとえ最初は外れていたとしてもゴールイメージを具体的にすることで、ビジネス上の意義も技術的な実現可能性も、さらにはさまざまな課題もクリアに見えてくるものです。 ② 導入効果が得られるか不安である 過去にAI導入の経験を持っていても、従来とは別のテーマやデータ、技術などを用いたチャレンジの場合には、この点は変わらず課題となります。つまり、類似の取組みで成功パターンを見出だしていなければ、必ず起こり得る課題だといえます。 この背景には、AIの不確実性があります。これまでのIT系のツールとは違い、AI開発は予め成功が確約できるものではなく、データやパラメーター、モデルそのものなど、目指す精度や成果に向け、試行錯誤しながら調整&開発を進めていくプロセスを辿るのが普通です。実現可能性を一定程度で見極めることは可能なものの、同時にどこまでいっても「やってみないと分からない世界」であることを、AI導入においては前提として認識しておく必要があります。 AI導入で持つべき視点 「導入効果が得られるか不安」という点を解消するためには、とにかく小さいPoC(実証実験)からでもチャレンジし、 AIで実現できてビジネスに成果がありそうな点を少しずつ見つけ出していくという進め方が必要 になります。 また、AIをはじめとする新技術の導入効果としては、よくROI(Return on Investment:投資収益率)が言われますが、そもそも「AIで実現すること」が明確になっていないと、何をリターンとするかも当然ながら事前に算出することはできません。導入を担当する方にとっては、社内で「ROIはどれくらいなのか?」というツッコミをうけるポイントになることも多いようですので、 AIの評価と精度、そしてビジネスをロジックでつなげるための工夫が必要 になってきます。①でお伝えした、早期からゴールイメージを具体化して軌道修正を続ける取組みは、ここにも効いてきます。 ③ 導入費用が高い 費用に関する心配は、多くの企業で認識されている点です。最近では、AIの研究開発(R&D)的な性質への理解が浸透してきたためか、金額に対する過剰反応は少なくなってきているものの、やはりまだ驚かれることも少なくありません。 たしかに手軽な価格で手に入る利用可能なパッケージ型AIやAIサービスツールも出てきており、これらと比べると個別でのAI開発・AI導入は高額に見えることものも少なくありません。しかし、単純に費用のみで比較すると判断を誤る恐れがあります。なぜなら、 価格は、テーマのレベル感の裏返し だからです。 AI導入で持つべき視点 そもそも、当社の様なAIベンダーは、得意とする領域に応じていくつかに分類することができます。大きくは以下の四つです。 ① アルゴリズムの開発から行うベンダー ② 一定程度に確立されたアルゴリズムの活用・実装をベースにカスタムでAI開発を行うベンダー (↑当社が主に行うところ) ③ 一部個別開発が必要なソリューション開発行うベンダー ④ SaaS型ツールやパッケージAI製品の開発・販売を行うベンダー この場ではわかりやすさを優先して誤解を恐れずお伝えすると、上に行くほど個別開発、下に行くほどパッケージ型やプロダクト販売の色が強くなります。「ライバル企業との差別化のために自社独自のAIを導入したい!」などの場合は、①や②の企業とタッグを組み、目的にあわせたAIの開発を行うのが有効です。この場合、技術難易度は高く、開発期間も長くなり、そそのため開発費用も高くなります。一方で、「他社と同じものでいいから早急に、簡単に使えるものを導入したい!」ということであれば、④のパッケージ型AIが安く導入することができますが、当然ながらその用途の範囲は、一般的かつ限定的なものになります。 これらを一括りに「AI」として同じ土俵で比べてしまうと、用途も価格も正当に比べることが難しくなってしまいます。AIを導入して何を、どの程度のレベル感で達成したいかということを明確にすることが先決だといえます。 AI導入のステップ なお、AI導入を検討している場合、その進め方は以下の四つの段階を踏まえるといいでしょう。どのような手続きが必要になるのか、あらかじめ確認しておきましょう。 構想 ビジネス課題に対してAIが十分な解決策となるのかを検討し、その解決に向けてどのようなAIモデルを用いれば良いか、あるいはどのような設計でAIを開発すれば良いかを構想するフェーズです。 AIは万能な技術では決してないため、開発しようとしているAIが本当に課題解決につながるのか、課題のうちどの領域をAIによって解決するのか、導入によって自社にメリットをもたらすのか、その構想は実現可能なのかなど、ビジネスとAIの双方の観点からの検討を行います。 また「そもそも本当のビジネス課題は何なのか」という視点に立ち返って、業務上のボトルネックを根本から洗い出すことが必要になるケースも少なくありません。 PoC PoC(Proof of Concept)は「コンセプト(構想)の証明」という意味で、構想フェーズで想定したAIが技術的に実現可能かどうかを実際に検証します。 AIの仮モデルとなるモックアップを開発し、機械学習やディープラーニングに必要なデータの量と質が確保できているか、期待した精度は出せるか、処理スピードは現場運用に合っているか、出力に誤りがあった場合のオペレーションは上手く回るかなどの要素を検証します。 実装 PoCフェーズでその実現性が確認できたら、モックアップの開発内容をベースに最終的なシステムとして完成させる実装フェーズへ移行します。 本番環境に必要な要件を定義し、開発を進め、AIのモデルを最終化していきます。完成後にはテストを行い、問題なく動作するかどうかの検証はもちろんのこと、ビジネス上の実務オペレーションも踏まえた稼働につなげます。 運用 実装後は、そのAIを適切に運用していくための運用フェーズに移行します。システムが安定して稼働するための保守に加え、構想フェーズで設定した目標達成状況の確認を都度行い、PDCAサイクルを回していきます。 各業界におけるAIの導入事例 AI導入の事例は、すでに多数の業界・企業で確認できます。ここでは当社事例を元に、主なAI導入の事例を確認の上、自社でどのように活用していけばよいか、その方向性を探りましょう。 製造業 沖電気工業では、防衛装備品の製造装置の検査作業に画像分類AIを用いた外観検査を導入することで、従来よりも効率的、それでいて品質にも優れる検査プロセスを実現することに成功しています。 同社でかねてより問題とされてきたのが、この検査作業における人手の負担が改善されないことでした。防衛装備品の製造過程の一部である電子基盤のチップ配置において欠かせない設備である吸着ノズルは、定期的な洗浄と洗浄後の検査が欠かせません。このノズルの検査はこれまで目視確認であったものの、業務が経験と手間に依存する部分が多く、自動化が遅れていました。そこで今回導入されたのが、AIによる検査プロセスの自動化です。 導入したAI外観検査システムは、人間と同等、あるいはそれ以上の検査精度を獲得することに成功しています。また、運用を続けることで得られた見逃し、虚報データを使って改善を進めていくことにより、さらに優れたAIモデルの構築につながることが期待されます。 出典:株式会社Laboro.AI「 防衛装備品の製造におけるAIによる外観検査 」 食品メーカー 味の素では、同社が保有するレシピデータを組み合せ、栄養素の条件とユーザーのニーズを満たす献立を作成するAIエンジン「献立作成エンジン」を開発しました。 同社が注目したのは、料理を作る人にとって献立の検討が大きな負担になっている点です。栄養バランスやユーザーの好みを反映した献立を組み立てることは、毎日の作業として発生すると、料理の機会や栄養価の高い献立を実現する大きな障壁となってきました。 そこで開発したのが「献立作成エンジン」で、好みの食材や求める栄養素など、さまざまな条件を複合的に検討の上、1万を超えるレシピデータから最適な献立を作成・提案生成できるようになっています。 出典: 株式会社Laboro.AI「 ユーザーニーズを満たす「献立作成エンジン」 」 建設業 土木工事における施工計画の立案は、多くの制約条件を加味する必要があり、担当者の経験や事前のデータの充実度にその品質が大きく左右されます。プロジェクトごとに異なる条件で一つずつ検討が必要なこのプロセスは、人手で対応する場合には多大な負担が発生してきました。また、従来の数理最適化手法を用いたとしても、条件の組合せが爆発的に多くなると最適解を導き出すことが困難でもありました。 そこで新たに開発導入が進められたのが、プロジェクトごとの制約条件に応じて柔軟に施工計画を検討できる、強化学習ベースのAIサービスです。工期や地形(工事前地形、工事後地形)、使用可能な建機種などの条件を入力するだけでに基づいて、AIがコストや工期を検証の上などを含めた施工、計画を出力してくれるソリューションです。 これにより、立案作業の自動化による業務効率化はもちろん、それまでのマニュアル作業や数理最適化手法では変動要素が大きすぎて見つけることが困難だったコスト最適な計画の立案が可能となりました。 出典:株式会社Laboro.AI「 土木工事での施工計画の最適化 」 まとめ 今回は、AI導入において課題とされている3点について、実際の導入現場で活動するソリューションデザイナという立場からその実際を振り返りつつ、これからAIを導入する企業の方々が持つべき視点をお伝えしてきました。 ご紹介した3つの課題は、AI導入の成功事例や失敗事例が一般に共有され、また各企業で少しずつが導入経験を積み重ねられていくことで、ある程度は解消されていくと思われます。ですが、AI技術の日進月歩ぶりを考えると、一筋縄ではいかない状況がしばらくは続いていくはずです。 その時々のAI技術でできること・できないことを的確に理解した上で、導入する企業固有の課題に対し、どのような投資規模で、どのようなAIを開発し、現場で活用していくのかを描き、実践するためには、多種多調な知識やノウハウ、スキルが不可欠です。当社の ソリューションデザイナ は、まさにこうした知見を備え、 テクノロジーとビジネスをつなぐこと を実現する役割を担っています。 なお、AI導入によるメリット・デメリットを分かりやすく整理したコラム「 AI導入のメリット、コスト、気にすべきデメリット 」も公開しています。よろしければこちらもご覧ください。 コラム執筆者 ソリューションデザイナ 上田 知広 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大手インフラ企業にて、電力事業にかかわるシステム企画・導入やデータ分析などに従事。その後、大手総合系コンサルティング会社の戦略部門にて、SI・リース・コールセンターなど幅広い業種のクライアントに対し、新規事業・経営管理・営業戦略などの構想策定を支援。2020年、Laboro.AIへ参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 企業がAI導入を迷ってしまう障壁とは。 AI活用の現場から。​ first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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ニューラルネットワークの基本知識。仕組みや種類、活用事例 2023.9.19公開 2024.12.5更新 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田崇 概 要 ニューラルネットワークはディープラーニングの根本的なモデルであり、現在のAI・機械学習の基盤とも言えます。その仕組みや発生し得る問題と解決方法、種類など、基本を解説します。 目 次 ・ ニューラルネットワークとは  ・ 深層学習(ディープラーニング)とその他の機械学習の違い  ・ ニューラルネットワークの重要性  ・ 2024年ノーベル物理学賞の対象にも ・ ニューラルネットワークの仕組み  ・ 入力層、出力層、隠れ層の3種類で構成  ・ ニューラルネットワークの学習手法   ・ Dropout法   ・ 確率的勾配降下法   ・ 誤差逆伝播法 ・ ニューラルネットワークの種類  ・ ディープニューラルネットワーク(DNN)  ・ 畳み込みニューラルネットワーク(CNN)  ・ 再帰的ニューラルネットワーク(RNN)  ・ 敵対的生成ネットワーク(GAN)  ・ オートエンコーダ(自己符号化器) ・ 関連して知っておきたい「分類」と「回帰」  ・ 分類問題への適用  ・ 回帰問題への適用 ・ ニューラルネットワークの活用事例  ・ 自動運転  ・ 医療における診断・判定  ・ スマホの顔認証  ・ 音声認証ソフト ・ ニューラルネットワークの基礎を知って自分の仕事に生かす ニューラルネットワークとは ニューラルネットワーク(neural network)とは、人間の脳の中の構造を模した学習モデルのことです。人間の脳にはニューロンと呼ばれる神経細胞が何十億個も張りめぐらされていて、互いに結び付いて神経回路というネットワークを構成しています。人間が何かの情報を感知すると、ニューロンに電気信号が伝わり、ネットワーク内をどのように伝わっていくかによって、人間はパターンを認識しています。ニューラルネットワークはこのニューロンの特徴を再現しようとする手法です。 ニューラルネットワークはデータのルールやパターンを自動的に学習する機械学習の一つであり、ニューラルネットワークを多層にしたものがディープラーニングです。 深層学習(ディープラーニング)とその他の機械学習の違い 深層学習(ディープラーニング)とその他の機械学習の最大の違いは、AIの学習過程において人間がどれほど関与しているかどうかです。 AIが自律的な判断能力を獲得するためには、インプットするデータが含む特徴量を取得しなければなりません。ディープラーニング以外の機械学習の場合、例えば売上予測をする際に曜日や気温などの特徴量と呼ばれる条件を考慮に入れるのが合理的で、そうした特徴量のうちどれを使うかは人間が判断する必要があります。問題が複雑になれば、データサイエンティストやエンジニアといったエキスパートが手掛ける領域になります。 一方のディープラーニングでは、データから特徴量をAIが自発的に抽出します。そのためには、膨大なデータをインプットする必要があります。そのため学習成果が現れるまでには、機械学習よりも多くの時間などのコストを要する点に注意しなければなりません。しかし逆に、人間の手には負えないほど膨大な量のデータから特徴量を抽出できるということでもあり、大きな利点になっています。 ニューラルネットワークの重要性 ニューラルネットワークは、人間の神経細胞の仕組みから着想を得たネットワーク手法で、入力層、隠れ層、出力層という3種の層で構成されています。 データに対して重み付けを行うことで、自ら高度な意思決定ができるような基準を設けられるニューラルネットワークは、高度な問題解決において活躍する技術です。従来のアルゴリズムでは解決が難しい、あるいは多くの時間などのリソースを必要としていた課題に対しても、ニューラルネットワークの採用によって次々と解決が進んでいます。 事実、2010年ごろまでは教師あり学習を主体とした機械学習が一般的だったところ、ディープラーニングが高度な問題を解決することが相次ぎ、普及していき、大きなゲームチェンジャーとなりました。今ではニューラルネットワーク・ディープラーニングなしには、AI開発はあり得ないと言わしめるほどとなっています。 自動運転や製薬など、さまざまな業界でさまざまなタスクにニューラルネットワーク・ディープラーニングが活用されており、多くの人がその活用の在り方をつぶさに知ることはなくとも恩恵を受けています。 2024年ノーベル物理学賞の対象にも 2024年のノーベル物理学賞は、「人工ニューラルネットワークによる機械学習を可能にする基礎的発見と発明」の功績で、米国のプリンストン大学のジョン・ホップフィールド教授と、カナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン教授に授与されました。 ホップフィールド教授は、磁性の振る舞いを語るのに使われている物理学のモデルをヒントに、人間の神経回路を模倣した「人工ニューラルネットワーク」を使って、物理学の理論から画像やパターンなどのデータを保存し、再構成できる「連想記憶」と呼ばれる手法を開発しました。 ヒントン教授はこの手法を統計物理学の理論などを使って発展させ、学習した画像などの大量のデータを基に可能性の高さから未知のデータを導き出すモデル「ボルツマンマシン」を開発しました。学習していないパターンでも生成できるようになることから、現在の生成AIの原型とも言われます。 ボルツマンマシンは次第に多層化されていき、新たに未知のパターンを入力すると、学習したパターンのどれに近いかを高い精度で判断できるようになりました。ヒントン教授はこれを「ディープラーニング」名付けたのです。さらに、2006年にはニューラルネットワークの主要な構成要素となる手法である「オートエンコーダ」を提唱、2012年には画像認識の精度を競う競技会ILSVRC(ImageNet Large Scale Recognition Challenge)で圧倒的に勝利したシステムであるSuperVisionの開発を率いるなど、AIにおいて重要な役割を果たしてきました。 そうした成果がAIを進展させ、特に近年では生成AIが社会に大きな影響を与えています。 「物理学賞」の対象になったことには専門家からも驚きの声が上がっていますが、授賞理由としては以下が考えられます。 ・2人の成果で物理学が活用されている。 ・物理学の分野では、特定の性質を備えた新たな物質の開発など、幅広い分野で人工ニューラルネットワークが使われている。 出典:日本ディープラーニング協会監修『ディープラーニングG検定公式テキスト』第2版   :NHK「 ノーベル物理学賞にAIの中核「機械学習」の基礎に関わった2人 」   :日経サイエンス「 2024年ノーベル物理学賞:物理学からAIの基礎を築いた2氏に 」 ディープラーニングについてはこちらもご覧ください。 AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いとは ニューラルネットワークの仕組み 入力層、出力層、隠れ層の3種類で構成 ニューラルネットワークは、入力を受け取る部分である入力層、出力する部分である出力層、中間層(隠れ層とも呼ばれる、入力層と出力層の間にある層)の三つの層から構成されています。入力層にデータを入力して、データの指標で特徴量を入力し、出力層にニューロンを入力することで最終結果の算出が可能です。 入力層と出力層だけで構成されているモデルは単純パーセプトロンと呼ばれます。初めて開発されたパーセプトロンは、この隠れ層がない単純パーセプトロンでした。これには線形分離不可能な問題を解決できないという欠点がありました。しかしその後、入力層と出力層の間に隠れ層を追加し、ネットワーク全体の表現力が向上し、非線形分類など複雑な問題も解決できるようになりました。このモデルは多層パーセプトロンと呼ばれています。 Udemyメディア「 ニューラルネットワークとは?人工知能の基本を初心者向けに解説! 」 ニューラルネットワークの学習手法 Dropout法 Dropoutはニューラルネットワークの過学習を防ぐために提案された手法で、一定の確率でランダムにニューロンを無視して学習を進める方法の一種です。 過学習とは、訓練データの正答率が 徐々に上がっていった際、テストデータの誤差が 減少が止まり、また増加し始めてしまう状態を指します。ニューラルネットワークの構造が複雑化していくにつれて、ニューロンの重みは訓練データセットに最適化されていってしまいます。汎化作用が働かず、一つひとつのデータを暗記していくように、訓練データセットにしか使えない融通の効かないモデルとなってしまうのです。 ニューラルネットワークの過学習を防ぐ方法は四つあります。 ・訓練データセットを増やす ・モデルの複雑性を減らす ・Early Stopping(早期終了) ・モデルの複雑さにペナルティーを与える(正則化) Dropoutはこの正則化の一つです。正則化とは、モデルが複雑な形状になった場合にペナルティを設けることで、モデルをなるべくシンプルな形状に保つという方法の一つです。 出典:ダイヤモンドオンライン「 ディープラーニングを支える黒魔術「ドロップアウト」 」    DeepAge「 Dropout:ディープラーニングの火付け役、単純な方法で過学習を防ぐ 」  確率的勾配降下法 最急降下法の一種で、ランダムなデータ一つのみで勾配を求め、パラメータ更新をしていく作業をデータの数だけ行う方法です。最急降下法ではすべてのデータを毎回使用するため、全体ではなく局所的な最適解に陥ってしまう可能性がありますが、確率的勾配降下法では局所解に陥っても次のデータはランダムに選ばれるため、脱出が可能という利点があります。 出典:zero to one「 確率的勾配降下法 」 誤差逆伝播法 誤差逆伝播法(Back Propagation)は、多層パーセプトロンの学習に使われる学習アルゴリズムです。ある学習データが与えられたとき、多層パーセプトロンの出力が学習データと一致するように各層の間の重みを修正するという学習法です。多層パーセプトロンは誤差逆伝播法によって教師あり学習を行い、パターン識別や関数の近似などに用いられます。 出典:九州工業大学大学院生命体工学研究科人間知能システム工学専攻古川研究室「 誤差逆伝播法(BP:Backpropagation) 」 ニューラルネットワークの種類 ディープニューラルネットワーク(DNN) ディープニューラルネットワーク(Deep Neural Network、DNN)とは、ニューラルネットワークをディープラーニングに対応させて4層以上に層を深くしたもののことです。ディープラーニング登場以前は、隠れ層を2以上に増やして合計4層以上のネットワークにすると、精度が出なくなる問題がありました。 しかし2006年以降、ディープラーニングの手法が考えられてから、その問題が克服されました。さらに2010年ごろから、ビッグデータがより容易に扱えるようになったことや、GPU(Graphics Processing Unit、画像処理装置)などのコンピュータ性能の大幅な向上が重なったことがきっかけとなり、今では高度なDNNを比較的容易に実行できるようになりました。 出典:@IT「 ディープニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)とは? 」 畳み込みニューラルネットワーク(CNN) 畳み込みニューラルネットワーク(Convolution Neural Network、CNN)とは、AIが画像分析を行うための学習手法の一つで、一部が見えにくくなっているような画像でも解析することができます。畳み込み層とプーリング層という二つの層を含む構造を持つ、DNNの一つです。 分析する画像が入力層に読み込まれた後、このデータをくまなくスキャンし、データの特徴(勾配、凹凸など)を抽出するために使われるのがフィルタです。抽出された特徴データは畳み込み層に送られ、そこでさらに特徴の凝縮されたデータが作成されます。 畳み込み層で作成されたデータはプーリング層で集約します。例えば最大プーリングという集約方法をとる場合、各ユニット(領域)のピクセルを比較し、その中の最大値をそのユニットの特徴量とします。 出力では、プーリング層のユニットすべてを全結合し、計算結果を利用して、フィルタ、重み、バイアス(モデルとデータのズレ)を更新していきます。 出典:Udemyメディア「 畳み込みニューラルネットワークとは?手順も丁寧に解説 」 再帰的ニューラルネットワーク(RNN) 画像処理に強いCNNに対して、自然言語処理に使われることが多いのが再帰的ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network、RNN)で、こちらもDNNの一種です。「再帰的」とは一種の「ループ」で、例えば「ニワトリが卵を生む」「卵からニワトリが生まれる」という二つの現象が延々と繰り返される状態は、再帰的と呼ばれます。 プログラミングの世界では、実行中のコードがそのコードの中で再び呼び出される処理のことを意味します。これをニューラルネットワークに応用すると「前のネットワークの計算が今のネットワークの計算の元になり、繰り返しながら情報が増えていく」という再帰的なニューラルネットワークになります。 この特徴が自然言語処理に役立ちます。言葉では、前の文章が今の文章に影響を与え、文脈次第で意味が変わることが当たり前に起きます。文章の並び順やつながりが非常に重要な意味を持つため「前の意味を踏まえて今の意味を考える」というプロセスが非常に重要であり、RNNと相性が良いのです。 出典:ビジネス+IT「 再帰的ニューラルネットワークとは?自然言語処理に強いアルゴリズムの仕組み」 敵対的生成ネットワーク(GAN) 画像分野での深層生成モデルとして話題になった一つが、GAN(Generative Adversarial Network、敵対的生成ネットワーク)です。入力として潜在空間のランダムベクトルを受け取り、画像を生成して出力する「ジェネレータ」と、入力として受け取った画像が本物か(ジェネレータが生成した)偽物かを予測して出力する「ディスクリミネータ」と言う二つのネットワークから成ります。 ジェネレータはディスクリミネータが間違えるような偽物画像を作るように学習していき、ディスクリミネータは偽物をきちんと見抜けるように学習していきます。つまり、ジェネレータとディスクリミネータを競い合わせることで、本物と見分けのつかない新しい画像を作り出すことを狙ったものです。 日本ディープラーニング協会監修『ディープラーニングG検定公式テキスト』第2版   オートエンコーダ(自己符号化器) オートエンコーダ(自己符号化器、autoencoder)とは、ニューラルネットワークを利用した教師なし機械学習の手法の一つです。次元削減や特徴抽出を目的に登場しましたが、近年では生成モデルとしても用いられています。 オートエンコーダは、入力データと一致するデータを出力することを目的とする学習法です。オートエンコーダのネットワークは、入力したデータの次元数(ノード数)をいったん下げ、再び戻して出力するという構造になっています。 このため、入力から出力への単なるコピーは不可能です。オートエンコーダの学習過程では、入出力が一致するように各エッジの重みを調整していきます。この学習を通して、データの中から復元のために必要となる重要な情報だけを抽出し、それらから効率的に元のデータを生成するネットワークが形成されます。 こうしてオートエンコーダの前半部分は次元削減、特徴抽出の機能を持ち、エンコーダとも呼ばれます。後半部分は低次元の情報をソースとするデータ生成機能を持つようになり、デコーダとも呼ばれます。 出典:MathWorks「 オートエンコーダ(自己符号化器)とは 」 関連して知っておきたい「分類」と「回帰」 ニューラルネットワークはディープラーニングの根本的なモデルであり、そのディープラーニングは分類問題と回帰問題でもよく使われます。 分類問題への適用 分類問題には例えば、犬と猫の画像を推論することや、手書きの数字をどの数字に識別することなどがあります。言い換えれば、分布データをどこかで線引きして分類する問題であり、異常データと正常データを見分けることにも使えます。その際、データの分布が一次関数で境界を近似できるような簡単なものであればよいですが、データがバラバラに分布していて法則性を見つけるのが難しいことが少なくありません。そうした複雑な関数近似をしなければならない場合に活用されるのが、ディープラーニングなのです。 出典:ビジネス+IT「 ニューラルネットワークの基礎解説:仕組みや機械学習・ディープラーニングとの関係は 」 回帰問題への適用 回帰の主な目的は、連続する値の傾向を基に予測をすることです。例えば、企業が商品やサービスの広告費用の増額を検討する際に、「広告費を増やすことでどのくらいの売り上げを見込めるか」という売上予測をすることがあります。下の画像のように、例えばx軸に広告費、y軸に売り上げを取って、傾向となる一次関数を見いだすことです。 回帰分析は、結果となる数値と要因となる数値の関係を調べ、それぞれの関係を明らかにする統計的手法です。 このとき、要因となる数値(上の例の場合、広告費)を「説明変数」、結果となる数値(同、売り上げ)を「目的変数」と呼びます。さらに、説明変数が一つの場合を「単回帰分析」、複数の場合を「重回帰分析」と言います。説明変数の種類が少ない場合は手計算で傾向の関数を得られるかもしれません。しかし説明変数の数が増えていくと困難になるため、ここでもディープラーニングが活用されます。 出典:総務省統計局「 高等学校における「情報II」のためのデータサイエンス・データ解析入門 」 売上(需要)予測についてはこちらもご覧ください。 需要予測AIよ、需要は予測するものでなく作るものだ。 ニューラルネットワークの活用事例 前述の通り、ニューラルネットワークはすでに多くの業界で採用が進んでいる技術です。ここではそれぞれの領域で、どのように運用されているのか事例を確認しましょう。 自動運転 ニューラルネットワークの代表的な活用事例が、自動運転です。運転技術の自動化は、数ある自動化技術の中でも特に高度な技術実装が求められるため、2024年現在も一般公道での走行は限定的なものにとどまっています。 自動運転におけるニューラルネットワークの主な活用領域の一つは、他車両の軌道予測です。周囲の車両がどのように走行しているのか、この後どのような軌道を描いて走行するのかをリアルタイムで予測し、運転に反映します。 また、周囲の物体認識を高速で行い、回避の必要性の有無や、標識に描かれている内容を把握し、この後の走行に反映する機能の実装に活躍します。 参考:マイナビニュース「 運転支援システムと自動運転を分ける「ニューラルネットワーク」 」 医療における診断・判定 医療分野において、ニューラルネットワークは多くの業務に適用が進みつつあります。 代表的な運用事例としては、画像診断による疾患の早期発見、あるいは誤診の回避です。過去の症例データから今回の検査機器から取得した画像データを比較し、疾患の見落としを減らすことができます。また、異常を検知した場合には医師にそう分かるようにし、より詳細な検査の実施を促すことにも貢献できる技術です。 医療関連では他にも、ニューラルネットワークは新薬開発の現場で導入が進んでいます。解決したい問題に応じた最適な組み合わせの発見を、過去のデータから推論し効率化することが可能です。結果、新薬開発の高速化を推進し、治療可能な疾患を増やしたり、安価な薬の提供につなげたりといった影響をもたらします。 参考:Array Corporation「 医療AIとは? 」 スマホの顔認証 今となっては身近なスマートフォンの顔認証技術にも、ニューラルネットワークは採用されています。人間の顔に関する膨大なデータと、登録しているユーザーの顔を照合し、正確な認証が可能です。顔の形や各パーツについての特徴を正確にインプットすることで、誤認証を回避できるのがニューラルネットワークの効果といえます。 最近ではマスクをしたままでも顔認証を正確に行えるなど、もはや人間以上の判別能力を備えていることから、その信頼性の高さは一部では人間の目視確認を超えているといえます。 参考:Apple「 顔照合のセキュリティ 」 音声認証 音声認証の正確性向上には、ニューラルネットワークの働きが欠かせません。入力する音声データから、音声以外の環境音やノイズを排除するのには、ニューラルネットワークによる働きがあります。また、余分なノイズを排除した音声に含まれる音や言葉を正確に判別するのにも、ニューラルネットワークが役立っています。 抽出した音声データを膨大なデータベースと瞬時に照合することで、正確な文字起こしや、声による照合を行えるのも、ニューラルネットワークのおかげです。 参考:AmiVoice Cloud Platform「 音声認識の仕組みをざっくり解説! 」 ニューラルネットワークの基礎を知ってビジネスに生かす 以上、ニューラルネットワークとはどのような技術なのか、ニューラルネットワークをどのように生かすことでビジネスにつなげられるのかについて、解説しました。 ChatGPTなどの便利でオープンな生成AIが登場したことで、もはや企業はAIを開発するに当たってすべてを独自にする必要がなくなっています。そのため、むしろどのように活用してビジネスそのものや社会を変革するかの構想が求められているとも言えるでしょう。 ただし、導入したいAIのすべてを独自に開発する必要がなくなったからといって、AIについて深く理解しておく必要がないというのは、誤解といってもいいでしょう。どれだけ便利になっても、その技術の仕組みを根本から理解している場合と、そうでない場合では得られる結果にも大きな違いが出てくるものです。例えば、パソコンやインターネット、スマホは仕組みを理解せずとも多くの人が便利に使えるITですが、仕組みを理解せずにそれらを使ってイノベーションを起こすのがほぼ不可能であることは、想像に難くないでしょう。まずは各種生成AIなどのサービスを業務に取り込むことを試み、その可能性や運用課題についての知見を得るのがいいでしょう。 またビジネスのためのAI開発に当たっては、どのようなAI開発をすべきかがなんとなく見当がついたとしても、それが本当に最適な方法なのかどうかは社内の検討だけでは分からないことが少なからずあります。AI開発をご検討の際はぜひ、ビジネスとAIの両方を熟知した弊社のソリューションデザイナにご相談ください。議論を通して本当の課題を見極めた上で、ビジネスの成功という目的に合う最適なAIやその開発の在り方を提案いたします。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post ニューラルネットワークの基本知識。仕組みや種類、活用事例 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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AIによる外観検査とは。ビジネス成長に向けたポイントも解説 2023.11.16公開 2024.12.5更新 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田崇 概 要 AIを用いた外観検査は、人間が実施するよりも多くのメリットが期待できます。そのため、生産性向上に向け、多くの事業場でAI外観検査の導入が進みつつあります。AI外観検査のメリットや成功事例、導入のためのポイントを解説します。 目 次 ・ AIによる外観検査とは ・ 外観検査でのAI導入の必要性  ・ 人材不足の解消  ・ 研修負担の解消  ・ 新たな検査対象に素早く対応できる  ・ 不安定なパフォーマンスの解消 ・ AIを活用した外観検査の仕組み  ・ 画像分類  ・ 物体検出  ・ セマンティックセグメンテーション ・ AI外観検査サービスのメリット  ・ 有人作業の削減  ・ 検査品質の担保  ・ さまざまな異常パターンの検知  ・ 誤検知の防止 ・ AIを用いた外観検査の成功事例  ・ 豆腐メーカーにおけるAIラインピッキング  ・ レンズの品質検査  ・ 連続めっきラインへの導入で90%の精度を維持  ・ 鳥の営巣の検知を自動化。電力設備点検をスマートに  ・ 自動車生産の外観検査をAIで。スマートファクトリー化に貢献 ・ ビジネス成長に向けたポイント  ・ イノベーションに前向きになる  ・ 課題設定と目的を明確にする ・ まとめ AIによる外観検査とは 外観検査とは、製品の品質を維持・保証するために外観を検査することです。主に表面に付着した異物や汚れや歪みなどの異常がないかどうかを確認します。人間の五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を使って品質を判断する「官能検査」の代表例であり、業界や製品問わず実施されます。外観検査は人間の目による目視検査が主流ですが、品質保証の観点から全数検査が望ましく、近年は画像センサの導入が進んでいます。 人間による外観検査は、従業員の数や作業時間を増やすだけで問題が解決するとは限りませんし、人材難といわれたり、労働時間が厳しく管理されたりする時代にあって、本質的な解決にもならないでしょう。 AIによる外観検査は、人間が実施している検査業務の一部ないし全部を自動化するに当たってAIを導入した外観検査システムを用いることです。その中核となるのは後述する画像に関する技術です。 参考:外観検査.com「外観検査とは」 外観検査でのAI導入の必要性 外観検査にAIを導入すべき理由は複数あります。人間による外観検査を実施する上で出てくる課題を解消できることがあるからです。 人材不足の解消 人間による外観検査の大きなネックといえるのが、人材不足の深刻化です。近年は多くの業界で人材の不足が懸念されています。業務遂行に必要な人材が賄えず、事業継続が危うくなることが問題となっています。 人間による外観検査は、人間の五感に頼った業務であるため、効率化に限界があります。人件費の上昇に伴い外観検査にかかるコストが大きくなると、収益性に問題をもたらすこともあるでしょう。 このような問題を解決できる可能性があるのが、AIによる外観検査です。外観検査に必要な人手を大幅に削減し、人件費の高騰や人手の確保に悩まされるリスクを抑えられるかもしれません。 研修負担の解消 新しい人材を確保できたとしても、すぐに現場で業務を任せられるわけではありません。業務に必要な能力・知識を獲得してもらうべく、研修を重ねなければいけないため、そのためのコストがかかります。 また人間の外観検査担当者は、異動や退職などに伴って変わっていくということもあります。新しい人材を採用する際にも通じる話で、外観検査に必要な能力をすでに持っている人を探そうとしても、そもそもそのような人がいないこともあり、異なる能力・経験を培ってきた人を早く研修できる体制を整えておくことも重要になってきています。 AIによる外観検査の導入は、こうした研修負担の発生を解消できる可能性があります。 新たな検査対象に素早く対応できる 市場のトレンドの移り変わるスピードが高まる中で、外観検査の対象が新しくなっていくことも考えられます。その際、新しい対象の検査のための学習には、一定の時間と労力が必要です。人間の場合はこの移行作業に時間がかかる場合があり、また移行当初はエラー率も高まることが懸念されます。 一方AIならば、学習のための十分なデータセットの用意などの条件を満たせば、結果的に人間よりも素早く、正確に実施できるだけでなく、人によって学習の進み具合が異なるなどのリスクがないという利点も生かせます。 不安定なパフォーマンスの解消 有人の外観検査は、その品質が担当者によってばらつくこともあります。人によって成果の出来不出来の差が開くと、安心して業務を任せることが難しいものです。また、その日の体調などによってパフォーマンスが左右されることもあり、規格化された要件に応えられない問題も出てきます。 AIによる外観検査は、このようなばらつきをなるべく小さく抑えるのに効果的です。AIの場合は人間のように体調の影響を受けることがもちろんなく、常に一定のパフォーマンスを維持することを狙えます。 AIを活用した外観検査の仕組み 人間が外観検査を行う場合、使う感覚はもちろん視覚です。AIにとって外観検査は画像処理に関わることであり、画像に関する主に下記の三つの技術を使い分け、高い精度を狙います。 • 画像分類 • 物体検出 • セマンティックセグメンテーション 画像分類 画像分類は、画像の中にある情報をAIに学習させることで、画像に含まれる特徴を抽出させ、必要に応じた分類ができるようにする手法です。 画像分類においては、教師あり学習によるデータセットのインプットによるAIの教育が広く採用されています。「この画像はイヌ」「この画像はオオカミ」など、画像ごとにラベル付けをすることで、AIの効率的な学習を促す方法です。 ある程度学習が進んだ段階で、ラベル付けがされていない本番データのインプットを実行し、画像の分類をさせます。 最近では、教師なし学習による画像分類の導入も顕著です。例えば東芝が開発した画像分類AIは、1枚の画像を一つの分類基準とする「疑似的な教師あり学習」を実施し、一部の画像にだけ存在する特徴を抽出できるとしています。学習時には、抽出する特徴が重複しないようにする独自の学習基準を設定しており、画像内の特徴からグループ化に有効な特徴量が作成できるとしています。 出典:MONOist「 教師なし学習でも「世界最高クラス」の精度で不良品を見分ける画像分類AI 」   :東芝「 教師なしで複雑な画像の特徴を学習してグループ化する画像分類AIを開発 」 物体検出 物体検出は、画像に含まれている特定のクラス、例えば風景の中のクルマや動物、人間といった「物体」を検出することができる技術です。単に指定したクラスが含まれているかどうかの確認(物体特定)のみならず、それがいくつ含まれているのか(物体カウント)、画像のどこに存在しているのか(位置特定)の実行も含めて物体検出と呼ぶことが一般的です。 身近な例では、スマートフォンのカメラ、自動運転における歩行者の検知などに利用されています。カメラでは指定した物体を検出したらそれを自動で追いかけて撮影できるように設定できたり、自動運転では歩行者を検知したら減速したり、といった制御に用いられている技術です。 代表的な手法としてR-CNN(Region-based CNN)、YOLO、SSD、DETRなどがあります。 セマンティックセグメンテーション セマンティックセグメンテーションは、画像内のすべての画素に対してラベリングを実行する手法です。特定のカテゴリを形成する、画素の集まりを検出するために実施するもので、高度な識別を必要とする場合に役立ちます。 分かりやすい例として、自動運転車の識別能力の獲得が挙げられます。走行中、自動運転車は同時に複数の要素をインプットする映像から瞬時に識別することが必要です。標識や歩行者、横断歩道などの認識において、セマンティックセグメンテーションの実装が効果を発揮します。 物体検出との違いは、対象物の画像内を画素レベルで複数の領域に分けることができる点です。その結果、セグメンテーションは不規則な形状の対象物を明瞭に検出することができます。代表的な手法として、FCN、DeepLab、U-Net、SegNet、FPNなどがあります。 参考:高橋海渡ら『AIのしくみと活用がこれ1冊でしっかりわかる教科書』 AI外観検査のメリット AI外観検査の導入は、事業者にとって複数のメリットが期待できます。具体的には、以下のような利点の獲得です。 有人作業の削減 AI外観検査の導入は、有人で対応しなければならない業務を大幅に減らすことにつながります。AIを外観検査に導入した場合でも、完全に人手をゼロにできるとは限りません。AIを管理したり、自動化した外観検査の仕上がりを最終的に確認したりする段階で、人間による対応が求められるからです。 とはいえ、AI外観検査の導入により、外観検査に伴う業務の多くの部分を無人化できることが期待できます。管理者が一人いれば、大規模な検査業務をAIに任せ、そのマネジメントだけで業務を完結させることも可能になるかもしれません。 検査品質の担保 AIによる外観検査の実現は、検査の品質を一定以上に保つ上で有効です。前述の通り、AIの強みは人間のようにパフォーマンスが経験や体調に左右されないところにあります。 もちろん、学習データが十分に蓄積されていないうちは、検査エラーが発生することもあるでしょう。しかし運用を進めていくにつれ、再学習も進んでいき、エラー率は一般的に下がっていき、より良い業務進行ができるようになります。 人間の場合、人によってそのパフォーマンスがばらついたり、学習にかかる時間が異なったりすることがあります。人間もAIも学習によって検査の精度が上がっていきますが、AIは人間のように途中で飽きたりやる気を失ったりすることなく着実に改善を重ねられ、計画的なパフォーマンスの向上が見込めます。つまり、中長期的な計画の確度を高める上でも、AI外観検査の導入は効果的だといえるのです。 さまざまな異常パターンの検知 AIによる外観検査のメリットには、多様な異常パターンの検知ができることも挙げられます。有人の場合、ある程度経験がなければ異常パターンのすべてを把握できず、業務上エラーが発生してしまうこともあります。また、パターンの数が増えれば増えるほど、人間はミスを起こすリスクも高まります。今後多くの検査事項が増えてくる可能性がある場合、検査員には高度なスキルを持った人材を選ばなければなりません。そのためには高い人件費が発生したり、研修の手間が増えたりと、やはりコストが増大していってしまいます。 AIではこのような経験不足を、学習のための十分なデータセットを用意することで補えることが期待できます。好き嫌いを言うことなく、多様な検査対象に対応できるでしょう。 誤検知の防止 誤って異常検知してしまう問題についても、AIならばその確率を小さく抑えることが狙えます。誤検知の内容をよく確認し、それに基づいてAIをチューニングできれば、同じ誤検知を二度と起こさないことが期待できます。ここでも、人間特有の「うっかり」「ぼんやり」といったエラーとは無縁に、安定したパフォーマンスを発揮するでしょう。 AIを用いた外観検査の成功事例 豆腐メーカーにおけるAIラインピッキング 四国化工機は、豆腐業界では初となるAI外観検査を採用したラインピッキングを導入しました。同社ではこれまでも機械による画像検査を導入したことがあったものの、豆腐という繊細な商品の検品を自動化することは困難が多く、人間による目視検査へ戻した過去もありました。 この度同社で新たに導入したのは、AIを用いたラインピッキングのシステムです。検品作業をほぼすべて自動化するというこのシステムの導入により、1日20時間稼働し、10万パック分の作業をこなすことに成功しています。 この速度は人間の実に10倍のパフォーマンスに相当するということで、強力な生産性向上と品質向上に貢献しています。 出典:IBM「 四国化工機 | AIもめん豆腐検品システム導入事例 」 レンズの品質検査 レンズメーカーのコンベックスは、従来、有人で対応していたレンズの目視検査工程を、AIに置き換えることに成功しました。 同社で課題となっていたのは、目視検査のための人手確保と教育です。検査員の確保に必要な人件費が重荷となっていただけでなく、その教育コストも発生していたことから、負担の削減には限界がありました。また、どれだけ熟練した検査員でも一定のヒューマンエラーは発生するため、そのエラーに伴うコストの発生も、同社を悩ませていたことの一つです。 そこで導入したのが、AIによる検査の自動化でした。レンズの球面を把握するのに最適な撮像機器の導入と検査AIの実装により、人間と同様、あるいはそれ以上の検査能力の確保に成功しています。 結果、高度な検査業務の自動化に成功しており、少ないエラーで高い顧客満足度を実現できました。将来的には24時間の自動検査が行えるよう、品質維持に向けた改善活動が進んでいます。 出典:MENOU「 レンズの目視検査にAI採用、24時間の高品質な検査へ 」 連続めっきラインへの導入で90%の精度を維持 淀川製鋼所では、連続めっきラインにAI外観検査を導入し、多大な成果を挙げることに成功しています。 同社が課題として抱えてきたのが、クライアントごとに異なる要求品質への対応です。求められる水準や要件が異なるため、人力でこれらを確認の上、水準へのすり合わせをしてきました。 また、従来の疵検査装置では詳細なNG分類が困難で、最終的には人間の検査員によるチェックが必要で、効率化にも限界を感じていた問題を抱えていました。 そこで導入されたAI外観検査は、これらの問題をすべて解決する上で大きな成果をもたらしました。従来の装置では難しかったNG分類を自動化し、精度を90%程度まで引き上げることに成功しています。さらに、AI外観検査が確かな成果をもたらしたことで、さらなるハイテクソリューションの導入に積極的な機運が高まり、工場全体のハイテク化に向けた活動が活性化しているということです。 出典:VR+R「 株式会社淀川製鋼所 様 」 鳥の営巣の検知を自動化。電力設備点検をスマートに NTTコムウェアは、電力設備における鳥の営巣をAIによって検知し、迅速に対処ができる仕組みを整えるためのソリューションを開発しました。 ハトやカラスによる電力設備上の営巣は、巣作りの際に金属類のものが混じっていた場合、高圧線に触れると停電などを引き起こす恐れがあったため、早急な対処が必要です。これまでは目視で営巣がないかを確認したり、通報したりして対処してきました。しかしそれでは点検のために多くの時間を要する上、把握までに時間がかかり、対応が後手に回ってしまう問題もあったわけです。 そこで解決となったのが、AI外観検査による点検の強化です。自動車やバイクに搭載したカメラを用いて、街を走行しながら電柱などの配電設備を撮影します。撮影した画像をAIに読み込ませることで、営巣の有無を確認し、ピンポイントで撤去を進めることができる仕組みです。 営巣確認に必要だった人員は2人から1人へと半減でき、作業に迅速に当たれるようになったことから、現場の効率化に大きく貢献しています。 出典:NTTコムウェア「 画像認識AI「Deeptector®」を活用した「営巣検知サービス」の提供開始 」 自動車生産の外観検査をAIで。スマートファクトリー化に貢献 武蔵精密工業は、トヨタ自動車の生産現場に対してトランスミッションギヤ向けのAI外観検査ソリューションを導入しました。自動車分野における外観検査の今後のトレンドとして、同社が考えているのが電気自動車の搭乗による需要拡大です。電気自動車はガソリン車に比べて構造が複雑であるため、検査の工程や内容がもはや人間では対応が難しくなるというリスクを抱えています。 このような課題に対処すべく登場したのが、同社の開発した「Musashi AI」です。80年以上かけて培ってきた同社の精密な検査ノウハウをAIに学習させることにより、高水準なスマート外観検査を導入することに成功しています。 また、このAIは導入にかかる期間が短いことも高く評価されている点の一つです。最短で1~3カ月程度で生産現場へ投入が可能になるなど、業務の迅速な高度化に貢献しています。 出典:MUSASHi「 トヨタ自動車向けにAI外観検査装置を追加導入 検査の効率化で電動化需要に対応 」 ビジネス成長に向けたポイント 外観検査へのAIの導入はこれまで触れてきたように、うまくすれば現場、ひいては会社全体に高い成果をもたらすことが期待できます。前述の事例を踏まえ、AI外観検査の導入によるビジネスの成長を実現するための要点をまとめます。 イノベーションに前向きになる AI外観検査を導入する上でまず必要になるのが、イノベーションに前向きになることです。現状維持にこだわるのではなく、課題や将来訪れるかもしれないリスクと向き合い、解決のための施策を取り入れていきましょう。 事例で取り上げた企業においても、人材不足やコスト増大の解決に向け、導入成功に至るまではいくつかの施策を実行してきたものの、上手くいかなかった背景を抱えています。AI導入に際しては、ゴールにすぐに到達できるとは考えず、改善を繰り返していくうちに成果につながるものと捉えるべきでしょう。 課題設定と目的を明確にする AIを漠然と導入しても、問題解決のために必要なソリューションをうまく選定できなかったり、必要なノウハウの取得が現場で進まなかったりするのは当然です。AI外観検査の導入によって、具体的にどんな問題を解決するのか、それによってどんな目的を達成するのか、あらかじめ整理しておくのは当然です。その上で、その目的に、業務の改善だけでなく、企業としての成長も含められると、なお良いでしょう。 まとめ この記事では、AI外観検査とはどのような取り組みなのか、導入によってどんなメリットが期待できるのかについて解説しました。 AI外観検査の導入を実現した企業では、すでに多大な成果をもたらすことに成功しています。人間よりもエラー率が低く、24時間365日、フルパフォーマンスを発揮できる可能性は、大きな強みです。AIの投入にはそれなりの設備投資が発生するものの、AIを導入しない場合でも人件費などでコストがかさみ続けることを考えると、費用対効果にも期待が持てる取り組みといえます。 本コラム中の導入事例を参考にしつつ、自社での導入に向けた課題の整理を進めていきましょう。 Laboro.AIでは、これまで外観検査に関するプロジェクトにも取り組んできており、「 防衛装備品の製造におけるAIによる外観検査 」という事例も生まれています。本事例では前述した三つの異常検出手法のうち最も適した手法を選び、高い精度での検査結果を得ることができました。また、さまざまな異常パターンの検知については、日本線路技術様とのプロジェクト事例「 線路設備の不良判定の自動化 」で取り組んでいます。 Laboro.AIの「カスタムAI」の開発においては、ビジネス環境や解くべき課題に合わせた最適な手法・アプローチを選択することで、AIによるイノベーション創出に向けた伴走支援を行っています。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post AIによる外観検査とは。ビジネス成長に向けたポイントも解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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AIで設備の故障を未然に防ぐ。故障予知の仕組みと効果 2022.6.7公開 2024.12.3更新 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 リードマーケター 熊谷勇一 概 要 製造業では、製造される製品に現れる異常を発見することだけでなく、それらを製造している機械そのものの故障を未然に防ぎ、ダウンタイムを削減することが重要な課題の一つになります。故障を予防するために定期的なメンテナンスを行うことはもちろん大切ですが、近年、AIを用いて適切なタイミングで故障予知を行うことを目指した取り組みが増えてきています。 目 次 ・ 製造現場での保全の種類  ・ 予知保全  ・ 予防保全  ・ 事後保全 ・ AIを用いた故障予知のアプローチ  ・ 「教師あり学習」アプローチの故障予知  ・ 「教師なし学習」アプローチの故障予知 ・ 故障予知の事例  ・ 太陽光発電での故障予知  ・ ドローン×センサーによる故障予知  ・ 故障前兆を正解率 9 割で判定できる AI モデルを構築  ・ 港湾クレーンの異常発生を高精度で予測  ・ 故障時のトラブル対処 ・ 故障予知導入までの流れ  ・ データの収集  ・ 検知システム/センサーの検討  ・ 前処理・学習  ・ 運用 ・ 故障予知AI導入の注意点  ・ AI人材の確保が必要  ・ 設備投資が必要 ・ 故障予知AI導入のポイント  ・ 故障予知は次の世界への第一歩 製造現場での保全の種類 製造現場での重要取組事項としては、製造ラインの保全、つまり機械・設備を「保護して安全を守ること」を通して、生産計画を滞りなく達成することです。そして実施するタイミングによって分類ができます。 予知保全 製造装置などが故障する予兆を検知し、適した保全を行うことを「予知保全」と言います。本コラムのテーマであるAIによる故障予知はこの予知保全の一種で、各種センサーで収集された画像データや時系列データなどをAIで分析することで行われます。予知保全が万全になるにつれて、故障によるダウンタイムを回避したり、部品を適切な時期に交換できたり、作業員の危険をあらかじめ除去したりといった対応が可能になってきます。 予防保全 製造ラインを常時監視する予知保全に対し、決められた時期に点検・メンテナンスを行うのが「予防保全」です。文字面は似ていますが、実施するタイミングが大きく異なります。予防保全は一般的には決められた時期に点検を行い、製造ラインの寿命を伸ばし、重大事故を予防することが目指されます。スケジューリングしやすく効率良く保全を行えるという点が特徴です。 事後保全 予知保全や予防保全と違い、故障が起きた後に保全を行うのが「事後保全」です。どれだけ素早く故障を検知できるか、そして復旧までの時間をどれだけ短くできるかがポイントとなります。近年では、製造装置の何かしらのトラブルによって比較的短い時間ラインが停止してしまう、いわゆる「チョコ停」を早期発見するための監視AIの活用も多くも見られるようになってきました。 AIを用いた故障予知のアプローチ 故障予知に関して、AIの学習手法の違いから二つのアプローチを説明します。 「教師あり学習」アプローチの故障予知 例えば製造機械の故障を予知する場合、故障の前兆と捉えられる現象が一定であれば、基準値を設定して、それを超えた際にアラートを発するといった基準値ベースの検知が可能かもしれません。しかし実際の製造現場では、前兆が必ずしも一定ではなく、ベテランの匠の目でしか判断できないようなケースも存在します。 現在のAI技術で主として用いられる機械学習は、AIに大量のデータを入力させることでその特徴パターンを認識させ、次に与えられる未知のデータが学習したパターンとどの程度類似しているのかを推論することを得意とします。そのため、基準値を数値で示すことが難しいケースや、「なんとなく」の見た目や聞いた感じでしか分からない直感的な判断が求められるケースで、AIは効果を発揮しやすいとも言われています。 そして、AIにデータのパターンを認識・予測させるための学習手法は、「教師あり学習」と「教師なし学習」に大きく分けられます。教師あり学習は、正解となるタグ(ラベル)を付与したデータを学習させ、その特徴やパターンを習得させる手法です。撮像の環境が一定であることなどの条件が伴いますが、大量かつ整理されたデータがあるほど、正常と異常の境界をより正確に判断できる可能性が高まっていきます。 「教師なし学習」アプローチの故障予知 正解ラベルが付与されていないデータを用いる、あるいは正解となるデータを十分に集めることが難しい場合に用いられる学習手法の一つが、教師なし学習です。あらかじめ正解をラベル付けして学習を施す教師あり学習と違い、ある一定の特徴や基準に基づいてデータ群を分類・クラスタリングすることを目的に用いられる学習手法です。 近年、故障予知の領域においても教師なし学習を用いたアプローチが増えています。国内製造業が世界最高峰の品質の高さを誇る裏返しとして、「異常」「故障」に関するサンプルが少なく、正解データの収集が難しいということが背景にあるためです。正解データを保有していることが前提となる教師あり学習アプローチが進められないケースが少なくないということにもなります。そこで、正常値からどれくらい離れているかを分析することで異常度を判定するための手法として、教師なし学習によるアプローチが期待されているというわけです。 なお、故障予知や異常検知の領域で用いられる教師なし学習の代表的なアルゴリズムとしては、データの特性や目標とする精度や処理スピードに応じて以下のようなさまざまな方法が用いられています。 ・正常データの分布に対して入力されたデータがどれだけ乖離しているかを算出・判定する「Hotteling’s T-square法」「混合ガウス分布モデル」 ・異常な状態のデータが少なくても比較的機能しやすい1クラス分類を目的とした「SVDD(Support Vector Data Description)」 ・データ群に見られる主成分を分析することで正常・異常を判断する「PCA(Principal Component Analysis:主成分分析)」 ・通常のPCAよりも外れ値の影響を受けにくい「Robust PCA(ロバスト主成分分析)」 ・いわゆるクラスタリングとして用いられる「k-means法」 ・ニューラルネットワークの一つ「RNN(Recurrent Neural Network:再帰型ニューラルネットワーク)」と次元圧縮を組み合わせた「再帰型オートエンコーダ」 参考:Laboro.AIコラム「 『教師あり学習』『教師なし学習』とは。文系ビジネスパーソンのための機械学習 」 出典:日本機械学会論文集 「再帰型オートエンコーダを用いた振動データによる工場設備の故障予測手法の提案」 故障予知の事例 故障予知AIの活用事例を6件取り上げます。 太陽光発電での故障予知 金沢市で太陽光発電所を運営するRYOKI ENERGYが開発したのが、太陽光発電所の主要設備であるパワーコンディショナーの故障を予知するシステムです。このシステムではパワーコンディショナーを構成する主要機材に振動や温度などを感知するセンサーを設置した上で、取得されるデータに異常があった場合に通知が届く仕組みになっています。 出典:日本経済新聞 「太陽光発電パワコン、AIで故障予知 金沢の菱機工業」 ドローン×センサーによる故障予知 太平洋セメントが2022年から本格運用を始めているのが、工場設備の故障予測システムです。ドローンによる設備表面の異常検知に加え、センサーで取得された時系列データを解析することで、故障の予兆をより精度高く見極める仕組みです。セメント製造のプロセスでは、1400℃もの超高温での焼成が伴う非常に設備負荷が大きい工程が含まれています。そこでこのシステムでは、ドローンによる表面部分のヒビや摩耗の検知に加えて、さらには振動系や温度計などのセンサーを用いることで、より早い段階での故障予知が実現されています。 出典:日経クロステック 「セメント製造の心臓部をドローンで監視、最大手の太平洋セメントが故障予測DX」 故障前兆を正解率9割で判定できるAIモデルを構築 工業用ポンプの製造・販売などを手掛けるみつわポンプ製作所では、ポンプの故障を予知することで能動的に顧客提案を行い、販売後の顧客接点の創出やソリューション化につなげることで、売り切りのビジネスモデルからの脱却が目指されていました。そこで、各種センサーデータのAI分析によるポンプの故障予知の技術検証や、AI分析に適したデータの種類・蓄積方法の検討に取り組み、特定のポンプ故障環境下においを正解率9割で故障前兆を判定できるAIモデルの構築したほか、今後のAIモデルの構築・運用に適した分析手法とデータ体系を定義することに成功しています。 経済産業省「 AI導入ガイドブック 製造業へのAI予知保全の導入 」 港湾クレーンの異常発生を高精度で予測 太陽ホールディングスなどは、港湾でコンテナ貨物などの積み卸しをする巨大なクレーン「ガントリークレーン」の予知保全で、AIを活用する取り組みを進めています。ガントリークレーンは通常、定期的な保守点検で異常の有無が判定されますが、定期点検の合間に発生する故障の兆候の発見遅れなどで、突発的な故障が発生するリスクが懸念されています。同社らは、この課題を解消するために運転ログデータ・探索的データ分析作業に基づく「異常検知・異常発生予測」手法を選定してAIプロトタイプを構築し、データ解析を実施。その結果、異常発生を90%の精度で30分前に予測できることに加え、重大な故障発生については71%以上の精度で24時間前に予測可能であることを確認するに至っています。 日本海事新聞「 ファンリードなど、ガントリークレーン、AI活用で予知保全 」 故障時のトラブル対処 故障そのものを予知・検知するということだけでなく、故障時の対処にAIを活用する取り組みも生まれています。有機顔料などを製造販売するDICは、熟練者同などの故障対応を可能にすることを目指した「Prism」というAIシステムを開発しています。トラブル発生時に作業員がその事象に関連する文章や単語をタブレットに入力すると、類似度の高い過去のトラブルや対処方法をデータベースから探し出して提示するというもので、熟練者のトラブル対応ノウハウを若手に継承していくことが目指されています。 出典:日経クロステック 「熟練者のようなトラブル対処をAIで実現 類似度順に結果を表示」 故障予知導入までの流れ 故障予知AIの導入に際しては、以下の四つのステップを踏むことにより、課題解決に向けた運用を効率良く進めることができます。 データの収集 故障予知の導入に際してまず必要なのは、関連するデータの収集です。システムを構成するすべての要素からデータを抽出し、故障が確認される際に発生するデータを発見したり、平常運転時のデータとしてどんなものがあるのかを確認したりします。 取得したデータが意思決定を下す上で有効な情報かどうかも取捨選択しながら、必要なデータを絞り込んでいくステップです。 検知システム/センサーの検討 続いて、必要なデータを自動で取得するための検知システム、あるいはセンサーの導入を検討します。故障の予兆を把握する上で重要なデータを選別できたら、それを24時間取得できるシステム構成へとアップデートすることで、早期かつ正確な故障予知につながります。 前処理・学習 故障予知AIの構築に必要なデータセットを、これまでインプットしたデータや前提を踏まえて作成します。データを自動で抽出するとともに、抽出したデータを読み込みやすいかたちに加工したり、AIへのインプットを実行したりする過程です。 運用 故障予知に関して一定の成果が期待できるAIが構築できたら、現場への実装を進めます。現場の監視機器とAIを連携し、故障の予兆が確認された場合には、管理者に通知を送るような仕組みを導入する段階です。 運用に際しては、日々インプットするデータを新たな学習データとして利用できる体制が理想的といえます。定期的に実装AIの学習アップデートを行い、さらに精度の高い故障予知を行えるようにすると良いでしょう。こうすることで、自社の業務に最適化した、高度な正確性を有するAIの運用につながります。 参考:SONY「 AIによる予知保全とは?活用方法と導入における注意点を解説 」 故障予知AI導入の注意点 故障予知AIを導入することで十分なメリットを得るには、十分な準備をした上で実装する必要があります。導入に際しては以下のような注意点があるため、事前に対策を検討しておきましょう。 AI人材の確保が必要 AI導入に際しては、この分野に強い人材が必要です。AIは以前よりもはるかに導入はしやすくなったものの、ある程度ノウハウがなければ使いこなすのは難しいでしょう。 また、近年はAI需要の高まりに伴い、専門人材の確保が難しくなってきています。もともとそこまで母数の多い領域ではないため、人材の確保や育成のための負担は今後大きくなっていく可能性も見込んでおくべきです。 設備投資が必要 AI導入に際しては、ソフト・ハードの両面である程度の投資が必要です。AIは最先端分野の一つであるため、まとまった予算を確保しなければ、問題解決につながるような導入を進められない可能性もあります。人件費や設備などのさまざまなコストを踏まえた、入念な予算編成が必要です。 故障予知AI導入のポイント 故障予知で鍵を握っているのは、AIという技術にも増して、センサーあるいはセンシング技術であるということが、上の事例からも見えてきます。AIという技術そのものは入力されたデータを分析する役割に留まるため、特に製造業や建設業をはじめとする物理的なオフライン環境を伴う業種・業界においては、いかに機械の状態を正確に把握し、それをデータとして取得・変換できるかが、故障の予兆を捉えられるかどうかに直接的に関わってきます。つまり、故障予知という保全分野は、AIだけで実るものでは決してなく、センサーとの共同進化によって発展していく領域だといえます。導入時にはこの共同進化に事業や会社としての成長が加えられるかを十分に検討すべきでしょう。 故障予知は次の世界への第一歩 近年、「デジタルツイン」や「メタバース」という言葉がよく聞かれるようになってきました。リアル空間とサイバー空間が連動するこうした新たな世界の接点となるのが、まさにリアル情報をデジタル情報へと変換するセンシング技術であり、またそれを分析・解析・予測するAIという技術です。単に「故障予知」と聞くと、一つの機器や設備に閉じた世界に感じられてしまいますが、この故障予知から始まる「センサー×AI」による取り組みは、実は現実世界をサイバー世界へと転換することへとつながる、大きな始まりの一歩になっているのです。 執筆者 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicksプロピッカー として活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年以上、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 The post 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スケジューリング最適化AI、高度化の鍵は「戦略」にあり。導入事例も解説 2024.11.27 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田崇 概 要 製造業や建設業をはじめとした業界で取組まれる計画策定タスク、いわゆる「スケジューリング」は、考慮すべき制約条件が膨大・複雑であることや、最適解を得るためのロジックを定式化しづらいことなどがあり、多くの企業のビジネス課題であり続けています。さらに、近年の人材不足を背景に、これまでスケジューリング成功の要であったベテランのノウハウをどう伝承していくかも喫緊の課題になっています。 こうしたことから、より高度な計画を策定させるための「スケジューリング最適化AI」の開発・導入・活用が多くの企業で検討されています。しかしAI活用をビジネス成果につなげるためには、技術力にも増して、多種多様なアプローチから適した手法を選択するための戦略が欠かせません。スケジューリング最適化AIの高度化のためのポイントを、導入事例も交えて考えていきます。 目 次 ・ スケジューリングとは  ・ ビジネスにおけるスケジューリング ・ スケジューリングが特に課題となる業界  ・ 製造業  ・ 建設業  ・ 物流業 ・ AIで最適なスケジューリングを実現する四つのアプローチ  ・ ルールベース  ・ 数理最適化  ・ メタヒューリスティクス  ・ 強化学習 ・ 個人とコンピュータのスケジューリングから、戦略の重要性を知る  ・ 個人とコンピュータのスケジューリング  ・ 時間的・資源的制約の中で目的に適った成果を  ・ スケジューリングと戦略は密接 ・ AIスケジューリング導入事例  ・ 食品工場の生産計画立案にかかる時間を10分の1に短縮  ・ 既存アプリと新システム連携で配送時間2割減目指す  ・ 作業割当表の作成が1時間から1分に ・ AIスケジューリングのメリットも戦略あってこそ スケジューリングとは スケジューリング(scheduling)は「何かの予定を決めること」という意味の英語で、個人のスケジュール管理や、組織における作業計画の策定、コンピュータにおける処理順序の決定などの意味で用いられます。個人のスケジュール管理であれば一人で考えて決定していくこともできますが、例えば工場などの製造・生産現場で製造計画や生産計画をスケジューリングしたい場合、加味すべき条件が1000以上になることもあり、人力で最適なスケジューリングをするのはほぼ不可能で、近年、AIの活用可能性が大いに期待されています。 ビジネスにおけるスケジューリング ビジネスにおけるスケジューリングとしては、例えば、 ・製造業:製造計画 生産計画 ・建設業:工事計画 施工計画 ・物流業:配送計画 配送ルート計画 ・医 療:治療計画 ・インフラ:電力配分計画 鉄道運行計画 ・研究開発:実験計画 調査計画 など、さまざま挙げられます。 これだけ多くの業界ビジネスで取組まれているスケジューリングは、一言で言えば、「定められた期限までにより高い成果を得るため、その計画を構成する人員や機械、予算などの資源をそれぞれの制約条件を踏まえて最適な配分を考えること」です。スケジューリングを含む、こうした複雑な条件の組合せを考えるタスクは「最適化問題」と呼ばれ、世の中の多くの領域で存在しています。 スケジューリングは、プロジェクトマネジメントの要となるプロセスであり、どれだけ良い計画を事前に立てられるかが、そのプロジェクトの成否を握ると言っても言い過ぎではありません。それだけでなく、国内・国外のビジネス環境が厳しさを増す中、いかに効率的かつ高度な計画を立てられるかが、ビジネスの競争力にも大きな影響を与えます。また、これまで各企業におけるスケジューリング業務は、作業環境や制約条件を熟知したベテラン人材の人手によって行われ、その知見が蓄えられてきました。ですが、こうした計画策定のためのノウハウをいかに次世代に伝承するかが重要になる一方で、昨今の少子高齢化や若手人材の不足が深刻化していることから、一つの解決策としてAIの活用が注目を集めているのです。 スケジューリングが特に課題となる業界 あらゆる産業・業務に関わるスケジューリングですが、特に人間が考えるだけでは最適解にたどり着けないほど複雑なスケジューリングが必要となる代表的な業界が、製造業、建設業、物流業です。 製造業 スケジューリングにおいて最も想像しやすく、例としても多く挙げられるのが製造業でしょう。代表的なものとして「どの製品を、いつまでに、どの程度生産するのか」という生産量・生産時期に関する「生産計画」と、組立てや加工などの工程・作業に関わる「製造計画」が挙げられます。 製造業においては、作業者・人材(Man)、機械設備(Machine)、材料(Material)の生産の三要素(3M)をそろえることが重要と言われ、材料が入っていること、つまり考慮に入れるべき変数・条件が多いことが特徴です。逆に言えば、製造業のように有形の製品を提供するのではなく、無形のサービスを提供する業界では、この材料がほとんど発生しないことになります。 参考:秋山高広「 生産三要素と改善の方向性 」 建設業 製造業に並んでスケジューリングが重要テーマになるのが建設業です。建築物や土木構造物の設計など工事の内容をまとめた「工事計画」、そしてその工事計画に基づいて実際の工事計画や工程、人員、資材、建機などを定めた「施工計画」が代表的な策定すべき計画です。 例えば土木工事においては、工期中で最もコストパフォーマンスの良い施工計画を立てるために、どの位置の土を、どの建機で、どの順番で工事するかといった膨大な条件の組合せを考慮する必要があります。人手によるマニュアル作業的な計画策定や、一般的によく用いられる数理最適化手法での策定には限界があるような複雑な計画が多く、強化学習など探索的なAIを活用できる可能性が模索されている業界の一つです。 当社の建設業でのプロジェクト事例についてはこちらをご覧ください。 土木工事での施工計画の最適化 物流業 物流業もスケジューリングが肝となる業界の一つです。「どの荷物を、どこに、どのルートで配送するか」の計画を考える「配送計画」あるいは「配送経路計画」がよく知られます。それだけでなく、物流倉庫内における在庫管理や入荷・出荷、ピッキングなど、多くの計画から成り立っているのが物流業です。 特に配送計画のスケジューリングでは、配達すべきモノとその配達タイミング(単に締め切りではなく、宅配便の時間帯指定のように受取可能タイミングも制約されることも)、配達員などの作業者、配送車などの他、ルーティングも重要な要素になります。ルーティングとは、配達元から配達先までの最適な経路を決めることで、距離、交通状況、有料道路の料金などを考慮する必要があるとなれば、配達員と配送車の拘束時間にも関わることから、かなり複雑な条件の組合せを加味した計画が必要になることは想像に難くありません。 AIで最適なスケジューリングを実現する四つのアプローチ 前述したような業界での複雑なスケジューリングを最適化するため、近年AIの活用が期待されているわけですが、「スケジューリング最適化AI」と一言で言っても、考えられる諸条件の組合せをどう探索させるかのアプローチがさまざま存在し、それぞれの業界・企業のビジネス環境や課題の特性に応じた最適な方法を選ぶことが鍵になります。ここでは代表的な四つのアプローチを取り上げます。 ルールベース ルールベースは、高速かつ低負荷な処理が可能な半面、文字通り、そのルール・ロジックを定義する必要があるため、制約条件が多い複雑な問題への対応力は低い手法です。人間が事前に定めたロジックに基づいて計画を出力させる手法であるため、比較的シンプルな組合せによる問題で、かつ説明性(提案するスケジューリングに至った論理が説明できること)が求められるような場合での利用が向いています。 数理最適化 数理最適化は、より良い計画をその都度、しらみ潰し的に探索して出力させる手法で、ルールベースよりも複雑性への対応力がやや高い手法です。一方、用いるデータ量に応じて計算処理時間と負荷がかかる特徴があるため、制約条件がある程度ありながらもロジックが組めるという、中程度の複雑性を持つ問題への利用が向いています。 メタヒューリスティクス まずヒューリスティクスとは、正解にある程度近い解を見つけ出すための経験則や発見方法のことで、「発見法」とも呼ばれます。例えば、服装からその人の性格や職業を判断することは、ヒューリステックな方法といえます。その上でメタヒューリスティクスとは、服装と性格・職業の関係といった特定の問題に依拠せず、幅広い分野に適用できる最適化・AI手法です。代表的なものに、解きたい問題を生物の進化の仕組みに模して、一番適応度の高い(生き残った)個体の遺伝子情報をその問題の解とする「遺伝的アルゴリズム」があります。その上で、スケジューリングにおけるメタヒューリスティクスの特徴は、都度計画を探索するものの、現実的な時間内で質の良い計画を探索・出力させることができることにあります。 参考:Webpia「 遺伝的アルゴリズムとは?わかりやすく解説! 」 強化学習 強化学習はAIの学習手法の一つで、スケジューリングにおいては「うまい計画策定の方法」を自律的に身に付けたAIに、AIが考える最適な計画を出力させるアプローチです。複雑な問題への対応力が非常に高く、計算処理時間も短く済む点にメリットがあります。ただし、シミュレータなどを含めた開発期間に時間がかかる上、説明性が低い特徴があります。そのため、中長期的な期間で解決が必要な複雑性の高い問題、かつ説明性がそれほど求められないケースでの利用が向いています。 ルールベース、数理最適化、強化学習の比較についてはこちらもご覧ください。 組合せ最適化ソリューション 個人とコンピュータのスケジューリングから、戦略の重要性を知る ところでスケジューリングはビジネス、言い換えれば組織での業務だけでなく、実は個人の活動(人生)や、コンピュータの仕組みにも共通する重要な概念です。それらも改めて確認することを通して、スケジューリング最適化AIをより高度にビジネスに活かすためのポイントを探っていきましょう。 個人とコンピュータのスケジューリング 個人の活動、つまり人生についていう場合、スケジューリングとは、先々の予定について、いつ、どこで、何をするのかを決めるプロセスを指します。将来すべきタスクや予定されているイベントを洗い出し、優先順位や順序、所要時間などを勘案して、いつ何をするかを確定させます。 そしてコンピュータにおいては、どの処理をいつ実行するか、プログラムに割り当てる資源の切り替えをいつ実行するかなどを決定することを指し、スケジューラという制御システムによって自動的に実行されます。コンピュータのOSには、スケジューリングの対象や頻度などが異なるいくつかのスケジューラが搭載されており、協調してプログラム実行の切り替えをしていきます。「長期スケジューラ」と「短期スケジューラ」の二つがあり、これにより、一つのCPUで複数のプログラムが並列に動作しているように振る舞わせることができます。 時間的・資源的制約の中で目的に適った成果を 以上のように、個人でも、コンピュータでも、そしてビジネスでも、複数の作業を要する仕事がさらに複数あって、作業開始時期や納期を守った上で、有限な資源をどれくらい効率良く使うかを最適化する問題は、すべてスケジューリング問題です。時間的制約と、有限である資源の割り当てと、満たすべき制約条件の中で、より目的に適った成果を出すための計画づくりともいえ、有限である以上は戦略があった方がより効果的な使い方ができるはずです。 出典:IT用語辞典 e-Words「 スケジューリング 【scheduling】 」 :宇野毅明「 スケジューリング問題 」 スケジューリングと戦略は密接 スケジューリングをする理由は「目的に適った成果を出す」ことであって、「なるべく多くの生産や販売を行う」ことではありません。なぜなら「なるべく」としてしまうと、際限なく利益を目指してしまいがちで、そのためにまた際限のない活動を助長してしまいます。そうすると、無理な資源の使い方をして持続可能性が低下したり、明確な目標数値がないために期待を下回る生産能力しか生かせなかったりしてしまいます。 そこで必要になるのが戦略です。戦略を定義付けるのは簡単ではありませんが、例えば音部大輔『なぜ「戦略」で差がつくのか』では、戦略を「目的達成のために資源をどう利用するかの指針」として定義しています。同書では、この定義にたどり着くまでに三つの「戦略が必要な理由」が検討されています。 一つ目は「達成すべき目的があるから」で、特にビジネスおいて行動には何かしらの目的があり、もし逆に目的がなければ戦略は必要ありません。二つ目は「資源には限りがあるから」で、前述の通りプロジェクトには締め切りや制約があり、資源を使う順序や量を決める指針が必要です。三つ目は、一つ目と二つ目を組み合わせた「達成すべき目的があり、かつ資源が有限であるから」です。目的がなければ一人ひとりが好きなように進めればいいし、仮に資源が無限であればどんどん使いまくればいいわけで、やはり戦略は必要ありません。 スケジューリングにおいても、計画を探索することそれ自体は確かにAIの力を借りることはできたとしても、「達成すべきビジネス成果に対してどのように計画を探索・策定するか」の方針としての戦略が重要になることは間違いありません。 AIスケジューリング導入事例 次にAIを活用したスケジューリングのビジネス導入事例をいくつか紹介します。 食品工場の生産計画立案にかかる時間を10分の1に短縮 ニチレイフーズでは2020年から「最適生産・要員計画自動立案システム」を運用しています。熟練者が複雑な制約条件をもとに立案していた生産・要員計画を、高度なAI技術を活用して再現・進化させるもので、最大16兆通りもの組み合わせの中から最適解を立案することに成功しています。 当初は、製造業などで使われている生産計画システムのいくつかを検証しましたが、ニチレイフーズの生産プロセスも複雑であるため、既存のシステムでは思うような成果が出ませんでした。そこで、数理最適化と機械学習を組み合わせた高度なAI技術を採用。過去数年分の膨大な生産計画データを用意し、整形した上でAIに学習させることで、熟練者の計画パターンを数値化することをまず実現しました。 計画立案時は、設備の稼働状況や納期、コスト、作業員のスキル、勤怠といった複雑な制約条件を考慮する必要があります。その際、熟練者はすべての制約条件を満たせない場合でも、臨機応変に条件を緩和しながら計画を立案しています。このような熟練者ならではのノウハウや経験則に基づく立案方法を再現すべく、検証やヒアリングを重ねながらチューニングを施し、少しずつ精度を高めていきました。その結果、1工場で最大16兆通りにもなる組み合わせの中から、最適解を高速に導き出す仕組みを構築しました。2024年現在は、六つの工場に導入し、従来の10分の1程度の時間に短縮して生産計画を自動立案することが可能になったとしています。 出典:ニチレイフーズ「 AI活用で生産計画を自動立案! 生産性向上と働き方改革をめざす 」 既存アプリと新システム連携で配送時間2割減目指す 西濃運輸は荷物の配送ルート作成を自動化する実証実験を始めました。期間は2024年9月1日から2025年2月末までで、6〜8の支店が対象です。西濃運輸の配達情報管理アプリ「カンナビ」と、AIベンダーが開発した配車・配送ルートを作成するクラウドをシステム連携するかたちです。 カンナビでは、配送先の位置情報などは表示されますが、コース順はドライバーが決めており、属人的な運用になっていました。荷物の荷札などについたバーコードをカンナビでスキャンし、配車・配送ルート作成クラウドが車両の走行データなどをAIで解析して最適なルートをはじき出し、経験の浅いドライバーでも的確なルートを通れるようにすることを狙っています。配送時間は約20%の削減を目指すとしています。 出典:日本経済新聞「 西濃運輸、名古屋大発新興と配送ルート自動化の実証実験 」 作業割当表の作成が1時間から1分に 食品スーパー大手のサミットは、客数予測、部門別売上高予測、商品発注、値下げ・廃棄という作業の他、従業員への作業割当にAIを導入しています。 同社は、事前に予測した客数や各部門の売上高から作業量を算出した上で、店舗責任者が約200の作業項目に対し、作業の優先度や従業員の出勤・退勤時間、習熟度などを踏まえ、エクセル上に10分単位で作業を割り当てるという人員配置手法を使っています。多いときには1店舗当たり100人以上の従業員が働いており、従来は、作業割当表の作成に1時間程度かかることもありました。 2023年にAIシステムを全店に導入したところ、約1分で数十万通りの候補の中から最適な作業割当表を作成できるようになりました。もちろん、店舗責任者が最終調整しなければならないものの、時間にして年8万時間程度、人件費換算で1億2000万円程度の削減効果があったとしています。 出典:日経ビジネス「 サミット全店、値引き業務にAI導入へ 住友商事が後押し 」 AIスケジューリングのメリットも戦略あってこそ AIでスケジューリングをするメリットは、前述の通り、より制約条件が多い複雑な問題を人間以上の精度で解けたり、短時間で解けたりすることです。しかしデメリットとして、選択するアプローチによって開発期間が長くなったり、説明性が低くなったりするなど、得意・不得意がそれぞれあることに注意が必要です。また、解くべき問題の内容によっては、必ずしもAIを用いることなく、ルールベースや数理最適化といった従来手法を用いれば十分なこともあります。さらには、そうしたAI手法と非AI手法を組み合わせることも有効な場合もあります。 そうした手法からどれを選び、時に組み合わせ、十分なビジネスインパクトを実現するには、こちらも前述の「目的達成のために資源をどう利用するかの指針」としての戦略が欠かせません。さらにこの戦略を立てるには、明確な目的・目標と、何の資源がどれだけ使えるかの正確な把握が必要です。 言い換えるならば、スケジューリング最適化AIの高度化のポイントは、AI技術そのものではなく、事前のビジネス目的と戦略の設計にあるということです。一般的には「要件定義」などとも言われますが、ビジネス環境の確認・整理、達成すべき目的と戦略、ロードマップの策定などを踏まえて、開発・導入すべきAIの設計を考えることが肝要で、当社では、こうした複雑な問題に対応し、ビジネス成果に貢献するためのAIの設計を検討するプロセスを「ソリューションデザイン」と名付け、より重要なものとして位置付けています。 スケジューリング最適化を含むAIの開発・導入に当たっては、当社のようにビジネスとAIそれぞれの視点から解くべき課題を俯瞰することを得意とするAIベンダーに相談することも有効な選択肢ですが、いずれにしても、AIはあくまでビジネス課題解決のためのソリューションです。導入ありきではなく、ビジネス成長のためにどう貢献できるかを第一に考えることを決して忘れてはなりません。 「 スケジューリング最適化AI 」のリーフレットを公開中です。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicksプロピッカー として活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post スケジューリング最適化AI、高度化の鍵は「戦略」にあり。導入事例も解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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AIを活用した組合せ最適化、カギの一つは強化学習 2023.10.24公開 2024.11.13更新 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 ビジネス上のタスクを完了させる方法に複数の組合せから選ばなくてはならない場合、その選択は、意思決定者の経験や知識に基づいた「ビジネス勘」に依存することが少なくありません。しかしAIを活用した「組合せ最適化」で、組合せの数が膨大であっても、最適な解を十分に短時間で導き出すことを実現する例が増えています。 目 次 ・ 組合せ最適化とは ・ 組合せ最適化の仕組み  ・ 強化学習の活用 ・ 組み合わせ最適化の精度を上げる方法 ・ ビジネスにおける組合せ最適化の活用事例  ・ 路線におけるダイヤの復旧  ・ 物流における経路の最適化 ・ AIを使うかどうかの判断も重要 組合せ最適化とは 組合せ最適化とは、条件を満たす解の中で一番良いものを求める「最適化問題」 の中でも、膨大な数の組合せから、条件を満たす組合せや、最も良い組合せを探索することです。 例えば、公共交通機関のダイヤや物流の配送ルートの策定をする場合、取れる選択肢が増えるとそれらの組み合わせの数は膨大になり、すべてを比較・検討して最適な解を見いだすのは困難になります。さらに、利用者数や道路状況など刻一刻と変わる要素を考慮に入れると、困難さはさらに上がります。 そこでAIを活用した組合せ最適化が注目されており、それによって最適解を見いだせれば、まずは生産性の向上や業務時間の削減といった効率化が狙えます。さらに、その業務が進化することによって、新しい価値を生み出せて、ビジネスモデルそのものが進化するという、イノベーションを起こせる可能性も出てきます。 有名な組合せ最適化に、「巡回セールスマン問題(Travelling Salesman Problem)」があります。巡回セールスマン問題は、「セールスマンがいくつかの都市を一度ずつすべて訪問して出発点に戻ってくるときに、移動距離が最小になる経路」を求める問題のことです。名前の通り、セールス担当者がとし訪問先の都市を巡る経路の探索や配送ルートの策定において役立つのはもちろんですし、例えば「ある都市には何時までに行かなければならない」「都市Aは都市Bの後に訪問しなければならない」といった制約条件を設定し、ある程度複雑な問題に対応することもできます。 そうした複雑な条件はなく、都市数をnとすると、可能な経路の総数はn!/2n通り存在します。nが小さいときには、すべての組合せを調べることができるので最短経路も分かります。しかしnが大きくなると、この組合せの総数は爆発的に増加しすべてを調べることは事実上不可能になります。例えば、例えば、5都市の場合は12通り、7都市で360通りですが、10都市で181,440通り、 30都市で4.42×10の30乗通りになってしまいます。そこから最適解を見つけるための計算は膨大になります。 この問いに対する答えを導くための最もシンプルな方法は、各経路の距離を一つずつ計算し、比較することで移動距離が最小となるものを導くものです。しかし上述の通り、すべての経路の組み合わせを合算すると膨大な数になるため、人間による計算で解くのは現実的ではありません。 そのため、AIが近年注目されています。コンピュータによる計算は人間による計算に比べて速度と正確性の面ではるかに優れていますが、コンピュータを組合せ最適化に使える前提は、制約条件が何であるかを明確にしており、何を計算すれば良いかが分かっていることです。逆に言えば、制約条件が複雑すぎたりその数が多すぎたりすると、そもそも何を計算すれば良いのかが分からず、問題を解けなくなってしまいます。そうした場合に検討に入れたいのが、後述もする強化学習を用いたアプローチです。AIが自律的に試行錯誤し、最適解を探索することによって、より優れた解を目指せます 参考:京都大学大学院情報学研究科 永持研究室「 簡単そうで難しい組合せ最適化 」 組合せ最適化の仕組み そもそも組合せ最適化は、数理最適化問題の一種として知られる問題解決手法です。数理最適化問題とは、特定の制約条件を満たした上で値を最小、あるいは最大化できる解を求めるための問いで、AIの問題解決能力の根幹につながるものとしても知られています。 AIで組合せ最適化を扱う際の流れは、データをインプットし、機械学習によってそれを分析し、最適な組合せを導くことです。そのために必要なのがアルゴリズム、つまり正しい解を導くための手順です。アルゴリズムを適切に改善することができれば、従来の何百倍、あるいは何万倍のスピードで、正しい答えを導くことができます。 近年は教師なし学習を用いた、アルゴリズムの自律的な発見と改良が可能なディープラーニングや強化学習の手法が発展を遂げていることにより、組合せ最適化問題に対して高度な解答が行えるようになってきている点も、注目すべきでしょう。 参考:梅⾕俊治「 問題解決に役⽴つ組合せ最適化とアルゴリズム 」 強化学習の活用 組合せ最適化問題に強化学習を適用することの利点は二つ挙げられます。 1点目は、解きたい最適化問題の場合の数が膨大になっても、強化学習では最適化に要する時間(推論時間)が大きくなりにくいという点です。強化学習では、エージェントが環境の状態に応じて取った行動に対して報酬を与え、そうして変わった環境を基にエージェントがまた行動をして報酬を得る、と繰り返して学習が進みます。 つまり、学習内容を次の推論に生かすことができるため、問題を解くためにかかる時間が場合の数に比例して増えないことが期待でき、それを示す研究も報告されています。 そうした強化学習の強みを、巡回セールスマン問題に適用してみましょう。例えば訪問すべき都市が頻繁に変わり、最適化問題がたびたび発生するような制約があるとします。このような条件下で強化学習を適用することで、最適化問題を一から解いていくのではなく、すでに解答済みの出力データを応用し、新しい巡回経路の開拓にかかる計算時間を大幅に削減できる可能性があります。 2点目は、強化学習を用いるとさまざまな最適化問題に対してほぼ一つの枠組みでアルゴリズムを構築することが可能になる点です。数理最適化アルゴリズムでは問題ごとに職人技による定式化やアルゴリズム開発が必要になるケースが一般的です。一方、強化学習では共通したフレームワークや技法を用いて、必要に応じた問題ごとのチューニングによって対応できます。つまり、過去に対応した最適化問題のアルゴリズムを別の問題にも当てはめ、一から計算する手間を省くことができるわけです。 強化学習を適用するコツとしては、学習を促進する報酬の設計、最適化途中の価値関数の設計、高速なサンプリングのための実装上の工夫といったことが挙げられます。逆に言えば、そうしたコツを踏まえず、強化学習を単に導入するだけでは、期待しているようなパフォーマンスを得られないこともあるため、運用に関するノウハウを何かしらの方法で確保する必要があります。 組合せ最適化の精度を上げる方法 組合せ最適化の精度を高めるための余地は、さまざまなところに残されています。どんなAIを使うのか、どんな計算機を用いるのかなどによって、処理速度の限界は大きく変化します。 例えば2023年に早稲田大学の研究グループは、イジング計算機を使って組合せ最適化問題を効率よく、高い精度で解くことのできる手法を発表しました。イジング計算機は、組合せ最適化問題の解答に特化した計算機として国内外で知られており、一般ユーザーもクラウドを介して利用ができるソリューションです。新しいアルゴリズムを使ってイジング計算機で問題を解くことにより、効率化を実現しています。 出典:早稲田大学「 制約をもつ組合せ最適化問題をイジング計算機で効率的かつ高精度に解くための新たな手法を開発 」 ビジネスにおける組合せ最適化の活用事例 組合せ最適化による恩恵は、すでにさまざまな領域で現れています 路線におけるダイヤの復旧 2023年に小田急電鉄が実証実験した、ダイヤが乱れた場合の復旧ダイヤの作成には、強化学習が活用されました。駅間の停車時間の最小化、旅客流動の最大化、制限速度の考慮や折り返し運転実施の有無など、多岐にわたる運行条件を数式に置き換えて計算する必要があるため計算量が膨大になってしまうためです。 強化学習はこのような大規模な組合せ最適化問題へ対処することもできます。強化学習済みのAIに現在の路線状況を与えることで、AIは復旧のためのルート最適化計画を提案し、鉄道職員はそれに基づいてダイヤ構築を進めることができました。従来はダイヤ作成の知見が豊富な職員にこの業務が属人化していましたが、強化学習の活用により、属人化の解消と、作業の短縮につながっています。 出典:日本経済新聞「 鉄道の復旧ダイヤ、数分で作成 「スジ屋」に迫るAI 」 物流における経路の最適化 ITの中でAI・機械学習と同様に注目を集めている技術に量子コンピューティングがあり、機械学習と組み合わせた「量子機械学習」によって学習能力の向上が考えられています。そうした量子コンピューティングを活用した事例も出てきています。 日野自動車の子会社であるNLJは、量子コンピューターを用いた組合せ最適化ソリューションの提供を物流向けに進めています。積載貨物の組み合わせ最適化を40秒で実施し、これまでは2時間かかっていた積載計算の負担を大幅に削減できました。 また、量子コンピューターによって導き出される計算結果も非常に信頼のおけるものです。同ソリューションの導入によって、これまで3台のトラックで輸送していたものを、ダブル連結トラック1台で運ぶことが可能となり、輸送コストの削減に貢献しています。 物流業界は特に人材不足が著しい業界であるため、組合せ最適化の活用による業務自動化 は、新しいトレンドとなって広く受け入れられるようになるでしょう。 出典:ニュースイッチ「 トラック積載貨物を最適化、量子計算活用して40秒で組み合わせ導き出すシステムがすごい 」 AIを使うかどうかの判断も重要 配送・物流ルートの決定、人員シフトの決定、製造計画の策定など、ビジネス上でもさまざまな組合せ最適化問題が存在し、そのためにAIを導入している例が増えており、組合せ最適化にAIを活用するのは有用だと言える状況ができてきています。 とはいえ、組合せ最適化はあらゆる問題を解決してくれるわけではありません。場合によっては他の手法を用いた方が短時間で解決につながったり、信頼できる答えが得られたりすることもあります。組合せ最適化問題を解くに当たっては、本コラムで取り上げた強化学習や数理最適化の他に、メタヒューリスティクスやルールベースを加えた四つのアプローチが考えられます。どれかが優れているということではなく、解決したい問題の内容や難易度に合わせて使い分けることが重要です。「なんとなくこのアプローチが良さそうだ」と思われている場合でも、さまざまな視点から検討をすると「実は他のアプローチの方が問題解決に最も役立った」となることが少なくありません。重要なのは、AIのプロフェッショナルとの協業により、ビジネス課題に合わせた最適なソリューション選びとそれを実行できる体制を準備しておき、単なる課題解決にとどまらず、あくまでビジネス成果を追求していくことでしょう。 Laboro.AIでは、これまで強化学習を使った最適化問題プロジェクトにも取り組んできており、それを基にした「 組合せ最適化ソリューション 」を開発しています。本ソリューションの提供に当たっては、問題の性質や条件に合わせ、強化学習に加えて適宜、数理最適化などのアプローチ も検討しながらオーダーメイドで開発を行い、 ビジネス成果に向かって伴走します。 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年以上、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicksプロピッカー として活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post AIを活用した組合せ最適化、カギの一つは強化学習 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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需要予測AIよ、需要は予測するものでなく作るものだ。 2022.3.6公開 2024.11.13更新 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 リードマーケター 熊谷勇一 概 要 大量データの分析を得意とするAIの活用分野の一つに、需要予測があります。人間には難しいビッグデータの解析も、AIであれば高速に処理し、経営判断に役立てられる予測も可能になるかもしれません。しかし、そもそも需要は予測できるものなのでしょうか。AIによる需要予測のメリットや導入事例の他、「需要とは何か」について考えを巡らせていきたいと思います。 目 次 ・ 需要予測とは ・ 完璧な需要予測は、人にもAIにも難しい ・ 需要予測AIを用いることのメリット  ・ 勘を信じて生まれる、業務効率化  ・ 信頼が生まれれば、強い根拠になる ・ 需要予測の代表的な手法  ・ 移動平均法  ・ 指数平滑法  ・ 回帰分析  ・ 機械学習 ・ 需要予測AIを確かなものにするポイント  ・ やはりデータをそろえる  ・ 現場とともに作っていく ・ 需要予測AIの導入事例  ・ 【小売業界】オンライン購買履歴を基に実店舗に反映  ・ 【飲食業界】茶店の来店客数予測で新サービス提供へ  ・ 【食品業界】気候により生産計画作成  ・ 【サービス業】タクシー配車での需要予測 ・ 需要予測の人材不足や属人化をどう解消するか ・ 需要予測AIの活用とは、文化の浸透だ 需要予測とは 需要予測とは、簡単に言えば、商品やサービスが今後市場にどれくらい必要とされるのかを予測することです。ビジネスの成長を考える上で、販売する商品が多く売れるに越したことはありません。しかし市場に商品をそれだけ購入するだけのニーズがなければ、どれだけ多くの商品を生産したり、仕入れたりしたとしても、在庫を抱えるコストだけが膨らんでしまいます。 逆に、市場ニーズを過小評価してしまい、生産量や仕入れ量を少なく見積もってしまうと、それだけ機会損失が生まれてしまうこととなります。このような過剰・過小供給のギャップを少しでも小さくする上で必要なのが、需要予測です。データ分析によって将来の需要がどれくらい発生するのかを読み取り、生産計画や販売計画に需要予測を当てはめます。 出典:なるほど統計学園「 需要予測 」 完璧な需要予測は、人にもAIにも難しい ビジネスはつまるところ製品・サービスの提供であり、需要予測が欠かせません。一般的には、過去の傾向や季節や人流など需要の変動要因などを加味して予測値をなんとかひねり出す、というのがほとんどだったでしょう。一方、近年「需要予測AI」を謳うソリューションやそれを組み込んだサービスが多数登場し、「AIが人間以上の精度でマーケット需要を予測してくれる」といった期待も持たれているでしょう。 しかし、残念ながら、需要予測AIソリューションを導入したからといって完璧な予測ができるわけではありません。AIは入力されたデータをプログラムに基づいて計算を施すソフトウエアでしかなく、需要の根拠となるデータがなければ正確な需要を算出するのは難しいからです。 さらに、ここで言う「需要の根拠となるデータ」とは何かが重要な点です。私たちは一般的に「需要」≒「売り上げ」と考えることが多いように思いますが、売り上げは市場ニーズを過不足なく完全に表す数値ではありません。売り上げという金額は、欠品のために機会損失してしまった金額、営業努力でなんとか押し込んだ金額、顧客の都合により来月に購入を引き延ばさざるを得なかった金額など、さまざまな影響が足し引きされた結果として生まれたものです。つまり、そもそも市場ニーズを正確に算出できないことと同じように、需要そのものにも正解がないのです。 答えの分からない将来予測にも関わらず、なぜAIによる需要予測に注目が集まっているのでしょうか。 需要予測AIを用いることのメリット 勘を信じて生まれる、業務効率化 ありきたりにはなってしまいますが、AI需要予測を用いることの一番のメリットは、これまで人が頭をひねらせていた予測値の算出作業をコンピュータにさせることによる業務の効率化です。たとえその予測精度・予測内容が完璧でなかったとしても、毎月のデータ集約や分析作業が少しでも楽になれば、人的リソースを他業務に割り振ることができるというわけです。 ただここで分かれ目となるのは、「AIの勘を信じられるか」ということです。これまで自分自身の経験や勘を信じてやっていた業務だからこそ、私たちは機械が出してきた予測結果を信じることに難しさを覚えるのが普通です。3時間かかっていた分析作業を、AIが3分で算出してきた−−。こうした怪しげにも聞こえる現実を受け止められるかどうか、そして怪しいからといってまた3時間かけて検証作業をするなどの非効率化に陥らないよう、AIというパートナーを信頼できることが、実は需要予測AIを活用するに当たって大きなポイントになります。 信頼が生まれれば、強い根拠になる AIに対する信頼が個人の中にも、会社の中にも根付いた状態を現出させられれば、今度はその裏返しとして「AIがこう予測している」という強い根拠としてそのアウトプットを活用できるようになるはずです。 とはいえ、AIあるいは機械学習という技術は、良くも悪くも入力されたデータに正直です。仮に生産数や発注量を決定するとして、過去の売り上げ、気象情報、POS(販売時点情報管理)データ、来店数を変数とした場合には、それに応じた予測結果が導き出されます。ここに含まれていない競合企業の販売施策、店舗近隣でのイベント情報、販売奨励金の変動による売り上げの変化などは当然ながら加味されません。 AIが弾き出した予測結果の裏で根拠として含まれている情報、逆に加味されていない情報を正確に理解し、そこに不足する部分を人の経験と勘でどう補うかが重要になってきます。つまり、需要予測にAIを導入することで私たちは、新たな経験と勘を携えていく必要も生まれてくるということです。 需要予測の代表的な手法 需要予測にはいくつかの手法があり、事業の特性に合わせて選択されてきました。需要が実際にはどのように算出されるかイメージしやすいように、4種類の手法を簡潔に取り上げます。 移動平均法 移動平均法とは、過去の売り上げから平均を算出し、需要の予測を行うというシンプルな手法です。 例えば、 4月売上:100万円 5月売上:140万円 6月売上:120万円 という場合、これの平均は120万円になるため、7月の売上は120万円だと予測します。 指数平滑法 指数平滑法では、過去の売り上げの実績と予測値の両方を使って未来の予測値を算出します。 例えば、4月の売上実績が120万円で、売上予測が100万円だった場合、計算式は以下のようになります。 5月の予測値=A×120万円+(1-A)×100万円 この式におけるAを平滑化係数といい、0と1の間から任意の数値を設定します。Aが0.5の場合、計算では実績と予測がシンプルに平均で出され、5月の予測値は110万円になります。最新の実績データをより重視する場合はAの数値が大きくなります。例えば0.7であれば、5月の予測値は114万円になります。 回帰分析 売り上げに影響する複数の要因から売上予測を算出する手法が、回帰分析です。売り上げに影響する要素としては、店舗面積、駅からの距離、天候、圏内人口、席数、駐車場数などがあります。 なるべく定量的な要素が望ましく、データが多ければ多いほどより正確な予測が期待できます。 回帰分析にも複数の種類があり、必要に応じて使い分けられるのが理想です。例えば最もシンプルな手法である短回帰分析は、一つの目的変数に対し、一つの説明変数で構成されます。単一の要素間の関係性を探る上で有効です。 重回帰分析は、一つの目的変数に対し複数の説明変数がある手法です。回帰分析の中で最もよく使われるもので、一つの事象に対し、それぞれの説明変数がどのような影響を与えているのかを調べる上で役に立ちます。 機械学習 顧客ニーズや消費傾向が激しく変化するのが当たり前になっている現在では、需要予測の難易度が上がっています。多くの企業はベテラン担当者の勘や経験に頼っており、予測精度にばらつきが出てしまうことが少なくありません。 そうした中、AI(機械学習)による需要予測のニーズが高まっています。膨大なデータを分析できるAIであれば、人が今まで気づかなかった傾向や需要に影響する要因をつかみ、高精度な予測が見込めます。また、AIはデータを基に需要を予測するため、特別なスキルや経験のない担当者でも一定精度の予測ができるようになり、属人化を防げるというメリットもあります。 需要予測AIを確かなものにするポイント 「需要は捉えどころがないからこそ、AIによる予測も完璧にはなり得ない」。この前提を受け止めることができれば、需要予測AIの活用範囲にも幅が生まれてきます。需要予測AIをより確かなものとしてビジネスに生かすためのポイントを考えてみます。 やはりデータをそろえる 根拠となるデータの存在は、AIの活用にはやはり重要なポイントです。単に量が多いということだけではなく、種類の多さにも気を配る必要があります。売り上げ、類似・競合商品の売れ行き、気温・天候、広告出稿に関する情報など、挙げればキリがありませんが、これらデータもあれば良いというわけではなく、予測したい結果に対してどのように関連する値であって、どう影響を及ぼすのかをしっかりと踏まえた上で用いなければ持ち腐れになってしまうことは言うまでもありません。また、データのフォーマットについても気を配る必要があります。例えば、手書きの営業日報が数万枚あっただけではほぼ何もない状態に近く、AIにデータをインプットするためには、AIが読み込みやすいフォーマットにデータを整形することも大切な準備の一つです。 現場とともに作って行く 上でも触れましたが、AIという機械が算出した需要予測の結果を用いるためには、AIというツールを信頼しなければ話が進むことはありません。特に経営企画部門が営業部門に需要予測AIを導入する際、現場から強い抵抗が得られることが少なくありません。営業部門に取ってみれば需要とは「予測するもの」ではなく、営業努力によって「作り出すもの」だからです。こうした心持ちの営業現場の従業員に対して「AIが予測したから」という説明は通用するはずもありません。もはやAIと関係のない話になってしまいますが、こうした事態の発生は、日頃からの部門間コミュニケーションの濃度に左右されます。企画段階から現場部門とともに話を進めていくことが、需要予測AIの導入・活用の最重要ポイントとも言えるかもしれません。 さらに、常にPDCAを回すことも重要です。結果と完全に一致した予測が出たとしても、そのときはたまたま当たっただけで、次の月からズレていく可能性も考えられます。AIの力を過信せず、常に改善を続ける体制を作ることが大切です。 需要予測AIを用いた業務フローについてはもちろんですが、AIそれ自体にも改善が必要なことが多いかもしれません。その点を考えれば、パッケージ型のAIよりも、カスタム型のAIのほうが柔軟な改善が可能だと言えるでしょう。 需要予測AIの導入事例 かなりリアルで正直、そして地道なプロセスを踏む需要予測AIですが、それも用い方次第、近年では以下のような活用事例が生まれています。 【小売業界】オンライン購買履歴を基に実店舗に反映 需要予測がビジネスの成否を握ると言っても過言ではない小売業界では、顧客データに加えて多様なデータを用いたAIによる需要予測が試みられています。インテリア雑貨を取り扱う企業では、いわゆるO2O(Online to Offline)あるいはオムニチャネルでの施策を展開しています。オンラインショップでのユーザーデータを活用して、どの地域に住んでいる顧客がどういった商品を購買する可能性が高いかを可視化し、店舗の品ぞろえや発注量を最適化することで実店舗の売り上げを大きく伸ばすことに成功しています。 出典:BUSINESS INSIDER「 AIは小売業に何をもたらすのか。マイクロソフトの事例から見えてきたもの 」 参考:Laboro.AIコラム「 POSからの脱却。小売AIの進化と可能性 」 【飲食業界】茶店の来店客数予測で新サービス提供へ 日本三名園の一つ、金沢市の兼六園で茶店を経営する兼六は、AIによる来客数予測を通じた仕入れの効率化などにつなげています。天候や時期などによって客の増減があるかを過去のデータを基に推計し、90%超の的中率で客数を事前に当てられる日が増えています。今後は、勘に頼っていた従業員の勤務シフトづくりや食材の仕入れの見直しにつなげていくとしています。さらに、業務効率化で余裕ができたこともあり、テイクアウトメニューを新設することもできました。 出典:日本経済新聞「 兼六園の茶店、デジタル化でサービス改善 客数予測も 」 【食品業界】気候により生産計画作成 ほぼすべての商品で賞味期限が設けられる食品業界も、正確な需要予測の恩恵を受けやすい業界の一つです。ある豆腐メーカーでは日本気象協会が発表する「豆腐指数」という過去の販売数や気候、SNSの投稿分析などを踏まえた指数を参考にすることで、作りすぎの豆腐の量を0.06%に抑えられたとことで話題になりました。 この豆腐メーカーが抱えていた課題は、スーパーからの発注に応えるためには注文前から作り始めなければならず、欠品を避けるために作りすぎてしまうことでした。賞味期限の短い豆腐は、作りすぎると廃棄せざるを得なくなります。 「豆腐指数」というAIでは、豆腐の販売数や気温の変化、湿度、風量などの過去1年間にわたるデータを分析し、豆腐の売れそうな量を予測します。この豆腐指数を使って需要予測を行ったところ、作りすぎとなる量を0.06%に抑えることができ、年間1000万円もの無駄の削減につながったとしています。 出典:NHK 「食品の需要予測はAIで」 参考:Laboro.AIコラム「 新・食体験に挑む。食品AIの可能性 」 【サービス業】タクシー配車での需要予測 過去のデータから未来を予測する技術の活用は、タクシーの乗車予測でも行われています。ある実証実験では過去のデータを元に利用客の多い乗車ポイントをAIで予測、新人ドライバーに活用させることで1人当たりの1日の売上が1400円以上も向上したことが報告されています。 タクシーの運行における課題としては、新人ドライバーが不慣れな地域を走行する際、あるいは商業施設の開業などの変化に対応する際に、乗客を見つけるのが難しいというものがあります。これをAIで予測して解決しようという事例であり、過去のデータはもちろん、人口変動や天気予報なども鑑みて需要予測を行っています。 売り上げの向上の他、タクシー業務の効率の指標である実車率(乗客を乗せている時間の率)の改善も見られたとしています。 出典:NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル Vol. 26 No. 2 「AIタクシー ─交通運行の最適化をめざしたタクシーの乗車需要予測技術― 」 参考:Laboro.AIコラム「 事例から知る。機械学習の基礎と活用5ジャンル 」 需要予測の人材不足や属人化をどう解消するか 需要予測を実施するに当たっては、そのための人材確保が必要です。正確な需要予測を行うには、統計学的手法に知見のある、データサイエンティストの確保が求められます。ただ、近年のAI活用やデータ活用の需要拡大に伴い、このような人物を気軽に確保することは難しくなっているだけでなく、そうした能力を身に付けるのは一朝一夕にはいきません。 データサイエンティストはそもそも、日本ではあまり知られていない職業という点も人材確保を難しくしている原因の一つです。2023年に発表された調査によると、米国では回答者の63.6%がデータサイエンティストという職業を知っていた一方、日本ではわずか25.1%にとどまっています。このようなデータからも、需要予測に対応できる能力を持った人を探すことが難しいことが分かり、円滑な人材確保が今後望める可能性も低いと言えるでしょう。 また、仮に需要予測ができる人材を確保できても、人間主導で分析をするのには限界があります。あらゆるデータサイエンスの業務を少人数ですべて対応するのも負担が大きく、業務を可能な限り自動化することで、担当者のタスクを減らすための仕組みづくりが必要です。 出典:一般社団法人データサイエンティスト協会「 データサイエンティストをめぐる環境の違い〈一般ビジネスパーソン調査の日米比較〉 」 需要予測AIの活用とは、文化の浸透だ 今回は需要予測AIをテーマに色々と考えを巡らせてみました。これまでの通り「需要予測AI」というキーワードの盛り上がりや期待感とは裏腹に、そもそも需要という正解も実態もないものを予測しようということに難しさが潜んでいることを押さえておく必要があります。まるで神様の手の上で転がされるように右に左に変動する需要というものは、まさに私たち消費者の虚ろげな購買心理そのものです。「完璧な予測は不可能である」という前提に立って、どのような予測をAIにさせ、どのように文化としてその活用を社内に浸透させていくか、こうした地道な一つひとつの活動が需要予測AIをビジネスで活用することの成否を握っています。 Laboro.AIが「カスタムAI」というオーダーメイド型のAI開発にこだわるのはこうした背景から、つまり、企業によって業務内容や目的、環境、社風が異なるとすれば、汎用的なAIプロダクトやAIソリューションは力を発揮しにくいという前提に立っているためです。それぞれの文化や目的に合わせてAIを導入するのであれば、AIもそれぞれに適した形にデザインする必要があります。そして単なるツールとして「AI導入」を達成することを目指すのではなく、社内の文化としてAIの活用を浸透させることも重要なデザイン範囲の一部です。Laboro.AIでは、このAIとビジネス両面のデザインプロセスを「 ソリューションデザイン 」と呼んでいます。 執筆者 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicksプロピッカー として活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年以上、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 The post 需要予測AIよ、需要は予測するものでなく作るものだ。 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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不安で団結するZ世代。AIで“自動化しすぎる未来”を止めるためには 2024.11.4 監 修 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 10代〜20代のZ世代は、彼らを取り巻く世界に対する深い不安によって団結していると言われています。その一つにあるAIへの不安は、多くの点で気候変動について若者が抱える不安と似ていて、彼らはその両方が制御不能になりつつあると感じているようです。 ただし、AIに対しては期待や信頼の感情も混ざり合っていて、AIに不安を抱える学生が自分の将来についてAIに尋ねるというような矛盾も起こっています。こうした傾向に敏感な若い世代の研究者は、AIシステムによる若者のメンタルサポートに取り組んでいたりもします。 より身近になりつつあるAI に「仕事が奪われる」という複雑な気持ちを抱える若者が、どうすれば自分の進むべき道を信じられるのか、彼らの不安に心を重ねながら考えてみたいと思います。 目 次 ・ AIを知るほどに、期待も不安も大きくなる  ・ 自分が将来なりたいものを信じられない  ・ 若者もテクノロジーに置いていかれる ・ AIに対する不安は、気候変動と同じ  ・ Z世代は社会を取り巻く不安で団結する  ・ 人間がAIに近づいている ・ AIに不安を抱えながら、AIに不安を相談する  ・ AIが将来の自分を見せてくれる ・ 未知の脅威の中で育つZ世代  ・ 情報が覆っても、自分を覆さない ・ 「なぜ勉強するのか」を知りたい  ・ 0.01%の使える水を探すように ・ 未来を作るのは、AIではなく若者たち  ・ 「自動化」<「拡張」を目指す AIを知るほどに、期待も不安も大きくなる 自分が将来なりたいものを信じられない 「将来、何になりたいですか?」 ほんの数年前まで、この質問に対して進路選択の岐路に立つ若者たちの答えは、ある程度の確信に基づいていました。しかし、圧倒的な量とスピードに加え、アウトプットの質が急速に人間を追い越しつつある生成AIの成長を目の当たりにし、学生たちは自分の将来の仕事がどうなるのかという不安を大きくして います 。 しかしその気持ちは矛盾を孕み、AIが利益をもたらすという期待も入り混じっているのだ そうです 。 若者もテクノロジーに置いていかれる 最も賢い人間よりも賢いAIが登場するのは「恐らく来年か、2年以内だろう」と、イーロン・マスク氏が 予測した ように、近い将来AIはどうなってしまうのだろうという不安がますます現実味を帯びています。 例えば「GPT-4」のパフォーマンスは、標準化された適性検査において、平均的な人間の集団の95%を超えているという報告がなされて おり 、その後に「GPT-4o」や「o1」が登場、いまだその成長に限界は見えていません。また、テキストから画像を生成できるようになったAIが生成した画像は1年間で150億枚という驚異的な量で、この数は写真が発明されて以来の150年間に撮影された写真の数にほぼ匹敵する そうです 。 人間の予想を超えた成長スピードを更新し続けるAIの時代に、人間の能力をどのように守っていけばいいのかと提起し、著書『The Skill Code』にまとめたカリフォルニア大学サンタバーバラ校のマット・ビーン助教授は、次のように 述べています 。 「新しいテクノロジーが登場すると、通常、その恩恵は若者に広がります。しかし、AI の進歩は猛烈なスピードのため、すべての賭けは外れている」 AIに対する不安は、気候変動と同じ Z世代は社会を取り巻く不安で団結する 現在10 代〜20代で「デジタルネイティブ」とも呼ばれるZ世代は、生まれた時からインターネットやデジタル機器に囲まれてきた世代で、インターネットで世界とつながり、多様性や気候変動など社会の課題にも敏感です。 今若者が抱えるAIに対する不安は多くの点で気候変動について感じる不安と似ていて、その両方が制御不能になりつつあると感じている そうです 。そうしたことから、Z世代は「世界を取り巻く深い不安によって団結している」と 言われています 。 人間がAIに近づいている 50業種に及ぶプロフェッショナルを対象とした「職場におけるAIの認識」レポートによると、回答者の半数以上が、AIが仕事を代替することに懸念を示し、中でも最も高いレベルの不安を示したのがZ世代 でした 。 若者の仕事に対する参加度合いは目に見えて下がりつつあるようで、イギリスの国家統計に基づいたデータをみると、Z世代の働かない若者の数は他のどの年齢層よりも急増しており、10年前よりも10%も多くの若者が仕事をしていないのだ そうです 。こうした状況についてイギリスのシェフィールド大学経営管理学スクールのリチャード・マーフィー教授は、「若者が現代の職場に幻滅する理由は十分にある」という 意見を述べ 、若者の共感を呼んでいます。 例えば、AIでどんどん自動化されていく一連の採用プロセスは、その状況をよく表しているかもしれません。雇用主側の効率を上げることはできるものの、一方の応募する若者にとっては、AIに選ばれるように履歴書を歪め、画面に向かってプレゼンをし、多くの時間を機械とのやりとりに費やすことになり、そうした労力にもかかわらず、実際にはスキルや経験が足らないために選考を突破するのは難しい・・・前出のマーフィー教授の動画にも、そのプロセスは非人間的で「魂を打ち砕かれるものだった」という コメント がありました。 「AIが人間に近づいている」と世間では言われますが、実際には人間がAIに合わせて歩み寄っていて、そういった体験を重ねるうちに若者は、人間に対する信頼さえも見失ってしまうのかもしれません。 AIへの不安を抱えながら、AIに不安を相談する AIが将来の自分を見せてくれる AIに対する疲弊感が増大しているように見える一方で、若者にとってAIは日々の勉強や課題を助けてくれる心強いツールというだけでなく、苦しい時の心の拠り所へと存在意義を拡大していることも事実です。LLM(大規模言語モデル)の躍進によってAIにさまざまなことをオープンに尋ねるようになった若者たちは、ある瞬間は難しい数学の解き方を聞いていたとしても、次の瞬間には未来に対する不安を相談していたりするのです。 そうした現状に応えるように、若い世代の研究者の間では、若者のメンタルヘルスをサポートするAIシステムの開発も進んでいます。中でも、今年10月に発表されたマサチューセッツ工科大学開発のユニークなAI システム「 Future You 」(未来のあなた)が注目を集めています。 このシステムは、LLMをベースに「私があなたの歳だったときは…」などと話す言語パターンを用いて未来の自分と会話している感覚を高めます。60歳の架空の自分と会話しながらユーザーに“将来の自己継続性” を感じさせることで、ユーザーの人生の選択をアシストすることができるとされて います 。 ちなみに将来の自己継続性とは、個人が未来の自分との連続性を感じる度合いのことを指します。研究によると、将来の自己継続性を強く意識している人は、経済投資、学業での成功、自己啓発に関してより思慮深い決定を下すことがわかっており、このAIシステムを通じてそれを意識させることで、人々が将来のキャリアを検討したり、現在の決定が将来にどのような影響を与えるかを評価したりするのに役立つのだ そうです 。 未知の脅威の中で育つZ世代 情報が覆っても、自分を覆さない そもそも10〜20代の若者は気候変動やコロナウイルスなど、溢れる情報の中で、何が正しいのか、誰が正しいのかわからない未知の脅威を感じながら成長してきました。AIに関して言えば、学校ではAIを禁止されたかと思うと、それをまた 撤回される というような手のひら返しの方針変更を経験したりもしています。今では教師の方が生徒よりも多くAIを使用しているとされる レポート もあるほどです。 振り返れば、戦時中〜戦後の日本でも、子どもたちがそれまで勉強してきた教科書の内容を墨で塗りつぶさなければならなかった過去がありました。養老孟司氏は自らそれを体験したために「間違ったら墨を塗ればいい」という感覚が身についてしまったと、次のように 言います 。 「国民が命懸けでやったことでも戦後になったら墨で塗りつぶす。『世の中ってそういうもんだろ』っていうのが完全に入っちゃった、子供の時に。」 世界経済フォーラムの『グローバルリスク報告書 2024年版』では、誤情報やフェイクニュースなどを含む「偽情報」が、今後2年間に世界が直面する最も深刻なリスクとしてランク付けされているように、AIによって情報の質が以前よりも問われるようになりました。 しかしながら、昔から情報というものは、それをそういうものだと受け取るのではなく、受け取る人が自分の物差しで判断しなければならないものであり、しばらく急激な社会変化を経験しなかった私たちの考える力が鈍っていたことにも気づかされます。 「なぜ勉強するのか」を知りたい 0.01% の使える水を探すように 教師たちがAIを使った不正を既存の枠組みの中で心配している一方で、学生たちはAI時代に足を踏み入れながら「なぜ学ぶのか」と、より根本的な疑問と格闘しています。 実際、アメリカで子どもたちの権利擁護団体コモン・センス・メディアが12歳〜17歳までの子供を対象に行った調査によると、自由回答であるにもかかわらず、5人に1人が「生活を改善するためにできる最も重要なこと」として、教育制度の改善または改革と回答した そうです 。 きっと私たちの中には「この方程式は将来何の役に立つのか」と思いながら勉強していた人も少なくないでしょうが、鉛筆さえも使う必要がなくなっていく社会で、今の若者はより本質的な問いを立てる想像力に長けているのかもしれません。 実はそのような批判的な視点は、AI時代の人間に必要な能力として求められる可能性があります。AIは完全ではないため継続的な監視が必要で、品質管理の仕事が強化される可能性が高いと考えられているからです。人をAIに盲従させないように、AIの出す答えを人の成長を後押しするものにすることは、AI 開発側における重要な課題としても投げかけられて います 。 地球の表面の70%が水であるにもかかわらず人間の生活に使える水が0.01%だけ である のと同じように、莫大なデータが生成されている世界で若者が疑いの目を拡張し、社会に有用なものを見極めることができれば将来に光が見えてくるのかもしれません。 「自動化」<「拡張」を目指す 未来を作るのは、AIではなく若者たち イノベーションが多くの雇用も生み出すということは歴史が証明しています。しかしそれは「自動化」よりも人間の能力を「拡張」するものとしてテクノロジーが用いられた結果であり、過去40年に限っては、自動化による雇用侵食の影響が強まった一方で、人間の能力の拡張による雇用増加の影響は強まっていないのだ そうです 。 AIはとくに自動化に役立つとされるツールではありますが、きっと疑いの目を失わなければ、テクノロジーによって「自動化」した分、それ以上に自分は「拡張」しているのか確認し、自分の可能性を広げる挑戦を続けることは可能でしょう。今持ち上げているダンベルをAIに代わりに持ってもらうなら、自分の空いた手は新しいダンベルを持つ、というように挑戦をやめなければ人は新しい仕事を生み出せるのかもしれません。 人生は「真っ白いキャンバスに色を塗っていく」とよく例えられますが、実はそうではなく、放っておけば暗くなってしまう人生を、どれだけ明るくできるかという挑戦を重ねていくものなのだという話を目にしました。大自然と共に生きたカメラマン、星野道夫さんの著書「 イニュニック 生命-アラスカの原野を旅する 」の中に、次のような言葉があります。 「黒いキャンバスの上にどんな明るい色を塗っても、その下にある黒はどうしてもかすかに浮き出てくる。だから再びその上に色を重ねてゆく。私はね、生きてゆくということは、そんな終わりのない作業のような気がするんだよ」 このままいけば時間が経つほどにアルゴリズムはより賢くなり、AIのつくる仮想世界はより魅惑的になり、非仮想の現実世界に目を向けられなくなっていく未来もあるのかもしれません。 私たちはAIを未来の象徴のように掲げますが、子どもや若者こそが未来であり、教育においても仕事においてもAI開発においても、社会を導くものとして彼らの能力を拡張するAIのあり方を追及し選択していくことが、今の大人に課せられた責任なのかもしれません。 監修者 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicksプロピッカー として活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 不安で団結するZ世代。AIで“自動化しすぎる未来”を止めるためには first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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