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答えのない、マーケティング×AIの世界への挑戦 2021.10.5公開 2024.3.1更新 株式会社Laboro.AI マーケティング部長 和田 崇 概 要 製品、価格、流通、広告––。「マーケティング」という概念は非常に広い領域を指し、対象範囲は多岐にわたります。顧客の体験価値を高めるために行われるあらゆるマーケティング活動に対して、AIはどのように活用できる可能性を持っているのでしょうか。マーケティング領域におけるAI活用について、マーケティングの基礎知識も交え、その現状と未来を探ります。 目 次 ・ そもそも「マーケティング」とは ・ 四つのPからなる「マーケティング・ミックス」  ・ 製品(Product)  ・ 価格(Price)  ・ 流通(Placement)  ・ プロモーション(Promotion) ・ なぜマーケティングにAIが必要なのか  ・ データ量が膨大に  ・ よりパーソナライズされた情報が求められている ・ マーケティングにおけるAIの活用可能性  ・ パーソナライズ  ・ 最適化  ・ 新たなマーケット軸の発見  ・ 店舗の動線分析  ・ 需要予測  ・ AIチャットボットによるカスタマーサポート ・ AIが活用されているマーケティング業務  ・ インターネット広告運用  ・ SEO対策  ・ デザイン生成 ・ AI×マーケティングで期待される効果  ・ データ分析の効率化  ・ 顧客対応の充実  ・ インターネット広告・コンテンツの最適化 ・ マーケティングでのAI活用事例  ・ <商品×AI> ZOZO「売らない店」でのコーディネート  ・ <価格×AI>小売店での値付けで在庫回転率が向上  ・ <流通×AI> リテールAIの「リアイル」  ・ <プロモーション×AI>パッケージデザインの生成  ・ <市場調査×AI> マーケットリサーチへの生成AIの活用  ・ <消費者心理×AI> 未来購買パターン予測にもとづく商品レコメンド ・ 正解のない消費者心理に挑むということ そもそも「マーケティング」とは いまだ「マーケティング=広告」「マーケティング=調査」「マーケティング=デジタル戦略」といった捉え方が少なくありませんが、マーケティング発祥の地であり世界最大のマーケティング学会組織であるアメリカマーケティング協会(AMA)の定義は、マーケティングを次のように定義しています。 マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。 Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering, and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large. こちらは2007年のAMAの定義ですが、今現在も大きな変更はされていません。マーケティングとは、広告や調査といった一部分の戦略・機能を指す言葉ではなく、価値ある商品サービスを創造し、消費者をはじめとする社会に伝達・配達し、金銭などとの交換を促すための全ての活動を指します。非常に広い概念なのです。 この広い概念を機能にまで落とし込んだフレームワークが「マーケティング・ミックス」です。マーケティング・ミックスは、上記の活動を最大公約数的に分類したものとも捉えられ、マーケティング活動の軸となる四つの領域を示したものであり、それぞれの頭文字を「P」でそろえていることから「4P」とも呼ばれます。 【四つのPからなるマーケティング・ミックス】  ・製品(Product):製品やブランドに関する戦略  ・価格(Price):製品の価格に関する戦略  ・流通(Placement):製品の流通や店舗立地に関する戦略  ・プロモーション(Promotion):広告宣伝やコミュニケーションに関する戦略 四つのPからなる「マーケティング・ミックス」 なおマーケティング・ミックスは、マーケティング界隈ではマーケティング論の神とも崇められるフィリップ・コトラーが提唱したと言われることもあります。しかし実際には、ジェローム・マッカーシーが1960年に提唱し、後にコトラーが展開したことは、あまり知られていません。 マーケティング・ミックスは、50年以上たった今も、マーケティングにおける有用なフレームワークとして用いられ続けています。4Pは、有形の消費財のマーケティング戦略を検討する際のマーケティング・ミックスであり、無形のサービス財の場合はさらに人的要因(Personnel)、業務プロセス(Process)、物的証拠(Physical Evidence)を加えた「7P」を検討すべきことが提唱されています。ここでは、ベースとなる4Pについて、近年の動向とともにもう少し深堀していきます 製品(Product) 製品(Product)は、製品の特徴やデザインだけでなく、品質、パッケージ、ブランド、保証まで含め、企業が販売する製品に関わるすべての領域が含まれます。商品のパッケージが良ければ確かに売り上げにはつながるかもしれませんが、内容がイマイチであればその後のリピートにつながらないだけでなく、ブランド価値も低迷させ、顧客満足度は下がります。近年LTV(顧客生涯価値)やカスタマージャーニー、カスタマーサクセスという考え方も注目されていますが、一人の顧客がその企業に対して継続的にエンゲージメントを高めていくためには、製品(Product)領域が中心を担っている領域だと言えます。 価格(Price) 製品ととともに重要な検討領域が、価格(Price)です。製品の価格は、コストベースに決定する方法もあれば、競合他社の製品の価格をベースに決定する方法、あるいは利益ベースで決定する方法などがあります。単なる数字と考えて終わらせることもできますが、薄利多売で価格を低めに設定しすぎるとブランド価値を損なうなど、価格表示は顧客心理に強く紐付いています。他にも、セール価格を「○円引き」と表示するか「○%OFF」と書くかで売れ行きに違いが出るという報告もあり、「単なる数字」では終わらせられない奥の深い領域が、この価格(Price)です。 流通(Placement) 製品・サービスの流通方法や販売・提供場所を検討するのが、三つ目の流通(Placement)です。時間や経費などを含めたコストを最大限効率化するための流通経路を策定する、あるいは商圏として規模が大きい地域への出店を検討する、また小売店舗内の回遊率を上げるための導線を構築するなど、製品を消費者に送り届けるために必要な検討を行うのがこの領域です。 近年では、オムニチャネル、O2O(Online to Offline)、D2C(Direct to Consumer)などのキーワードも注目され、オンラインとオフラインを組み合わせた流通チャネルの工夫も見られるようになってきました。その他、「自社で販売ルートを構築するのか」「販売代理店制を敷くのか」「販売代理店のリベートをどう設けるのか」など、この流通(Placement)では、コストにも直結する配送・流通チャネルについてさまざまな検討が行われます。 プロモーション(Promotion) 製品の存在を消費者に知ってもらうため欠かせないのが、プロモーション(Promotion)です。テレビや雑誌、新聞等を活用した4マス広告、OOH(交通広告や屋外広告など生活者が家庭以外の場所で接する広告)、インターネットやSNS広告などのデジタルマーケティング、コンテンツマーケティングなどの他、店頭の販売スタッフも重要なプロモーション施策の一つとして位置付けられます。 消費者の広告に対する行動をモデル化した有名なフレームワークとしてAIDMA(注意→関心→欲求→記憶→行動)がよく知られています。近年では、SNSの普及を背景に、AISAS(注意→関心→検索→行動→共有)やSIPS(共感→確認→参加→共有)など、さまざまな広告に対する顧客行動モデルが生み出されています。 なぜマーケティングにAIが必要なのか マーケティングにおいてAIがどのように活用されているかをご紹介する前に、そもそもなぜAIが必要とされているかについて解説します。 データ量が膨大に マーケティングにおいてAIが必要とされている理由の一つは、世界中で生成されるデータ量が増加を続けているためです。 米国の調査会社IDCとHDD(ハードディスクドライブ)メーカーのSeagateによる2018年の調査よれば、2011年に初めて1ゼタバイト(ゼタは10の21乗、1兆ギガバイト)を突破し、2018年に33ゼタバイト、2025年に175ゼタバイト、さらに成長が続けば2030年代にヨタバイト(ヨタは10の24乗)に達する見通しを出しています。 マーケティングに利用するためのデータも、分析して知見を見いだすには人力を超えるほど膨大になっており、AIを活用しないとより深い知見を得ることは難しくなっています。 出典:Seagate “IDC White paper sponsored by Seagate, Data Age 2025”    日本経済新聞 「太陽は「2000クエタグラム」 単位の新接頭語31年ぶり」 よりパーソナライズされた情報が求められている 大量に消費される画一的な製品・サービスよりも、一人ひとりに合った製品・サービス、あるいは情報が求められる時代になっています。 顧客やユーザー一人ひとりに合った情報を提示するには、膨大なデータを分析する必要もあり、人力では限界があります。AIの処理能力を活用することで、細分化しているニーズに応え、一人ひとりに合ったマーケティングを行えることが期待できます。 マーケティングにおけるAIの活用可能性 いったん4Pを前提とした場合、AI技術はマーケティング・ミックスに応じてさまざまな活用可能性が考えられ、実際にも多数の活用事例が生まれています。一覧にすると、以下のような活用が代表的です。 マーケティングそのものがカバーする領域が広いだけに、さまざまな活用可能性が検討できるわけですが、総じてマーケティングにおけるAI活用はどのようなメリットをもたらすのでしょうか。 パーソナライズ 「おすすめ商品」で知られるレコメンデーションシステムやダイナミックプライシング、広告配信の最適化など、マーケティング領域におけるAI技術活用の最も大きなメリットは、顧客やユーザーの嗜好に合わせて最適なコンテンツを予測・表示できるパーソナライズです。AI技術、特に現在その中心を占める機械学習技術を活用することにより、これまで以上に高度なデータ分析と予測が可能になってきています。さらに通信環境やコンピュータ処理技術の高度化も背景に、ユーザーごとに個別のコンテンツを配信し、次のアクションへとつながりやすい施策実施が可能になってきています。 一方で、「AIを活用すれば必ずパーソナライズが可能」という早合点は禁物で、リアルタイムにパーソナライズするということは、それなりに高速で高精度なシステム環境が必要にもなります。また、AIが勝手にユーザーの好みを抽出してくれるということは技術的にも非現実的な話です。実際には「嗜好」や「好み」が具体的にどのような指標で数値的に把握できるのかをマーケターが厳密に定義する必要があるなど、パーソナライズに向けたハードルは決して低いものではないことを認識しておくことが肝要です。 パーソナライズについてはこちらもご覧ください。 パーソナライゼーション【ビジネス成長のためのAI用語】 ブランド人格を反映した対話テキスト自動生成 最適化 パーソナライズもその一つではありますが、AI技術を活用することによって、多くのマーケティング施策が目指す成果やターゲットに最適化されることも期待されるメリットの一つです。 近年、GANというアルゴリズムが提唱されて以降、画像を自動生成する取り組みがマーケティング領域では多く見られるようになりました。広告バナーや商品パッケージデザインを過去の顧客データに基づいて、ユーザーごとに最適化するような試みが今後も増えていくものと考えられます。例えば配送トラックやタクシーなどの流通・配送ルートの最適化も注目を集める分野で、最短ルート・最小コストで効率的な車両配備パターンをリアルタイムで算出するようなプロジェクトも数多く見られるようになっています。 ですが、この最適化問題も非常に解決が難しい分野です。配送ルートの場合、時間、燃費、人件費、交通状況など、複雑に絡み合うさまざまな事情をどのような優先度で、どれくらいの割合で加味をするかなど、開発段階において設計すべき要因が多く存在します。最終的に何をもって最適化したと言えるのか、達成すべきKPIの設定が重要になってくる分野です。 新たなマーケット軸の発見 機械学習技術の中でも特に注目を集め、進化が著しいのが、ディープラーニングです。ディープラーニングは、大量のデータを学習することを通して、人間では気づかなかったようなデータ間に潜む規則性や特徴の抽出が得意と言われています。マーケティング戦略の立案においては、その第一ステップとしてSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)戦略が重要と言われます。例えば新たな市場セグメンテーション軸や、これまでにないポジショニング領域の発見なども期待されるところです。 しかしながら、こうした新たな軸や領域の発見は、良質かつ大量のデータを保有して初めて実現することでもあります。例えば、一部地域や世代の顧客データのみが極端に多い場合には、AIの予測もそうした属性に引っ張られてしまいます。データに偏りやバイアスがある場合には、当然ながらAIの出力も偏って導き出されてしまうため、求める答えに適したデータを収集し、利用することが重要になります。 店舗の動線分析 実店舗のマーケティングにおいて期待されているのが、AIによる動線分析です。例えば、店舗内の人流を分析することで棚のレイアウトや商品の配置を改善し、利用客の買い回りを改善できる可能性があります。うまく活用すれば、店舗に必要な店員の数を減らして他の仕事に当たってもらえたり、デジタルサイネージの位置や広告を流すタイミングなどを最適化したりといった活用も期待できるでしょう。 需要予測 マーケティングにおいては、過去のデータから需要を予測し、商品の発注を行ったりキャンペーンを打ち出したりします。AIによって過去の傾向を分析できれば、より適切なタイミングでの発注や効果の高いタイミングでのキャンペーンに結び付き、過剰な在庫を抱えるのを避けたり、経営リソースをより効果的に配分できたりする可能性があります。 需要予測についてはこちらもご覧ください。 需要予測AIよ、需要は予測するものでなく作るものだ。 AIチャットボットによるカスタマーサポート ウェブサイトにおけるAI活用としてよく見られるようになったのが、質問を受け付けて自動で回答したり問題の振り分けをしたりするAIチャットボットです。チャットボットはAIを活用して、よくある質問には無人で答えられるようカスタマイズ可能で、顧客が欲しいと思ったタイミングで欲しい情報を提供できる面で、マーケティングに貢献しています。 AIが活用されているマーケティング業務 AIがマーケティング業務においてどのように活用されているか、具体的に見ていきます。 インターネット広告運用 ウェブマーケティングにおいて広告を利用する際、マーケターの知見だけに頼らずに、簡単に広告を出稿できるようになったことには、AIの恩恵もあります。例えば、インターネット広告の出稿先の一つであるGoogleのリスティング広告では、簡単な設定を行うことで、キーワードの最適化や入札などをAIが分析、代行してくれます。 SEO対策 ウェブマーケティングにおいて、自社サイトをGoogleの検索順位で上位を目指す「SEO(Search Engine Optimization)」が欠かせません。SEOでは、サイト内部のコンテンツを改善する内部施策と、サイト外部との関わり方を改善する外部施策に分かれますが、どちらでもAIを活用できます。例えば、内部施策では検索順位の24時間監視・取得、SEOに有利とされるテキストやコードの生成、外部施策では競合サイトの分析、被リンクの自動生成などがあります。 デザイン生成 例えば、ウェブ制作会社にサイト制作を依頼するのが難しい小規模ビジネスでも、AIを活用したウェブサイト制作サービスを利用することで、デザインが簡単にできる仕組みも用意されています。 また、インターネット広告に使用するバナー(画像)をAIに生成させたり、ABテストを行わせたりするサービスも登場しています。 従来ABテストを行う際は、デザイナーなどが複数のクリエイティブを制作した上でその効果を比較するため、その分制作の時間・労力・コストがかかるため、売り上げが期待できる注力商品でしか実践しにくい面がありました。しかしAI、特に生成AIを活用することで、大量にクリエイティブの制作ができるため、売れ筋ではない商品でもテストしやすくなリます。 出典:日本経済新聞「 24年のEC動向 「生成AI」と「ライブコマース」が来る 」 AI×マーケティングで期待される効果 マーケティングにAIを活用することで、どのような効果が期待できるでしょうか。 データ分析の効率化 AIは大量のデータを分析することに長けています。良質なビッグデータを用意し、目的に合わせたアルゴリズムのAIシステムを導入できれば、これまで使っていたシステムよりも分析を効率化できる可能性が高まります。 顧客対応の充実 チャットボットのように、AIを活用することで人力では難しかった領域でも顧客対応が可能になります。例えば問い合わせ対応業務では、チャットボットがシナリオ分岐のように質問と回答を続けて問題を特定した上で解決方法を提示、もしくは担当者を対応させられることができます。これにより、従来人間が対応していた作業をAIが代行し、人間は人間にしかできない顧客対応により多くのリソースを割けるようになります。 インターネット広告・コンテンツの最適化 前述のように、AIはウェブマーケティングにおいてすでにさまざまな領域で活用されています。こうしたサービスを上手く活用することで、インターネット広告を効率良く出稿し、コンテンツがユーザーへ届くために最適化できるようになります。 マーケティングでのAI活用事例 では具体的にここ数年でのマーケティングにおけるAI活用事例を、マーケティング・ミックスにも基づいて紹介します。 <商品×AI> ZOZO「売らない店」でのコーディネート ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」などを運営するZOZOは、2022年12に初の実店舗「niaulab by ZOZO(ニアウラボ)」を東京・表参道に開店しました。売ることを目的としない、いわゆる「売らない店」で、プロのスタイリストとヘアメークアーティストによるパーソナルスタイリングサービスを受けられます。 スタイリングに当たっては、同社が開発した「niaulab AI」が活用されています。このAIは、同社が展開するコーディネート投稿サービス「WEAR」が持つ約1300万件のコーディネートデータを基に、顧客ごとに似合うコーディネートを提案します。LINEで事前にヒアリングした情報はniaulab AIに送ると、体験者の好みやなりたいイメージに合いそうなコーディネート3パターンがAIによって提案されます。 出典:日経クロストレンド 「ZOZO「売らない店」体験ルポ 3日で2万件応募の実力は」 <価格×AI> 小売店での値付けで在庫回転率が向上 小売のドン・キホーテは、2020年から各店にAI価格システムを導入し、価格を見直すべき商品に優先順位をつけるなどの改良を加えています。同システムは在庫回転率の改善につながっているとのことです。実際、在庫を効率的に捌いてどれだけの売り上げを稼いでいるのかを示す指標「棚卸し資産(在庫)回転率」を見ると、2022年6月期は8.9回で、前年同期から0.2回の改善、10年前の6回と比べるとほぼ1.5倍になっています。 出典:日経MJ「 AIvs店員 どっちが値付けで上手い? ドンキやユニー 」 <流通×AI> リテールAIの「リアイル」 小売、卸、流通、メーカーなどの各プレイヤーが密に連携し、AIなどの技術を用いて流通業界の構造改革を進めているのが、トライアルグループのRetail AIが発表したAIプラットフォームプロジェクト「リアイル」です。Retail AIでは、AIカメラを活用した欠品防止や、スマートレジカートなどの活用を進めた小売店舗「TRIAL」の展開を進めています。部分最適ではなく全体最適を重視し、小売や流通など一部を改善するのではなく、全体が協力することでさまざまな改革を起こすことが目指されています。 例えば、AI技術を用いて各社が連携することで目指すのは「欲しいものが欲しいときにすぐ手に入る」という買い物体験です。また、小売・流通業界で3割ほど発生していると言われている「ムダ・ムラ・ムリ」を減らしてコストを削減していくことなどが志向されています。 出典: MD NEXT「トライアルが放つ、リテールAI プラットフォームプロジェクト「リアイル」の戦略とは」 <プロモーション×AI>パッケージデザインの生成 製品戦略にも関わる分野ですが、プラグが提供を開始したのが、最適な商品パッケージを提案するサービス「パッケージデザインAI」です。このシステムでは、920万人にも及ぶ消費者調査データを基に学習をしており、画像素材をアップロードすることで好感度の高いであろうデザインを自動生成するものです。 最終的に1000案から上位100点のデザインを表示する上、「おいしそう」「かわいい」などイメージワードに合わせたランキング表示もでき、目指す商品コンセプトに合わせたデザイン生成が目指されています。 出典: CNET「プラグ、商品パッケージの「デザイン」をAIが自動生成–1000案の中からトップ100を表示」 <市場調査×AI> マーケットリサーチへの生成AIの活用 生活者動向の変化の速さに伴う市場調査・分析の時間短縮が求められていることなどを背景に、生成AIを活用してマーケティングリサーチ業務の利便性向上を図る検証も進められています。NTTデータ先端技術がインテージに対して支援をしている取り組みで、ウェブアンケートの生成や構造化データや非構造化データの集計・分類といった定性分析の業務において、生成AIの活用の有効性を検証し、活用方法の確立を目指すとしています。 出典:NTTデータ先端技術「 マーケティングリサーチ業務への生成AI活用検証を開始 」 <消費者心理×AI> 未来購買パターン予測にもとづく商品レコメンド こちらは当社が大手アパレルECサイト様向けに手がけた事例です。レコメンデーションシステムは、今やECサイトでは当たりの機能になりつつありますが、通常、閲覧履歴や購買履歴に基づいて商品をレコメンドする方法が主流です。一方で、「見た ⇄ 見ていない」「買った ⇄ 買っていない」という2軸の評価では、ユーザーの興味関心度を把握するには十分ではなく、季節外れの商品をおすすめしてしまったり、すでに購入した商品を提案したりするなど、的外れなレコメンデーションが起こることも実際です。 Laboro.AIが開発・提供したこのカスタムAIでは、LSTMという時系列情報を加味することに長けたアルゴリズムを用いて、どの順番で商品を見たか、どのタイミングで見たかなど、時間軸に沿った情報も分析した上で商品をレコメンドする仕組みを構築しました。この事例について詳しくは、以下のページをご覧ください。 Laboro.AI プロジェクト事例: 未来購買パターン予測にもとづく商品レコメンド 正解のない消費者心理に挑むということ 「AIが消費者の好みを抽出してくれる」「AIが売れるデザインを生成してくれる」「AIがクリック率を上げる広告配信をしてくれる」、AIの普及・浸透と共に、AIに対する過大な期待も少なからず生まれています。過去のデータを基に学習し、次の可能性を予測する機械学習という技術は、実はマーケティングとはあまり相性が良いものではありません。というのも、その時々で意思決定が変わってしまう、移ろいやすい消費者心理は捉え難く、過去のデータから傾向は分かっても、「必ず売れる」正解を示してくれるわけではないからです。 これはAI技術の限界ということではなく、そもそも消費者の購買パターンや購買心理に定まったものがないということに起因します。AI導入・活用を検討するマーケターにとっては、学習させるデータを精緻に整えることが重要になります。つまり、自社がターゲットとする「消費者」とはどういう属性で表される人なのか、「興味がある」という状態は具体的にどのような指標によって計測される状態なのか、消費者に望むアクションは把握可能な基準においてどのようなフローを踏むことなのかなど、消費者の行動・心理の解像度をできるだけ上げて捉えていくことが、AI技術の活用では鍵となります。 AI技術を活用して、正解のない消費者心理に挑むということは、曖昧で不明瞭な消費者心理をデータ化することとも言えます。より丁寧に、精緻に消費者心理を捉えることが、AI技術をうまく活用することにつながっていくはずです。 The post 答えのない、マーケティング×AIの世界への挑戦 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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ハードルを飛び越えろ。金融AIの活用と事例 2021.7.21公開 2024.2.22更新 概 要 長年にわたる取引データを保有する金融業界は、データの存在が前提となるAI関連技術を適用しやすく、導入が進んでいる業種の一つだと言われています。金融業界でなぜAIが注目されるのか、その背景や導入メリット、活用事例をとともに、そこに潜む難しさについても紹介します。 目 次 ・ 金融業界でAIが注目される背景  ・ 金融業界ならではの特徴  ・ 開発環境の高度化と、消費者需要の変化 ・ 金融業界にもらたらされる、AI導入の四つのメリット  ・ 定型業務の自動化  ・ ヒューマンエラーの削減  ・ サービス対応力の向上  ・ 市場動向の予測 ・ 金融業界×AI 導入事例5選  ・ 住宅ローン審査へのAI導入  ・ 広告制作物のAI校閲・校正システム  ・ データ保護観点でのAI学習技術  ・ 営業提案に生成AIを活用  ・ ChatGPTで保険商品の強化 ・ 実は難しい金融業界でのAI活用 金融業界でAIが注目される背景 世界経済フォーラムがデロイトとの協力により発表したレポートでは、銀行業界のCEOのうち76%がAIに関する取り組みを最優先事項だと考え、金融サービス業界の経営幹部の52%がAIに対して「かなりの」投資をしていると回答しています。金融業界でなぜ、これほどAIが注目を集めるのでしょうか。 出典: 日立『【第5回】銀行・金融サービス・保険にAIが与える影響-金融市場の概要』 金融業界ならではの特徴 金融業界とAIの親和性が高い理由には、以下のような点があると考えられます。 膨大な量のデータ 投資銀行をはじめ金融サービスを提供する各機関は、長年にわたる取引実績を背景に、その記録形式はさまざまではあるものの、膨大な量のデータを保有しています。AIは人間では処理しきれない大量のデータを処理し、その中から特徴的なパターンを見つけ出すことで、それら情報を分類する、あるいはその傾向から次の事象を推論するといったタスク処理を得意とします。膨大かつ多様、しかも更新頻度の高いデータ、すなわちビッグデータを保有している金融機関は、AIを導入することにより生み出される価値が非常に高い業種の一つだと言えます。 間接金融から直接金融へのシフト 金融を大きく分けると、間接金融と直接金融の二つに分けることができます。 間接金融は、資金の供給側と需要側の間に金融機関が入り、両者が直接やり取りすることはありません。一方、直接金融は資金の供給側と需要側が直接やり取りをし、資金の取引を行います。 間接金融の代表的なかたちは、銀行の一般利用者が自身の資金を預貯金し、銀行が預貯金によって得た資金を必要としている企業に貸し出すというものです。日本ではこの間接金融が戦後の経済成長を支えてきたという経緯があります。直接金融では、出資金や株式、債権、投資信託といった「証券」を供給側と需要側が直接やり取りをします。その取引のためのマーケットをつくり、取次などを行うのが証券会社です。 今後、金融の在り方は直接金融へとシフトしていくトレンドが予想されています。それを支える背景の一つが、通信やAIの技術的進化です。現在の日本ではなかなか動きが遅い面もあるものの、直接金融の扱いやすさやサービスの多様性が今後ますます増進し、資金の供給側・需要側の双方が、さまざまな選択肢から適したサービスを選べるようになっていくはずです。 開発環境の高度化と、消費者需要の変化 金融業界に限らず、近年では簡単に利用できるオープンソースのソフトウェアが増え、企業向けのオンラインストレージサービスが普及しています。これにより、AIシステムを比較的低コストで導入できるようになったことも、導入が進む背景の一つと言えます。 また、時代に応じた消費者需要の変化も要因の一つです。消費者にとってみれば、これまで提供されてきた金融商品やサービス、あるいはその安全性といった価値は、徐々に当たり前のものと見なされるようになっていきます。競合ひしめく金融業界において、各金融機関はサービスの安全性や利便性、多様性、そして他者との差別化をより高めていくために、AIという最新技術を用いる必要性が迫られていることも、背景として挙げられます。 金融業界にもらたらされる、AI導入の四つのメリット AI技術との親和性が高い金融業界において、AI導入でどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。考えられる中で代表的な四つのメリットを紹介します。 定型業務の自動化 正確性が求められる銀行など金融機関の業務では、明確にマニュアル化された定型的なプロセスが重要になります。そのため、RPA(Robotics Process Automation)システムを活用した業務の自動化が進められている一方、AIを用いたより複雑な業務の自動化も期待される分野です。いわゆるルーチンワークだけでなく、定型化可能な業務を洗い出し、自動化のための業務オペレーションを見直し、空いた人的リソースを他の業務のために確保するといった進展が期待されます。 ヒューマンエラーの削減 上に重なる部分もありますが、ルールに基づいた繰り返しが伴うタスク処理はコンピュータが得意とするところです。AIにより定型業務の自動化が進むことによって、ヒューマンエラーの削減が期待できます。ヒューマンエラーの削減はサービス品質の向上につながるだけでなく、エラー対応やクレーム対応のために確保していたリソースを他業務に充てるといった、新たな運用も見いだされるはずです。 サービス対応力の向上 金融業界での代表的なAI活用例の一つは、お客様対応のためのチャットボットです。サービス提供内容が多岐にわたる金融機関においては、24時間365日対応可能なチャットボットが、顧客からの相談にいつでも対応できる体制を整えることのメリットは大きく、構造化されたデータベースがありさえすれば、正確なサポートを顧客に対して提供することが可能になるはずです。また、そうした対応記録からさらなるデータ活用を描くことも可能かもしれません。 しかしチャットボットは、データベースとして構築された範囲から情報をあくまでマニュアル的に引き出すものであるため、定型的な応対に留まるのが現在の技術的な限界で、人間のような臨機応変で柔軟な応対は難しいのが実際です。一般的には、YES・Noレベルの簡単な対応に用いるか、コールセンターにつなぐ前の一次受けとカテゴリーの振り分けを行うなどの活用が現実的です。サービス応対の完全自動化を目指すのではなく、チャットボットと人との協働を前提とした業務オペレーションを構築する視点が欠かせません。 市場動向の予測 金融に関する市場の動向を高い精度で予測できれば、金融機関の利用者により良い提案・サービス提供ができ、ひいては自社の業務や経営戦略の質を向上させられるでしょう。過去の大量のデータを分析して予測を導き出すことは、AIが得意とすることの一つです。ただしもちろん、AIによる予測をひたすら信じるのではなく、人間による最終的な判断を支援してくれる一つの検討材料と捉えるのが妥当でしょう。 金融業界×AI 導入事例5選 最後に金融業界でのAI導入事例を五つご紹介します。 住宅ローン審査へのAI導入 住宅ローンの審査にAIを導入し、申請者が素早く申請を行えるようにしたのが三菱UFJ銀行の「住宅ローンQuick審査」です。住宅ローンQuick審査では、NECのAI技術群「NEC the WISE」の異種混合学習技術を活用し、事前審査に必要な多くのデータの中から規則性を分析、審査判断を行えるとしています。申請者は従来よりも少ない入力項目を埋めるだけで申請ができ、最短15分で審査結果を知れるとのことです。 出典: NEC『NECのAI技術が、三菱UFJ銀行の「住宅ローンQuick審査」サービスに採用』 広告制作物のAI校閲・校正システム みずほ銀行が採用したシステムが、凸版印刷が開発したデジタルメディアや印刷物に掲載される広告物の校閲・校正を支援できるAIシステムです。このAI校閲・校正支援システムは、業界特有の表記や専門用語を個別に学習し、業界や企業のルールに合わせた文章の校閲・校正の支援ができます。校閲・校正担当者は自動チェック機能などを使って効率良く確認作業ができるようになり、みずほ銀行では広告制作に関わる作業者の負担やヒューマンエラーを減らすことに成功しています。 出典: 凸版印刷『凸版印刷、みずほ銀行の校閲・校正業務をAIで支援』 データ保護観点でのAI学習技術 近年、金融業界ではブロックチェーンの活用・投資が活発になってきていますが、NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)が開発したAI技術「DeepProtect」は、データの秘匿性を保持したまま学習結果を反映するためのディープラーニング技術です。 DeepProtectでは、複数の金融機関から提供されたデータを暗号化し、暗号化したまま中央サーバーに蓄積します。そして暗号化したデータを復号することなく、学習を更新することができるというものです。今後、顧客データなど外部に開示できない各金融機関の情報を集め、複数機関が連携したデータネットワークの構築が目指されています。 出典: IT Leaders『データの秘匿性を保って複数社での連携利用を可能にするマシンラーニング技術、NICTが開発』 営業提案に生成AIを活用 ふくおかフィナンシャルグループは、新たな営業支援システムを導入し、法人営業ですべき「次の一手」を現場行員に自動で助言する体制を整えています。同システムの最大の特徴である機能は、行員が顧客との会話で集めた情報や財務データなどを蓄積してデータベースを作成し、過去に成功した営業事例でみられた傾向を分析し、取引先に提案すべきことを担当行員に示唆することです。 この機能への生成AIの活用を進めており、現在はパターンごとに用意した文章を表示していますが、将来は個別案件ごとに具体的な提案を一から書き上げられることを計画しています。また、既に社内向けには生成AIを導入済みで、融資の承認を得るための稟議書づくりなどに活用しています。 出典:日本経済新聞「 ふくおかFG、DXで変わる法人営業 「次の一手」助言 」 ChatGPTで保険商品の強化 住友生命保険は、ChatGPTの技術を基に開発したチャットシステムを使い、主力の健康増進型保険「Vitality」の強化を進めています。具体的には、企画づくりや調査、企画書や作業計画書などの文書作成の効率化、SNS投稿用の告知文の作成などへの活用です。 保険業というかなり繊細な個人情報を扱う業種のため、情報漏洩や権利侵害、虚偽の情報を出力する「ハルシネーション」などには特に注意を払っています。例えば、クラウド上に同社向けのテナント領域内に構築したプライベートクラウドと、住友生命社内のシステムを専用線でつないでおり、入出力するデータはプライベートクラウドには一切蓄積されない仕組みにしているとしています。また、顧客の個人情報をシステムに入力したとしても流出しない仕組みにしているものの、そもそも個人情報を入力しないルールを設けています。 出典:日本経済新聞「 住友生命が1万人で生成AI活用 企画書作成は1日で完了 」 実は難しい金融業界でのAI活用 多くのデータを保有し、業務範囲も多岐にわたる金融業界は、AIとの親和性が高く、活用可能性が高いようにも見えます。しかし、そこにはデータの秘匿性の問題からくるデータ活用の難しさや、AIの出力結果に求められる正確性の高さや更新頻度の多さなど、AI技術を適用するに際してのハードルがいくつも存在します。これらの点は金融業界でAI導入を進める上での特有の難しさだと言えるでしょう。そのため、効率化や自動化を目的とした定型的な業務へのAI導入は比較的行われる傾向にありますが、金融の本業に関わる部分へのAIの活用はまだまだ道半ばにあります。 当社ではAI導入・活用に当たって、ビジネスとAI技術の両方を理解した「ソリューションデザイナ」が、開発だけでなく導入後の運用方法までも見据えたAI開発をする「ソリューションデザイン」という概念を提唱しています。まさに、ビジネス理解なくして変革が伴わない業界の一つが、この金融業界です。単にAIという技術の革新性に注目するだけでなく、データ活用にまつわる環境整備やプライバシー保護のための制度構築など、組織・環境・制度の変革も伴った視点が金融業界でのイノベーション創出には必要になるはずです。 The post ハードルを飛び越えろ。金融AIの活用と事例 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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教育もAIも、一律ではダメ。教育変革のためのAI活用 2021.3.19公開 2024.2.21更新 概 要 コンピュータによる高度な処理を可能にするAI技術は、なんでも解決できる万能な技術と捉えられがちですが、実際には単機能であり、特定の課題に合わせたカスタム開発が必要になります。一方で、活用次第では人が行うには非効率な作業を大幅に効率化することもでき、人間とAIが共存することで新しい価値を創造できることが期待されています。 AIの導入により高い価値を見いだせると期待されている分野の一つが、教育です。まだAIの活用は限定的ですが、教育現場が抱える課題を解決し、誰もが必要な教育を効率良く受けられるようになることが期待されます。このコラムでは、教育現場においてAIができることについて考えていきます。 目 次 ・ 教育現場の課題  ・ 一対多による一律教育の限界  ・ 教員の不足 ・ AIができること  ・ 画像認識  ・ 音声認識  ・ 行動予測 ・ 教育にAIを導入する四つのメリット  ・ 採点業務の効率化  ・ 指導の平準化  ・ データ分析に基づく授業や、カリキュラムの評価・改善  ・ 進路決定の支援 ・ 教育にAIを導入するデメリット ・ 教育へのAI導入例  ・ 英語発音評価システム  ・ いじめ検知  ・ オーダーメイド学習プログラム  ・ 音声アシスト・FAQの自動化  ・ 授業への活用 ・ AIで変革する教育現場 教育現場の課題 多くの先達の努力により、教育は改善や進化を繰り返し、より多くの人が高度な教育を受けられるようになってきています。しかし、教育現場には依然として課題が残っています。 一対多による一律教育の限界 教育現場における大きな課題の一つが、一人の教師が多数の生徒を相手に一方向的に行う教育の限界です。 現在の教育は指導要領によって学ぶ内容が決められているだけでなく、教室における一対多による一律な授業によって進められることが主流です。教師の努力によって生徒一人ひとりに寄り添った対応をすることはできても、授業のフォーマットは基本的に一斉授業であり、内容が難しくてついていけなくなる生徒、反対に理解が早くて退屈に感じてしまう生徒はどうしても出てきます。授業に置いていかれた生徒は教育の機会を逸し、授業を退屈に思う生徒はより高い教育を受けられたはずの時間を無駄にしてしまうことにもなります。 教員の不足 教育現場で大きな役割を担うのが教員ですが、その不足が大きな課題となっています。2022年1月に文部科学省が発表した調査内容によれば、全国の公立小中学校・高校・特別支援学校の4.8%を占める1,591校で、本来学校に配置するはずの教員の人数を満たせていないことが明らかになっています。こうした教員の不足は、実に8万人に近い児童や生徒に影響を及ぼすと考えられています。 文部科学省は続く2023年に、全国の都道府県・政令市の教育委員会に、2022年度と比較した教員不足の状況に関するアンケート調査結果「 「教師不足」への対応等について(アンケート結果の共有と留意点) 」を発表しています。それによると、小中高と特別支援学校を合わせた全体では「悪化した」が29団体(42.6%)で最も多く、「同程度」が28団体(41.2%)、「改善した」は11団体(16.2%)にとどまりました。 教員不足が起きている背景としては、「産休・育休取得者数の増加」「特別支援学級の増加」「転入等による学級数の増加」などが挙げられます。一方、調査では不足はなかったと回答した県であっても、退職者への声掛けなどの苦労によって人員を確保している現状があると言われています。 出典:朝日新聞DIGITAL「 文科省調査 教員不足1591校で 専門家『深刻な現実明らかに』 」 AIができること AIは人間の知性を代替するようなものではなく、特定のタスクを高度に行うための技術です。現在、AI技術は以下をはじめとする分野で技術革新が見られています。 画像認識 画像に写っている物体を認識し、その結果に合わせて分類を行ったり、文字を認識して意味のある文として処理したりといった画像認識の領域は、AIの技術革新がとくに顕著な分野の一つです。画像認識技術の精度は人を上回る成果も残すようになっており、教育においては記述問題の採点にAIが活用されるなどの応用が行われています。 音声認識 人が発話した内容をテキストとして抽出する音声認識も、AIの進化が著しい分野の一つです。音声認識AIを用いたテキスト抽出によって、高度な文字起こしや、声のイントネーション・変化などから発話者の感情を推測するといった技術も生まれています。 行動 予測 さまざまなデータから人の行動を分析し、人がどのような状態にあるか、あるいは次にどのような状態になるかを予想することもAIで可能になってきています。よく知られているのは顧客の行動分析です。例えば、購買データや属性データなどのビッグデータから次の行動を予測したり、カメラの映像から動線を分析することで売上の上がりやすい商品陳列のヒントにするといった活用も見られるようになっています。 教育にAIを導入する四つのメリット こうした技術革新を背景にさまざまな活用が行われるAIを教育に導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。特に大きな効果が得られると思われるのが次の4点です。 採点業務の効率化 選択問題の採点については、CBT(コンピュータを使って回答するテスト)はもちろん、PBT(ペーパーで回答するテスト)で画像認識技術が活用されるなど、すでに実用的な技術が確立され多くの教育現場で導入されています。 一方、記述問題の採点の自動化は難しい状況でしたが、AI技術の発達により、画像認識をベースとした文字認識技術が飛躍的に向上、部分点を与えるような設問でもAIが採点できるようになってきています。2020年の学習指導要領の改訂もあり、今後は選択問題よりも記述問題の方が重要視されていくことも考えられ、こうした技術の重要性はさらに増していくはずです。 指導の平準化 専門的なスキルを持つ一部の教員にしか担当できなかった教科指導を、AIを活用することで、そのノウハウを他の教員に共有するような活用も見られます。 例えば、英語のライティングやスピーキングは日本語にはない文法、表現、発音で構成されることから、教員にも高いスキルと経験が求められます。AI技術の活用例として、生徒が書いた英文や発音に対してAIが良し悪しを判断し、改善点を提示するようなアプリケーションも開発されています。 教師のスキルに左右されることなく、どの生徒にも高度かつ平準化された教育機会を提供することにAI技術が活用されています。 データ分析に基づく授業や、カリキュラムの評価・改善 AIの効果が強く期待されているのが、冒頭にもお伝えした一対多の授業がもたらす課題の解決です。一人の教師が多数の生徒を相手に行う授業では、一律のカリキュラムを実施せざるを得ず、生徒一人ごとにカリキュラムを策定・指導することは難しいのが現状です。 AIを活用することで、生徒がどこにつまずいているのか、何が得意で何が苦手なのかを分析し、レベルアップに必要なカリキュラムを自動で設計するといったことも可能になってきています。苦手な問題には何度でも挑戦でき、つまずきのポイントを重点的に学習し、得意な分野はどんどん次に進んでいけるような「個別に最適化された教育」を実現できれば、どの生徒も自分のペースで確実にステップアップできることが期待できます。このような一人ひとりの能力や状況に適応した教育は「アダプティブ・ラーニング」と呼ばれています。 進路決定の支援 生徒一人ひとりの成績や履修状況をAIに分析させることを通して、進路のアドバイスを行う取り組みも始まっています。アメリカのメンフィス大学では、今後どのような科目を履修していくべきか、その際の成績はどの程度になりそうかなどについてAIを用いて予測し、その予測結果を参考にしながら教員が進路アドバイスを行っています。 自分の適性が分からない状態では、つい思いつきや瞬間的に入ってきた情報で進路を選んでしまうといったこともありがちです。AIを活用した分析結果を参考にすることで、生徒が自身の適正を客観的に評価し、進路決定に生かすことにもつながっているようです。 出典:WIRED『 あなたの進路は人工知能が決める 』 教育にAIを導入するデメリット 教育へのAI導入にはもちろんデメリットもあります。例えば文部科学省は生成AIの利用について2023年に「 初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン 」を発表し、生成AI活用について適切でないと考えられる例として以下の8点(要旨)を挙げています。 ① 情報活⽤能⼒が⼗分育成されていない段階において、⾃由に使わせること ② 各種コンクールの作品やレポート・⼩論⽂などについて、⽣成AIによる⽣成物をそのまま⾃⼰の成果物として応募・提出すること ③ 芸術作品の創作や鑑賞などで感性や独創性を発揮させたい場⾯などで最初から安易に使わせること ④ 教科書などの質の担保された教材を⽤いる前に安易に使わせること ⑤ 教師の代わりに安易に⽣成AIから⽣徒に対し回答させること ⑥ テストを受けるときに使わせること ⑦ 学習評価において、教師がAIからの出⼒のみで⾏うこと ⑧ 教師が専⾨性や⼈間的な触れ合いを基にした指導を実施せずに、安易に⽣成AIに相談させること 同ガイドラインではこうした懸念を挙げる一方、⼈間中⼼の発想で⽣成AIを使いこなしていくことも目的の一つとして触れられています。やはり、生成AIにもデメリットがあり、それらをリスクとして捉えて、リスク管理をしながら活用することが必須でしょう。 教育現場へのAI導入例 実際、AIは教育現場でどのように活用されているのでしょうか。その事例を五つを紹介します。 英語発音評価システム 英会話学習で知られるイーオンとKDDI総合研究所が共同で開発したのが、英語の発音をAIが評価するシステムです。このシステムは、学習者が発音した英語をAIが分析し、どの程度正しく発音できているかを評価するもので、いわゆる「シャドーイング」と呼ばれる学習法にAI評価システムを導入しています。 このシステムの面白いところは、ネイティブと完全に同じ発音を目指すのではなく、日本人らしいイントネーションが残っていても「伝わる英語」になっていれば高評価になるような調整がなされているなど、英語指導のトレンドに合わせた作りになっている点です。 出典: CNET Japan「イーオンら、英語発音を評価するAIシステム開発」 いじめ検知 アメリカの事例として、AIによっていじめを検知するシステムの導入事例があります。このシステムでは、トイレで普段以上の騒音があった場合に「いじめが起きている可能性がある」として教師にアラートを飛ばす形でいじめを検知する仕組みになっています。 本来、いじめへの対処は教師が行うべきものです。しかし、教師の目にも限界があることを考えると、早期発見を実現するための手段として、教師業務への貢献度が高い活用例だと言えます。 出典: Forbes Japan「いじめ検知もAIで それでも忘れてはいけない「人間の役割」」 オーダーメイド学習プログラム 生徒一人ひとりに合わせた教育を提供するアダプティブ・ラーニングの事例として知られるのが、国内ベンチャー企業が開発したシステム「アタマプラス」です。 アタマプラスでは、生徒の得意分野・苦手分野・学習進捗などを総合的に分析して一人ひとりに合わせたカリキュラムを作成するほか、データに基づいたコーチング支援を行うことが目指されています。生徒の集中力が低下したタイミング、問題につまずいたタイミング、現在取り組んでいる課題をそろそろクリアしそうなタイミングなどを検知して教師や講師に通知することで、指導者が適切なタイミングで生徒に声掛けを行うことにも役立てられます。 出典: 週刊アスキー「タブレット型AI教材のatama plus、生徒の“合格しそう”をAIで判定する特許を取得」 音声アシスト・FAQの自動化 教育機関に対するサポートとして、AIによる音声アシストサービスを活用した事例も存在します。アメリカのジョージア工科大学にて導入されたチャットボット「Jill Watson」は、オンライン学習時の学生のサポートを行うチャットボットとして導入され、利用した学生の多くがチャットボットと気づかないほど高い精度で受け答えをしていたとのことです。 学習内容や教科内容、教員へのちょっとした質問など、生徒・学生・その保護者から寄せられる多くの質問をAIで受けられるようになれば、教育機関の負担軽減につながると考えられます。 出典:ED Tech “ Q&A: Georgia Tech Researcher Discusses How AI can Improve Student Success “ 授業への活用 茨城県つくば市ではAIを英語の授業で使う試みが始まっています。生成AIを活用した英会話学習用ロボットを利用して「即興で英会話やディベートをする」ことを目標に学習したり、発音修正機能を持つアプリ「ELSA Analyzer」を使ったりという内容です。「いつでも練習できる」「生身の人間相手よりも気後れせずに取り組める」ことの他、例えば試験問題の考案にAIを補助的に使えれば、教師の働き方改革につながり、生徒指導の時間が増やせるといったことが期待されています。 出典:日本経済新聞「 英会話の先生は生成AI つくば市、学習ロボで授業 」 AIで変革する教育 現場 これまでの教育は、教師のスキルやノウハウ、経験、個性に依存せざるを得ず、すべての生徒が十分な教育を受けられているとは言えない面もあったように思います。教育現場へのAI導入が進むことによって、一対多の一斉授業による対応の格差を埋め、生徒一人ひとりに合わせた効果的な学習環境へと変化しつつあります。 とはいえ、AIはやはり単機能な技術です。すでに製品として完成しているアプリケーションを導入する場合は別として、教育現場であってもAIを導入する際には、学校や教育現場など環境に合わせて個別に開発することが、きめ細やかなシステムとしてのAIを導入することにつながります。 教育が一律ではうまくいかないことと同様、AI技術も一律で考えることはできません。専門技術を持ったAIベンダーと密に協力し、現場の課題を正確に洗い出した上で、適切なAIソリューションの設計を考え、導入のための体制を構築していくことが重要です。 The post 教育もAIも、一律ではダメ。教育変革のためのAI活用 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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AI導入のメリット、コスト、気にすべきデメリット 2020.11.13公開 2024.2.16更新 概 要 AIの導入を検討する企業が増加している今、そのトレンドや導入によるメリットやデメリットを押さえることも必須です。画像認識や自然言語処理のトレンドを紹介しつつ、AIによる三つのメリットとさまざまなコスト、そして気にすべきデメリットを紹介します。 目 次 ・ AIは何ができるのか ・ AI導入によるメリット  ・ 作業の効率化  ・ 顧客のビジネスの成功を支援  ・ 画期的な新サービスの創出  ・ 高い精度でのデータ分析  ・ コスト削減  ・ 事故のリスクを下げる  ・ 言語を超えたコミュニケーションが円滑になる  ・ 従業員満足度の向上 ・ AI導入によるコスト、気にすべきデメリット  ・ 初期費用が必要  ・ 導入後も努力が必要  ・ 人の役割の変化  ・ 気にすべきデメリット:プロセスのブラックボックス化  ・ 情報漏洩のリスク ・ AI導入による活用例  ・ 在庫管理の最適化  ・ 需要予測  ・ チャットボット  ・ 広告効果の向上  ・ 故障の予測  ・ 医療現場  ・ 農業 ・ AI導入のトレンド  ・ 画像認識技術の応用  ・ 自然言語処理の応用  ・ 時系列データの分析 ・ AI導入の事例紹介  ・ 施工計画の最適化  ・ 対話テキスト自動生成  ・ 防衛装備品の外観検査  ・ 献立提案  ・ 波形解析による管内外面の損傷検出  ・ 人材マッチング ・ メリット、コスト、デメリットを踏まえて導入を考える AIは何ができるのか まず、AIと呼ばれる技術でできることを簡単に整理します。 AIが得意とする処理は一言で言えば、パターン化されたデータの分析や膨大なデータを元にした推論などです。AIは人間の知能と同等の機能を有するわけではなく一つのAIモデルは目的に合わせたシンプルな機能やアルゴリズムで構成されています。 AIは、入力された情報に対して何らかの処理をした上で予測結果を出力する点が従来のコンピュータよりも優れた点として言われます。しかしパターンから外れた処理が苦手な点は従来と変わりません。AIが優れている点の一つに、ビッグデータという、量と質を兼ねたデータの処理を素早く、正確に行うことに長けていることがあります。 AI導入によるメリット AIを導入すると、どんなメリットがあるのでしょうか。さらに考えなければならないコストやデメリットも紹介します。なお、本稿で言うコストはもちろん、金銭的コストだけでなく、人的や時間的、心理的コストも含みます。 作業の効率化 AIはパターン化された処理はもちろん、パターンや特徴を見いだすことも得意としています。それゆえ人間より遥かに早く、正確にタスクを完了させることができます。比較的単純で、しかもリソースを圧迫しがちなルーチン作業をAIに任せることで、人がより創造的で生産的な作業に集中できるようになることが期待されます。 例えば、配送ルートの最適化はAIによる業務効率化の代表的な事例です。小売り大手イオンは、自社トラックの総輸送距離を2024年をメドに1割減らすとしています。AIを活用して数億通りの配送ルートから最短の道を選ぶ仕組みを導入し、トラック運転手が効率的に働けるようにします。その効果は、トラックの輸送距離を年間で最大2800万キロメートル、使用トラック数を15万台減らせるとしています。 出典: 日本経済新聞「イオン、物流網を再構築 トラック輸送距離を1割削減へ」 顧客のビジネスの成功を支援 AI導入によって消費者の顧客満足度が向上したり、顧客企業のビジネスを成功に導けたりするケースもあります。特にカスタマーサポートは、こうしたAI導入の恩恵を受けやすい領域の一つです。 例えば楽天グループは、楽天市場の出店者向けに生成AIを活用した運営サポートサービスを順顧客のビジネスの成功を支援顧客のビジネスの成功を支援次導入する方針を示しました。登録する商品の説明文の作成や顧客からの問い合わせ対応などで生かし、出店企業の業務負担を下げながら効率を上げるとしています。同グループは2030年までに国内EC事業の流通総額を10兆円まで伸ばす目標を掲げており、達成するために欠かせないとしているAI活用の一環でもあります。 出典: 日本経済新聞「楽天、出店者サポートにAI活用 商品登録や顧客対応で」 画期的な新サービスの創出 AIをうまく活用することで、新規性の高いサービスが創出されていくことも期待されます。例えば、書籍の内容を要約した上で朗読するサービスはその一つでしょう。単なる読み上げサービスではなくAIによる要約が可能になったことで、マイカーでの移動中や家事をしている間にも聞ける音声サービスが広まっています。 他には、世界的にも大きな関心を集めるサービスとして挙げられるのが店舗の無人化です。アマゾンが2018年にサービス開始した「Amazon Go」は、AIによる行動データの取得・分析、オムニチャネルでの決済やID情報の統合など、これからの新たな店舗の在り方として注目を集めました。アマゾンは2020年にはレジレス決済システム「Just Walk Out」も始め、これらを導入している小売店舗は、2022年10月現在で欧米に90以上あります。国内のコンビニでも店舗の無人化が進められるなど、こうした動きはより活性化していきそうです。 出典:Yahoo Japanニュース「 アマゾンの宅配専用スーパーとは?コロナ禍で需要急増 」    日経クロストレンド「 Amazon Goはその後どうなった? 3つの最新・進化ポイントが判明 」 高い精度でのデータ分析 AIの特徴として、データの分析を高精度に行えるという点があります。特にビッグデータと呼ばれるような大量のデータの処理においては、AIのアドバンテージは高く、人間では発見できないような規則性を導き出したり、大量のデータを学習することで精度を上げたりすることができる可能性があります。 こうしたAIの特徴は、例えばマーケティングの分野にも生かされています。商品の売上予測を行ったり適切な発注数を計算したりするには、販売実績の他、天候や広告の配信などさまざまな関連データを使用します。データの変数が少なければ人間でも計算できるかもしれませんが、10、20、100と増えていけばその予測はより難しくなります。 コスト削減 コスト削減のためにAIを活用することも方法です。AIを導入するためにはコストが必要であり、ランニングコストも考慮しなければなりませんが、上手く導入できれば人件費を削減し全体のコストを抑えられる可能性があります。また、業種によっては設備投資や在庫の確保なども最小限で抑えられるようなケースも生まれてきています。 事故のリスクを下げる AI活用の一つとして、工場などに設置したカメラから故障や事故につながる異常を検知し、素早く知らせる異常検知システムがあります。カメラで撮影した映像や画像から故障や事故につながりそうな特徴を抽出し、可能性が高まったときにアラートをするという仕組みです。報告された「異常」が本当に異常であるかどうか、さらにはそれに対して何か対応をするかどうか、そして対応するならどのようにするのかは、人間が判断します。 言語を超えたコミュニケーションが円滑になる 自然言語処理を活用することで、AIを使ったコミュニケーション支援も可能になります。身近な活用例としては、自動翻訳機能が挙げられ、言語を共にしない人同士でも一部のコミュニケーションが取れるようになります。 従業員満足度の向上 サービス利用者だけでなく、会社や店舗で働く従業員の満足度向上にもAIは寄与できます。例えば、AIは定型業務に導入できることがあり、さまざまな経営リソースを空けられるようになります。余ったリソースは新規事業開発やアイデア創出など創造的な仕事や、従業員へのさまざまなケアに割けるようになるかもしれません。 AI導入によるコスト、気にすべきデメリット 初期費用が必要 AIを導入・運用するにはさまざまなコストがかかります。特に注意しなければならないのが、開発・導入時にかかる初期費用です。 まず、AIシステムの開発をベンダーに発注するための費用が発生します。さらに、AIは単に導入すれば良いというものではなく、業務フロー全体を見直す必要があるケースも多くあります。利便性だけに注目するのではなく課題を解決するための手段としてAIを選択し、既存の社内システムを一新するような大規模な改革を検討することも重要です。この場合、導入には長い期間を必要とし、日々の業務を進めつつどう社内に浸透させていくかを検討する必要があります。 導入後も努力が必要 AIは導入後にも継続的なメンテナンスや再調整、再学習などを行うことが重要なプロセスになります。AIは従来のITのようにルールに基づいた決まった答えを出すのではなく、「どのような出力を出すかは、やってみるまで分からない」という特徴があるからです。 そのため「導入した後に正しい出力が得られているか」「ビジネス運用に伴って調整する必要はないか」「再学習やパラメータ調整によってより精度を高めていく余地はないか」といった導入後の検証・調整が重要です。このコストを最初から見積もっておかなければなりません。 人の役割の変化 AIの技術が発達し、今後もさまざまな活用例が増えていくにつれ、ある意味、人間の仕事が奪われていく状況が出てくるでしょう。野村総合研究所が2015年に発表した「15年後には日本の労働人口の約49%がAIなどにより代替できるようになる」という報告は話題となりました。 一方、国際労働機関(ILO)は2023年に「大半の仕事はおそらく生成AIに完全に取って代わられることはないだろうが、代わりに業務の一部が自動化され、他の業務に従事できるようになる」との見解を示しています。さらには「大半の仕事と産業は自動化の影響を部分的にしか受けていないため、AIに取って代わられるというよりも、むしろ補完される可能性が高い」とも指摘しており、生成AIに対する懸念をなだめるものではなく、定着が進んでいる生成AIへの対応が必要であることを促しています。 AIが人間の仕事を奪うといっても、人間の歴史では技術革新が人間の仕事を代替してきました。さらには、技術によってさまざまな利便性が増し、人間はそれに応じては新しい仕事を創出してきました。 自分が現在任されている仕事だけを見てしまうと、AIの発達は自分の仕事を奪うリスクがあるように思えるかもしれませんが、仕事がより創造的な仕事や複雑な判断を伴う内容にシフトしていく見た方がいいかもしれません。 出典:野村総合研究所「 日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に 」    ロイター「 大半の仕事、生成AIに完全代替される可能性低い=ILO 」 気にすべきデメリット:プロセスのブラックボックス化 AI導入によってコンピュータがさまざまなデータを学習し、これまで人では気づかなかったような知見が得られることも期待されます。しかし、特にディープラーニングでは、入力から予測結果を出力するまでの過程がブラックボックス化してしまうというデメリットがあります。 アルゴリズムそのものは人間が設計しますし、細かいパラメータ(変数)の調整も人間がします。しかし、それに基づいて出力される結果はシステムに依存する面が大きく、「なぜそのような出力をしたのか」を説明できなくなることがあります。説明責任や他のタスクへの再現・応用が求められる場合では、この点はデメリットになり得ます。 情報漏洩のリスク AIでは個人情報を含む膨大なデータを取り扱うこともあるため、情報セキュリティー上のリスクが常にあります。AIを導入する際は、セキュリティー対策も同時に施す必要があります。また、情報漏洩は内部から起こることもあります。悪意ある情報漏洩だけでなく、従業員の知識が足りないために起こる事故もあるため、関わる従業員の教育も重要です。 AI導入による活用例 AI導入によるメリットやかかるコストをしっかり把握して活用することで、さまざまな分野で恩恵を受けることが可能です。ここでは、七つの活用例をご紹介します。 在庫管理の最適化 商品在庫を持つタイプの事業であれば、在庫管理の最適化にAIを活用することができます。在庫管理はデジタル化が進んでいる分野と言えますが、AIを活用することで発注量・時期の提案が出てくるようにしたり、減ってきたタイミングで自動で発注をかけるなどの自動化ができたりもします。 AIによる在庫管理についてはこちらもご覧ください。 製造業に求められる「しなやかさ」。AI活用のスマートファクトリーで実現へ 需要予測 商品やサービスの需要を予測することは、材料の発注や在庫の保持などにもつながり、利益を向上させるために重要です。需要を予測するためには複数のパラメータを考慮する必要があり、人間が行うには相応の経験と時間が必要ですが、AIであれば大幅に効率化できる可能性があります。 AIによる需要予測についてはこちらもご覧ください。 需要予測AIよ、需要は予測するものでなく作るものだ。 チャットボット 既に広がっているサービスとして、ウェブサイトに設置するチャットボットがあります。ウェブページの端などに設置されていることがあり、やり取りをAIに任せることで、簡単な問い合わせには人間を介さずに対応できるようになります。 チャットボットについてはこちらもご覧ください。 仕組みから知る生成AIと技術研究の今 広告効果の向上 広告は出稿してみなければ効果のほどが分かりません。しかし、掲載後に効果を評価して改善することで、費用対効果を向上させることができます。この解析にAIを用いることで、例えば無駄となっているクリエイティブを減らし、効果の高いクリエイティブをより多く展開するといった判断ができるようになります。 AI活用で得られる広告効果についてはこちらもご覧ください。 答えのない、マーケティング×AIの世界への挑戦 故障の予測 工場で稼働している機械などには、多かれ少なかれ常に故障のリスクがあります。AIを活用したモニタリングを行うことで、故障前にその予兆を見いだせる可能性があります。 AIであれば、人には分かりにくい見た目や音の細かな違いでも抽出できる可能性があります。故障につながりかねない異常を基に点検をするのももちろんコストがかかりますが、ある日突然故障して、そこから修理や買い替えをするよりコストが低くて済む、ということもあり得るでしょう。 AIによる故障予知についてはこちらもご覧ください。 AI×センサーで見通せ。「故障予知」から始まる未来 医療現場 健康や人命を扱う医療現場では、AIに限らず新技術の導入には慎重にならざるを得ません。しかし例えば、大量のレントゲン画像データを学習したAIが病気の種類を提案し、医師が最終的に診断するという体制をつくることはできます。 医療とAIについてはこちらもご覧ください。 いのち守るためのAI。医療現場へのAI導入の壁 農業 農業においても、AIの活用が進められています。例えば、作物の品質や価格を決定する上で重要な選別においては、AIによる画像認識で正確かつ素早いシステムを組めることがあります。 農業とAIについてはこちらもご覧ください。 守れ、農業。AIが描く第一次産業の進化像 AI導入のトレンド 2012年に開催されたILSVRCという画像認識コンペティションをきっかけに始まったとされる第3次AIブームですが、その背景にはディープラーニング技術の登場が大きな要因になっています。 ディープラーニング(深層学習)は、機械学習の一部で、人間の脳内にあるニューロンの構造を模したネットワークを持っています。入力された膨大なデータから共通する特徴を見分け、それを基に分類、推論、認識といったタスクをこなしていきます。そのため、十分な量と質の学習データと処理能力が必要になり、そのためのコストがかかりますが、ビジネスシーンでのAI活用のさまざまなトレンドを生み出しています。 画像認識技術の応用 AIやディープラーニングの活用分野として代表的なものが、画像認識技術です。写真を見てそこに何が写っているのかを判断したり、分類したりする技術はディープラーニングにより飛躍的に進化し、技術を応用したさまざまなサービスが登場しています。 身近なところでは、カメラの顔認識機能が挙げられます。カメラが写している範囲から人間の顔を検出し、そこにピントを自動で合わせるだけでなく、瞳にまでピントを合わせて追従するといった機能も登場しています。 その他にも、店舗内でのトレイやカゴの中身の商品を認識して自動で会計するシステムや、撮影対象の名称を調べるスマホアプリ、店内の映像からどんな人が何を手に取ったかを認識してマーケティングに活かせるデータを収集するシステム、自動車の自動運転技術などにも画像認識の技術は活用されています。 Laboro.AIでも、デジタル地図データの制作のために航空写真から道路の停止線や横断歩道を検出するプロジェクトや、インフラ設備の劣化箇所を検出するプロジェクトなど、画像認識技術を用いたさまざまなプロジェクトを行っています。 ご参考:プロジェクト事例  航空写真からの横断歩道・停止線の検出 ご参考:プロジェクト事例  インフラ設備の劣化箇所検出 自然言語処理の応用 私たちがコミュニケーションを取るのに欠かせないのが言語です。そうした言語情報を扱うAI分野である自然言語処理も、ディープラーニングによって飛躍的に進化した領域です。これまでは文字や音の羅列からコンピュータがその内容を把握することには限界がありましたが、大量のデータからパターンを学習することで、まるで意味を理解しているかのように言語情報を処理する技術も誕生しています(実際には、学習したデータに基づいて同様のパターンとして判断しているだけで、人間のように意味を理解しているわけではありません)。 自然言語処理技術の応用例としては、Laboro.AIの代表的なソリューションに文書分類・評価ソリューションがあります。ある大手通信企業で課題となっていたのが、申込書内に書かれたテキスト情報の振り分け作業でした。内容に応じて文書を担当部署に割り振るという工程が手作業で行われ、担当者が処理する書類の数は膨大になっていたのです。Laboro.AIではニューラルネットワークによるカスタムAIを開発、書類に書かれた申し送り事項や個別の要望などのテキスト情報を自動で分類し、適切な部署へ振り分けるAIソリューションを提供し、担当者のサポートツールとして活用していただいています。 ご参考:プロジェクト事例  文書分類による業務自動化率の向上 時系列データの分析 例えば、特定の商品がいつどれだけ売れるのかを分析したい場合など、分析したいデータの内容や目的によっては、時系列による分析が重要になります。アイスクリームは冬よりも夏によく売れますが、具体的にどのくらいの差があるかを知るには季節ごとの売り上げなどの変数を知る必要があります。 時系列データ分析はさまざまな業種で活用が進められており、小売業界における販売予測や金融、機材の故障予知・予測などにも及びます。Laboro.AIでも、設備の損傷検出に時系列データ分析によるAIを用い、検査品質を担保しつつ処理数を大幅に増加させる試みを進めました。 ご参考:プロジェクト事例  波形解析による管内外面の損傷検出 AI導入の事例紹介 AI導入の実際の事例を6件紹介します。 施工計画の最適化 土木工事に関わる諸々の条件をインプットに、各種の制約条件の中で最適な施工計画を自動的に立案するための強化学習ベースのAIを開発・提供した例です。立案作業の自動化による業務効率化はもちろん、それまでのマニュアル作業や数理最適化手法では変動要素が大きすぎて見つけることが困難だったコスト最適な計画の立案が可能となりました。詳しくは下記のページをご覧ください。 土木工事での施工計画の最適化 対話テキスト自動生成 大広様と協働し、ChatGPTをカスタマイズして、ブランドにふさわしい対話を自動生成する独自のテキスト自動生成エンジン「Brand Dialogue AI(ブランド ダイアログ エーアイ)」のプロトタイプの開発に取り組んだ例です。ブランドコミュニケーションの起点となるブランド人格を反映してオリジナルの言語生成AIとして構築、さらにユーザーおよび対話内容に応じて瞬時にプロンプトを入れ替える「ダイナミックプロンプト」を活用し、各企業が保有するパーソナルデータや商品データ、コンテンツデータを対話に反映させました。詳しくは下記のページをご覧ください。 ブランド人格を反映した対話テキスト自動生成 防衛装備品の外観検査 沖電気工業様が防衛装備庁様との契約に基づいて取り組まれてきた、防衛装備品の製造工程への先進技術の適用について、実証実験を進めた例です。製造装置の検査作業に画像分類AIによる外観検査を適用し、目視確認を補助した上で精度向上と効率化を実現しました。詳しくは下記のページをご覧ください。 防衛装備品の製造におけるAIによる外観検査 献立提案 Laboro.AIがベンダーとして開発・提供を行った例として、味の素様が提供しているパーソナライズ献立提案「勝ち飯®AI」があります。 これは部活生の食事を作る保護者やアマチュアアスリートなどに向け、トップアスリートの食事のノウハウを提供するために作られるアプリです。ユーザーは基礎情報や目標を入力し使い続けることで、嗜好も考慮した献立の提案を得ることができます。詳しくは下記のページをご覧ください。 パーソナライズ献立提案「勝ち飯®AI」 波形解析による管内外面の損傷検出 波形解析をAIが行うことで、非破壊検査を効率的に行えるようにした事例です。非破壊検査とはインフラの検査を分品の破壊を行うことなく検査方法で、インフラなどの稼働をできるだけ止めずに行える点がメリットです。 この事例では取得したデータの解析にAIを用いており、従業員の負担軽減と検査の精度向上が期待できます。詳しくは下記のページをご覧ください。 波形解析による管内外面の損傷検出 人材マッチング 人と仕事のマッチングといった分野でも、AIによる支援が可能です。パーソルテクノロジースタッフでは、分野やスキルの種類が多種多様なエンジニアのマッチングに課題がありました。AIを導入することで、それまではキャリアコーディネーターが膨大な項目を時間かけて確認していたところ、ある程度のマッチングを自動化できました。 詳しくは下記のページをご覧ください。 人と職の最適なマッチング メリット、コスト、デメリットを踏まえてAI導入を考える AIはまだまだ、「万能ツール」「魔法」「なんでもできる」といったイメージで語られることが少なくないかもしれません。ですが、実際には人手による設計や調整、運用、検討など、多くの手間と努力が必要な領域です。手間を含めたコストがどれくらいかかるのか、コストに対して得られるメリットと起こり得るデメリットは何か、それを踏まえて自社開発が良いか、AIベンダーへの委託が良いか、こうしたポイントをAI導入前に入念に検討することが重要です。 Laboro.AIでは多面的な視点からのコンサルティングも含めてご支援をさせていただいていますが、こうした現場視点からAI導入時の検討課題についてより詳細に考察したコラム「 AI導入現場から。企業が抱える検討課題の実際とは 」も公開しています。よろしければこちらもご覧ください。 その他のおすすめコンテンツ ・ 「教師あり学習」「教師なし学習」とは。文系ビジネスパーソンのための機械学習 ・ AI導入現場から。企業が抱える検討課題の実際とは ・ AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いとは The post AI導入のメリット、コスト、気にすべきデメリット first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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「製造DX」は幻想か。製造業AIの今と展望 2021.5.28公開 2024.2.16更新 概 要 サービス業に次いで高いGDP(国内総生産)を占める製造業。AIを含むIT活用の遅れなどを背景に国際競争力の低下が懸念されていますが、各種作業を効率化させ、さらには品質向上に向けた方策として、製造DXの名の下、特に製造現場にAIが活発に導入されるようになってきています。製造業におけるAI活用の現状や今後への期待、実際の活用事例などについて紹介します。 目 次 ・ なぜ、製造業でAIが求められるのか。そのメリット  ・ 人材不足の解消  ・ 品質維持・品質向上  ・ 国際競争力の回復 ・ 製造業におけるAI利活用の現状  ・ スマートファクトリーとは  ・ デジタルツインとは ・ AI導入で、製造業は何を得られるのか  ・ 予知保全  ・ 作業自動化  ・ 不良品選別  ・ 需要予測  ・ サプライチェーン全体の最適化 ・ 製造業でAIは、こう使われている  ・ スマートファクトリーでの基板の製造管理  ・ 生産計画の最適化  ・ 波形解析による管内外面の損傷検出  ・ AI官能検査 ・ 製造DXを幻想で終わらせない なぜ、製造業でAIが求められるのか。そのメリット 日本のお家産業とも言える製造業は、トヨタ式の「カイゼン」に代表されるように、これまでもさまざまなアイデアやテクノロジーを用いて業務の効率化や品質向上を進めてきました。なぜ今、製造業にAIが必要とされているのでしょうか。 人材不足の解消 少子高齢化の影響や若者が求める就業スタイルの変化などを背景に、製造業でも他の産業同様に、人材不足が深刻な問題となっています。製造業への新規入職者が少ない状況が続いており、熟練の従事者から若手への技術継承が難しくなっている状況があります。 人材不足という大きな課題に対しては、女性や外国人労働者など、これまで活用されてこなかった人材の雇用を促すことが肝要だとされていますが、AIの活用によってもこうした課題が解決されていくことが期待されています。具体的には、“熟練の勘”や“匠の技”と呼ばれるような言語化しにくい直感的なノウハウまたは暗黙知を、AIを用いてその特徴を抽出し、伝承するといった活用の検討が各所で進んでいます。 品質維持・品質向上 製品の品質維持や品質向上は、製造業にとっての最重要課題です。しかし、人材不足を補うためのコスト削減の結果として、品質管理に関するトラブルや不正が発生するというケースも少なくありません。製造ライン上での不良品検出や品質チェック業務にAIを導入し、安定した製造品質を保つといった活用方法もAI技術の活路の一つとして考えられます。 国際競争力の回復 日本の製造業は、かつては世界に誇る生産技術と生産品質を保有していました。しかし近年、積極的にAIやあらゆるモノがネットにつながるIoTなどの新しいテクノロジーを取り入れている他国の製造業と比較すると見劣りがあり、国際競争力が低下しているとも言われています。上述のようなAI技術活用の先に、国際競争力を取り戻した国内製造業の姿が描かれていくはずです。 製造業におけるAIの利活用現状 近年、AIを始めとしたデジタル技術をビジネスに導入して企業変革を推進する「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」が隆盛を極めています。業種や企業ごとの事情にもよりますが、DXによって生産性を向上させ、競争力を強化していくことが各企業で目指される一方、総務省が発表した「令和3年版 情報通信白書」によれば、DXの取り組みを実施していると回答した企業が全体の22.8%である中、情報通信業や金融業、保険業が45.0%と高い実施率を示していることに対して、製造業は22.8%と平均的な取り組み状況に留まっていることが報告されています。 出典: 総務省『令和3年版 情報通信白書』 スマートファクトリーとは 製造業がDXで目指す姿の一つとも言われるのが「スマートファクトリー」です。スマートファクトリーとは、AIをはじめとした先端技術を用いて製造工場内で行われる各種作業を自動化し、省力化・効率化・高生産性を実現した工場を表す言葉です。生産工程や検査工程などを自動化するFA(ファクトリー・オートメーション)機器の一つひとつがネットワークでつながり、工場が一つのシステムとして稼働し、常に最適な稼働状況を保ちつつ、工場の生産性を高めることが目指されます。 デジタルツインとは さらに近年は、スマートファクトリーの究極系とも言える「デジタルツイン」という考え方も製造業で注目を集めています。デジタルツインとは、現実の物理空間をサイバー空間上に再現する技術やコンセプトを表す言葉で、簡単に言えばコンピューター上にシミュレーション環境を構築し、そのシミュレーション結果を実際の製造現場にフィードバックしていくような製造業のあり方を指します。つまり、これまでは実際の作業現場で試行錯誤を繰り返しながら稼働する必要があった製造現場のさまざまなオペレーションをサイバー空間上で実行することで、より効率的で、無駄のない製造プロセスを実現しようというものです。AIはこのデジタルツイン実現の核になる技術とも言われています。デジタルツインについては、以下のコラムでもご紹介しています。 Laboro.AIコラム:「 ミラーワールドへようこそ。『デジタルツイン』とAI 」 AI導入で、製造業は何を得られるのか 一言で製造業と言ってもその範囲は非常に広く、AIの活用先や活用方法もさまざまなケースが考えられます。すでに多くのシーンで活用がされ始めてもいますが、製造業はAIを導入することで、どのような具体的メリットが得られるのでしょうか。 予知保全 製造業のAI活用で期待されている領域の一つが、予知保全です。製造装置に支えられる製造業は、当然ながらそれら機械が故障などによって停止してしまうと大損害を被りかねません。 予知保全は、機械の故障などを事前に予測してメンテナンスを行い、安定して生産ラインを稼働させるための取組みです。画像データや音声データ、センサーデータ、過去の故障記録といった時系列データなど、各種データをAIに学習させることで、次に起こるであろう機械トラブルを予測する力を身につけさせ、予知保全につなげていくことが、期待されるAI活用方法の一つです。 作業自動化 製造業では、これまでもさまざまな技術や工夫を基に作業の自動化が実現されてきましたが、AI技術の進化による自動化も期待されるところです。協業ロボットを意味する「コラボレーティブ・ロボット」略して「コボット」も昨今話題ですが、原材料のピッキングや仕分け、在庫管理といった作業の自動化をAIによって実現しようという動きも見られるようになってきています。 不良品選別 生産ライン上での検品作業や、特定パターンに基づく不良品検出・選別は、近年AIの活用が盛んな分野の一つです。通常、ライン上の製品の不具合や細かい損傷などを短時間で発見するためには、熟練作業者の目視に負う面があります。しかし、AIの画像認識技術を用いることで、人間より高い精度で不良品を検出させるケースも生まれてきています。 需要予測 AIはさまざまな要因が絡む複雑な状況からパターンを分類・抽出し、人間では判断が難しい傾向を見いだすことを得意とします。例えば、製造業の生産計画シーンで重要になる需要予測は、過去の売上実績だけでなくマクロ経済サイクルや気候変動、政治情勢といったさまざまな情報を加味することで精度が増していきます。入力するデータの質に左右されるところも多分にありますが、複数タイプのデータを統合的に分析し、AI技術を用いて処理を施すことで、より精緻な予測結果を得られるようになることが見込まれます。 サプライチェーン全体の最適化 製造工場での作業効率を上げたり、故障予測をしたりといった部分的な活用だけでなく、サプライチェーン全体を統合的に管理することもAIの活用が期待される領域です。製造現場に加えて、サプライヤーの稼働状況も加味した上でサプライチェーン全体を一元管理することで、需要予測から原材料の購買、製造、出荷に至るまでの最適化につながっていきます。現状ではまだ部分的な活用に留まっている状況ですが、今後、全体最適化を前提としたAI技術の活路も見いだされていくはずです。 製造業でAIは、こう使われている 現状まだ工程の部分的な活用には留まりますが、当社事例も含め、製造業でのAI導入事例をご紹介します。 スマートファクトリーでの基板の製造管理 先端とされるスマートファクトリーの事例として、電子基板大手のメイコーが2023年に約170億円を投じて完成させた天童工場(山形県天童市)があります。同工場は「エコスマートファクトリー」をコンセプトに掲げ、まず物流では発注や入庫、発送を自動化させ、人手による管理をなくして労力やミスを軽減させました。品質面では検査機がはじいた不良品の基板が基準を満たしているかどうかをAIで再確認するようにしています。さらに、材料や製造に関する指示、工程の履歴などあらゆる情報がシステムで一括管理し、その情報をAIで分析することで、問題の原因の特定や工程の改善、次の製品の開発につなげているとしています。 出典: 日経産業新聞「メイコー、装置・ソフト内製で工場の自動化徹底」 生産計画の最適化 生産計画の立案もAIの活用可能性がある領域です。生産工程や生産計画の立案は、製造プロセス前後のサプライチェーンとの連携の面でも重要度が高く、複数の熟練者の知恵が結集して達成される業務の一つです。こうした難易度の高い業務の完全自動化は難しいとしても、一部をAIによって代行させることができれば、属人化を防ぎつつ効率的な計画立案につながる可能性があります。 なお、AI用いた生産計画の立案はこれまでもさまざまな分野で取り組まれてきており、そこでは主に数理最適化というアプローチが用いられてきました。しかしながら、数理最適化はチューニングに手間がかかることなどから、近年、強化学習という学習手法を用いて最適な計画を立案するアプローチが見いだされつつあります。Laboro.AIでは、強化学習をベースとした『組合せ最適化ソリューション』を開発・ご提供しています。 参考: 『組合せ最適化ソリューション』 波形解析による管内外面の損傷検出 製造現場に備わる設備や施設の点検・メンテナンスも、製造業の重要事項の一つです。「非破壊検査」とは、検査対象を分解することなく、そのままの状態で設備内部の検査を行う手法で、このケースは非破壊検査株式会社が保有する、ボイラーに代表される熱交換器の内外面検査技術にAIを適用し、これまで目視で行われてきた損傷箇所を特定するタスクを支援するというものです。 具体的には、検査時に取得される波形データの分析をAIに処理させ、データに現れる特徴から損傷箇所を特定するというもので、現場導入の結果、検査品質を維持しつつ効率化にもつながり、分析処理数の増加に貢献しています。 参考: 当社プロジェクト事例「波形解析による管内外面の損傷検出」 AI官能検査 トヨタ自動車九州は高級車ブランド「レクサス」を生産する工場でAIを活用した完成車の車内異音検査システムを導入しています。従来の車内異音検査は、検査員が車内に乗り込んで異音を自分の耳で聴き取る方法を取っていました。しかし検査中の車内には、シートにかぶせたビニールがこすれる音といった「異音とは関係がないノイズ」も発生するため、そうした音は検査上「NG」にはしないように聴き分ける必要がありました。AI活用により検査員のそうした負担が軽減されているとしています。さらに、AIが異音と判断した音は若手検査員の育成にも活用しています。 出典: 日経XTECH「「レクサス品質」僅かな異音も許さない AIで検知」 ※写真はイメージであり、実際の画像ではございません。 製造DXを幻想で終わらせない 製造業では、作業の効率化や品質改善、需要予測、設備点検など、これまで人のスキルに頼っていた作業領域をAIに代替させようとする動きが活発になっています。それに伴ってさまざまなAI開発ベンダーも登場し、多種多様なAIプロダクト、AIソリューションが提供されるようになりました。 しかし、AIという技術では、求める答えに的確に対応したデータを収集し、正しく学習させることが大前提となります。製造現場ごとに製造しているものが違い、品質基準も異なれば、そのケースごとに学習データが必要となり、学習のさせ方を検討する必要があります。つまり、特に製造品質の高さを誇る日本の製造業においては、汎用化されたAIプロダクトでは対応できないケースが実際のところ多く、そうした場合には個別開発に基づくカスタムAI開発が効果を発揮することになります。 近年「製造DX」などの用語がバズワード化し、成功事例も多く語られるにつれ、いとも簡単に製造DXが実現できるような感覚に陥ってしまいます。ですが、ことAIという技術に関しては、その特性から、一つひとつの現場・状況に適したデータを見定め、学習させ、検証を繰り返すという試行錯誤の積み重ねが、実際には物を言う世界でもあります。 「AIの幻想」とも呼べるこうした難しさを具体的な課題を挙げながら解説する記事を、ニュースイッチ(日刊工業新聞社)に先般寄稿いたしました。製造業シーンでAI導入をご検討の方はぜひお読みください。 ニュースイッチ寄稿連載 「AIは幻想か ― 導入現場のリアル」 ・第1回  不良品検出にAI、投資効果を見極める導入前の第一歩 ・第2回  需要予測AIは魔法のツールにあらず。生かすために必要な頭の切り替え ・第3回  電子機器製造工場が検品AI活用で陥った「精度9割」の落とし穴 ・第4回  無人店舗を目指す小売りチェーンが抱いた「AI万能論」の誤解 The post 「製造DX」は幻想か。製造業AIの今と展望 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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EC需要の裏側に。物流危機を救う、AIのチカラ 2021.4.30公開 2024.2.9更新 概 要 2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、消費者の購買スタイルは大きく変化しました。買い物においてECサイト利用の割合が増加し、伴って物流業界が担う役割もますます重要になってきています。 しかし、「2024年問題」が叫ばれるなど、物流業界には人手不足をはじめとした課題が横たわっていることも事実です。その解決方法として期待されているテクノロジーがAIです。物流の現状や課題、物流にAIを導入するメリットや導入事例を紹介します。 目 次 ・ 物流業界の現状と課題  ・ EC市場の拡大と、物流需要の増加  ・ 物流業界の課題   ・ 運び手の人材不足   ・ 過酷な労働環境   ・ 「2024年問題」 ・ 物流対策の今後  ・ 物流設備の大型化  ・ 物流システムの一元化  ・ AIの活用 ・ AI導入で物流にもたらされるメリット  ・ 倉庫管理業務のコスト削減  ・ 運送ルートの最適化 ・ 物流×AI 活用5事例  ・ 物量予測精度向上で人員配置も改善  ・ 物流倉庫のピッキングロボットを支えるAI  ・ 不在配送問題の解消に向けたAI活用  ・ 荷物の領域推定AI  ・ バーコード以外からの商品情報の読み取り ・ AIが物流危機を救う 物流業界の現状と課題 モバイル端末の普及や新型コロナウイルスの影響を背景に、特に一般のコンシューマ市場においては、買い物におけるEC利用率が急増しており、伴って物流の役割がさらに重要性を増してきています。そこで、まずは電子商取引の割合を表す「EC化率」の推移を確認していきましょう。 EC市場の拡大と、物流需要の増加 スマートフォンをはじめとするモバイル端末の世帯保有率は96.8%であり、実店舗へ行かずインターネットを経由したECでの買い物はほぼ誰もができる状況にあります。 経済産業省が発表している「電子商取引に関する市場調査」によれば、2022年のBtoC市場での物販系のEC化率は(リアル販売も含めた商取引全体のうちEC取引が占める割合)は9.13%と、実はそれほど大きな割合を占めているわけではありません。しかし、BtoC市場における物販系、サービス、デジタルの全ての分野を合計したEC市場規模は22兆7449億円、前年比で9.91%という、近年では最大の増加ペースで伸長しており、購買スタイルとして成長し続けています。 一方で、業種別のEC化率を見ると、「書籍、映像・音楽ソフト」で52.16%、「生活家電、AV 機器、PC・周辺機器等」で42.01%、「生活雑貨、家具、インテリア」で29.59%と高い商品カテゴリーがある一方、「食品、飲料、酒類」が4.16%、「化粧品、医薬品」は8.24%と、特に試食・試用といった品定めなど、実体験に基づく購買が重視されたり、そもそも販売に免許や許可が必要で参入が比較的難しかったりするカテゴリーでは高くないなど、商品特性に応じてバラツキがあります。 とはいえ、例えば対面販売の義務が残っていた一部の薬のネット販売は、ビデオ通話による服薬指導を条件に2025年以降に厚生労働省によって認められます。市販薬は全面的にネット販売が解禁されることになり、EC化が大いに伸びるカテゴリーと捉えられるかもしれません。 出典: 総務省「情報通信白書 令和3年版」     経済産業省「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」     日本経済新聞「市販薬ネット販売、全面解禁へ ビデオ通話での指導条件」 物流業界の課題 こうした背景もあり、物流に対する市場需要が高まる傾向にある一方、物流業界は大きな課題に直面しています。 運び手の人材不足 日本の人口は2008年から減少に転じ、少子高齢化も背景に国内の生産人口は減少の一途をたどっています。どの業種でも人材不足が叫ばれるようになりましたが、物流業界も例外ではなく、その根幹を担うトラックドライバーの不足が課題になっています。 トラックドライバーの高齢化も懸念されており、全産業で見た場合の就業者の平均年齢42.9歳と比較すると、中型・小型トラックのドライバーは45.9歳、大型トラックのドライバーでは48.6歳と、比較的高めであることが報告されています。さらに、担い手不足も深刻化しており、29歳以下の就業者の割合を見てみると、全産業の16.6%に対し、道路貨物運送業では10.2%となっており、若い働き手の確保が難しい現状にあることが見えてきます。 過酷な労働環境 人材不足、担い手確保の難しさの背景として考えられるのが、労働環境の過酷さで、トラックドライバーの年間労働時間は、中小型・大型トラックともに2600時間にもなることが報告されています。この数字は、全産業の平均2124時間と比較すると、2割以上も多くの時間に業務に従事していることになります。その反面、年間所得額は全産業の1割ほど低い金額だとされています。今後さらに多くの需要が見込まれる物流業界ではありますが、実際の運び手の方々のこうした厳しい状況を改善しなければ、現場をさらに苦しい状況へと追い込んでしまうことにもつながり兼ねません。 「2024年問題」 上記の問題を総合して現在言われているのが、「2024年問題」です。2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用され、労働時間が短くなることで輸送能力が不足し、「モノが運べなくなる」可能性が懸念されていることです。例えば日本郵便は、同年4月から一部地域で「ゆうパック」や速達郵便物の配達を半日から1日遅らせることと、現在7区分ある「ゆうパック」の配達時間帯のうち「20時-21時」を10月1日から廃止して6区分とすることを発表しています。 出典: 総務省「情報通信白書 令和2年版」     トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト「統計からみるトラック運転者の仕事」     ロイター「日本郵便、「ゆうパック」などの配達を半日―1日遅く 24年問題に対応」 物流対策の今後 これまで触れてきた問題は、制度なども関わる慢性的な問題であり、短期的に解決することは簡単ではありません。しかし、業界全体としては次のような改善策が考えられます。 物流拠点の大型化 商品在庫を保管しておくための倉庫や一時預かりのための管理センターなどを含む物流拠点は、近年、ますます大型化してきています。集荷箇所をできるだけ一極化させることで、流通の効率化はもちろんのこと、ドライバーの運行距離が短くなり、労働時間の短縮へとつながることが期待されます。 物流システムの一元化 物流拠点と同様に、主に輸送、保管、荷役、包装、流通加工という五つの工程で構成される物流システムを一元化することも、重要な対策の一つです。それぞれを独立して管理することによって発生する無駄をなくし、例えば倉庫管理、配送ルートの最適化、荷物の追跡などがさらに進めば、ドライバーの負担軽減にもつながっていくはずです。 AIの活用 ITの一部であるAI技術は、デジタルと相性が良いのが当然である一方で、物流業界のような物理現場とも相性が良いとされています。これまでITが入りにくかった物理現場で、画像認識、自然言語処理、音声認識といったさまざまなAI技術の活用が期待されています。 AI導入で物流にもたらされるメリット 現時点のAI技術用いて物流業界にもたらされるメリットは、大きく二つ考えられます。 倉庫管理業務のコスト削減 物流全体のコストはドライバーの収入にも当然影響するため、コスト削減は重要な取り組みの一つです。特に物流でコストがかかる領域の一つが、倉庫管理です。例えば、入庫時点で運ばれてくる荷物を目視で確認し、貼り付けられたラベルをリーダーで読み取り、倉庫管理システムに入力していく作業は、人による膨大な労力がかかるだけでなく、ヒューマンエラーが発生するリスクも懸念されます。 そこで近年導入が進んでいるのが、AIの画像認識技術を活用した入庫管理です。一定のルールに応じた分類タスクはAIが得意とする領域であるため、入庫商品を自動識別し、所定の保管先に分類するといったシステム構築も取り組まれています。 運送ルートの最適化 トラックドライバーの長労働時間の原因に、荷待ち時間や載積効率が挙げられています。宅配便の時間指定配達サービスが普及する一方で、再配達率はいまだ12%に上ります。また、1台のトラックに積まれる荷物は荷台の4割程度、6割の積載量は使い切れていないといった報告もあります。 こうした運送効率化の対策の一つとして、運送ルートをAIが提案する取り組みが進められています。大量のデータから最適解を見つけ出すことを得意とする機械学習技術を活用し、荷物の配送先の割り当て、配送の順番、配送先と次の配送先までの経路、配送先の在宅時間・営業時間、ドライバーの人数・労力などを考慮した最適なルートを提案するという試みです。 物流×AI 導入5事例 物流業界で実際にAIを導入し、一定の効果を発揮している事例を紹介します。 物量予測精度向上で人員配置も改善 総合食品卸売業の加藤産業では「物量予測&シフト調整システム」を活用しています。取り扱う物量の予測について、AIは強みとする計算速度と直近実績を加味した予測をし、人間はAIが苦手とする例えば小売店の特売・新規開店といった変動要素の加味や、違和感を覚えるAI予測値の補正といった役割を担っています。その結果、物量予測精度の向上だけでなく、管理者業務の負荷削減、属人化していた業務プロセスを統一できたことによる人員配置計画の標準化などの効果も得られたとしています。 出典: 経済産業省「物流管理へのAI技術の有効活用」 作業編成へのAI導入 NECは物流倉庫で稼働するピッキングロボットの精度向上と学習時間の大幅な短縮を可能にする「ロボット制御AI」を開発したと発表しています。このAIでは、ある行動の結果として実世界で何が起こるかを現実に試すことなく予測することを可能にする技術「世界モデル」を応用しており、試したことのない作業条件でも失敗の少ない動作を自律生成・実行できるとしています。例えば、学習したものと異なるサイズ・形状かつ不規則に置かれた物品に対しても、的確につかんで所定の位置と向きで置けるようになるという具合です。 出典: LNEWS「NEC/ロボットが常識を学習、ピッキング成功率95%達成」 (*画像はイメージであり、実際の写真ではありません。) 不在配送問題の解消に向けたAI活用 前述の通り、宅配便における不在配送は全宅配件数の12%を占め、それに基づく具体的なデータは見当たりませんが、かかる走行距離や労働力が少なくないことは、想像に難くないでしょう。 佐川急便と日本データサイエンス研究所などは、この不在配送の減少をAI活用により解消する研究を進めています。具体的には、個人宅の電力データの稼働を専用のスマートメーターで受信して在宅か不在かを予測し、そのデータを基にAIが効率的な配送ルートを示すというシステムの運用です。 不在配送問題の解消は、ドライバー不足や労働者の負担軽減に加え、CO2排出量の減少など、多くの問題の解決につながる重要な取り組みの一つです。 出典: 国土交通省「宅配の再配達の発生による社会的損失の試算について」 、 LNEWS「佐川急便/電力データで在宅予測、不在配達率20%改善に成功」 荷物の領域推定AI 東芝は、不規則に積み重なった荷物を通常のカメラで撮影した画像から、個々の荷物の領域を高精度に推定できるAIを開発。この領域推定AIを、自動荷下ろしロボットなどの物流ロボットに搭載することで、荷下ろしやピッキング作業を正確かつ効率的に行うことに成功しています。 荷下ろしやピッキング作業の自動化を考える場合、従来、荷物の領域特定に3次元センサーを使用する手法がありましたが、センサー導入自体のコストと事前学習用のデータ収集の負担が高いという課題がありました。通常のカメラ画像をもちいるこのアプローチであれば、大幅なコスト削減につながります。 2020年に行われた実証実験では、推定精度を従来方式から45%改善するという、世界トップレベルの性能を達成しています。 出典: TOSHIBA 「通常のカメラの画像から個々の荷物の領域を世界最高精度で推定するAIを開発」 (*画像はイメージであり、実際の写真ではありません。) バーコード以外からの商品情報の読み取り 荷物の商品ラベルに記載されている文字情報とバーコードを同時に読み取れるAI技術を開発したのがこちらの例です。その読み取り精度は、活字の場合95%以上で、読み取った情報をそのままデータベースなどに登録することも可能になっています。 商品の入出庫時の在庫登録業務や検品業務など、これまで目視確認に頼っていた情報のチェックを自動化し、管理・登録業務を大幅に削減することが見込まれます。 出典: ECのミカタ「Automagiがスマホで撮影してバーコードと文字情報を一括登録できる新技術を開発」 AIが物流危機から救い出す その需要が伸びる一方、物流業界は運び手に関わる大きな課題を抱えています。物流現場をより快適な環境へと変革させ、ドライバーの負担を軽減する、あるいは新たな担い手の確保へとつなげていくことが急務になっています。今回は、物流業務に直接関係する部分のAI活用を中心に紹介しましたが、自動運転をはじめ、あらゆる周辺領域がこのAIという可能性あるテクノロジーを活用し、業界構造の新しい姿をつくっていかなければなりません。 「すべての産業の新たな姿をつくる」、これをミッションに掲げるLaboro.AIでは、まさにこうした業界全体に関わる課題の解決を、AI技術を用いてご支援させていただいています。 The post EC需要の裏側に。物流危機を救う、AIのチカラ first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いとは 2020.11.12公開 2024.1.31更新 概 要 AI、機械学習、ディープラーニングは同時に語られることが多いですが、これらはAIの一つの技術領域として機械学習があり、機械学習の一つの技術としてディープラーニングがあるというカテゴリ関係にあります。近年AIがブームになっているのは、機械学習の一手法としてディープラーニングが登場し、AIのレベルを大きく引き上げたことが大きな要因だとされています。 目 次 ・ AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いとは  ・ 機械学習とは  ・ ディープラーニング(深層学習)とは ・ 機械学習の種類  ・ サポートベクターマシン(SVM)  ・ 決定木  ・ ランダムフォレスト  ・ ニューラルネットワーク ・ ディープラーニング(深層学習)の活用分野  ・ 画像分野  ・ 音声分野  ・ 自然言語処理  ・ 時系列データの予測 ・ ディープラーニング(深層学習)を使った開発が向いているケース  ・ データセットの内容  ・ 利用可能なハードウェア  ・ 説明責任 ・ AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いを把握しよう AIと 機械学習、ディープラーニング (深層学習) の 違いとは 同時に語られることの多いAI、機械学習、ディープラーニングですが、これらはAIの1つの技術領域として機械学習があり、機械学習の1技術としてディープラーニングがあるというカテゴリ関係にあります。近年AIがブームになっているのは、機械学習の1手法としてディープラーニングが登場し、AIのレベルを大きく引き上げたことが大きな要因だとされています。 AIとは 「AI」には学術的にも定まった定義がなく、研究者によっても解釈が異なることがあります。しかし一般的には「人間の知能を模した機能を持つコンピュータシステム」だと理解されることが多いようです。ITを駆使したコンピュータなど、AIとは異なるシステムは、与えられた入力に対して決められた計算を行い、決まった出力を行う一方で、AIは計算の過程で分類や推論などの処理を行う点に特徴があります。その結果、これまでのコンピュータでは難しかった大規模なデータの処理や、人間では難しいパターンの検出などが行えるようになってきています。 「人工知能」と訳すことができるAIですが、人間のような知能があるわけではなく、特定の機能に特化したコンピュータシステムが大多数を占めています。現在は特定の目的で開発したAIを限定的なシーンで活用するケースが多く、多くの成果がある一方で、まだ進化の余地がある技術だと言えます。 機械学習とは 機械学習とは、膨大なデータをもとにコンピュータがルールやパターンを学習する技術を指します。データによりトレーニングを行うことで、特定のタスクを高い精度でこなせるようになります。機械学習はさらに、教師あり学習、教師なし学習、強化学習に分類できます。これらはタスクの内容に応じて適した技術が選択されます。 ▼教師あり学習 コンピュータにリンゴの画像を学習させるというタスクがあった場合、さまざまなリンゴの画像に対し「リンゴ」という正解を一緒に与えるものです。コンピュータは多くの正解を分析しながら、リンゴについて学習していきます。 ▼教師なし学習 正解を与えず、コンピュータは自分で特徴を分析しながら類似のデータをグループ分けするクラスタリングなどを行います。 ▼強化学習 学習のプロセスもコンピュータ自身が強化していく技術で、最もいい報酬を得られるように学習内容を自動的に改善していくというものです。 これら学習方法の具体的な違いや活用方法については、以下のコラムで解説しています。 Laboro.AIコラム: 「『教師あり学習』『教師なし学習』とは。文系ビジネスパーソンのための機械学習」 ディープラーニング (深層学習)とは ディープラーニングとは、機械学習において必須とされるパラメータ「特徴量」を指定することなく、コンピュータ自身が特徴量を探して学習を行っていく手法です。 機械学習では原則として、人間が特徴量を選択する必要があります。特徴量とは、コンピュータが物事を認識する際に基準とする特徴のことを指し、リンゴの画像認識においては「色」「形」などが特徴量の一つとして考えられます。その画像に写っているものが赤色であればリンゴの特徴に該当しますが、紫色であればリンゴとは言えず、この色によってリンゴかどうかを判断するといった具合です。 コンピュータが機械学習でリンゴについて学習するためには、参考にすべき特徴量を人間が選択します。例えば、赤リンゴと青リンゴの分類を学習させたい場合、「形」の特徴量を参考にすると上手く分類することは難しいかもしれません。そこで「色」を参考にすると人間が特徴量を指定することで、コンピュータは赤リンゴと青リンゴの特徴を学習し、分類できるようになります。 この「特徴量の選択」という人間の作業を取り払ったのが、ディープラーニングです。ディープラーニングでは与えられたタスクに対し、どの特徴量を参考に学習すればいいのかもコンピューター自身が判断します。上記の赤リンゴと青リンゴの分類においては、色を参考にするのか形を参考にするのか、人間が指定せずとも「色が参考になる」と判断し、正確な分類を学習していきます。 ディープラーニングは人間の作業量が少なく、その上で従来の機械学習よりも高精度な判断を行えるようになる点がメリットです。また、色などの分かりやすく言語化しやすい領域よりも、言語化しにくいために人間では区別が難しい領域で大きな力を発揮すると言われています。 例えば、農家が経験によって振り分けるしかない農作物の等級の分類に関して、ディープラーニングを用いて分類を自動化する試みが行われています。等級や傷の有無など、品質の判断は赤リンゴと青リンゴの違いのような簡単なものではありませんが、ディープラーニングを活用すれば高精度な自動分類により業務効率化を進めることも期待されています。 特徴量の詳しい内容やディープラーニングとの関係については、以下のコラムもぜひ参考にしてください。 Laboro.AIコラム: 「機械学習の鍵 「特徴量」。その重要性を考える」 機械学習の種類 機械学習技術には、計算の手順を示したさまざまなアルゴリズムが存在します。ここでは、代表的な手法として知られるサポートベクターマシン、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワークについて、簡単に説明します。 サポートベクターマシン(SVM) サポートベクターマシンとは、主に教師あり学習の「回帰」や「分類」に使用されるアルゴリズムです。このうち分類は、そのデータがどのカテゴリに属するのかを振り分ける作業などを指します。 サポートベクターマシンでは、データを分類する際に境界線となるラインを決定します。例えば、ピーマンとパプリカを分類するタスクを考えてみます。ここでコンピュータに与えるデータが色の情報しかないと、境界線となるラインを間違えてしまい、未知のデータを与えた際に違った分類をしてしまうかもしれません。そこで、大きさの情報も与えることにします。すると、コンピュータは色と大きさの二つの情報からピーマンとパプリカの境界線を引くことができ、未知のデータをより正確に分類できるようになります。 決定木 決定木とは、主に教師あり学習で用いられるアルゴリズムです。分類の他、「回帰」でも使用されます。回帰とは、例えば降雨量や気温と作物の収穫量を学習することで、次の年の収穫量を予測するようなモデルを指します。 決定木は、樹形図と呼ばれる木を模した図をイメージすると理解しやすくなります。例えば、人の写った写真を男性か女性かで分類するタスクを考えてみます。最初の質問として、背が高いか低いかを設定すると、高い場合と低い場合で分岐します。次に、髪が長いか短いかの質問を設定すると、さらに分かれていきます。このように分岐を続けることで木の枝が広がるように学習を重ねていくことができ、未知のデータを与えたときに男性か女性かの正解を当てる精度が増していきます。 ランダムフォレスト ランダムフォレストとは、主に教師あり学習の分類や回帰で使用されるアルゴリズムです。簡単に言えば、複数の条件で計算を行った決定木の結果を集め、多数決で最終的な結果を出力する手法となります。木が複数あるので森(フォレスト)というネーミングがされ、決定木よりも精度が高まる、過学習による精度の低下を回避できるといった特徴があると言われています。 ニューラルネットワーク ニューラルネットワークは、昨今話題のディープラーニングでも用いられているアルゴリズムです。ニューラルネットワークは人間の脳を構成するニューロンの仕組みを数理的に再現したもので、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングは処理の精度をその他の機械学習より飛躍的に向上できる可能性があるとされています。 ディープラーニング(深層学習)の活用分野 ディープラーニングが登場したことで、AI活用がさまざまな分野で発展しています。ここでは、代表的な活用分野についてご紹介します。 画像分野 上記でご紹介したリンゴの画像認識の例もそうですが、画像認識はディープラーニングが得意とする分野の1つです。身近なものでは、カメラの顔認識機能が挙げられます。コンピュータに顔の特徴を学習させることで画像から人間の顔を識別できるようにするもので、ディープラーニングによりさまざまな応用が登場しています。ベースとなる技術としては、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が挙げられます。 また、消化器系がんの症例をディープラーニングで学習したAIによる、内視鏡AI診断支援技術も開発されています。胃や食道、大腸の内視鏡検査中に、AIがリアルタイムで画像を解析し、医師が診断時に見るモニターに映し出される内視鏡映像に、「がんの疑いがある部分を表示」することで医師の診断を支えるものです。 「第4回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(高専DCON)2023」で最優秀賞を受賞した大島商船高等専門学校のチームは、AIを活用した魚の養殖の効率化を果たしました。タイは成長度合いによって個体の色が異なるため、AIによる画像認識技術により魚の色から大きさの違いを識別し、サイズの大小を84%の精度で判別できました。これにより、魚を均一に育てやすくなることで売り上げの増加や餌代の削減などが実現し、2年間で真ダイの養殖業者の収支が約400万円改善すると試算しています。 出典:富士フィルム「 内視鏡AIとFUJIFILM 」    日経産業新聞「 高専がAIとドローンで魚養殖 DCON観戦記 」 画像分野におけるAI活用については、以下のコラムでもご紹介しています。 Laboro.AIコラム: 「画像認識AIの世界。その仕組みと活用事例」 音声分野 コールセンターは、自然な対話や文章要約を得意とする生成AIの導入効果が特に高いと言われています。具体的な用途は、オペレーターが顧客対応中に必要な情報を表示するなどの他、通話内容の書き起こしに加え、「ボイスボット(AI音声による自動回答)」の実用化も進んでいます。 出典:日本経済新聞「 コールセンターの顧客対応、生成AIで5割短く 13社調査 」 音声分野におけるAI活用については、以下のコラムでもご紹介しています。 Laboro.AIコラム: 「音声認識AIのいま。その技術や事例を知る」 自然言語処理 手書き文字や発話など、様々な文字情報を処理する技術を自然言語処理と言います。この技術により、これまでは自動化が難しかった人間の作業もコンピュータが行えるようになってきています。 例えば、Laboro.AIの事例として文書分類の自動化があります。申込書に書いてある各テキストを、その後の工程の別々の担当者に振り分ける際、これまでは振り分け担当が目視で行うしかありませんでした。Laboro.AIが開発した文書分類ソリューションによるAIでは、書面上の文字情報を認識した上で、申し送るべき情報とそうでない情報を振り分けることを可能にしています。 (参考:プロジェクト事例  文書分類による業務自動化率の向上 ) 時系列データ予測 膨大なビッグデータを処理してパターンを学習することで、コンピュータは未来の時系列の情報も高い精度で予測できるようになってきています。 実際に活用が進んでいる分野としては、小売店や飲食店の需要予測があります。これまでも売上や時間、天候などの情報から需要の予測を行えましたが、AIにより人為的なミスや経験の差を少なくし、より高い精度での需要予測が可能になっています。また、天気やポイント付与率などのデータを用いて需要予測を行い、自動で発注まで行うといった応用も登場しています。 セブン―イレブン・ジャパンは2023年3月にAIによる発注支援システムを導入しています。AIが各店舗に応じた発注案を作成することで、フランチャイズチェーン加盟店の発注作業にかかる時間を約4割減らせるとしています。AIがこれまでの売れ筋や気象状況、周辺のイベントの有無などから個店ごとの需要予測をして発注案を作成し、加盟店はこの提案を活用して発注数を決められます。 出典:日本経済新聞「 イズミ、AI発注を全店で 天気や気温で需要予測 」    日本経済新聞「 セブンイレブン、AIが発注提案 店舗負担4割減 」 ディープラーニング (深層学習)を使った開発が向いているケース AIを活用したシステムを構築したいとなった場合には、そのプロジェクトの特徴を検討することでディープラーニングが適しているかどうかを判断することになります。 データセットの内容 ディープラーニングでは人には判断ができないような複雑な分析も可能ですが、その分、膨大な学習データが必要となります。大量のデータが用意できるのであれば、ディープラーニングによるAIモデルの構築を視野に入れることができます。 利用可能なハードウェア 大量のデータを用いて複雑な処理を行うディープラーニングでは、その計算処理に耐え得るハードウェアを用意する必要があります。ディープラーニング用に設計されたハードウェアでは数秒で終わる処理も、スペックが足りないと数週間かかるといったことも起こり得るからです。 説明責任 ディープラーニングの特徴として、コンピュータが人に代わって特徴を抽出することのメリットをお伝えしました。その裏返しとして、アルゴリズムがなぜそのような出力をしたのかを説明できない「ブラックボックス問題」がディープラーニングには伴います。例えば医療でのAI活用のように人の命に関わるようなタスクの場合、「なぜAIがそのような診断・判断をしたのか」といった説明性は重要な点になります。こうした観点からもディープラーニングを用いるべきかどうかを判断する必要があるのです。 AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いを把握しよう 似たような言葉として語られることも多い機械学習とディープラーニングですが、両者は学習過程で特徴量の選択を人間が行うかどうかという大きな違いがあり、必要なデータセットや得られる結果も大きく異なります。AIベンダーと協力してAIを導入する際にもこれら点は重要な論点となりますので、その違いをよく把握しておきましょう。 The post AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いとは first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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日本語話者の音声を収録した話者認識用データセット 「Laboro-ASV」を無償公開 2024.1.30 株式会社Laboro.AI 代表取締役COO兼CTO 藤原弘将 機械学習エンジニア 趙 心怡 概 要 Laboro.AIは、話者認識技術の発展を目的に、日本語話者の音声を収録した音声データセット「Laboro-ASV」の無償提供を開始しました。 Laboro-ASVは、B-CASカードによるアクセス制限がないワンセグ放送を利用し、2022年2〜7月にかけて放送されたテレビ番組の録画データから構成された音声コーパスで、142人の話者による約95時間分の音声が収録されています。 なお、Laboro-ASVについては、2023年9月27日に開催された、日本音響学会 第150回(2023年秋季)研究発表会にて報告いたしました。予稿は こちら からご覧いただけます。 目 次 ・ 背景 ・ Laboro-ASVの特徴 ・ Laboro-ASV比較実験について ・ Laboro-ASVの利用について 背景 話者認識は、幅広い応用可能性を有している技術分野であり、例えば音声アシスタントやセキュリティーシステムなどさまざまな用途で使われております。中でも話者認識の精度を向上させるカギは、対象となる話者が使用する言語向けに作成された高品質な音声データセットが利用できることにあります。ですが、外国言語の著名な音声データセットとしては、 VoxCeleb (※1)や CN-Celeb (※2)などがある一方、日本語の話者認識の分野では、以下の条件を満たす有用なデータセットがありませんでした。 (1)日本語話者に限定、または重きを置いている (2)研究用途のみならず、商用利用も無償 (3)”in the wild”のデータを収集し、それによってスタジオ収録の音声よりも実環境に近い音声データで構成されている 日本語を主たる言語としない話者による音声データセットでは、話者認識の精度を著しく低下させる可能性もあり、特定言語に特化したデータセットの必要性を背景に、当社では日本語話者に特化した音声データセットを作成しました。 (※1)2017年に発表された英語話者向けデータセット (※2)2019年に発表された中国語話者向けデータセット Laboro-ASVの特徴 当社では「話者ごとの発話数」が話者認識のためのデータセットの有効性を決定付ける重要な要素であると考え、Laboro-ASVをデータセットとして充実させることを目的に、出演頻度に基づいて話者を選択し、話者ごとに十分な発話量を確保しています。話者1人当たりの発話数は、同種のデータセットで一般的に100~200であるところ、それをはるかに上回る450超の発話数で構成されています。 Laboro-ASV比較実験について Laboro-ASVの性能を評価するため、日本語話者照合タスクの観点から、JTubeSpeech(※3)データセットのトライアルセットをテストセットとして使用し、Equal Error Rate(EER)を評価指標として評価しました。なお、他のモデルとの公平な比較を保証するために、すべての実験は同じ設定で実施しています。また、speaker embeddingの抽出と話者照合にはX-vector/PLDAを使用しています。 Laboro-ASVの性能を日本語話者照合タスクの観点から評価した結果 EERは低い方が良いとされており、比較実験の結果、VoxCeleb1とLaboro-ASVを組み合わせたデータセットで訓練されたモデルが最も良い性能を発揮できていることが上図から分かります。Laboro-ASVは、データ量の観点においては他の大規模データセットに比べて劣るものの、他のデータセットと併用することで日本語話者照合タスクの精度を向上させるために有効なデータセットであることを確認しました。 (※3)音声認識と話者照合のために YouTube から構築される日本語音声コーパス Laboro-ASVの利用について Laboro-ASVに含まれる音声及びテキストデータの権利は、元のテレビ放送の著作権者に帰属していますが、著作権法30条の4に基づき、情報解析等の用途のために、商用利用および大学等の学術研究機関に対して無償で公開します。ただし、元のテレビ番組の音声を再構成し鑑賞する事を防ぐために、発話単位でランダムに並び替えられており、かつ番組名や放送局等の付加情報は含まれていません。 配布の流れ ご利用にあたっては、当社HPの お問い合わせフォーム からお問い合わせください。その際、Laboro-ASVの無償利用の申し込みであることを明記いただいた上、下記の点を記載してください。 ●所属機関 ●申込者氏名、所属部署、役職、メールアドレス ●(申請者が学生等の場合)申込責任者氏名、所属部署、役職、メールアドレス その後、申込書を電子契約サービスであるクラウドサインを通じて、指定のメールアドレスにお送りしますので、必要事項を記入の上、申し込みをお願いいたします。弊社側で申込書を審査した上で、申込書に記載のメールアドレス宛にコーパスをダウンロードするURLをお送りします。 なお、大学等の学術研究機関からの申込に関し、申込書の名義は、原則として教員や職員の方でお願いします。学生等の方からの申込の場合は、申込書の記入は学生の方でも結構ですが、申込者の欄には教員の方の名前を記入願います。教員の方のメールアドレスに申込書の承認の依頼をお送りします。また配布には、お問い合わせをいただいてから3週間程度かかりますことをご了承ください。 The post 日本語話者の音声を収録した話者認識用データセット「Laboro-ASV」を無償公開 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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人権か、経済か。「顔認識」がAI法案で最大の争点となった舞台裏 2024.1.8 監 修 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 2023年12月、世界初となる「包括的なAI 法案」がEUで合意に至りました。この法案によってさまざまなAI技術が4つのリスクに分類され、最も危険とされるものの利用は禁止されるようになります。 会合の場にはおよそ100人がいたとされ、各々の立場の思惑が交錯し、中でも顔認識技術について激しく意見が交わされました。議論の結果、用途によっては「許容できないリスク」として禁止されるような高リスクに位置付けられることとなった顔認識技術。違反した企業は最大で、3,500万ユーロ(約55億円)または世界における年間総売上高の7%のいずれか高い方を罰金として支払うことになります。 このAI法案が2024年に承認されるのを目前に控え、顔認証技術の具体的なリスクや、どうすると公平で安全な社会に役立てられるのか、法律に従う前の私たちが意見を交わすタイミングはもう、わずかしか残されていないのかもしれません。 (※このコラムは2023年12月時点の情報をもとに作成しています。) 目 次 ・ 人権を守るAI法案  ・ いろいろなAIをリスクで分類 ・ 顔認識技術のルール作り  ・ 「許容できないリスク」という格付け  ・ 「許容できないリスク」の例外 ・ 顔認識技術をめぐる例外的措置  ・ 2024年にオリンピックを控えたフランス  ・ 企業にはマイナスの影響 ・ 世界の思惑と規制への動き  ・ 中国のAI規制は民間への牙城  ・ アメリカはサイバー攻撃への対応を優先  ・ 日本は慎重に特定の範囲ごとに検討 ・ AIが握る経済のパワーバランス  ・ エンジニアよりも弁護士へ  ・ プライバシーの不安とセキュリティの安心  ・ 人権を支える顔認識技術の普及を ・ 施行スタートまで間もなく  ・ 安心のために残されたのはわずかな時間 人権を守るAI法案 いろいろな AI をリスクで分類 ブリュッセルで開催されたEUの会合で、世界初となる「包括的なAI法案」が合意に至りました。しかしながら合意とはいえ、3日間に及んだこの“マラソン会合”の内側では激しい交渉が行われていたことも事実で、途中、大きな意見の相違によって当局者が疲弊し、休会を余儀なくされるほどだった そうです 。 そもそもAI法案とは、AI技術の潜在的なリスクに対処するために、AIがどのように開発され、使用されるべきかを規定するルールの集合体の ことです 。この法案の注目すべき点は、さまざまなAIの用途をリスクのクラスで分類し、より高いリスクに対して規制を強化するような仕組みになっている ところです 。例えば、私たちに身近なおすすめシステムやスパムフィルターなどのAIシステム は自由に利用できる最小リスクに位置付けられて います 。 photo by Flickr 顔認識技術のルール作り 「許容できないリスク」という格付け それでは、何がそれほど白熱した議論を呼ぶ争点となったのかというと、一つに公共の場での顔認識技術 ーバイオメトリクス(人物の識別と分類)と感情認識に関連する技術ー の使用が挙げられます。現在、バイオメトリクス技術は、顔識別、アクセス制御、監視、人の捜索の目的などで法執行機関でもすでに利用され始めて います 。 表情解析による感情認識の技術は、配送業(運転手の監視)、医療(痛みなどの検出)、刑事司法(警察の取り調べ)、教育(学生のオンライン試験の監督)、職場(ストレス状態や燃え尽き症候群の予測)、雇用(就職面接)、そしてエンターテインメントや マーケティング (消費者の体験や満足度評価)において強い存在感を示して います 。 今回の会合では、「基本的人権を守る」ことを核としてAI技術の利用目的ごとにリスクが4段階に分けられましたが、その中で顔認識技術の一部は今回の会合で最も危険とされる「許容できないリスク」に分類された のです 。 photo by Flickr 「許容できないリスク」の例外 なぜ、顔認識技術は「許容できないリスク」などの高リスクに指定されるほど問題視され、ルール作りを困難にするのでしょうか。それは一言で言うと、顔認識技術の使用が人権侵害につながるリスクが高い技術でありながら、最も研究が盛んで需要が非常に高い技術だからです。 会合では、警察や雇用主、小売業者が一般市民を撮影して人物や感情を認識するAIのリアルタイム監視をめぐり、これらの利用を人権擁護のために禁止したい EU 議員との間で意見が対立し、交渉が長引いた のです 。最終合意では、その用途によっては禁止もありながら、リアルタイムの顔認識技術については法執行機関での使用のための例外が設けられることになりました。 photo by Flickr 顔認識技術において禁止されたのは、職場や教育機関における感情認識に関する利用や、インターネットなどから無差別に顔のデータを拾ってシステム開発に利用すること などです 。これによって例えば、顔認識技術や音声ガイドで子どもの行動を観察したり、何かを促したりするおもちゃの開発は禁止されることになり そうです 。 また、今回の法案により、SNSなどから無断で顔データをスクレイピングすることも禁止 されます 。インターネット上で顔データを集めることはプライバシーの権利を損なうだけでなく、データの偏りにより多様性と公平性、表現の自由、集会の自由に対する権利を脅かす可能性が指摘されて きましたが 、スクレイピングが禁止となれば自ずとこうしたリスクを防げる可能性は高まるはずです。 photo by Flickr 顔認識技術をめぐる例外的措置 2024 オリンピックを控えたフランス 議会は当初、人種や政治的意見、宗教といった特徴に基づいて個人を分類する顔認識技術の使用も禁止したいと考えていました。しかしながら、オリンピックを控えたフランスなど欧州各国政府からの強い要請を受け、テロ防止や重大犯罪の被害者や容疑者の所在を特定するためという例外の設置と引き換えに、リアルタイムの顔認識技術の使用禁止を取り下げました。 すでにパリには250台のAI監視カメラが設置 され 、2024年のオリンピック開催に向けてフランスの国会でAIを用いて警察の監視を強化する法案が可決されて います 。ただし、例外とはいっても、重大犯罪の容疑者や被害者の捜索をするには結局、公共空間にいるすべての人の特徴をスキャンすることになります。 顔認識技術の使用を厳しく制限するために交渉チームを率いたブランド・ベネフェイ欧州議会議員は、警察による濫用を防ぐため、使用に関して「独立した当局」が「予測的取り締まり」の許可を与えなければならない保障を確保したことに 触れています。 そして欧州議会のロベルタ・メツォラ議長は、この法案は「バランスの取れた人間中心のアプローチ」であり、「間違いなく今後何年にもわたって世界標準となるだろう」と 語っています 。 photo by Flickr 企業にはマイナスの影響 その一方で、 AI規制が厳しすぎると、AI 開発における欧州トップ企業の成長が損なわれ、欧州から追い払ってしまうことになるかもしれないという懸念が聞こえてくることも事実 です 。そういった企業の中には、ヨーロッパ大陸の言語多様性に対応する生成AIを開発するドイツのAleph Alpha や、画期的な大規模言語モデルを開発するフランスのMistral AIといった注目企業の名も上がっています。 今回の合意に対し、AI分野における欧州最大のイニシアチブ appliedAI のアンドレアス・リーブル代表は、次のように 言います 。 「世界的な競争という点では、(AI規制は)足手まといになるだけだ」 世界の思惑と規制への動き 中国の AI 規制は民間への牙城 EUのAI法案はAI 技術に関する最も包括的なルールブックと言われていますが、AI法自体は世界初ではなく、中国では2023年8 月に生成AIに関する規制が施行されています。中国は生成AI によって検閲が難しくなることを恐れ、民間のAI使用を厳しく制限しています。例えば、ChatGPTを中国国内で利用することはできませんし、動画生成AIとして何かと話題になる“ディープフェイク” も不健全または感情的に有害とみなされ禁止され ています 。 しかしその一方で、顔認識技術はすでに大規模に使用されており、街中の交差点では顔認識システムでサポートされた大型スクリーンに、信号無視をした人がリアルタイムで映し出されたり、公衆トイレのトイレットペーパーディスペンサーを作動させるために顔認識技術が使用されたりもし ています 。 ですが、あまりに急速に普及する顔認識AIに懸念の声が強まり、2023 年には顔認証技術のセキュリティ管理を統括するための新しい草案も発表され ました 。 photo by Flickr アメリカはサイバー攻撃への対策を優先 中国のようにAIが重要な商業的展望を握ると睨むアメリカは、規制に対してどちらかというとライトタッチなアプローチを選んできました。 しかしサイバー攻撃に対して懸念が膨らむ中でバイデン大統領は2023年10 月、AI開発企業に対し、サイバー攻撃に対するアプリケーションの脆弱性の評価やAIの訓練とテストに使用したデータ、性能測定値を連邦政府に提出するよう求める大統領令を出し ました 。 今後更なる顔認識技術の利用がありうる雇用や住宅ローン申請、裁判所の判決におけるAIの使用に関しては、企業に行政府への利用ガイダンスの公表を義務付けることでリスクへの対処としています。 photo by Flickr 日本は慎重に特定の範囲ごとに検討 そして日本では、道路交通法に自動運転の項目が 設けられる など、AIの開発や利用をめぐる制度については、範囲や用途をかなり絞って慎重に検討されてきました。 それが 2023年、生成AIを開発する企業や全てのAIの開発と活用における国際ルールをつくろうとG7議長国として提案し、G7広島サミットで「広島AIプロセス」が立ち上がって議論が交わされ、12月に各国共通の基本的な方針が合意に 至りました 。そして、年末には企業向けに「10の指針」が 定められ 今後本格的に整備されていくことになります。 それに沿って企業には、AIに関する脆弱性や透明性、テスト結果やリスク管理などといった情報を政府に提供することを前提としたAIの開発が求められる 見込み ですが、今回のEUのAI法案による国際社会の流れを受け、顔認識技術のリスクも含めてどのような調整がされていくのか今後が気になるところです。 photo by Flickr AI が握る経済のパワーバランス エンジニアよりも弁護士へ EUのAI法案の合意によって、企業が規制を遵守するためにはAI エンジニアを雇用することに代わって、弁護士にリソースが費やされることになるという意見もあります。 しかしEUでは、かつてSNSにおいて、選挙への干渉やヘイトスピーチ、児童性犯罪を含むプラットフォーム上のコンテンツを規制する義務を負うことなく、企業が数十億ドル規模にまで成長することが許された過去の過ちを繰り返しては ならない という議員の発言も見られ、AI社会で人権を守る世界のリーダーとなる道を歩み始めています。 AIはすでに経済構造に入り込み、金融投資に情報を提供し、国の医療や社会サービスを支え、エンターテイメントの分野に影響を与えつつあります。それはつまり、AIが世界のパワーバランスに影響を与える存在になっていると言っても過言ではありません。 ところが、世界各国がそれぞれの思惑でAI 技術に対する規制を模索している反面、実は一般における顔認識技術への意識は世界中でまだまだ薄いというのが実情のようです。 photo by Flickr プライバシーの不安とセキュリティの安心 実際、これまでいくつかの研究で、顔認識AIに対する一般市民の認識を分析した調査結果が報告されています。イギリスの数千人の成人を対象とした 調査 では、顔認識技術の認知度が高いとしても、顔認識がどこで使用されているのか、その精度や限界などに関する知識は低く、市民へのアウトリーチと教育努力の必要性が示唆されました。 さらにこの調査では、市民が無条件に警察の顔認識技術の利用を支持しているわけではないものの、多くは顔認識技術が自分にとって重要なセーフガードであると安心感を抱いていることも判明 しました 。 こうしたプライバシーの権利への不安と、より効果的なセキュリティへの安心との間を行き来する心の揺れは、オーストラリアの市民を対象に行われた調査でも確認され ています 。 photo by Flickr さらに調査によってわかってきたことは、一般市民の顔認識技術に対する意識が文化的背景に大きくリンクしていることです。例えばアメリカの回答者は技術の民間利用をより受け入れている傾向が見られますが、イギリスやオーストラリアの回答者ほど警察による利用を信頼していません。そして、中国の回答者はイギリスの回答者と比べて、AI技術がより正確であると考え ています 。 人権を支える顔認識技術の普及を これらの研究結果をみると、コロナの蔓延防止や事故防止、コミュニケーションが困難な患者の痛みの評価 など 、社会に良い影響を持つ顔認識技術の使用事例が一般にはあまり知られていないことも考えられます。 こうしたポジティブな顔認識技術の中でも期待が寄せられるのは、目の不自由な人々への支援です。目の前の人やすれ違う人の表情を認識して伝えることでAIがその人の目となり、コミュニケーションを助ける技術の開発が進められて います 。 photo by Flickr 高齢化の進む今後40年で、目の見えない人の数は世界中で3倍に急増し、2050年までに1億1500万人に達すると予測されています。イギリスのアングリア・ラスキン大学の研究チームが世界188カ国のデータを分析したところ、中程度から重度の視覚障害がある人の数も2050年までに5億5000 万人に上る可能性があり、その多くが発展途上国に暮らす人だ そうです 。 また今回のAI法案によって、こうした人権を支えることを目的とした顔認識技術の開発に必要な顔データが、インターネットから無作為に集められなくなったとしても、合成顔画像データを生成するAI技術によって安全に顔データが提供されるような可能性も生まれてきて います 。 厳しい規制を敷くEUのAI法案でも、イノベーションを支援するため新たに開発されるAIシステムは、スタート時はAI 法で定義された高リスクのカテゴリーから始まり、その効果を調査するにつれて低リスクに降格させることができるとし ています 。 施行スタートまで間もなく 安心のために残されたのはわずかな時間 欧州議会は今回の合意によって2024年5月にもこの法案を通過させることができるように なりそう で、投票で法案が可決された後には、欧州AI事務局が新設されるとともに、EU加盟各国がAIを規制する機関の設立を進められる 予定です 。 また、可決後6ヶ月で顔認識技術のようなリスクの高いものから先に、この法律に則って違反を取り締まる流れ になり 、加盟国は2年後までにAI法を国内法に取り入れていくとの ことです 。 世界に先駆けEUは、人々を中心に据えたAI法の施行という歴史的な偉業を成し遂げようとしています。人権保護団体は今回の法案によって、企業や当局が人々を1と0の文字列に置き換え、歩くバーコードとして扱うことを阻止することができると 主張 しています。 photo by Flickr 確かに過去10年で人間の顔は、”ピッ”とスキャンできる世界共通の信用通貨のようになりつつありますます。ですがEUだけではなく、ここ日本においても今後規制が敷かれていく日が間近に近づいているわけですが、そのときを境にして、私たちは顔認識AIに対して感じる不安と安心の両方がはっきりとクリアに見通せていると自信を持って言えるのでしょうか。 法案の最大の争点となるほど顔認識AIが重要な局面にある今、法律に従う前の状態で私たちが意見を交わすタイミングはもう、わずかしか残されていないのかもしれません。 The post 人権か、経済か。「顔認識」がAI法案で最大の争点となった舞台裏 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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プロンプトエンジニアリング【ビジネス成長のためのAI用語】 2023.12.20 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 用語解説 プロンプトエンジニアリングという言葉はもちろん、「プロンプト」と「エンジニアリング」という二つの要素で構成されています。プロンプトとは生成AIに対してユーザーが入力する質問や指示のことです。そして「エンジニアリング」は、生成AIから得られる出力(返答テキストや画像など)がより望ましいものになるようにプロンプトを工夫することです。逆を言えば、生成AIの出力はプロンプトエンジニアリング次第で大きく異なってきます。 プロンプトエンジニアリングに関する知見はウェブ上で数多く言及されていますし、プロンプトエンジニアリングをタイトルに冠した書籍も出始めています。 応用&詳細解説 生成AIによる良い出力を得る効果的なプロンプトとしては、質問や指示内容を具体的・明確にすることなどが提案されています。例えば、出力の項目、形式、個数、範囲などを特定することです。 特にChatGPTのような対話型の生成AIでは、その特徴を生かして、対話を重ねて質問や指示を絞り込んだり、回答例を提示したりすることによって、回答の精度を徐々に高めていくこともできます。 プロンプトの入れ方、つまりプロンプティングの代表的な分類には以下があります。 zero-shotプロンプティング:例題なしで質問のみで問題を解かせる (質    問):プロンプトとは何か簡単に教えてください (回    答):プロンプトとは、ある行動や反応を引き出すための刺激や指示のことを指します~(以下略) one-shotプロンプティング:タスクの説明と一つの例題で問題を解かせる (タスクの説明):奇数か偶数か判別してください (例    題):20 -> 偶数 (解きたい問題):11 -> (回    答):奇数 few-shotプロンプティング:タスクの説明と複数の例題で問題を解かせる (タスクの説明):飲み物の原料を教えてください (例    題):ビール -> 大麦 (例    題):日本酒 -> 米 (例    題):ジンジャエール -> ショウガ (解きたい問題):ワイン -> (回    答):ブドウ 他にも、問題を解くまでの一連の手順をプロンプトに含める「Chain-of-Thought(CoT)プロンプティング」や、few-shotとCoTを活用した推論ステップ例を複数与えて複数の推論パスを生成させ、それらの中から最も整合性のある回答を選び出させる「自己整合性(Self-Consistency)」などがあります。 例えばChatGPTでは、以下の目的で使えるプロンプトがあります。 テキスト要約 :ある程度の長さの出力に対して「1文で説明してください」と言ったプロンプトを入力して、新たに1文の出力を得る。 情報抽出 :ある文章について、任意の条件のプロンプトを入力して、それに適った出力を得る。 テキスト分類 :「良い」「悪い」「中立」に分類するといったプロンプトと分類したいテキストを入力し、分類結果を得る。 質問応答 :質問に加えてその背景にある文脈も入力し、得られる回答の質を高める。 会話 :会話の何回かのやり取りに加えて、例えば話者の立場や科学的に」といったトーンも入力として与え、自然な会話を続けていく。 コード生成 :ChatGPTはコード生成にも対応している。 計算 :LLM(大規模言語モデル)にとって困難なタスクの一つで、ミスが多い。 ビジネス成長に向けたポイント 近年、効果的なプロンプトを設計することを役割とした新たな職種として「プロンプトエンジニア」が注目されてもいますが、入力するプロンプトによって生成AIによる出力の質が大きく変わるため、プロンプトエンジニアリングは人間の腕の見せどころとも言えます。プロンプトはプログラミング言語ではなく日常的な自然言語を使っていることに着目すれば、AIやITが得意でない人でも多くのアイデアを得られる可能性があります。 「ChatGPTを使ってみたが、出力が期待はずれだった」と思っている方がいれば、もしかすると解きたい問題に対するプロンプトが適切でなかったのかもしれません。多くのプロンプトやプロンプティングの方法が提案されていますので、まずはそれらを使ってみるのが、ビジネス活用の第一歩です。その中で、ある業界や職種に特有のプロンプトの在り方も見つかるかもしれず、そうした領域特化型のプロンプト開発はそれぞれの仕事の仕方を進化させる可能性があると言えます。 参考 DAIR.AI “ Prompt Engineering Guide ” NRI「 プロンプトエンジニアリング 」 @IT「 プロンプトエンジニアリング(Prompt Engineering)とは? 」 第一生命経済研究所「 生成AIを使い倒すためのプロンプトエンジニアリングとは 」 スキルアップAI「 ChatGPTのプロンプトエンジニアリングとは|7つのプロンプト例や記述のコツを紹介 」 白辺陽『生成AI 社会を激変させるAIの創造力』 岡野原大輔『岩波科学ライブラリー319 大規模言語モデルは新たな知能か—ChatGPTが変えた世界』 インフォメーション・ディベロプメント「 今日から使えるLLMのプロンプトテクニック 」 The post プロンプトエンジニアリング【ビジネス成長のためのAI用語】 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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自然言語処理におけるファインチューニング【ビジネス成長のためのAI用語】 2023.11.16 株式会社Laboro.AI 機械学習エンジニア 趙 心怡 リードマーケター 熊谷勇一 用語解説 ファインチューニングとは、ニューラルネットワークにおける機械学習の中で、あるデータセットを使って事前学習した訓練済みモデルの一部または全体を、別のデータセットを使って再訓練・微調整して仕上げることです。 特に自然言語処理、中でも近年注目を集める文章生成AIにおいては、プロンプト(ユーザーが入力する指示や質問)とそれに対する望ましい応答を訓練することで、モデルの性能を向上させる方法を指し、LLM(Large Language Model、大規模言語モデル)の能力を向上させるための強力な手段でもあります。例えば有名なモデルであるBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)の処理は、ウェブ上の膨大なテキストをデータセットとする訓練から始まります。この初期訓練によって言語に対する幅広い理解をLLMに持たせることができ、特定の業界・分野やタスクで優れた能力を発揮できるように調整するのがファインチューニングの役割とも言えます。 応用&詳細解説 ファインチューニングには利点が大きく二つあります。 一つ目は、ファインチューニングを施したモデルは、特定のタスクにおいてより良い性能を発揮することです。例えば、GPT(Generative Pretrained Transformer)とChatGPTを比較すると、GPTモデルにファインチューニングを施したものがChatGPTです。もともとテキストを生成するよう訓練されたGPTモデルとは異なり、ChatGPTはまるでユーザーと会話をするように指示に従ったり、質問に回答したりすることを繰り返すことによって微調整(ファインチューニング)され、より望ましい出力を返すことを実現しています。 またファインチューニングされていない大規模なモデルと同等以上の性能を達成するために、比較的小規模なサイズのモデルをファインチューニングするというアプローチも考えられます。例えば、Laboro.AIが開発したBERT事前学習モデル「 Laboro BERT 」は、12GBのデータで事前に訓練されていますが、ファインチューニングには数MBのデータしか必要なく、それでいて高い精度でのタスク処理が可能です。 モデルの規模が小さくなれば推論コストも低くなるので、ハードウエア要件もより緩くなります。大ざっぱに言えば、最高性能のGPU(グラフィックボード)を積んだ計算機を使うところを、手頃に買えるノートパソコンで対応できる、といった具合です。見方を変えれば、モデルの規模を大きくできない制約がある場合に、精度を上げるために有効な手法の一つがファインチューニングだと言えます。 利点の二つ目は、金銭的なコストがあまりかからないことです。通常、モデルの訓練には数十万円から数億円かかることが見込まれますが、ファインチューニングを行う場合、モデルをゼロから訓練するわけではないため、必要とされる訓練データセットが少なく済むことから、データ収集も比較的容易になります。基となるモデルを開発するコストも考慮しなければ なりませんが、コスト低減ができる可能性はあるということです。 例えば、2023年に発表されたMeta社のLLMモデル、LLaMa (Large Language Model Meta AI) 7BをファインチューニングしたモデルAlpaca は、何兆個ものトークンで訓練されている結果、その費用は約8万5000ドルにもなることが報告されています。一方、Alpacaのファインチューニングは、スタンフォード大学による発表によれば、データ収集に500ドル、トレーニングに100ドル、合計600ドルしかかからなかったとのことです。 ビジネス成長に向けたポイント ビジネス面での利点には前述の通り、まずモデル開発の費用を下げられることがあります。しかし本質はそこではなく、そうして比較的手軽に開発できたモデルによるAIと人間が共に「進化」できる可能性があることと捉えられます。 ファインチューニングという概念の一部に、RHLF(Reinforcement Learning from Human Feedback)があります。人間の価値基準に沿うように、人間のフィードバックを使ってAIを強化学習でファインチューニングする手法です。RLHFは、ChatGPTのモデルの訓練に使われている中心的な技術として注目されています。人間の好みや意図といった「人間の価値基準」がAIモデルに反映されるため、AIの出力がより安全・無害で有用になる利点があります。 しかし、AIに闇雲にフィードバックを与えても、AIによる出力が改善するとは限りません。人間が工夫をしてより良いフィードバックを与え、AIがより良い出力を出すようになり、それに対してさらに良いフィードバックを与えて…という具合に正の循環が回って、人間とAIが「共進化」し、仕事でのAI活用の方法を見いだせるだけでなく、イノベーションが起きやすい環境をつくり出せる可能性があります。 参考 @IT「 ファインチューニング(Fine-tuning:微調整)とは? 」 Henok Ademtew “ PEFT: Making Big Things Happen with Small Changes “ Serdar Cellat “ Fine-Tuning Transformer-Based Language Models “ Laboro.AI「 Laboro.AIオリジナル日本語版BERTモデルを公開 」 Meta “ Introducing LLaMA: A foundational, 65-billion-parameter large language model ” Meta AI “ LLaMA: Open and Efficient Foundation Language Models ” Stanford University “ Alpaca: A Strong, Replicable Instruction-Following “ Simon Willison’s Weblog “ Could you train a ChatGPT-beating model for $85,000 and run it in a browser? “ @IT「 RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback:人間のフィードバックからの強化学習)とは? 」 The post 自然言語処理におけるファインチューニング【ビジネス成長のためのAI用語】 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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「生産性」を上げた先にあるもの。AI と人の「医療革命」 2023.11.20 監 修 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 AIの利活用において最も期待されている成果、「生産性」のアップ。労働生産性におけるOECD(経済協力開発機構)のデータによると、日本は残念ながら1970年以降でもっとも低い順位を記録していますが、それも社会の高齢化に伴い、伸びている産業が医療・介護といった生産性の低い分野へと移り変わったことが一つの要因です。 生産性の伸び悩みは、高齢化の進む先進国に共通する課題であり、このままの状態では多くの国で医療サービスを維持すること自体が難しくなると予測されています。そこで、まずは医療において欠かせない書類の作成や記録作業といった「事務」の仕事をAIに任せようと、世界の名だたる企業がAI開発に挑んでいます。 かつて緑の革命や産業革命が労働生産性を躍進させたように、次はAIで医療における生産性の未来を変える、私たちの革命の出番です。 目 次 ・ 「イノベーション」から「生産性」へ  ・ 生産性の低い産業が伸びると、足かせになる  ・ AI で医療サービスの生産性を上げる ・ 国の未来をかけて医療を変える  ・ 書類作業を担う AI 「アンビエント・ドキュメンテーション」  ・ 最大の産業となる医療・介護の市場争い ・ AI で生産性が上がると、仕事が楽しくなる  ・ 情報のスピードに追いつけない  ・ 仕事の良し悪しがわかる人間を育てる ・ 労働力による成長ができなくなる時代へ  ・ 医療業界の長時間労働を無くすために  ・ 働く人に「楽しい」という人間らしい感覚を 「イノベーション」から「生産性」へ 生産性の低い産業が伸びると、足かせになる AIについてのニューストピックで、「イノベーション」と同様に「生産性」というワードが熱く語られるようになっています。一般的に労働生産性とは、「就業1時間あたりの付加価値」を意味します。 では、日本の労働生産性がどのくらいなのかといえば、2021年のOECD(経済協力開発機構)のデータによると、 およそ50ドル。85ドル以上のノルウェーやアメリカ、そして70ドル弱のイギリスと比べても、大きく 下回っています 。結果的に、OECD加盟国での労働生産性において、日本は1970年以降でもっとも低い順位を記録することになりました。 とはいえ、これだけ世界的に「生産性」が注目されているのには、日本以外にも深刻な生産性の課題を抱えている国が増えているという背景があります。 photo by Flickr 生産性を上げることが難しくなる一つの要因として、日本をはじめ多くの先進国では、労働人口が高齢化していることが共通しています。事実、2050年までに世界の60歳以上の人口は倍になると 発表されています 。 日本では60代や70代で亡くなると「まだ若いのに」と言われることも普通になり、着々と寿命を延ばす医療やテクノロジーが進化を遂げてきました。実際、今後も伸びていくことが確実視されている産業が医療・介護の分野で、2040年には日本最大の産業になると 言われています 。 しかしながら、この分野は公共サービスとして意義が強いこともあって、経済的な生産性の高さを求められるものではないため、今の医療・介護の在り方でヘルスケアの労働者が増えれば、このまま日本の労働生産性は伸び悩み続けることになります。すると、国は公共支出を上回る成長を維持できなくなり、私たちがより多くの税金を支払うようになるのも十分あり得る話なのです。 AI で医療サービスの生産性を上げる そういったことはイギリスでも議論されており、ジョン・グレン財務長官は今年10月、AI がこの課題の鍵を握っているとして次のように 述べました 。 「公共サービスの生産性を上げなければ、私たちは支出が増え続ける持続不可能なサイクルに陥ってしまいます」 「 AI を安全に利用することによって、看護師を始め、教師、警官、公務員を時間のかかる事務作業から解放することが、彼らを納税者のために解放することになるのです」 photo by Flickr 国の未来をかけて医療を変える 書類作業を担う AI 「アンビエント・ドキュメンテーション」 世界181カ国/地域を対象に調べられた「各国政府のAIへの備え度指標」を見ると、イギリスはヨーロッパでナンバーワンに位置付けられており、AI分野への民間投資が盛んに行われてることが わかります 。その一方で、公共部門への投資においてはヨーロッパで10位と、大きく遅れをとっている そうです 。 イギリス国民保健サービスのティム・フェリス氏は、医療文書に関する労働者の負担を軽減することがサービス全体の生産性を向上させるために不可欠であり、この先数十年の未来を左右する “最大の賭け” だと考えていると次のように 語ります 。 「(医療における)書類の問題は、実際にこの目で見て確信していますし、医療サービスの生産性において20%、30%、もしくは40%の足かせになっていると言えるでしょう」 photo by Flickr そしてフェリス氏は続けて、今後10 年で大きな変革を実現するのに役立つだろうとされているAI ツール「アンビエント・ドキュメンテーション」のことについて触れました。アンビエント・ドキュメンテーションを診療の場に導入すれば、音声記録された医師と患者の会話は一旦クラウドに送られて、AIによってカルテのように編集・文書化され、医師が症状などを記録する作業が不要と なります 。 日本の大病院などでも「3 時間待ちの3分診療」と言われたりしますが、文書作成の自動化によって患者が受ける診察の質が上がり、それによる医師と患者の信頼関係や治療成果のアップが期待されます。 photo by Flickr 実際、医療のような生活に必要不可欠なサービスにアクセスできずにいる人は、世界で推定10億人に上るとされています。産業革命や緑の革命によって工場や農場の生産性が大きく向上してきたのとは対照的に、診療所における生産性は実のところ、アメリカでは低下している可能性があり、他の国でも同様な状況が見られる そうです 。 医療サービスを受ける前提として、診察されている時間より待っている時間が長いのは当たり前になっており、人々は医療に対して慢性的な不安や苦労を抱えています。そうした現状がある中で、医師が診察記録に費やす時間は患者を診療する時間の2倍近くに上るという 調査結果 も出ており、文書の問題が医療サービスに及ぼしている影響は無視できるはずがありません。 最大の産業になる医療・介護の市場争い これから先進国で最大の産業になっていく医療・介護の未来を見越し、企業の間ではまず、文書の問題を解決するAIサービスに関して業界のリーダーシップをとろうと、市場シェアをかけた競争が始まっています。 例えば今年アマゾンと3Mは、AIで医療文書の作成を自動化するサービスを推進していくために業務提携することを 発表しました 。他にも、マイクロソフトは既存のアンビエントAI に、新たに生成AIを組み込んで臨床文書プロセスにおけるサービスを発展させるとの ことです 。 医療に従事する人も医療を受ける人も、世界中の人が待ち望んでいた医療サービスの形へと、 国や企業がその未来をかけてAIを用いた変革にようやく動き出したのです。 photo by Flickr AIで生産性が上がると、仕事が楽しくなる 情報のスピードに追いつけない 「〇〇ってどこに保存されてる?」という会話が職場で当たり前に聞こえてくる今の時代、パソコンを使って仕事をするデジタル・ワーカーのおよそ2人に1人 が、仕事に必要な情報を探すのに頻繁に苦労しているとした 調査結果 があります。 さらに悪いことに、この調査の回答者の36%が、膨大な量のアプリケーションや情報のせいで重要な知らせを見落としたことがあると回答した そうです 。 「ログインが多すぎる」 「通知が多すぎる」 「仕事で使うツールやプラットフォームが多すぎる」 こういった状況は、ITスタッフの半数近くが経験しているとする 報告 もあります。 仕事の良し悪しがわかる人間を育てる この時点で最新のシナリオでは、今の仕事の半分が、2030年から2060年の間に自動化される可能性があると 予測されて いて、医療における膨大な情報の文書化や記録作業も自動化が進み、ざっと2045年くらいには必要な情報に瞬時にアクセスできるようになっているかもしれません。 昨今の生成AIの技術進化を背景に、すでにプログラマーの間では、AIがコードを書けるようになってきたことで仕事の効率と生産性が上がり、「仕事がより楽しくなった」という感想も聞かれるようになって います 。 ダブルチェックに時間を費やしたり、慣れないプログラミング言語を使ったり新しいプログラミング言語を学んだりするプレッシャーから解放されることになり、ソフトウェア開発者は生成AIを使用した方が、幸福感、充実感、フロー状態を報告する傾向が2倍以上も高かったという リサーチ結果 もあります。 一方で、そこまでプログラミングに精通していない開発者の場合、それなりにAIの書いたコードが良いコードなのか悪いコードなのかを見極めるのが非常に難しいといったことが 指摘されている のも事実です。例えばプログラミング経験が1年未満の開発者は、AIを使用しない場合よりも、AI を使用した場合の方がタスクを完了するのに7〜10%多く時間がかかったケースも みられた そうです。 そう考えると、AI頼りであることが即、生産性の向上に直結するということでは決してなく、人間がスキルや専門性を持ち続けることで、AIの課題に気づき、それを改善し、さらに良い仕事ができるようになり、それによって生産性が上がり、「仕事が楽しい」状態につながっていくということなのかもしれません。 労働力による成長ができなくなる時代へ 医療業界の長時間労働を無くすために 世界の経済成長は2000年台初頭からすでに鈍化が始まっており、このままいけば世界中の先進国において、労働供給による成長への寄与が「2030 年代にはゼロになる」と 予測されて います。 日本の医療も、労働不足を補う長時間労働によって支えられているといっても過言ではなく、勤務医のおよそ40%が週60時間以上働いていると いいます 。こうした流れの中で政府の打ち出した「 医師の働き方改革 」によって、来年4月から、医師の時間外・休日の労働時間は「年間960時間」および「月平均80時間」が上限となるそうですが、具体的な打ち手がなければ医療を受ける立場の人が “医療難民” 状態へと追い込まれ、より苦しむことになるかもしれません。 photo by Flickr 例えばアメリカでは、膨大な書類作業の補助からさらに進んで、人間ではなくAIが診断を行って医療の生産性を向上させる研究が行われており、まだ小規模ではありますが、参加した患者からも専門医からも高い満足度が報告されたりしています。最近のリサーチでは、専門医はAIによってより複雑な症例に集中することができ、患者の約4分の3がAIによる診断のみで診療を完了したと いいます 。 働く人に「楽しい」という人間らしい感覚を 世界に先駆けて高齢化が進む日本では2040年に高齢化のピークが訪れ、国内の生産年齢人口が2022年時点よりも約1,400万人減少すると 推計され ています。医療が必要な人がピークを迎える中で労働人口は大幅に減るため、医療サービスの継続自体が不安視されています。今後15年でそれを補う医療サービスを提供するために雇用しなければならない人の数を考えてみれば、もう人による労働力でなんとかできる事態でないことは明白です。 医療作業の大半をAIで削減することはきっと、医療の未来を変えた革命と呼ばれるでしょう。かつてない「生産性」はもちろん、仕事が「楽しい」という人間らしい感覚を生み出すため、そして人の力を超えた経済成長を実現するため、AIとともに世界は動き出しました。 かつてトラクターが農作業に取って代わったように、医療の分野でも大変な手間のかかる作業をたった 1 台の機械が行えるようになる日が刻々と近づいています。 The post 「生産性」を上げた先にあるもの。AI と人の「医療革命」 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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AI業界でのキャリアを考える。共催キャリアイベントをレポート 2023.11.14 概 要 Laboro.AIでは、2023年10月16日(月)、大手製造メーカーであるオムロン株式会社(以下、オムロン)と、最新のAI技術の研究開発で価値を創出するオムロンサイニックエックス株式会社(以下、OSX)と共催キャリアセミナー「 AI業界でのキャリアを考える ~ 大企業AI研究所とAIスタートアップ それぞれの魅力を徹底議論 」を開催しました。 100名を超える応募があり大盛況に終わったこのイベントのうち、本記事では、リアル&オンラインのハイブリットで開催されたパネルディスカッションの様子の一部をご紹介します。 目 次 ・ パネルディスカッションの概要 ・ パネラー紹介 ・ 生成AI/基盤モデルが世の中をどう変えるか ・ AI業界において、今後求められてくるスキル・人財とは パネルディスカッション概要 AI業界でのキャリア形成を考えている方に向けて開催された本イベント。パネルディスカッションでは、まず「生成AI/基盤モデルが世の中をどう変えるか」をテーマに、昨今話題になっている生成AIが産業に与える影響について、次に「AI業界において、今後求められてくるスキル・人材とはどういったものか」をテーマに、AI業界における様々な職種ごとのキャリア形成のあり方・魅力について、各パネラーによる議論が行われました。 パネラー紹介 オムロンからは執行役員 諏訪様、OSXからはリサーチオーガナイザー 兼 プリンシパルインベスティゲーター 牛久様、Laboro.AIからは代表取締役CEO 椎橋が登壇し、大企業のAI研究所とスタートアップのそれぞれの立場から議論が繰り広げられました。 オムロン株式会社 諏訪正樹 様 オムロンサイニックエックス株式会社 牛久祥孝 様 株式会社Laboro.AI 椎橋徹夫 テーマ1:生成AI/基盤モデルが世の中をどう変えるか それぞれの自己紹介の後、まず「生成AI/基盤モデルが世の中をどう変えるか」をテーマに、昨今世間で注目を集めている生成AIの影響について議論することからパネルディスカッションがスタートしました。 その技術的な側面について、牛久様から、生成AI技術に革新をもたらしたGPT(Generative Pretrained Transformer)の進化、LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)の実用化の流れについて紹介された上、「生成AIは技術的には昔からあるものと変わらないが、大規模に学習したことがポイント。膨大なデータに耐えられる計算資源や環境の進化もポイントになっている」ことなどが触れられました。 また、椎橋からは、ビジネスの視点から「(生成AIは)それまで特定の問題に対する処理に留まっていたが、大規模化することで1つのモデルであらゆる問題に対する処理が可能になった」ことをポイントとして、「生成AIは人間以外の『新しい労働力』として捉えることができる。今後、テクノロジーを含めた組織やオペレーションを考えることが重要になってくる」ことを指摘。実際にAIを活用することでコンサルタントのような知的ワーカーの生産性が向上した研究結果があることも紹介した上で、人とAIが連携して新しい価値を産むことの重要性を訴えました。 さらに諏訪様からは、“AIが人間の仕事を奪う”といった話題が時折起こることに触れられ、AIと人間を対立関係として取り上げるのはミスリードであるとし、「AIを使いこなす人」と「AIを全く使わない人」で比較されていくこと、そしてAIが影響を及ぼすのはあくまでもAIを使う人間側にあることが語られました。さらに、「AIという道具をどう使うか」は研究者に限らず重要な視点であり、「仕事を奪われる」ということではなく、使い方次第で「できる仕事の可能性が広がる」という話であって、ポジティブに捉えることの重要性が語られました。 そして話題は生成AIの話題と共に賑わいをみせる国内での和製LLM開発へと移り、あくまでもLLMはベースとなるものであり、LLM開発自体で企業間が競争するのではなく、ビジネス応用や社会実装の領域での競争を目指すことが健全であることなどにも及んでいきました。 では、日本企業はLLM開発領域で、どう競争力をあげることができるのかーー。牛久様は、技術的な視点として、LLMが大量のデータがなくても、大規模なモデルと同じくらいの精度が出せるという報告や、むしろノイズのクレンジングをした方が良いという報告が出てきていることを紹介され、いかに効率的に学習させるかは研究途上にあるとの見解を示しました。その上で、効果的な学習のために高品質なデータをどこから獲得するのか、確信的な研究開発を行う専門家や研究者が持つ暗黙知のようなものをどうインプットできるかが鍵になること、そしてそういった専門的な知識や暗黙知をLLMに教えられるインターフェースをどう作っていくかにかかっているのではないかとの考えを語られました。 テーマ2:AI業界において、今後求められてくるスキル・人材とはどういったものか 続いてのテーマは、AI業界でのキャリアについてで、まずはAI業界で活躍する3名からそれぞれのキャリアの歩みが語られました。 諏訪様は、大学院で博士号を取得した後にオムロンに就職されていますが、「元々アカデミアに進む気はなく、企業に就職するつもりで博士号を取った」とのことで、博士課程で築かれるスペシャリストとしてのキャリアを持つ人材が、企業にとって価値があるはずと当初から考えていたそうです。 牛久様は、Microsoftリサーチのインターンからはじまり、研究を含めてさまざまな手伝いをしているうちに複数の草鞋を履く現在のキャリアを築かれてきました。そのキャリアの歩みについて、「国際的に見た時にビジヴィリティがある場を日本で作れるかを考えながら、色々なキャリアを歩んできた」と話されました。 椎橋は、大学卒業後BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)に参画し、ビッグデータを活用したプロジェクトに複数携わった後、デジタル技術と経営戦略とをつなぐ経験を重ねるうちにより技術側の前線に行きたいという気持ちが強くなり、東京大学 松尾豊研究所へ。そこで産学連携の仕組み作りやスタートアップの立ち上げになどを経て、「アカデミアの深いところと、ビジネスをつないでいくことを推し進めたい」と考え、その後 Laboro.AIを起業しました。 AI業界でキャリアを考える方々へのアドバイス パネルディスカッションの最後には、AI業界でのキャリアを考える方々へのアドバイスがそれぞれの視点から送られました。 諏訪様は、研究者の視点から「専攻分野の研究を深く掘ることも大事だが、その分野でなくても新しい技術やツールをキャッチアップできるスキルを身につけることが大事。その上で構想力、仮説を立てる力、リスクマネジメントといったものが企業の研究者に求められる」と話します。 そして牛久様からは、「自分のようにはなるな」との前置きから、「博士課程に進む意味をしっかり考え、新たなものを切り開くことが価値になる。研究テーマでも、起業でもいいので尖って欲しい。他の人の後追いにならない尖り方を見つけて欲しい。」と続けました。 最後に椎橋からは、AI業界で活躍するためには理系を専攻するだけとは限らないとし、「ビジネス・産業界においてのAIは『用途開発競争』であり、新しい技術を何に使うかを開発していくもの。技術だけ深く分かっているだけではなく、世の中を分かっていないといけない。文系を学んでいる人はその可能性がある人。」と広くエールを送りました。 終了時間ギリギリまで質問が止まず、大盛況に終わった今回の共催キャリアイベント。当日の様子は、動画でも配信中です。 本イベントのレポートはオムロン様のWebサイトでも公開しております。 オムロン様のイベントレポートは こちら からご覧いただけます。 イベント当日の動画は こちら からご覧いただけます。 参 考 ・Laboro.AIの採用情報は こちら から The post AI業界でのキャリアを考える。共催キャリアイベントをレポート first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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人と能力を競わないAI 「能力主義はもう古い」 2023.7.19 監 修 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 人々が理不尽な差別に苦しむことなく才能や努力に応じて報われる社会。実力があれば上に行ける「能力主義」には、もちろん良い側面もあるに違いありませんが、より高い能力を得るために過酷なレースが繰り広げられるようになっていることも実際です。 能力主義が手に負えなくなり始めた今、そのレースから外れがちな人々に、新たな視線が集まっています。例えば、世界では13億人が何らかの障害を抱えて生活しており、その数は世界人口の17%に相当し、世界最大のマイノリティ・グループとしても位置付けられます。ですが、彼らは「能力主義はもう古い」と言わんばかりにインターネットを通じてテクノロジー企業とつながり、社会とつながるためのAI開発にも参加しています。 こうした新しいプレイヤーの登場によって、これまで難しかった障害に関するデータ収集が可能になり、障害を持つ人々に喜びを提供するようなサービスも登場し始めています。 今回は、能力主義の次に訪れるこれからを見据えながら、人と社会をつなぐ、人と能力を競わないAIの存在意義について考えていきます。 目 次 ・ 能力主義が、人の手に負えなくなる  ・ なぜ「性能」を上げることに全集中してしまうのか  ・ 能力主義が差別制度のようになる ・ 能力を最大化することの罠  ・ AI が作業効率を最大化にしたら、人がいなくなった ・ データの端っこを中心に持ってくる  ・ 何をもって平均とするのか  ・ 「クール」と言われるのは異なる存在の人 ・ AI で障害者はより自然に生きやすくなる  ・ 全世界4億の障害者ゲームプレイヤー  ・ 目の前の日常に現れる字幕 ・ すべての人間に平等におとずれること  ・ 能力に関わらず生きられる社会へ 能力主義が、人の手に負えなくなる なぜ「性能」を上げることに全集中してしまうのか 人間にとっての一番の成長期は生まれてからの一年だと言いますが、ChatGPTも2022年11月に登場してから半年も経たないうちにGPT-4へとスケールアップし、アメリカの司法試験で下位10%だった能力が上位10%に食い込むまでになりました。 こういったAIの爆発的な成長の背景には、AIの学習や推論で使われるコンピュータマシンの性能が高くなっているということが大きく関係しています。AIモデルのパラメーター数が一定を超えると飛躍的に性能が向上する「スケーリング則」も言われるようになりましたが、特に近年は、AIモデルの大規模化が目指されるとともに、こうした複雑な計算処理にも耐えられるような、より高性能なAI開発にリソースの多くが向けられています。 photo by Flickr では、なぜ「性能」を上げることに多くのリソースが注がれるのでしょう。このようなことはAIの分野に限らずあらゆるところで起こっています。例えば、私たちの従来の社会の考え方では、才能や知性、努力に応じて人は報われるべきであり、能力を磨くために塾に通ったり勉強や練習をしたりと、能力向上にお金や時間が投入されてきました。 とはいえ実際、能力の高さに応じて報酬がもらえてお金持ちになれているのかというと、そこには理想とは異なる現実があることが見えてきます。というのも、世界ではわずか8人が世界の最貧困層38億人の富に相当する総資産を持つまでに貧富の差が広がっていることに対して、人間そのものの能力自体にはそこまでの差はありません。 どんな働き者でも人の何億倍も働く人はいませんし、人の10倍、100倍のIQを持つ人もいないのです。 人間の能力にはそこまで大きな差がないはずなのに、与えられる報酬にはあまりにも桁違いな差が存在して いるのです 。 photo by Flickr 能力主義が差別制度のようになる こうした行き過ぎた能力主義が「そのうち、人の手に負えなくなる」という懸念を示す声もあります。 太陽光で動くAI搭載ロボットが主人公の小説『 クララとお日さま 』を発表したノーベル賞作家のカズオ・イシグロ氏は、NIKKEI Asiaのインタビューの中で、遺伝子操作などのテクノロジーの発展を踏まえ次のように述べていました。 「私は、能力主義はいいことだと思っていました。階級的な特権や人種ではなく、実力によるヒエラルキーを作るのは良いことだと。けれど、ある人を他の人より優れた存在にするテクノロジーがある世界では、能力主義はむしろアパルトヘイトのようなものになり かねません 。」 『クララとお日さま』に登場する AI 搭載ロボット クララは、能力主義が過酷さを増した社会で、子どもたちの寂しさを取り除くAF(Artificial Friend)として存在しています。 photo by Flickr 能力を最大化することの罠 AI が作業効率を最大化にしたら、人がいなくなった AIの高性能化を目的とした開発レースが繰り広げられる中、このまま更なる能力だけを求めて AI の開発を進めれば、生産能力の最大化のみを追求するようなAI搭載マシンによって世界が滅びてしまうといった危機も囁かれています。 オックスフォード大学の哲学者であるニック・ボストロム氏は20年ほど前、「AIが桁違いに賢くても、人間が制御できるのか」という説を思考実験による検証を経て発表しました。そこで題材となったAIの目的は、ペーパークリップを作ることでした。 ペーパークリップをできるだけたくさん作るため、AIはあらゆる手段で資源を調達し、やがて世界はペーパークリップで溢れかえることになります。そしてAIは、人間がスイッチをOFFにする可能性があると思い、人間が存在しない方がいいと気づきます。結果、AIは「クリップはたくさんあるけれど人間はいない」という結末を迎えることに なります。 photo by Flickr ボストロム氏はこのシナリオが実際に起こることはないと強調しながらも、コストや作業効率を最適化するという一見人間にはプラス効果しかないような目的であっても、人に悪影響を与える可能性があることを示唆しています。 もちろんこれは少し大袈裟な例だとしても、これからの人間に対するAIの価値に目を向け、その設計プロセスの中で、全ての人への影響を考慮した測定基準や方法などがますます重要になってくることは間違いなさそうです。 データの端っこを中心に持ってくる 何をもって平均とするのか 一般的に大規模なデータセットは、いわゆるベルカーブという概念に依存しています。データの分布を表すベルカーブは、全体のうち平均を中心とする約68%の範囲内に約95%のデータが入るというものです。一般的に見ればAIは平均的なニーズに応えようとする傾向があるため、平均から離れれば離れるほど AIがそのニーズを満たす可能性は低くなります。 データセットが人間に関するものであった場合、それによって特に深刻な影響を受ける可能性があるのは、データ上の95%に入らなかったマイノリティ・グループに所属する人々です。 photo by Flickr けれど裏を返せば、平均から外れた5%の人を中心に持ってきた適切なデータセットがあれば、AI はそれらの人のニーズを満たしてくれるものにもなります。 こうしたデータの外れ値に対しての学習を最適化させるテクニックを試している人も おり 、中でも障害者を支援するテクノロジーの分野では、AI を障害者の未来の選択肢を広げることを目指して、当事者データを中心に開発する新たなムーブメントが生まれつつあります。 「クール」と言われるのは異なる存在の人 民族や人種など世界にはさまざまなマイノリティ・グループが存在しますが、障害を抱えている人は世界で13億人に及び、世界人口の17%を占める世界最大のマイノリティ・グループを構成して います。 多民族国家アメリカでも、全ての成人のうち25%が精神障害を抱えるグループに属します。 しかし、障害には慢性的なものもあれば一時的なものもあることから、人生のどのタイミングでも出たり入ったりする可能性がある複雑さを含み、また、障害の状態や内容から個人が特定されやすいこともあって、そうしたグループのデータを集めることは難しい背景が ありました。   photo by Flickr ところがここ数年、多様性の価値が大きくなった社会背景から、若者の中で雑誌の表紙やランウェイに登場した障害者モデルが話題になったり、障害のある俳優が当事者役で出演するドラマや映画も見られるようになり、新たな流れが生まれつつあります。 出生時に脳性麻痺と診断され、ブログで発信を続けていた10代のアーロン・ローズ・フィリップ氏は、2019年以降、数々の雑誌のカバーを飾り、2021年にはMOSCHINO(モスキーノ)のコレクションでランウェイデビューを 果たしました。 また2022年、ろう者がろう者として主演した映画『 コーダ あいのうた 』はアカデミー作品賞を受賞し、ストーリーにおける “当事者” の存在意義を社会に知らしめました。 こうした新しい世代の人々は、#DisabledAndCute、#WheelsNoHeels、#DisabledFashion といったハッシュタグを用いて自分をありのままに発信するよう になり 、障害を持つ多くの人がSNSツールを気軽に利用するようになったことで、集めづらかった障害に関する情報が共有されるようになったことは注目すべき変化の 1 つです。 AI で障害者はより自然に生きやすくなる 全世界4億の障害者ゲームプレイヤー テクノロジーの進歩は全ての人にメリットをもたらすものですが、障害を持つ人にとっては、それが人生を左右するような恩恵になることがあります。例えば、世界では4億人の障害者ゲームプレイヤーがテクノロジーによって驚くほど豊かなゲーム体験を 得ています。 photo by Flickr ゲーム制作において、判別しやすい色や読みやすい文字の表現、音が聞こえなくてもプレイできるようなエフェクトなど、UIやアクセシビリティの向上は、ますます大きなテーマとして扱われるように なっています。 そして今年5月、Googleは筋ジストロフィー(筋肉が衰える進行性の病気)のゲーム配信者 ランス・カー氏とともに、AIを用いた手を使わないゲームマウスのプロジェクト「 Project Gameface 」をスタートしたと発表しました。 これは複数のAIモデルを連携させて、ウェブカメラで撮影した顔468箇所のポイントを読み取って表情を認識し、ウェブカメラをマウスのように使ってゲームを操作できるようにするものです。 photo by Flickr 眉を上げるとマウスがクリックされたり、口を開けるとカーソルが動いたりするという仕組みで、従来の「ヘッドトラッキング・マウス」のように頭を大きく動かしたり、まばたきをトラッキングしたりしなくてもゲームプレイにも支障のない、より小さな動きで操作が可能になることが目指されています。 「ゲームが世界との唯一のつながりなんだ」と話すカー氏は、このテクノロジーによって「生まれて初めて、物理的な意味でできることが増えた」と語って います。 目の前の日常に現われる字幕 耳の聞こえない人が相手の口元を見なくても、複数の人の話を一度に「読む」ことができる字幕付きメガネも、AIの進化によって登場しています。AI技術とAR 技術が組み合わさったスマートメガネで、これをかけると目の前にリアルタイムで会話の字幕が表示されるというものです。 こうしたメガネを開発するXRAIの共同設立者であるダン・スカーフ氏は、97歳の祖父を観察していて字幕付きメガネの着想を得たのだそうです。 photo by Flickr スカーフ氏の祖父が最も生き生きしていたのは、テレビを字幕付きで見ているときで、それほどテレビの字幕を楽しんでいるのなら「人生にも字幕をつけたらいいのではないだろうか?」と考えたのだと いいます。 耳が聞こえない人にとって、同時に複数の人の会話についていくことはとても難しいことですし、何か別のことをしながら話を聞くということもこれまでは不可能でした。それが、どこを見ていても周りで話されている全てのことが目の前に字幕で出てくるメガネによって、耳の聞こえない人にはどうしても無理だったことが自然にできるようになったのです。 すべての人間に平等におとずれること 能力を失うことを恐れずにいられる社会へ AIの良いところは、人間を凌駕する高い性能ではなく、適切なデータセットがあれば、どんな人の役にも立てることなのかもしれません。 今年に入って AI界隈でじわじわと広まってきたワードに「AI アラインメント」という言葉があります。AIアラインメントとは、AIが人間の望まないようなモノにならないように、AIを人間の目的に沿って制御するというようなことを意味します。つまり、現在の AI の性能を高める動きに対してはどちらかというと、それを一旦省みるためのブレーキのような位置付けになります。 photo by Flickr AIアライメントについて、2021年の時点での「 State of AI 」という調査報告によれば、Artificial General Intelligence(AGI:汎用人工知能)の中核的な研究所でAIアラインメントの分野に従事している研究者は 100人もいなかったそうです。 当時はあまりに少数派で、AIを開発している企業の人員配分としても、 DeepMindでAIアライメントに割り当てられている人員は全体の約2%、OpenAIの場合は約7%に過ぎませんでした。 しかし、テクノロジーで世界をリードしてきた企業の動向をみてみると、これまでのような性能を高めるためのレースだけではなく、AIをすべての人間が望むものに近づけるレースにも、今後は多くの報酬が支払われることになっていきそうです。 photo by Flickr 能力や才能、努力が報われるべきだという能力主義の時代は、少しずつ終わりを迎え始めているのかもしれません。 障害のある子どもたちは、「あの子どうしたの?」という世間の目に対して「私はこうなの」と言うことができるようになりつつあります。そして、社会やデータの端にとどまるよりも、テクノロジーを活用し自分はここに居て当たり前なのだと伝えながら、世界の中心で生きていくこともできるようになるはずです。 テクノロジーが進化し変わり続ける一方で、私たち人間は人生のどこかで必ず、自分自身や身近な人の「変えられないものを受け入れる」ことを求められます。従来のやり方のままでいるには難しさが出てくることもあるはずですが、そんな時、テクノロジーに補ってもらいつつやり方を変えることで、人生に新たな豊かさを取り入れることもできるように思います。 AI は新しい世代の与えてくれるデータに学び、すべての人の手となり足となれる存在へと、その汎用性が追求されていくべきなのかもしれません。それぞれの能力に関わらず、すべての人々がイキイキと生きられる社会を目指して。 The post 人と能力を競わないAI 「能力主義はもう古い」 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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潜在意識も刺激する、AIを用いたレコメンデーション 2023.6.2 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 概 要 顧客に商品やサービス、コンテンツをおすすめする「レコメンデーション」。実店舗やウェブサイトを問わず、その形態はさまざまです。レコメンデーションエンジンが使われ、AIも多く活用されてきました。最近ではChatGPTを使ったレコメンデーションの在り方も注目され始めています。その基礎的技術や活用例を解説します。 目 次 ・ レコメンデーション、レコメンドとは  ・ パーソナライズ、カスタマイズとの違い ・ レコメンデーションの中心技術:協調フィルタリング  ・ ユーザーベースの協調フィルタリング  ・ アイテムベースの協調フィルタリング  ・ コンテンツベースフィルタリング  ・ レコメンデーションの評価   ・ オフライン評価   ・ オンライン評価 ・ ChatGPTによるレコメンデーション ・ レコメンデーションのメリット  ・ ユーザーの満足度が向上する  ・ クロスセルによる購買金額の上昇  ・ 言語に依存しなくてもできる ・ レコメンデーションの弱点:コールドスタート問題 ・ レコメンデーションの活用  ・ Google  ・ Amazon  ・ YouTube  ・ TikTok  ・ スーパーマーケットのレジカート広告  ・ AI旅行提案サービス  ・ 献立のレコメンド  ・ 潜在ニーズ探索によるレコメンド ・ 売上増を実現するには「伴走」が必要 レコメンデーション、レコメンドとは レコメンデーション、あるいはレコメンドとは「recommend(おすすめする)」という言葉の通り、商品やサービスを顧客におすすめすることを指します。例えばECサイトで「あなたにおすすめ」といった具合に商品画像がいくつか表示されるのが当たります。 レコメンデーションを行うことで、顧客に購買を促すことができます。一方、過度なレコメンデーションは迷惑がられ、かえって機会を損失してしまう場合もあります。 パーソナライズ、カスタマイズとの違い レコメンデーション・レコメンドに似た言葉に、パーソナライズやカスタマイズがあります。これらとの違いをきちんと認識し、レコメンドをよりはっきりさせましょう。 パーソナライズは、顧客一人ひとりの属性や興味関心、購買履歴に応じて最適な情報やサービスを提供する手法や仕組みを意味します。不特定多数の顧客に向けて広告を打ったり、同じ内容のダイレクトメッセージを発送したりするのではなく、顧客一人ひとりに合わせて提供する情報を変化させます。それにより、情報をより深く届け、より多くの顧客獲得を狙う在り方です。 パーソナライズとレコメンドとの違いは、前者が一人ひとりの行動データを基に情報提供するのに対し、後者は複数のユーザーの購買履歴などを基に同時購入率の高い商品などをおすすめとして表示する手法です。 一方、カスタマイズは、情報を受け取る側が自分の好みに合わせて欲しい情報を使いやすいように設定する在り方を指します。レコメンドやパーソナライズが誰にどんな情報を送るかは情報提供側調整してするのと逆です。例えば、あるECサイトが複数のメールマガジンを発行している場合、受け取る側がどれを購読するかを選択できることがカスタマイズに当たります。 レコメンデーションの中心技術:協調フィルタリング ECサイトなどでのレコメンデーションは、レコメンデーションエンジンという仕組みによって選定され、表示されています。このレコメンデーションエンジンの手法の代表が、「協調フィルタリング」です。 例えばAmazonでは、他のユーザーの購入パターンを使って商品をおすすめしていると見られています。このように、他ユーザーの行動パターンやアイテムの類似性を対象のユーザーと比較するレコメンドシステムが協調フィルタリングです。「似ているユーザー」を購入履歴やレーティングから導き、「ユーザー同士」あるいは「ユーザーとアイテム」を結び付けることで実装されます。 それらを踏まえて、協調フィルタリングは「ユーザーベース」と「アイテムベース」に大別できます。 ユーザーベースの協調フィルタリング 対象ユーザーの行動分析を基に他のユーザーに対する類似度を算出し、類似度が高いユーザーが分かると、その類似ユーザーが購入した商品を対象ユーザーにレコメンドする仕組みです。ユーザーの類似度を求める際は、ピアソンの相関係数がよく使われています。 ピアソンの相関係数とは、二つの確率変数の間の類似度を指す統計的指標のことで、-1から1の間の実数値を取り、1に近いときは二つの確率変数の間に正の相関、-1に近いときには負の相関があり、0に近いときには相関がないとします。 アイテムベースの協調フィルタリング 訪問ユーザーの行動分析を基に商品(アイテム)同士の類似度を算出する手法です。商品Aを購入したユーザーが商品Bも購入しやすいと分かると、商品Aを購入したユーザーに対して商品Bをレコメンドします。アイテムの類似度を求める際は、コサイン類似度がよく使われています。 コサイン類似度とは、二つのベクトルが「どのくらい似ているか」という類似性を表す尺度で、二つのベクトルがなす角のコサイン値のことです。この計算によって値が-1~1の範囲に正規化され、以下のように整理されます。 ・コサイン類似度が1ならば、なす角が0度で、同じ向きのベクトル、つまり「完全に似ている」 ・コサイン類似度が0ならば、なす角が90度で、独立/直交した向きのベクトル、つまり「似てもないし、似ていなくもない、どちらにも無関係」 ・コサイン類似度が-1なら、なす角が180度で、反対向きのベクトル、つまり「完全に似ていない」 コンテンツベースフィルタリング さらに、協調フィルタリングとは別に、あるユーザーの購入履歴やプロフィールなどから、そのユーザーの個人的な嗜好を見つけて商品やコンテンツを薦める手法として「コンテンツベースフィルタリング」があります。協調フィルタリングとは違い、他ユーザーのデータは使用しません。例としては、「筋トレが好き」とプロフィールに記載しているユーザーに筋トレ関連のグッズを勧めることなどが挙げられます。 レコメンデーションの評価 レコメンドの評価は「対象者にとって本当に欲しいもの」であるかどうかの観点から行われます。評価のための指標は多く存在し、それぞれ異なる軸での長所・短所があるため、レコメンドの目的に応じて決定する必要がありますが、大きく分けて「オフライン評価」と「オンライン評価」の二つがあります。 オフライン評価 利用者の行動履歴のみを使ってレコメンドを評価する方法です。以下の流れで実施します。 ①行動履歴を学習データとテストデータに分ける。 ②学習データについてレコメンドを行う。 ③レコメンド内容とテストデータを比較して精度を算出する。 利用者と実際に関わる必要がなく低コストで実施できますが、レコメンドが購買に与えた影響について正確な評価ができません。レコメンドがなくとも購買した可能性を評価できないからです。 オンライン評価 一方、オンライン評価とは、実際のサービスに導入し、利用者の反応を見ることでレコメンドの評価を行う方法です。オフライン評価と違ってレコメンドが購買に与えた影響を評価することができます。 オンライン評価の例として、以下の手順を取る「A/Bテストアルゴリズム」があります。 ①対象の利用者を二つのグループに分ける。 ②それぞれのグループに「既存のレコメンドシステム」と「新しいレコメンドシステム」を採用する。 ③結果を比較してレコメンドを評価する。 ChatGPTによるレコメンデーション これまでレコメンデーションはAI技術の一つとして述べてきました。ここでいったん元の意味である広く「推薦すること」に戻ってみると、ChatGPT上での質問に対する回答もレコメンデーションになり得ることが分かるでしょう。 カカクコムグループが運営するグルメレビューサイト「食べログ」は、2023年5月6日に日本で初めてChatGPTプラグインを開発・提供し、ChatGPT上の飲食店探しのための質問に対し、候補店の情報を提供するというレコメンデーションを実現しました。 レコメンデーションのメリット 効果的なレコメンデーションを行うことで、以下のようなメリットがあると考えられます。 ユーザーの満足度が向上する レコメンデーションを行うことで、ユーザーの潜在的な興味を引き出し、自覚していなかった需要を喚起できる可能性があります。「自分では気付かなかったが、言われてみれば確かに大事だ」といった満足感を得てもらうことが期待できます。 クロスセルによる購買金額の上昇 例えばECサイトで商品をカートに入れたときや、決済の直前・直後、商品到着時など、適切なタイミングでのレコメーデーションが新たな購買につながれば、顧客1人当たりの購買金額、ひいては全体の売り上げの増加が期待できます。 言語に依存しなくてもできる レコメンデーションの方法によっては、言語に依存せずにレコメンデーションを実現できることがあります。例えば、動画サイト上のショート動画やSNS上での画像、アパレル、音楽など、提供者の母語を必ずしも理解しなくても利用できる商品・サービスでは、幅広く導入されています。 レコメンデーションの弱点:コールドスタート問題 ここまでいいことづくめに見えてきたかもしれませんが、レコメンデーションにも弱点があります。代表的なのは「コールドスタート問題」です。協調フィルタリングにおいてユーザーベースにせよ、アイテムベースにせよ、ユーザーや購買履歴を基に類似度を計算しています。逆に言えば、それらのデータがあまりない状態、例えば立ち上がったばかりのECサイトでは、レコメンデーションを実施するのに十分なデータを持っていない状態が起こり得ます。これをコールドスタート問題と言います。 レコメンデーションの活用例 レコメンデーション、特にWebサイトにおけるレコメンドエンジンが実際にどのように活用されているかを以下にご紹介します。 Google Googleは、クラウドサービス「GCP」の中で「Recommendations AI」というレコメンドエンジンを提供しています。ユーザーの閲覧や購買行動をデータとしてクラウドに蓄積し、趣味嗜好を分析した上でよりニーズに沿った商品をレコメンドできるように成長していきます。バイアスや季節的な変動の補正もできるとしています。 Amazon Amazonのショッピングサイトでは機械学習を用いたレコメンド機能が搭載されており、「…を買った人は、こんな商品も買っています」というテキストとともに他の商品が表示されるのを見たことがある人は多いでしょう。Amazonのクラウドサービス「AWS」では、Amazonで使われているレコメンドエンジンと同等のサービスを自ら設計できる「Amazon Personalize」というサービスを提供しています。学習に必要なデータは自前で用意する必要がありますが、専門的な知識がなくてもカスタマイズが可能としています。 YouTube ユーザーの表示画面に自動的に出てくるおすすめや関連動画を順位付けするYouTubeのアルゴリズムは、更新を繰り返してきました。特に2015年からはディープラーニングを採用し、動画の尺、エンゲージメント(視聴者の反応数÷再生回数×100)、総再生時間、チャンネル登録者数の成長率、視聴回数、キーワード、平均視聴時間、クリック率を重視していると発表しています。 TikTok ショート動画投稿サービスのTikTokは短期間で爆発的な人気を獲得したアプリであり、日本でも影響力のあるユーザー数を持つに至りました。その躍進を支えている要因の一つに、先進的なレコメンデーションシステムがあります。 投稿されている動画やユーザーの好みを分析して動画を推薦する点では多くのレコメンドエンジンと同じです。しかし他に先んじて導入したのが、まずアプリを開くといきなり誰かの投稿動画がいきなり再生され始めることです。画面に検索ボックスはなく、ランダムに動画が流れ、ユーザーは次から次へと動画を見ていくことになります。気になった動画に「いいね」をしたり、保存したりするうちに、AIがユーザーの行動を分析し、動画の好みを学習し続けています。 すべての投稿動画は一定数のユーザーのおすすめフィードに表示するようにしています。さらに、そうした動画の再生時間が長かったり、いいねが多くついたりすると、より多くのユーザーのおすすめフィードに表示するようにしています。これにより、登録したばかりやフォロワーが少なかったりするユーザーの投稿動画でもバズる可能性を生み出しています。これにより、レコメンデーションのコールドスタート問題を解消しているだけでなく、新規ユーザーが参加・継続しやすい状況もつくっています。 スーパーマーケットのレジカート広告 九州を中心にスーパーマーケットをチェーン展開するトライアルホールディングスは、店内で利用するレジカートに付属しているタブレット端末に広告を配信する実験に取り組みました。同社はこれまで蓄積した270億件の購買データを活用して独自開発したレコメンデーションシステムを基に、レジカートを使うお客ごとに最適なクーポンを配信しました。例えば、「お客が棚から牛乳を取り、カートに取り付けられたタブレット端末で商品バーコードをスキャンすると、他の飲み物のクーポンが表示されたため、お客は対象商品に思わず手を伸ばした」という効果を狙っています。 AI旅行提案サービス ユーザーの希望や条件を基にAIが適した旅行情報を提案するサービスにAVA Travelがあります。2019年に上市したβ版では、海外約100都市からユーザーに合わせた旅行先を提案しました。現在は国内外合わせ約400の旅行先から好みに合わせて提案しています。2021年に開始した正式版では、現地での具体的な観光スポット、ホテル、体験、レストランまで、ユーザーごとにおすすめ順で提案することを可能としています。 献立のレコメンド Laboro.AIが開発を支援した事例として、味の素様が提供している献立提案アプリ「勝ち飯®AI」があります。 「勝ち飯®AI」では、アスリートに必要な栄養素を得られる献立を機械学習でレコメンドします。これにより、食事によるパフォーマンス向上を目指す「部活生」の親の「どのような献立を作ればサポートできるのか分からない」という悩みの解決を目指しています。 この事例についてさらに詳しくは、以下のページをご覧ください。 アスリート向け献立提案「勝ち飯®AI」 | 株式会社Laboro.AI 潜在ニーズ探索によるレコメンド Laboro.AIが開発を支援したもう一つの事例として、ドライブの行き先を提案するカスタムAIがあります。ユーザーとの対話を通して好みの行き先を分析し、AIがレコメンドします。従来であれば行き先を決めるために時間を使って調べ物をしていたユーザーが、レコメンドによって簡単に行き先を決定できたり、思いもしなかった新たな行き先を楽しめたり…といった効果が期待されます。 この事例についてさらに詳しくは、以下のページをご覧ください。 潜在ニーズ探索によるAIレコメンド|AIプロジェクト事例 | 株式会社Laboro.AI 売上増を実現するには「伴走」が必要 レコメンデーションはもはや当たり前に導入されている機能であり、商流の邪魔にならなければ導入を積極的に検討すべきでしょう。顧客1人当たりの購買額や全体の売り上げを伸ばせる可能性があるのは前述の通りです。しかし、どの特徴に着目し、どのようなレコメンデーションをすれば売上増に結び付くかを検討するのは容易ではありません。売り手側から見て興味深いレコメンデーションを実現できたとしてもそれが購買につながらない可能性もあります。 その点において、当社の「カスタムAI」の開発では、どの売上を強化すべきかのビジネスコンサルティングからはじめ、AI導入のロードマップの策定、商品・サービス特性に合わせた最適なレコメンデーションシステムの設計、その導入によるビジネス運用フローの検討、サービスインした後のフォローまで伴走することができるため、より売上増に貢献するためのレコメンデーショの導入を支援させていただくことが可能です。そして、そこで実際にお客様に伴走するのが、ビジネスコンサルティングとAIコンサルティング両面のノウハウに長けた当社独自のAIコンサルタント「ソリューションデザイナ」です。より効果的なレコメンデーションシステムの導入に向けては、ビジネス・AI双方での支援を強みとする当社にぜひご相談ください。 出典 ECのミカタ「 パーソナライズとは?必要とされる理由や取り入れるメリット、活用する上での注意点」 BigData tools「 【ECで活用】機械学習におけるレコメンデーションの基礎を解説! 」 実験医学online「 Pearsonの相関係数 」 @IT「 コサイン類似度(Cosine Similarity)とは? 」 Qiita「 レコメンデーション入門3 レコメンドの評価 」 Tablelog Tech Blog「 日本初の挑戦〜食べログによるChatGPTプラグイン開発の舞台裏 」 Google Cloud「 Recommendations AI 」 AWS「 【AWS グラレコ解説】「あなたへのおすすめ」はどう生成するの ? Amazon Personalize で簡単に実現する方法をグラレコで解説 」 マーケドリブン「 【2022年版】YouTubeアルゴリズム仕組み変わった? 」 日経クロストレンド「 マーケターはTikTokの革新学べ AIでサジェスチョン革命 」 日経エンタテイメント!編『TikTokショート動画革命』 日本経済新聞「 カゴメとトライアル、データに基づく広告配信実験で成果 」 PR TIMES「 AI旅行提案サービス『AVA Travel』が正式リリース 」 The post 潜在意識も刺激する、AIを用いたレコメンデーション first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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製造業に求められる「しなやかさ」。AI活用のスマートファクトリーで実現へ 2023.5.17 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 概 要 製造業において「スマートファクトリー」化を進めることは、国家レベルの方針でも示されていることもあり、今後変わらないであろう流れであり、推進している企業は少なくありません。生産性を高めるだけでなく、人材不足の解消や、余裕が出たリソースを使ってイノベーションや新しい付加価値を得ることも狙えます。スマートファクトリーの現状や求められる背景や事例だけでなく、提唱されている未来像も含めて解説します。 目 次 ・ スマートファクトリーとは  ・ 今さら聞けない「スマート」とは ・ スマートファクトリーが求められる背景  ・ 産業革命そのもの、社会の在り方とも密接  ・ 産業革命に則った未来形  ・ スマートファクトリーにおけるAIの位置付け ・ スマートファクトリーのメリット  ・ データの見える化  ・ 生産性向上  ・ コスト削減  ・ 品質の向上 ・ スマートファクトリーの課題  ・ データ活用の難しさ  ・ セキュリティ強化 ・ スマートファクトリーの事例  ・ 化学プラントの変調を捉える  ・ ガス供給システム上で在庫管理、発注タイミング提案も  ・ ビール製造で品質安定、原材料利用11%減 ・ スマートファクトリー化に求められる「しなやかさ」 製造業において「スマートファクトリー」化を進めることは、国家レベルの方針でも示されていることもあり、今後変わらないであろう流れであり、推進している企業は少なくありません。生産性を高めるだけでなく、人材不足の解消や、余裕が出たリソースを使ってイノベーションや新しい付加価値を得ることも狙えます。スマートファクトリーの現状や求められる背景や事例だけでなく、提唱されている未来像も含めて解説します。 スマートファクトリーとは スマートファクトリーとは、AIやあらゆるモノがネットにつながるIoTをはじめとした先端技術を用いて製造工場内で行われる各種作業を自動化し、省力化・効率化・高生産性を実現した工場を表す言葉です。工場内の基幹システム(ERP)や製造実行システム(MES)、生産工程や検査工程などを自動化するFA(ファクトリー・オートメーション)機器の一つひとつがネットワークでつながり、工場が一つつのシステムとして稼働し、常に最適な稼働状況を保ちつつ、工場の生産性向上を狙います。 スマートファクトリーにおいては、IoT機器によって集められたビッグデータがAIなどを用いて分析されることによって、生産ラインで日夜発生する課題の見える化とその解決が図られます。正確なデータに基づいた課題認識と生産現場の改善活動のサイクルは、工場全体ひいては会社全体の収益率の向上に大きく貢献します。 日本では、2010年に書籍『スマート・ファクトリー 戦略的「工場マネジメント」の処方箋』(清威人著)が発行されたことをきっかけに、「スマートファクトリー」や「スマート工場」といった言葉や概念が広まったという説があります。 参考:富士電機「 スマートファクトリーとは何か?AIやIoT技術導入によるメリットを事例と共に解説 」   :キーエンス「 IoT用語辞典 スマートファクトリー(スマート工場) 」 今さら聞けない「スマート」とは スマートファクトリーだけでなく、スマートフォンやスマートウォッチ、スマートグリッドなど、ITに関連する「スマート」を冠した言葉があります。改めて、このスマートとはどういった意味でしょうか。 スマートは英語smartで、「賢い、利口な、頭がいい、気が利く、かっこいい、おしゃれな、粋な、活発な、抜け目ない」などの意味を持ちます。これがITの文脈になると、「コンピュータ化された」「情報化された」「高度な情報処理機能が加わった」などの意味で用いられることが多くなります。 例えば、通話やSMS(ショートメッセージ)くらいしか機能がなかった携帯電話に、汎用のコンピュータ製品に近い装置や機能を組み込み、利用者がソフトウエアを追加してさまざまな情報処理機能を実現できるようにした携帯端末が、「スマートフォン」と呼ばれるようになったわけです。 出典:IT用語辞典e-words「 スマート 【smart】 」 スマートファクトリーが求められる背景 スマートファクトリーは製造業における事業の本丸のDXとも言え、移行が世界的に進んでいます。国際的な競争力を持つ意味でも、日本でもスマートファクトリーを積極的に導入し、新しくてより良いものづくりの在り方を実現することが求められています。 さらに少子高齢化による労働力不足や長時間労働の解消や、効率化を進めることにより新しい付加価値を開発するための経営リソースを確保するためにも、スマートファクトリーの導入が重要です。 経済産業省が2017年に発表した「スマートファクトリーロードマップ」では、製造業ではものづくりの未来の姿に向けて、以下の課題に対応しなければならないとしています。 ・品質の向上 ・コストの削減 ・⽣産性の向上 ・製品化・量産化の期間短縮 ・⼈材不⾜・育成への対応 ・新たな付加価値の提供・提供価値の向上 ・リスク管理の強化 うち最初の四つは、ものづくりの核の部分をスマート化することを指しており、スマートファクトリーと密接な関係があります。 出典:経済産業省「 スマートファクトリーロードマップ 」 産業革命そのもの、社会の在り方とも密接 スマートファクトリーは、ドイツ政府が2011年に提唱した産業政策「インダストリー4.0」を工場に反映させたものという解釈もあります。インダストリー4.0とは、直訳すると 第4次産業革命であり、製造業においてAIやIoTを取り入れ、改革することを目指すことです。2010年ごろから始まっているという見立てがあります。 第1次産業革命はもちろん、18世紀後半に英国で起こったことであり、人の手で行っていた軽工業を水力・蒸気機関を動力として機械化しました。英国は「世界の工場」と呼ばれるまでに発展し、産業革命は欧米に広がっていきます。その後、19世紀後半に米国やドイツを中心に起こった第2次産業革命では、製鉄業や造船業といった重工業を、石油と電力を活用して機械化し、製造業の大量生産化が進みました。背景には、ドイツが蒸気機関より小型化できるガソリンエンジンを発明し自動車や飛行機が実用化されたことや、米国で電気が産業化されたことがあります。 続いて、20世紀後半に起こった第3次産業革命は別名「デジタル革命」です。コンピューターによる単純作業の自動化が進み、製造業や流通業などにITが導入され、生産ラインを人間の指示により自動化できるようになりました。この時期以降に著しい成長を見せたのが、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)などのIT企業です。 出典:ドコモビジネス「 インダストリー4.0とは? 日本の製造業への応用やドイツの狙いをわかりやすく解説! 」 産業革命に則った未来形 産業革命を軸に見ると、スマートファクトリーの最新の在り方も見えてきます。つまり、現在の第4次産業革命の次の第5次産業革命はどのようなものか、ということです。 第5次産業革命でも第4次と同じく、AIやIoTを活用しますが、以下の三つの新しい概念が加わります。 ・持続可能性(サステナビリティー) ・人間中心(ヒューマンセントリック) ・回復力(レジリエンス) 持続可能性は地球社会の文脈でもよく言われますし、人間中心は例えばAI活用した機械に作業を任せっぱなしにするのではなく人間と協調して作業することを指していますので、想像しやすいと思います。 レジリエンス(resilience)もここ15年ほどで使用頻度が高まってきた概念ですが、意味がはっきりとは分からない方も少なくないかもしれません。上記の通り「回復力」や、「復元力」とも訳される言葉ですが、単に被害から元に戻るだけでなく、「柳に雪折れなし」と言われるように、柳の枝が雪という外圧を必ずしも正面から受け止めずにいなしていく「しなやかさ」のイメージがよく当てはまります。復元力から考えれば、洗濯してくしゃくしゃになっても乾かせば元に戻る形状記憶シャツというイメージも得られます。 回復力も復元力も「完全に元の状態に戻る」という意味が含まれやすいでしょう。しかし近年では、必ずしも完全に元に戻る必要はなく、機能が元より低くなっても高くなっても安定すれば良い、という見方も出てきています。例えば、自動車で自損事故をして、へこみや塗装が完全に元に戻ったわけではないが走行には問題ないように修理され、買い替えるほどではない状態は、「機能低下だが安定」です。一方、危機・災害による被害を受けた後に目指される「ビルドバックベター(より良い復興)」は、「機能向上で安定」です。 今後、スマートファクトリーを推進していく際、サステナビリティー、ヒューマンセントリック、そしてレジリエンスを織り込んでいくことで、時代遅れを避けられるでしょう。 参考:「レジリエンス社会を作る研究会」ら編著『しなやかな社会の実現』 スマートファクトリーにおけるAIの位置付け スマートファクトリーにおけるAIの役割と重要性を改めて説明します。 繰り返しになりますが、AI活用の前提となるのが、AIに分析させるデータを収集するためのセンシング技術です。IoTで工場で稼働している製造装置や作業者のセンシングとデータ収集を、いかに高精度かつリアルタイムで実現できるかが鍵になります。すこうしたセンシングデータを収集する仕組みを整えた上で、IoTによって工場内外のさまざまな機器がネットにつながり、多様で大量のデータを収集・蓄積できるようになります。そのデータをAIが分析して価値ある出力をすることにより、工場全体の生産性向上を狙えます。 センシングによるデータ収集、IoTによる機器連携、AIによるデータ解析、これらが一体になった状態が実現すると、具体的には、スマートファクトリーとして、例えば以下のような展開活用が見込めます。 1.産業用ロボットの効率的活用 産業用ロボットにの稼働状況をセンシングし、そのデータをAIでシミュレーション解析することにより、従来よりも効率的・生産的なロボットの稼働パターン・制御パターンを導出できる可能性があります。を組み込むことにより、効率の良い手順、動作などを短時間に学習できるようになります。 2.資材発注、在庫管理の最適化 生産計画や負荷計画、日々の資材の使用状況、在庫状況など、こうしたさまざまな生産管理データをリアルタイムで収集し、AIに解析を監視することにより、最適な資材発注のタイミングの提案、在庫水準の最適化などが図れます。 3.人間の感覚に依存する検査異常検知の自動化 目視による外観検査、異音検査の有無などのような、人間の感覚に依存してきた検査作業について、その異常の特徴をAIに学習させて不良品を導出する(教師あり学習)、あるいは正常状態との誤差から異常状態を導出する(教師なし学習)などのアプローチを用いて、て検査の自動化を図る取組みは近年多く見られるようになっていますすることができます。 4.設備保守の効率化 過去の設備の稼働状況および故障状況、消耗品の入れ替え状況、修繕状況などを学習させることにより、故障発生などの予測ができることが見込めます。これにより、効率的な設備の保守などができる可能性があります。 参考:J-Net21「 AIは、工場ではどのように活用できますか? 」 スマートファクトリーのメリット スマートファクトリーを実現することで、以下のようなメリットが得られる可能性があります。 データの見える化 スマートファクトリーでは上記の通り、各種センサーを駆使して工場内のデータを集め、AIを用いてデータを分析し、蓄積していきます。そのため、これまで以上にデータを集められ、状況を詳細に確認できるようになり、課題の発見が容易になる可能性があります。 生産性向上 大量のデータを蓄積・分析して生産状況を見える化することで、人材や設備、材料などのリソースがどのように使われているかが把握できるため、不足している箇所へ割り振るなど生産ラインの最適化が可能です。リソースの量が変わらなくても割り当ての調整で生産性を上げられる可能性があるということです。人材不足という課題にも対応できるかもしれません。 コスト削減 生産ラインを最適化することで、例えば材料の使用量を削減できる可能性があります。同じ量の材料でも生産量を上げる他、見える化により在庫管理も容易になり、コスト削減につなげられる可能性があります。 工場のコストを削減するには、スマートファクトリー化はもちろん、デジタルツインによって全体をリアルタイムに把握・シミュレーションすることも重要です。 デジタルツインについて詳しくは、以下のコラムもご覧ください。 ミラーワールドへようこそ。「デジタルツイン」とAI 品質の向上 スマートファクトリーではAIを活用することで、品質の向上も目指せます。製造中や完成した製品をモニタリングし、蓄積したデータを分析することで品質を改善できるデータが得られたり、生産ラインの異常をいち早く検知することで製造機器の故障を未然に防げたり、といった効果が見込めます。 品質を上げることではもちろん、納品先が抱く信頼度や満足度などを上げることも見込めるでしょう。 スマートファクトリーの課題 スマートファクトリー化することで上記のような利点が得られますが、以下のような課題もあります。 データ活用の難しさ スマートファクトリー化された現場では、限られた人材で高い生産性を目指せる可能性がありますが、そもそも、スマートファクトリーを構築し、蓄積されていくデータを活用できるデジタル人材が必要です。AIやIoTなどに精通した人材はありふれているわけではなく、採用するには諸コストがかかるでしょう。 セキュリティ強化 スマートファクトリーを実現すれば、稼働を支えるためのビッグデータが常に蓄積されていきます。データは分析してより良い生産につながる知見が得られる源泉になるだけでなく、それそのものが情報資産になるため、漏洩などしないようにセキュリティ強化が欠かせません。このセキュリティ強化を構築・運用するためにもまたデジタル人材が必要となります。 AIに関連したサイバーセキュリティに関しては、以下のコラムにて詳しくご紹介しています。 AIは善にも悪にもなる。サイバー攻撃とセキュリティ スマートファクトリーの事例 ここでは、スマートファクトリーを実現した実際の事例を3件取り上げます。 化学プラントの変調を捉える 液晶の変更版保護フィルムに使われる酢酸セルロースなどで世界大手のダイセルは、「自律型生産システム」を開発し、2021年から本格導入しています。これにより、プラントの異常の予兆を早期に捉えて運転操作の条件を最適化できるとしています。 このシステムには、プラントの運転時における異常予兆を検知する「高度予知予測システム」と、製品の品質を予測しつつプラントの最適な運転条件を自動表示する「最適運転条件導出システム」という、オペレーターの意思決定を支援する二つのAIが採用されています。前者は異常が発生する前の対応、後者は圧力や温度といった変化するデータを入力とした最適な運転条件の出力や出来上がる製品の品質を予測が可能だとしています。 出典:日経BPムック『倫理、説明、データ利用、23の注目事例から学ぶ 正しいAI導入』 ガス供給システム上で在庫管理、発注タイミング提案も 産業ガスを製造・販売する大陽日酸は工場内でのガス供給システムの自動化を手がけています。2020年から販売を始めた「IGSS(インテリジェント・ガス・サプライングシステム)」では、工場内でのガス運搬作業や在庫管理、日常点検を効率化しています。容器自動搬送システムや日常点検システム、ガス監視システムなど六つのサービスをタブレット端末から操作できるよう統合しました。 ガスはキャビネットという装置を通って工場内に供給されるため、キャビネットをIoT化して日々のガス供給データを蓄積、そのデータをガス供給設備の日常点検の記録に活用しています。データはタブレットに集約され、これまで数時間かかっていた日常点検の時間を3分の1に短縮できました。収集したデータはAIを使って、在庫管理にも生かしています。また、ガスの消費ペースをAIが予測し、最適な発注のタイミングの提案もできるとしています。 出典:日本経済新聞「 大陽日酸、ロボットでガス供給自動化 半導体工場に的 」 ビール製造で品質安定、原材料利用11%減 クラウドコンピューティング世界最大手の米アマゾンウェブサービス(AWS)が、AIを駆使した顧客工場の支援に力を入れており、例えばオランダのビール大手ハイネケンなどにサービスを提供し、コスト削減と品質向上につなげています。 2018年から2022年までに53の醸造所で2000台を超える機器をAWSのクラウド上に構築したIT基盤につなぎ、生産部門で働く1万7000人超の従業員らは専用のアプリを介して生産量や設備の状態などをリアルタイムで確認できるようになりました。さらに2022年からは三つの醸造所でAIの活用にも乗り出し、AIに製造工程を学習させることで温度や時間管理を最適化しました。品質を安定させるとともに、原材料の利用を11%減らすことに成功しています。 出典:日本経済新聞「 Amazonのクラウドサービス、ハイネケンなどの生産支援 」 スマートファクトリー化に求められる「しなやかさ」 製造業におけるAI導入、スマートファクトリー化は、予算さえあれば推進しない手はないといったところでしょう。しかし、大規模なプラントを一気にスマートファクトリー化しようとすると、仮に失敗した場合は、関わる従業員の数も膨れ上がり、逆に生産性が一時的に下がってしまうリスクもあります。まずは小さく始めて、そこでうまくいったら適用範囲を拡大し、最終的に工場や社内全体に広げていくのがリスクの少ない進め方です。しかし「どれくらい小さく始めるべきか」「適用範囲の拡大はどれくらいで、いつすべきなのか」を検討するのは、決して簡単なことではありません。 そうした検討は当社のソリューションデザイナが得意とするところであり、より良い製造だけでなく、その先の目的である事業・経営としての成功を導きます。さらに、検討によってAI導入の規模や内容が変わるため、それに合わせて「しなやか」に設計できるカスタムAIが向いているでしょう。ソリューションデザインとカスタムAIの両方を得意とする当社にぜひご相談ください。 製造業におけるAI活用については、以下のコラムもあわせてご覧ください。 「製造DX」は幻想か。製造業AIの今と展望 The post 製造業に求められる「しなやかさ」。AI活用のスマートファクトリーで実現へ first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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ブラックボックス化を防げ。「説明可能なAI(XAI)」の重要性 2023.4.28 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 概 要 ChatGPTが急速に普及したり、政府がAIに関わる国家戦略を検討する新たな「AI戦略会議」を設ける方針を固めたりするなど、日本でのAI活用が一段と加速しています。中でも、AIの根幹的な技術の一つであるディープラーニング(深層学習)の弱点を補うかのように登場して注目を集めているのが「説明可能なAI(Explainable Artificial Intelligence、XAI)」です。本稿では、XAIの概要や背景、分類などについて解説します。 目 次 ・ 説明可能なAI(XAI)とは ・ XAIが重要視される背景  ・ AIの普及が進み、責任の所在が複雑化  ・ GDPRの影響 ・ XAIが必要とされるケース  ・ 医療業界  ・ 金融業界 ・ XAIの分類と限界  ・ XAIの3種の説明方針   ・ 大局的な説明   ・ 局所的な説明   ・ 説明可能なモデルの設計  ・ XAIの限界 ・ ディープラーニングを補うXAIを補う存在とは 説明可能なAI(XAI)とは XAIとは、AIがデータを分析しある結果を出力したとき、その出力に至った理由を説明できるAIを指します。説明可能なAIが注目を集める理由は、AI技術の一つであるディープラーニングが「説明できないAI」と言える面があるためです。 ディープラーニングとは、機械学習に必須なパラメーターである「特徴量」を指定することなく、コンピューター自身が特徴量を探して学習を行っていく手法です。 機械学習では原則として、人間が特徴量を選択する必要があります。特徴量とは、コンピューターが物事を認識する際に基準とする特徴のことを指し、画像認識においては「色」「形」などが特徴量として考えられます。 この「特徴量の選択」という人間の作業を取り払ったのが、ディープラーニングです。ディープラーニングでは与えられたタスクに対し、どの特徴量を参考に学習すればいいのかもコンピューター自身が判断します。 ディープラーニングについてはこちらもご覧ください。 AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いとは 一方、ディープラーニング以外の機械学習では、特徴量やアルゴリズムを人間が選定するため、得られた結果に至った過程を説明することができます。しかし特徴量の選択をコンピューター自身が行うディープラーニングでは、結果に至る過程は人間には基本的に理解できません。パラメーターの数が数百万に及ぶこともあり、これだけの数を理解するのは現実的に不可能だからです。 ディープラーニングはよく「ブラックボックス」と言われますが、解釈によっては誤解が生じるかもしれません。ブラックボックスは一般に「内部が明らかでないもの」を指しますが、ディープラーニングもコンピューターによる計算を基に成り立つ論理的な技術なので、理論的には説明可能です。ただ、上記のようにパラメーターが膨大なために人間の理解が追いつかず、説明できないに過ぎません。さらに言えば、説明が成立するかどうか、つまり説明を聞いた相手が理解・納得できるかどうかも、人間の問題です。説明する相手の理解力に合わせた説明をしなければならないということであり、説明可能か不可能かの尺度はあくまで人間だということです。 そうした、人間が説明できないAIを何らかの方法で説明しようとする技術が、XAIなのです。 参考:福岡真之介『AI・データ倫理の教科書』 XAIが重要視される背景 XAIが重要視される背景には以下が挙げられます。 AIの普及が進み、責任の所在が複雑化 AIが普及すればするほど、AIの動作が原因で何らかの危害が発生した場合にAIの判断の説明ができないと、危害に関する責任の所在が曖昧になってしまいます。他者が提供しているモデルやアルゴリズムを組み込んでAI システムを構築・運用することが一般化してきている状況の中では、AI システムの振る舞いに関わる責任はますます複雑化している面もあります。こうした状況でXAIは、AI システムの設計・開発・運用・利用に関わるあらゆる人たちが適正な範囲における責任を果たすために求められています。また同時に、AIシステムの技術的な改善を促進するためにも活用できます。 出典:村田潔「 説明可能なAI(XAI) 」 GDPRの影響 EU(欧州連合)によって策定され、2018年5月から適用されている「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation、GDPR)」もXAIの重要性を高めています。GDPRとは個人データを保護するための法的な枠組みとして、強い影響力を国際的に与えています。 その中に、ユーザーは自身のデータが処理・出力された結果に関し「説明を受ける権利」を有しているという内容があります。データの管理者は、適切で数学的・統計学的という客観的な手法を用い、公正かつ透明性のある処理を行っていると保証する必要があります。個人データをAIで処理する際も同様であり、XAIが求められます。 なお、GDPRは、EU居住者の個人データを収集・処理する限り、EU域外に活動拠点があっても適用対象とされます。 例えばネット通販などでグローバルにサービスを提供する日本企業も対象となり、GDPRの指針に基づいた対策が求められます。 出典:日立ソリューションズ「 GDPR(EU一般データ保護規則)とは? 日本企業が対応すべきポイントを考える 」 XAIが必要とされるケース XAIが求められる業界に限りはないと言えますが、特に重要な二つを取り上げます。 医療業界 疾病を特定し、患者にその内容や治療法について説明する必要のある医療業界では、命に関わる場合が少なくないことから、XAIの重要性が高いのは想像に難くないでしょう。 特に、医師が疾病を判断する際の支援をするAIの需要が高まっています。例えば、レントゲン画像などから疾病を判断する際の正確性について、結果だけ示して判断の過程を説明できなければ、採用した際のリスクの評価ができず、支援ツールとしての有用性に欠けます。画像のどの部分に注目し、どんな理由で特定の疾病であるかの判断をしたという説明を示せれば、医師の判断を支援できる存在になるでしょう。 医療におけるAIについては、以下のコラムもご覧ください。 いのち守るためのAI。医療現場へのAI導入の壁 薬局DX。AIは薬剤師業務を変革できるか 金融業界 利用者の健康や命に関わる医療だけでなく、生活を左右する金融もまたAI活用には慎重になるべき業界であり、XAIの重要性が高いと言えます。 貸付審査を判断するAIを例に考えてみましょう。貸付審査は審査を受ける人の生活に関わることであり、公平な判定が下される必要があります。貸付不可の判定が出たとすると、顧客はその判定の理由を問い合わせることでしょう。その際、予測に貢献した特徴を説明するXAIが活用できる可能性があります。「貸付残高がXX円以上、前年度年収がYY円以下のため、貸付不可」といった具体的な判定理由を提供できるようになり、金融機関としての説明責任を果たせるようにもなるでしょう。 出典:第一生命経済研究所「 AI活用の鍵「説明可能なAI」とは 」 金融機関におけるAI活用については、以下のコラムもご覧ください。 ハードルを飛び越えろ。金融AIの活用と事例 XAIの分類と限界 XAIの分類方法はいくつかありますが、ここでは説明方針の違いを取り上げます。さらにXAIの限界についても解説します。 XAIの3種の説明方針 AIの説明をするに当たり、何をどこまで説明すべきという方針は、大きく三つに分けられます。 大局的な説明 ブラックボックスに見えるAIを、人間が解釈できるモデルで表現することで説明とする方法です。例えば、ディープラーニングのモデルを単一の決定木やルールモデルで近似的に表現します。 局所的な説明 特定の入力に対する出力について、予測の根拠を説明する方法です。個々の予測結果の判断理由を理解することを目的としており、予測過程を説明しているとも言えます。 例えば、EY新日本有限責任監査法人(EY新日本)は2023年4月に、機械学習を活用した「進捗度異常検知ツール」に、XAIによる分析機能を追加しました。このツールは建設業など請負業の監査向けで、XAIの追加により、各工事契約で何の特徴量が推定値の算定にどの程度影響しているかを把握できるようになりました。さらに特徴量が類似する他の工事契約をXAIが提示するため、監査人は全体の傾向を理解した上でリスク評価とより深い洞察を提供でき、監査先企業のガバナンス強化が見込まれます。 出典:IT Leaders「 EY新日本、“説明可能なAI”で建設業など請負業監査における工事契約の進捗予測を高度化 」 説明可能なモデルの設計 上記二つがモデルの挙動を説明するのに対し、人間にとって解釈しやすい機械学習モデルを構築する方法です。 例えば、理化学研究所革新知能統合研究センターらの研究チームは、病理画像を診断する画像認識AIの説明可能性を高める技術を開発したと発表しました。研究チームはまず、画像分類の学習に教師なしのディープラーニングモデルを用いました。その上で、病理の診断データを使って分類ごとの特定の病理の再発率を算出。さらにこの分類の有用性を、サーポートベクターマシン(SVM)やロジスティック回帰といった教師あり学習のモデルを構築して確認しました。学習工程が病理画像の分類と再発の予測の二つに分かれていることから、それぞれでのAIの判断が分かり、人間にとって解釈しやすいモデル構築になったと言えます。 XAIの限界 ここまでの説明を通して、XAIはディープラーニングを補完する素晴らしい技術であるという印象を強めた方もいるかもしれません。しかし万能ではなく、限界もあります。まず、XAIはあくまでAIモデル内の判断の説明を行うものであり、ビジネス上で要求されるレベルの説明までできないことが少なくありません。 さらに、XAIが示す特徴量と予測値について、特徴量と予測値の関係として解釈するのは無難かもしれませんが、特徴量と目的変数(因果関係の結果となる変数)との因果関係と解釈すると誤った判断となる可能性があります。 例えば、AIがデータを解析して、特定の趣味を持っている人がある企業で昇進しているという結果が出たとします。「昇進」という結果に対する原因を「特定の趣味を持っている」と捉えるのが因果関係です。しかしAIは因果関係の間にある論理展開は見ず、文字通り結果しか見ていませんので、昇進の原因が趣味だとは必ずしも言えません。にもかかわらず、人間は、相関関係に過ぎないことを「特定の趣味を核にした派閥があって、それが人事に影響を与えているんだ」といった因果関係と捉えがちと言われています。XAIによる解釈には慎重な検討が必要なのです。 出典:福岡真之介『AI・データ倫理の教科書』   :日経BPムック『倫理、説明、データ利用、23の注目事例から学ぶ 正しいAI導入』 ディープラーニングを補うXAIを補う存在とは AI、特にディープラーニングがさらに普及すればするほどXAIがさらに求められます。その際、XAIの限界に基づく弱点も拡大してしまうことになります。そこで必要なのが、繰り返しになりますが、XAIによる解釈について、人間が慎重に検討することです。この慎重な検討を担えるのは、誰でもできるということではなく、AI開発はもちろん、ビジネス課題の解決も熟知した人材です。当社のソリューションデザイナは、これら両方を満たした人材であり、あなたのビジネスを成功に導き、新しい姿に進化させます。説明が求められるAIの開発こそ、当社にご相談ください。 The post ブラックボックス化を防げ。「説明可能なAI(XAI)」の重要性 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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ChatGPTは、教育の未来なのか、それとも不正行為の未来なのか? 2023.1.7 監 修 株式会社Laboro.AI マーケティングディレクター 和田 崇 概 要 紙も電卓もインターネットも、学習技術の進歩はすべて「Death of learning(学習の死)」と呼ばれてきました。 昨年11月にリリースされた対話型 AI 「ChatGPT」も生徒の学習に悪い影響を与えるのではないかとして、イギリスやアメリカ、フランス、インド、オーストラリアなどで学校での使用をブロックする措置が始まっています。しかし、スタンフォード大学の学生に対する調査では 17% が試験や課題ですでに「ChatGPT」を使ったと回答し、学生サイドからは、このツールの学習における有益性を示し先手を打とうという動きも出ています。 世界中の教育現場で異なる意見が飛び交っている中、「ChatGPT」を開発した OpenAI の CEO サム・アルトマンは、自分たちの作ったものを「少し怖い」としながらも、このツールが全ての人それぞれにあった教育を提供できる可能性に期待していると述べています。 今回は、話題の対話型 AI 「ChatGPT」が学校で禁止された国で何が起こっているのかを見つめ、テクノロジーが提供できる教育の可能性について考えていきたいと思います。 目 次 ・ スタンフォード大学の考査で使われた「ChatGPT」  ・ 使用禁止が進む教育現場に先手を打つ学生  ・ AI を使っていると、真面目に言いたい ・ 「ChatGPT」は今までの不正と、どう違う?  ・ 人に近づくほど、人と区別ができなくなる ・ 生徒の主張と教師の主張  ・ 子どもはいずれ「ChatGPT」を使う大人になる  ・ 教育現場は「一旦停止」で時間を稼ぐ  ・ 2050 年に向けて学び、卒業する子どもが見たい ・ 「富の不平等」システムの典型が高等教育  ・ パンデミックで教育格差は広がった ・ 子どもによる「ChatGPT」の使い方  ・ 「10歳の子どもにわかるように説明して」  ・ 好奇心は「質問」のかたちをとる ・ 大人による「ChatGPT」の使用条件  ・ 「どのように使ったのかを説明して」  ・ 対話型 AI があれば、英語の情報にアクセスできる ・ 大人による「ChatGPT」の使用条件  ・ AI を一部の人ではなく、個々の人に役立てる  ・ みんながそれぞれ AI とともに学べる社会を スタンフォード大学の考査で使われた「ChatGPT」 使用禁止が進む教育現場に先手を打ちたい学生 昨年11月の対話型 AI 「ChatGPT」のリリースから程なくして、英語圏の教育現場に激震が走りました。アメリカのスタンフォード大学の秋学期(9−12月)の課題や試験で、 17% の学生が「ChatGPT」を利用していたことが匿名アンケートによって 分かったのです。 奇しくも「ChatGPT」はスタンフォード大学を中退したサム・アルトマンを共同設立者とする Open AI が開発した対話型 AI です。“会話する Google ” と表現されることもある「ChatGPT」は、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)という名の通り、大量のデータをバックグラウンド に翻訳、要約、FAQなどの自然言語処理を一つのAIモデル内で完結します。なんでも聞けば文章で答えてくれるこのチャットツールを使えば、学生が問題文を入力すると、ほんの少しの手直しの手間をかけるだけで提出できるような答えを得られる可能性があります。 学生が AI にエッセイやその他の課題を代筆させるのではないかと物議を醸す一方で、学生の側からは使用していることを公表し広め、 AI を用いて学ぶことの正当性において先手を打とうという動きも出ています。 AIを使っていると、真面目に言いたい 事実、学術誌『Nature』ではすでに、対話型 AI は少なくとも4つの公開論文/最終原稿の共著者としてリストアップ され 、それゆえ『Nature』は何故共著者として対話型 AI を掲載できないかを説明する方針を作成しなければならなく なりました。 ニュージーランドでは学生が「スペルチェックのようなツールを使うことと同じように AI も論文の執筆に使っている」として、学生新聞に次のような意見を 述べました。 “自分は真面目な学生です。講義はすべて出席し、個別指導にも通い、読むように言われた資料は全て読んでいます。それなのに、文章をうまく書けないがために損をしているように感じてきたし、それでいいとは思えなかった” photo by Flickr 「ChatGPT」は今までの不正と、どう違う? 人に近づくほど、人と区別ができなくなる AI が登場する以前からインターネット上の情報を剽窃するさまざまな不正が存在していますが、「ChatGPT」の回答のコピペと単純なウェブサイト情報のコピペは別物と言えます。 「ChatGPT」を開発した Open AI は、このモデルがインターネット上の具体的にどのテキストデータを学習データとして用いているのかを明らかにしていませんし、膨大なデータや急増するユーザーとにやり取りから常に学び続ける対話型 AI は、同じ質問をしても返ってくる回答が 1 つではありません。よって AI の回答をそのまま提出しても、学生が自分で作成した文章と見分けがつかないことが問題とされています。 そもそも「自然言語処理(NLP)」系の生成 AI は、できるだけ人間の文章に近い出力をすることを目指して開発されていますから、簡単に AI だとわかる検出方法を求める世間の声は、プログラムの本質を見失っているような矛盾した要望と いえるのです。 人間が書く文章でよく使われる単語と AI のテキストでよく用いられる単語の偏りを「電子透かし」として用いることもできるでしょうが、その電子透かしを回避するための言い換えツールが対応策として登場してイタチごっこになるのも容易に想像でき、今後も「ChatGPT」が作成した文章を 100% の確率で言い当てることは、限りなく不可能に近いと言わざるを得ません。 生徒の主張と教師の主張 子どもはいずれ「ChatGPT」を使う大人になる 教室で生徒と向き合う教師もどうすれば良いのか逡巡しています。2 月末、『 WIRED 』に掲載されていた記事の中では、ロンドンのハイスクールで英語の教鞭を執る教師が「ChatGPT」の使用をめぐって生徒と議論を交わしたことが書かれていました。 ほとんどの生徒は「バレるのが怖い、文章の質が気になる、文章を書く練習をせずにいたらいつか追いつかれるかもしれない」といった理由で、 AI の使用に否定的あるいは消極的な意見を述べたそうです。その中で、一人の生徒がはっきりと AI を使えばいいと主張したそうです。 “自分にとって文章を書くライティングの課題はただ成績を取るためのものです。自分はそんなに文章力が必要な仕事に就くつもりはないし、もし就いたとしても「ChatGPT」を使えばよくないですか?” photo by Flickr 教育現場は「一旦停止」で時間を稼ぐ 「ChatGPT」の使用が急速に進む地域では、これまでにイギリスの複数の大学、そしてアメリカやオーストラリア、フランス、インドでも州や地区の単位で学校で使うデバイスやネットワークに「ChatGPT」の使用をブロックする措置がなされています。こうした措置は、新しい技術に対応するための方針を作成し、法を整備するのに必要な一時的なものとしているところも多いようです。 膨らむ危機感から、古き良き「紙とペン」での試験に戻そうという動きも あります。 皮肉にも、教育システムがそもそも時代に遅れをとってきたためか、20世紀の教室に時計の針を戻すこともたやすくできてしまうのかもしれません。 photo by Flickr 2050年に向けて学び、卒業する子どもが見たい 当然ながら、子どもたちを学校のネットワークに閉じ込めておくことはできず「ChatGPT」の使用を完全に禁止できるはずもないなか、教育者たちは自問自答しています。 “「ChatGPT」は不正行為の未来なのだろうか。教育の未来ではないだろうか?” AI の使用を禁止する方向に進む教育現場では「いや、対話型 AI は子どもたちにとって信じられないほど素晴らしい教育ツールだ」という声が沸き起こっていることも事実です: “私たちは、1950 年に向けて教育された卒業生を見たくありません。 2050 年に向けて、そしてその先の発展を安全に導くことができる卒業生が欲しい のです ” (デンマークの学術誌) “このツールを使えば、文章の流れをチェックし、より明確にする必要のある部分を特定し、論理的欠陥を見つけ、さらなる議論のためのアイデアを得るなど、より多くのことを得ることが できます ” (ノルウェーのアグダー大学教授) “ AI はこれからもずっと存在するのですから、それに対抗する必要などないでしょう。学生たちがいずれ社会で使うことになるツールなのに、 3 年間は使うな、今は存在しないことにしろというのは、とてもおかしな 話です ” (スコットランドのエジンバラ・ネピア大学准教授) photo by Flickr 中でも教育分野に貢献できる AI の可能性として特に期待されているのは、より公平に個人にあった教育を提供できるようになるのではないかという次のような意見です。 “「ChatGPT」は塾や家庭教師を利用できない子どもたちの学習成果を向上させる可能性を 秘めています ” (オーストラリアのグリフィス教育研究所所長) 「富の不平等」システムの典型が高等教育 パンデミックで教育格差は広がった 世界の「富の不平等」はますます広がり、もっともリッチな 1% の人が世界の個人資産 40% 近くを 保有しています。 富の不平等が進む社会は、低所得層がその他の人たちと同等の機会を得られず、場合によっては富裕層の人ほどなぜか利益を得やすくなっており、その典型と言われているのが高等教育のシステムなのです。 例えば大学は、入試の点数や内申点、課外活動などに基づいて優秀とされる生徒に学費を免除したり奨学金を支給したりしますが、そういった点数や課外活動そのものに資金が必要なため、富裕層がメリットを享受しやすく なっています。 photo by Flickr その上、コロナウイルスによるパンデミックは、教育の機会において低所得層に大きなインパクトを与えることになりました。世界 188 カ国で 15 億人の生徒が学校に通えなくなり、学校が再開されて以降も、ウガンダでは 1 割の子どもが教室からいなくなり、マラウイではハイスクールにおける女子の退学率が 48% 増加した そうです。 アメリカでは、貧困地域の子どもたちの数学の成績が、裕福な地域の子どもたちと比べて 50% 低下していたという報告がなされ ています。 リモート教育を進めざるを得なくなったためにアメリカ政府は教育分野に巨額の資金を投入し、低所得者層へのインターネットやデバイスのアクセス向上を支援することとなりました。結果、このレベルの刺激策ができるなら、教育のシステムに平等な土俵がつくれるのではないかという前向きな見方も出て きています。 子どもによる「ChatGPT」の使い方 「10歳の子どもにわかるように説明して」 難易度でいうならば、「ChatGPT」は既にアメリカの大学院レベルの法律の試験に 合格した り、同じくアメリカの経営学修士の試験に B ~ B- のランクで 通過する までになってきています。より高度な文章作成においての AI の使用に議論が集まっているため陰に隠れていますが、その前段階の子どもたちの間でも「ChatGPT」の利用は急ピッチで広まっています。 photo by Flickr 例えば、子どもたちが教科書や問題の説明文を読んで曖昧にしか理解できていない言葉があったとします。その言葉を『政治』とすると、子どもたちはそれを従来のように検索するのではなく、「ChatGPT」に「政治の意味を教えて」と質問します。それに対する回答にわからない表現があったり、まだ曖昧にしか理解できない場合は「簡単に説明して」「10歳の子供がわかるように説明して」といったように、わかるまで質問を繰り返すのです。 対話型 AI によって失われると恐れられていることをもう少し紐解くと、便利で簡単に答えが得られることによって深い学びを得られなくなってしまい、何かを探求する機会が脅かされるということなのかもしれません。ところが、子どもたちの使い方を見ているとむしろ「もっと知りたい」と心が動き出すような、教育現場の心配とは真逆の傾向も見られることがわかります。 好奇心は「質問」のかたちをとる 絵本やおもちゃを口に入れるように、私たちはまだ赤ちゃんのうちから、新しいものへの好奇心を全身で表しながら成長します。言葉が話せるようになると、子どもは普段接している大人に対して2分間で平均3つの質問を投げかけるように なります。 photo by Flickr 私たちの本能はどのように好奇心に従って動くのか、脳のメカニズムにおいてわかっていることは、人が好奇心を掻き立てられると、脳の尾状核(びじょうかく)という部位が活性化するということです。 尾状核にはワクワクする気持ちやモチベーションを高めることに関わるドーパミンを放出する神経細胞が詰まっており、私たちが好きな人を見てときめくのにも、この尾状核が関わっています。 子どもが2歳〜5歳の間に説明を求める問いかけを合計すると 4 万回に上ると推定されていますが、それも子どもがドーパミンでワクワクする期待感にはまって質問せずにいられなくなっていることの現れなのかもしれません。 大人による「ChatGPT」の使用条件 「どのように使ったのかを説明して」 人は徐々に習慣や固定観念で動くようになってしまいますが、私たちが大人になっても新しいものや知らないことは存在します。大人になる過程で子どもの頃のようには「なんで」「どうして」と聞きにくくなっても、もし対話型 AI のように常にしつこく質問できる相手がいたとしたら私たちは何か変わっていたのでしょうか? コロンビア大学ビジネススクールのダン・ワン教授は、学生に「ChatGPT」を使って宿題をするよう勧めており、使うことにおいて一つだけ「どのように使ったのか説明すること」を条件としている そうです。 その条件によって、学生たちは「ChatGPT」により複雑な質問をするようになりました。それは、彼らが自分の代わりに課題をやらせるために AI を使うのではなく、自分とは異なるさまざまなアイデアを得て探求するために使っていることを示しています。 対話型 AI があれば、英語の情報にアクセスできる 同様に、ウォートン・スクール・オブ・ビジネスのイーサン・モリック教授も AI の使用を生徒に勧めており、「ChatGPT」が英語を母国語として話さない学生の学びに役に立っていると 述べています。 英語を母国語として話す人は世界の 5% ほどですが、インターネット上のコンテンツは 50% 以上を英語が占めているというほど英語のものに偏っているのが現状です。 AI はまだまだ、情報量の少ないニッチな分野や最新の情報への対応が課題とされるものの、英語を訳したり、簡単な英単語を用いて情報をくだいて説明するのは言語の中でも英語に長けた対話型 AI の大きな強みです。旧態依然とした教育では世界のほとんどの人が言葉を理解できずに諦めていた情報にまで、 AI があれば手が届くようになってきています。 AI を“ 紙とえんぴつ ” のように AI を一部の人ではなく、個々の人に役立てる テクノロジー業界では、これまでにイーロン・マスクやビル・ゲイツなど大富豪が続々と生まれています。個人資産が 1000 億ドル(約 11 兆円)を上回る人は世界に 9 名存在しますが、そのうちの 7 名がテクノロジー株で財を成した人 だそうです。 富の不平等が広がった背景にテクノロジーがあることは間違いないでしょうが、不平等を拡大させた一因がテクノロジーであるのなら、不平等を縮小させることができるのもまたテクノロジーなのかもしれません。 Open AI の CEO サム・アルトマンは、ニュースのインタビューの中で、自社の作ったものが「少し怖い」と言いました。そして、自分がこのテクノロジーに最も期待していることの一つに「それぞれの生徒に合ったそれぞれの学び、つまり素晴らしい個別学習を提供する能力」を 挙げました。 photo by Flickr みんながそれぞれ AI とともに学べる社会を 対話型 AI は、 AI が最も理解しやすい質問を出すことで、求めることに最も近い、むしろそれ以上の答えを出してくれるようなテクノロジーです。質問をすることは人の本能に従った自然なことで、質問をする能力においては財力が大きな影響を与えることもないでしょう。 学校教育で生徒が AI とともに学び、どのように使えばより目的にあった結果や面白い結果が得られるのかを探求すれば、知識の差を埋めるだけでなく、彼らの将来の可能性を広げられるかもしれません。 すでに、より良い AI の使い方ができる方法を構築することは「プロンプトエンジニアリング」と呼ばれ、コーディングなどを全て AI に任せるようになった未来で、人が高い報酬を得られる仕事になるだろうと 言われています。 photo by Flickr AI の導入がますます進む未来に向けて、みんなが納得できるやり方で AI を使うことはできないだろうかと、多くの教育者が AI を学び始めており、アメリカで行われた調査では生徒よりも教育者の方が「ChatGPT」を使用しているという結果も 出ています。 インターネットの情報と同じく AI の情報が 100% 正しいとは言えないとしても、「正しい歴史」が存在しないように、常に一つの正しい答えを教えることが教育の目的ではないと強く訴える教育者 もいます。 自分の考えや手法を追求し、参考資料を読み解き探求することが学問であるならば、 AI によって教育現場は次のような、大きな学問のテーマを得たといってもいいのかもしれません。 「いかに AI を一部の人のためのものにせず、“ 紙とえんぴつ ” のように生徒が使えるようにするにはどうすればいいか」 より公平な社会を築くためにテクノロジーの活用を導けるかどうかは自分たちの手にかかっているのだと、教育現場から子どもたち大人たちそれぞれの挑戦が始まっています。 The post ChatGPTは、教育の未来なのか、それとも不正行為の未来なのか? 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AIは革新的アイデアを提案できるか。「ググる」を超える検索の可能性 2023.1.31 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 概 要 ビジネスという競争をしている以上、革新的なアイデアは常に求められ、消費され、陳腐化し、また新しいアイデアが求められる…というサイクルが繰り返されています。そしてそのサイクルは、どの業種や分野でも短くなっているのではないでしょうか。そこでAIを活用して、アイデアやひいてはイノベーションを「検索」する方法は考えられないでしょうか。インターネット検索や生成系モデルを確認しつつ、その可能性を見てみます。 目 次 ・ 従来のインターネット検索だけでは革新的アイデアは得られない ・ ネット検索の技術と歴史  ・ ネット検索の仕組み:検索技術は自然言語処理  ・ 単語ベースと文脈ベースの検索の違い  ・ ネット検索の歴史、誕生からBERT登場まで ・ 近年話題の生成を活用した検索の実力は  ・ 文脈を理解する検索「BERT」とは  ・ GPT-3とは  ・ 生成系AIを利用した検索エンジン例 ・ 言葉を超えた意識やニーズの掘り起こしをAIが手伝える可能性  ・ 「顕在意識」と「潜在意識」の違い  ・ セレンディピティーで生まれた商品・サービスの例 ・ ソリューションデザイナが「言葉にならない支援」ができる 従来のインターネット検索だけでは革新的アイデアは得られない 一口に「革新的なアイデア」と言っても、歴史上類を見ないものだけでなく、過去存在したが現在では忘れ去られてしまったものをよみがえらせて活用するのも温故知新であり、素晴らしいアイデアです。温故知新とは、古いこと、昔のことを研究して、そこから新しい知識や道理を見つけ出すことです。さらに、アイデアが本当に新しいかどうかを判断するには、過去の事例をよく知っていて、それらと重複がないことを確認しなければなりません。 過去にどんなアイデアがあったかを知れるということで、インターネット検索はアイデア創出に大いに役立ちそうです。現にこれまで多くの人がそうした目的で利用してきたでしょう。しかし注意点もあります。 一つ目は、ネット上にある情報の量は膨大であり、しかもそのうち、事実に則っていなかったり、不正確だったりする情報もまた膨大であることです。よく知らない分野こそ調べたいのに、情報の真偽を判断するのは難しくなっています。 二つ目は、未来のことは分からないということです。天気予報や景気予測のように、過去の膨大なデータや、既に日程が決まっているイベントを基にして、未来の出来事をそれなりの精度で予測するサービスは生まれています。しかし、全く予測されていなかった出来事が起きたり、しかもそれが社会を一変させるほど大きな影響を与えてきたりしたことは、皆さんの経験にもあるはずです。言い換えれば、未来予測は過去のある時点で作成された「過去の情報成果物」であり、それがそのまま「未来の事実」になるわけではありません。 こうした前提を踏まえて、うまく学習させたAIを活用したネット検索を使い、アイデア創出ができないでしょうか。これを確認するために、まずは検索技術そのものから振り返ってみましょう。 ネット検索の技術と歴史 ネット検索の仕組み:検索技術は自然言語処理 ネット検索の技術は、類似文書検索です。類似文書検索は自然言語処理で実現できることであり、自然言語処理はAI技術の一つです。よってネット検索もAIで実現できていることの一つになります。 類似文書検索を一言で言えば、「文章を何らかの方法で数値化し、その数値の類似度をもって検索対象の文書集合の中から検索条件に近い文章を選択する技術」となります。この数値化や類似度計算の仕方で精度や特性、ネット検索で言えば表示されるページやそれらの順番が変わってくることになります。 文章の類似度を算出する処理は基本的に、文章のベクトル(数値)化をした後に、文章ベクトル同士の類似度を算出する流れになります。日本語は英語などと違って単語間に空白を用いないので、ベクトル化の前処理として、形態素解析と呼ばれる処理で単語ごとに分割します。そして各単語が文章ごとに何回出現したかを数え、ベクトルとして各単語に付与するのです。 検索システムに検索用キーワードが入力されると、そのキーワードが多く含まれるウェブページ、あるいはタイトルなど重要な場所に含まれるウェブページがリストの上位に表示されます。また複数のキーワードで検索する場合には、それらのキーワードが含まれるだけでなく、その位置関係が近い物ほどリストの上位に表示されることになります(アルゴリズムが異なればこれらの限りではありません)。 単語ベースと文脈ベースの検索の違い 検索技術は近年、単語ベースから文脈ベースへと大きく変わりました。きっかけとなったのは、Googleが2019年にBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers、バート)という技術を採用し、文脈を踏まえた検索結果を出すようになってきたことです。導入前のGoogleでは、日本語で形容詞と名詞の形態素解析はできているものの形容詞が名詞を修飾していることを理解していなかったり、英語の検索語群にある前置詞の意味が分からずに主語を取り違えたりすることが起きました。BERT以前の主に単語の登場頻度だけで類似度を計算して結果を出すのが単語ベース検索、BERTに代表される文法なども理解して検索結果を出すのが文脈ベース検索です。 BERTについては具体的に後述します。 ネット検索の歴史、誕生からBERT登場まで ネット検索の歴史を、検索サイトの誕生から振り返ってみましょう。最初期のインターネット検索サイトは1994年誕生のYahoo!です。後発のGoogleと同じく、米国で始まりました。 Yahoo!の特徴は、サイトをカテゴリ別に分類し整理した一覧を提供することです。このような提供方法は、ディレクトリ方式といいます。サイトを登録する際には、Yahoo!の掲載基準に基づいた審査が行われました。 Yahoo!への掲載は主に推薦や依頼に基づいて行われるのに対して、ウェブページを自動的に収集して、特徴をデータベース化して検索要求に応えるタイプの検索システムが登場しました。この自動的にウェブページを収集するソフトウエアをロボットと呼ぶことがあり、このような検索システムをロボット方式といいます。ロボット方式の草分けは、1994年誕生のInfoseekという検索サイトです。 一方、1995年誕生のAltaVistaという検索サービスは、世界で最初の日本語を含む多言語検索能力を持つ検索サイトでした。すべてのHTMLページのあらゆる単語を高速に検索できるように索引を付けて格納し、ウェブページの全文検索が可能でした。その他、ExciteやLycos、フレッシュアイ、gooなどの検索サービスも出てきました。 Googleは、1996年1月にスタンフォード大学の在学生2人が原型を開発しました。特徴は、ウェブページの価値をバックリンク(そのページに向かってどれくらい外からリンクがあるか)によって評価する方法を提案するものでした。その後しばらくは、適切な収入源が見つからないなどあって普及が進みませんでしたが、2000年10月「アドワーズ」という、索結果連動型広告の手法を応用したサービスを開始。これがGoogleの当初からの特長である検索結果の精度の高さが相乗効果を生み、業績が急拡大していきました。 東邦大学 「インターネット検索について」 近年話題の生成を活用した検索の実力は 検索技術は発展をし続け、現在は生成AIを活用したものが話題です。検索という行為が手軽になって久しく、気軽に使ってみる人や、無意識に使っている人が少なくありません。 文脈を理解する検索「BERT」とは 前述の通り、Googleが2019年から導入しているAI技術です。それまでのネット検索は単語ベースでしたが、BERTの登場により文脈ベースに変わりました。その特徴を二つの例とともに見ていきましょう。 一つ目は、英語の検索語群として”parking on a hill with no curb”(縁石のない坂道に駐車)を使った場合です。BERT導入前は”curb” (縁石)の直前の否定の形容詞”no”がどの単語にかかるのかを理解できないため、「縁石のあり・なし」に関係なく、「上り坂と下り坂の駐車方法の違い」を説明するページを上位表示させていました。しかしBERT導入後はまず”no”を”curb” にかかる語として認識し、”no curb”(縁石のない)の意味を理解。その結果、「縁石のあり・なし」の違いによる駐車方法の違いを説明したページを上位表示させます。 二つ目の検索語群も英語で、”2019 brazil traveler to usa need a visa”(2019年、アメリカに行くブラジル旅行者はビザが必要)です。BERT導入前は行き先を示す”to”の文法上の意味や前後のつながりを理解できないため、旅行する主体を米国人にしてしまいました。その結果、米国人がブラジルを旅行する際のビザに関する情報ページを上位表示させました。BERT導入後は”to”の前後関係が理解され、ブラジル人を旅行の主体として認識できました。その結果、米国大使館がブラジル人旅行者向けに提供しているビザ情報ページを上位表示させます。 出典:PLAN-B 「Googleが導入したBERTとは?最新の自然言語処理技術”BERT”が与える影響は?」 GPT-3とは 最近、多くの人が競うように活用方法を探索しているのが、GPT-3(ジーピーティースリー)です。2020年7月にOpenAIという研究所が発表した高性能な言語モデルで、同研究所はテスラCEOのイーロン・マスクなどの投資家によって設立されました。OpenAIは、Transformerと呼ばれる深層学習の手法を用いた言語モデルであるGPT(2018年)、GPT-2(2019年)を発表しており、GPT-3はその後継です。2021年10月時点では、マイクロソフトのクラウドサービスAzureからAPI(申請制)を介して利用でき、文章の生成、文章の要約、質問への回答、翻訳などに活用できます。出力される文章は、人間が書いたものと変わりがないと思わせるほど流暢です。 野村総合研究所 「GPT-3」 生成系AIを利用した検索エンジン例 新興の検索エンジン・NeevaAIは2023年1月6日に、生成AIを搭載した検索機能「NeevaAI」ベータ版を発表しまた。NeevaAIが出力する情報は、検索語句に関連する複数のウェブページの内容を要約し、単一の回答を表示します。AIが回答生成に利用した情報源はその回答枠の下部に参照元としてリンクを記載しているので、検索利用者は回答と参照元の両方を確認して信頼性の判断もすることができます。 例えば、英語で「PlayStation 5の入手が困難なのはなぜ?」という質問をすると、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)や半導体不足の影響を理由として挙げました。また「PS5の需要は大きいため生産がスムーズに行われるようになっても入手は難しいかもしれない」とも説明されました。従来の検索である「単語ベースにせよ文脈ベースにせよ検索語の類似度が高い結果を出す」を超えた検索の登場を感じさせます。 SEMリサーチ 「検索エンジンNeeva、ジェネレーティブAIを活用した「NeevaAI」ベータ版を公開」 言葉を超えた意識やニーズの掘り起こしをAIが手伝える可能性 以上、類似文書検索技術を超えた、最近の検索の在り方を見てきました。あと少し、今後の検索技術やそれにとどまらないAI技術の可能性について触れます。 「顕在意識」と「潜在意識」の違い 意識は顕在意識と潜在意識に大別することができます。その位置付けは「海に浮かんだ氷山」に例えられることが多く、水面から突き出ている部分が顕在意識で、水面下に隠れている部分が潜在意識です。 そして潜在意識は意識全体の約9割を占めていると言われており、自分では自覚も制御もできないとも言われています。一方、顕在意識は、自分で考えて、行動するときに働いている意識です。善悪を判断したり、不安になったり悩んだりするのも顕在意識の働きです。 もしAIが検索で潜在意識の中から最適な答えを見つけられたり、そのときに最適な潜在意識の一部を働かせるように促せたりしたら、より良いアイデアを早く生み出せるようになるかもしれません。そのためには、既存の技術で言えば単語ベース検索ではなく、文脈ベース検索が基になるかもしれません。検索語に関連はあるが検索した人がすぐには思い浮かばなかった情報を提示してくれることが考えられるからです。 ハフポスト 「顕在意識と潜在意識」 セレンディピティーで生まれた商品・サービスの例 セレンディピティーとは、予想していなかったものが発見できたり、ひらめきによって新たなアイデアが浮かんだりするなどして起こることで、「思いもしなかった偶然がもたらす幸運およびその才能」を指します。ニュートンが万有引力の法則を発見した逸話はこのセレンディピティーの例として挙げられます。木から落ちるリンゴという偶然の具体的な事象を見て、物理学の法則という抽象的な概念に気づいたということです。 セレンディピティーで説明される商品開発の例もあります。化学メーカーである3M社では、強力な接着剤の開発が思うように進まず、粘着力が弱い接着剤が出来上がりました。この接着剤を見た同社の研究員が、本から落ちないしおりが作れるのではないかと考え、付箋紙が誕生するきっかけとなりました。 ラップフィルムは、第二次世界大戦中に米軍兵士が水虫を防ぐために、ブーツの中敷きとして使われていました。戦後、野菜をラップフィルムに包むと保存するのに便利であることが見つけられ、食品の保存用に販売したところ大ヒットしました。 こうしたセレンディピティーは、潜在意識が顕在意識に変わったとも、現実の出来事が潜在意識を刺激して新しい行動を促し、新しいアイデアが見つかったとも捉えられそうです。しかし起こせる確率はかなり低いのは、誰もが実感があるでしょう。セレンディピティーを起こすのをAIが支援してくれるようになったら、アイデア創出、ひいてはイノベーション創出がもっと早くできるようになるかもしれません。 Welfeeldo 「セレンディピティはビジネスにも応用できる!新たな発見につなげよう」 ソリューションデザイナが「言葉にならない支援」ができる BERTなどの文脈ベースの検索モデルやGPT-3のような生成モデルが進化すれば、人間では気づかないような、例えば商品・サービスの新しい見込み客が検索できるようになるかもしれません。それらは現時点では実現していませんが、Laboro.AIでは独自のAIコンサルタントである「ソリューションデザイナ」がお客様の潜在意識を引き出し、セレンディピティーを起こすためのご支援を通して、AI技術の活用による新しいビジネスの創造に伴走させていただいています。 当社のソリューションデザイン、ソリューションデザイナについてはこちらもご覧ください。 ソリューションデザイン、ソリューションデザイナについて 当社のカスタムAIについてはこちらもご覧ください。 カスタムAIについて The post AIは革新的アイデアを提案できるか。「ググる」を超える検索の可能性 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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私たちが画像生成AIで描くものは、アートか、それとも心か 2023.1.7 監 修 株式会社Laboro.AI マーケティング・ディレクター 和田 崇 概 要 2022年は、文字から絵を描き出す画像生成AIが人々の手の届くものとなり、爆発的に躍進した一年となりました。ユーザーが入力したテキストをもとに画像を返すこのプログラムは、印象派のようなアートから魅惑的なポルノまで様々なイメージを生み出し、その完成度はますます高まっています。もはや漫画でさえ、ストーリーがあれば画像生成AIでつくれるようになりつつあります。 AIとアートの未来についてさまざまな議論がなされていますが、ひとつ確かなことは、AIによって絵を描き始めた生活者によって、生活者に開かれたアートの時代がやってきたということです。多くの人にとって見ることを楽しむものだった絵による表現の領域で、画像生成AIによって自分の心の情景を絵に変える楽しみが、生活者の間に広まっています。 目 次 ・ 心に描くことができれば、絵は描ける  ・ 「自転車をこぐダース・ベイダー」を描くAI  ・ ノートの切れ端でも、画像生成AIでも ・ 表現をめぐるSNSの攻勢が反転する  ・ 一人よりも、みんなで  ・ 見る側からつくる側へシフトする ・ 描き、つくり続けるために  ・ 既に存在するもので再構築する  ・ 表現はコミュニケーション ・ 画像生成AIによって、AIが生活者のものになる  ・ 言えない気持ちをAIに託す 心に描くことができれば、絵は描ける 「自転車をこぐダース・ベイダー」を描くAI DALL•E2、MidJourney、Stable Diffusionなど、AI業界の2022年は画像生成AIの躍進が話題をさらたった一年でした。文字入力から絵を描くこれらの画像生成AIは、「宇宙服を着たシバ犬」「傷ついた気持ち」といった抽象的な概念を絵としてアウトプットするものです。あらかじめ数十種のスタイル(例えば、アニメ風、鉛筆デッサン、ストリートアート、油彩、VFX、ピクセル画といったようなテイスト)から選んでAIが画像を生成するサービスも次々と登場し、つくられる画像の幅は広がっています。 完全に表現できているとは言えないまでも、その可能性は多くの人に感じられるところで、昨年ついに一般にリリースされたある画像生成AIでは1日に400万のイメージがつくられていると 報告されています 。 photo by Kevin Hodgson では、人々が画像生成AIを用いて何から描き始めたかというと、「自転車をこぐダース・ベイダー」「真珠の耳飾りの少女をラッコで」「国民的アニメキャラのバロック美術風肖像画」など、有名な作家やスタイル、人気のキャラクターなどで生成を楽しんでいるように見られます。こうしてつくりだされる現段階のAIの絵の多くはまだ、クリエイターのファンが描いたファンアートを思わせるものの域にあります。 考えてみれば当たり前のことですが、AIを使えば絵が描けるとは言え、何を描くのかが先になくてはAI であっても絵を描くことはできません。画像生成AIがこれだけ注目を浴びるのは、「描く」という行為が身近でない人々が多かったことの現れなのかもしれませんが、日常の中でふと “ 心に描く ” 忘れられない情景は、どんな人にもあるものです。 ノートの切れ端でも、画像生成AIでも 終戦から29年目の5月某日、広島のNHK中国本部に小林岩吉さんという一人の被爆者が、自分が描いた広島の原爆の絵を 持ち込みました 。小林さんは応対したディレクターを前にし、「まぶたに焼き付いて離れん」「死ぬまでに描き残そうと思うた」と話した そうです 。 この絵をきっかけに、市民の描く原爆の絵をテーマにしたNHK番組が放送され、広島の人々に向けて「原爆の絵」を募集するキャンペーンが行われました。2002年に行われた第2回目の募集と合わせて、現在、広島平和記念資料館には4,000点を超える「原爆の絵」が保管されている そうです 。 市民による原爆の絵は、最初の一枚が小林さんの持ち込んだ黒いサインペンで描かれた素朴な絵であったこともあって、それをみた被爆者の「私もやってみよう」と思う心を動かすことになりました。さらに市民の背中をもうひと押ししたのが、キャンペーンで投げかけられていた次のような言葉でした。 “ 紙は何でもいいんです。ノートの切れ端でも、広告の裏でもいい。うまく絵に描けなかったら、絵でなくてもいい。絵の中に、言葉で、文字で説明してみて ください ” photo by Damien Pollet 専門的な美術の知識も道具も使わずに描かれた市民の絵には、彼らの心に浮かぶ情景が、文字と絵を使ってありありと描かれています。まず描きたいものを言葉で表現するという行為もまた、絵を描くことの一部に間違いありません。画像生成AIは、今を生きる人に限らず、残された手記からも絵を描くことを可能にするはずです。 表現をめぐるSNSの攻勢が反転する 一人よりも、みんなで 「心から離れないこの情景を表現したい」という人の思いさえあれば、チラシの裏にボールペンで絵や文字を使って描くことも、 AI を用いて絵をつくることも違いはありません。ただそれを一人でやるのとみんなでやるのとでは、心理的なハードルは大きく変わってくるものです。 喜びであれ、悲しみであれ、何かを伝えたいと思う人の心は制限できるものではありませんが、SNSが普及してからクリエイターが最も恐れてきたのは「市民レベル」の検閲だ そうです 。 photo by fdecomite 過去にはクリエイターが権威やスポンサーよりもSNSのコメントによって厳しく批判され、活動を続けていくために創作を自主規制するという本末転倒の事態に追い込まれることもありました。しかし今、SNSでは、画像生成 AI が様々なハッシュタグに使われ、「画像生成AIで娘のために絵本を描いてみた」「スティーブン・キングのホラー小説に挿絵をつけてみた」など一般の人々が自らSNSで続々と発信し始めています。 つまり、表現する側の立場としてSNSコミュニティで発信する人が急速に増えているということは、人の作品にコメントするだけだった検閲者のような人が少数派となり、大多数の表現者によってクリエイターの存在が脅かされる逆転社会がやってくることも想像されます。 見る側からつくる側へシフトする 実際、絵の分野においては、画像生成AI以前にお絵かきアプリやCGイラストなど、さまざまなデジタルツールで絵を描く楽しさが膨らみ、若い世代を中心に見る側からつくる側へと人々がシフトしたことがありました。 2021年に日本発で世界におけるダウンロード数第1位のアプリに輝いたのも、お絵描きアプリ でした 。この ibisPaint (アイビスペイント)は、誰でも指一本でプロ顔負けのイラストがつくれるアプリで、SNS機能がついているため、できあがった絵をシェアし、世界中のユーザーからの反応を楽しむことができます。 そして、画像生成 AI に入力する「何を描くか」の指示の言葉が“呪文”やプロンプトなどと呼ばれ、1.99 ドルで売買されるまでになっている 今 。若い世代を中心にさらに画像生成AIが受け入れられ、活用され、たくさんの生活者が絵をつくることを楽しむようになる今後、何が起こるのでしょうか。 photo by Susan Murtaugh 描き、つくり続けるために 既に存在するもので再構築する 画像生成AIは、インターネットから収集した膨大な量の「テキスト – 画像」のペアを用いて学習させているため、AI がつくる絵には世界に既に存在するものが使われていることになります。単純に投入されるデータで考えれば、次世代のAIモデルは人間の脳と同じ約100兆個のパラメータ数に達すると推測されており、近いうちにAIが人と同じようなベースで作品をつくりだすようになると言えなくも ありません 。 ですが、子どもの頃からダウンロードやコピー&ペーストに慣れたデジタルネイティブは、どこかAIのように完全なオリジナルに固執せず、パーツを組み合わせて再構築することで何かを生み出そうとし、それを自然と受け入れているようにも見えます。 photo by Cambodia4kids.org Beth Kanter 2021年に41歳という若さで逝去したファッションブランド、オフホワイトの創設者であり、ルイ・ヴィトンのアートディレクターを務めたヴァージル・アブローは、時代を先駆けて次のような「チート・コード」を提示し、成功を収めました。 “ 既存のコンセプトに 3% の手を加えるだけで、革新的とみなされる文化的貢献ができます ” “ DJ が曲を少し編集するだけで革新的な曲になり、デザイナーはハンドバッグに穴を開けるだけで、自分の足跡を残すことができる のです ” 表現はコミュニケーション 既存のものから3%異なる面白いアイデアなら、自分にもできそうな気がしてしまいますが、実際のところアイデアは作品においてどれほどの重要性があるのでしょうか。 1960年代に保守的な美術に対抗するものとして現れた、技術よりもアイデアをより重視するコンセプチュアルアートという分野があります。コンセプチュアルな視点で1960年代後半から光と知覚をテーマに制作を続けてきた現代アーティスト、ジェームズ・タレルの言葉を借りれば、アートは次のような性質を持っているものです。 “ Art is a completed pass. You don’t just throw it out into the world – someone has to catch it.(アートは一方通行ではない。世に出すだけではなくて、誰かがそれを受け止めなければならない) ” photo by Andreas Schalk こうした考え方に倣えば、AIに何を描かせるのかを発想するだけでなく、人の反応を楽しむことにも意義が見出されます。プロアマ問わずすべての表現者を許容し、すべての人を参加者と呼んで成長してきた コミックマーケット もそうですが、表現することへの寛容性が、「私も描いてみよう」という人々の意思の源泉になるはずなのです。 画像生成AIによって、AIが生活者のものになる 言えない気持ちをAIに託す 歴史を振り返れば、印刷技術によって複製が可能になったとき、そしてカメラや写真が普及したとき、これらテクノロジーの登場によって人が絵を描くことをやめることはありませんでした。むしろ、それらを用いた新しいアートの概念が生み出されてきました。 もとより私たち自身が、“イメージ製造機”であるとも言えます。神経科学からロボット工学に及ぶ最先端の研究でわかっていることとして言えるのは、私たち人間は感覚器から入ってきた情報をイメージに変えて記憶しており、脳内に蓄積されている情報の多くは、有り余るほどのイメージによって成り立っているということ です 。 photo by Susanne Nilsson 空に浮かぶ「雲」も、世界に存在する「人間」も、一つとして同じではないはずなのに同じ言葉で表現でてしまうがため、言葉にするとパターン化されて陳腐になってしまうことも少なく ありません 。ですが、うまく言葉にならない感情、例えば「悲しい気持ち」の一言を入れるといくつかの絵で応えてくれる画像生成AIは、殺風景な言葉に埋め尽くされた日常に、少し豊かな感情の行き場をつくるものになるようにも思えます。 芸術という枠にとらわれず、絵画やイラストを生成したり試作したりする人の数を劇的に拡大させることが、実は画像生成 AI が私たちにもたらす最も革命的な変化と言えるかも しれません 。 photo by Dick Thomas Johnson 私たち人間が自身にインプットする情報の2割は聴覚から、そして8割は視覚から得ていると言われており、その情報量は600倍にもなるという試算があります。裏を返せばアウトプット側も同様、私たちにとっての写真や絵画などのイメージは、言葉では言い表せない感覚的で、直感的な意味や概念、感情までをも含めた豊かな表現を可能にするものだということです。 AI はこれまで、生活者にとって実感のないような場で使われることが多かった技術かもしれませんが、画像生成AIという新たなテクノロジーが登場し、AIで絵を描く活動が浸透を見せ始めたことによって、生活者の一人一人にとっての表現の可能性が大きく広がりつつあります。 「芸術」という厳格な枠で眺めてしまうと、確かにAIによって生み出されたこれらの画像たちの中には邪道なもののあるかもしれません。ですが、メールにしても、SNSにしても、自分の考えや感情を文字や文章でしか伝えられなかったこれまでを思うと、私たちの「表現」の一つとして、絵的に心の情景を伝え、受け取る可能性をAIが与えてくれるのであれば、私たちのコミュニケーションのあり方は、より一歩豊かなものになるような気がするのです。 私たちは今、画像生成 AI によって、絵を描く行為を進歩させるだけでなく、 人間同士の以心伝心を新たにする AI 時代の節目に立ち会っているのです。 The post 私たちが画像生成AIで描くものは、アートか、それとも心か first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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