PM × 生成AI ― 日々の業務における生成AIの利活用
開発領域を超え、PM業務にも生成AIをどう組み込むか。NTTデータの加藤 健太郎氏は、Codexを用いて自分の業務すべてを「一つのフォルダ」で管理し、AIと協働する仕組みを実現している。デイリーノート、プロジェクト、タスクのフォルダ構成と、AGENTS.md・スキル・README整備の3つの工夫が、PMの棚卸し・進捗把握・資料作成・実装確認をどう変えるのか。AIと人間のギャップを埋める発想を共有する。開発領域を超え、PM業務にも生成AIをどう組み込むか。NTTデータの加藤 健太郎氏は、Codexを用いて自分の業務すべてを「一つのフォルダ」で管理し、AIと協働する仕組みを実現している。デイリーノート、プロジェクト、タスクのフォルダ構成と、AGENTS.md・スキル・README整備の3つの工夫が、PMの棚卸し・進捗把握・資料作成・実装確認をどう変えるのか。AIと人間のギャップを埋める発想を共有する。
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株式会社NTTデータ
ソリューション事業本部 デジタルサクセスソリューション事業部
主任
加藤 健太郎(かとう けんたろう)氏
同じツールを使っても、使い方は人それぞれ
NTTデータは国内最大手のシステムインテグレーターで、官公庁・金融・産業など幅広い領域でシステム開発を手掛ける。加藤 健太郎氏は2025年にNTTデータへ経験者採用で中途入社した。AIエージェントのプロダクト開発や、社内バックオフィス業務に生成AIを組み込む改善プロジェクトに携わってきた。アプリケーションエンジニアからキャリアを始め、ここ数年はPMとエンジニア両方の役割を担うことが多いという。
加藤氏:「私のチーム内でも、同じツールを使っているんですけど、全然使い方が異なるといったケースがよくあります」
Claude Code、Codex、ChatGPTなどの生成AIツールは、できることの幅が広く、使い方も人によって大きく異なる。だからこそ加藤氏は、本セッションをあくまで「PMの業務に軸を置いた一つの活用例」と位置づけた。そのうえで、自社や自身の業務に置き換えられる部分を持ち帰ってほしいと語る。加えて、加藤氏が強調したのは、AIに任せるだけではなく、AIと人間の認識や判断のギャップを意図的に埋めていく工夫こそが、生成AI活用を前に進めるうえで重要だという点だった。
一つのフォルダで全業務を回す
加藤氏が紹介したのは、PM個人の業務パフォーマンスを上げ、負担を軽くするための個人運用の仕組みである。担当しているのは小~中規模の開発だが、考え方自体は大規模プロジェクトにも応用が効く。
仕組みを一言で言えば「一つのフォルダで自分のすべての業務を管理して、その中でAIと協働していく」ことだ。この仕組みでできることは多岐にわたる。
- 今日やるべきタスクを教えてくれる、個人用のタスク棚卸しサポート
- 複数プロジェクトの進捗状況や見通しを横断的に質問できる
- 定例会議の資料を、最新の作業状況を踏まえて事前に作り込んでくれる
- 実装上の小さな確認(この値はいつ設定されるのか、どんなときにエラーが出るのか)にも回答できる
- 設計方針の壁打ちや要件の抜け漏れ・矛盾チェックを進めてくれる
- 過去の障害事例から現在の対応方法を探したり、資料素材を作ったりもできる
抜け漏れなく複数プロジェクトを把握できる点は、PMにとってありがたいと加藤氏は言う。


では、実際にどのような形で業務情報を整理しているのか。加藤氏が紹介した仕組みは、特別なツールを複雑に組み合わせるものではない。日々のメモ、案件ごとの資料、横断的なタスクを一つのフォルダに集約し、AIが参照しやすい状態にしておくことが基本になる。情報の置き場をあらかじめ決めておくことで、AIに「今日やるべきこと」や「各案件の状況」を聞いたときに、必要な情報を横断的に拾えるようにしている。
デイリーノート・プロジェクト・タスクで構成する
仕組み自体はシンプルだ。デスクトップやドキュメント配下に1つのフォルダを作り、その中に「デイリーノート」「プロジェクト」「タスク」という3つの主要なサブフォルダを配置する。
デイリーノートは、日付ごとのフォルダにメモや作業内容、タスクの棚卸しを書き留めていく場所だ。日々の記録を起点に、AIにプロジェクトやタスクへ情報を転記させることで、業務内容を整理していく。
プロジェクトフォルダには、各案件に関するドキュメント、ソースコード、議事録などを案件ごとに格納する。タスクフォルダは、複数のプロジェクトにまたがる作業を横断的に棚卸しし、一元管理するための場所として使う。
VS Code上で見ると、デイリーノートには日付ごとのフォルダが並び、プロジェクトには「オーバーラボ公開デモ準備」「青雲商事受け入れ準備」といったダミー案件ごとに、リサーチ資料、スライド、決定事項などが整理されているイメージだ。
この状態でAIに「このフォルダで重要なタスクは何か」と聞けば、期限や状態、概況を整理して返してくれる。「各案件の状況を教えて」と問えば、複数のフォルダを横断して必要な情報を拾い上げ、案件ごとの進捗をまとめてくれる。表示形式も、使う人の好みに合わせてカスタマイズできる。
AGENTS.md・スキル・READMEの3つの工夫
このフォルダ運用をAIと協働しやすい仕組みにするため、加藤氏は主に3つの工夫を取り入れている。
1つ目は、AGENTS.mdの整備である。Claude Codeの場合はCLAUDE.mdにあたるもので、AIが処理を始める際に最初に読み込む情報だ。ここには、そのフォルダが何のための場所なのか、全体がどのような構成になっているのか、作業時に守ってほしい手順や禁止事項などを書いておく。AIはこの内容を前提に動くため、人が毎回細かく説明しなくても、フォルダの意図を踏まえた対応がしやすくなる。
2つ目は、スキルの活用だ。スキルは、AIに依頼する指示をマニュアルのようにまとめたもので、毎日・毎週のように繰り返し発生する作業を効率化するためのショートカットとして使う。実体はマークダウンで記述されており、長いプロンプトを毎回書かなくても、定型的な処理を呼び出せるようになる。例えば「addNewDailyNote」のようなコマンドを用意しておけば、本来は細かな指示が必要なデイリーノート作成も、簡単に実行できる。加藤氏によれば、こうしたスキル自体もAIに作らせながら整備しているという。
3つ目は、READMEとインデックスの整備である。各主要フォルダに、そのフォルダの説明や中にあるファイルの概要をまとめておくことで、AIがフォルダの中身を理解しやすくなる。毎回「このフォルダには何が入っているのか」を説明しなくても、AIが自分で構成を把握し、必要な情報を探しにいけるようにするためだ。地味な準備に見えるが、回答精度や処理のパフォーマンスを底上げするうえで、重要な工夫だと加藤氏は説明した。

AIと人間にはギャップがある
一方で、この仕組みをうまく機能させるには、一定の下準備が必要になる。その背景にあるのが、AIと人間のあいだに存在するギャップだ。加藤氏は、このギャップを大きく3つに整理する。
1つ目は、AIにとって扱いやすい情報と、人間にとって扱いやすい情報が必ずしも一致しないことだ。例えば、ExcelやPowerPointは人間にとっては見やすく、共有しやすい形式だが、AIにとっては内容を正確に読み取りづらい場合がある。
2つ目は、AIがアクセスできる情報の範囲が、人間から見ると限られていることだ。TeamsやSlack、メール、Zoom会議で交わされた内容は、日々の業務では重要な情報源になる。しかし、そのままではAIが参照できないため、必要な情報をAIが扱える場所に集約しておく必要がある。
3つ目は、AIが知っていることの範囲が、人間が業務の中で把握している情報よりも狭いことだ。社内用語や組織内の関係性、上司との距離感といった文脈は、AIがあらかじめ理解しているわけではない。
例えば、AIに上司向けのメール文面を作らせたときに、同僚に送るようなカジュアルなトーンになってしまうことがある。これは、相手との関係性や社内で求められる表現の温度感を、AIが十分に把握できていないために起こるギャップだ。
歩み寄りは双方向で考える
では、AIと人間のあいだにあるギャップをどのように埋めればよいのか。加藤氏は、そのアプローチを大きく2つに分けて説明した。
一つは、人間がAIに歩み寄る方法だ。例えば、AIが読み取りやすいように情報をマークダウンで整える、READMEやAGENTS.mdを用意してフォルダの構成や使い方を説明する、発生したタスクをその都度ファイルに書き込む習慣をつくる、といった工夫がある。人間側が情報の置き方を少し変えることで、AIは業務の文脈を理解しやすくなる。
もう一つは、AIに人間側へ歩み寄ってもらう方法だ。OfficeファイルをPDFや画像に変換して読み込ませやすくしたり、MCP(外部のデータやツールにLLMを接続する仕組み)やAPIを使って、チャット、メール、会議情報、ファイルサーバーなど、人間が普段使っているツールへAIがアクセスできるようにしたりする。
加藤氏は、AIサービスを使う際には「そのサービスがどのギャップを埋めようとしているのか」を意識することが重要だと話す。
「そのサービスを使うときに、どういった課題をこれは解決しようとしているんだという視点を持つと、有効活用のレベルも全然変わってきます」
新しいAIプロダクトの多くは、こうしたAIと人間のギャップを埋める役割を担っている。単に便利そうだから導入するのではなく、どのギャップを解消するためのものなのかを見極めることで、使いこなしの質は大きく変わってくる。

AIとの協働を自然な形にする
最後に加藤氏は、AI活用を進めるうえで重要なのは、AIと人間のあいだにあるギャップを意識し、それを埋める工夫を続けることだと語った。情報の置き方を整えたり、AIが参照できる範囲を広げたりすることで、AIとの協働は少しずつ自然なものになっていく。
そうした工夫を重ねるほど、AIに何を任せられるのか、どのように依頼すればよいのかといった手触りや勘所も養われていく。その積み重ねは、個人の生産性向上にとどまらず、組織にとってのノウハウとしても蓄積されていくはずだ。
「PMの事例、タスク管理から、何か小さく始められるところもあると思います。AI活用の足がかりにしていただけたら嬉しいです」
PMのタスク管理という身近な業務を起点に、AIと人間が互いに歩み寄るための実践を重ねていく。加藤氏の取り組みは、生成AIを特別なものではなく、日々の業務に自然に溶け込ませていくためのヒントを示していた。
Q&Aセッション
Q. 実装仕様を問い合わせたら教えてくれるとのことだが、RAGのコンテキストとして与えていると考えてよいか。ベクトルDBに登録しているのか。
加藤氏:RAGのコンテキストという観点では間違っていません。ただ、ベクトルDBやコサイン類似度を使った検索はしていなくて、フォルダに情報を置き、AGENTS.mdやREADMEで管理しているだけのシンプルな実装です。それでも、よほど大きいものでなければ十分情報は取れます。大きなソースコードを見る必要があるならSerenaのようなMCPを併用すると、ベクトルDBを用意しなくても精度よく回答が得られます。小さく始めるなら、まずはこの形で十分です。
Q. Codexを選定している理由は。Claude Codeとの比較観点があれば教えてほしい。
加藤氏:社内で使えるのが今Codexだから、というのが一番の理由です。プライベートではClaude Codeも使っています。細かい差異はありますが、今回紹介したような使い方であれば、どちらでも同じことができる感覚です。
Q. AIを使うシーンが増えるなか、人間が必ずレビューする領域をどう線引きしているか。
加藤氏:お客様に見せる資料や、その内容のレベルのものは絶対に見ます。セキュリティ的にクリティカルな箇所、個人情報の扱いに関する実装は、自分で確認するようにしています。
Q. コンテキスト収集や管理が重要だと感じている。効率的な方法はあるか。
加藤氏:基本的には「無いよりやる方がいい」と思っています。入れないとプロジェクトのコンテキストを共有できないので、まずは入れる。そのうえでインデックスやREADMEの整備をAIに任せて、効率的に探索できるようにしておきます。雑に入れても整えてくれる仕組みを拡張機能やスキルとして用意しておくのも有効です。
Q. AIが正しく動くための前提情報は、どう洗い出して整理したのか。運用してみて意外と必要だった前提情報は。
加藤氏:小さく始めて育てた感覚で、最初から洗い出した訳ではありません。試行錯誤しながら必要なものを足してきました。意外と必要だったのは、ステークホルダーやスケジュールの情報です。チャットで流れてしまっているけれど重要な情報は、ストックされたドキュメントには残りにくいので、意識的に書き出して入れるようにしています。
Q. このAI時代に人間はどのような知識を身に付けるべきでしょうか。コミュニケーション能力の向上に今後は時間を割くべきでしょうか。
加藤氏:個人的には、そうしたコミュニケーション能力も重要と思いつつ、理解する能力も必要だなと考えています。やはり自分が理解できないことはAIが生成したとしてもレビューもできず、責任も持てないので。
※所属組織および取材内容は2026年5月時点の情報です
株式会社NTTデータ
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