無理せず続ける、女性リーダーと多様なチームの話
9月24日開催のウェビナー「TECH PLAY Career Conference #3 Women in Tech ~ アップデートしつづける"わたし式"のエンジニアリング」に登壇したのは野村證券株式会社の小祝久美子氏。肩肘張らずに自分らしく、ライフイベントを楽しみながらチャンスをつかんでキャリアを構築してきた小祝氏。管理職までの道のりを語った。9月24日開催のウェビナー「TECH PLAY Career Conference #3 Women in Tech ~ アップデートしつづける"わたし式"のエンジニアリング」に登壇したのは野村證券株式会社の小祝久美子氏。肩肘張らずに自分らしく、ライフイベントを楽しみながらチャンスをつかんでキャリアを構築してきた小祝氏。管理職までの道のりを語った。
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事業会社→コンサル→事業会社。小祝氏が歩んできたキャリア
野村證券株式会社
コーポレートIT部
Executive Director
小祝 久美子(こいわい・くみこ)氏
小祝氏は2000年に新卒でメガバンクに入社。法学部出身ながら、アプリケーションエンジニアとしてキャリアをスタートさせた。この当時、メガバンクではかなりの数のエンジニアを募集していた。そのため、新卒でIT部門にエンジニアとして採用された半数が文系出身者だったという。
野村證券のIT組織では「アプリケーションエンジニアとして、トレーダーが使うFXやデリバティブのシステム開発に従事しました」と小祝氏。この当時のエピソードとして紹介してくれたのが、初めてメガバンクでLinuxを採用し、その上で動くシステムのスクラッチ開発に携わったこと。「印象深い思い出です」と小祝氏は話す。
1990年代後半から2000年代初頭は、メガバンク同士の合併が相次いだ。2004年に小祝氏が所属するメガバンクも合併することになった。合併後の会社では、開発をシステムIT子会社に任せることになったそう。ITの楽しさを知り、プログラミングを頑張っていた小祝氏は、上司に相談。すると上司は「エンジニアとしてキャリアを積みたいと思うのなら、外に出るのも良いかもしれない」と回答。その言葉に背中を押され、2004年、小祝氏はITコンサルティング会社(以下、ITコンサル会社)に転職した。
「メガバンクで培った市場系の知識を持つアプリケーションエンジニアというキャリアが評価されました」(小祝氏)
ITコンサル会社では、マネーマーケット領域のフロントとミドルシステムの構築プロジェクトや、取引所受発注システムの構築および外販プロジェクトのプロジェクトマネージャーを務めたり、市場系金融ビジネス部門の統括を担当したりした。
2012年には野村證券のプロジェクトに参画。資金・債券決済領域を多数経験したという。管理職にもなり、ビジネスアナリストのリードを務めたりした。 2022年に野村證券に入社するまで、18年間をITコンサル会社で過ごした小祝氏。その間にプライベートでは結婚と出産を経験。育休も取得しながら管理職にもなった。
野村證券ではコーポレートIT部に所属。現在は、Japan Legal Compliance IT Leadという役職に就きながら、コアコーポレート・テクノロジー課長としてもチームを統括。「現在は社員25人、協力会社の方も含めるとおよそ100人のチームを統括しています」(小祝氏)

Nomura ITは全世界4000人以上のメンバーがいるグローバルな組織
野村證券のIT組織「Nomura IT」は、「全世界4000人以上の多様な強みを持った社員で構成されている」と小祝氏は説明する。
というのも野村證券ではアメリカ、インド、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)、APAC(アジア太平洋)に拠点を設けている。中でもインドのGlobal Capability Centerでは、1,600人超のIT人員が活動。これらの海外拠点では、女性社員の活躍も目立っているという。例えばインドでは女性比率も高く、「元気な女性が多い」と小祝氏。ヨーロッパやアメリカはドクターを取得するなど、専門性の高いエンジニアリング知識を持った女性が活躍しているという。「各所で女性のリーダーの活躍が目立ってきています」(小祝氏)
現在、東京には10のIT関連部署があり、800人強のメンバーが在籍している。「そのうち、4割が日本国籍ではない」(小祝氏)という多様性に富んだ環境ではあるものの、女性比率は23%。他のグローバル拠点に追いつくよう、小祝氏たちは女性比率を25%に上げ、さらには女性管理職比率も上げていくことを目標に活動している。

小祝氏は新卒から現在まで一貫して、金融×ITのホールセール系およびグローバルマーケッツ系に特化して経験を積んできた。だがこのキャリアのきっかけは、配属されたことで、「自分で選んだものではなかった」と小祝氏は話す。配属先で触れたFXや為替、デリバティブ、債券の分野が非常に面白かったという。「だから学びたいと思いました」(小祝氏)
出産・育児というライフイベントとキャリア構築を両立するために
興味関心を抱いたのはドメイン知識だけではない。「開発することもすごく面白かった。だから続けられた」と言う。しかも周りには尊敬すべき先輩たちがたくさんいる。
「その人たちに追いつき、追い越したいという気持ちで努力しました」(小祝氏)
さらに小祝氏のキャリアにとってはラッキーなことがあった。それは金融×IT分野は女性比率が非常に低いため、女性のロールモデルをつくるべく、常に周りがチャンスをくれようとしていたという。
「今振り返ると、いろんな場所に連れ出してくれたり、いろんな研修を受けさせたりしてくれました」(小祝氏)
もちろんこのような状況に恵まれたのは、小祝氏が経験と信用を積み重ねてきたからだろう。だから「自ら管理職を目指したことはない」小祝氏だったが、「気づいたら管理職に引き上げられていた」と言う。
管理職となり、女性の管理職比率の向上に取り組んでいる小祝氏は、自分のチームの女性メンバーには、積極的に責任のある仕事にアサインするなど、成長するチャンスをたくさん与えるようにしている。早めにマネージャーになり、自分の裁量で仕事ができるようになってほしいと考えている。その背景にあるのは、ライフイベントを楽しみながら、市場価値を保つことの重要性を自ら実践してきたからだ。
小祝氏が結婚や出産などのライフイベントを迎えたのはコンサル会社のとき。コンサルはアサインされないと案件がこない。だが小祝氏は「1人目のときも2人目のときも、育児休暇(育休)は1年間取得。さらに育休から復帰後も2人目が生まれるまでは、週休3日にしてもらいました」と言う。このような強気なオーダーが通ったのは、小祝氏に売りになる専門知識があり、それを買いたいお客さまがいて、それを評価するプロジェクトがあったため。だからこそ、一点の曇りなく子育てにも向き合うことができ、キャリアも途切れず順調に成長できたのだ。
「これから結婚や出産を考えているのであれば、これなら売り物になるというものを持つこと。そういった自信を、若いうちから身につけてほしいと思います」(小祝氏)

女性活躍を推進、多様性を尊重した働き方ができる
野村證券ではどんな働き方ができるのか。「男性の育児参加も盛んなど、多様な働き方ができます」と小祝氏。特にITはグローバルな組織なのでなおさら。彼らは家族を大事にすることを明確に表現しますからね」(小祝氏)
制度というハード面が整っているだけではなく、「ソフト面でも環境が非常に整っています」(小祝氏)
小祝氏のチームには育休から復帰したての女性社員もいれば、育休を取得した男性社員もいる。「出産・育児の制度だけではなく、子の看護などのための休暇も用意されています」(小祝氏)
学校行事への参加や感染症に伴う学級閉鎖への対応もやりやすくなるというわけだ。
その他にも介護休業や介護休暇、社員自身には有給休暇とは別に傷病等休暇やリフレッシュ休暇なども用意されている。だがこれらの制度が整っていても、気持ちよく使えなければ意味がない。野村證券では、誰もが気持ちよくこれらの制度を利用できるような姿勢があるという。心理的安全性が確保されており、社員全員が安心して働ける職場風土が醸成されているのだ。

小祝氏は自身のチームの働き心地についても紹介した。「グローバル環境での顔を合わせない協働は日本企業としては非常に先進的だと思います」と語る。野村證券ではコロナ禍前から、顔を一度も合わせることなくプロジェクトが完遂する体験を繰り返してきた。いずれのプロジェクトも成功裏に終わったのは、各拠点に所属するメンバーのコミュニケーション力が高かったからだと思います」(小祝氏)
他拠点とのコミュニケーションツールも充実しており、Microsoft Teams、Jira(タスク管理ツール)、Confluence(社内wiki)などを使って情報を共有。密なコミュニケーションが実現しているという。「前職、前々職の職場でもグローバルな仕事に携わっていましたが、野村證券はとにかく一体感を持って前に進んでいくという意識が非常に高いんです」と小祝氏は語る。
最後に小祝氏は女性エンジニアに向けて次のようなメッセージを送った。
「今、野村證券では会社を挙げて女性にさらに活躍していただこうという機運が高まっています。これまで話したように、当社は多様なリクエストに応えられる環境があり、これからもその環境を充実させていきます。これから頑張って働き続けて管理職になれたらいいなと思っている方、また管理職なんてと思っている方も、自分らしい働き方をしたいと考えているのであれば、野村證券をご自身が思う存分活躍するフィールドの候補として是非検討してほしいと思います」(小祝氏)
まだまだ日本では、管理職になりたいという女性が少ない。野村證券のIT組織「Nomura IT」も同様だ。だからこそ小祝氏は仲間を増やし、女性活躍の輪を広げていくことに積極的に取り組んでいる。

「会社全体の女性活躍をより成熟させていきたいですね」と小祝氏は意気込みを語り、セッションを締めた。
【Q&Aセッション】
Q&Aセッションでは、小祝氏がイベント参加者から投げかけられた質問に回答した。
Q.具体的に努力をしてきて良かったという業務、取得して良かったという資格はありますか。
小祝氏:開発者として最初に携わったのはFXのシステム。外貨と外貨の直接取引の仕組みを担当しました。テストでは実際に値を入れて正解が出るところで終わらず、その通貨の日々の値動き、金利の影響範囲などまで広げてキャッチアップするように務めたことで、トレーダーと同じ目線で会話できるようになりました。そういうことを続けていたら、いろんなことを教えてもらえるようになったり、新規ビジネスを始めるときに呼んでもらったり、いろんなチャンスをもらえました。エンジニアとしての仕事だけではなく、そのシステムからどんな価値を提供できるのかというところまで突っ込んで考えていくことはすごく大事だと思います。
Q.出産前から準備しておいた方が良いことなどありますか。
小祝氏:子どもが求めていることに、うまく応えられないとモヤモヤして、仕事にも影響してしまいます。まずは自分のお子さんが本当に求めていることにきちんと向き合ってあげること。そしてその余裕をつくるために、自分の仕事を自分自身でコントロールできる環境をつくっておくことが大事だと思います。
文=中村 仁美
※所属組織および取材内容は2025年9月時点の情報です
野村證券株式会社
https://www.nomura.com/jp/index.html
野村證券株式会社の採用情報
https://www.nomura-recruit.jp/
野村證券株式会社の採用情報(IT・デジタルの仕事を知る)
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