外の世界への一歩が教えてくれた私の次のキャリア
9月24日開催のウェビナー「TECH PLAY Career Conference #3 Women in Tech ~ アップデートしつづける"わたし式"のエンジニアリング」において、2人目に登壇したのが、株式会社野村総合研究所の廣兼優里氏。廣兼氏のこれまでのキャリアの中で、3つの転機となったポイントを紹介。新しい道に踏み出すかどうか悩んでいる人に、やりたいことが見つかったら失敗を恐れず飛び込んでみることの大事さを伝えるセッションとなった。9月24日開催のウェビナー「TECH PLAY Career Conference #3 Women in Tech ~ アップデートしつづける"わたし式"のエンジニアリング」において、2人目に登壇したのが、株式会社野村総合研究所の廣兼優里氏。廣兼氏のこれまでのキャリアの中で、3つの転機となったポイントを紹介。新しい道に踏み出すかどうか悩んでいる人に、やりたいことが見つかったら失敗を恐れず飛び込んでみることの大事さを伝えるセッションとなった。
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■世の中の様々なシステムやサービスを作る仕事に携わりたい
株式会社 野村総合研究所
通信プラットフォームビジネス部
廣兼 優里(ひろかね・ゆり)氏
廣兼氏は2016年に新卒で野村総合研究所(以下、NRI)に入社。入社後は主に通信会社やECサイト向けのシステム開発に従事。その後、2021年に通信系の事業会社に転職。この期間に産休・育休を取得したという。2023年にNRIのカムバック制度を利用してNRIに再入社し、現在は通信会社や産業領域のシステム開発や提案に従事している。
「なぜ、一度退職したNRIに戻る決意をしたのか、NRIに戻ってきたからこそ見えたキャリアビジョンについて伝えたい。そしてキャリアに迷われている方の背中を少しでも押すことができれば」とウェビナー参加者に問いかけ、セッションを開始した。
廣兼氏のキャリアの変遷をまとめると次のような図になる。

大学では、情報系の学部で画像認識を研究していた。とはいえ、技術よりもプロジェクト管理に興味を持った廣兼氏。世の中の様々なシステムやサービスを作る仕事に携わりたいと思い、SIerを中心に就職活動をしたという。その中でNRIを選んだ理由は2つ。1つはSIerとしていろいろなサービスの開発を行っていること。もう1つが、多くの人が使うシステムに携われることである。
入社後は通信会社のIDシステムの運用保守やECサイトの店舗管理システムなど、中規模のプロジェクトにアサインされた。「新卒入社後に配属された運用保守チームでは、商用作業のイロハを習得したり、中国に出張して開発を行ったりしました」(廣兼氏)

入社3年目くらいからは、プロジェクトリーダー(PL)やプロジェクトマネージャー(PM)を任される様になった。
ECサイトのプロジェクトでは、機能開発PMとして要件定義からリリースまでのすべての工程に携わることができたという。「エラーが頻発するシステムの担当になったときは、毎晩1時間おきに障害コールで起こされる経験もしました」(廣兼氏)
そんな経験がありながらも、充実した日々を送っていた廣兼氏。ある日大規模プロジェクトへの異動が決まったという。
心機一転、頑張ろうと思った廣兼氏だが、異動した先のプロジェクトはかなり成熟してプロセスが決まっており、プロセス、タスク推進はほとんど開発パートナーに任せるなど、これまでと大きく働き方が異なっていたという。大規模プロジェクトならではの学びがあるはず、と前向きに捉えようとしても、自分でプロジェクトを進めている実感が得られない。モヤモヤとした気持ちが日に日に大きくなっていったのだ。
「モヤモヤし続けるくらいなら、いっそキャリアチェンジをして、昔から考えていた事業会社でサービスに携わることにチャレンジしてもいいのではないかと思いました」(廣兼氏)
上司に相談したところ、「それもいい経験になる」と背中を押してもらい、最初の転職に踏み切ったという。
■通信系事業会社ではPMOに配属。新たなもどかしさが生まれる
転職先は通信系の事業会社。廣兼氏は部門PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)として、キャリアをスタートさせた。PMOではいろいろなプロジェクトのリスクを管理したり、プロセスの標準化の企画・適用したりと、前職とは異なる大小さまざまなミッションを遂行。新たな業務をやり遂げるごとに個人としての達成感は得られたという。その一方で、「新たなもどかしさも感じ始めていた」と明かす。

1つは部門PMOという立場上、あくまでもPMにアドバイスや提案を行う立場なので、自分でプロジェクトを動かせないこと。もう1つは複数のプロジェクトを横断的に見ているので、チームでの一体感・達成感がないことだ。「NRIのときはいつもチーム一丸となってプロジェクトを進めていたので、その違いを強く感じてもどかしさを感じていました」(廣兼氏)
そんなタイミングで妊娠が発覚。ほぼ同時期に組織の体制・方針変更が発表され、部門PMOが担っていた役割は開発メンバーに移管され、PMOはそのメンバーのサポートに徹することになったのだ。「これは私のやりたいことじゃない」とモヤモヤを抱えたまま、廣兼氏は産休・育休に入ったという。
育休中は育児に専念していた廣兼氏。夫も育休を取得したことで少し時間に余裕が生まれ、自身のキャリアを見つめ直すことにしたという。
インプットとして行ったのは、プロジェクトマネジメントの国際資格であるPMPの取得。「体系的に知識を身につけて、体制変更にも耐えられるようにしたいという思いが大きかった」という。いざ勉強すると、開発PM前提で問題が作られていることもあり、PMPが求める知識と自分が行ってきたPMO業務とのギャップを感じてしまい、モヤモヤはさらに深まっていったという。
一方アウトプットとして行ったのは、モヤモヤの整理。「モヤモヤの正体を突き止めるため、自分のやりたいことは何なのか、徹底的に描き出して整理しました」(廣兼氏)
自分のやりたいことを言葉にしているうちに、ようやくやりたいことが見えてきたという。1つは、システムやサービスに携わり、プロジェクト管理やプロセス化を行うこと。もう1つがチームの一員としてプロジェクトの意思決定や開発マネジメントなど、自分の手で動かしてプロジェクトを進めること。そしてこの2つのやりたいことを、所属している会社の状況と照らし合わせて考えてみた。すると前者のことをやろうとすると、部署移動が必要であり、それには会社の制度上最低3年はかかる。後者のことをしようとしても、そもそもPMは開発ベンダーをまとめる役割が中心なので、自分で手を動かす機会は少ない。
そんなとき廣兼氏の頭の中に「NRIに戻れば、やりたいことができるのでは」という思いが浮かび上がってきたのである。そんな矢先にNRIがカムバック採用を行っていることを知り、面接を受けて、NRIに再就職することとなった。
■NRIに再就職、育児と仕事の両立にチャレンジ
再入社とはいえ、廣兼氏には育児と仕事の両立という新しい挑戦が待っていた。両立を可能にするために「心がけていることが2点ある」と廣兼氏は言う。
1点目は基本的に18時以降に業務を行わないこと。どうしても業務を行う必要がある場合は朝早くから仕事を始めたり、キャパオーバーにならないように事前に他メンバーへのタスク移管や早めの計画を意識したりしていると言う。「仕事がどうしても終わらないときは21時~22時まで働く事はあるが、精神衛生上良くないのであまりやらないようにしています」(廣兼氏)
2点目は夫と2人で家事・育児をするという意識を持つことである。「明確にタスク分担はせず、2人で同じ時間を過ごして家事・育児に専念、お互いが気づいたことをするというスタイルで協力し合っています」(廣兼氏)
といっても仕事で忙しく、家事・育児に手が回らず夫に頼り切りになるときもある。そういう場合は、他の日で分担を増やすなど、1週間単位で調整するようにしているという。
現在、NRIでの廣兼氏の業務は、大規模システムの開発プロジェクトのPLとしてプロジェクトを推進しながら、部内の複数プロジェクトを支援するPMOではリーダーを務めている。「このPLとPMOを並行して務めていることが非常に重要」と廣兼氏。
自身がPLというプロジェクトの当事者を務めているからこそ、現場の実態を深く理解した上で、より実効性のあるプロセス改善やリスクの提言、PMのタスクの巻き取りができるからだ。「外の世界に出たからこそ、自分がやりたかったことが実現できた」と廣兼氏は実感を話す。
最後に廣兼氏は自身の経験を通して得た、キャリアを見つめ直すポイントを次のように紹介して、セッションを締めた。
①モヤモヤを言語化すること。そうすることで自分の「やりたいこと」と「やっていること」が一致しているのかを整理でき、次に取るべき行動が見えてくるからだ。「NRIに再入社してからも半年に1度、キャリアの棚卸しをしています」(廣兼氏)
②オープンであること。自身のキャリアプランや感じていることを、信頼できる上司や同僚に話せる関係性を築いていくことが大事だという。廣兼氏の部署では毎月1回、1on1が実施されている。「そこでは積極的にキャリアプランについて話すようにしています」(廣兼氏)
③飛び込む勇気。やりたいことが見つかったら、失敗を恐れず飛び込んでみること。そのためにはスキルアップを怠らないことも大事だと言う。

【Q&Aセッション】
Q&Aセッションでは、廣兼氏がイベント参加者から投げかけられた質問に回答した。
Q.ワークライフバランス、業務棚卸し、分担の考え方がうまいと思いました。仕事は会社や周囲から評価されますが、家事タスクの時間や労力の評価はされていますか。
廣兼氏:お互いを評価することをしていません。夫は料理好きなので、料理と皿洗いなど台所周りのタスクを担当してくれており、常に感謝の言葉を伝えるようにしています。
もしタスクが偏ったり、不満があったりするときは、お互い、その気持ちを伝えるようにしています。
Q.出産前から準備しておいた方が良いことはありますか。
廣兼氏:育児を重視するのか、仕事を重視するのかなど、出産後にどういう働き方をしたいのかを考えることです。そしてどういう業務にアサインしてほしいかとか、上司に交渉しておくことも大事になると思いました。
プライベートでは、夫と育児への参加のテンションを合わせること。また、周りに育児をしている先輩がいらっしゃれば、相談できる関係性を築いておくことだと思います。
文=中村 仁美
※所属組織および取材内容は2025年9月時点の情報です。
株式会社野村総合研究所
https://www.nri.com/jp/
株式会社野村総合研究所の採用情報
https://career.nri.co.jp/
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