【#TUC Growth Summit 2025】学び続ける者だけが、未来を変える。 ——その一歩が、あなたの人生を動かす
学ぶことが嫌いなわけじゃないのに、ふと手が止まってしまう――。 社会や技術が目まぐるしく変化し、キャリアの“正解”が見えにくい現代。学びをいかに実務や未来へ紡いでいくかは、多くのビジネスパーソンが向き合っている課題なのではないだろうか。 本記事では、異なる領域で自らを更新し続けてきた3名の登壇者が、「学びを自分のものにするための指針」を語ったイベント「学び続ける者だけが、未来を変える。 ——その一歩が、あなたの人生を動かす #TUC Growth Summit 2025」をレポートする。データが示す「学習恐慌」という不都合な真実を起点に、他者の熱量を借りる「炭火型」の学び、新技術を現場の力に変える「具体から入る」実践、そして人生の主導権を取り戻すための「OSの書き換え」など、一歩を踏み出すための具体的なプロセスと哲学を紐解いていく。学ぶことが嫌いなわけじゃないのに、ふと手が止まってしまう――。 社会や技術が目まぐるしく変化し、キャリアの“正解”が見えにくい現代。学びをいかに実務や未来へ紡いでいくかは、多くのビジネスパーソンが向き合っている課題なのではないだろうか。
本記事では、異なる領域で自らを更新し続けてきた3名の登壇者が、「学びを自分のものにするための指針」を語ったイベント「学び続ける者だけが、未来を変える。 ——その一歩が、あなたの人生を動かす #TUC Growth Summit 2025」をレポートする。データが示す「学習恐慌」という不都合な真実を起点に、他者の熱量を借りる「炭火型」の学び、新技術を現場の力に変える「具体から入る」実践、そして人生の主導権を取り戻すための「OSの書き換え」など、一歩を踏み出すための具体的なプロセスと哲学を紐解いていく。
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「学びの火」はどう燃やすのか データで見るAI時代のリスキリング
演者プロフィール
株式会社パーソル総合研究所
主席研究員
執行役員
シンクタンク本部長
小林 祐児(こばやし・ゆうじ)氏
2022年以降、学びはなぜ減ったのか
最初に登壇したのは、株式会社パーソル総合研究所で組織マネジメントや学習行動を研究してきた小林氏。同氏は、近年の「学習恐慌」の実態と、そこから抜け出すための戦略を語った。
日本企業が人材育成を重視し始めたのは2022年からだという。政府がリスキリングを掲げ、大規模なイベントが開催されるなど、久々の「人材育成トレンド」が訪れた。しかし、その後に起きた現実は逆の「学習恐慌(ラーニング・リセッション)」であった。


20代〜30代の正社員で「勤務先以外の学習・自己啓発をとくに何も行っていない」と回答した人が2022〜2025年までの4年間で約10%増加。成長そのものを志向しない傾向が強まっている。背景には、「管理職はコスパが悪い」「副業に時間を割きたい」といった若手の本音と、働き方改革によって“強制的”に成長を促す上司がいなくなったことなどの影響があると小林氏は分析する。
一方的な「内発的動機」の限界と、「炭火型」の学び
学びを続けるために、よく「自分の心の中に成し遂げたいことを持て」という内発的動機づけが説かれる。しかし小林氏は「100人に聞いて、それが明確にある人は10人程度。それを強いてもなかなか続かない」と推測する。


そこで提案するのが、一人で燃える「ろうそく型」ではなく、他者から火をもらう「炭火型(もらい火型)」の学び方だ。 データによれば、人と一緒に学ぶ「コミュニティ・ラーニング」を取り入れるだけで、学習時間は約2.4〜2.8倍になる。意欲の高さに関わらず、他者というリソースを活用した仕組みこそが、個人の学びを継続させるカギとなるのだ。
「切磋琢磨して『激アツのAIが出たよね』とニコニコしながらシェアできる仲間が周りにいるか。教わるだけでなく、教える側に立つのも一つの手だ」(小林氏)
「AIに頼るほど、AIに置き換えられる人になる」皮肉

長らく人材育成を研究してきた小林氏が危惧するのは、AIによる「スキルのだるま落とし」である。AIは自己効力感を高めるが、基礎・中間タスクをスキップしてアウトプットを出せてしまうため、学習の積み重ねが崩壊する危険性がある。結果として、基盤のない「宙に浮いただるまの顔」のような頭脳が量産されてしまう。

これには3つのリスクが伴う。
- 盲信リスク:AIの出力が、事実誤認を含んでいたり、実務レベルに達していない質の低い回答であったりしても、それを正しく見極めて修正する力が失われる
- 即興リスク:AIという補助輪がない場面でのパフォーマンスが低下する恐れ。顧客とのリアルタイムな対話や、その場での判断が求められる経営会議などの「AIを介在させられないシーン」において、自らの言葉で考え、即座に応答する能力が発揮できなくなる
- 自信過剰リスク:AIによるアウトプットを、あたかも「自分自身のスキルが向上した結果」であると錯覚してしまう
仕事の本質はタスクの積み重ねではなく、「どのタスクをAIにやらせるか」「出力は正しいか」を判断するメタタスクにある。小林氏は「逆説的だが、AIに頼り、思考を手放すほど、AIに置き換えられやすい人間になりかねない」と警鐘を鳴らす。
視野を広げる3つの経験:お出かけ、見渡し、のめり込み
AI時代のメタタスクを担うには、ペラペラの頭脳ではなく、深さと高さのある「視野の広さ」が必要となる。小林氏は、研究から導き出した「視野を広げる3つの経験」を紹介した。

- お出かけ経験: いつもの場所、メンバー、学びから離れること。違う土地を踏む、書店で普段行かないコーナーを歩く、NPOやボランティアなど異質な人間関係に飛び込むことが、空間的・人間関係的な刺激となる
- 見渡し経験: 自分だけの視点を離れ、部下や他部門、経営の目線で物事を見てみる。また、目先の成果だけでなく長期的な時間軸で考える「時間の見渡し」や、自身の専門性を一度客観視する「学びの見渡し」がこれにあたる
- のめり込み経験: 身体感覚を伴う経験。全力で体を動かす、あるいは仲間と本気で盛り上がる「集合沸騰」の場に身を置くこと。情報過多な環境にいるテック層ほど、こうしたリアリティのあるのめり込みが視野を広げる糧となる
仲間を見つけ、視野を広げ、学び続ける大切さ

「自分のやる気は続きません。ダイエット市場が伸び続けるのは、皆が失敗し続けるからです。我々は思った以上に、他人から影響を受けて生きている。それを認めることから始めましょう」(小林氏)
一人のやる気に頼るのではなく、仲間というリソースを見つけること。そして「お出かけ、見渡し、のめり込み」を意識的に取り入れ、AIには代替できないメタな視点を養うこと。データが示す冷徹な現実を直視しつつ、したたかに学び続ける姿勢の大切さを強調し、講演を締めくくった。
生成AIエージェントがもたらす「人とAI」の新しい働き方
演者プロフィール
株式会社GenerativeX
執行役員
CDXO
桑原 茂雄(くわばら・しげお)氏
37年のキャリアを捨て、なぜ生成AIの世界へ飛び込んだのか
続いて登壇したのは、37年間の保険会社勤務を経て、60歳で生成AIの世界に飛び込んだ桑原氏。同氏は1989年に国内大手保険グループの中核会社に入社後、2018年から約7年間、同グループ内の別法人で社長を務めた経歴を持つ。大企業の経営層としてキャリアを積んできた桑原氏だが、60歳を迎えた2025年4月、設立間もないスタートアップである株式会社GenerativeX(以下「GenerativeX」)への転職を決断した。


GenerativeXは、2025年6月で設立3年を迎えるスタートアップ企業。同社は「日本を支える大企業の成長と革新を生成AIで支援する」をビジョンに掲げ、経営課題から逆算した事業変革を推進している。
決断の背景には、大組織における業務のあり方への疑問があった。桑原氏は、大企業での仕事を「調整に次ぐ調整」や「気が付いたらバージョン80になっているPowerPoint資料の修正の繰り返し」だったと振り返る。人生の時間をこうした業務に費やすことを「つまらない」と感じた一方で、「生成AIにはインターネット以上のパワーがあり、世の中を劇的に変える可能性がある」と確信。最前線で新しい刺激と学びを得る道を選んだ。
未経験からの開発と「具体から入る」重要性

入社後、桑原氏はコンサルティングや営業に加え、プログラミング未経験の状態からアプリケーション開発に着手した。AIコードエディタ「Cursor」やAIソフトウェアエンジニア「Devin」を駆使し、業務時間の半分以上をコードを書くことに費やしている。入社当初の1カ月間を「毎日が泥沼だった」と語るが、それを乗り越え現在は自ら業務を遂行する。
講演では、入社1カ月後に3日間で開発した「損害保険の事故受付支援アプリ」のデモンストレーションが行われた。オペレーターが顧客と会話しながら復唱する音声をリアルタイムで拾い、正規化されたデータとしてフォームに自動入力する仕組みだ。電話越しの顧客の声は雑音や方言の影響を受けやすいが、オペレーターの声をターゲットにすることで現場視点の発想転換が正確な入力を可能にしている。
桑原氏は「具体から入る」ことの有効性を強調する。ビジネスの現場で繰り返される抽象的な議論を排し、具体的な成果物を持って対話することで、クライアントとの信頼構築やプロジェクトの進展が劇的に加速することを実体験として示した。
消滅する「開発のボトルネック」と問いの質


自ら開発に携わるなかで、桑原氏は生成AIの進化スピードを肌で感じている。4月の入社時点と比較してもツールの機能は圧倒的に向上しており、かつて苦労した実装も容易に実現可能となった。
この変化は、ビジネスにおける「開発のボトルネック」が消滅しつつあることを意味する。「アイデアはあるが、IT部門との調整やコストが障壁になる」という構図は過去のものとなった。現在の障壁は技術ではなく、「AIに対してどのような問い(プロンプト)を投げるか」という問いの質にある。
桑原氏は、学んだことを知識に留めず、即座に形にすることが大切だと話す。「御社のビジネスにはまだ詳しくないが、このようなアプリを作ってみた」と具体物を提示するだけで、クライアントとの距離は縮まる。
AI前提の組織運営:人間に残された「熱意」と「語り」
GenerativeXでは、組織運営そのものがAI活用を前提に設計されている。AIに代替可能な業務は任せ、人間が「人間にしかできない価値提供」に専念する環境を構築している。

具体的には、下記のような取り組みが紹介された。
- 導入研修の廃止(自律型学習):受け身の研修は行わず、業務上の不明点はAIに問いかけて自己解決することを基本とする。「教えられる」のを待つのではなく、AIを家庭教師のように活用して自らスキルを習得する仕組みを採用している
- 1on1・定例会議の廃止:進捗確認や情報共有のみを目的とした会議は行わない。「Slack」などのコミュニケーションツールに蓄積されたログを各自が確認すれば済むことは、非同期(リアルタイムではないやり取り)で完結させる
- 資料作成の自動化:過度なスライド修正に時間を費やさない。AIで生成した骨子をベースとし、人間は「何を伝えるか」という戦略の構築や、対面での「熱意ある語り」による補完にリソースを割く
- 開発のAI化:人間がゼロからコードを書かず、「Cursor」などのAIツールに実装を委ねる。浮いた時間で、人間はクライアントの課題をどう解決するかという「設計」と「問い」の質に責任を持つ
講演では、カスタマーセンター向けのAI音声対話アプリを約1時間の作業で構築した事例も示された。桑原氏は、このスピードアップによって生み出された余白の時間こそが重要だ、と語る。
同社では、作業に時間を奪われるのではなく、クライアントが驚き、感動するような本質的な課題解決のアイデアを練り上げることに、人間の全リソースを投下できるよう工夫している。
舞台に立ち、実践し続ける

講演の締めくくりとして、桑原氏は「あれこれ考えるのではなく、舞台に立ち、実践する時代である」というメッセージを送った。
AIを活用する過程で、思い通りの結果が出ず泥沼にはまることもある。しかし、桑原氏はそれを失敗と捉えない。「今の指示のどこがおかしかったのか」をAIに問い、マイナスをプラスに変えた瞬間の快感こそが成長の原動力となる。
退路を断ち、挑戦し続けることでしか見えない世界がある。60歳からの自らの挑戦と重ね合わせ、「自分の業務を一つ自動化してみる」「クライアントのためにアプリを作ってみる」など、とにかく一歩を踏み出すことの大切さを訴え、講演を締めくくった。
学び直しのすすめ~新たなキャリアを切り拓く~
演者プロフィール
株式会社ライトスタッフ
代表取締役
情報経営イノベーション専門職大学
教授
いとう まい子氏
「評価される側」から抜け出す決断

18歳でアイドルとしてデビューし、現在は大学教授や複数企業の社外取締役を務めるいとう氏。高卒から大学院の博士課程まで進んだ同氏が語るのは、単なるスキル習得ではない。自分自身を動かす根本的な仕組み「人生のOSを書き換える」という発想だ。

いとう氏が45歳で大学へ入学した動機は、芸能界で約20年間「常に評価される側」に立ち続けてきた経験にある。「背が低すぎる」「声が良くない」「顔が幼いから年相応の役は難しい」といった他者からの評価の連続に対し、自身の努力は反映されにくい。いとう氏はこれを「他人のOSで動いている状態」と表現する。

設計する側、評価する側に回らなければ、人生の主導権は取り戻せない。そのための手段として、同氏は大学という場を選んだ。
違和感を放置せず「未知なる道」を選ぶ

いとう氏は自身を「計画を立てない人間」だと語る。10年先を見据えるタイプではないが、一つだけ守り続けているルールがある。それは「違和感を放置しない」ことだ。

日常で感じる小さなズレや疑問を見過ごさないこと。さらに「正解」がわかっている道は選ばず、新しい自分に出会えそう・ワクワクする未知の道を選択してきたと語る。
大学では当初予防医学を志したが、指導教授の退職により道が閉ざされることに。そこで同氏は、プログラミング経験皆無の状態で「ロボット工学」に飛び込んだ。「安心安全な道」は成長しない。知らない道にこそ「OSを書き換える」チャンスがあると捉え、一歩を踏み出したのだ。

学びは「紙切れ一枚」を重ねるような地道な作業に過ぎない。しかし、1年で365ページ、2年でそれ以上の厚みとなれば、考え方や出会う人々が変わり続ける。それこそが、同氏のいう「本当のアップデート」の姿である。
「人生の主導権」を取り戻すための3ステップ
ここでいとう氏は改めて「あなたは今、誰のOSで生きていますか?」と会場に問いかけ、「人生の主導権」を取り戻すための3つのステップを提示した。

- ステップ1:気づく
まずは、自分が「評価される側」「自分では決められない側」にいる現状に気づくこと - ステップ2:選ぶ
安心安全な枠からはみ出ない道ではなく、あえて未知なる道、怖いと感じる道を選ぶこと - ステップ3:変える
選んだ道で少しずつ変化を積み重ね、気づかないうちにOSが書き換わっている状態を目指す

いとう氏は「今の日本は、周囲から正解を求められる構造になっている。ただ、周囲が言う『正解』は、その人の過去の経験値からしか語られていない」と指摘する。
「自分の経験値だけで物事を言うことに、未来はありません。本当に必要なことは、自分を更新するという選択です」(いとう氏)
「1000分の1の法則」:残る一人の正体



学びを成果に結びつけられるのは、どのような人物か。いとう氏は才能や意志の強さではない「1000分の1の法則」を提示した。
- 1000人:「やってみたい」と思う人
- 100人:始める人
- 1人:続ける人


多くの人が「適性は合っているか」と迷う思考の罠に陥り、結果が見えないうちに足を止めてしまう。対して最後に残る一人は、モチベーションや熱量に頼らない。手応えがない日でも、昨日と同じ場所へ行き、ただ学びを淡々と継続できる人物である。

いとう氏自身、事務所を辞めた後の10年間は「地獄を這いつくばるような生活」であったと振り返る。それでも学びを止めなかった積み重ねが、自身でも想像し得なかった「大学教授」や「社外取締役」という未来を切り拓いた。
淡々と、「昨日と違うこと」を続ける
いとう氏は、「劇的な変化を求める必要はない」と話す。脳は急激な変化に抵抗するため、気づかないうちに少しずつ変わっていく「スモールステップ」が理想的だという。


「子どものころ、自転車に乗ろうとしたときに怪我のリスクなど考えなかったはず。ただ『乗りたい』というワクワクする思いだけがあった。大人になると余計なことを考えすぎる」(いとう氏)
安心安全な枠内に留まっていては、想像を超えた未来は訪れない。もし道が合わなければ、その時に引き返せばよい。
「今日も明日も、淡々と続けてください」(いとう氏)
未来を過度に不安視せず、自分を更新し続けることの重要性を語り、講演を締めくくった。
【Q&Aセッション】
Q&Aセッションでは、登壇した3名がイベント参加者から投げかけられた質問に回答した。
Q. AI時代において一番大事なスキル・スタンスは何だとお考えですか?
小林氏:AIの活用に差が出るのは、AIへの入力欄に「どれだけ野心的な願望をぶつけられるか」に差があるからです。「無難な発想」しか持たない人は、AIを定型業務の効率化にしか使えず、活用の幅が広がりません。例えば、「イベントのタイトルを考えて」と頼むだけでなく、「このイベントを1年後に1000人規模に拡大するにはどうすればいい?」といった高い到達点を示せるかどうかが、AIから引き出せる価値を左右します。
そういった意味で、技術以前に「願望水準を高く持つこと」が最も重要です。ただ、こうした「アニマルスピリット(野性的な意欲)」を一人で維持し続けるのは困難です。だからこそ、おもしろそうな人に刺激を受けたり、本を読んだりして、他者の熱量を自分に憑依させる。そうして自らの意欲を燃やし続けることが、AI時代の差につながると思います。
Q. 未知の領域に飛び込んだときに、心が折れた・折れそうになったことはありますか?あった場合、どのように立ち直りましたか?
桑原氏:自分でアプリを開発していても、思い通りにいかず泥沼にはまってしまうことは多々あります。しかし、その原因は100%自分自身にあります。顧客のニーズを正しく言語化できていないから、AIに正確な指示が出せていないだけです。
心が折れそうになるのは、自分の問いが未熟だった証拠。そこを修正して課題を解決できたとき、その苦労は一瞬で快感に変わります。マイナスをプラスに転換した瞬間の喜びを全力で味わうこと。この成功体験の快感を自分に刻み込むことが、折れない心を作る一番の薬になります。
Q. 率直にいま「設計側にいる」という実感はありますか?また、正解を求められる業務では、どのような向き合い方をすべきかアドバイスをいただきたいです。
いとう氏:自分自身の気持ちとしては、私はもうただ評価されるだけでなく、自分で決めて物事を進める設計側にいると感じています。
また、周囲が求める「正解」とは、あくまで「求めてくる側の過去の経験値」に基づいた基準に過ぎません。その枠内に居続ける限り、人生の主導権は握れません。まずは地道に学びを積み重ね、実力をつけること。すると、相手が想定していた正解とは別の角度から「自分の正解」を提案できるようになります。勇気を持って自分の意見を出す訓練を続けていけば、自ら人生を設計できる瞬間がやってくるはずです。
Q. パーソルグループ全体のAI活用における課題と、進展している点について教えてください。
小林氏:グループ内にいると、人材紹介・派遣という公的な認可を必要とする業種(免許業)ゆえの、「リスク回避の姿勢」を強く感じます。組織として非常に堅実である反面、ツールの利用制限も多く、実業務への導入スピードという点では、まだ課題が残っているのが現状です。
しかし、生成AIの本質は「個人の自由なツール」であることです。会社が厳しく制限したとしても、現場の人間は利便性を求めて勝手に使い始めます。私が働き方改革を研究していた際も実感しましたが、制限を強めれば強めるほど、人は「抜け道」を探します。そして、その「管理外の利用」こそが、企業にとって最大のセキュリティリスクになります。
AIの世界では、長期的な視点で「数多くの失敗を許容した企業」の方が、結果として短期的な成果も出しているというデータがあります。いかに多くの試行錯誤を積み重ねられるか、そこを乗り越えられるかが、今後企業におけるAI活用の分かれ目になると考えています。
Q. 今、日々自分を更新するために実践していることはありますか?
いとう氏:私にとっての更新は、インプットを必ずアウトプットに繋げることです。日々本を読んで情報を蓄えるだけでなく、それを大学の講義用スライドに落とし込む作業を毎週行っています。人に教えるという前提があるからこそ、自分の知識が常にアップデートされる状態です。
また、日常生活での試行錯誤も大切にしています。例えば、飼っている2匹の猫とのコミュニケーションもそうです。接し方を日々変えながら反応を確かめる、そんな身近な変化でいいんですよね。生成AIを使う際も、「世の中にない論文を捏造(ねつぞう)させないための指示」を工夫するなど、常に新しい設定を試しています。
大切なのは、常に昨日とは違うことを、一つでもやってみる姿勢です。何か情報を得たときに、ただ納得するのではなく一度自分で試してみようと動き出す。その小さな実践の積み重ねが、自分を新しくし続ける道だと思います。
Q. プログラミング未経験で、どのような学習をしてアプリが制作できるようになりましたか?
桑原氏:入社前にオンライン教材で基礎を勉強していましたが、正直に言えば、実際の開発にはあまり役に立ちませんでした。それよりも原動力になったのは、学習法ではなく退路を断ったことだったと思いますね。「○月○日までにデモを完成させる」という逃げ場のない状況に自分を追い込み、作るしかない環境に身を置いたこと。この必死さが、未経験の壁を突破させました。
今の時代、「Cursor」などのツールを使えば、日本語で指示を出すだけでAIがコードを書いてくれます。つまり、プログラミングスキルの有無はもはやほとんど存在しません。いま本当に必要なのは、コードを書く技術というより何を実現したいかという論理的な思考力や、ビジネスモデルを具体的に描き出す構想力なのではないでしょうか。
Q. 何かに挑戦して失敗した経験談と、その受け取り方を教えてください。また、失敗の活かし方のアドバイスもください。
桑原氏:私はもともと「鈍感力」が強く、失敗を失敗だと思わない性格です。客観的には上手くいっていない状況でも、少しやり方を変えれば乗り越えられるはずだと工夫することに意識が向いています。 周囲から見ると失敗の連続に見えるかもしれませんが、自分的には成長のプロセスに過ぎません。失敗という概念そのものを「成功への調整ステップ」だと捉え直すことが、前進し続ける秘訣だと思います。
いとう氏:私の最大の挫折は、アイドル時代に自分の意志に反する仕事を求められ、事務所を辞めて「干された」10年間です。地獄のような日々でしたが、その最中でも「時間があるから本をたくさん読める。これはこれでチャンスだ」と考えるようにしていました。 最悪な状況でも、そのなりにどう乗り越えるかを考え抜く力が一度身につくと、どんな困難もステップアップの糧になります。そうなれば壁にぶつかることが怖くなくなり、むしろ次は何を学べるかとワクワクする癖がついたと思います。
小林氏:データで見ると、現代社会は失敗が少なくなっています。「あなたらしさを守ろう」という風潮が強まった結果、人は失敗を恐れて守りに入ってしまうのです。しかし、AI時代には「数多くの失敗を積み重ねた組織」こそが成果を出しています。 まずは、失敗を「自己否定」と結びつけるのをやめること。失敗したときは「貴重なデータを得られてラッキーだ」と考え方を変えましょう。 そして、自分の行動を常に「言語化」しておくことが重要です。自分の思考や行動を言葉にして客観視する習慣がなければ、失敗を振り返り、次に生かすことが難しいかもしれません。
文=宮口 佑香(パーソルイノベーション)
※所属組織および取材内容は2026年2月時点の情報です。












