「ハードからソフトへ」の発想転換で豊島区を救う!〜「学生データ分析AWARD 2025」準優勝チームインタビュー〜
2025年3月7日〜8日、初対面の学生がチームを組み、当日発表される社会課題にデータで挑む「学生データ分析AWARD 2025」が東京・六本木で開催された。 今回のテーマは「豊島区の2040年問題」。2日間にわたって議論を重ねた3人のチームが、準優勝を勝ち取った。何から手をつけ、どんな壁にぶつかり、どう乗り越えたのか。チームメンバーのうち、印藤 旭弘さんと木野 姫李さんにその舞台裏を聞いた。準優勝チームメンバー
木野 姫李(きの・ひめり)
神田外語大学 2年生 グローバルリベラルアーツ学部 グローバルリベラルアーツ学科
印藤 旭弘(いんどう・あきひろ)
HAL大阪 2年生 情報学科
小笠原 啓祐(おがさわら・けいすけ)※インタビューではご不在
神奈川大学 経済学部 現代ビジネス学科
「学生データ分析AWARD」とは?
全国から集まった学生が初対面の仲間とチームを組み、当日発表される社会課題にデータを活用して挑む1泊2日の合宿型コンテスト。2022年から年1回ペースで開催されており、2026年3月7日(土)〜8日(日)に開催された今回が第4回目。会場はウイングアーク1st株式会社(東京・六本木)。
データ分析力だけでなく、課題発見力・ストーリー設計力・プレゼンテーション力など、社会人として必要な複合的なスキルが審査対象となる。「優秀な学生と社会が求めるスキルのギャップを埋めたい」という思いのもと、法人番号株式会社代表取締役のマエス(吉田 裕宣)さんをはじめとする社会人3名が有志で運営している。
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「未知のツール」への戸惑いと、”ひよっこ”ゆえのワクワク感
初日の会場の様子
——まずは自己紹介をお願いします!
印藤さん:印藤です。普段はHAL大阪のWeb開発コースでWebシステムの設計から実装までを学んでいます。
木野さん:神田外語大学2年の木野です。グローバルリベラルアーツ学部に所属していて、政治・経済など文理問わず幅広く学んでいます。
——「学生データ分析AWARD」を知ったきっかけを教えてください。
印藤さん:もうすぐ社会人になるので、「学生のうちに就職活動で誇ってアピールできるようなことに挑戦したい」と思い、生成AIで学生向けコンテストをリサーチしました。そこで見つけたのが「学生データ分析AWARD」だったので参加しました。
木野さん:大学に情報領域専門の教授が運営する「データAIラボ」という部活のようなものがあり、そこに参加しています。データ分析にチャレンジしたい人の集まりなのですが、その活動が楽しく、学外にも同じ想いやモチベーションを持った人とのつながりを広げたいと思い、参加を決めました。
——参加前に期待していたことや、不安に感じていたことはありましたか?
印藤さん:日ごろからPythonは利用するものの、データ分析文脈での使用方法は、ほとんど知りませんでした。また、過去の「学生データ分析AWARD」の資料を見ていても、記載されているツールはほとんど聞いたことのないものばかりだったので、「自分はどこで役に立てるのだろう」という不安は大きかったですね。
木野さん:私がデータ分析に本格的に触れ始めたのは、2025年の9月ごろで、本当に”ひよっこ”でした。ただ、普段の自分の世界から飛び出して、別の世界の人と交流して新しいものを得たい、というモチベーションで参加したので、不安よりはワクワクの方が強かったですね。
「豊島区ってどこ?」からスタート。未知の壁をデータで解き明かす怖さとおもしろさ
チーム発表後ランチの様子。時計回りで木野さん、小笠原さん、印藤さん
——当日、チームが発表されましたよね。お互いの第一印象はいかがでしたか?
木野さん:AIもプログラミングに精通しているお二人だったので、正直「当たりを引いたな」と思いました(笑)。一方で私自身の立ち回りについて、少し不安に思った部分もあります。
印藤さん:私も木野さんと同じで、すでにデータ分析でスキルを持っている二人だったので「場違いかな」と率直に感じました。ただ、小笠原くんがプレゼンに多少苦手意識があると言っていたので、その部分で貢献したいと考えていましたね。
——当日、テーマが「豊島区の2040年問題」と発表されて、率直にどう感じましたか?
印藤さん:私は大阪から参加したので、豊島区のことを全然知らず、最初は不安でしたね。まずGoogleで「豊島区ってどういうところ?」から調べるほかありませんでした。
木野さん:私はアニメやゲームが好きなので、豊島区と聞くと池袋が浮かびました。池袋には何度も行ったことがありましたが、「住む」という視点で捉えたことはなくて。家賃や土地の価格など、調べて初めてわかることばかりだったな、といま思い返しています。
——リサーチを進める中で「豊島区の2040年問題」を皆さんはどのように定義したのでしょうか?
印藤さん:毎日200万人以上が乗り降りする池袋駅を抱え、人口密度が全国1位の豊島区。人は集まってくるのに、住み続ける人が増えない——これが私たちが定義した「豊島区の2040年問題」です。
収入の8割以上が各種支援で消えてしまい財政難に陥っている。住宅が単身向けばかりでファミリー層が定住しにくく、住民の入れ替わりが激しいことで隣人関係が希薄になり、災害時の助け合いも機能しにくい。リサーチを通じて、そういった問題が連鎖していることが見えてきました。
発表10分前まで総力戦!データと信頼で豊島区の「構造的課題」を射抜く
2日目発表の様子
——皆さんの提案内容を簡単に教えていただけますか?
印藤さん:一言で言うと、「ハード依存からソフトウェア主導へ」という発想の転換を提案しました。建物を強くするだけでなく、データと仕組みで防災力を底上げしようという内容です。
背景には、豊島区がすでに取り組んでいる耐震化や防災訓練が問題の根っこに届いていないという問題意識がありました。住民が2〜3年で入れ替わるため防災の知識が地域に根付かない、本当に危ない建物ほど実態が把握されていない。施策を個別に積み上げるだけでは解決しない構造的な問題があると考えました。
だから5つの打ち手も、財政が厳しい豊島区でも実行できるよう「即効性・低コストの3つ」と「構造を変える2つ」に分けています。前者は転入時の防災情報配布、マンションの防災リスクスコアの公開、ワンルームの共用部を帰宅困難者の受け皿にする仕組みです。後者は旧耐震のワンルーム2戸をファミリー向けに統合する住戸改修と、空き家を消防スペースや広場に転換する戦略的縮退です。
ワーク中の様子
——馴染みがなく、難しいテーマだったと思いますが、どのように提案の切り口を決めたのでしょうか?
印藤さん:1日目の午後から2日目の発表直前まで豊島区が住むうえで抱える課題について分析していました。まず取り掛かったのは、配布された『としま政策データブック2025』や『豊島区基本構想・基本計画ミニブック』などの前提知識をAIにかけて豊島区と豊島区が持つ課題を理解することでした。
木野さん:最初は、池袋の中国人街問題など最近の時事ニュースから調べ始めたのですが、最終的には全然関係ないところに着地しました(笑)。ただ、このようにさまざまなデータに触れるなかで「財政問題が豊島区が持つ全ての課題に関わっている」という軸が見えてきました。そこから、財政を支えるのは税収、税収を支えるのは地域住人が長く住んでくれることである、という流れで切り口を絞り込んでいきました。
——提案を作り上げていく過程で一番苦労したのはどこでしたか?
印藤さん:1日目の中間発表に向けた準備が一番大変だったと思います。分析やリサーチの時間が数時間しかなく、チームとしてまだ打ち解けていない状態で、何から手をつければ良いかもわからない状況でした。結局、資料が完成したのは発表10分前で、壇上に立ってから頭の中で話を組み立てながらプレゼンテーションをしていましたね。

木野さんが「Tableau」で作成した資料
木野さん:私は諸事情で2日目の到着が遅れてしまい、小笠原くんと印藤くんがかなり準備を進めてくれていたなかで状況をキャッチアップするのに最も苦労しました。そのなかでも自分自身が貢献できることを探し、最終的にはデータ分析ツール「Tableau」を普段から活用していた強みを生かして、資料中でデータの裏付けが不足している部分を探しました。
例えば「豊島区では人口に対して避難所の数が少ない」と記述していた箇所では、数字的根拠がなかったため、そこをビジュアライゼーションして補足しました。
——2日間、チーム内の連携はどのように工夫されましたか?
印藤さん:3人それぞれに明確な役割分担はなくて、まず皆で情報収集してコミュニケーションアプリの「Discord」で共有しながら議論を進めていましたね。豊島区の肌感がない私にとっては、池袋をよく知っている木野さんや小笠原くんの肌感覚が当初はすごく参考になり、助けられました。データだけでは見えないものを補ってもらったと感じます。
木野さん:情報量が多いからこそ、活用できそうな情報が埋もれないように「これが使えそうだ」とあえてメンバーに声をかけることは意識していましたね。小笠原くんは、提案全体のストーリーや資料の構成を組み立てるのが本当に上手で、中心になって動いてくれました。チームの核となる存在だったので、一緒にインタビューを受けたかったです(笑)。
「1位を取りたかった」ハイレベルな刺激から見つけた、自分の役割と極めたい道
表彰後。左から小笠原さん、木野さん、印藤さん
——改めて、準優勝おめでとうございます!受賞を知ったとき、率直にどう感じましたか?
木野さん:もちろん嬉しい気持ちもありましたが、リサーチ前の段階からチームで「絶対1位を取ろう」と話していたので、正直のところ悔しかったです。
印藤さん:僕も同じです。当日は「嬉しかったです」と話しましたが、実はちょっと悔しかったですね。大阪から夜行バスで来て、2位だったか……って(笑)。
——悔しいお気持ちだったとのことではありますが、「学生データ分析AWARD 2025」に参加して学びはありましたか?
木野さん:すごくありました。データ分析のレベルも意識も高い人たちのなかで、自分はどう貢献できるかと役割を考える経験ができたのが一番大きかったですね。お二人が「NotebookLM」でプレゼン資料を作ったり、AIをそれぞれの得意不得意に応じて使い分けたりするのを見て、「もっとAIって使えるんだな」と気づかされました。技術面では及ばない分、コミュニケーションや情報共有の面で貢献することを意識していたので、そこはこれからもっと磨いていきたいです。
印藤さん:本来こういったデータ分析・プレゼンテーションは、1週間どころか1カ月以上かけて取り組むものだと思いますが、短時間で集中して分析し、発表まで持っていくためのスキルは間違いなく上がったと思います。ビジネスの現場でも急いで提案書を作成しなければならない場面は多々あると思うので、社会人になる前にそれが体験できた気がします。
——最後に、お二人が今後挑戦したいことや目標を教えてください。
印藤さん:今回、自分よりレベルが高い人たちがたくさんいることを知ったので、またハッカソンやコンテストに積極的に参加してスキルを向上させていきたいと思いました。プログラマーを目指していますが、そのなかでもどのようなポジションのプログラマーとして戦えるのかをどんどん試していきたいです!
木野さん:私は、今回のアワードでも生かせた「Tableau」をもっと極めたいと改めて思いました。いま、データビジュアライゼーションの認定資格「DATA Saber - Bridge」に挑戦中です。引き続き頑張ります!
——ありがとうございました!
リサーチ中の一幕。左から木野さん、小笠原さん、印藤さん
取材・文:宮口 佑香(パーソルイノベーション)
※所属組織および取材内容は2026年4月時点の情報です。
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