成績表で測れない「社会を生き抜く力」を磨け!データでまだ見ぬ答えを導く「学生データ分析AWARD」の現場に迫る
学生がデータを武器に社会課題へ挑む「学生データ分析AWARD」。2025年3月7日(土)~ 8日(日)に開催される第4回目では、全国から集まった学生が初対面の仲間とチームを組み、当日発表されるテーマに対して1泊2日で解決策を提案します。そもそも「学生データ分析AWARD」とは一体どんな取り組みで、なぜ有志で続けられているのでしょうか……?この記事では、AWARDの運営責任者・マエスさんを独自取材!立ち上げの背景や、運営に込める想いを聞きました。インタビュイープロフィール
マエス(吉田 裕宣)
@maes_data法人番号株式会社代表取締役。過去、大学の教員、上場グループ企業でのCDO(最高デジタル責任者)や事業責任者等を務める。1社目でつけられた「データマエストロ」という役職名から「マエス」を名乗る。2022年から有志で運営する「学生データ分析AWARD」の運営責任者。
データが放つ「ワクワク感」と可能性──コンサル時代に魅了されたデータサイエンスの力
──マエスさんは、もともとデータ分析を専門にされていたのですか?
マエスさん:最初からデータ分析が専門だったわけではありません。新卒で某中小企業向けの経営コンサル企業に入社して、コンサルタントとしてキャリアをスタートしました。コンサルのくせに当時は話すのがすごく苦手で……(笑)。
口で勝負する代わりの武器を探したところ、根拠や裏付けとしてデータを収集して、説得力を持って事実を訴えるのが得意だと気づきました。
当時、1カ月に一度、全国から担当していたお客さまが東京に集まって次の1カ月の方針が決まる重要な会議があったんです。失敗は許されない…‥。そんな緊張感のなか、データや根拠のある数字で現場の考えや状況を示すようにしていました。すると、経営層が納得感を持って意思決定してくれたんです。
新卒3年目でこの経験をして、「データっておもしろい」、「データは、これだけインパクトを出せるのだな」と感動したんですよ。ここで感じたデータへのワクワク感を軸にして、以降のキャリアを築くことになりました。
──まさに、今のエピソードが「学生データ分析AWARD」の活動につながっているんですね。ところで、なぜお名前はマエスさんなのでしょう?
マエスさん:2社目で「データマエストロ」という役職名をつけられたんです。当時の社長が「『データサイエンティスト』は、もう古い!今後は分析だけじゃなく、前工程の業務設計も含めて全部できる『データマエストロ』であるべき」と言い始めて。
最初は「嫌だなあ」と思ったのですが(笑)、そのコンセプト自体には共感したんですよね。ただ分析するだけでなく、データを武器に事業を創ったり、新たな価値を切り開いたりする人材こそ、未来に必要なのだろうな。そして私がその1人でありたい…‥そんな想いで、いまも「マエス」と名乗っています。
初対面メンバーで社会課題に挑む1泊2日──「学生データ分析AWARD」とは?
──「学生データ分析AWARD」は、どんな取り組みなのでしょうか?
マエスさん:全国から集まった学生たちがその場で初めて会った仲間とチームを組んで、当日発表される社会課題に対してさまざまなデータを活用しながら解決に向けての具体的なアプローチ方法を提案する、1泊2日の合宿形式のコンテストです。優勝チームには賞金を贈呈しています。2022年から1年に1回ペースで開催していて、2025年3月の開催で4回目を迎えます。
使えるテクノロジーは自由です。オープンデータや学生自身が集めたデータを組み合わせながら、最終的な提案までつくり上げてもらいます。
──どのような学生さんが参加されるのでしょうか?
マエスさん:データサイエンスを学んでいる大学生が中心層ですが、学生起業家もいれば、これからデータに強くなりたい、という学生もいます。
開催地は東京都内ですが、地方の学生も参加しやすいように、交通費1万円を支給しています。地方の学生ほど、隣で一緒に学んだり切磋琢磨したりする仲間が少なかったりするんですよね。場所に縛られることなく、データサイエンスを頑張っている学生たちは平等に報われてほしいのです。
──前回までは、合宿形式ではなくオンライン開催でしたよね?
マエスさん:そうですね。2024年までは、学生に自主的にチームを組んでもらい、コンテストに向けて準備した内容をオンラインで発表してもらう形式で開催していました。よくよく聞いてみると、事前にチームを組むのに苦戦している学生が少なからず存在することが分かったんです。
加えて、コンテストに向けて取り組んだ期間よりも「どれだけ短期集中で課題に取り組んだか」が提案の内容を左右することも私自身、感じていました。
とある大学教授に相談したところ「それだけに集中する時間が確保できて、オフラインで開催する方が学習効果が高いのでは」とアドバイスをもらって。2025年度から1泊2日の合宿形式をトライしてみることになりました。
──運営体制についても教えてください。
マエスさん:今は、社会人3名で運営しています。3人ともデータに専門性を持っていて、某企業のデータマネージャーとデータエンジニア、それから私です。有志の活動として、5年、10年と中長期で続けていきたいという想いで運営しています。
「いまの学生は優秀、でも勿体ない」──学生と社会のギャップを埋める
──「学生データ分析AWARD」を始めたきっかけを教えてください。
マエスさん:データ分析の仕事をしている仲間と雑談していたときに、「いまの学生さんは、すごく優秀だ」という話になったんです。データ分析観点では特に、私たちが学生だったときには学べなかったようなレベルのことを大学で学んでいます。それなのに、社会人になった後に必要なスキルとギャップがあるのが、勿体ないと思っていました。
──どんなギャップでしょうか?
マエスさん:学生時代の「優秀さ」は、資格や学校の成績で評価されがちです。でも、私たち社会人がデータ分析観点で「この人、優秀だな」と思う方は、テクニカルなスキルだけを持っているわけではありませんよね。データと向き合いながら試行錯誤して、最終的に答えを導き出す、その思考回路や姿勢の方こそ大切です。
そういったプロセスに必要なスキルこそが社会で生き抜くために必要であり、磨いていくべきもの。だからこそそれらを育てられる、かつ評価できるような場を作りたいと思っていました。そこで社会人である私たちが、次世代のデータサイエンティストへの恩返しとして提供しているのが「学生データ分析AWARD」です。
そんな背景でこのAWARDでは、データ分析力以外のスキルも審査ポイントに入る予定です(①データ収集力、②分析力、③ストーリー設計力、④デジタルツール技術力、⑤プレゼンテーション力)。
──「学生データ分析AWARD」という名前だけ聞いて、データをゴリゴリ分析する場をイメージをしていたので驚きです……!提案に至るまでに求められるさまざまなスキルが必要であり、評価される場なのですね。
マエスさん:そうですね。今では、データ分析スキル単独の重要性もありますが、データ分析は掛け算的に成果を出すものなので、どうしても課題の特定など含めて複合的なスキルが大事だと思っています。
データと「足」で掴み取った、2024年優勝チーム──学生が社会の矛盾を浮き彫りに
──過去に開催した回で、印象に残っている提案はありましたか?
マエスさん:全部すばらしかったですが、2024年度の「学生データ分析AWARD」で優勝した神田外語大学のチームはすごかったですよ。「外国人技能実習生が働きやすい社会づくり」をテーマに、ベトナムやインドネシアなどから来日する技能実習生が直面している困難を、データ分析を通じて浮き彫りにし、彼らがより良い環境ではたらくための具体的な解決策を提案してくれました。
オープンデータを活用して分析したところ、言語の壁が大きな障壁になっていること、とりわけ「そもそも相談窓口の多くが日本語対応に限定されている」実態を突き止めていました。
──なんと……そんなところに課題があったのですね!
マエスさん:そうなんです。解決策としては、言葉の壁を打破する仕組みの具体的な提供提案と、実習生が孤立せずにつながれるネットワークを構築することを挙げていました。
彼らの場合、データ分析に留まらず、実際に外国人向けの相談窓口の現場に足を運んで得た知見や独自の切り口を組み合わせた点、さらに社会的な実現可能性を考慮したストーリー設計が高く評価されて優勝チームに選ばれました。
このような形で、データ分析の技術はもちろん大事ですが、さまざまかつ大量のデータをどう組み合わせて説得材料に活用するか、というところにチームごとの視点が光るのがおもしろいですよ。
優勝だけが価値じゃない──「今までにない悔しさ」も糧に
──学生たちにとって、このAWARDはどんな価値があるのでしょうか?
マエスさん:「学生データ分析AWARD」での優勝は、社会人になったときに必要なスキルがデータ分析力と合わせてコンテストで評価されたことを意味するので、価値があるはずです。
一方で「今までにない悔しさ」を味わう学生たちもいます。その悔しさをバネに成長した学生もたくさん見てきました。勇気を出してAWARDに1人で出場したこと、初めて出会った仲間たちと初めて取り組む課題に、自分の持つスキルでチャレンジした経験……。悔しかったから「次はこんなことをやってみよう」と、次の一歩を踏み出す……学生たちのとって何かのきっかけになっていると嬉しいです。
──過去の参加者からの反響はありますか?
マエスさん:AWARDに参加してくれた学生の大学の先生から「学生がこんな風に活躍していますよ」と報告をいただくことがあり、とても嬉しいです。
大学時代は基本的に4年間と限りがあるため、メンバーの入れ替わりが激しく、それがおもしろい点だと思っています。ある学生がAWARDに出て学んだことを自分の後輩に教える。教わった後輩たちが先輩からのアドバイスを持ってまた参加してくれる、といった循環ができてきています。
このように「学生データ分析AWARD」の最大の魅力の1つは、参加した学生だけが成長するのではなくて、その周りの学生も一緒に成長してくれることにあるんです。
変わらない軸は「学生にとって価値があるか」──かつての恩を次世代へ繋ぎたい
──「学生データ分析AWARD」は、今後も学生さんにとってより良い形に変化していくのではないでしょうか。そのなかでも、「ここは変えたくない」という軸はどんなところでしょうか?
マエスさん:「学生たちにとって価値がある取り組みであること」です。その観点で常に学生の意見を聞きながら、最適な形を探し続けたいですね。
今は有志3名で運営しているAWARDですが、将来的にはNPO法人化も視野に入れています。自分に何かがあっても、将来にわたって継続できる仕組みに育てたいです。
というのも、私がまだデータ分析に詳しくなかった時代、Tableau(タブロー)のユーザーコミュニティで、某企業のデータマネージャーからタブローについてや、データ分析のあれこれを無償で3カ月間ガッツリ教わった経験があります。その恩返しとして、次世代を育てるのが私のミッションだと思っているんです。
──今後、「学生データ分析AWARD」を応援したい、参加したいと思ってくださった皆さんにはどのようにアプローチしてほしいですか?
マエスさん: 学生の皆さんには、ぜひ「TECH PLAY」から「学生データ分析AWARD」に応募・チャレンジしてみてほしいです!
社会人の方には、私の取り組みをまずは応援していただけるだけで嬉しいです。「何かしらアクションを起こしたい」「支援したい」と思ってくださる方は、私のX(旧Twitter)からご連絡いただければと思います。
学生を育てる活動は「学生データ分析AWARD」の形でなくても良いと思っています。皆さんがそれぞれにお持ちの専門性を軸に、それぞれのアプローチで新しい場を作るのも素敵なことですよね。なんらかの形で、次世代を育てる取り組みを一緒に盛り上げていけると嬉しいです。
■ 2025年度「学生データ分析AWARD」開催概要
・開催日: 2026年3月7日(土)~ 8日(日)
・場所: ウイングアーク1st株式会社(六本木グランドタワー)
・応募締切: 2026年1月31日まで
・詳細はこちらから
取材・文:宮口 佑香(パーソルイノベーション)
※所属組織および取材内容は2026年1月時点の情報です。













