AWS認定資格全冠5名を輩出。NTTデータMSEが実践するクラウド人財育成とは
AWSは国内で圧倒的なシェアを誇るクラウドサービスです。その知識やスキルを証明するAWS認定資格の取得は、ITエンジニアにとってクラウド案件に携わる機会を増やし、キャリアの幅を広げることにつながります。現在、AWS認定資格は12種類。NTTデータMSEでは、ここ3年でそれら全てを取得したエンジニアを5名輩出しました。その背景にあったのは、自律的な学びと挑戦を促す「学びを孤独にしない」独自の育成文化。自らAWS勉強会を立ち上げ、メンバーの上級資格取得を後押ししてきたエンジニアと、その文化を受け継ぎ、入社7年目ながら全冠取得を達成した若手エンジニアのお二人に、NTTデータMSEの学びの環境についてお話を伺いました。取材メンバーの紹介
第一デジタルビジネス事業本部
テクニカルマスター
島 泰晴(しま・やすはる)氏
新卒で入社して以来、組み込みからサーバー、クラウドなど、様々な開発案件に携わる。現在はクラウド・AIアーキテクトとして活動。AIエージェントの技術をベースにした実案件や研究開発にも取り組んでいる。テクニカルマスターとしてはアーキテクトの指導や主導、レビュー、技術相談を担っている。AWS全冠を全社で初めて取得。
第一デジタルビジネス事業本部
主任
的池 朋香(まといけ・ほのか)氏
2020年新卒で入社。サーバーやモバイルアプリなど、幅広い開発案件に携わる。最近はPMOとして、AI導入支援や管理の仕組み作りなどに従事することが増えた。2026年3月にAWS全冠取得を達成。
第一章:学びを孤独にしない。だから勉強会を立ち上げた

──島さんがAWS認定資格の勉強を始めようと思ったきっかけを教えてください。
島氏:2017年頃から、AWSを活用した案件が増え、知識を身につけた方が良いなと感じるようになりました。
例えば技術スキルでもプログラミングは、経験を積み重ねるとスキルが向上していきますが、クラウドサービスは各サービスの機能や使い方を知らなければ対応できない場面が多いのです。加えて、新しいサービスや機能が次々と登場するため、継続的に学び続けなければすぐに知識が古くなります。当時、AWSは会社の取得推奨資格ではありませんでしたが、現場にいた私は業務でAWSを活用するには、資格取得を通じて体系的に学ぶ必要があると感じていました。
──最初はお一人で勉強を始めたと伺いました。
島氏:最初は自分でAWSアカウントを取得し、独学で資格試験に挑戦しました。ですが、勉強方法もわからなかったため、初回は不合格でした。
もっと経験を積みたいと思い、2019年にイノベーションタイム(社員のスキル向上を目的に、毎週1時間、自分たちで目的やゴールを設定して自由に活動できる制度)を活用した「クラウドをいろいろ触ってみよう」という活動を立ち上げました。もちろん、最新技術に触れることの楽しさを伝えるきっかけを作りたいという思いもありました。当初は私が中心となってテーマを考えたり技術的な方向性を示したりしていましたが、活動を続ける中で、メンバーが自主的にテーマを選んだり、新しい技術に挑戦したりするようになりました。現在は、活動の運営も若手メンバーが主体的に担うようになっており、私は活動全体を後押しする立場に回っています。
するとこれまで「AWSのプロフェッショナルレベルの認定資格は無理」と思っていたメンバーの中に、資格取得を目指そうという流れが生まれてきたのです。2023年、本格的に資格取得をするための活動としてAWS勉強会を立ち上げました。AWS勉強会では私が全体の企画・運営を担い、講師はメンバーにも担当してもらっています。教える側に回ることも、学びになりますからね。
AWS勉強会は初級、中級、上級と3つのレベルを用意しており、クラウド初心者から、上級資格を目指す人まで対応できるようにしています。
──なぜ、「仲間と共に学ぶ」という方法を選んだのでしょう。
島氏:独学は自分のペースで進められ、納得がいくまで深掘りができるなどの良さがあります。プロフェッショナルレベルの資格を取得するには、独学が欠かせないのも事実です。ですが、新しい技術を習得するためのモチベーションの維持が難しいと思うのです。資格取得は自分のためで、やりたいことでもあるはずなのに、「なぜ一人でこんなに頑張っているんだろう」と孤独感に苛まれることがあります。
勉強会であれば、他のメンバーから刺激を受けられるという良さがある。共感できる仲間が一緒だと、自分も頑張ろうと思えますし、勉強も楽しくできると思うのです。
第二章:攻略法を教えるのではなく、学びたくなる場をつくる

──勉強会ではどのような学びをしているのでしょうか。
島氏:AWS勉強会は毎週、オンラインで開催しています。メンバーは約20人。いろいろな部署や拠点から参加してくれています。
具体的には、自作のハンズオンコンテンツを用意。実際にAWSを操作しながら、みんなで学ぶスタイルを採用しています。とはいえ、最初からこのような形だったわけではありません。勉強会を立ち上げた当初は、問題集を解いてもらい、解説を加えるという試験問題中心の学習でした。それだと面白くないと思い、次にAWSが提供している公式ハンズオンを試しました。ただ、公式ハンズオンは幅広い層に合うように作られているため、コンテンツごとに難易度や所要時間にばらつきがあり、メンバーの興味や関心にぴったり合うものは限られていました。
それなら自分で作ろうと、ハンズオンの自作を始めました。自分で作れば、メンバーのニーズに合わせて、他のクラウドサービスとの比較や実務に直結する内容など、すぐに活かせるコンテンツを用意できます。手を動かして仕組みを理解し、実務で使える力をつけること。資格のための暗記教材ではなく、そこを意識して作っています。当初はハンズオンの作成に相当な時間を費やしていましたが、AIの発展とともに作成も効率化され、現在はオリジナルのクラウド学習サイトを構築・運用するところまで進化しました。AIチャットも用意しているので、分からないことが出てきてもリアルタイムで回答を得られる仕組みになっています。
──勉強会を継続するために、工夫したことはありますか。
島氏:いくら良いコンテンツを用意しても、使ってもらえなければそれまでです。勉強会では毎回、「今日はこれをやります」「来週はこれをやります」とアナウンスして、学び続けやすい空気を作っています。
とはいえ、義務感やノルマを生じさせないような設計にすることも大事です。勉強会を欠席しても次に気軽に参加できるよう、1回完結型にしています。もう一つ意識しているのは、毎回の勉強会で参加者が「1つでも得るものがある」と感じられるようにすることです。1時間参加して何も残らなければ、次は来なくなります。そのため、たとえ短い回でも「今日はこれがわかった」という実感を必ず残す設計にしています。すでに習得済みの内容を扱う回でも、実務で得たTipsを追加したり、AWSが発表したアップデートを紹介したり、必ず何か新しい気づきを持ち帰れるようにしています。何か1つ、来てよかったと思えるものがある。その積み重ねが継続参加につながっていると感じています。
そのほか、合格体験記を公開しているのも、学びの意欲向上につながっていると思います。合格体験記が増えることで、挑戦する人も増えています。
的池氏:オンライン開催に限定しているのも、参加しやすさにつながっていると思います。オンラインと対面を併用すると、対面で参加しているメンバーを中心に議論や作業が進みやすくなります。その点、この勉強会は全員が同じオンライン環境で参加するため、場所による情報量や発言機会の差が生まれにくいのです。万が一、進みが遅れても、「ここでつまずいています」と声を上げれば、誰かが自然にフォローしてくれます。だから、私も初回で馴染むことができました。本当に学びやすい環境だと思います。
第三章:5年前には想像できなかった景色が、今ここにある
──勉強会を継続して開催してきた成果を教えてください。
島氏:5年前はメンバーの中で「自分には無理」という空気がありましたが、今では年間10名以上が上級資格を取得しています。さらに、当社初のAWS全冠取得者が誕生したことで、自分たちもできるという空気が広がり、今では5名の全冠取得者が在籍しています。的池さんもその一人です。
──的池さんが勉強会に参加したきっかけを教えてください。
的池氏:私は2021年にクラウドを触ってみようという活動に参加したことがきっかけです。その活動に初めて参加した頃、業務上でクラウドを触ることはありませんでした。そのため、最新技術に追いついていけているのか不安で、危機感を募らせていました。そんなとき上司から勉強会のことを聞き、参加することにしました。
──クラウド初心者だった的池さんが、全冠取得を目指すまでにどのような意識の変化があったのでしょうか。
的池氏:勉強会に参加したことで、自己研鑽している人がこんなにいるんだと実感しました。自分ももっと勉強して市場価値を高めなければと、それが学びのモチベーションにつながりましたね。
とはいえ、参加した当初は初級から中級レベルの資格を取れればいいかなと思っていました。ですが、島さんに教えていただく中で、自分も上を目指すことで勉強会全体のレベルアップに貢献できたら嬉しいなと考えるようになり、上級資格にチャレンジをしたいと思うようになりました。
もう一つのきっかけは、2025年11月末に米・ラスベガスで開催された「AWS re:Invent」の「AWS Jam」という制限時間内に課題解決に挑む実践型イベントに参加したことです。
順位としては一定の手応えを感じられる結果でしたが、同時に「もっと上を目指したい」という気持ちが強くなりました。そこから3カ月間で上級資格を一気に取得し、全冠達成に至りました。こんなにハイペースで資格取得をしたのは、入社以来初めてです。
島氏:実は学ぶ意欲を刺激するために、イベントにも積極的に参加しています。例えばMSE EXPO(日頃の成果を展示会形式で発表する社内イベント)には、7年連続で出展しています。初期の頃は私が中心となってテーマ選定や資料作成を行っていましたが、3年前からはメンバーが自主的に出展するようになりました。昨年はメンバー自らの工夫によって、全社で90以上の出展の中で最多の票を獲得しています。現在では、私が主導せずとも自発的に学びに挑戦する風土が定着しました。これが、この5年間で得られた大きな成果だと感じています。
また、社外イベントへの挑戦も進んでいます。2025年はAWS Summit Japanの「AWS Jam」で2位、グループ会社のイベントでも上位に入るなど、好成績を収めました。今後は、社外への挑戦もメンバー主体で広がることを期待しています。
──全冠取得は容易ではなかったと思います。どのような学習をしたのでしょうか。
的池氏:勉強会以外では、イノベーションタイムの活動でAWSを実際に触ったり、会社で契約している「AWS Skill Builder」を活用したりして学びました。試験では、業務で触れないようなサービスについても問われることがあります。そうしたサービスについても、島さんがハンズオンを作ってくれていたので、事前に理解することができていました。何よりわからないことに答えていただくなど、島さんがいたから全冠取得につながったと思います。
──全冠取得した今、勉強会の役割や学びに対する意識は変わりましたか。
的池氏:全冠取得を達成すると、多くの人から「すごいね」と声をかけてもらえるようになりました。このような周囲からの言葉によって、自分の自信につながりました。
とはいえ、うかうかしてはいられません。私が初級資格を取得したのは入社3年目のときでしたが、今は入社1年目、2年目の若手が次々と資格を取得しているからです。若手に負けないよう、学び続ける意識が高まっています。
第四章 クラウドだけじゃない。MSEだから積める経験

──MSEではどのようなクラウド案件に携われるのでしょう。
島氏:NTTデータグループである当社では、製造や流通、アパレル、教育など様々な分野のクラウド案件に携わることができます。中でも当社の特徴は、自動車関連の案件が多いことです。従来は車載システム(組み込み系)がメインでしたが、最近は車両に関連するデータをクラウド上に集約するという動きがあるため、車載(組み込み)×クラウド、データ×クラウドの案件も増えています。車載システムの知識に長けたメンバーがいることが当社の強み。恵まれた環境だと思います。
クラウド案件の中でも最近はAIを活用する案件も増えています。
──MSEでクラウド案件に携わることで、どのような経験が積めるのでしょう。
島氏:当社ではいろいろな業界、分野のクラウドの経験を積むことができます。それに加えて、AIを活用した先進的な案件にも携わることができます。当社なら組み込み×クラウド×AIという案件に携わることができる。これは当社だから積める経験だと思います。組み込み、クラウド、AIを横断できるフルスタックエンジニアというキャリアを目指すこともできると思います。
的池氏:私は業務ではクラウド案件に関わっていなかったのですが、資格取得をきっかけにクラウドの案件に声がかかり、業務に携わることができました。自分が勉強したこと、身につけたことを生かせるチャンスがある。そんな魅力的な環境だと感じています。クラウドの分野は日々、変化しています。その中でトライアンドエラーしながら、課題解決に取り組めるのはクラウドに携わる面白さだと思います。
第五章:教える側も学ぶ側も楽しくできる。そういう風土が組織の生命線になる
──今後の目標について教えてください。
島氏:若手メンバーが講師を務めたり、MSE EXPOへの出展を主導したり、うまく回り始めてはいるものの、まだまだ私が起点になっていることもたくさんあります。周りを巻き込みながら、成長していけるメンバーを増やしていきたい。それが勉強会を次のステップへと進めることにつながると思っています。
もう一つは、社外にもこの取り組みを広げていくことです。社外からも評価されるような勉強会に進化させていきたいと考えています。

的池氏:島さんが作ってくれたこの文化を絶やさずに広げていきたいと考えています。
そのためにも、さらに楽しみながら勉強できるような環境を作っていきたい。例えば動画コンテンツであれば、ショート動画のように、見ている側はもちろん、作る側も楽しめるようなものをどんどん増やしていく。勉強することの楽しさを伝えていけるような人になりたいですね。
──島さんも的池さんもAWS認定資格を全冠取得しました。今後はどんな学びをしていくのでしょうか。
島氏:AWS勉強会は、上級資格の取得者を増やすことを目標に立ち上げました。その結果、5年前には想像できなかったレベルにメンバーは到達し、上級資格の取得者も着実に増え続けています。
ですが、クラウドはAWSだけではありません。そこで今年度はMicrosoft Azureの資格取得者を増やそうと、勉強会を立ち上げました。私自身も先陣を切ってすでに中級の資格を取得し、今年度中には上級資格の取得を目指して、ハンズオンを作りながら勉強を進めています。
的池氏:私も生徒として参加しています。周りから「Azureも勉強してほしい」という声もあったので、Azureの上級資格取得を目指したいと思います。
──クラウドを軸にキャリアを高めたいエンジニアへのメッセージをお願いします。
島氏:世の中に貢献するモノを生み出すことは楽しいことです。しかも一人ではなく、仲間と共に実現していく。ですが、それには技術が必要です。新しい技術を学んで、自分にできることを増やしていく。それもエンジニアの醍醐味です。
MSEには共に高め合う風土があります。ぜひ仲間として、一緒に技術を高め合っていきましょう。
的池氏:MSEでは様々な案件が動いています。私がAWS認定資格を取得した際に、クラウドの案件に声がかかったように、学んだことがキャリアにつながるチャンスが多々あります。クラウドを軸にキャリアを高めたいエンジニアにとって、最適な環境だと思います。

株式会社NTTデータMSE
https://www.nttd-mse.com/
取材・文=中村 仁美
撮影=刑部 友康
※所属組織および取材内容は2026年7月時点の情報です。










