「PyCon JP 2026」の見どころを解説! 何が新しい?注目のキーノートやトークは?プログラムチームリーダーに聞いてみた
「知識が簡単に手に入る時代だからこそ、対話や交流から得られる価値が、より大切になっています」 そう語るのは、日本最大級のPythonカンファレンス「PyCon JP 2026」でプログラムチームリーダーを務める池田 雄太郎氏です。 2026年8月21日(金)・22日(土)、広島国際会議場で開催される「PyCon JP 2026」では、2本のキーノートと245件の応募から選ばれた47本のトークに加え、参加者アプリを初導入するなど、交流を促す新たな仕組みも用意されています。 本記事では池田氏に、「PyCon JP 2026」ならではの見どころ、広島会場で体験してほしいことを聞きました。▶ PyCon JP 2026のオフィシャルサイトはこちら
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話を聞いた人

池田 雄太郎(いけだ・ゆうたろう)さん
「PyCon JP 2026」プログラムチームリーダー
合同会社dotData Japanに勤務し、AIアプリケーションを開発するソフトウェアエンジニア。
「PyCon JP 2018」で初めて運営メンバーとして参加。
その後一度運営から離れるが、2024年から再び参加しイベントのコンテンツを担当している。
「イベントへ行かなくても、AIが全部教えてくれる」——それでも現地に集まる理由は?

Q. まず、「PyCon JP 2026」がどのようなカンファレンスなのか教えてください。
池田さん:「PyCon」は、プログラミング言語Pythonのユーザが集まり、知識を交換し、交流するカンファレンスです。世界各地のPythonコミュニティによって開催されており、アジアでも韓国やインドネシア、フィリピンなど、さまざまな国・地域で開かれています。
その日本でのカンファレンスが「PyCon JP」です。2011年から続いており、2026年で15年目を迎える日本最大級のPythonカンファレンスです。
今年の「PyCon JP 2026」は、8月21日・22日に、平和記念公園内の広島国際会議場で本編を開催します。2日間で2本のキーノートと、公募・査読で選定した47本のトークを4つのトークルームで実施します。翌23日には、広島大学 東千田キャンパスで、スプリントの開催も予定しています。
今年は特に「AI時代、なぜわざわざ現地に集まるのか?」という問いから、カンファレンス全体の設計を考えました。

Q. なぜいま、改めて「現地に集まる意味」を問い直したのでしょうか?
池田さん:AIによって知識を簡単に得られるようになったいま、人と人との対話や交流を通じて得られる価値が、カンファレンスでより重要になっていると考えているからです。
AIが情報を要約してくれる時代、知識を得るだけなら、会場へ行かなくてもよいかもしれません。それでも、人と話すことで感情が動いたり、考え方が変わったりすることに、現地へ集まる価値があると思います。
私自身それを改めて実感したのが、2023年の「PyCon US」に参加したときのことです。そこで得た気づきが、大きく二つあります。
一つは、Pythonを通じて人とつながる楽しさです。ある日の夜、たまたま近くにいたアメリカ人に食事へ誘われ、ヨーロッパから来た方々も交え、初対面の4人で食卓を囲みました。普段の生活では出会わない人とも、Pythonという共通点があれば国を越えて交流できる。その体験から、コミュニティの魅力を改めて感じました。
もう一つは、日本やアジアの活動を世界へ発信することの大切さです。「PyCon US」では、アジアからの参加者が相対的に少なく、心細さを感じました。そのなかで、「PyCon JP」に関わる方々が現地に足を運び、自分たちの活動を世界へ伝えている姿を見て、日本から海外へ出て発信することの意義を感じたんです。

実は、当時一度「PyCon JP」の運営から離れていたのですが、そういった心の変化に加え、現地で立ち上げから支えてきた運営メンバーと再会し、楽しそうに活動を続けているのを見て再び運営に戻るきっかけになりました。現地へ行き、人と交流することで、気持ちや行動が変わる。その力を私自身が体感したできごとでした。
今年はその思いを、トークの選び方から会場での過ごし方まで、「対話と交流」を軸にした設計として反映しています。
聞くだけで終わらない。「PyCon JP 2026」が仕掛ける新しい参加体験

Q. 「PyCon JP 2026」での新たな取り組みはありますか?
池田さん:今年は「対話と交流」を促すため、参加者アプリをPythonで開発し、初導入するほか、登壇者と話せる機会の拡充、ライトニングトークの選出方法の変更、日英リアルタイム翻訳の対象拡大に取り組みます。
トーク後のQ&Aだけでなく、休憩中に登壇者と参加者が集まる「Round Table」を設ける予定です。
また、当日応募できる5分間のライトニングトークを、広島名物のお好み焼きと「好きなことを話す」という意味を重ねて「お好みトーク」と名付けました。登壇者は従来の抽選ではなく、参加者がアプリで聞きたいトークへ投票して決めます。
リアルタイム翻訳も、これまではキーノートを中心に対応していましたが、トークやお好みトーク、オープニング、クロージングまで拡大予定です。言語の壁を下げ、参加者同士の対話にもつなげたいと考えています。
アプリ上でのリアルタイム翻訳のイメージ
Q. アプリが初導入なんですね!
池田さん:はい!「お好みトーク」への応募・投票、参加者が自由にテーマを持ち寄って話す「Open Space」の企画・参加、スプリントのテーマ登録などが、どこからでもスマートフォンでできるようになります。
というのも、これまでは紙や会場のホワイトボードで企画や参加を募っていたため、かなり制約がありました。今年はアプリ上で、どんな企画があり、何人が参加するかなどの情報を事前に確認できるので、初参加や一人参加でも、一歩踏み出しやすくなると思います。
手続きを便利にするだけでなく、「PyCon JP 2026」は、参加者が聞くだけでなく、話し、企画し、開発にも加われる、より参加型・交流型のカンファレンスにしたいと考えています。
「Pythonの次世代」を見据えた、キーノート

Q. ここからは、気になるコンテンツについて聞かせてください!まず、目玉コンテンツであるキーノートの登壇者は、どのように選ばれたのでしょうか?
池田さん:まず運営メンバーから「この人の話を聞きたい」という候補を広く募り、その中から議論して選びました。重視したのは、知名度だけではなく、Pythonコミュニティへの関わりや、ご自身でオープンソース活動を切り開いてきた経験です。
話を聞いた参加者が、「自分もコミュニティやオープンソースの活動に参加してみたい」と思える方をお招きしたいと考えました。
Q. Day 1 のCarol Willing氏のキーノートでは、どのような話を聞けそうですか?
池田さん:Carol Willing氏は、CPythonのコア開発者で、Pythonの開発方針を担う 「Python Steering Council」を3期務め、データ分析や研究などで広く使われる開発環境を支える 「Project Jupyter」でも活動してきた方です。Pythonとオープンサイエンスのコミュニティを、長年にわたって支えてこられました。
キーノートでは、Pythonとともにステップアップしていくことや、遊び心を忘れず、GPUのような道具も使いながら日常の課題を解決していくことを語っていただく予定です。
Carol氏にとって技術とコミュニティは別々のものではない、と私は理解しています。Pythonを使って成長することと、その輪をどう広げていくかの両方が詰まった講演になると思います。

Q. Day 2 の北尾 崇氏のキーノートの見どころを教えてください。
池田さん:北尾氏は、Python製レトロゲームエンジン「Pyxel」の開発者です。「Pyxel」では、256×256ピクセル、16色といった昔のホビーパソコンの制約をあえて再現しています。
北尾氏は、制約を乗り越える過程こそがエンジニアリングの原点であり、創造性を生むとお考えです。一方、AIエージェントによって多くの制約がなくなりつつあるいま、創造性のきっかけとなる制約を、これからどうつくっていくのか。現在の技術環境にもつながる問いを投げかけてくださる予定です。
日本のゲームは、限られた色数や容量、処理能力のなかで工夫を重ね、世界で受け入れられる作品を生み出してきました。その考え方を、世界中で利用されるPython製ゲームエンジンの開発者が日本から語る、という意味でも大きな意義があると思います。
異なるキャリアを持つお二人ですが、視線の先にあるのは、どちらも「Pythonの次の世代」です。オープンソースとコミュニティ、創造性と遊び心という異なる角度から、Pythonのこれからを考えるキーノートになります。
AI・LLMからPythonの進化まで。47本のトーク

Q. 2日間で予定している47本のトークについては、どのような軸で選んでいるのでしょうか?
池田さん:今年、最も重視したのは、「その人がこの場で話す理由・意義」です。知識を伝えるだけなら、ブログや動画でもできます。現地で本人が話すからこそ伝えられる経験や視点があり、そこから参加者との対話が生まれるトークを選びたいと考えました。
今年は245件の応募があり、氏名と所属を伏せたうえで、「本人の具体的な経験に基づいているか」「既存の情報にはない視点があるか」「参加者との議論につながるか」など、5つの観点でレビューしました。その後、運営メンバーが集まり、「今年のPyCon JPで聞くべき話か」を議論し、最終的に47本を採択しています。
また、評価の高い順に選ぶだけでは、特定の分野や難易度に偏る可能性があります。そのため、7つのカテゴリー、初級・中級・上級の経験レベル、日本語・英語という3つの軸で全体のバランスも調整しました。その結果、幅広い分野とレベルのトークがそろい、英語トークも全体の約3分の1を占める構成になりました。

Q. ちなみに応募や採択トークからは、2026年のPythonを取り巻く環境やユーザの関心ごとに何か傾向はありましたか?
池田さん:大きくは、AI・LLM関連のテーマが増えたことと、Pythonの進化への関心の二つの傾向が見えましたね。
応募全体でAI・LLM関連のテーマは、約44%を占めていました。同じ基準で過去の採択トークを分析すると、2024年は約19%、2025年は約21%だったため、この1年で倍増した計算です。
さらに内容にも変化があり、「LLMを使ってみた」という段階から「どう運用し、改善するか」へ関心ごとが変わってきていることが見えました。評価やベンチマークを扱う応募が17件、失敗の分類・リカバリや信頼性を扱う応募が22件あり、関心が「作れるか」から「どう育てるか」へ移っているようです。
一方、Python本体や実行基盤に関する応募も60件、約23%ありました。なかでも非同期処理が19件、型チェック・型ヒントが12件、GILを無効にして複数の処理を並列実行できるfree-threadingが11件です。Rustとの連携が7件、WebAssembly上でPythonを動かすテーマも5件あり、Pythonをより速く、幅広い環境で使うための進化にも関心が集まっているようです。
あなたも「関わろう」。広島でしか得られない体験を

Q. ここまでお話を伺い、「PyCon JP 2026」が非常に楽しみです。最後に、参加予定の方や参加をご検討中の皆さまへメッセージをお願いします!
池田さん:2025年の参加者アンケートでは、Python歴1年以下の方が約16%いる一方、10年以上のベテランも約28%と、幅広い経験を持つ方が参加してくださいました。
スライドを見たり、情報を知ったりするだけなら、現地へ行かなくてもできるかもしれません。それでも、参加者同士や登壇者、運営メンバーと話すことで得られるものが確かにあることを私自身、何度も経験してきたので、オフラインで参加することには価値があると自信を持って言えます。
今年は、交流に加わるきっかけをさまざまな角度でたくさん用意しているので、一人参加の方もご安心ください。ただトークを聴講するだけではなく、聞いてみたい「お好みトーク」へ投票する、「Open Space」に参加してみる、勇気を出して登壇者に話しかけるなど、一つでも交流や企画に加わっていただけたら、「PyCon JP 2026」はもっと楽しくなるはずです。
8月21日~23日、広島でお会いしましょう!
PyCon JP 2026 開催概要
■カンファレンス
日時:2026年8月21日(金)・22日(土)
会場:広島国際会議場
■スプリント
日時:2026年8月23日(日)
会場:広島大学 東千田キャンパス
主催:一般社団法人PyCon JP Association
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取材・文:宮口 佑香(TECH PLAY-X)
※所属組織および取材内容は2026年8月時点の情報です。













