デジタルトランスフォーメーション時代の最新データベース技術勉強会 - DB進化論 -
2017年12月21日(木)19時10分より、「【エンジニア向け勉強会】デジタルトランスフォーメーション時代の最新データベース技術勉強会 ”守・破・離” - Vol.1 DB進化論 -」が開催されました。
アクセンチュアが主催する本イベントは、「データベース」をテーマに全3回開催されます。第1回目となる今回は130名以上が参加しました。
当日の登壇者は下記の通りです。
開催のご挨拶
アクセンチュア株式会社 吉越輝信さん
講演1「SAP HANA」の4つの特徴
SAPジャパン株式会社 新久保浩二さん
講演2「SAP HANA」で実現するOLAP
アクセンチュア株式会社 花木敏久さん
それでは内容をご紹介します!
アクセンチュア×SAPで提供するフレームワーク
まずはアクセンチュアの吉越さんによるアイスブレイク講演からスタートです。
吉越輝信(よしこし・てるのぶ)/アクセンチュア株式会社 Liquid Studio for SAP エヴァンジェリスト。シニア・マネージャー テクノロジーコンサルティング本部 SAPビジネスインテグレーショングループ。1970年生まれ。SAPジャパンを始めIT企業複数社での勤務を経て、2017年にSAPへ入社。趣味は映画鑑賞とスポーツ観戦。
デジタルトランスフォーメーションによって世の中が大きく変化する現代。吉越さんのチームでは「SAP DIGITAL PLATFORM」をクライアントに提案しています。
「SAP DIGITAL PLATFORM」は、記録を行なうSoR、エンゲージするSoE、そしてイノベーションのためのシステムが統合したプラットフォーム。SAPのシステムだけではなく、AI、アナリティクス、ビッグデータ、ARなど外部のシステムとも柔軟に接続するために「SAP CLOUD PLATFORM」を基盤としています。
吉越さんは現代における課題を次のように指摘。「この数年は『ニーズの変化』と『事業の変化』が激しく起こっています。そのため従来のように数年掛かかるシステムインプリメンテーションでは通用しないんです。出来上がったときには時代遅れのシステムになっている危険性が高いのです」(吉越さん)
そこで、アクセンチュアはSAPと共同で「ACCENTURE LIQUID STUDIO FOR SAP」というデジタルイノベーションのためのフレームワークを提供しています。
「『ACCENTURE LIQUID STUDIO FOR SAP』は、SAPが持つデジタルビジネスフレームワークと、アクセンチュアが持つ知見を掛け合わせたフレームワークです。
まずはSAPのテクノロジーを紹介し、デザインシンキングを導入することで課題を発見してもらい、仮説を作ってもらうんです。その仮説からクイックにプロトタイプを作り、パイロット版をリリースします。そして、一部のお客様の反応を見ながら本番のデプロイまで持っていくという手法ですね」(吉越さん)
吉越さんはこの進め方を「OODA(Observe/観察する、Orient/状況判断する、Decide/意思決定する、Act/行動する)」と呼びます。
「以前は『超高速PDCA』と言うこともありました。ただ、PDCAはあくまで『計画をきっちり回す』ことを意味しますよね。『OODA』のキーは、瞬時に判断して軌道修正を掛けながら走っていく点にあります。
新しいテクノロジーには『OODA』は合っていると感じているので、私たちは『ACCENTURE LIQUID STUDIO FOR SAP』として提供しているのです。
コンセプトレベルのものも含めれば、私たちは70ほどのビジネスシナリオを持っているんです。グローバルの様々な事例を参考にお客様に応えています。今回のイベントではそれらの魅力を紹介していきます」(吉越さん)
「SAP HANA」の4つの特徴
本編1人目はSAPジャパンの新久保さんです。
新久保浩二(しんくぼ・こうじ)/SAPジャパン株式会社 プラットフォーム事業本部ビジネス開発部シニアアーキテクト。1976年生まれ。山口県出身。複数社での勤務を経て、2015年にSAPジャパンへ入社。海好き。
新久保の講演ではインメモリーデータベース「SAP HANA」の概要や導入事例について紹介されます。まず新久保さんは、その前提としてデータのトレンドについて会場に共有します。
「IoTデバイスを始めとする新たなデータソースの増加、AIやストリーミングなど新たなデータへの需要などがあり、デジタルエコノミーにおけるデータの価値は増大しています。2020年に生み出される全てのデータは、2013年と比較して4300%増になるとまで言われているのです。
全てのデータを利用することはできないでしょう。データプラットフォームに求められるのは、『貯めているだけのデータ』を『何らかのインサイト』へ変換すること。そのインサイトをリアルタイムでアクションまでの落とし込むこと。そこから制約のないイノベーションを起こすという役割です。
現在、多くの企業でデータ基盤への投資が必要だと認識されています。しかしながら、企業の満足度は高くありません。それは、データ生成とアクション実施までに時間が掛かってしまうことが要因です」(新久保さん)
そのギャップを解決するために「従来のエンタープライズのシステムとは別の領域の比率を上げて行かなければいけません」と新久保さんは指摘します。
「これまでのエンタープライズシステムは、ビジネスを維持するために『堅さ』を求めていました。高いパフォーマンスや可用性、セキュリティですね。
バイモーダルITが提唱されているように、今後は今まで扱っていなかったデータを元にビジネス革新が求められます。
現在、データの生成からアクションに時間が掛かってしまっているのは、この2つをスムーズにつなげていないからです」(新久保さん)
「SAPではこの2つの領域をつなぐ『ユニバーサルデータ』を重要視している」と新久保さん。さらに「次の7つの決まりがあるのが『ユニバーサルデータ』だとSAPでは考えています」と続けます。
論理モデル
物理的に離れていたり、性質が異なるデータでも統合できること。低レイテンシー
パフォーマンス
独立性
データ量やリソースに制限されてないこと。スムーズ
社内外の別の部門でデータを利用するのに障壁がないこと。自由
オンプレ、クラウドなどデータの場所にしないこと。ガバナンス
そして、この「ユニバーサルデータ」を扱うプラットフォームが「SAP HANA」だと新久保さんは説明します。
「SAPでは『SAP HANA』やその他のデータベース、データマネジメント製品を含めて、4つの領域に対応したプラットフォームを提供しています。
まずは基幹系のOLTPシステム処理、次に情報系のOLAPシステム処理です。また、機械学習を始めとするインテリジェント系の分析処理もデータベースの中で実行が可能です。さらに、外部においては『hadoop』を中心としたビッグデータと連携することで、同時にプラットフォーム上で処理が行えます」(新久保さん)
新久保さんは、OLTP系のデータとOLAP系のデータの処理を同じプラットフォームで実行できる「SAP HANA」の特徴として次の4点を紹介します。
多くのソースからデータに接続
外部を含めたエンタープライズの全データへのアクセス、データ統合が容易に行え、データ品質を確保できる。効率的なデータ管理
インメモリーでの高速処理だけではなく、コスト効率の高い階層化ストレージのデータ管理もサポートしている。データをインサイトへ
データベース内のエンジンで蓄積されたデータに対する高度で、高速な分析処理を実施できる。インサイトからアクションへの変換
データ駆動形のアプリケーションを「SAP HANA」の上で作成、配置、実行することも可能です。
続いて新久保さんは「SAP HANA」の事例を2件紹介します。まずはウォルマートの事例です。
「ウォルマートでは元々DWHにPOSデータを蓄積していました。しかし、店舗や製品単位での分析ができないことや新たな分析がすぐにできないことが課題でした。
現在は過去3年分、2500億件以上のデータを『SAP HANA』に持っており、『SAP HANA』上で自由に分析が行えるようになっています。同時実行ユーザー数は500ほどですが、クエリーの94%は2秒以内に完了している状態です」(新久保さん)
もうひとつはシルク・ドゥ・ソレイユの「Toruk」というショーの事例です。「Trouk」ではショーの進行と観覧客の座席に合わせて、観覧客のスマートフォンにリアルタイムでデータを配信。観覧客のスマートフォンを利用して演出を行ないました。
新久保さんは最後に「Toruk」のショーを紹介する動画を共有し、講演を終わりました。 動画はこちらに紹介されています。
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