IIIF[トリプルアイエフ]で拓くデジタルアーカイブ

書籍情報

発売日 : 2024年07月31日

著者/編集 : 一般財団法人人文情報学研究所/大向 一輝/永崎 研宣/西岡 千文/橋本 雄太/吉賀 夏子

出版社 : 文学通信

発行形態 : 単行本

ページ数 : 240p

書籍説明

内容紹介

「デジタルアーカイブ」をより多くの人に使ってもらえる、よりよいものにしたい――
それを目指した世界中の人々が集まって創られ、広まってきている枠組み、IIIF(トリプルアイエフ : International Image Interoperability Framework)を紹介し、その概要、構築方法、活用例を紹介・解説する初の書。
第1部ではIIIFの概要の紹介、第2部ではIIIFに対応したデジタルアーカイブの構築手法、第3部では、具体的なIIIFの活用例を扱う。加えて、インタビューやいくつかのコラムも掲載。
コンテンツのよりよい在り方やさらなる利活用を考える方に。公共図書館、大学図書館、ほかデジタルアーカイブに関わる方必携の書。
執筆は、大向一輝、永崎研宣、西岡千文、橋本雄太、吉賀夏子、本間淳、鈴木親彦、三原鉄也、高橋洋成。
【IIIFの素晴らしいことの一つは、「自分の(ここでは自組織という意味も含みます)デジタルアーカイブですべてを提供する」必要がなく、むしろ「自分のコンテンツを用いてどこかの誰かがもっとよいサービスを提供することでコンテンツの価値を高めてくれる」仕組みが提供されたということです。これまでであれば、詳細な内容から便利な機能まで、すべてを自分のデジタルアーカイブで提供する必要があり、それ以上のものを提供することは、ほとんどできませんでした。どんなによいコンテンツを持っていても、それにあわせた高度なデジタルアーカイブ構築能力を持ち合わせていなければ宝の持ち腐れになってしまいかねなかった、つまり、自分のコンテンツの可能性がデジタルアーカイブ構築能力によって制約されてしまうという状況だったのです。しかし、IIIFが登場したことで、詳細なメタデータを付与できなくても、高度な技術を駆使できなくても、あるいは、高精度なテキストデータを提供できなくても、ただIIIFに準拠して公開すれば、同じコンテンツに関心を持っているどこかの誰かが独自に詳細なメタデータを付与したり、より高度なコンテンツとして統合・連携させたり、文字起こししたテキストデータとあわせて利便性の高いサイトを提供したりすることが容易に可能となりました。】はじめにより

目次

はじめに●永崎研宣

第1部 IIIFの概要●永崎研宣

はじめに―IIIFとは何か
1.IIIFがもたらしたもの
2.IIIFの技術的な側面
3.IIIFを支えるコミュニティ

INTERVIEW ウェブ技術としてのIIIF―大向一輝氏に聞く

第2部 IIIFに準拠したデジタルアーカイブの構築方法●永崎研宣
はじめに
1.準備
2.コンテンツの利用条件に関する検討
3.画像の変換
4.検索システムの準備
5.IIIF manifestの作成
6.IIIF Viewerの選定
7.公開とその後
8.まとめ

COLUMN 01 IIIF Change Discovery API:IIIFリソースハーベストのための枠組み●西岡千文
1.はじめに
2.IIIF Change Discovery APIの概要
3.IIIF Change Discovery APIにおける Activity Streamsの詳細
4.Activity Streamsの処理アルゴリズム
5.IIIF Change Discovery APIのレジストリ
6.おわりに

第3部 IIIFの活用事例

第1章 江戸期の佐賀地域における情報基盤の構築とその可能性●吉賀夏子
1.はじめに
2.江戸期の地域情報基盤の構築に向けて
3.佐賀藩の日記関連データベースの構築
4.佐賀藩関係『日記』資料時系列データベースの構築
5.データベースの利活用
6.おわりに

COLUMN 02 IIIF資料が活用されるための必須事項―CORS設定●本間淳
1.CORSエラーの特定
2.CORSエラーの背景
3.CORS設定の注意点
4.サイロからの解放のために

第2章 「顔貌コレクション」とIIIF Curation Platform:Interoperabilityが拓く利用者・研究者主導の画像活用●鈴木親彦
1.IIIF の Interoperabilityが拓く可能性
2.IIIF Curation Platformの紹介
3.「顔貌コレクション」IIIF Curation Platformによる研究のための画像再利用
4.「顔貌コレクション」の展開と利用者主導の画像活用
5.利用者主導の持つ課題
6.IIIFCurationPlatformのさらなる可能性と利用案内

COLUMN 03 IIIFの情報源●西岡千文

第3章 SAT大正蔵図像DBとコラボレーションシステム●永崎研宣
1.はじめに
2.大正新脩大藏經図像編
3.Web コラボレーションシステム
4.公開に向けて:IIIFの採用
5.IIIF の実装と付加的な機能
6.終わりに:コラボレーションの可能性

第4章 IIIFの仏典研究への活用●永崎研宣
1.はじめに
2.仏教学におけるDSEの展開と課題
3.IIIF-BSについて
4.IIIF-BSの運用上の課題と対応
5.IIIFと古典籍OCR
6.今後の課題

COLUMN04 「みんなで翻刻」におけるIIIF活用●橋本雄太

第5章 音声読み上げとフォーラム機能を備えた中世文書オンライン展示システムの開発●橋本雄太
1.はじめに
2.開発の目的と指針
3.システムの実装
4.公開後の反応
5.考察
6.今後の展望
7.おわりに

第6章 マンガにおけるIIIFの活用●三原鉄也
1.はじめに
2.マンガの内容と構造のメタデータ記述を利用したIIIFに基づく検索・閲覧システムの構築
3.コンテンツ共有のためのマンガの構造記述を利用したIIIFに基づく閲覧環境の構築
4.おわりに

COLUMN05 デジタルアーカイブシステムの仕様書作りについて●吉賀夏子
1.はじめに
2.何を作るのか:目的と範囲を宣言する
3.コンテンツ情報を整理する
4.利用者の導線を明確にする
5.要件を具体化する
6.動作検証を行う
7.仕様の変更に速やかに対応し更新する
8.さいごに

第7章 動画アノテーションツールELANとの連携●高橋洋成・本間淳・永崎研宣
1.はじめに
2.MiradorとELANの連携
3.おわりに

COLUMN06 デジタル源氏物語●永崎研宣

COLUMN07 IIIFビューワを作ってみる●永崎研宣

あとがき●永崎研宣

用語解説
執筆者一覧

著者情報

一般財団法人人文情報学研究所
2010年、SAT大蔵経テキストデータベースの運用を支援しつつ、これを基礎とする仏教学のためのデジタル研究環境構築を目指し、人文情報学的知見を開発して人文知の宝庫である仏教の研究を推進し、さらに、これをとおして人文学全体を振興するとともに、広く人類精神文化の発展に寄与する目的をもって設立された研究所。仏教経典研究部門、仏教写本研究部門、人文情報学研究部門の三部門を擁する。これらの各部門における研究活動に加えて、2011年より月刊の無料メールマガジン『人文情報学月報』を発行し、日本デジタル・ヒューマニティーズ学会の事務局を引き受ける等、人文情報学に関わる情報共有と連携を重点事項の一つと位置づけて取り組みを続けている。ハンブルク大学、国文学研究資料館等と連携協定を結んでいる。 東京都文京区本郷5-26-4-11F TEL:03-6801-8411 FAX:03-6801-8412 https://www.dhii.jp/
大向 一輝
東京大学大学院・准教授。専門は人文情報学、ウェブ情報学、学術コミュニケーション。主な著書・論文に、『ウェ ブがわかる本』(岩波書店、2007 年)、『ウェブらしさを考える本』(丸善出版、2012 年、共著)、「オープンサイエ ンスと研究データ共有」(『心理学評論』61(1)、2018 年 )、「アーカイブの技術史」(『デジタル時代のアーカイブ 系譜学』みすず書房、2022 年)など。
永崎 研宣
慶應義塾大学・教授/一般財団法人人文情報学研究所主席研究員(兼任)。専門は仏教学・人文情報学。主な著書・ 論文に、京都大学人文科学研究所共同研究班編・永崎研宣『日本の文化をデジタル世界に伝える 』(樹村房、2019 年)、「仏典研究とテキスト構造化」(『印度学仏教学研究』72(2)、2024 年、725-730 頁)、“Contexts of Digital Humanities in Japan”,Digital Humanities and Scholarly Research Trends in the Asia-Pacific, 2019, pp.71-90. など。
西岡 千文
京都大学・准教授。専門は学術情報流通、オープンサイエンス。主な著書・論文に、Nishioka, C., & Nagasaki, K., “Understanding IIIF image usage based on server log analysis”,Digital Scholarship in the Humanities, 36 (Supplement_2), 2021, ii210-ii221.、西岡千文 , 亀田尭宙 , & 佐藤翔 .「日本の学術出版物におけるオープン・サイ テーションの分析」(『情報知識学会誌』30(1)、2020 年、3-20 頁)、Nishioka, C., Färber, M., & Saier, T., “How does author affiliation affect preprint citation count? analyzing citation bias at the institution and country level”, In Proceedings of the 22nd ACM/IEEE Joint Conference on Digital Libraries , no. 28, 2022, pp. 1-8. など。
橋本 雄太
国立歴史民俗博物館・准教授。専門は人文情報学。主な著書・論文に、「AI 文字認識とクラウドソーシングを組み 合わせた歴史資料の大規模テキスト化」(『人工知能学会誌』35(6)、2020 年 11 月、754-760 頁)、“The Kuzushiji Project: Developing a Mobile Learning Application for Reading Early Modern Japanese Texts”, Digial Humanities Quarterly , 11(1), 2017. 2. など。
吉賀 夏子
大阪大学大学院・准教授。専門は Digital Humanities。主な著書・論文に、「シチズン・サイエンスと機械学習に よる歴史資料の内容理解支援」(『情報の科学と技術』73, no. 11、2023 年、500-506 頁 )、吉賀夏子・堀良彰・只 木進一・永崎研宣・伊藤昭弘「郷土に残存する江戸期古記録の機械可読化を目的とした市民参加および機械学習 による固有表現抽出」(『情報処理学会論文誌』63, no. 2、2022 年、310-323 頁)、吉賀夏子・只木進一「古典籍書 誌データ構造に対応した Linked Data への半自動変換」(『情報処理学会論文誌』59, no. 2、2018 年、257-266 頁) など。