女性グループ長が考える、職場の多様性がもたらす組織のパワーとは

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女性グループ長が考える、職場の多様性がもたらす組織のパワーとは
富士フイルムビジネスイノベーションでは、DE&Iの観点から女性活躍を促す啓発セミナーの開催や、女性の上位資格者への育成・登用・研修の実施、育児期の両立支援制度の整備を進めています。女性管理職比率も年々増加しており、2021年度は8.8%を達成、2030年度までに15%達成を目標にしています。今回は女性管理職の一人である上堀幸代さんに自身のキャリア形成のプロセスについて伺いました。

シリコンバレーでグローバルなITの未来に触れる

コンビニエンスストアなどに設置されたマルチコピー機。自宅にプリンターがないビジネスパーソンや出張や外出先のメンバーに書類を渡したいなどの際に、便利なのがマルチコピー機に搭載されているネットプリントサービスです。その開発にあたっているのが、上堀さんが現在所属するネットワークサービス開発グループです。

上堀さんは2022年4月に同グループに異動し、グループをマネジメントする管理職に昇格しました。現在、グループ長である上堀さんと3人のチームリーダーが所属しており、この4人のリーダー層が総勢20名の開発部隊をマネジメントしています。

まずは、ここに至るまでの上堀さんのキャリアをたどっていきましょう。上堀さんは、1997年の入社時に抱いていた思いをこのように語っています。

「大学院では画像処理というマルチメディアの基礎技術を研究していましたが、企業では具体的な商品やサービスの開発に関わりたいという思いがありました」(上堀さん)

入社後、最初の仕事はナレッジ共有システムをWebに移行するというプロジェクト。その後はデータウェアハウス・システムの企画導入、モバイル端末でのドキュメントハンドリング、モバイル名刺管理アプリ、クラウド型ワークスペース「DocuWorksCloud」など、いくつもの製品・サービスに関わってきました。

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社 上堀 幸代氏
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
ネットワークサービス開発グループ グループ長
上堀 幸代氏
大学院理工学研究科修士課程を修了後、1997年に富士ゼロックスに入社。情報システム部での開発や研究技術開発本部での研究に従事。米FXPALへの2年間の出向やインド企業との協業などを経て、2013年に帰国。新規事業のサービス化、クラウド型ワークスペース製品の開発などを経て、2022年から現在の部署にグループ長として就任。

上堀さんのこれまでのキャリアの中で最も大きな転機となったのは、2011年から2013年にかけてのアメリカ米西海岸パロアルトにあった研究所「FXPAL」(FX Palo Alto Laboratory, Inc.)への出向だといいます。

ちなみにその隣の建物には、マウス、Ethernet、GUIなどITの歴史に残る様々な発明で知られるゼロックス・パロアルト研究所(Xerox Palo Alto Research Center =PARC)があり、双方で研究者たちの交流も盛んでした。

当時上堀さんが関わっていたのが、中小企業向けのクラウド型オフィススイート製品としてリリースしたSkyDesk。立ち上げの段階から、日米協業のプロジェクトだったそうです。

「その縁でパロアルトに行くことになりました。一方、SkyDeskの開発にあたっては、インドのIT大手企業と戦略的なパートナーシップを結んでいました。そのため、インドにも出張でよく出かけていました」(上堀さん)

日米だけでなく、インドや中国、ヨーロッパからも優れた技術者が集結してITの未来を創造し、その波が世界各地に広がる様子を肌身で感じる2年間だったといいます。

アメリカ赴任中にマネージャーへの昇格打診──断る理由はなかった

シリコンバレーでの経験は、女性技術者の働き方という点でも、上堀さんに大きな刺激を与えました。

「ボードメンバーや研究チームのマネージャーにも女性がいましたから、技術領域で女性たちが活躍するのは当たり前だという雰囲気がありました」(上堀さん)

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そんな環境で仕事をしていた頃、日本にいた直属の上司から「マネージャーをやってみないか」と、昇進について打診されます。ここでいうマネージャーは社内の職位(グレード)として定義されているもので、任用にあたっては社内審査にパスする必要があります。その上で、ポジションの空きがあれば任命されるというものです。

これまでも上堀さんは、いくつかのチームでプロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーという立場で仕事をしてきました。ただ、職位としてのマネージャー職に何がなんでも昇進しようという欲はなく、マネージャー職に挑戦するために何か準備をしたり、意識したりすることはあまりなかったそうです。

とはいえ、これまでアメリカの研究所とのコラボレーションを含め、様々な仕事の機会を与えられ、チームのリードやPMのスキルを得ることができていました。上司から話があった際に、それを断るという選択肢は頭に浮かばなかったといいます。

「商品開発やサービス開発はエンジニア一人ではなく、チームとしてのまとまりや協力があって初めて可能になるものです。自分よりも技術的に優秀な人や様々な経験やスキルを持つ人たちをまとめ、チーム力を発揮することがいかに大切かは知っていました。マネージャーにチャレンジしてはと言われたら、素直に受けようと思っていました」(上堀さん)

米国企業の女性トップや女性技術者たちとの交流で気づいたこと

現在、富士フイルムビジネスイノベーションにおける女性の技術系社員は、大学の研究室を想像していただいたらわかるかもしれませんが、まだマイノリティです。 ただし、女性社員の活躍を促すための会社としての取り組みは以前からあります。

その一つが、米ゼロックス社で2007〜2017年にわたって社長・CEO・会長を務めたウルスラ・バーンズ氏を日本に招いた意見交換会(ラウンドテーブル)でした。日本からも多くの女性社員が参加しました。

当時、米ゼロックス社は前任の社長兼COOアン・マイケル氏に続き、女性のリーダーが2代連続で経営の全権を握ったことが話題にもなりました。また、バーンズ氏はアフリカ系アメリカ人女性として、初めてフォーチュン500企業のトップに上り詰めた人物としても知られています。

「お会いしたのは、まだ私がマネージャーなる前のことですが、まさにその存在自体がインパクトのある方でした。飾らない言葉で質問に答え、ディスカッションの中でも本質的な指摘をしてくれました」(上堀さん)

上堀さんはこのとき、アメリカ企業では女性技術者のキャリアが大いに開いており、その上には目の覚めるような青空が広がっていることに気づいたのでしょう。

「私の周りの女性管理職の方は、ざっくばらんであまり気負っていないところが共通点としてあるかもしれませんね。自分がもしマネージャーになることがあったら、そんなに気負わなくてもいいんだなと思いました」(上堀さん)

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もう一つは、2018年に開催された、社外の女性のマネージャーや開発エンジニアが集うコミュニティイベントに参加したことだといいます。

「理系の女性という属性が同じなので、共感するところが多いんですね。話が通じやすいし、それぞれが抱える課題も似ている。話をしていてとても心地よかったことを覚えています。そのイベントをきっかけに、今でも彼女たちとの交流は続いています」(上堀さん)

仕事のことだけでなく、プライベートを含めてなんでも相談できるような関係ができたと語る上堀さん。心強い仲間たちだと笑顔で語ります。

「誰しも仕事でつらい気分になるときがあると思うのですが、そんなときに他社の会社の女性たちが頑張っている様子を聞くと、元気がもらえます。むしろ社外の方たちだからこそ、本音を話すことができるという側面もあるかもしれません」(上堀さん)

一人ひとりが違うからこそ、それぞれ徹底的にサポートしていく

こうした啓発イベントやそこでの女性技術者たちとの交流を通して、女性であり、技術者であり、かつマネージャーでもあるという、上堀さんなりのキャリア像が自然に形づくられてきたのかもしれません。

女性マネージャーといっても、そのスタイルは均一ではありません。技術系・事務系を問わず、社内の他のチームやグループの女性マネージャーを見ていると、子育てなど家庭のことと仕事のバランスを取りながら頑張っている人もいれば、自分の時間をほぼ全部業務に打ち込んでいる人もいるといいます。

「そういう点でも多様性がある会社です。どんなマネージャーであろうとも、そこに至る過程では男女平等にチャンスが与えられている環境であることはたしか。何より、様々な事情により苦しい局面にいる場合は、周りのメンバーがフォローするなど助け合いの文化があることは当社の誇りだと思っています」(上堀さん)

上堀さん自身、マネージャー職に就任して仕事は忙しくなったといいます。それでも以前から心がけていたメンバー一人ひとりと、向き合って対話する姿勢は変わりません。

「個々のメンバーへ向き合う時間は、以前と比較すると少なくなりました。仕事の指示はリーダーたちがするので私は控えているのですが、一人ひとりが抱えるプロジェクト内での課題はちゃんと聞くようにしています」(上堀さん)

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もしプロジェクトの進捗が遅れている場合は、何が原因なのか。人が足りていないのか、お金なのか、スケジュール設定なのか、そこはきちんとヒアリングしているという上堀さん。人手が足りないときには現場でサポートに入ったり、関係者に謝ったりすることもときにはあるそうです。

その背景にあるのは、上堀さん自身が血肉化している、「一人ひとりが違って当然」というダイバーシティの考え方です。

「どのように仕事を楽しみ、どう成長していくのか。それはメンバーそれぞれ違います。だからこそ、誰もが等しく成長できるための環境や機会を作っていくのがマネージャーとしての仕事。一人ひとりが違うことを理解した上で、一人ひとりを徹底的にサポートしていく。それはいろいろなバックグラウンドのある人とコミュニケーションをとったり、同じプロジェクトで一緒に仕事をした経験から学んできたことだと思っています」(上堀さん)

最後に、2024年に向けてのグループマネジメントの目標を聞きました。

「この1年半は私にとって未知のプロダクトの開発だったので、その知識を吸収するだけで精一杯でした。2024年はグループ長として組織力を高めて、取り組みを本格的に始動したいですね。その取り組みが自分の組織を超え、会社全体にとって新しい変化やよい影響を起こしたい。今年はそんなチャレンジをしてみたいと思っています」(上堀さん)

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【取材を終えて】     

マネージャーのタイプを大きく2つに分けるとすれば、部下を叱咤激励しながら率先垂範でぐいぐい引っ張っていく指導者タイプと、傾聴や対話を重視してメンバーの支援に徹するサポート型タイプがあります。「私はどちらかというと、後者ですね」という上堀さん。

彼女がメンバーの話をよく聞くのは、問題の解をその人自身に考えてほしいから。道に迷ったとき、最後に決めるのはその人自身にしかできない。そこに至るまでの“お手伝い”をすることが自分の役割だといいます。

こうしたタイプは女性ならではと言うつもりはありませんが、組織に男性マネージャーだけだったならば、マネージャータイプの多様性が生まれなかったのはたしかでしょう。

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