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DXイノベーションセンターのデジタル基盤「Serendie®」と歩むデータ分析活動
三菱電機のDXイノベーションセンターについて語ってくれたのは、入社以来クラウド開発業務などに従事し、現在はデータ分析や普及活動などに携わる2名のデータサイエンティスト、新谷祐矢氏と福原昇馬氏だ。
三菱電機株式会社
DXイノベーションセンター ビジネスインテリジェンス戦略推進部
データサイエンティスト 新谷 祐矢氏
三菱電機株式会社
DXイノベーションセンター ビジネスインテリジェンス戦略推進部
データサイエンティスト 福原 昇馬氏
国内トップクラスの総合電機メーカーである三菱電機は、一般ユーザー向けの家電から、半導体デバイス、エネルギー関連、ビル、FA、人工衛星などの宇宙関連産業まで、12の事業分野を有する。
一方で、各事業部の事業規模が大きいこともあり、縦割りも含めた組織文化がそれぞれ醸成されていた。また全国各地に点在しているため、そもそも物理的に全社連携することが難しいなどの課題があったと、福原氏は述べる。
データの活用においても同様で、それぞれの事業部がさまざまな方式で蓄積して活用しているため、全社を通じた利活用ができていなかった。横断的なデータ活用を行うことのできるデータ人材も不足していた。
このような課題を解決するために構築されたのが、デジタル基盤「Serendie®」だ。福原氏たちが所属するDXイノベーションセンターは、Serendie®を推進するために設立された部門でもある。
そのためDXイノベーションセンターは、どこの事業部にも所属していないコーポレート部門であり、12の事業部から上がってくるデータを活用することに留まらず、データドリブン推進に向け、人や空間をつなげるなど、さまざまな枠組みを提供している。
具体的には、顧客の困りごとにアプローチし、ウォーターフォール開発ではなくアジャイル開発などで臨むことで、従来の“モノ”の販売からコト消費、サービスモデルへの変換など、ビジネスの仕組みを変えるような活動も担う。
現在は5名のメンバーがおり、世界最大級のAIコンペティションであるKaggleのMasterとExpertがそれぞれ2名ずつ在籍する。
「12もの事業部の生データを扱えることは楽しい」と福原氏はやりがいを述べる一方で、「データ分析業務を無償で行っているため、多くの依頼があり、事業化に向けては体制やノウハウが不十分であるという課題もあります」と、続けた。
課題解決に向け、現在は主に3つの取り組みを行っている。「データ分析」「技術支援」 「イベント開催・登壇」である。それぞれ詳細も紹介した。
「データ分析」では、DXイノベーションセンターのデータサイエンティストが生み出したインサイト(潜在課題)を基にソリューションを生み出している。
「技術支援」では、各事業領域の担当者が行うデータ分析の導入支援やレクチャーなどの伴走活動などを行っている。
「イベント開催・登壇」では、データ分析やデータ分析基盤・ツールを広く活用してもらうべく、社内イベントの開催や社外向け発信をしている。
一方で先述したとおり依頼が殺到していることもあり、効率化を目指し、取り組みはアジャイル開発フレームワークでもある、スクラムで進めている。
具体的には事業部から上がってきたニーズをBacklogとして積み上げ、2週間を1タームとしたスプリントをまわし、リリースを目指す。
「スクラム開発を適用したことで、ゴールや見積もりをチームが共有できるようになりました」と、福原氏は効果を話す。
また、現在は定期的なレトロスペクティブやスクラムマスターの研修会受講などに取り組み、チーム全体としてデータ分析がさらに推進するよう務めているという。
続いては、Kaggleが趣味であり、AWSとGoogle Cloudの全資格を持つという新谷氏にバトンタッチ。Serendie🄬のデータ基盤としての役割や機能、アーキテクチャなどについて、詳しく紹介していった。
12の事業部から上がってきたデータに対して、Serendie🄬を介すことで、新たなソリューションやサービスを、事業部横断で生み出していく。例えば「FA×電力」などである。
新たなソリューションを高速で生み出すために、「SnowflakeやTableauといったモダンな技術スタックで全体を構成した」と語る、新谷氏。
その中からDataikuを活用したデータ分析についても、さらに詳しく解説していった。
先に福原氏が紹介したように2週間を1スプリントとしたサイクルでまわしていくため、ソリューションのリリース目安は、2~3カ月に設定されている。
しかし「現状はリリースまでたどり着けていません」と、新谷氏は明かす。分析段階では成果が見込められたが、本業の忙しさや体制が不十分などの理由で実際のデータ利活用、プロダクション移行まで進んでいないからだ。
また、分析成果が思ったような内容でなかったケースもあったと、現況を述べた。
Dataikuのプロダクション移行の状況も示した。以下スライドを見るとそのまま、本番利用に至ったケースはゼロであり、「Dataikuの扱いにおける、技術的な側面も考えられる」と、新谷氏は補足した。
現在はそれぞれの課題解決に向けて取り組んでおり、特にDataikuを利用する技術的な難易度に着目。利用者のレベルアップに向けたイベントの実施や、コンテンツの提供を行っている。
「データサイエンティストの枠を超えるような業務もあるなど苦戦が続いていますが、いろいろなデータに触れることのできる楽しみはあります」と、新谷氏は心境を述べた。
【Q&A】参加者からの質問に登壇者が回答
登壇セッションが終わった後は、イベント参加者からの質問に登壇者が回答する、QAセッションも行われた。抜粋して紹介する。
Q.ニーズが高かったデータソースや活用先は?
新谷:位置情報関連や鉄道データです。ドメインを跨いでデータを結合でき、ソリューションも考えやすいのが、人気の理由だと思っています。