Hondaのデータ分析集団が取り組む価値創出プロセス──SNSやテレマティクスデータを活用した顧客ニーズ抽出や課題解決の活動を大公開

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Hondaのデータ分析集団が取り組む価値創出プロセス──SNSやテレマティクスデータを活用した顧客ニーズ抽出や課題解決の活動を大公開
Hondaでは車両から得られるファーストパーティデータに加え、SNSなどのサードパーティデータも活用し、顧客行動や市場のインサイトを導いている。Honda Tech Talks#12では、現場で実際にデータの分析に取り組むエンジニアの取り組みも交えながら、Hondaのデータ分析集団のプロセスや部門の特徴などを紹介する。

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変革期におけるソフトウェアデファインドな開発をデータドリブンで主導

本田技研工業株式会社 森田 純行氏
本田技研工業株式会社
データアナリティクス部
部長 森田 純行氏

最初に登壇したのは、ナビゲーションやコックピットのHMI開発を担当した後、2020年よりコネクテッド・デジタルサービス開発に従事してきた森田純行氏。現在は本イベントで登壇する全メンバーが所属する、データアナリティクス部の部長を務めている。

世界一のパワーユニットメーカーであるHondaが1年間に世の中に送り出す製品の総数は、約3000万台。中でもクルマの売上が約66%を占め、世界各地に研究開発から生産、営業などの拠点を構える。

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Hondaでは2050年までに、全製品ならびに企業活動におけるカーボンニュートラル、交通事故死者ゼロを目指している。その一端として、四輪に限らず、二輪の電動化も積極的に推し進めており、こちらについても2040年までにすべての車両を電動化するという目標を掲げる。

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開発においても従来のハードウェアによる製品価値を主体とした手法ではなく、顧客の体験価値を提供し続ける、ソフトウェアデファインドなアプローチへとシフトしている。

「ソフトウェアを中心とする一貫したバリューチェーンの構築により、価値の質と量を最大化する爆速での開発を目指しています」と、森田氏は語った。

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ソフトウェアデファインドな開発アプローチでは、データドリブンな顧客体験の構築にむけて、まず顧客理解から着手することが重要である。

顧客を理解するために、まずは顧客を観察することが必要であり、ここで多様なデータを活用することで、従来のようなデモグラフィック情報では分類できない解像度の高い顧客の特性を明らかにしていく。

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そして観察した顧客を、行動・価値・状態といった軸で分析し、最後にセグメンテーションを定義する流れだ。

Hondaではこのようなデータドリブンな顧客理解の流れを、リアルタイムデータを用いて自動化分析する。さらには常時ソフトウェアをアップデートできるOTAの技術を活用することで、リアルタイムで顧客に価値を提供し続けていく。そしてこの取り組みは下記スライドで示されたように、すべてのバリューチェーンに展開を目指している。

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最後に森田氏は、生涯の顧客体験におけるデータドリブンの最適化スライドを紹介。「Hondaはデータを活用しながらより良い製品やサービスの提供を続け、顧客の期待を超える価値を生み出していきます」と述べ、オープニングセッションを締めた。

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多様なメンバーで取り組むHondaらしいデータ分析カルチャー

本田技研工業株式会社 ​三澤 英恵氏
本田技研工業株式会社
データアナリティクス部
データアナリティクス1課
Assistant Chief Engineer ​三澤 英恵氏

続いては、実際に現場でデータ活用に取り組んでいるメンバーが登壇した。まずは現在、顧客理解をテーマとしたデータ分析プロジェクトのリーダーを務める三澤英恵氏だ。

OA機器メーカー、メガベンチャー、外資系コンサルティング企業などでデジタルマーケティング業務に携わった後、2021年にHondaに入社。まずは所属する部門の特徴について紹介した。

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データアナリティクス部門の母体が設立されたのは2012年。研究所のビッグデータ活用プロジェクトが起点だ。その後2019年に現在の拠点であり、本日の登壇者の勤務先でもある赤坂オフィスが開設される。

オフィスにはカラフルなクッションなども置かれ、IT系企業やスタートアップのオフィスのように映るが、実はオフィスのレイアウトに三澤氏も関与しているという。

「入社して1カ月ほど経った頃、組織を統括する役員と話す機会があり、Hondaがどのように見えているのか意見をほしいと言われました。そこでデジタル人材が活躍できる環境に整え、採用を強化していくためにも、ITとオフィスともにモダンに変えていくべきだと、率直に意見を出したんです」(三澤氏)

Hondaに根付くカルチャーであるワイガヤを早々に経験したのである。そして実際、三澤氏の意見が採用され推進リーダーに抜擢、その後わずか半年でオフィスのレイアウトは大幅に変更されることになった。

「立場や社歴に関係なく意見を取り入れ、責任をもって任せてもらえる点にHondaのカルチャーの特徴を感じました」と、三澤氏は振り返った。

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実際にオフィスで働いている人材も多様性に富んでおり、キャリア入社が約半数、女性社員の比率も約32%、海外出身者も10名以上所属するのも特徴だ。キャリア採用者は自動車業界以外からの転職がほとんどであり、データサイエンティストに限らず、マーケッターなど多様なバックグラウンドをもつメンバーが所属している。個々の専門性や強みを生かし、データ活用に組織全体で取り組んでいるという。

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三澤氏の入社後の業務も紹介された。最初の3年ほどは、顧客とのエンゲージメントを高めるためのデータ活用に携わった。

どのような顧客なのかを分析し、ロイヤルカスタマーと特定された顧客に対しては、さらにエンゲージメントを高めるために、さまざまな施策を打ち出していく。

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顧客のことをよく知るためには、現地に赴くことも多い。実際、入社後3年間で協業した先の世界地図を示すと共に「現地に行ってみないと分からないこと、行ってみるからこそデータを解釈する際の解像度が上がることがあります」と述べた。

定量データだけに頼らない、担当者の感性や定性的な情報も重要視しているという。データ活用の現場においても、現場、現実、現物を大切にするHondaのカルチャー「三現主義」を体現していることが紹介された。

機械学習やChatGPTを活用し、収集から分析・加工、発信、経営の意思決定までをワンストップでスピーディーに

本田技研工業株式会社 栗栖 達之氏
本田技研工業株式会社
データアナリティクス部
データアナリティクス2課
Assistant Chief Engineer​ 栗栖 達之氏

次に登壇したのは、社内SEとして約9年間働くうちに、データ活用に興味を持ち、社内公募制度を活用しデータアナリティクス部に加わった栗栖達之氏だ。現在は顧客の行動軌跡データを活用した、顧客理解の促進に取り組んでいる。

価値観が多様化する時代となり、自動車産業が大きな転換期を迎えている。そうした背景から、顧客理解が今まで以上に必要になっていると、栗栖氏は述べた。

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例えばクルマの選択においても、機能性で選ぶ人がいる一方、デザインや走りに重きを置く人など、何に価値を感じるかは人それぞれで異なる。そして栗栖氏は「一人ひとりが車を選択する背景には、ストーリーが隠されています」と、述べた。

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そもそも、顧客理解や顧客を中心に据えた製品開発は、Hondaの原点にある。

自転車で毎日買い物に出かける妻の負担を少しでも減らしたい、そんな思いから、本田宗一郎が原動機付自転車を開発したことが、Honda創業のきっかけである。このような想いは、会社が大きくなった今でも変わることなく、HondaのDNAとして受け継がれている。

本田宗一郎がそうであったように、規模が小さいころのHondaのものづくりはパッションドリブンであった。

「もちろん、パッションも大事です」と栗栖氏は前置きした上で、現在ではパッションにデータをかけ合わせること、いわゆるプロダクトアウトからマーケットインの考えが重要だと述べた。

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データドリブンなものづくりにおいて、まずは、下記スライドに示された3つの問いを意識することが大事だという。そして、そのような意識を持ったうえで、各種SNSユーザーの声を拾っていく。

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SNSで拾ったユーザーの声を分析する際には、Hondaに関する情報だけではなく、関連する他社のデータも併せて拾うことが重要だとし、実際に海外イベントでの反響の声を拾う事例を挙げて説明した。

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また、SNSデータは鮮度が命であることから、Hondaでは情報の収集から分析・加工、さらには発信に至るまでを、自社内でワンストップに担う体制を構築している。これにより、スピーディーな意思決定や対応を実現させている。

このようなフローが結果として、経営の意思決定の速さにつながっていることがHondaのデータ分析の強みだと、栗栖氏は述べた。

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一方で、このようなスピード感を実現するのは容易ではない。例えばHondaという企業名1つを例にとっても、SNS上では苗字の「本田」や地名などと混同されるケースがあり、いわゆるノイズ情報も含んでそのまま抽出してしまうからだ。

そこでデータアナリティクス部門ではクレンジング処理を行うことで必要なデータのみを抽出し、顧客理解の精度を高めている。

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栗栖氏が「泥臭い」と表現したように、以前はこのようなクレンジング作業は、マンパワーで行っていた。

しかし現在では、機械学習の技術やChatGPTといったツールを活用することで、容易かつスピーディーになったと、ノイズ判定の変遷も紹介した。

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実は、講演セッションの後に行われたQAセッションでの聴講者からの質問で明らかになったが、このようなノイズ判定ツールには相応のコストがかかっている。しかし、それでもSNS情報をリスニングする理由を、栗栖氏は次のように語った。

「開発や経営の方々が意思決定する際には、推測や感覚だけではなくファクトに基づいた必要があるからです。そして、これこそが私たちの活動の大きなインパクトならびに原動力となっています」(栗栖氏)

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また、意思決定のスピードをより速めるために、役員室などにはリアルタイムデータが表示される巨大なモニターが設置されている。この取り組みに対して、聴講者からは驚きや共感など、多くの反応が上がった。

今後はさらに、一人ひとりのユーザーを理解するためのデータ活用を推し進めていく予定であり、自社だけではなく他の自動車メーカー、さらには別業界の顧客像なども把握することで、幅広い領域での類似性を分析していく。

「Hondaならではの強みを改めて検討し、新たな製品の戦略に活かすなどの取り組みをしていきたいと考えています」と今後の展望を述べ、セッションを締めた。

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テレマティクスデータ分析による「顧客行動理解」と分析者に求められるスキル

本田技研工業株式会社 三輪 健太郎氏
本田技研工業株式会社
データアナリティクス部
データアナリティクス1課
Assistant Chief Engineer 三輪 健太郎氏

続いて登壇した三輪健太郎氏も社内の公募制度を利用し、モーターの開発業務からデータ分析部門に異動。現在はテレマティクスデータを用い、顧客行動の理解に取り組むグループのリーダーを務める。

テレマティクスデータとは、クルマの速度や走行距離といった車体情報に加え、GPSから得たナビゲーション関連の情報などであり、車載に搭載されている通信機器からネットワークを経由し、クラウドに保存される。自動車メーカーにとってのファーストパーティデータである。

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現在、貢献先として注力している領域は商品企画領域である。自動車の開発期間は長く、企画の質を向上させることで手戻りを防ぐ狙いがある。

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三輪氏は「商品企画の領域だけに取り組んでいるわけではありません」と述べ、具体的にこれまでどのような領域に貢献してきたかを紹介した。

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商品企画フェーズにおける具体的な貢献イメージは、例えばEVを利用しているユーザーの充電回数の多さといった不満に対し、テレマティクスデータの分析を生かして顧客の利用実態を反映したバッテリー容量を企画に反映する、といった具合だ。

「その他、インタビューやアンケートなども行い、得られた示唆を組み合わせて仮説の候補数と解像度を上げることを、私たちはメインで行っています」と、他のデータも組み合わせながら顧客の望みを深堀っていくことを強調した。

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ビジネス部門からの依頼に対し、ただ分析結果を提供しているわけではないことも特徴だ。以前はそのようなアプローチを行っていたが、それではそもそも分析方針がズレている可能性があり、結果として分析結果が本質的な課題解決につながらなかった経験をしたからだ。

そこで現在では、ビジネス部門から依頼があったり、データアナリティクス部門からヒアリングを行ったりする際に、問題の根本を解決するような分析提案を行うアプローチを心がけている。

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アプローチの際に最も時間をかけて取り組んでいるのが、上記スライド中央部の円の上部、ビジネス課題の理解と分析課題ならびに方向性の検証だ。このような考え方やアプローチは、データの分析プロセス手法として広く知られている「CRISP-DM(CRoss-Industry Standard Process for Data Mining)」が意図していることと同じだと、三輪氏は語る。

プロジェクトとして提案する際は、上記スライドの右側にある4つのアプローチを視覚的に表現し、筋が通っているかを確認している。さらに、分析によって実際効果が得られるかについても検討した上で提案を行う。

「最初は煙たがられることもありましたが、意外と見落としている項目を発見できたりするため、結果として信頼関係が深まることが多いです。また、このようなアプローチで仕事に取り組むと、我々分析者側がビジネス側のノウハウを貯めることもでき、今後の分析にも活かされます」(三輪氏)

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また三輪氏は、データ分析ならびにプロジェクトの提案を行うための必要なスキルを、ヒアリング、テーマの提案・推進、価値実現のフェーズ毎に詳細に示した。

具体的には、ヒアリング、コミュニケーション、プレゼンテーションスキルなどであり、必ずしも自動車工学はMustではなく、テーマの推進においては特に探索的な分析力、「EDA(Explanatory Data Analysis)が求められる」という。

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また求められているのはスキルだけではなく、データ分析者であってもビジネス側の当事者意識を持ち、課題解決に取り組む姿勢が必要だと語った。同時にビジネス側もデータアナリティクス部門に寄り添うことで双方が歩み寄り、理解を示すことがデータ分析プロジェクトでは大切だと三輪氏は述べた。

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三輪氏は最後に、具体的なプロジェクト事例も示した。売り切りからリカーリングビジネスへの移行に向け、顧客の機能評価と評価発生時の運転情報を同時に把握することを、実現した取り組みである。

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同プロジェクトも、ここまで述べてきたように、テレマティクスデータに加えて、ドライバーへのアンケート調査など、複数のデータを組み合わせて進められた。

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そうして得られた各種データから顧客をクラスタリングし、運転シーンとの因果分析も行っていく。

このようなさまざまな運転シーンをメンバーでワイガヤしながら考え、複雑なシーンをクエリに落とし込む作業が「パズルのようで面白い」と、仕事に対するやりがいも口にした。

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三輪氏はプロジェクトの成果を最後に示し、「顧客行動から望みの抽出を行うことで、魅力的で新しい商品開発の企画に今後も貢献していきたいと思います」と述べ、セッションを締めた。

【Q&A】参加者からの質問に登壇者が回答

セッション後は、イベント参加者からの質問に登壇者が回答した。抜粋して紹介する。

Q.精度など、データ取得で意識している要素やポイントは?

栗栖:まずはアンケートデータを重視していて、SNSなど実際のデータと比較し精度などを確認しています。ただ、精度はあくまで判断材料の一つであり、実際に使えるデータかどうか。すぐにものが作れるかどうかといった点を、最終的な判断材料としています。

Q.実際に分析で利用しているツールやサービスを知りたい

三輪:言語ではPythonやSQLなどを、インフラまわりではAWSを使っています。

栗栖:SprinklrというツールやChatGPTを使っています。コストはかなりかかっていますが、経営に情報を届けるという点で必要だと考えていますし、そう伝えています。

Q.お金も含め大きなリソースをかけることで、従来から働く生産部門などからの反発はないのか?

三澤:コストを投入してもらっている私たちがHonda側の従来のプロセスやカルチャーを知らない場合も多いので、一緒にお仕事をさせていただきながら小さな実績をまずは作り、信頼関係を構築していくことを愚直に続けています。

Q.ChatGPTなどLLMの出現によるデータ分析フローの変化は?

三輪:まず、我々もしっかりとウォッチしていて、実際にLLMを用いてコードを書いてよいと、メンバーには伝えています。もちろん、ハルシネーションについては個人がチェックする前提です。分析への関わりにおいては、LLMの強みは理由などを考えてくれる”Reasoning”だと思っていますので、そちらの方面で使っていきたいと考えています。

Q.2人とも社内公募で異動したとのこと、キャリアも含めた決断について知りたい

三輪:それまで培っていたモーター系のキャリアとは全く違う、今の部署に来ました。ただ、モーターに携わっていた当時から市場での使用実態を知りたいと思っていたこと。実態を理解することで、モーター最適化に間接的に貢献したい、そのためにはデータサイエンティストになることだと思い、ある意味出たとこ勝負でしたが、現在に至ります。

栗栖:自分はIT部門にいたので延長線上のキャリアと思っており、ITと顧客分析どちらの業務が楽しそうか、という点で深く考え込みすぎず、今の仕事に飛び込みました。

森田:実は僕も、以前の部署では社内公募で異動しました。どうしても長期間に及ぶ車の開発を長年やっていたので、スピードを求めて新しいことにチャレンジしたいというマインドが強かったと思います。

Q.データアナリティクス部門の活動は赤坂だけなのか?

森田:ソフトウェアの開発部門は東京、大宮、名古屋、大阪、福岡といった各地の大都市に拠点を広げています。データアナリティクス部門も同じように全国各地に活動を広げていきたいと考えています。

Q.情報科学以外を専攻している学生でもデータサイエンティストとして入社できるか?

森田:スキルにはこだわらなくていいと思います。私自身が大学時代の専攻は情報領域ではありませんでしたし、本日登壇したメンバーも含め、部門にはさまざまなスキルを持つ人たちが集まっているからです。

本田技研工業株式会社
https://www.honda.co.jp/
本田技研工業のキャリア採用情報
https://www.honda-jobs.com/
本田技研工業の採用情報
https://global.honda/jp/jobs/?from=navi_footer_www

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